説明

ホットメルト接着剤

【課題】高速塗工及び低温でのスパイラル塗工に優れ、ポリエチレン及び不織布との接着性にも優れたホットメルト接着剤、並びにそのホットメルト接着剤を用いて得られた使い捨て製品を提供する
【解決手段】(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体と、(B)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点100℃以下のポリプロピレンホモポリマーを含むホットメルト接着剤は、高速塗工及び低温でのスパイラル塗工に優れ、不織布及びポリエチレンフィルムとの接着性に優れる。このホットメルト接着剤を用いて得られる使い捨て製品は、高速塗工ラインで低温で製造されるので、効率良く安全性に製造され、使い捨て製品の不織布及びポリエチレンフィルムが、剥離し難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホットメルト接着剤に関し、さらに詳しくは紙おむつ、ナプキンに代表される使い捨て製品分野に使用されるホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつやナプキン等の使い捨て製品に用いられ、その基材、例えば、不織布、ティッシュ及びポリエチレンフィルム等に塗工されるホットメルト接着剤として、熱可塑性ブロック共重合体を主成分とする合成ゴム系ホットメルト接着剤が広く利用されている。
【0003】
特許文献1は、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を主成分とする合成ゴム系ホットメルト接着剤を使い捨て製品に利用できることを記載する(特許文献1[請求項8]等参照)。使い捨て製品を製造する際、ホットメルト接着剤をフィルムや不織布に塗工するが、使い捨て製品の生産効率を高めるため、高速塗工を用いることがある。特に、スパイラル塗工を行う際に高速で塗工するために、ホットメルト接着剤の吐出量を多くする必要があるため、吹き付けるホットエアーの圧力を高く設定する必要がある。しかしながら、特許文献1の合成ゴム系ホットメルト接着剤は、高ホットエアー圧下では、ホットメルト接着剤が飛散してしまうことがある。
【0004】
使い捨て製品の生産効率を高める手段の一つとして、エチレン−プロピレン共重合体に代表されるオレフィン系ホットメルト接着剤を高速塗工する方法がある。
特許文献2は、プロピレン重合体をホットメルト接着剤用原料として使用できることを開示する(特許文献2[請求項1]、[技術分野]等参照)。しかし、特許文献2のオレフィン系ホットメルト接着剤は、不織布/不織布の貼り合せでは高い接着強度を発現するが、ポリエチレンフィルムに対する接着性が十分ではないので、使い捨て製品用の接着剤として不十分である。
【0005】
おむつ及びナプキン等の使い捨て製品は、パルプ及び吸収性ポリマー等で構成される吸収体をティッシュで包み、さらにティッシュの外側を不織布及びポリエチレンフィルム等で覆う構造を有するものが多い。従って、使い捨て製品用ホットメルト接着剤には、不織布とポリエチレンフィルムに対する接着性に優れることが求められる。
【0006】
特許文献3は、水素添加型スチレンイソプレンブロックコポリマー(SEPS)と、ポリオレフィンとを含有するホットメルト接着剤を開示する(特許文献3[請求項1]等参照)。特許文献3のホットメルト接着剤は、不織布への接着性は良いが、原則としてオイル成分を含有しない硬い設計のためにポリエチレンフィルムへの接着が弱く、使い捨て製品に利用しにくい。さらに、特許文献3の接着剤は、高分子量成分を有する非晶性ポリオレフィンを含むため、スパイラル塗工で十分な幅が得られないこと、また、粘度が高いものもあり、低温でポリエチレンフィルムにスパイラル塗工するには不向きであった。複雑な塗工パターンに対応するには、塗工温度を高くして粘度を低くする必要があるが、塗工温度を高くすると、フィルムが熱で溶けたり、塗工されたホットメルト接着剤が冷えて収縮し、フィルムにシワができることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-137297号公報
【特許文献2】再公表2001−96490号公報
【特許文献3】特開2009-242533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高速塗工及び低温でのスパイラル塗工に優れ、ポリオレフィンフィルム(好ましくは、ポリエチレンフィルム)及び不織布との接着性にも優れたホットメルト接着剤、並びにそのホットメルト接着剤を用いて得られた使い捨て製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、分子量分布が狭く、かつ、融点の低いプロピレンホモポリマーと、熱可塑性ブロック共重合体とを配合すると、高速塗工及び低温でのスパイラル塗工に優れ、ポリオレフィンフィルム(好ましくは、ポリエチレンフィルム)及び不織布との接着性にも優れたホットメルト接着剤が得られることを見出し、更に、そのようなホットメルト接着剤は使い捨て製品用途に好適であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、一の要旨として、
