説明

ホルミルアシロキシアルカン及び環状エーテルの製造方法

【課題】ジアシロキシアルケンを一段階で脱カルボン酸反応まで高収率で進行させる方法を提供する。
【解決手段】特定のジアシロキシアルケンを、周期表の第8〜10族遷移金属化合物、有機リン化合物、及び周期表の第8〜10族遷移金属化合物に対して5〜7,000モル量の塩基性物質の存在下で水素及び一酸化炭素と反応させて、ジアシロキシアルケンがヒドロホルミル化し、それからカルボン酸が脱離し、さらに水素が添加してなるホルミルアシロキシアルカンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアリル位にアシロキシ基を有するジアシロキシアルケンからアルデヒド化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルミルアシロキシアルカンは、工業的に有用な化合物であり、例えば環状エーテルの原料として用いることができる。ホルミルアシロキシアルカンの合成方法としては、ジアシロキシアルケンを原料とし、一段階でホルミルアシロキシアルカンを合成する方法が知られている。またホルミルアシロキシアルカンの合成方法としては、前記原料のヒドロホルミル化反応と、続く脱カルボン酸反応、さらに不飽和結合の炭素原子の水素添加反応による三段階でホルミルアシロキシアルカンを合成する方法が考えられる。下記にジアシロキシアルケンからの三段階でのホルミルアシロキシアルカン合成のメカニズムを記す。
【0003】
【化1】

【0004】
前記化学式中、R1は水素原子又はアルキル基を表し、R2及びR4はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アシロキシ基、又はアシロキシアルキル基を表し、R3及びR5はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基を表す。ただし、R2及びR4のいずれか一つは前記アシロキシ基又は前記アシロキシアルキル基を表す。
【0005】
また、ホルミルアシロキシアルカンを水素添加反応してアシロキシアルコールとした後、脱カルボン酸反応を伴う分子内環化反応を行うことで、環状エーテルを合成する方法が考えられている。
【0006】
一段階でホルミルアシロキシアルカンを合成する方法としては、例えば、1,4−ジアシロキシブテンのヒドロホルミル化反応を高温、高圧条件下で行うことで、一段階で脱カルボン酸反応まで進行させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法は、高い収率で脱カルボン酸体を得ることが困難である。また、一段階でホルミルアシロキシアルカンを合成する方法としては、例えば、Rh触媒をゼオライトに担持させた不均一系触媒を用い1,4−ジアシロキシブテンのヒドロホルミル化反応を行い、一段階で脱カルボン酸反応まで進行させる方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この方法は、予め触媒を前調整する工程が必要となり、生産性の観点から改善の余地が残されている。
【0007】
三段階でホルミルアシロキシアルカンを合成する方法について、ジアシロキシアルケンのヒドロホルミル化としては、例えば、ヒドロホルミル化反応により3,4−ジアシロキシ−1−ブテンから1,2−ジアシロキシ−3−ホルミルブタンを製造する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、特許文献3には、ヒドロホルミル化反応と脱カルボン酸反応とを一段階で進行させる方法は開示されていない。また、ジヒドロキシアルケンのヒドロホルミル化としては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオールのヒドロホルミル化反応が知られている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、本発明で得られるホルミルアシロキシアルカンについて何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3649672号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0215814号明細書
【特許文献3】特開平10−265438号公報
【特許文献4】特開平6−340569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ジアシロキシアルケンを一段階で脱カルボン酸反応まで高収率で進行させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、少なくとも一つのアシロキシ基をアリル位に有するジアシロキシアルケンのヒドロホルミル化反応を塩基性物質の存在下で行うことによって、ジアシロキシアルケンから、該アルケンがヒドロホルミル化し、さらに脱カルボン酸化し、さらには不飽和結合の炭素原子に水素原子が添加してなるホルミルアシロキシアルカンが一段階の反応で得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明は、下記式(1)で表されるジアシロキシアルケンを、周期表の第8〜10族遷移金属化合物、有機リン化合物、及び周期表の第8〜10族遷移金属化合物に対して5〜7,000モル量の塩基性物質の存在下で、水素及び一酸化炭素と反応させて、下記式(2)で表されるホルミルアシロキシアルカンを製造する方法を提供する。
【0012】
【化2】

【0013】
式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2及びR4はそれぞれ水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜10のアシロキシ基、又は炭素数2〜11のアシロキシアルキル基を表し、R3及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基を表す。ただし、R2及びR4のいずれか一つは前記アシロキシ基又は前記アシロキシアルキル基を表す。また式(2)中、R2〜R5は式(1)と同じである。
【0014】
また本発明は、塩基性物質の量が周期表の第8〜10族遷移金属化合物に対して50〜7,000モル量である前記のホルミルアシロキシアルカンの製造方法を提供する。
【0015】
また本発明は、前記ジアシロキシアルケンが1,4−ジアシロキシ−2−ブテンである前記のホルミルアシロキシアルカンの製造方法を提供する。
【0016】
また本発明は、前記の方法によりホルミルアシロキシアルカンを得て、得られたホルミ
ルアシロキシアルカンを水素添加反応させアシロキシアルコールとした後に分子内環化反応させる、環状エーテルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ジアシロキシアルケンのヒドロホルミル化反応を所定量の塩基性物質の存在下で行うことから、ジアシロキシアルケンを一段階で脱カルボン酸反応まで高収率で進行させることができ、ジアシロキシアルケンのヒドロホルミル化反応とその生成物の脱カルボン酸反応とが良好に進行する。また、本発明によれば、ヒドロホルミル化反応活性を低下させることなく、ホルミルアシロキシアルカンの合成において原料化合物の分解反応を抑制することができる。さらに、本発明によれば、得られたホルミルアシロキシアルカンの水素添加反応、続く分子内環化反応による環状エーテルも、従来よりも少ない工程数でジアシロキシアルケンから高収率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明におけるホルミルアシロキシアルカンの製造方法は、下記式(1)で表されるジアシロキシアルケンを、周期表の第8〜10族遷移金属化合物、有機リン化合物、及び周期表の第8〜10族遷移金属化合物に対して5〜7,000モル量の塩基性物質の存在下で、水素及び一酸化炭素と反応させて、下記式(2)で表されるホルミルアシロキシアルカンを製造する方法である。
