説明

ホットメルト接着剤

官能化メタロセンポリエチレン共重合体に基づくホットメルト接着剤は、高い耐熱性と良好な耐寒性が要求される包装用途に有用であることが見出された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温性能と低温性能の優れたバランスを示し、包装用途における使用に特に有利である低塗布(塗工又は適用)温度ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、包装産業において、厚紙製の(cardboard)ケース、トレイ及びカートンを密閉するために広く用いられている。
【0003】
多くの種類の包装用途では、耐熱性であり耐寒性でもある接着剤の使用を必要とする。ホットメルト接着剤の使用は、包装産業で、容器、例えば、厚紙製のケース、トレイ及びカートンを密閉するために広く用いられている。これらのような容器を密閉するために用いられるホットメルト接着剤は、輸送及び保存中に良好な耐熱性と良好な耐寒性を有するものでなければならない。トラック又は鉄道車両内で輸送及び/又は保存される密閉された容器は、夏の間は非常に高い温度(165°Fまで又はそれより高い)に曝され、冬の間は非常に低い温度(約−20°Fまで又はそれより低い)に曝される。従って、包装用途に用いられるホットメルト接着剤は、輸送工程中に密閉容器がぱっと開かないように十分に強力である必要がある。
【0004】
伝統的なホットメルト接着剤は、高温下(多くの場合には適切に塗布するためにおよそ350°F)で前記容器に塗布される。しかし、高塗布温度には、いくつかの欠点(例えば、接着剤の熱分解、詰まったノズルが焦げるため、その休止時間、高維持費、安全上の問題、高揮発性有機化学薬品、及び高エネルギー消費)がある。よって、良好な耐熱性と耐寒性を有する低塗布温度ホットメルト接着剤が要求されている。本発明はこの要求に応えるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
本発明は、良好な耐熱性と耐寒性の両方を有する低塗布(塗工又は適用)温度ホットメルト接着剤、基材同士を結合(又は接合)するための、ケース及びカートンを閉鎖/密閉(又はシール)するため等の該接着剤の使用方法、並びに該接着剤を含んでなる製造品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一要旨は、官能化メタロセンポリエチレン共重合体を前記接着剤の基本重合体(又はベースポリマー)として含んでなるホットメルト接着剤を提供する。好ましい接着剤配合物は、粘着付与剤(又はタッキファイヤー)及びワックスも含んでなる。
【0007】
本発明の別の要旨は、約200°F〜約300°Fで塗布することができ、高い耐熱性を有するホットメルト接着剤に向けられる。官能化メタロセンポリエチレン共重合体と、好ましくは、粘着付与剤及びワックスも含んでなる低塗布温度ホットメルト接着剤が含まれる。
【0008】
本発明の更に別の要旨は、ケース、カートン、トレイ、ボックス又はバッグを密閉(又はシール)及び/又は製造もしくは形成する方法に向けられる。この方法は、官能化メタロセンポリエチレン共重合体を含んでなるホットメルト接着剤の使用を含む。
【0009】
本発明の更に別の要旨は、官能化メタロセンポリエチレン共重合体を含んでなるホットメルト接着剤を含んでなる製造品に向けられる。一の態様では、前記製造品は、製品を包装するために用いられるカートン、ケース、トレイ又はバッグである。このカートン、ケース、トレイ又はバッグは、官能化メタロセンポリエチレン共重合体を含んでなるホットメルト接着剤を用いて形成される。前記製造品は、かかるホットメルト接着剤によって接着された厚紙、板紙(paperboard)又はその他の基材を含んでよい。もう1つの態様では、前記接着剤は、前記製造品、例えば、カートン、ケース、トレイ又はバッグの製造中に、及び製品を包装する前に、事前にそれらに塗布される。
【0010】
本発明のさらなる要旨は、カートン、ケース、トレイ又はバッグ内に入れられた包装された物品(又は包装物品)、特に包装食品に向けられる。このカートン、ケース、トレイ又はバッグは、官能化メタロセンポリエチレン共重合体を含んでなるホットメルト接着剤を用いて製造及び/又は密閉される。
【0011】