(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体と、(B)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点100℃以下のプロピレンホモポリマーを含むホットメルト接着剤を提供する。
【0011】
本発明は、一の態様として、
(A)熱可塑性ブロック共重合体が(A1)水素添加型スチレンブタジエンブロックコポリマー(SEBS)および(A2)水素添加型スチレンイソプレンブロックコポリマー(SEPS)から選ばれた少なくとも1種を含むホットメルト接着剤を提供する。
本発明は、別の態様として、
(B)プロピレンホモポリマーは、(B1)重量平均分子量が60000以下のプロピレンホモポリマー及び(B2)重量平均分子量が60000より大きいプロピレンホモポリマーから選ばれる少なくとも1種を有するホットメルト接着剤を提供する。
【0012】
本発明は、好ましい態様として、
更に、(C)粘着付与樹脂及び(D)可塑剤を含み、
(D)可塑剤が(D1)ナフテンオイル及び(D2)パラフィンオイルから選ばれる少なくとも1種を含むホットメルト接着剤を提供する。
本発明は、第二の要旨として、
上記ホットメルト接着剤を用いて得られる使い捨て製品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のホットメルト接着剤は、(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体と、(B)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点100℃以下のプロピレンホモポリマーを含むので、
高速塗工に優れ、低温でのスパイラル塗工に優れ、ポリオレフィンフィルム(好ましくは、ポリエチレンフィルム)との接着性及び不織布との接着性に優れる。
【0014】
本発明のホットメルト接着剤は、(A)熱可塑性ブロック共重合体が(A1)水素添加型スチレンブタジエンブロックコポリマー(SEBS)および(A2)水素添加型スチレンイソプレンブロックコポリマー(SEPS)から選ばれた少なくとも1種を含む場合、
(B)成分との相溶性が向上し、相溶性が向上することによって、不織布及びポリオレフィンフィルムに対する接着強度が向上する。
【0015】
本発明のホットメルト接着剤は、(B)プロピレンホモポリマーが(B1)重量平均分子量が60000以下のプロピレンホモポリマー及び(B2)重量平均分子量が60000より大きいプロピレンホモポリマーから選ばれる少なくとも1種を有する場合、
低温でのスパイラル塗工、及びポリオレフィンフィルム及び不織布との接着性のバランスに、より優れる。
【0016】
本発明のホットメルト接着剤は、更に、(C)粘着付与樹脂および(D)可塑剤を含み、(D)可塑剤が(D1)ナフテンオイルおよび(D2)パラフィンオイルから選ばれる少なくとも1種を含む場合、
ポリオレフィンフィルム及び不織布との接着性がより向上し、粘度がより低くなるので低温塗工(特に、スパイラル塗工)により優れ、使い捨て製品用途により適する。
【0017】
本発明の使い捨て製品は、上記ホットメルト接着剤を用いて得られるので、高速塗工ラインで効率良く製造することができ、140℃程度の低温で塗工できるので安全性も高く、不織布及びポリオレフィンフィルムとの接着性に優れ、剥離し難い。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体と、(B)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点100℃以下のポリプロピレンホモポリマーとを含む。
【0019】
本発明において、「(A)熱可塑性ブロック共重合体」とは、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とがブロック共重合した共重合体であって、通常ビニル系芳香族炭化水素ブロックと共役ジエン化合物ブロックを有して成るものであり、本発明の目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。
【0020】
ここで、「ビニル系芳香族炭化水素」とは、ビニル基を有する芳香族炭化水素化合物を意味し、具体的には、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、及びビニルアントラセン等を例示できる。特にスチレンが好ましい。これらのビニル系芳香族炭化水素は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0021】
「共役ジエン化合物」とは、少なくとも一対の共役二重結合を有するジオレフィン化合物を意味する。「共役ジエン化合物」として、具体的には、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(又はイソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンを例示することができる。1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが特に好ましい。これらの共役ジエン化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明に係る(A)熱可塑性ブロック共重合体は、未水素添加物であっても、水素添加物であってもよい。
