説明

ホットメルト接着剤

【課題】低温塗工可能で、耐熱性に優れ、適切な長さのオープンタイムを有するホットメルト接着剤を提供する。更に、そのようなホットメルト接着剤を用いて製造された紙製品を提供する。
【解決手段】(A)エチレン系共重合体及び(B)ワックスを含むホットメルト接着剤であって、(B)ワックスは、(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスを含むホットメルト接着剤は、低温塗工可能で、耐熱性に優れ、適切な長さのオープンタイムを有する。更に、本発明のホットメルト接着剤を用いて製造される紙製品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関する。更に、本発明は、そのホットメルト接着剤を用いて得られる紙製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、無溶剤の接着剤であり、加熱溶融することで被着体に塗工後、冷却することで固化して接着性を発現するので、瞬間接着及び高速接着が可能であるという特徴を有し、例えば、紙加工、木工、衛生材料及び電子分野等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
上記ホットメルト接着剤のベースポリマーとして、その用途に応じて、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」ともいう)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(以下、「EEA」ともいう)等のエチレン系共重合体や、ポリエチレン、ポリプロピレン、無定形ポリアルファオレフィン(以下、「APAO」ともいう)等のオレフィン系樹脂、スチレン系ブロック共重合体(例えば、スチレン−イソプレン−スチレン系ブロックコポリマー(以下、「SIS」ともいう)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ブロックコポリマー(以下、「SBS」ともいう)及びそれらの水素添加物等の合成ゴム、及びポリウレタン等が汎用されている。
【0004】
これらのホットメルト接着剤のなかで、エチレン系共重合体をベースポリマーとしたホットメルト接着剤は、製本及び包装等の紙加工分野や木工分野に利用されることが多い。
特許文献1は、EVA樹脂をベースポリマーとするホットメルト接着剤に言及する。特許文献1のホットメルト接着剤は、糸曳き性が改良され(即ち、糸曳き性が低減され)、包装分野に好適な接着剤であることが開示されている(特許文献1[0011]参照)。
特許文献2は、包装、製本及び木工等に用いられるエチレン/C3〜C20のα−オレフィン共重合体をベースポリマーとするホットメルト接着剤を開示する(特許文献2請求項1及び[0013]参照)。特許文献2のホットメルト接着剤も、特許文献1のホットメルト接着剤と同様に、糸曳き性が改良されたことが開示されている(特許文献2[0038]参照)。
【0005】
しかし、特許文献1及び2のホットメルト接着剤は、糸曳き性を低減するために、高温(約180℃)で基材に塗工されなければならないので、低温(約120〜約140℃)で基材に塗工する接着剤として適していなかった(特許文献1[0042]、特許文献2[0037]参照)。ホットメルト接着剤を高温で基材に塗工することは、基材の種類や接着剤の組成に応じて、塗工ラインに悪影響を与えることがあるので好ましくない。従って、約120〜約140℃の低温で基材に塗工できるホットメルト接着剤の開発が進められている。
【0006】
特許文献3は、低温塗工可能なエチレン系ホットメルト接着剤を開示する(特許文献3[0061]参照)。しかし、一般的に、低温塗工可能なホットメルト接着剤は、耐熱性に乏しい。近年、ユーザーは、低温塗工可能で、かつ、耐熱性にも優れるホットメルト接着剤を求めている。
特許文献3は、ホットメルト接着剤の耐熱性を向上させるために、特定のポリマー(即ち、官能化メタロセン重合体)をベースポリマーとして使用することを開示する(特許文献3請求項1及び表1参照)。しかし、特許文献3のホットメルト接着剤は、ユーザーが要求する極めて高い耐熱性を十分に満足するものではなかった。
【0007】
更に、基材の濡れや、複雑な形状の基材への塗工を考慮すると、ホットメルト接着剤には、適切な長さのオープンタイムが要求される。ホットメルト接着剤のオープンタイムは、短すぎると、基材に被着体を貼り付けることが困難となる。
このように、ホットメルト接着剤には、低温塗工が可能であり、かつ、耐熱性に優れ、更に、適切な長さのオープンタイムを有し塗工に好適であることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−61067号公報
【特許文献2】特表2008−527067号公報
【特許文献3】特表2010−518235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、本発明の目的は、低温塗工可能で、耐熱性に優れ、適切な長さのオープンタイムを有するホットメルト接着剤を提供することである。更に、そのようなホットメルト接着剤を用いて製造された紙製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、エチレン系共重合体に特定のワックスを配合すると、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
即ち、本発明は、一の要旨において、
(A)エチレン系共重合体及び(B)ワックスを含むホットメルト接着剤であって、
(B)ワックスは、(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスを含むホットメルト接着剤を提供する。
【0011】