本発明はまた、ある基材を同種又は異種の基材に結合(又は接合)する方法であって、少なくとも一方の基材に溶融ホットメルト接着剤組成物を塗布すること、及び該基材どうしを結合することを含み、該ホットメルト接着剤は、官能化メタロセンポリエチレン共重合体を含んでなる方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本明細書において引用した全ての文献は、引用することによりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0013】
高い耐熱性と、更に、良好な耐寒性を有する低塗布温度ホットメルト接着剤の使用は、熱間充填包装用途において、並びに極端な温度にさらされる可能性がある条件下で包装品が輸送及び/又は保存される場合において重要である。
【0014】
メタロセンポリエチレン共重合体は、通常に塗布される(300°Fより高い塗布温度、より一般には約350°F)ホットメルト接着剤の配合物に用いられてきた。一方、中程度の軟化点の粘着付与剤(85℃〜120℃)及び中程度の融点のワックス(130°F〜170°F)は、低温塗布ホットメルト接着剤(即ち約200°F〜約300°Fの塗布温度)を、メタロセンポリエチレン共重合体をその基本重合体(又はベースポリマー)として用いて、配合するために用いることができ、結果として、不十分な熱応力を有するホットメルト接着剤が得られる。
【0015】
高温性能と低温性能の優れたバランスを有する低塗布温度ホットメルト接着剤は、官能化メタロセンポリエチレン共重合体をその基本接着剤重合体として用いて、得ることができることが見出された。官能化メタロセンポリエチレン共重合体に基づくホットメルト接着剤は、300°Fより低く、約200°Fまであるいはそれより低い温度で塗布することができ、優れた熱応力と低温接着性能を有する。
【0016】
メタロセンポリエチレン共重合体(本明細書では非官能化メタロセンポリエチレン共重合体として用いられる)は、メタロセン触媒系を用いてエチレン単量体をオレフィン(例えばブテン、ヘキセン、オクテン)と重合することによって得られる。非官能化メタロセンポリエチレン共重合体は、Exxon Mobil Corporationから(Exactという商品名で)又はDow Chemicalから(Affinity polymerという商品名で)市販されている。
【0017】
官能基又は官能化成分は、本明細書においては同じ意味で用いられ、非官能化メタロセンポリエチレン共重合体にグラフトされて、官能化メタロセンポリエチレン共重合体を形成する。このプロセスは、非官能化メタロセンポリエチレン共重合体を官能化成分と反応器中で又は押出機中で混合することにより行うことができる。様々な官能基を非官能化メタロセンポリエチレン共重合体と反応させて、官能化メタロセンポリエチレン共重合体を生成させることができることを当業者であれば理解できる。本発明を行う際に用いることができる官能基には、アクリル酸、アセテート、スルホネート、無水マレイン酸、フマル酸等が含まれる。前記接着剤に有用な官能化メタロセンポリエチレン共重合体には、アクリル酸官能化メタロセンポリエチレン共重合体、アセテート官能化メタロセンポリエチレン共重合体、スルホネート官能化メタロセンポリエチレン共重合体、無水マレイン酸官能化メタロセンポリエチレン共重合体等が含まれる。一の態様では、前記官能化メタロセンポリエチレン共重合体は、無水マレイン酸変性メタロセンポリエチレン共重合体である。別の態様では、前記官能化メタロセンポリエチレン共重合体は、フマル酸変性メタロセンポリエチレン共重合体である。官能化メタロセンエチレン共重合体はDow Chemicalから入手可能である。
【0018】
前記官能化メタロセンエチレン共重合体中の前記官能基は、一般には、その共重合体全体にランダムに分布する。本発明の接着剤の特に好ましい態様は、前記非官能化メタロセンポリエチレン共重合体の重量を基準として、約0.3〜約8重量%、より特には約0.5〜約3重量%の前記官能基を含む官能化メタロセンポリエチレン共重合体を含んでなるであろう。官能化メタロセンエチレン共重合体はDow Chemicalから入手可能である。
【0019】
前記官能化メタロセンポリエチレン共重合体は、その主要基本接着剤重合体成分として、約10重量%〜約60重量%、より好ましくは約20重量%〜約50重量%の量で一般に用いられるであろう。「主要」又は「基本」重合体成分とは、前記接着剤のうちの最大量で存在する接着剤重合体成分を意味する。必要に応じて、他の重合体添加剤を前記接着剤配合物に加えることができることは理解できるであろう。
【0020】
本発明に好適な官能化メタロセンポリエチレン共重合体は、2000ダルトンより大きい分子量を有するであろう。この官能化メタロセンポリエチレン共重合体は、官能化変性ワックスとは異なる。官能化変性ワックスは2000ダルトンより小さい分子量を一般に有することを当業者であれば理解することができる。
