説明

ホットメルトシーリング材組成物

【課題】熱時(高温下)において、高い剪断強度と優れた耐スリップ性とを両立させることができるホットメルトシーリング材組成物の提供。
【解決手段】ブチルゴム100質量部と、軟化点が130℃未満であるポリオレフィンAを500〜1,000質量部と、軟化点が130〜150℃であるポリオレフィンBを50〜400質量部とを含有するホットメルトシーリング材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルトシーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブチルゴム系ホットメルトシール材は、塗布作業性や密着性に優れるものであり、自動車ドア用シーリング材(例えば、塗板とポリエチレンシートのような防水スクリーンシートとの間のシーリング材)として使用されている。本願出願人はこれまでにゴム、非晶質ポリオレフィンおよび樹脂系粘着付与剤等を含有するホットメルト接着剤組成物を提案した(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−11409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、ブチルゴムおよび非晶質ポリオレフィンを含有するブチルゴム系ホットメルトシーリング剤に数平均分子量4,000〜9,000の低分子量ポリプロピレンを、ブチルゴム100質量部に対して50質量部以上の量で添加することによって熱間強度(熱をかけたときの剪断力)を上げることができることを見出した。
しかしながら、上記のような組成物はポリエチレンシートに対する密着性が低下し、熱間(熱をかけたとき)でスリップ(ポリエチレンシートがシーリング材から滑り落ちる現象)が起きるという問題を本願発明者は見出した。
そこで、本発明は、熱時(高温下)において、高い剪断強度と優れた耐スリップ性とを両立させることができるホットメルトシーリング材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ブチルゴムおよび軟化点130℃未満のポリオレフィンに対して軟化点130〜150℃のポリプロピレンを含有する組成物が、熱時の剪断力を確保しつつスリップを抑えることができること[高い剪断強度と優れた耐スリップ性(密着性)とを熱間(高温条件下)において両立できる。]を見出した。
そして、本願発明者は、ブチルゴム100質量部と、軟化点が130℃未満であるポリオレフィンAを500〜1,000質量部と、軟化点が130〜150℃であるポリオレフィンBを50〜400質量部とを含有する組成物が、熱時(高温下)において、高い剪断強度と優れた耐スリップ性とを両立させることができるホットメルトシーリング材組成物となることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜9を提供する。
1. ブチルゴム100質量部と、軟化点が130℃未満であるポリオレフィンAを500〜1,000質量部と、軟化点が130〜150℃であるポリオレフィンBを50〜400質量部とを含有するホットメルトシーリング材組成物。
2. 前記ポリオレフィンBが、ポリプロピレンである上記1に記載のホットメルトシーリング材組成物。
3. 前記ポリオレフィンAが、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体である上記1または2に記載のホットメルトシーリング材組成物。
4. 前記ポリオレフィンBの数平均分子量が、2000〜4000である上記1〜3のいずれかに記載のホットメルトシーリング材組成物。
5. 前記ポリオレフィンAの数平均分子量が、10000〜13000である上記1〜4のいずれかに記載のホットメルトシーリング材組成物。
6. さらにSEBSを含有し、前記SEBSの量が前記ブチルゴム100質量部に対して100〜400質量部である上記1〜5のいずれかに記載のホットメルトシーリング材組成物。
7. さらにSEBを含有し、前記SEBの量が前記ブチルゴム100質量部に対して50〜200質量部である上記1〜6のいずれかに記載のホットメルトシーリング材組成物。
8. さらにポリイソブチレンを含有し、前記ポリイソブチレンの量が前記ブチルゴム100質量部に対して400〜700質量部である上記1〜7のいずれかに記載のホットメルトシーリング材組成物。
9. ドア用に使用される上記1〜8のいずれかに記載のホットメルトシーリング材組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のホットメルトシーリング材組成物は、熱時(高温下)において、高い剪断強度と優れた耐スリップ性とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本願発明の実施例において使用された積層体を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本願発明において剪断試験で評価されたクリープの評価方法を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本願発明において剪断試験で評価されたクリープおよびスリップの評価方法を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明のホットメルトシーリング材組成物を使用して製造することができる積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明のホットメルトシーリング材組成物は、ブチルゴム100質量部と、軟化点が130℃未満であるポリオレフィンAを500〜1,000質量部と、軟化点が130〜150℃であるポリオレフィンBを50〜400質量部とを含有するホットメルトシーリング材組成物である。