「(A)熱可塑性ブロック共重合体の未水素添加物」とは、具体的には、共役ジエン化合物に基づくブロックが水素添加されていないものを例示できる。また、「(A)熱可塑性ブロック共重合体の水素添加物」とは、具体的には、共役ジエン化合物に基づくブロックの全部、若しくは一部が水素添加されたブロック共重合体を例示できる。
【0023】
「(A)熱可塑性ブロック共重合体の水素添加物」の水素添加された割合を、「水素添加率」で示すことができる。「(A)熱可塑性ブロック共重合体の水素添加物」の「水素添加率」とは、共役ジエン化合物に基づくブロックに含まれる全脂肪族二重結合を基準とし、その中で、水素添加されて飽和炭化水素結合に転換された二重結合の割合をいう。この「水素添加率」は、赤外分光光度計及び核磁器共鳴装置等によって測定することができる。
【0024】
「(A)熱可塑性ブロック共重合体の未水素添加物」として、具体的には、例えばスチレン−イソプレンブロックコポリマー(「SIS」ともいう)、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(「SBS」ともいう)を例示できる。「(A)熱可塑性ブロック共重合体の水素添加物」として、具体的には、例えば水素添加されたスチレン−イソプレンブロックコポリマー(「SEPS」ともいう)及び水素添加されたスチレン−ブタジエンブロックコポリマー(「SEBS」ともいう)を例示できる。
(A)熱可塑性ブロック共重合体は、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0025】
(A)熱可塑性ブロック共重合体として、市販品を用いることができる。
例えば、旭化成ケミカルズ(株)製のアサプレンT439(商品名)、アサプレンT436(商品名)、アサプレンT438(商品名)、アサプレンN505(商品名)、タフテックH1121(商品名)、タフテックH1062(商品名)、タフテックH1052X(商品名)、及びタフプレンT125(商品名);
JSR(株)製のTR2003(商品名)、TR2500(商品名)及びTR2600(商品名);
ファイヤーストン社製のステレオン857(商品名)及びステレオン841A(商品名);
クレイトンポリマー社製のクレイトンD1118(商品名);クレイトンG1654(商品名)、クレイトンG1726(商品名)、Enichem社(株)製のSol T166(商品名);
日本ゼオン社(株)製のクインタック3433N(商品名)及びクインタック3421(商品名);
クラレ社製のセプトン2002及びセプトン2063(商品名)を例示できる。
【0026】
これらの(A)熱可塑性ブロック共重合体の市販品は、各々単独で又は組み合わせて使用することができる。
(A)熱可塑性ブロック共重合体は、スチレン含有率が20重量%以下であることが好ましく、特に10〜15重量%であることが好ましい。スチレン含有率とは、(A)に含まれるスチレンブロックの割合をいう。スチレン含有率が20重量%以下である場合、(A)成分の(B)成分との相溶性が向上し、得られるホットメルト接着剤の不織布及びポリオレフィンフィルム(好ましくはポリエチレンフィルム)に対する接着強度がより向上する。
【0027】
本発明において、(B)プロピレンホモポリマーは、プロピレンの単独重合体であって、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて製造されたものをいう。(B)プロピレンホモポリマーの融点は、100℃以下であり、60〜90℃であることがより好ましく、65〜85℃であることが特に好ましい。
【0028】
融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定された値をいう。具体的には、SIIナノテクノロジー社製のDSC6220(商品名)を用い、アルミ容器に試料を10mg秤量し、昇温速度5℃/minで測定して、融解ピークの頂点の温度を融点という。
【0029】
メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合すると、(i)結晶性を有し、(ii)非常に分子量分布の狭いプロピレンホモポリマーが合成される。
【0030】
(i)は、完全なアイソタクティック性、シンジオタクティック性を任意に制御できることを意味する。従って、結晶性に偏りを生じさせることが無く、メチル基の並び方や割合等について均一な重合体が得られ、付着力低下の原因となる低結晶性部位が生じる可能性が低い。
【0031】
(ii)については、(B)プロピレンホモポリマーの分子量分布を多分散度(Mw/Mn)で表すと、1〜3となる。分子量分布1〜3のプロピレンホモポリマーは、スパイラル塗工適性に優れる。分子量分布とは、合成高分子の分子量の分布を示す概念であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(即ち、多分散度:Mw/Mn)が尺度となる。本発明では、分子量分布の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)でなされる。