【0021】
前記接着剤は、官能化メタロセンポリエチレン共重合体に加えて、所望により、他の相溶性非官能化メタロセンポリエチレン共重合体及び/又は他のエチレン共重合体(例えば、エチレンビニルアセテート(EVA)、エチレン n−ブチルアクリレート(EnBA)及びエチレンエチルヘキシルアクリレート(EEHA)等)も含んでなってよい。相溶性エチレン重合体は、本明細書においては、好ましくない分離を生ずることもなく、即ち配合された接着剤の性能に悪影響を与えることなく、前記官能化メタロセンポリエチレン共重合体と混合する能力を有する任意の重合体として定義される。相溶性非官能化メタロセンポリエチレン共重合体の例として、例えば、Dow ChemicalのAffinity polymerを例示できる。かかる追加の重合体が存在する場合、その追加の重合体は前記接着剤組成物の重量の約30重量%まで、好ましくは約20重量%までの量で存在する。
【0022】
本発明の接着剤組成物は、粘着性が向上されることが好ましい。粘着付与剤成分は、約10重量%〜約60重量%、より好ましくは約20重量%〜約50重量%、更に好ましくは約20重量%〜約45重量%の量で通常存在する。この粘着付与樹脂は、一般には、ASTM method E28により決定されるように、約70℃〜150℃間、より一般には約90℃〜135℃間、最も一般には約95℃〜130℃間の環球法による軟化点を有するであろう。2種又はそれ以上の粘着付与樹脂の混合物が、配合物では望ましいこともある。
【0023】
有用な粘着付与樹脂には、天然及び変性ロジン(例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トールオイルロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量体ロジン、樹脂酸塩、及び重合ロジンを含む);天然及び変性ロジンのグリセロール及びペンタエリトリトールエステル(例えば、ペールウッドロジン(pale wood rosin)のグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのペンタエリトリトールエステル、及びロジンのフェノール変性ペンタエリトリトールエステルを含む);天然テルペンの共重合体及び三元共重合体(例えば、スチレン/テルペン及びαメチルスチレン/テルペンを含む);ASTM method E28−58Tにより決定されるような、約70℃〜150℃の軟化点を有するポリテルペン樹脂;フェノール変性テルペン樹脂及びその水素化誘導体(例えば、酸性媒体中での二環式テルペンとフェノールの縮合から生じる樹脂生成物を含む);約70℃〜135℃の環球法による軟化点を有する脂肪族石油炭化水素樹脂;芳香族石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体;並びに脂環式石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体等の任意の相溶性樹脂又はその混合物が含まれる。また、環式又は非環式C樹脂及び芳香族変性非環式又は環式樹脂も含まれる。本発明に用いることができる市販のロジン及びロジン誘導体の例として、Arizona Chemicalから入手可能なSYLVALITE RE−110、SYLVARES RE 115、SYLVARES RE 104及びSYLVARES ZT 106;DRTのDertocal 140;Arakawa ChemicalのLimed Rosin No.1、GB−120、及びPencel Cを例示できる。市販のフェノール/芳香族変性テルペン樹脂の例は、Arizona Chemicalから入手可能な、Sylvares TP 2040 HM、Sylvares ZT−106、及びSylvares TP 300である。
【0024】
いくつかの態様では、前記粘着付与剤は合成炭化水素樹脂である。合成炭化水素樹脂には、脂肪族又は脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、芳香族変性の脂肪族又は脂環式炭化水素及びその混合物が含まれる。また、上述の合成炭化水素樹脂の水素化型も含まれる。
【0025】