本発明の一の態様において、(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスは、無水マレイン酸で変性されたオレフィン共重合体ワックスである上述のホットメルト接着剤を提供する。
上記無水マレイン酸で変性されたオレフィン共重合体ワックスは、無水マレイン酸、エチレン及びプロピレンが共重合することで得られるワックスであることが好ましい。
【0012】
本発明の他の態様において、(A)エチレン系共重合体は、(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体を含む上述のホットメルト接着剤を提供する。
上記(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体は、エチレンとオクテンとの共重合体であることが好ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様において、(B)ワックスは、更に、(B2)フィッシャートロプシュワックスを含む上述のホットメルト接着剤を提供する。
上述の本発明に係るホットメルト接着剤は、130℃での溶融粘度が500〜1100mPa・sであることが好ましい。
更に本発明は、上述のホットメルト接着剤を用いて製造される紙製品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)エチレン系共重合体及び(B)ワックスを含むホットメルト接着剤であって、(B)ワックスは、(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスを含むので、約120〜約140℃の低温塗工可能で、耐熱性に優れ、適切な長さのオープンタイムを示す。
【0015】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスが、無水マレイン酸で変性されたオレフィン共重合体ワックスである場合、より低温塗工に優れる。
本発明に係るホットメルト接着剤は、無水マレイン酸で変性されたオレフィン共重合体ワックスが、無水マレイン酸、エチレン及びプロピレンが共重合することで得られるワックスである場合、特に低温塗工に優れ、優れた耐熱性を維持しつつ、より適切な長さのオープンタイムを示す。
【0016】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)エチレン系共重合体が、(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体を含む場合、低温塗工性、耐熱性及びオープンタイムのバランスに優れる。
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体が、エチレンとオクテンとの共重合体である場合、更に、低温塗工性、耐熱性、オープンタイムのバランスにより優れる。
【0017】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(B)ワックスが、更に、(B2)フィッシャートロプシュワックスを含む場合、特に耐熱性に優れる。
本発明に係るホットメルト接着剤は、130℃での溶融粘度が500〜1100mPa・sである場合、より低温塗工性に優れる。
【0018】
本発明に係る紙製品は、上述のホットメルト接着剤を用いることで製造されるので、低温塗工ラインで製造される。従って、ホットメルト接着剤の塗工ラインや基材である紙が、悪影響を受けることはない。更に、ホットメルト接着剤のオープンタイムの長さが適切なので、紙製品の貼り合わせの製造工程に時間的な余裕を持たせることができる。
尚、本明細書において「オープンタイム」とは、ホットメルト接着剤を被着体へ塗工したときから、接着剤の流動性がなくなり被着体表面を濡らすことができなくなる迄の時間をいう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)エチレン系共重合体及び(B)ワックスを含み、(B)ワックスが、(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスを含む。
本明細書において「ホットメルト接着剤」とは、常温で固形であるが、加熱して融解することで流動性を有し、例えば、基材、被着体等の対象物に塗工することができ、冷却することで硬化し接着する接着剤をいう。
【0020】
本発明において「(A)エチレン系共重合体」とは、エチレンと、その他の重合性単量体との共重合体であって、重量平均分子量が15000以上のものをいう。
本発明では、(A)エチレン系共重合体と(B)ワックスとは、重量平均分子量で区別される。尚、重量平均分子量は、ポリスチレン標準でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値を意味する。具体的には、下記のGPC装置及び測定方法を用いて値を測定することができる。GPC装置は、東ソー社製のHCL−8220GPCを用い、検出器として、RIを用いる。GPCカラムとして、東ソー社製のTSKgel SuperMultipore HZ−M 2本を用いる。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を0.35ml/min、カラム温度を40℃にて流し、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量の換算を行い、重量平均分子量を求める。
【0021】
「その他の重合性単量体」とは、エチレンと付加重合することができる炭素原子間二重結合を有する単量体をいう。
「その他の重合性単量体」とは、具体的には、例えば、「エチレンを除くオレフィン系炭化水素」、「エチレン性二重結合を有するカルボン酸」、「エチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物」及び「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」をいう。