【0032】
(B)プロピレンホモポリマーとして、(B1)重量平均分子量が60000以下のプロピレンホモポリマー、(B2)重量平均分子量が60000より大きいプロピレンホモポリマーを例示できる。
【0033】
(B1)プロピレンホモポリマーの重量平均分子量は、60000以下であるが、特に30000〜60000であることが好ましく、35000〜55000であることがより好ましい。
(B2)プロピレンホモポリマーの重量平均分子量は、60000より大きいが、60000より大きく、90000以下であることがより好ましく、60000より大きく、80000以下であることが特に好ましい。
【0034】
重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値を意味する。具体的には、下記の装置及び測定方法を用いて値を測定することができる。検出器として、ウォーターズ社製のRIを用いる。GPCカラムとして、東ソー社製のTSKGEL GMHHR−H(S)HTを用いる。試料を1,2,4−トリクロロベンゼンに溶解して、流速を1.0ml/min、測定温度を145℃にて流し、ポリプロピレンによる検量線を用いて分子量の換算を行い、重量平均分子量を求める。
尚、数平均分子量(Mn)も同方法で求められるので、分子量分布もGPCで算出されることになる。
【0035】
(B1)プロピレンホモポリマーの市販品として出光興産社製のエルモーデュX400Sを例示でき、(B2)プロピレンホモポリマーの市販品として出光興産社製のエルモーデュX600Sを例示できる。
【0036】
本発明のホットメルト接着剤は、(A)熱可塑性ブロック共重合体と(B)プロピレンホモポリマーを含むことによって、ポリオレフィンフィルム(好ましくはポリエチレンフィルム)及び不織布に対する接着力を維持しつつ、低温でのスパイラル塗工適性に優れる。
【0037】
本発明のホットメルト接着剤は、更に(C)粘着付与樹脂を含むことが好ましい。
(C)粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。
【0038】
粘着付与樹脂は、色調が無色〜淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、樹脂等の水素化誘導体が好ましく、特に水素添加ジシクロペンタジエン系樹脂が望ましい。
【0039】
(C)粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として例えば、荒川化学社製のアルコンP100(商品名)、アルコンM100(商品名)、ヤスハラケミカル社製のクリアロンM105(商品名)、エクソン社製のECR5400(商品名)、ECR179EX(商品名)、日本ゼオン社製のQuinton DX395(商品名)、Quinton DX390N(商品名)を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0040】
更に本発明のホットメルト接着剤は、(D)可塑剤を含むことができる。(D)可塑剤は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、ブロック共重合体に相溶し、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。(D)可塑剤として、例えばパラフィンオイル、ナフテンオイル及び芳香族系オイルを挙げることができ、無色、無臭であるナフテンオイル、パラフィンオイルが特に好ましい。
【0041】
(D)可塑剤としては、市販品を用いることができる。例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW−90(商品名)、DNオイルKP−68(商品名)、プロセスオイルNS100(商品名)、ペトロチャイナカンパニー社製のKN4010(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)を例示することができる。これらの(D)可塑剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0042】
本発明のホットメルト接着剤は、成分(A)〜(D)の総重量100重量部に対し、(A)熱可塑性ブロック共重合体の配合量が3〜30重量部であることが好ましく、5〜20重量部であることがより好ましい。(A)熱可塑性ブロック共重合体の配合量が3〜30重量部であることによって、ホットメルト接着剤は、高速塗工及び低温でのスパイラル塗工、ポリオレフィンフィルム(好ましくはポリエチレンフィルム)及び不織布との接着性のバランスにより優れる。
【0043】
(B)プロピレンホモポリマーの配合量は、成分(A)〜(D)の総重量100重量部に対し、5〜35重量部であることが好ましく、10〜35重量部であることがより好ましく、20〜30重量部であることが特に好ましい。(B)プロピレンホモポリマーの配合量が5〜35重量部であることによって、ホットメルト接着剤は、ポリオレフィンフィルム(好ましくはポリエチレンフィルム)及び不織布に対する接着力を維持しつつ、低温でのスパイラル塗工適性により優れる。