脂肪族オレフィン誘導樹脂、例えばGoodyearからWingtack(登録商標) Extraという商品名で入手可能なもの及びExxonのEscorez(登録商標) 1300シリーズを例示することができるが、これらの例に限定されるものではない。この種において一般的なC炭化水素誘導粘着付与樹脂は、95℃より高い軟化点を有するピペリレンと2−メチル−2−ブテンのジエン−オレフィン共重合体である。この樹脂は、Wingtack 95という商品名で市販されている。約100〜約120℃の軟化点を有する水素化シクロペンタジエン系粘着付与剤であるEastotac Hl15(Eastman Chemicalから入手可能)は、特に好ましい粘着付与剤である。
【0026】
また、C芳香族変性C炭化水素誘導粘着付与剤も有用である。かかる粘着付与剤は、Sartomer及びCray ValleyからNorsoleneという商品名で、またTK芳香族炭化水素樹脂のRutgersシリーズから入手可能である。Norsolene M1090は、95〜110℃の環球法による軟化点を有する低分子量熱可塑性炭化水素重合体であり、Cray Valleyから市販されている。
【0027】
これらの接着剤の高温性能を改善するために、少量のアルキルフェノール系粘着付与剤を詳細に上述したような追加の粘着付与剤とブレンドすることができる。全配合物の20重量%未満で添加されるアルキルフェノール類は相溶性であり、適切な組合せで高温接着剤性能が向上する。アルキルフェノール類はArakawa ChemicalからTamanolという商品名で、またSchenectady Internationalからいくつかの製品ラインで市販されている。
【0028】
本発明で使用するために好適なワックスには、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、副生ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックス、酸化フィッシャー−トロプシュワックス並びに官能化ワックス(例えば、ヒドロキシステアルアミドワックス及び脂肪アミドワックス等)が含まれる。高密度低分子量ポリエチレンワックス、副生ポリエチレンワックス及びフィッシャー−トロプシュワックスは、当技術分野では、合成高融点ワックスと通常呼ばれる。また、変性ワックスには、ビニルアセテート変性ワックス(AC−400(Honeywell)及びMC−400(Marcus Oil Companyから入手可能)等)、無水マレイン酸変性ワックス(Epolene C−18(Eastman Chemicalから入手可能)並びにAC−575A及びAC−575P(Honeywellから入手可能)等)並びに酸化ワックスが含まれる。これらも本発明に有用である。Shell Lubricants, Houston, TXから入手可能なCallista(登録商標) 122、158、144、435、及び152;Sasol-SA/Moore&Munger, Shelton, CNから入手可能なフィッシャー−トロプシュワックスであるParaflint(登録商標)C-80並びにParaflint(登録商標)H-1、H-4及びH-8もまた、本発明を実施するときに使用するために好ましいワックスである。
【0029】
本発明に用いることができるパラフィンワックスには、Citgo Petroleum, Co., Houston, TXから入手可能なPacemaker(登録商標) 30、32、35、37、40、42、45 & 53;Astor Wax Corporation, Doraville, GA.から入手可能なOkerin(登録商標) 236 TP;Pennzoil Products Co., Houston, TX.から入手可能なPenreco(登録商標) 4913;Moore & Munger, Shelton, CN.から入手可能なR−7152パラフィンワックス;及びInternational Waxes, Ltd. in Ontario, Canadaから入手可能なパラフィンワックス1297;Moore and Mungerから入手可能なR−2540;並びにCP Hall (Stow, Ohio)から入手可能な、CP Hallから製品記号1230、1236、1240、1245、1246、1255、1260、&1262で入手可能なもの等の他のパラフィン系ワックスが含まれる。
【0030】