「エチレンを除くオレフィン系炭化水素」として、具体的には、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、cis−2−ブテン、trans−2−ブテン、イソブチレン、cis−2−ペンテン、trans−2−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン及び2,3−ジメチル−2−ブテン等を例示できる。
【0022】
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸」とは、エチレン性二重結合とカルボキシル基を有する化合物であって、本発明のホットメルト接着剤を得ることができれば特に限定されることはない。具体的には、例えば、オレイン酸、リノール酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アクリル酸及びメタクリル酸等を例示できる。
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物」とは、2つのカルボキシル基が脱水縮合したカルボン酸無水物基を有する化合物であり、本発明のホットメルト接着剤を得ることができれば特に限定されることはない。具体的には、例えば、無水マレイン酸等を例示することができる。
【0023】
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル及び酢酸アリル等のカルボン酸ビニル及びアリルエステル等を例示することができる。
これらの「その他の重合性単量体」は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0024】
本明細書では、その他の重合性単量体が「エチレンを除くオレフィン系炭化水素」である場合、(A)エチレン系共重合体は、「(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体」を含み、その他の重合性単量体が「エチレン性二重結合を有するカルボン酸」である場合、(A)エチレン系共重合体は、「(A2)エチレンとカルボン酸との共重合体」を含み、その他の重合性単量体が「エチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物」である場合、(A)エチレン系共重合体は、「(A3)エチレンとカルボン酸無水物との共重合体」を含み、その他の重合性単量体が「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」である場合、(A)エチレン系共重合体は、「(A4)エチレンとカルボン酸エステルとの共重合体」を含む。
【0025】
本発明では、(A)エチレン系共重合体は、(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体を含むことが好ましい。従って、「その他の重合性単量体」は「エチレンを除くオレフィン系炭化水素」であることが好ましく、プロピレン、ブテン、オクテンであることがより好ましく、オクテンであることが特に好ましい。
【0026】
(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体として、例えば、エチレンとオクテンとの共重合体、エチレン、プロピレン、1−ブテンとの共重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンとブテンとの共重合体等が好ましく、エチレンとオクテンとの共重合体、エチレン、プロピレン、1−ブテンとの共重合体がより好ましく、エチレンとオクテンとの共重合体が特に好ましい。このような(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体は、単独又は組み合わせて使用することができる。(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体として市販品を使用することができる。
【0027】
「エチレン、プロピレン、1−ブテンとの共重合体」として、例えば、エボニックデグサ社製のベストプラスト730(商品名)、ベストプラスト708(商品名)等を例示できる。
「エチレンとオクテンとの共重合体」として、例えば、ダウ・ケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名)、アフィニティGA1950(商品名)、アフィニティEG8185(商品名)、アフィニティEG8200(商品名)、エンゲージ8137(商品名)、エンゲージ8180(商品名)、エンゲージ8400(商品名)等を例示できる。
「エチレンとプロピレンとの共重合体」として、例えば、イーストマンケミカル社製のEastoflex E1016PL-1等を例示できる。
【0028】
本発明では、(A)エチレン系共重合体は、(A1)以外に、上述した(A2)〜(A4)から選ばれた少なくとも1種を含んでよい。(A2)〜(A4)の中では、(A4)がより好ましい。(A2)〜(A4)も、市販品を使用することができ、単独で又は組み合わせて使用することができる。
(A2)として、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ヒドロキシステアリン酸共重合体を例示できる。
(A3)として、例えば、エチレン−無水マレイン酸共重合体を例示できる。