【0044】
本発明のホットメルト接着剤は、(E)ワックスを含んでもよい。尚、本明細書で「ワックス」とは、常温で固体、加熱すると液体となる重量平均分子量が10000未満の有機物であり、一般的に「ワックス」とされているものをいい、ワックス状の性質を有するものであれば、本発明に係るホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。
【0045】
(E)ワックスは、(E1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィンワックスを含むことが好ましい。
本発明において、「(E1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィンワックス」とは、カルボン酸又はカルボン酸無水物で、化学的又は物理的に加工されたオレフィンワックスをいい、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。化学的、物理的加工として、例えば、酸化、重合、配合、合成等を例示できる。
【0046】
そのような(E1)ワックスとして、例えば、カルボン酸又はカルボン酸無水物がオレフィンワックスにグラフト重合することで得られるワックス;及びオレフィンワックスを重合により合成する際に、カルボン酸又はカルボン酸無水物を共重合することで得られるワックスを例示することができる。
【0047】
従って、種々の反応を用いて、カルボン酸又はカルボン酸無水物が「オレフィンワックス」に導入されて、結果的に変性されたオレフィンワックスであって良い。
オレフィンワックスを変性するための「カルボン酸」及び/又は「カルボン酸無水物」は、本発明のホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0048】
カルボン酸又はカルボン酸無水物として、具体的には、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、イタコン酸、アクリル酸及びメタクリル酸等を例示できる。これらのカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物は単独で又は組み合わせて使用してよい。マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0049】
本発明に係るホットメルト接着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。そのような各種添加剤として、例えば、安定化剤及び微粒子充填剤を例示することができる。
「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。「安定化剤」として、例えば酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0050】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的に使い捨て製品に使用されるものであって、後述する目的とする使い捨て製品を得ることができるものであれば使用することができ、特に制限されるものではない。
【0051】
酸化防止剤として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0052】
安定化剤として、市販品を使用することができる。例えば、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、城北化学社製のJF77(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0053】
本発明の使い捨て製品用ホットメルト接着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法(球状の場合は直径)については特に限定されるものではない。
【0054】
本発明の使い捨て製品用ホットメルト接着剤は、(A)成分及び(B)成分、場合によっては、(C)成分〜(E)成分を配合し、必要に応じて種々の添加剤を配合し、加熱して溶融し混合することで製造することができる。具体的には、上記成分を攪拌機付きの溶融混合釜に投入し、加熱混合することで製造することができる。
【0055】
本発明に係る使い捨て製品用ホットメルト接着剤は、140℃の溶融粘度が8000mPa.s以下であることが好ましく、2000〜7000mPa.sであることがより好ましく、2000〜6000mPa.sであることが特に好ましい。「溶融粘度」とは、ホットメルト接着剤の溶融体の粘度であり、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)で測定される。
【0056】
溶融粘度が上記範囲に制御されることで、ホットメルト接着剤は、低温塗工に適したものとなり、さらには不織布にも均一に塗工され、浸透し易くなるので、使い捨て製品用により適する。
【0057】