本発明に有用なマイクロクリスタリンワックスは、30〜100個の炭素長を有するシクロアルカン又は分枝アルカンを50重量%以上有するものである。これらのようなマイクロクリスタリンワックスは、一般的に、パラフィン及びポリエチレンワックスよりも結晶性が低く、約70℃より高い融点を有する。例としては、Tulsa, OK.所在のPetrolite Corp.から入手可能な融点70℃のワックスであるVictory(登録商標) Amber Wax;Chicago, IL.のBarecoから入手可能な融点70℃のワックスであるBareco(登録商標) ES-796 Amber Wax;Astor Wax Corp.から入手可能な融点80℃のワックスであるOkerin(登録商標) 177;両方共Tulsa, OK.のPetrolite Corp.から入手可能な融点80℃及び90℃のマイクロクリスタリンワックスであるBesquare(登録商標) 175及び195 Amber Waxes;Smethport, PA.所在のIndustrial Raw Materialsから入手可能な融点90℃のワックスであるIndramic(登録商標) 91;並びにNew York, N.Y.所在のPetrowax PA, Inc.から入手可能な融点90℃ワックスであるPetrowax(登録商標) 9508 Lightが挙げられる。
【0031】
この範疇に入る例示的な高密度低分子量ポリエチレンワックスには、Petrolite, Inc. (Tulsa, Okla.)からPolywax(登録商標) 500、Polywax(登録商標) 1500及びPolywax(登録商標) 2000として入手可能なエチレン単独重合体が含まれる。Polywax(登録商標) 2000は、分子量およそ2000、Mw/Mnおよそ1.0、16℃での密度約0.97g/cm、及び融点およそ126℃を有する。
【0032】
ワックスは、一般的に、本発明の配合物中に、約5〜約60重量%、より好ましくは約10〜約45重量%、更に好ましくは約20〜約40重量%の量で存在するであろう。好ましいワックスは、120°F〜250°Fの間、より好ましくは150°F〜230°Fの間、最も好ましくは180°F〜220°Fの間の溶融(又は融解)温度を有する。
【0033】
官能化メタロセンポリエチレン共重合体は、非官能化メタロセンポリエチレン共重合体より、幅広い範囲の物質とよりよい相溶性を示し、良好な性能特性を有する低塗布温度接着剤を調製するために使用できることが、今回見出された。
【0034】
本発明の接着剤は、必要に応じて、安定剤又は酸化防止剤も含んでよい。これらの化合物は、熱、光、又は粘着付与樹脂等の原材料からの残留触媒等によって誘起される酸素との反応で生ずる分解から本発明の接着剤を保護するために加えられる。
【0035】
本発明で含まれる使用可能な安定剤又は酸化防止剤には、高分子量ヒンダードフェノール及び多官能性フェノール(例えば、硫黄及びリン含有フェノール等)がある。ヒンダードフェノールは当業者には周知であり、そのフェノール性ヒドロキシル基のごく近くに、立体的に嵩高い基も含むフェノール化合物として特徴づけることができる。特に、一般的には、第3ブチル基が、フェノール性ヒドロキシル基に対する少なくとも1つのオルト位のベンゼン環上に置換される。このフェノール性ヒドロキシル基の近くのこれらの立体的に嵩高い置換基の存在は、その伸縮振動数、対応するその反応性を遅らせるように働き;そのため、この障害によってフェノール化合物にその安定化特性が付与される。代表的なヒンダードフェノールとしては;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン;ペンタエリトリチルテトラキス−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート;n−オクタデシル−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート;4,4’−メチレンビス(2,6−tert−ブチル−フェノール);4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール);2,6−ジ−tertブチルフェノール;6−(4−ヒドロキシフェノキシ)−2,4−ビス(n−オクチル−チオ)−1,3,5−トリアジン;ジ−n−オクチルチオ)エチル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート;及びソルビトールヘキサ[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)−プロピオネート]を例示できる。
【0036】
これらの酸化防止剤の性能は、それらとともに、公知の相乗剤(又は協力薬)(例えば、チオジプロピオネートエステル及びホスファイト等)を利用することによって更に高めることができる。ジステアリルチオジプロピオネートが特に有用である。これらの安定剤は、用いる場合、一般的に、約0.1〜1.5重量%、好ましくは0.25〜1.0重量%の量で存在する。