【0010】
ブチルゴムについて以下に説明する。
本発明のホットメルトシーリング材組成物に含有されるブチルゴムはイソブテンとイソプレンの共重合体(IIR)であれば特に限定されない。またブチルゴムとしてハロゲン化ブチルゴム(塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム等)を使用することができる。
ブチルゴムのムーニー粘度(ML1+8,125℃)は25〜45であるのが高温における剪断強度および耐スリップ性(密着性)により優れ、剪断強度と耐スリップ性との両立により優れるという観点から好ましい。ブチルゴムの比重は0.85〜1.00であるのが高温における剪断強度および耐スリップ性(密着性)により優れ、剪断強度と耐スリップ性との両立により優れるという観点から好ましい。
ブチルゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0011】
ポリオレフィンAについて以下に説明する。
本発明のホットメルトシーリング材組成物に含有さるポリオレフィンAは、その軟化点が130℃未満のポリオレフィンである。
ポリオレフィンAとしては例えば、非晶質ポリ−α−オレフィン(Amorphous Poly−alpha−Olefin、APAO)、アタクチックポリプロピレン、EPDM、EPM、パラフィンワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、パラフィンオイルやナフテンオイルなどのオイル、液状ポリブタジエンや液状ポリブテンなどの液状ポリマーが挙げられる。なかでも、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、非晶質ポリ−α−オレフィンが好ましく、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体がより好ましい。
【0012】
ポリオレフィンAの軟化点は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、90〜120℃が好ましく、100〜110℃がより好ましい。
本発明において、ポリオレフィンA、Bの軟化点は、JIS K 2207に準じ回転粘度計を使用して測定されたものとする。なお、JIS K 2207はリング・ボール法であるので、ドイツ工業規格(DIN EN 1427)においてリングアンドボール法で測定された軟化点は、JIS K 2207で測定された値と近似できる。
【0013】
ポリオレフィンAの数平均分子量は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、10000〜13000であるのが好ましい。
従来、低分子量といわれるポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)の数平均分子量は3000〜9000程度である。
分子量が低ければそれに伴い軟化点も低下すると予測される。しかしながら、本発明においては、ポリオレフィンAとして軟化点が130℃未満と低くかつ低分子量といわれるなかでも分子量が比較的高いポリオレフィンを用いる場合、驚くべきことに、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れることを本願発明者は見出した。
本発明において、ポリオレフィンA、Bの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いてDIN 55 672に準じて測定されたものとする。なお、蒸気浸透圧法によって得られた数平均分子量はGPCを用いてDIN 55 672に準じて得られた数平均分子量に近似できる。
ポリオレフィンAは塗布時の作業性と使用時の強度に優れるという観点から室温においてワックスであるのが好ましい。
ポリオレフィンAはその製造について特に制限されない。ポリオレフィンAはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
本発明においてポリオレフィンAの量は熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性とを両立できるという観点からブチルゴム100質量部に対して500〜1,000質量部である。ポリオレフィンAの量は熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、ブチルゴム100質量部に対して、500〜900質量部であるのが好ましく、600〜800質量部であるのがより好ましい。
【0015】
ポリオレフィンBについて以下に説明する。
本発明のホットメルトシーリング材組成物に含有さるポリオレフィンBは、その軟化点が130〜150℃のポリオレフィンである。
ポリオレフィンBは熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、ポリ−α−オレフィン(非晶質を含む。)、シンジオタクチックポリオレフィン、アイソタクチックポリオレフィンが好ましく、ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)、シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレンがより好ましい。