このように、本発明に係るホットメルト接着剤は、紙加工、製本、使い捨て製品等にも利用可能であるが、不織布及びポリオレフィンフィルム(好ましくはポリエチレンフィルム)に対する接着性が優れるので、使い捨て製品に好適に利用される。
【0058】
織布、不織布、ゴム、樹脂、紙類、ポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも一種の部材に本発明に係るホットメルト接着剤を塗布することで、使い捨て製品を構成することができる。尚、ポリオレフィンフィルムは、耐久性及びコスト等の理由からポリエチレンフィルムが好ましい。
使い捨て製品は、いわゆる衛生材料であれば、特に限定されるものではない。具体的には紙おむつ、生理用ナプキン、ペットシート、病院用ガウン、手術用白衣等を例示できる。
【0059】
使い捨て製品の製造ラインでは、一般に使い捨て製品の各種部材(例えば、ティッシュ、コットン、不織布、ポリオレフィンフィルム等)にホットメルト接着剤を塗布する。塗布の際、ホットメルト接着剤を、種々の噴出機から噴出して使用してよい。
【0060】
ホットメルト接着剤を塗布する方法は、目的とする使い捨て製品を得ることができる限り、特に制限されるものではない。そのような塗布方法は、接触塗布、非接触塗布に大別される。「接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗布方法をいい、「非接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗布方法をいう。接触塗布方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗布方法として、例えば、螺旋状に塗布できるスパイラル塗工、波状に塗布できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗布できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工などを例示できる。
【0061】
本発明のホットメルト接着剤は、スパイラル塗工に適している。スパイラル塗工とは、間欠または連続塗工で接着剤をエアーでらせん状に非接触塗布する方法である。
ホットメルト接着剤を、スプレー塗工にて広い幅で塗工できることは、使い捨て製品を製造するには極めて有用である。広い幅で塗工できるホットメルト接着剤は、ホットエアーの圧力を調整することにより、塗工幅を狭く調節することが可能である。
【0062】
ホットメルト接着剤が広い幅で塗工困難であると、充分な接着面積を得るために数多くのスプレーノズルが必要になり、尿取りライナーのような比較的小さな使い捨て製品、複雑な形状の使い捨て製品を製造するにも不適である。
従って、本発明のホットメルト接着剤は、広い幅でスパイラル塗工が可能であるため、使い捨て製品として好適である。
【0063】
本発明のホットメルト接着剤は、140℃前後の塗工適性が良好なので、使い捨て製品の製造に有用である。ホットメルト接着剤を高温で塗工すると、使い捨て製品の基材であるポリオレフィンフィルム(好ましくはポリエチレンフィルム)が溶融したり、熱収縮したりするので、使い捨て製品の外観が大きく損なわれる。140℃前後でホットメルト接着剤を塗工すると、使い捨て製品の基材であるポリオレフィンフィルム(好ましくはポリエチレンフィルム)や不織布の外観が殆ど変化せず、従って、製品の外観が損なわれない。
【0064】
本発明のホットメルト接着剤は、高速塗工適性に優れているので、短時間で使い捨て製品を製造するために好適である。高速で搬送される基材にホットメルト接着剤を塗工する場合、接触式の塗工方法では、摩擦による基材の破断が発生し得る。本発明のホットメルト接着剤は、非接触塗工の一種であるスパイラル塗工に適しているので、高速塗工に適しており、使い捨て製品の生産効率を向上させることが可能である。さらに、高速塗工に適した本発明のホットメルト接着剤は、塗工パターンが乱れ難い。
【0065】
本発明のホットメルト接着剤は、熱安定性が良好であり、100〜200℃の高温タンク内で均一に溶融され、相分離することがない。熱安定性に乏しいホットメルト接着剤は、高温タンク内で容易に成分が相分離する。相分離は、タンクフィルター、輸送配管詰まりの原因ともなり、好ましくない。
【0066】
本発明の主な態様を以下に示す。
1.(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体と、(B)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点100℃以下のプロピレンホモポリマーとを含むホットメルト接着剤。
2.(A)熱可塑性ブロック共重合体は、(A1)水素添加型スチレンブタジエンブロックコポリマー(SEBS)および(A2)水素添加型スチレンイソプレンブロックコポリマー(SEPS)から選ばれる少なくとも1種を含む上記1に記載のホットメルト接着剤。
3.(B)プロピレンホモポリマーは、(B1)重量平均分子量が60000以下のプロピレンホモポリマー及び(B2)重量平均分子量が60000より大きいプロピレンホモポリマーから選ばれる少なくとも1種を有する上記1又は2に記載のホットメルト接着剤。