【0019】
【化3】

【0020】
式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2及びR4はそれぞれ水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜10のアシロキシ基、又は炭素数2〜11のアシロキシアルキル基を表し、R3及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基を表す。ただし、R2及びR4のいずれか一つは前記アシロキシ基又は前記アシロキシアルキル基を表す。また、式(2)中、R2〜R5は式(1)と同じである。
【0021】
前記アシロキシアルケンは、前記式(1)の構造を有し、炭素数5以上の化合物であって、オレフィン性二重結合を少なくとも一つ有し、さらにアリル位にアシロキシ基を有し、かつアシロキシ基を有すアリル炭素と結合するオレフィン炭素上に水素原子を有し、さらに化合物内にアシロキシ基をもう一つ以上有するジアシロキシアルケン化合物であれば、特にその構造に制限されない。
【0022】
前記アシロキシアルケンは、通常は一種類であるが、二種以上でも構わない。前記式(1)におけるアルキル基は、一種でも二種以上でもよく、このようなアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、及びイソブチル基が挙げられる。また、前記式(1)におけるアリール基も、一種でも二種以上でもよく、このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、及びキシリル基
が挙げられる。これらのアルキル基及びアリール基のうち、R1〜R5におけるアルキル基及びアリール基は、本発明の効果が得られる範囲において、適宜置換基を有していてもよい。アルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基としては、特に限定はされないが、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシル基、及びアミノ基が挙げられる。
【0023】
前記アシロキシアルケンとしては、例えば、1,3−ジアセトキシプロペン、1,3−ジアセトキシ−1−メチル−プロペン、1,3−ジアセトキシ−3−メチル−プロペン、1,3−ジプロピオノキシプロペン、1,3−ジベンゾイン−1−メチル−プロペン、1−アセトキシ−3−ブチロイロキシ−3−メチル−プロペン、3,3−ジアセトキシ−1−プロペン、3,3−ジアセトキシ−1−メチル−1−プロペン、3,3−ジプロピオノキシ−1−プロペン、3,3−ジベンゾイン−1−メチル−1−プロペン及び3−アセトキシ−3−ブチロイロキシ−1−メチル−1−プロペン等の4員環環状エーテル前駆体であるアシロキシアルケン;1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジアセトキシ−2−メチル−2−ブテン、1,4−ジプロピオノキシ−2−ブテン、1,4−ジベンゾイン−2−メチル−2−ブテン、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3,4−ジプロピオノキシ−1−ブテン、3,4−ジベンゾイン−1−ブテン、3,4−ジアセトキシ−1−ペンテン、3,4−ジプロピオノキシ−1−ペンテン、3,4−ジベンゾイン−1−ペンテン、4,5−ジアセトキシ−2−ペンテン、4,5−ジプロピオノキシ−2−ペンテン及び4,5−ジベンゾイン−2−ペンテン等の5員環環状エーテル前駆体であるアシロキシアルケン;1,5−ジアセトキシ−2−ペンテン、1,5−ジアセトキシ−3−メチル−2−ペンテン、1,5−ジアセトキシ−4−エチル−2−ペンテン、1,5−ジプロピオノキシ−2−ペンテン、1,5−ジベンゾイン−3−メチル−2−ペンテン及び1−アセトキシ−5−ブチロイロキシ−4−エチル−2−ペンテン等の6員環環状エーテル前駆体であるアシロキシアルケン;1,6−ジアセトキシ−2−ヘキセン、1,6−ジアセトキシ−3−メチル−2−ヘキセン、1,6−ジアセトキシ−4−エチル−2−ヘキセン、1,6−ジプロピオノキシ−2−ヘキセン、1,6−ジベンゾイン−3−メチル−2−ヘキセン及び1−アセトキシ−6−ブチロイロキシ−4−エチル−2−ヘキセン等の7員環環状エーテル前駆体であるアシロキシアルケン、が挙げられる。前記アシロキシアルケンは、有用な樹脂原料となる5員環環状エーテル前駆体であるアシロキシアルケンが好ましい。
【0024】
得られるホルミルアシロキシアルカンを水素添加反応後、分子内環化反応によって環状エーテルとして3−メチル−テトラヒドロフランが得られる観点から、前記のアシロキシアルケンは、1,4−ジアシロキシ−2−ブテンもしくは3,4−ジアシロキシ−1−ブテンが好ましい。さらに、容易に入手可能であり経済的に有利な酢酸を原料とする観点からも、前記アシロキシアルケンは、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンもしくは3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましい。さらに目的とする脱カルボン酸体が高選択率で得られる観点から、前記のアシロキシアルケンは1,4−ジアセトキシ2−ブテンであることがより好ましい。前記アシロキシアルケンは、公知の合成方法又は市販品として入手することができる。
【0025】
前記周期表第8〜10族遷移金属化合物は、周期表の第8〜10族(IUPAC無機化学命名法改訂版(1998)による)に属する遷移金属からなる群より選ばれる、一以上の遷移金属を含む化合物である。前記遷移金属化合物は一種でも二種以上でもよい。このような遷移金属化合物としては、例えば、鉄化合物、ルテニウム化合物、オスミウム化合物、コバルト化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物が挙げられる。これらの中でもルテニウム化合物、コバルト化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物が好ましく、特にコバルト化合物及びロジウム化合物が好ましく、ロジウム化合物が最
も好ましい。これらの化合物の種類は、活性な金属錯体種であれば、単量体、二量体、及び多量体の何れであっても構わない。化合物の種類としては、例えば、前記遷移金属の酢酸塩、アセチルセトネイト化合物、ハライド、硫酸塩、硝酸塩、有機塩、無機塩、アルケン配位化合物、アミン配位化合物、ピリジン配位化合物、一酸化炭素配位化合物、ホスフィン配位化合物、及びホスファイト配位化合物が挙げられる。
【0026】
前記鉄化合物としては、例えばFe(OAc)2、Fe(acac)3、FeCl2、及びFe(NO33が挙げられる。前記ルテニウム化合物としては、例えばRuCl3、Ru(OAc)3、Ru(acac)3、及びRuCl2(PPh33が挙げられる。前記オスミウム化合物としては、例えばOsCl3、及びOs(OAc)3が挙げられる。前記コバルト化合物としては、例えばCo(OAc)2、Co(acac)2、CoBr2、及びCo(NO32が挙げられる。前記ロジウム化合物としては、例えばRhCl3、RhI3、Rh(NO33、Rh(OAc)3、RhCl(CO)(PPh32、RhH(CO)(PPh33、RhCl(PPh33、Rh(acac)3、Rh(acac)(CO)2、Rh(acac)(cod)、[Rh(OAc)22、[Rh(OAc)(cod)]2、[RhCl(CO)]2、[RhCl(cod)]2、及びRh4(CO)12が挙げられる。前記イリジウム化合物としては、例えばIrCl3、Ir(OAc)3、及び[IrCl(cod)]2が挙げられる。前記ニッケル化合物としては、例えばNiCl2、NiBr2、Ni(NO32、NiSO4、Ni(cod)2、及びNiCl2(PPh33が挙げられる。前記パラジウム化合物としては、例えばPdCl2、PdCl2(cod)、PdCl2(PPh32、Pd(PPh34、Pd2(dba)3、K2PdCl4、PdCl2(CH3CN)2、Pd(NO32、Pd(OAc)2、PdSO4、及びPd(acac)2が挙げられる。前記白金化合物としては、例えばPt(acac)2、PtCl2(cod)、PtCl2(CH3CN)2、PtCl2(PhCN)2、Pt(PPh34、K2PtCl4、Na2PtCl6、及びH2PtCl6が挙げられる。なお、以上の例示において、「cod」は1,5−シクロオクタジエンを、「dba」はジベンジリデンアセトンを、「acac」はアセチルアセトネイトを、「Ac」はアセチル基を、「Ph」はフェニル基をそれぞれ表す。前記遷移金属化合物は、公知の合成方法によって、又は市販品として入手することができる。