ポリオレフィンBは、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、結晶性ポリオレフィンであるのが好ましく、結晶性ポリプロピレンであるのがより好ましい。
ポリオレフィンBは、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、ワックスであるのが好ましく、結晶性ワックスであるのがより好ましく、結晶性ポリプロピレンワックスであるのがさらに好ましい。
【0016】
本発明においてポリオレフィンBの軟化点は130〜150℃である。ポリオレフィンBの軟化点は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、135〜150℃であるのが好ましい。
【0017】
ポリオレフィンBの数平均分子量は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、2000〜4000であるのが好ましく、2500〜3500であるのがより好ましい。
分子量が高ければそれに伴い軟化点も上昇すると予測される。しかしながら、本発明においては、ポリオレフィンBとして軟化点が130〜150℃と高くかつ分子量が比較的低いポリオレフィンを用いる場合、驚くべきことに、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れることを見出し、さらに、ポリオレフィンAとして軟化点が130℃未満と低くかつ分子量が比較的高いポリオレフィンおよびポリオレフィンBとして軟化点が130〜150℃と高くかつ分子量が比較的低いポリオレフィンを併用する場合、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立に特に優れることを本願発明者は見出した。
ポリオレフィンBは、塗布時の作業性と使用時の強度に優れるという観点から室温においてワックスであるのが好ましい。
ポリオレフィンBはその製造について特に制限されない。ポリオレフィンBはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明においてポリオレフィンBの量は熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性とを両立できるという観点からブチルゴム100質量部に対して50〜400質量部である。ポリオレフィンBの量は熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、ブチルゴム100質量部に対して、50〜300質量部であるのが好ましく、100〜200質量部であるのがより好ましい。
【0019】
本発明のホットメルトシーリング材組成物は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、さらにSEBSを含有するのが好ましい。
本発明のホットメルトシーリング材組成物がさらに含有できるSEBSは、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンのトリブロック共重合体(スチレン−水添ブタジエン−スチレンのトリブロックを有するブロック共重合体)であれば特に制限されない。
SEBSのスチレン量は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れ、混合性に優れるという観点から、1モルのSEBS中、20質量%以下であるのが好ましく、10〜15質量%であるのがより好ましい。
SEBSはその製造について特に制限されない。SEBSはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
SEBSの量は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、ブチルゴム100質量部に対して、100〜400質量部であるのが好ましく、200〜350質量部であるのがより好ましい。
【0021】
本発明のホットメルトシーリング材組成物は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、さらにSEBを含有するのが好ましい。
本発明のホットメルトシーリング材組成物がさらに含有できるSEBは、スチレン−エチレン/ブチレンのジブロック共重合体(スチレン−水添ブタジエンのジブロックを有するブロック共重合体)であれば特に制限されない。
【0022】
SEBとしては例えば、1モルのSEB中のスチレン量が20質量%以下のものが挙げられる。SEBのスチレン量は、高温における耐スリップ性(密着性)により優れるという観点から、5〜20質量%であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
SEBはその製造について特に制限されない。SEBはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
SEBの量は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、ブチルゴム100質量部に対して、50〜200質量部であるのが好ましく、100〜200質量部であるのがより好ましい。
【0024】
また、本発明のホットメルトシーリング材組成物がさらにSEBSおよびSEBを含有する場合、SEBの量は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、SEBSとSEBとの合計量中、5質量%以上であるのが好ましく、15〜50質量%であるのがより好ましい。