(A4)として、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−2エチルヘキシルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルメタクリレート共重合体等を例示できる。(A4)として、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体がより好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【0029】
(A)エチレン系共重合体のメルトフローレートは、10〜600g/10minであることが好ましく、10〜500g/10minであることが特に好ましい。メルトフローレートが10〜600g/10minであることによって、接着力、耐熱性、低温塗工性のバランスに優れたホットメルト接着剤が得られる。
本明細書において、「メルトフローレート」とは、樹脂の流動性を示す指数を意味し、ヒーターで加熱された円筒容器内で一定量の合成樹脂を、定められた温度(190℃)で加熱・加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間あたりに押出された樹脂量を測定して求める。単位:g/10minが使用される。試験機械はJIS K6769で規定された押出し形プラストメータを用い、JIS K7210で規定されている測定方法で測定する。
【0030】
(A)エチレン系共重合体は、好ましくは10〜40g/10minのメルトフローレートを有する(A1)〜(A4)、より好ましくは(A1)、特に好ましくは、エチレンとオクテンとの共重合体を含む。10〜40g/10minのメルトフローレートを有する(A)エチレン系共重合体として、例えば、いずれもエチレンとオクテンとの共重合体であるダウ・ケミカル社製のエンゲージ8137(商品名)及びエンゲージ8400(商品名)を例示できる。本発明のホットメルト接着剤は、10〜40g/10minのメルトフローレートを有する(A)エチレン系重合体を含む場合、低温塗工性を維持し、かつ、耐熱性に優れる。
【0031】
尚、(A)エチレン系共重合体は、上述の10〜40g/10minのメルトフローレートを有する(A)エチレン系共重合体と、400〜600g/10minのメルトフローレートを有する(A)エチレン系重合体との組み合わせであってよい。
400〜600g/10minのメルトフローレートを有する(A)エチレン系重合体は、(A1)〜(A4)であることが好ましく、(A1)及び(A4)であることがより好ましい。400〜600g/10minのメルトフローレートを有する(A1)として例えば、エチレンとオクテンとの共重合体であるダウ・ケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名)、アフィニティGA1950(商品名)、アフィニティEG8185(商品名))、及び400〜600g/10minのメルトフローレートを有する(A4)として、例えば、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体である東ソー社製のウルトラセン722(商品名)、デュポン社製のEvaflex210(商品名)及びエチレンとメチルメタクリレートである住友化学社製のアクリフトCM5021(商品名)、アクリフトCM5022(商品名)等を例示できる。
【0032】
本発明における「(B)ワックス」は、(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスを含む。尚、本明細書で「ワックス」とは、常温で固体、加熱すると液体となる重量平均分子量が10000未満の有機物であり、一般的に「ワックス」とされているものをいい、ワックス状の性質を有するものであれば、本発明に係るホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。
【0033】
本発明において、「(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックス」とは、カルボン酸又はカルボン酸無水物で、化学的又は物理的に加工されたオレフィン共重合体ワックスをいい、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。化学的、物理的加工として、例えば、酸化、重合、配合、合成等を例示できる。
そのような(B1)ワックスとして、例えば、カルボン酸又はカルボン酸無水物がオレフィン共重合体ワックスにグラフト重合することで得られるワックス;及びオレフィン共重合体ワックスを重合により合成する際に、カルボン酸又はカルボン酸無水物を共重合することで得られるワックスを例示することができる。
【0034】
従って、種々の反応を用いて、カルボン酸又はカルボン酸無水物が「オレフィン共重合体ワックス」に導入されて、結果的に変性されたオレフィン共重合体ワックスであって良い。
オレフィン共重合体ワックスを変性するための「カルボン酸」及び/又は「カルボン酸無水物」は、本発明のホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0035】
カルボン酸又はカルボン酸無水物として、具体的には、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、イタコン酸、アクリル酸及びメタクリル酸等を例示できる。これらのカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物は単独で又は組み合わせて使用してよい。マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0036】
カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性される「オレフィン共重合体ワックス」とは、二種以上のオレフィンが共重合して得られるワックスをいい、本発明が目的とする(B1)ワックスを得ることができる限り、特に限定されるものではない。従って、一種のオレフィンが単独重合したワックスは、オレフィン共重合体ワックスに含まれない。