【0027】
本発明のホルミルアシロキシアルカンの製造方法における前記遷移金属化合物の使用量は、原料や触媒等を含む80℃、10MPaにおける反応原料混合液中での濃度で、通常0.1ppm以上であり、好ましくは1ppm以上であり、より好ましくは10ppm以上であり、通常10,000ppm以下であり、好ましくは1,000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下である。
【0028】
前記有機リン化合物には、単座の有機リン化合物や、二座の有機リン化合物を使用することができる。前記有機リン化合物は一種でも二種以上でもよい。単座の有機リン化合物は、
P(R)3
で表すことができる。ここで、Rは、独立して、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基又はシクロアルキルオキシ基を表す。
【0029】
前記Rが表すアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、t−ブチルフェニル基、及びt−ブチルナフチル基が挙げられ、前記Rが表すアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、o−t−ブチルフェノキシ基、及びo−エチルフェノキシ基が挙げられる。また、前記Rが表すアルキル基としては、例えば、n−ブチル基、及びn−オクチル基が挙げられ、前記Rが表すアルコキシ基としては、例えばn−オクチルオキシ基が挙げられる。さらに、前記Rが表すシクロアルキル基としては、例えばシ
クロヘキシル基が挙げられ、前記Rが表すシクロアルキルオキシ基としては、例えばシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。なお、前記Rは、本発明の効果が得られる範囲において、いかなる置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシル基、及びアミノ基が挙げられる。
【0030】
前記単座の有機リン化合物としては、例えば、トリエチルホスファイト、ジエチルフェニルホスファイト、ジフェニルメチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−イソプロピルフェニル)ホスファイト、トリス(2−フェニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジ(2−メチルフェニル)(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、及びジ(2−t−ブチルフェニル)(2−メチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト類;ジ(フェニル)(フェニル)ホスホナイト、ジ(フェニル)(2−メチルフェニル)ホスホナイト、ジ(フェニル)(エチル)ホスホナイト、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(2−メチルフェニル)ホスホナイト、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(エチル)ホスホナイト、ジ(エチル)(フェニル)ホスホナイト及びジ(エチル)(メチル)ホスホナイト等のホスホナイト類;(フェニル)ジ(フェニル)ホスフィナイト、(フェニル)ジ(エチル)ホスフィナイト、(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ジ(2−メチルフェニル)ホスフィナイト、(エチル)ジ(ジフェニル)ホスフィナイト及び(エチル)ジ(メチル)ホスフィナイト等のホスフィナイト類;トリフェニルホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、フェニルジエチルホスフィン、トリブチルホスフィン及びトリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン類が挙げられる。
【0031】
これらの中でもホスファイト類が特に好ましく、上記の具体例の内、最も好ましい単座ホスファイトとしては、トリス(2−フェニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが挙げられる。
【0032】
前記二座の有機リン化合物には、二つの有機リンユニットからなる化合物を用いることができる。これらの有機リンユニットは同じでも異なっていてもよい。このような有機リンユニットとしては、例えば、リンに三つの炭素原子が結合したホスフィンタイプ、リンに二つの炭素原子と一つの酸素原子が結合したようなホスフィナイトタイプ、リンに一つの炭素原子と二つの酸素原子が結合したようなホスホナイトタイプ、及び、リンに三つの酸素原子が結合したようなホスファイトタイプが挙げられ、有機リンユニットはこれらのいずれかであることが好ましい。その場合、二座の有機リン化合物の二つの有機リンユニットは、ホスフィン−ホスフィン化合物(二座ホスフィン化合物)のように同じタイプのものであっても、ホスフィン−ホスファイト化合物のように異なるタイプの化合物であっても構わない。しかしながら、それらの中では、特に二座ホスファイト化合物が好ましい。
【0033】
前記の二座ホスファイト化合物は、例えば特開平10−45776号公報に記載の二座ホスファイト化合物が挙げられる。好ましい化合物としては、特開平10−45776号公報に記載の(1)〜(156)の二座ホスファイト化合物が挙げられ、より好ましくは特開平10−45776号公報に記載の、下記の(1)〜(14)が挙げられる。
【0034】
【化4】

【0035】
前記有機リン化合物は、公知の合成方法によって、又は市販品として入手することができる。
【0036】
本発明のホルミルアシロキシアルカンの製造方法における前記有機リン化合物の使用量は、前記遷移金属化合物1モル当たり通常1モル以上であり、好ましくは15モル以上で
あり、より好ましくは25モル以上であり、通常1,000モル以下であり、好ましくは500モル以下であり、より好ましくは100モル以下である。
【0037】