【0037】
かかる酸化防止剤は、Ciba-Geigy, Hawthorne, NYから市販されており、それらにはヒンダードフェノールであるIrganox(登録商標) 565、1010及び1076が含まれる。これらは、ラジカルスカベンジャーとして作用する一次酸化防止剤であり、単独で又は他の酸化防止剤(例えばCiba-Geigyから入手可能なIrgafos(登録商標) 168のようなホスファイト酸化防止剤)と組み合わせて用いてよい。ホスファイト触媒は二次触媒と考えられており、一般的に単独では用いられない。これらは、主として過酸化物分解剤として用いられる。他の利用可能な触媒は、Stamford, CN.のCytec Industriesから入手可能なCyanox(登録商標) LTDP、及びBaton Rouge, LAのAlbemarle Corp.から入手可能なEthanox(登録商標) 1330である。多くのかかる酸化防止剤は、単独で又は他のかかる酸化防止剤と組み合わせて用いるために利用できる。これらの化合物は、ホットメルトに少量で加えられ、他の物理的特性には影響を及ぼさない。添加することができ、物理的特性に影響を及ぼさない他の化合物を、いくつかのみ例示すると、色を加える顔料(又は色素)、又は蛍光剤である。これらのような添加剤は当業者には公知である。
【0038】
前記接着剤の意図された最終用途に応じて、ホットメルト接着剤に通常添加される他の添加剤(例えば、可塑剤、顔料、色素、染料及び増量剤、充填剤等)を含んでよい。更に、少量の追加の粘着付与剤及び/又はワックス(例えば、マイクロクリスタリンワックス、水添ヒマシ油及びビニルアセテート変性合成ワックス等)もまた、少量、即ち約10重量%まで、本発明の配合物に組み込んでよい。
【0039】
本発明の接着剤の特に好ましい態様は、約20〜約40重量%の官能化メタロセンポリエチレン共重合体、約20〜約40重量%のワックスと、約20〜約40重量%の粘着付与剤を含んでなるであろう。
【0040】
本発明の接着剤組成物は、前記溶融物(又はメルト)中の成分を約200°Fより高い温度で、一般的に、約280°Fで、均質なブレンドが得られるまで、ブレンドすることにより調製する。通常は2時間で十分である。様々なブレンド方法が当技術分野で公知であり、均質なブレンドをもたらすいかなる方法も満足できるものである。
【0041】
低温で塗布するために、即ち約200°F〜約300°Fの温度で、より一般には約250°Fで塗布することができる配合物に、前記接着剤を配合して、優れた熱応力と低温接着性を有するホットメルト接着剤を提供することが望ましい。
【0042】
本発明の接着剤組成物は、一般に、250°Fで約700cP〜約2000cPの範囲の粘度を有する。
【0043】
基材表面に事前に塗布することが意図され、その後再活性化される接着剤であって、その再活性化される接着剤を含む基材を第2基材に結合できるように再活性化される接着剤は、再活性化を促進するための成分を望ましくは含むことができる。好ましい再活性化可能接着剤は、放射エネルギーに短期間曝すことで再活性化するように配合される。この態様では、前記接着剤はエネルギー吸収成分(例えば、染料、顔料及び色素等)を含有し、近赤外吸収染料、顔料及び色素が特に好ましい。
【0044】
接着剤はまた、超音波エネルギーを用いる再活性化のために配合することもできる。好ましい接着剤は、約15キロヘルツ〜約40キロヘルツの周波数を有する超音波エネルギーに曝すことでよく反応するであろう。結合すべき基材は、それらの間に挟まれた接着剤と合わせられ、ブースターを備えた超音波ホーンに押し付けられる。
【0045】
本発明のホットメルト接着剤は、耐寒性に加えて各段に高い耐熱性が重要であるケース密閉用途において、即ち熱間充填包装用途;例えば、引き続いて冷蔵又は冷凍に供される溶融チーズ、ヨーグルト又は焼きたての食品を包装するときに用いられるカートン、ケース、又はトレイについて、並びに出荷及び保存中に高応力及び不利な環境条件に曝されることが多い段ボールケース(又は段ボール箱:corrugated cases)についての密閉(又はシール)及び閉鎖操作において特に有用である。
【0046】