【0025】
本発明において、SEBSとSEBとは混合物として使用することができる。SEBSに混合されるSEBはスチレン量が10質量%以下であるSEBであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。混合物中のSEBの量は上記と同義である。
SEBSとSEBとの混合物を25質量%含有するトルエン溶液の粘度は混合時の粘度に適しているという観点から、5Pa・s以下であるのが好ましい。
SEBSとSEBとの混合物のメルトフローレート(MFR)は、高温における剪断強度により優れ、混合時の流動性に優れるという観点から、5〜15g/10分(200℃、5kgの条件下)であるのが好ましい。
SEBSとSEBとの混合物の市販品として、例えば、Kraton G1657(クレイトンポリマージャパン社製)が挙げられる。
【0026】
本発明のホットメルトシーリング材組成物は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、さらにポリイソブチレン(PIB)を含有するのが好ましい。
本発明のホットメルトシーリング材組成物がさらに含有できるポリイソブチレンは、イソブテンを重合して得られるホモポリマーまたはコポリマーであれば特に制限されない。
ポリイソブチレンの粘度平均分子量(FCC法)は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、50000〜60000であるのが好ましい。
ポリイソブチレンはその製造について特に制限されない。ポリイソブテンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
ポリイソブチレンの量は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立により優れ、剪断強度がより高く、耐スリップ性により優れるという観点から、ブチルゴム100質量部に対して400〜700質量部であるのが好ましい。
【0028】
本発明のホットメルトシーリング材組成物はさらに添加剤を含有することができる。
添加剤は、ホットメルトシーリング材組成物が含有することができるものであれば特に制限されない。例えば、ブチルゴム、SEBS、SEB、PIB以外のゴム(ジエン系ゴム、非ジエン系ゴム)、熱可塑性エラストマー、ポリオレフィンA、B以外のポリオレフィン、触媒、フィラー、可塑剤、軟化剤、接着付与剤、ワックス、タッキファイヤー、加硫促進剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、安定剤、香料、揺変剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤が挙げられる。
【0029】
充填剤(フィラー)としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、ホワイトカーボン、シリカ、カーボンブラック等が挙げられる。充填剤の量は、強度・塗布時の作業性に優れるという観点から、ブチルゴム、SEBS、SEBおよびPIBの合計量100質量部に対して、300〜700質量部であるのが好ましく、400〜600質量部であるのがより好ましい。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、グリコールエステル、炭化水素系可塑剤(ポリブテン、エチレン−プロピレンオリゴマー)等が挙げられる。老化防止剤としては、例えば、フェノール系、アミン系のものが挙げられる。
【0030】
タッキファイヤー(樹脂系粘着付与剤)としては、例えば、ロジン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂(例えば、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂)、クマロン−インデン樹脂等やこれらの変性物、水素添加物が挙げられる。樹脂系粘着付与剤は、接着性に優れるという観点から、石油樹脂、水素添加石油樹脂が好ましい。
タッキファイヤーの量は、作業性に優れるという観点から、ブチルゴム、SEBS、SEBおよびPIBの合計量100質量部に対して、100〜200質量部であるのが好ましい。
【0031】
本発明のホットメルトシーリング材組成物はその製造について特に制限されない。例えば、ブチルゴム、ポリオレフィンA、ポリオレフィンB、必要に応じて使用することができる、SEBS、SEB、PIB、必要に応じて使用することができる添加剤を混合することによって製造することができる。SEBSとSEBとは混合物として使用することができる。
【0032】
本発明のホットメルトシーリング材組成物を使用して積層体を製造することができる。積層体としては例えば、第1の部材と第2の部材との間に本発明のホットメルトシーリング材組成物から得られるシーリング材を少なくとも有する積層体が挙げられる。
本発明のホットメルトシーリング材組成物を使用して製造することができる積層体について添付の図面を用いて以下に説明する。なお本発明において積層体は添付の図面に制限されない。
図4は、本発明のホットメルトシーリング材組成物を使用して製造することができる積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図4において、積層体20は部材24と部材26との間にシーリング材22を有する。シーリング材22は本発明のホットメルトシーリング材組成物を用いて得られたものである。部材24が金属であり部材26がポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0033】