前記塩基性物質には、塩基性を示す有機化合物及び無機塩を用いることができる。塩基性物質は一種でも二種以上でもよい。有機化合物の塩基性物質としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、トリオクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン及びジメチルドデシルアミン等の単座のトリアルキルアミン;ジメチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、ジイソプロピルフェニルアミン、ジメチル−p−トリルアミン、メチルジフェニルアミン、エチルジフェニルアミン、イソプロピルジフェニルアミン、メチルジ−p−トリルアミン及びメチルフェニル−p−トリルアミン等の単座のアリールアルキルアミン;トリフェニルアミン、ジフェニル−p−トリルアミン、フェニルジ−p−トリルアミン及びトリ−p−トリルアミン等の単座のトリアリールアミン;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチルピペラジン、2,2’−ビス(ジメチルアミノ)ビフェニル、N,N,N’,N’−テトラメチル−1及び2−フェニレンジアミン等の二座の第三級アミン;1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,8,11−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、1,1,4,7,7−ペンタメチル−1,4,7−トリアザヘプタン等の三座以上のアミン化合物;ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,3−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、4−メトキシピリジン、4−t−ブチルピリジン、2−クロロピリジン、キノリン、2−メチルキノリン、イソキノリン、1−メチルイソキノリン及び5−アザフェナントレン等の単座のピリジン;2,2’−ビピリジル、2,2’−ビキノリル、1,8−ジアザビフェニレン、1,10−フェナントロリン、ビス(2−ピリジル)メタン、1,2−ビス(2−ピリジル)−1,2−エタンジオン、1,2−ビス(2−ピリジル)エタン、1,2−ビス(2−キノリル)エタン等の二座のピリジン;2,2’’:6’,2’’−ターピリジル、4,4’,4’’−トリ−t−ブチル−2,2’:6’,2’’−ターピリジル、2,6−ビス(ジ(2−ピリジル)メチル)ピリジン及び2,6−ビス(8−キノリル)ピリジン等の三座以上のピリジン;トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン及びトリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィンが挙げられる。
【0038】
無機化合物の塩基性物質としては、例えば、酢酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、酢酸カリウム、酪酸カリウム等のアルカリ金属のカルボン酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、t−ブトキシナトリウム、メトキシカリウム、エトキシカリウム、t−ブトキシカリウム等のアルカリ金属のアルコシキド化合物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。
【0039】
塩基性物質は、より高収率で目的物を得る観点から、有機化合物の塩基性物質では単座のトリアルキルアミン、アリールアルキルアミン、トリアリールアミン、二座の第三級アミン及び三座以上のアミン化合物が好ましく、特に単座のトリアルキルアミンが好ましい。無機化合物の塩基性物質では、弱塩基性の無機塩であるアルカリ金属のカルボン酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩及びアルカリ金属の炭酸塩が好ましい。塩基性物質には、例えば市販品を用いることができる。
【0040】
本発明のホルミルアシロキシアルカンの製造方法における塩基性物質の使用量は、ヒドロホルミル化物の脱カルボン酸化物を十分に得る観点、塩基性物質の触媒被毒によるヒドロホルミル化反応の活性の低下を抑制する観点、及び原料化合物の分解反応を抑制する観点から、前記遷移金属化合物に対して5〜7,000モルであり、20〜7,000モルであることが好ましい。前記塩基性物質の使用量は、ヒドロホルミル化物の脱カルボン酸化物を十分に得る観点から、前記遷移金属化合物に対して5モル以上であることが好ましく、20モル以上であることがより好ましく、50モル以上であることがさらに好ましい。また、前記塩基性物質の使用量は、塩基性物質の触媒被毒によるヒドロホルミル化反応の活性の低下を抑制する観点、及び原料化合物の分解反応を抑制する観点から、前記遷移金属化合物に対して7,000モル以下であることが好ましく、4,000モル以下であることがより好ましく、2,000モル以下であることがさらに好ましい。
【0041】
本発明のホルミルアシロキシアルカンの製造方法において、水素及び一酸化炭素は、通常、反応系において前記原料混合液と十分に気液接触するように供給される。例えば水素及び一酸化炭素は、反応中において原料混合液中に連続して吹き込まれてもよいし、原料混合液が気液接触にとって十分に撹拌される反応器へ連続して、又は断続的に、或いは一括して充填されてもよい。水素は、ジアシロキシアルケンに対して2モル当量以上反応系に供給されればよく、一酸化炭素は、ジアシロキシアルケンに対して1モル当量以上反応系に供給されればよい。水素及び一酸化炭素は、両者を混合して反応系へ供給してもよいし、独立して反応系へ供給してもよい。水素と一酸化炭素のモル比は、水素:一酸化炭素で、通常1:10〜10:1であり、好ましくは1:5〜5:1であり、より好ましくは1:3〜3:1である。
【0042】
本発明のホルミルアシロキシアルカンの製造方法では、反応の開始から全ての反応の終了まで水素と一酸化炭素の両方を反応系へ供給してもよいし、ジアシロキシアルケンのヒドロホルミル化までは水素と一酸化炭素の両方を反応系へ供給し、その後は水素のみを反応系へ供給してもよい。一酸化炭素の供給の終点は、例えば一酸化炭素の反応系内外での収支が一定になることによって決めることができる。
【0043】
本発明のホルミルアシロキシアルカンの製造方法における反応温度は、通常、十分な反応活性を得る観点から20℃以上であり、好ましくは35℃であり、より好ましくは50℃以上である。また前記反応系内の温度は、通常、原料化合物の熱分解による消失や、触媒の分解に伴う失活を抑制する観点から250℃以下であり、好ましくは200℃以下であり、さらに好ましくは150℃以下である。
【0044】
本発明のホルミルアシロキシアルカンの製造方法は、通常、0.1MPa以上の圧力の条件下で行われる。この圧力は、好ましくは1MPa以上であり、さらに好ましくは5MPa以上である。反応系内の前記圧力は、例えば水素及び一酸化炭素の供給、又は窒素等の反応系において不活性なガスの供給によって調整することができる。
【0045】
本発明のホルミルアシロキシアルカンの製造方法は、溶媒の存在下或いは非存在下のどちらでも行うことができる。無溶媒の方が経済性の観点からは好ましいが、ジアシロキシアルケンに対する触媒の溶解性が悪い場合、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒の種類は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定はない。溶媒は、触媒及び反応原料を少なくとも一部溶解させる溶媒であって、反応活性や反応の選択性に悪影響を及ぼさない溶媒が好ましい。溶媒は、単一の化合物で形成されていても複数の化合物の混合物で形成されていてもよい。このような溶媒としては、例えば、水;ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジアリルエーテル、テトラヒドロフラン(T