本発明のホットメルト接着剤は、包装、加工、タバコ製造、製本、バッグエンディング(bag ending)、そして不織布市場における用途がある。前記接着剤は、ケース、カートン、及びトレイ形成用接着剤として、そして密閉用接着剤として(例えば穀物食品、クラッカー及びビール製品の包装におけるヒートシール用途を含む)の具体的用途がある。容器、例えば、カートン、ケース、ボックス、バッグ、トレイ等、その製造業者によって、包装業者に出荷する前に、前記接着剤が塗布されるものは、本発明に含まれる。容器は、包装後にヒートシールされる。前記接着剤は、不織布物品の製造においても特に有用である。前記接着剤は、構造用接着剤として、位置決め接着剤として、そして、例えば、おむつ、女性用衛生パッド(従来の生理用ナプキン及びパンティライナーを含む)等の製造における弾性接着用途に使用することができる。
【0047】
結合すべき基材には、未使用及び再生クラフト紙、高及び低密度クラフト紙、チップボード(ボール紙又は合板)並びに様々な種類の加工及びコートクラフト紙及びチップボードが含まれる。例えば、アルコール飲料の包装等の包装用途には複合材料も用いられる。これらの複合材料は、アルミニウム箔に貼り合わされたチップボードを含んでよく、このアルミニウム箔は、例えば、ポリエチレン、マイラー、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、エチレンビニルアセテート及び様々な他の種類のフィルム等のフィルム材料に更に貼り合わされる(又は積層される)。更に、これらのフィルム材料はまた、チップボード又はクラフト紙に直接結合してもよい。非常に多くの種類の基材、とりわけ複合材料には包装産業における有用性があるので、上述の基材は決して網羅的なリストではない。
【0048】
包装用ホットメルト接着剤は、一般的に、ピストンポンプ又は歯車ポンプ押出装置を用いてビード状に基材上に押し出される。ホットメルト塗布装置は、Nordson、ITW及びSlautterbackを含むいくつかの供給業者から入手可能である。ホイールアプリケーターもまた、ホットメルト接着剤を塗布するためによく用いられるが、押出装置よりも用いられる頻度は低い。
【0049】
下記実施例は例示の目的としてのみ示す。配合物中の全ての割合は重量による。
【実施例】
【0050】
例1
285°Fに加熱したシングルブレードミキサー中で、表1及び2に示した成分を均一になるまで一緒に混合することによって、接着剤サンプル1〜6及び比較接着剤サンプルA〜Cを調製した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
例2
サンプル1〜6及び比較サンプルA〜Cを下記試験に供した。
No.27スピンドルを用いてBrookfield社製Thermosel粘度計でホットメルト接着剤の溶融粘度を測定した。
【0054】
250°Fで1/2インチ幅の接着剤ビードを2インチ×3インチのダブルフルート段ボール紙(double fluted corrugate board)片に塗布し、直ちに第2の段ボール紙(corrugated board)片を接触させて結合(又は接合)させることによって、室温及び40°Fにおける接着性を測定した。結合上部に直ちに200gのおもりを2秒間置いて圧縮した。調製した試験片を室温で一晩状態を調節(又は養生)した後、オーブン又は冷蔵庫中に異なる温度で24時間入れた。結合を手で引き離し、生じた繊維引裂けを記録した。
【0055】
熱応力は、応力を受けた結合が破壊する温度であると定義される。2つの異なる熱応力試験を評価した:熱応力試験A及び熱応力試験B
【0056】
熱応力試験Aは、特定寸法の2枚の段ボール板紙(corrugated paperboard)片の間に接着剤の複合構造(2×1/2インチ 圧縮)を形成することによって評価した。少なくとも2回の測定を行った。この複合材料を形成する接着剤ビードを、次いで、およそ300gの片持ち梁応力下に、135°F、140°F及び145°Fで、8時間及び24時間置いた。この試験結果を、合格(両方の接合が合格であった(P))、不合格(両方の接合が不合格であった(F))又はスプリット(split)(一方の結合が合格であり、他方が不合格であった(S))と記録した。
【0057】
熱応力試験Bは、熱応力試験Aと同様に行ったが、およそ96gの片持ち梁応力を用いて、105°F、110°F及び115°Fで、24時間行った。
【0058】
接着剤の色と曇り点も書き留めた。
上記試験の結果を表3及び4に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
結果から、250°Fの低温で塗布した場合、官能化メタロセンポリエチレン共重合体に基づく接着剤(サンプル1〜6)は、非官能化メタロセンポリエチレン共重合体に基づく接着剤である比較サンプルA〜Cより、はるかに優れた熱応力を有することが明らかである。これらの結果はまた、250°Fの低温で塗布した場合、官能化メタロセンポリエチレン共重合体に基づく接着剤(サンプル1〜6)は、官能化変性ワックスと非官能化メタロセンポリエチレン共重合体で作られた接着剤(比較サンプルB及びC)より、はるかに優れた熱応力を有することも示した。