オレフィン共重合体ワックスとして、具体的には、例えば、ポリエチレン/ポリプロピレンワックス、ポリエチレン/ポリブチレンワックス、ポリエチレン/ポリブテンワックス等を例示することができ、ポリエチレン/ポリプロピレンワックスが好ましい。
従って、本発明における(B1)ワックスとして、無水マレイン酸で変性されたポリエチレン/ポリプロピレンワックスが特に好ましい。無水マレイン酸で変性されたポリエチレン/ポリプロピレンワックスは、無水マレイン酸、エチレン、プロピレンを共重合することで得ることができる。
【0037】
「(B)ワックス」は、(B1)ワックス以外に、ベースワックスを含むことができ、そのようなベースワックスとして、具体的には、例えば、
フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン/ポリプロピレンワックス)等の合成ワックス;
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス;
カスターワックスなどの天然ワックス
等を例示することができる。
【0038】
上述のベースワックスは、変性されていてもよい。変性する物質として、極性基を導入できれば、各種カルボン酸誘導体であっても差し支えない。そのような「カルボン酸誘導体」として、下記のものを例示することができる:
酢酸エチル、酢酸ビニル等のカルボン酸エステル;
臭化ベンゾイル等の酸ハロゲン化物;
ベンズアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド;
スクシンイミド等のイミド;
アジ化アセチル等のアジ化アシル;
プロパノイルヒドラジド等のヒドラジド;
クロロアセチルヒドロキサム酸等のヒドロキサム酸;
γ-ブチロラクトン等のラクトン;
δ-カプロラクタム等のラクタム。
尚、変性されたベースワックスは、(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスを含まない。
【0039】
本発明では、(B)ワックスは、(B1)に加えて、ベースワックスとして記載した(B2)フィッシャートロプシュワックスを含むことが好ましい。「(B2)フィッシャートロプシュワックス」とは、フィッシャートロプシュ法によって合成され、一般的にフィッシャートロプシュワックスとされているものをいう。フィッシャートロプシュワックスは、成分分子が比較的幅広い炭素数分布を持つワックスから成分分子が狭い炭素数分布を持つようにワックスを分取したものである。代表的なフィッシャートロプシュワックスとして、サゾールH1(商品名)及びサゾールC80(商品名)を例示することができ、いずれもサゾールワックス社から市販されている。
【0040】
本発明において、(B1)ワックスの融点は100〜130℃であることが好ましく、ベースワックス、好ましくは(B2)ワックスの融点は60〜90℃であることが好ましい。融点は、ASTM D127に準拠する方法で測定することができる。
【0041】
(B)ワックスの酸価は、5〜200mgKOH/gであることが好ましく、20〜160mgKOH/gであることがより好ましい。酸価は、ASTM D1308又はBWM 3.01Aに準拠する方法で測定することができる。
【0042】
本発明では、(A)エチレン系共重合体と(B)ワックスの合計100重量部当たり、(A)エチレン系共重合体は、30〜70重量部含まれることが好ましく、40〜60重量部含まれることがより好ましく、50〜60重量部含まれることが特に好ましい。
(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体は、(A)エチレン系共重合体と(B)ワックスの合計100重量部当たり、20〜60重量部含まれることが好ましく、20〜50重量部含まれることがより好ましく、30〜50重量部含まれることが特に好ましい。
【0043】
本発明では、(A)エチレン系共重合体と(B)ワックスの合計100重量部当たり、(B)ワックスは、30〜70重量部含まれることが好ましく、40〜60重量部含まれることがより好ましく、50〜60重量部含まれることが特に好ましい。
(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスは、(A)エチレン系共重合体と(B)ワックスの合計100重量部当たり、1.0〜10.0重量部含まれることが好ましく、2.0〜8.0重量部含まれることがより好ましく、3.0〜7.0重量部含まれることが特に好ましい。
【0044】
本発明に係るホットメルト接着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。そのような各種添加剤として、例えば、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定化剤、微粒子充填剤を例示することができる。
【0045】
「粘着付与樹脂」は、ホットメルト接着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されることはない。
そのような粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色〜淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、上述の樹脂等の水素化誘導体が好ましい。
【0046】
粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として例えば、エクソンモービル社製のECR5600(商品名)、丸善石油化学社製のマルカクリヤーH(商品名)、ヤスハラケミカル社製のクリアロンK100(商品名)、荒川化学社製のアルコンM100(商品名)、出光石油化学社製のアイマーブS100(商品名)、アイマーブY135(商品名)、安原化学社製のクリアロンK4090(商品名)及びクリアロンK4100、エクソンモービル社製のECR231C(商品名)、ECR179EX(商品名)、イーストマンケミカル社製のリガライトR7100(商品名)を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0047】
「可塑剤」は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、エチレン系共重合体に相溶し、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを挙げることができる。無色、無臭であるパラフィン系オイルが特に好ましい。
可塑剤として市販品を用いることができる。例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW−90(商品名)、DNオイルKP−68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)を例示することができる。これらの可塑剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0048】
「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。安定化剤として、例えば、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的にホットメルト接着剤に使用されるものであり、後述する目的とする紙製品を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。
【0049】
酸化防止剤として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
安定化剤として、市販品を使用することができる。例えば、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、城北化学社製のJF77(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0050】
本発明のホットメルト接着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法(球状の場合は直径)については特に限定されるものではない。
【0051】
本発明のホットメルト接着剤は、130℃での溶融粘度が500〜1100mPa・sであることが好ましい。130℃での溶融粘度が500mPa・s未満の場合、接着力に劣ることもあり得、130℃の溶融粘度が1100mPa・sを超える場合、130℃での塗工が困難になり得る。本明細書の130℃での溶融粘度とは、27番ローターを用い、ブルックフィールド粘度計、サーモセルを使用して測定した値をいう。
【0052】
本発明に係るホットメルト接着剤は、一般的に知られているホットメルト接着剤の製造方法を用いて、(A)エチレン系共重合体及び(B)ワックス、更に必要に応じて各種添加剤を配合して製造することができる。例えば、上述の成分を所定量配合し、加熱溶融して製造することができる。目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0053】
ホットメルト接着剤を塗工する方法は、目的とする紙製品を得ることができる限り、特に制限されるものではない。そのような塗工方法は、例えば、接触塗工、非接触塗工に大別される。「接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗工方法をいい、「非接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗工方法をいう。接触塗工方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗工方法として、例えば、螺旋状に塗工できるスパイラル塗工、波状に塗工できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗工できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工、線状に塗工できるビード塗工等を例示できる。
上述の塗工方法によって、本発明のホットメルト接着剤は種々の基材へ130℃程度の低温で塗工される。
【0054】
本発明に係るホットメルト接着剤は、例えば、電子部品、木工、建築材料、衛生材料、紙製品等に幅広く利用されるが、紙製品を製造するために好適に使用することができ、紙製品用ホットメルト接着剤として特に有用である。
本発明に係る紙製品とは、上述のホットメルト接着剤を用いて製造された紙製品をいう。紙製品の種類については、上述のホットメルト接着剤を用いて製造される限り、特に限定されることはないが、具体的には、例えば、製本、カレンダー、ダンボール及びカートン等を例示できる。
【0055】
本発明の、主な態様を以下に記載する。
1.(A)エチレン系共重合体及び(B)ワックスを含むホットメルト接着剤であって、(B)ワックスは、(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスを含むホットメルト接着剤。
2.(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスは、無水マレイン酸で変性されたオレフィン共重合体ワックスである上記1に記載のホットメルト接着剤。
3.上記無水マレイン酸で変性されたオレフィン共重合体ワックスは、無水マレイン酸、エチレン及びプロピレンが共重合することで得られるワックスである上記2に記載のホットメルト接着剤。