本発明のホットメルトシーリング材組成物を使用することができる部材(被着体)としては、例えば、ガラス;アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、鉄、鋼板、亜鉛鋼板、銅、ステンレスのような各種金属;モルタルや石材のような多孔質部材;フッ素電着、アクリル電着やフッ素塗装、ウレタン塗装、アクリルウレタン塗装によって塗装された部材;シリコーン系、変成シリコーン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、ポリイソブチレン系のようなシーリング材の硬化物;ポリエチレンなどのポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂のような樹脂;NBR、EPDMのようなゴム類が挙げられる。
【0034】
本発明のホットメルトシーリング材組成物はその軟化温度が60〜120℃であるのが好ましい。本発明のホットメルトシーリング材組成物を被着体に適用(例えば、塗布)する方法は特に制限されない。
【0035】
本発明のホットメルトシーリング材組成物は、熱時(高温下)における高い剪断強度と優れた耐スリップ性との両立に優れ、高温下において、剪断強度が高く耐スリップ性(密着性)に優れるので、被着体が水平に設置される場合のほか、被着体が垂直に設置される場合、被着体が傾斜を持って配置される場合に使用することができる。
【0036】
本発明のホットメルトシーリング材組成物は、シーリング材として建物に使用することができる。また各種自動車用部品、ドア等(例えば、自動車ドア防水スクリーンシートとインナーパネルとの間のシーリング材)に用いることもできる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
<積層体の製造>
下記のようにして得られた積層体について、剪断強度、クリープ、接着性を以下の方法で評価した。結果を第1表に示す。
本願発明の実施例について添付の図面を用いて以下に説明する。
図1は、本願発明の実施例において使用された積層体を模式的に示す図である。
図1(A)は、積層体を模式的に示す斜視図である。図1(A)において、積層体10は、鋼板に塗料が塗布された鋼板3とポリエチレンシート5(25mm巾、50mm長さ)との間に、シーリング材1を有する。積層体10は、以下のようにして得られた組成物1を鋼板3とポリエチレンシート5との間にスペーサー(内空:20mm巾、10mm長さ、10mm厚さ。図示せず。)を用いて打設し、20℃、65%RH(相対湿度)で7日間養生させて、組成物1をシーリング材1とすることによって得られた。
図1(B)は、図1(A)のA−A断面図である。図1(B)において示されるように、ポリエチレンシート5の端部9を組成物1の端部2と合せてポリエチレンシート5を配置した。
【0038】
<評価>
(1)剪断強度
上記のとおり得られた積層体10(テストピース)の最大引張応力(Tmax)をJIS A1439:2004に記載された方法に準じて20℃および80℃にて測定し、その結果を剪断強度(剪断力)とした。
剪断強度の評価基準としては、20℃での剪断強度が0.8N/テストピース以上である場合、常温における剪断強度に優れるとした。また、80℃での剪断強度が0.8N/テストピース以上である場合、高温における剪断強度に優れるとした。
なお第1表において剪断強度の単位はN/テストピースである。
【0039】
(2)クリープ接着性(剪断試験)
図2は、本願発明において剪断試験で評価されたクリープの評価方法を模式的に示す断面図である。
図2において、上記のように得られた積層体10を端部9を上にして垂直に立て、ポリエチレンシート5の下端部(図示せず。)に重さ1.0gのおもり7を付け、積層体10を80℃の条件下に24時間置いた。
24時間後のクリープについて、シーリング材1が積層体10を垂直に立てた状態から垂変形した部分(垂直方向に変形した部分)の長さL1を測定し、得られた値をクリープの結果とした。
クリープが5mm未満でポリエチレンシートが剥離しない場合剪断強度が高いものとする。
【0040】
クリープ接着性の評価方法について以下に説明する。
図3は、本願発明において剪断試験で評価されたクリープおよびスリップの評価方法を模式的に示す断面図である。
図3において、上記のように得られた積層体10を端部9を上にして垂直に立て、ポリエチレンシート5の下端部(図示せず。)に重さ1.0gのおもり7を付け、積層体10を80℃の条件下に24時間置いた。
24時間後のスリップ(耐スリップ性)について、ポリエチレンシート5が、積層体10を垂直に立てた状態からスリップしている部分(ポリエチレンシート5が滑り落ちてシーリング材1からずれた部分)の長さL2を測定し、その値をスリップとした。なおスリップの様子は添付の図面に制限されない。L1は図2と同様にクリープを示す。
スリップが10mm未満の場合耐スリップ性(密着性)に優れる。
【0041】
<ホットメルトシーリング材組成物の製造>
下記第1表に示す成分を同表に示す量(質量部)で用いてそれらを加熱撹拌器で200℃の条件下で均一に混合してホットメルトシーリング材組成物を製造した。
【0042】
【表1】

【0043】