HF)、及びジオキサン等のエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、γ−ブチロラクトン、及びジ(n−オクチル)フタレイト等のエステル類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸及び2エチルヘキサン酸等のカルボン酸類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、及びドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、及びドデカン等の脂肪族炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン、及び四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、プロピオニトリル、及びベンゾニトリル等のニトリル類等;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブチルアルコール、n−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、n−ノナノール、及びn−デカノール等のアルコール類;が挙げられる。また、反応で生成する、目的化合物であるホルミルアシロキシアルカンよりも高い沸点を有する高沸点化合物を反応器へとリサイクルし、溶媒として用いてもよい。
【0046】
前記溶媒は、ホルミル基のさらなる反応を防止する観点から、エーテル類、芳香族炭化水素類、又は脂肪族炭化水素類であることが好ましい。また、経済性の観点から、反応後の精製工程で触媒を溶媒と共に回収し反応器へリサイクルしてもよい。その場合、前記溶媒は、精製工程でホルミルアシロキシアルカンと蒸留分離することができる、前記高沸点化合物であることが好ましい。
【0047】
本発明のホルミルアシロキシアルカンの製造方法における溶媒の使用量は、前記反応混合液(前述の原料及び触媒)の総重量に対して、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましい。また前記溶媒の使用量は、95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。
【0048】
本発明では、前述した方法で得られたホルミルアシロキシアルカンを水素添加反応させアシロキシアルコールとした後に分子内環化反応させることによって、環状エーテルの製造することができる。
【0049】
前記水素添加反応では、原料であるホルミルアシロキシアルカンとして、前述した製造方法における反応生成物をそのまま、又は精製して用いることができる。反応生成物からのホルミルアシロキシアルカンの精製は、例えば抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の公知の方法によって行うことができる。
【0050】
前記水素添加反応は、水素添加用の固体触媒もしくは均一系触媒の存在下で、ホルミルアシロキシアルカン又はそれを含有する液と水素とを気液接触させることによって行うことができる。このような水素添加反応は、水素添加反応における通常の技術を利用して行うことができる。
【0051】
前記固体触媒としては、アルデヒド類の水素化に用いる触媒のいずれもが使用でき、例えば、珪藻土、セライト等の担体に、ニッケル、クロム、銅等の活性成分を担持させた触媒が挙げられる。特に、珪藻土を担体として、ニッケル及び/又はクロムを活性成分として担持させた固体触媒が本発明においては好ましい。
【0052】
前記固体触媒の使用量は、通常、十分な反応活性を得る観点から、反応混合液の全重量に対して、0.1重量%〜100重量%であることが好ましく、1重量%〜80重量%であることがより好ましく、5重量%〜50重量%であることがさらに好ましい。
【0053】
前記均一系触媒としては、周期表の第8〜10族(IUPAC無機化学命名法改訂版(
1998)による)に属する遷移金属からなる群より選ばれる、一以上の遷移金属を含む化合物が挙げられる。前記遷移金属化合物は一種でも二種以上でもよい。このような遷移金属化合物としては、例えば、鉄化合物、ルテニウム化合物、オスミウム化合物、コバルト化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物が挙げられる。これらの中でもルテニウム化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物が好ましい。これらの化合物の種類は、活性な金属錯体種であれば、単量体、二量体、及び多量体の何れであっても構わない。化合物の種類としては、例えば、前記遷移金属の酢酸塩、アセチルセトネイト化合物、ハライド、硫酸塩、硝酸塩、有機塩、無機塩、アルケン配位化合物、アミン配位化合物、ピリジン配位化合物、一酸化炭素配位化合物、ホスフィン配位化合物、及びホスファイト配位化合物が挙げられる。
【0054】
前記均一系触媒の例として、前記鉄化合物としては、例えばFe(OAc)2、Fe(acac)3、FeCl2、及びFe(NO33が挙げられる。前記ルテニウム化合物としては、例えばRuCl3、RuBr3、RuI3、Ru(OAc)3、Ru(acac)3、RuCl2(PPh33、RuCl2(CO)2(PPh32、RuH2(CO)(PPh33、CpRuCl(PPh32、Cp*RuCl2多核体、Cp*Ru(cod)Cl、Ru(cod)Cl2多核体、Ru(benzene)Cl2二核体、及びRu(p-cymene)Cl2二核体が挙げられる。前記オスミウム化合物としては、例えばOsCl3、及びOs(OAc)3が挙げられる。前記コバルト化合物としては、例えばCo(OAc)2、Co(acac)2、CoBr2、及びCo(NO32が挙げられる。前記ロジウム化合物としては、例えばRhCl3、RhI3、Rh(NO33、Rh(OAc)3、Rh(acac)3、[Rh(OAc)22、[RhCl(cod)]2、及びRh4(CO)12が挙げられる。前記イリジウム化合物としては、例えばIrCl3、Ir(OAc)3、及び[IrCl(cod)]2が挙げられる。前記ニッケル化合物としては、例えばNiCl2、NiBr2、Ni(NO32、NiSO4、Ni(cod)2、及びNiCl2(PPh33が挙げられる。前記パラジウム化合物としては、例えばPdCl2、PdCl2(cod)、PdCl2(PPh32、Pd(PPh34、Pd2(dba)3、K2PdCl4、PdCl2(CH3CN)2、Pd(NO32、Pd(OAc)2、PdSO4、及びPd(acac)2が挙げられる。前記白金化合物としては、例えばPt(acac)2、PtCl2(cod)、PtCl2(CH3CN)2、PtCl2(PhCN)2、Pt(PPh34、K2PtCl4、Na2PtCl6、及びH2PtCl6が挙げられる。なお、以上の例示において、「cod」は1,5−シクロオクタジエンを、「dba」はジベンジリデンアセトンを、「acac」はアセチルアセトネイトを、「Ac」はアセチル基を、「Ph」はフェニル基を、「Cp」はシクロペンタジエニル基を、「Cp*」はペンタメチルシクロペンタジエニル基をそれぞれ表す。前記遷移金属化合物は、公知の合成方法によって、又は市販品として入手することができる。
【0055】
前記均一系触媒の使用量は、十分な反応活性を得る観点から、反応混合液中での濃度で、通常0.1ppm以上であり、好ましくは1ppm以上であり、より好ましくは10ppm以上であり、通常10,000ppm以下であり、好ましくは5,000ppm以下であり、より好ましくは1,000ppm以下である。
【0056】
前記水素添加反応の反応温度は、通常、十分な反応活性を得る観点から40℃以上であり、好ましくは80℃以上である。また、前記反応温度は、通常、原料化合物の熱分解による消失を抑制する観点から250℃以下であり、好ましくは200℃以下である。
【0057】
前記水素添加反応の反応圧力は、通常、十分な反応活性を得る観点から0.5MPa以上であり、好ましくは1MPa以上であり、さらに好ましくは3MPa以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは、20MPa以下であり、より好ましくは10MPa
以下である。
【0058】