4.(A)エチレン系共重合体は、(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体を含む上記1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
5.(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体は、エチレンとオクテンとの共重合体である上記4に記載のホットメルト接着剤。
6.(B)ワックスは、更に、(B2)フィッシャートロプシュワックスを含む上記1〜5のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
7.130℃での溶融粘度が500〜1100mPa・sである上記1〜6のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
8.上記1〜7のいずれかに記載されたホットメルト接着剤を用いて製造される紙製品。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を更に詳細に、より具体的に説明することを目的として、実施例及び比較例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
【0057】
以下にホットメルト接着剤の原料、および配合、評価方法を記載する。
(A)エチレン系共重合体
(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体
(a1−1)エチレンとオクテンとの共重合体(重量平均分子量:38000、1−オクテンの含有量:35〜37重量%、メルトフローレート:500g/10min、ダウ・ケミカル社製のAFFINITY GA1950(商品名))
(a1−2)エチレン、プロピレンと1−ブテンの共重合体(重量平均分子量:34000、メルトフローレート:450g/10min、融点:124℃、190℃での溶融粘度:2700mPa・s、エボニックデグサ社製のVESTPLAST 703(商品名))
(a1−3)エチレンとオクテンとの共重合体(重量平均分子量:64000、1−オクテンの含有量:13重量%、メルトフローレート:13g/10min、ダウ・ケミカル社製のENGAGE 8137(商品名))
(A4)エチレンとカルボン酸エステルとの共重合体
(a4−1)エチレンと酢酸ビニルとの共重合体(重量平均分子量:38000、酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:400g/10min、東ソー社製のウルトラセン722(商品名))
(a4−2)エチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体(重量平均分子量:38000、メタクリル酸メチル含有量:28重量%、メルトフローレート:400g/10min、住友化学社製のアクリフトCM5021(商品名))
【0058】
(B)ワックス
(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックス
(b1)無水マレイン酸で変性されたエチレンとプロピレンとの共重合体ワックス(重量平均分子量:2700、融点:110℃、針入度:3以下、140℃での溶融粘度:300mPa・s、融点:107℃、酸価:30mgKOH/g、三井化学社製のハイワックス2203A(商品名))
(B2)フィッシャートロプシュワックス
(b2)フィッシャートロプシュワックス(重量平均分子量:630、融点:80℃、針入度:7以下、サゾール社製のサゾールC80(商品名))
(B3)その他のワックス
(b3−1)無水マレイン酸で変性されたポリエチレンワックス(重量平均分子量:7100、融点:106℃、140℃での溶融粘度:4200mPa・s、酸価:33mgKOH/g、Honeywell社製のA-C 575P(商品名))
(b3−2)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレンワックス(重量平均分子量:6100、軟化点:140℃、170℃での溶融粘度:40mPa・s、酸価:40mgKOH/g、クラリアント社製のLicocene MA6252(商品名))
(b3−3)結晶性ポリエチレンワックス(重量平均分子量:500、融点:88℃、針入度:6.5、149℃での溶融粘度:5mPa・s、ベーカー・ペトロライト社製のポリワックス500(商品名))
(b3−4)結晶性ポリエチレンワックス(重量平均分子量:2200、融点:136℃、針入度:1以下、140℃での溶融粘度:650mPa・s、融点:126℃、三井化学社製のハイワックス400P(商品名))
(b3−5)結晶性ポリプロピレンワックス(重量平均分子量:4000、融点:150℃、針入度:1以下、180℃での溶融粘度:150mPa・s、融点:140℃、三井化学社製のハイワックスNP105(商品名))
(b3−6)エチレンと酢酸ビニルとの共重合体ワックス(酢酸ビニル含有量:13重量%、重量平均分子量:14400、融点:92℃、140℃での溶融粘度:595mPa・s、Honeywell社製のA−C400(商品名))
【0059】
(C)粘着付与樹脂
(c1)芳香族系炭化水素石油樹脂の水素化誘導体(軟化点:135℃、出光興産社製のアイマーブY135(商品名))
(c2)芳香族系炭化水素石油樹脂の水素化誘導体(軟化点100℃、エクソンモービル社製のECR−179EX(商品名))
【0060】
これら成分を表1および2に示す割合(重量部)で溶融混合した。万能攪拌機を用いて、各成分を約145℃で約1時間かけて溶融混合して、実施例1〜5、及び比較例1〜5のホットメルト接着剤を製造した。実施例及び比較例のホットメルト接着剤について、溶融粘度、低温塗工性、オープンタイム、耐熱性及び接着性を、下記の方法を用いて評価した。