4.更に、(C)粘着付与樹脂及び(D)可塑剤を含み、(D)可塑剤は、(D1)ナフテンオイル及び(D2)パラフィンオイルから選ばれる少なくとも1種を含む上記1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
5.上記1〜4のいずれかに記載のホットメルト接着剤を用いて得られる使い捨て製品。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を更に詳細に、より具体的に説明することを目的として、実施例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
ホットメルト接着剤を配合するための成分を、以下に示す。
【0068】
(A)熱可塑性ブロック共重合体
(A1)SEBS(タフテックH1221(商品名)、旭化成ケミカルズ社製、スチレン含有率12重量%)
(A2)SEPS(セプトン2603(商品名)、クラレ社製、スチレン含有率13重量%)
(A3)SIS(クインタック3433N(商品名)、日本ゼオン社製、スチレン含有率16重量%)
(A4)SBS(アサプレンT439(商品名)、旭化成ケミカルズ社製、スチレン含有率40重量%)
【0069】
(B)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点100℃以下のプロピレンホモポリマー
(B1)結晶性プロピレンホモポリマー(エルモーデュX400S(商品名)、出光興産社製、融点75℃、重量平均分子量45000)
(B2)結晶性プロピレンホモポリマー(エルモーデュX600S(商品名)、出光興産社製、融点80℃、重量平均分子量70000)
(B’3)結晶性プロピレンホモポリマー(リコセンPP6102(商品名)、クラリアントジャパン社製、融点145℃)
(B’4)結晶性エチレン/オクテンコポリマー(アフィニティーGA1950、(商品名)ダウケミカル社製、融点100℃)
(B’5)結晶性エチレン/プロピレンコポリマー(リコセンPP2602(商品名)、クラリアントジャパン社製、融点145℃)
(B’6)非晶性エチレンプロピレン共重合体(レキセンタック2304(商品名)、ハンツマン(Huntsman)社製)
【0070】
(C)粘着付与樹脂
(C1)水素添加型粘着付与樹脂(ECR5400(商品名)、エクソンモービル社製)
(C2)水素添加型粘着付与樹脂(ECR179X(商品名)、エクソンモービル社製)
(C3)未水素添加型粘着付与樹脂(クイントンDX395(商品名)、日本ゼオン社製)
(C4)水素添加型粘着付与樹脂(アルコンM100(商品名)、荒川化学工業社製)
(C5)液状粘着付与樹脂(マルカクリアH(商品名)、丸善化学社製)
【0071】
(D)可塑剤
(D1)ナフテンオイル(プロセスオイルNS100(商品名)、出光興産社製)
(D2)ナフテンオイル(KN4010(商品名)、ペトロチャイナカンパニー社製)
(D3)パラフィンオイル(ダイアナプロセスオイルPW90(商品名)、出光興産社製)
【0072】
(E)ワックス
(E1)マレイン酸変性ワックス(リコセンPP MA6252(商品名)、クラリアントジャパン社製)
(F)添加剤
(F1)酸化防止剤(アデカスタブAO60(商品名)、アデカ社製)
【0073】
これらの成分を表1及び2に示す割合で配合し、150℃で3時間かけて万能攪拌機を用いて溶融混合し、実施例1〜7及び比較例1〜7のホットメルト接着剤を調製した。
上述のホットメルト接着剤について、溶融粘度、剥離強度、塗工適正、貯蔵弾性率を評価した。以下に各評価の概要ついて記載する。
【0074】
<溶融粘度(mPa・s 塗工適性)>
140℃および160℃でホットメルト接着剤を溶融させ、20分後、ブルックフィールド粘度計を用い、27番のローターで粘度を測定した。評価は以下のとおりである。
140℃における溶融粘度
◎・・・2000mPa・s〜6000mPa・s
○・・・1000mPa・s以上で2000mPa・s未満、
若しくは、6000mPa・sより大きく、10000mPa・s未満
×・・・1000mPa・s未満、若しくは、10000mPa・s以上
160℃における溶融粘度
◎・・・500mPa・s〜3000mPa・s
○・・・3000mPa・sより大きく、7000mPa・s以下
×・・・500mPa・s未満、若しくは7000mPa・sより大きい
【0075】
<剥離強度試験>
(サンプル作製)
不織布に、ホットメルト接着剤を5g/mで塗工した。スロットコーターにより、温度140℃で塗工した。ホットメルト接着剤が塗工された不織布と、別の不織布とをホットメルト接着剤を介して重ね合わせ、圧力0.5kgf/cmでプレスしサンプル(不織布/不織布)とした。
さらに、ホットメルト接着剤が塗工された不織布と、ポリエチレン(PE)フィルムとをホットメルト接着剤を介して重ね合わせ、圧力0.5kgf/cmでプレスし別のサンプル(不織布/PEフィルム)とした。
【0076】
(試験方法)
不織布/不織布サンプルと、不織布/PEフィルムサンプルの両方を、基材進行方向に対して垂直の方向(CD方向)に幅25mmにカットし、万能引張試験機(JTトーシ社製)を用い、T型剥離によって剥離強度を測定した。万能引張試験機での測定環境は、20℃、65%Rh、剥離速度300mm/minであった。