前記分子内環化反応では、原料であるアシロキシアルコールとして、前述した製造方法における反応生成物をそのまま、又は精製して用いることができる。反応生成物からのアシロキシアルコールの精製は、例えば抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の公知の方法によって行うことができる。
【0059】
前記分子内環化反応は、酸性触媒の存在下、もしくは触媒の非存在下、高温条件下で、脱カルボン酸反応によって行われる。原料化合物の熱分解による消失を抑制する観点から、より低温で反応が進行する酸性触媒の存在下での分子内環化反応が好ましい。前記酸性触媒は一種でも二種以上でもよい。酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸等の均一系触媒;アルミナ、シリカアルミナ、活性白土、及び陽イオン交換樹脂等の固体酸触媒が挙げられる。
【0060】
前記分子内環化反応における硫酸等の均一系酸性触媒の使用量は、通常、十分な反応活性を得る観点から、ヒドロキシアシロキシアルカンに対して0.0001モル〜1モルであることが好ましく、0.0005モル〜0.8モルであることがより好ましく、0.001モル〜0.5モルであることがさらに好ましい。また、前記分子内環化反応における陽イオン交換樹脂等の固体酸触媒の使用量は、通常、十分な反応活性を得る観点から、反応混合液の全重量に対して、0.1重量%〜150重量%であることが好ましく、1重量%〜100重量%であることがより好ましく、10重量%〜80重量%であることがさらに好ましい。
【0061】
前記分子内環化反応における反応温度は、通常、十分な反応活性を得る観点から30℃以上であり、好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは70℃以上である。また、前記反応温度は、通常、原料化合物の熱分解による消失を抑制する観点から200℃以下であり、好ましくは180℃以下であり、さらに好ましくは160℃以下である
【0062】
本発明によれば、ジアシロキシアルケンからホルミルアシロキシアルカンを一段階で得ることができる。また、本発明によって得られるホルミルアシロキシアルカンを原料として、例えば、水素添加反応、分子内環化反応をさらに行うことで環状エーテルを製造することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例1
シス−1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの一段階ヒドロホルミル化−脱カルボン酸反応
触媒調製用のガラス容器に、窒素雰囲気下で[Rh(cod)(OAc)]2(1.2mg、0.0044mmol、以下、「Rh」とも言う)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(143.1mg、0.2212mmol)を仕込み、シス−1,4−ジアセトキシ−2−ブテン(4.875g、28.3122mmol)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.0313g、0.2422mmol、Rhの55等量)とトルエン(5.8mL)とガスクロマトグラフィー分析用の内部標準であるn−ドデカン(1.0mL)加えて溶解させ、当該溶液を別途用意した内容量50mLのステンレス鋼オートクレーブに窒素雰囲気下で仕込んだ後、オートクレーブを密閉した。このオートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、42重量ppmである。
【0065】
当該オートクレーブを80℃まで昇温した後、水素及び一酸化炭素の混合ガス(混合比
:水素/一酸化炭素=2/1)を系内圧力が10MPaになるように圧入して反応を開始した。なお、混合ガスはオートクレーブ内に取り付けられたフィード管を通して、反応液中にバブリングさせながら導入し、反応液の撹拌はオートクレーブ内に磁性撹拌子を予め入れておき、磁性撹拌機を用いて撹拌した。また、反応器内でガスが消費され内圧が低下した場合には、蓄圧器から二次圧力調整器を通して混合ガスを自動供給し、系内圧力を絶えず10MPaに保った。反応は、蓄圧器の内圧をモニタリングし、ガス消費に伴う蓄圧器の圧力低下がほぼ停止するまで継続し、本実施例では前記の条件で5時間攪拌した。
【0066】
反応終了後、オートクレーブを室温まで冷却し、反応液を取り出してガスクロマトグラフィーで分析し、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率を測定した。また、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンのヒドロホルミル化反応で生成した1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンは、ガスクロマトグラフィーで分析すると注入口部で熱分解し正確な収率を測定できないため、反応液を1H−NMRにて分析し、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率を測定した。1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの脱カルボン酸反応生成物である3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテン、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの水素添加物である3−ホルミル−1−アセトキシブタン、及び、副生物である4−ホルミル−1−アセトキシブタン、1,4−ジアセトキシブタン、及び1−アセトキシ−3−ブテンは、前記反応液を1H−NMRで分析し、その収率を求めた。
【0067】
その結果、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は99.9%であり、以下の表1に示すように、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は94.7%であった。また、4−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は3.8%であり、1,4−ジアセトキシブタンの収率は1.4%であり、1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であった。
【0068】
【表1】

【0069】
表1中、「(1)」は1、4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンを表し、「(2)」は3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンを表し、「(3)」は3−ホルミル−1−
アセトキシブタンを表し、「(4)」は4−ホルミル−1−アセトキシブタンを表し、「(5)」は1,4−ジアセトキシブタンを表し、「(6)」は1−アセトキシ−3−ブテンを表している。
【0070】
実施例2
実施例1において、N,N−ジイソプロピルエチルアミンの代わりにトリエチルアミン(0.052g、0.5163mmol、Rhの116等量)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作により実施した。本実施例において、オートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、42重量ppmである。
【0071】