【0061】
<溶融粘度>
ブルックフィールド粘度計(27番ローター)及びサーモセルを用いて、120℃、130℃、140℃での溶融粘度を測定した。
【0062】
<低温塗工性>
130℃に加熱して溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナーダンボールに塗工量2g/m、セットタイム10秒、プレス圧1kg/25cmの条件でKライナーダンボールを貼り合わせ、強制剥離した際のホットメルト接着剤の広がりを計測した。
◎:ホットメルト接着剤の広がりが10mmより大きい
○:ホットメルト接着剤の広がりが8mm以上10mm以下
×:ホットメルト接着剤の広がりが8mm未満
【0063】
<オープンタイム>
130℃に加熱して溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナーダンボールに塗工量2g/m、セットタイム10秒、プレス圧1kg/25cmの条件でKライナーダンボールを貼り合わせた後、接着作業が可能な時間を測定した。
◎:オープンタイムが12秒より長い
○:オープンタイムが10秒以上12秒以下
×:オープンタイムが10秒未満
【0064】
<耐熱性>
130℃に加熱して溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナーダンボールに塗工量2g/m、セットタイム10秒、オープンタイム10秒、プレス圧1kg/25cmの条件でKライナーダンボールを貼り合わせた。
作製したサンプルを60℃雰囲気下、応力方向に300g/g/25cmの荷重をかけ、貼り合わせたサンプルが剥離するまでの時間を測定した。
◎:耐熱性が6時間より長い
○:耐熱性が3時間以上6時間以下
×:耐熱性が1時間以上3時間未満
××:耐熱性が1時間未満
【0065】
<接着性>
130℃に加熱して溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナーダンボールに塗工量2g/m、セットタイム10秒、オープンタイム10秒、プレス圧1kg/25cmの条件でKライナーダンボールを貼り合わせた。
作製したサンプルを60℃、23℃、−10℃に設定した恒温槽中に24時間養生し、その後、その雰囲気下で、手で剥離することによって強制剥離試験を行った。全接着面積に占めるKライナーダンボールの破壊の割合を材破率として、材破率を評価した。
◎:材破率が80%より高い
○:材破率が60%以上80%以下
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
表1に示すように、実施例1〜5のホットメルト接着剤は、(B1)無水マレイン酸で変性されたオレフィン共重合体ワックスを含むので、耐熱性、低温塗工性及びオープンタイムのバランスに優れる。一般的に、ホットメルト接着剤の耐熱性を向上させると、低温での塗工が困難となるが、実施例1〜5のホットメルト接着剤は耐熱性を維持しつつ、低温(130℃)での塗工性にも優れ。実施例1〜5のホットメルト接着剤は、更に、ある程度長いオープンタイムを有するので、紙加工及び木材加工の分野で有用である。特に、実施例1のホットメルト接着剤は、低温塗工性、耐熱性及びオープンタイムの3つの性質の全てに優れており◎である。
【0069】
これに対し、比較例1〜5のホットメルト接着剤は、表2に示すように、(B1)を含まないので、耐熱性に劣り、低温塗工性に劣る場合がある。(b3−1)無水マレイン酸で変性されたポリエチレンワックス、(b3−2)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレンワックスでは、本発明の目的を達成することは出来ない。
これらを考慮すると、(A)エチレン系共重合体に(B1)を配合することで、低温塗工性、耐熱性及びオープンタイムに優れるホットメルト接着剤が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、ホットメルト接着剤を提供する。本発明に係るホットメルト接着剤は、製本、カレンダー、ダンボール等の紙加工分野に特に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン系共重合体及び(B)ワックスを含むホットメルト接着剤であって、
(B)ワックスは、(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスを含むホットメルト接着剤。
【請求項2】
(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスは、無水マレイン酸で変性されたオレフィン共重合体ワックスである請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(A)エチレン系共重合体は、(A1)エチレンとオレフィンとの共重合体を含む請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
(B)ワックスは、更に、(B2)フィッシャートロプシュワックスを含む請求項1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
130℃での溶融粘度が500〜1100mPa・sである請求項1〜4のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載されたホットメルト接着剤を用いて製造される紙製品。

【公開番号】特開2012−136648(P2012−136648A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290636(P2010−290636)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】