不織布とPEフィルムとの剥離強度
◎・・・平均剥離強度が200(g/25mm)を超える。
○・・・平均剥離強度が150〜200(g/25mm)
×・・・PEフィルムと不織布との平均剥離強度が150(g/25mm)未満

不織布と不織布との剥離強度
◎・・・材料(基材)破壊
○・・・平均剥離強度が150〜200(g/25mm)
×・・・平均剥離強度が150(g/25mm)未満
【0077】
<塗工適性>
ノードソン社のスパイラルスプレーを用いて、エアー圧を調節しながら、塗工基材にホットメルト接着剤を塗工し、塗工された塗工基材と貼り合わせ基材との積層体を作製し、塗工適性を評価した。塗工基材および貼り合わせ基材は、共にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
より具体的には、ホットメルト接着剤の溶融粘度が5000mPa.sになるような温度(即ち、塗工温度)に設定し、スパイラルスプレー(ノードソン社製)をPETフィルムから高さ30mmの位置にセットし、オープンタイム0.5秒、塗布量15g/mで、エアー圧を適宜調節しながら、ホットメルト接着剤を、塗工基材であるPETフィルムに塗工し、貼り合わせ基材であるPETフィルムと重ね合わせて、積層体(PETフィルム/PETフィルム)を製造し、塗工適性を評価した。
スパイラル塗工適性は、スパイラル塗工されたホットメルト接着剤の塗工幅を確認することで評価した。高速ライン適性は、スパイラル塗工されたホットメルト接着剤の飛散の状況を確認することで評価した。
【0078】
以下に評価基準を示す。
スパイラル塗工適性
スパイラルスプレーのエアー圧力および塗工されたホットメルト接着剤のスパイラル幅のバランスによって、スパイラル塗工の適性を評価した。
◎・・・エアー圧0.35kgf/cm以下で15mmのスパイラル幅が可能
○・・・エアー圧0.35kgf/cmより大きく、
0.40kgf/cm以下で15mmのスパイラル幅が可能
×・・・エアー圧を調整しても、15mmのスパイラル幅が得られない

高速ライン適性
更に、スパイラルスプレーのエアー圧力および塗工されたホットメルト接着剤の飛散の状況によって、高速ライン適性を評価した。
◎・・・エアー圧0.55kgf/cmでホットメルト接着剤が飛散しない。
○・・・エアー圧0.50kgf/cmでホットメルト接着剤が飛散しない。
×・・・エアー圧0.40kgf/cm以下でホットメルト接着剤が飛散する。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
表1に示すように、実施例1〜7のホットメルト接着剤は、140℃における溶融粘度が低いのでスパイラル塗工に適し、また高ホットエアー圧下で飛散しにくいために高速ラインで使用ができ、不織布に対する剥離強度(不織布/不織布、不織布/PEフィルム)も優れる。従って、代表的な不織布製品であるオムツ、生理用品等の使い捨て製品用に、実施例1〜7のホットメルト接着剤は好適である。
比較例1〜7のホットメルト接着剤は、表2に示すように、溶融粘度、塗工適性、剥離強度のいずれかが実施例1〜5の接着剤より劣る。使い捨て製品用として、実施例1〜7のホットメルト接着剤の方が、比較例1〜7のホットメルト接着剤よりも好適である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、ホットメルト接着剤を提供する。本発明に係るホットメルト接着剤は、使い捨て製品用として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体と、
(B)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点100℃以下のプロピレンホモポリマー
とを含むホットメルト接着剤。
【請求項2】
(A)熱可塑性ブロック共重合体は、(A1)水素添加型スチレンブタジエンブロックコポリマー(SEBS)および(A2)水素添加型スチレンイソプレンブロックコポリマー(SEPS)から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(B)プロピレンホモポリマーは、(B1)重量平均分子量が60000以下のプロピレンホモポリマー及び(B2)重量平均分子量が60000より大きいプロピレンホモポリマーから選ばれる少なくとも1種を有する請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
更に、(C)粘着付与樹脂及び(D)可塑剤を含み、
(D)可塑剤は、(D1)ナフテンオイル及び(D2)パラフィンオイルから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のホットメルト接着剤を用いて得られる使い捨て製品。

【公開番号】特開2013−64056(P2013−64056A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203071(P2011−203071)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】