得られた反応液を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー及び1H−NMRにて分析したところ、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は99.9%であり、表1に示すように、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は93.2%であった。また、4−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は5.4%であり、1,4−ジアセトキシブタンの収率は1.3%であり、1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であった。
【0072】
実施例3
実施例1において、N,N−ジイソプロピルエチルアミンの代わりに酢酸ナトリウム(0.0424g、0.5169mmol、Rhの116等量)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作により実施した。本実施例において、オートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、42重量ppmであり、反応液の撹拌時間は6時間であった。
【0073】
得られた反応液を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー及び1H−NMRにて分析したところ、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は99.9%であり、表1に示すように、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は94.5%であった。また、4−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は4.1%であり、1,4−ジアセトキシブタンの収率は1.3%であり、1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であった。
【0074】
実施例4
実施例1において、N,N−ジイソプロピルエチルアミンの代わりに炭酸ナトリウム(0.0552g、0.5208mmol、Rhの117等量)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作により実施した。本実施例において、オートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、41重量ppmであり、反応液の撹拌時間が6時間であった。
【0075】
得られた反応液を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー及び1H−NMRにて分析したところ、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は99.8%であり、表1に示すように、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は92.8%であった。また、4−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は5.6%であり、1,4−ジアセトキシブタンの収率は1.4%であり、1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であった。
【0076】
実施例5
実施例1において、N,N−ジイソプロピルエチルアミンの使用量を0.0054g(0.0418mmol、Rhの9等量)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作により実施した。本実施例において、オートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、45重
量ppmであり、反応液の撹拌時間が4時間であった。
【0077】
得られた反応液を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー及び1H−NMRにて分析したところ、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は99.3%であり、表1に示すように、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率は24.0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は72.2%であった。また、4−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は2.5%であり、1,4−ジアセトキシブタンの収率は1.6%であり、1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であった。
【0078】
実施例6
実施例2において、トリエチルアミンの使用量を0.0028g(0.0275mmol、Rhの7等量)に変更したこと以外は実施例2と同様の操作により実施した。本実施例において、オートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、39重量ppmであり、反応液の撹拌時間が4時間であった。
【0079】
得られた反応液を実施例2と同様にしてガスクロマトグラフィー及び1H−NMRにて分析したところ、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は99.9%であり、表1に示すように、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率は52.4%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は46.0%であった。また、4−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は0%であり、1,4−ジアセトキシブタンの収率は1.5%であり、1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であった。
【0080】
実施例7
実施例2において、トリエチルアミンの使用量を0.495g(4.8961mmol、Rhの1,102等量)と変更したこと以外は実施例2と同様の操作により実施した。本実施例において、オートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、41重量ppmであり、反応液の撹拌時間が2時間であった。
【0081】
得られた反応液を実施例2と同様にしてガスクロマトグラフィー及び1H−NMRにて分析したところ、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は99.9%であり、表1に示すように、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は77.1%であった。また、4−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は21.6%であり、1,4−ジアセトキシブタンの収率は1.2%であり、1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であった。
【0082】
実施例8
実施例2において、トリエチルアミンの使用量を2.5706g(25.4263mmol、Rhの5,723等量)と変更したこと以外は実施例2と同様の操作により実施した。本実施例において、オートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、42重量ppmであり、反応液の撹拌時間が6時間であった。
【0083】