第1表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・ブチルゴム1:IIR(イソプレンとイソブテンとの共重合体)、ムーニー粘度ML1+8(125℃)32、比重0.92、JSRブチル065(JSR社製)
・SEBS・SEB混合物1:Kraton G−1657(クレイトン ポリマー ジャパン社製)Kraton G−1657は、スチレン量が15質量%である、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンのトリブロック共重合体71質量%、およびスチレン量が8質量%である、スチレン−エチレン/ブチレンのジブロック共重合体29質量%を含む。第1表においてSEBS・SEB混合物の量は、SEBSとSEBとの合計量として示す。Kraton G−1657の溶液粘度は4.2Pa・s(溶液粘度は25℃条件下、Kraton G−1657を25質量%を含有するトルエン溶液を用いて測定された。)であり、MFRは8g/10分(200℃、5kg条件下)である。
・PIB1:ポリイソブチレン、Tetrax5.5T(新日本石油社製)、粘度平均分子量55000(FCC法)
・フィラー1:カーボンブラック、旭#60(旭カーボン社製)
・ポリオレフィンA1:APAO(非晶質ポリ−α−オレフィン)、エチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体(エチレン/プロピレン/ブテン=11.3/64.8/23.9質量%、ワックス、ベストプラスト708(エボニックデグサ社製)
・ポリオレフィンC1:ポリプロピレン、ワックス、ビスコール440−P(三洋化成工業社製)
・ポリオレフィンC2:ポリプロピレン、ワックス、ビスコール550−P(三洋化成工業社製)
・ポリオレフィンB1:ポリプロピレン、アイソタクチック含量85%のポリプロピレンワックス、結晶性ワックス、ビスコール660−P(三洋化成工業社製)
【0044】
【表2】

【0045】
・粘着付与剤1:水素添加石油樹脂、エスコレッツ235E(新日本石油社製)
・フィラー2:タルク、PKP81(富士タルク社製)
・酸化防止剤:フェノール系抗酸化剤、Irganox 1010(Chiba社製)
・可塑剤:ジイソノニルフタレート、DINP(ジェイ・プラス社製)
【0046】
第1表に示す結果から明らかなように、ポリオレフィンBを含有しない比較例1は、得られるシーリング材が軟らかく、高温下において、剪断強度が低くなりクリープが大きかった。ポリオレフィンBを含有せず軟化点が150℃を超えるポリオレフィン(ポリオレフィンC1、C2)を含有する比較例2、3はスリップが大きく高温下における耐スリップ性に劣った。
これに対して実施例1〜2は、熱時(高温下)において、高い剪断強度と優れた耐スリップ性とを両立させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1、22 シーリング材(本発明のホットメルトシーリング材組成物)
3 鋼板
5 ポリエチレンシート
7 おもり
2、9 端部
10、20 積層体
24、26 部材
L1、L2 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチルゴム100質量部と、
軟化点が130℃未満であるポリオレフィンAを500〜1,000質量部と、
軟化点が130〜150℃であるポリオレフィンBを50〜400質量部とを含有するホットメルトシーリング材組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィンBが、ポリプロピレンである請求項1に記載のホットメルトシーリング材組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンAが、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体である請求項1または2に記載のホットメルトシーリング材組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィンBの数平均分子量が、2000〜4000である請求項1〜3のいずれかに記載のホットメルトシーリング材組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィンAの数平均分子量が、10000〜13000である請求項1〜4のいずれかに記載のホットメルトシーリング材組成物。
【請求項6】
さらにSEBSを含有し、前記SEBSの量が前記ブチルゴム100質量部に対して100〜400質量部である請求項1〜5のいずれかに記載のホットメルトシーリング材組成物。
【請求項7】
さらにSEBを含有し、前記SEBの量が前記ブチルゴム100質量部に対して50〜200質量部である請求項1〜6のいずれかに記載のホットメルトシーリング材組成物。
【請求項8】
さらにポリイソブチレンを含有し、前記ポリイソブチレンの量が前記ブチルゴム100質量部に対して400〜700質量部である請求項1〜7のいずれかに記載のホットメルトシーリング材組成物。
【請求項9】
ドア用に使用される請求項1〜8のいずれかに記載のホットメルトシーリング材組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−190396(P2011−190396A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59481(P2010−59481)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】