【0062】
当業者には明らかであるように、本発明の多くの修飾及び変形を、その精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載した特定の実施形態はほんの一例として示しており、本発明は、添付の特許請求の範囲によって権利が与えられる等価物の全範囲とともに、かかる特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化メタロセンポリエチレン共重合体を含んで成るホットメルト接着剤。
【請求項2】
官能化メタロセンポリエチレン共重合体は、アクリル酸、アセテート、スルホネート、無水マレイン酸、フマル酸及びそれらの混合物から成る群から選択される官能基を含む請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
官能基は、無水マレイン酸である請求項2に記載の接着剤。
【請求項4】
官能基は、フマル酸である請求項2に記載の接着剤。
【請求項5】
官能化メタロセンポリエチレン共重合体は、非官能化メタロセンポリエチレン共重合体の重量を基準として、約0.3〜約8重量%の官能基を含む請求項2に記載の接着剤。
【請求項6】
官能化メタロセンポリエチレン共重合体は、非官能化メタロセンポリエチレン共重合体の重量を基準として、約0.5〜約3重量%の該官能基を含む請求項5に記載の接着剤。
【請求項7】
更に、粘着付与剤を含む請求項1に記載の接着剤。
【請求項8】
粘着付与剤は、変性ロジン粘着付与剤、C炭化水素誘導粘着付与剤、C芳香族変性C炭化水素誘導粘着付与剤及びそれらの混合物から成る群から選択される請求項7に記載の接着剤。
【請求項9】
更に、ワックスを含む請求項7に記載の接着剤。
【請求項10】
ワックスは、パラフィンワックス、合成ワックス、マイクロクリスタリンワックス及びそれらの混合物から成る群から選択される請求項9に記載の接着剤。
【請求項11】
ワックスは、パラフィンワックスである請求項10に記載の接着剤。
【請求項12】
ワックスは、合成ワックスである請求項10に記載の接着剤。
【請求項13】
更に、充填剤、可塑剤、顔料、色素、染料又はそれらの混合物を含んで成る請求項9に記載の接着剤。
【請求項14】
更に、非官能化メタロセンポリエチレン共重合体を含んで成る請求項9に記載の接着剤。
【請求項15】
下記成分:
(a)成分の合計の重量を基準として、約20〜約50重量%の無水マレイン酸変性官能化メタロセンポリエチレン共重合体成分;
(b)成分の合計の重量を基準として、約20〜約40重量%のワックス成分;及び
(c)成分の合計の重量を基準として、約20〜約45重量%の粘着付与剤成分、
を含んで成る接着剤であって、
該無水マレイン酸変性官能化メタロセンポリエチレン共重合体は、非官能化メタロセンポリエチレン共重合体の重量を基準として、約0.3〜約8重量%の無水マレイン酸官能基を含む接着剤。
【請求項16】
請求項15に記載の接着剤を含んで成る製造品。
【請求項17】
カートン、ケース、トレイ、バッグ、本、又は不織布構造品である請求項16に記載の製造品。
【請求項18】
請求項15に記載したホットメルト接着剤を用いて、ケース、カートン、トレイ、バッグ又は本をシールする及び/又は形成することを含むケース、カートン、トレイ、バッグ又は本をシールする及び/又は形成する方法。
【請求項19】
請求項15に記載した接着剤を含むケース、カートン、トレイ又はバッグの中に含まれる包装された物品。
【請求項20】
基材を同種の又は異種の基材と結合する方法であって、
少なくとも一方の基材に溶融したホットメルト接着剤組成物を塗布すること、及び該基材同士を結合することを含む方法であって、
該ホットメルト接着剤は、無水マレイン酸官能化メタロセンポリエチレン共重合体、粘着付与剤及びワックスを含む方法。

【公表番号】特表2010−518235(P2010−518235A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549189(P2009−549189)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/052905
【国際公開番号】WO2008/097898
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】