得られた反応液を実施例2と同様にしてガスクロマトグラフィー及び1H−NMRにて分析したところ、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は97.4%であり、表1に示すように、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は63.2%であった。また、4−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は29.9%であり、1,4−ジアセトキシブタンの収率は1.0%であり、1−アセ
トキシ−3−ブテンの収率は3.3%であった。
【0084】
実施例9
実施例1において、N,N−ジイソプロピルエチルアミンの代わりに4−メトキシピリジン(0.0502g、0.4600mmol、Rhの104等量)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作により実施した。本実施例において、オートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、42重量ppmであり、反応液の撹拌時間が2時間であった。
【0085】
得られた反応液を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー及び1H−NMRにて分析したところ、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は58.0%であり、表1に示すように、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率は7.3%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの収率は7.7%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は32.3%であった。また、4−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は3.1%であり、1,4−ジアセトキシブタンの収率は1.2%であり、1−アセトキシ−3−ブテンの収率は6.4%であった。
【0086】
比較例1
実施例2において、トリエチルアミンの使用量を0.0005g(0.0049mmol、Rhの1等量)に変更したこと以外は実施例2と同様の操作により実施した。本比較例において、オートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、46重量ppmであり、反応液の撹拌時間が4時間であった。
【0087】
得られた反応液を実施例2と同様にしてガスクロマトグラフィー及び1H−NMRにて分析したところ、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は99.9%であり、表1に示すように、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率は80.4%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は17.7%であった。また、4−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は0%であり、1,4−ジアセトキシブタンの収率は1.8%であり、1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であった。
【0088】
比較例1では、実施例2に比して、80.4%がヒドロホルミル化反応で停止し脱カルボン酸反応が良好に進行しなかった。
【0089】
比較例2
実施例2において、トルエンを加えず、トリエチルアミンの使用量を5.2534g(51.9624mmol、Rhの10,797等量)に変更したこと以外は実施例2と同様の操作により実施した。本比較例において、オートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、46重量ppmであり、反応液の撹拌時間が2時間であった。
【0090】
得られた反応液を実施例2と同様にしてガスクロマトグラフィー及び1H−NMRにて分析したところ、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は42.2%であり、表1に示すように、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの収率は2.2%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は20.8%であった。また、4−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は3.0%であり、1,4−ジアセトキシブタンの収率は1.1%であり、1−アセトキシ−3−ブテンの収率は15.1%であった。
【0091】
比較例2では、実施例2に比して、原料転化率が42.2%であり、さらに原料分解物である1−アセトキシ−3−ブテンが15.1%生成した。
【0092】
実施例10
実施例1において、[Rh(cod)(OAc)]2の使用量を4.3mg(0.0159mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミンの使用量を0.1449mg(1.1212mmol、Rhの70等量)、(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトの代わりに前記二座ホスファイト化合物(11)(69.6mg、0.065mmol)を用い、系内圧力を3MPaに変更したこと以外は実施例1と同様の操作により実施した。本実施例において、オートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、157重量ppmであり、反応液の撹拌時間が5.5時間であった。
【0093】
得られた反応液を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー及び1H−NMRにて分析したところ、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの転化率は91.7%であり、1,4−ジアセトキシ−2−ホルミルブタンの収率は3.5%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−3−ブテンの収率は6.6%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は61.8%であった。また、4−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は14.8%であり、1,4−ジアセトキシブタンの収率は5.0%であり、1−アセトキシ−3−ブテンの収率は0%であった。
【0094】
実施例11
3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの一段階ヒドロホルミル化−脱カルボン酸反応
実施例2において、シス−1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの代わりに3,4−ジアセトキシ−1−ブテン(4.782g、27.7733mmol)を用い、トリエチルアミンの使用量を0.5550g(5.4896mmol、Rhの1,236等量)とし、反応温度を50℃に変更したこと以外は実施例2と同様の操作により実施した。本実施例において、オートクレーブの内容液におけるRhの濃度は、40重量ppmであり、反応液の撹拌時間が4時間であった。
【0095】
得られた反応液を実施例2と同様にしてガスクロマトグラフィー及び1H−NMRにて分析したところ、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの転化率は99.9%であり、1,2−ジアセトキシ−3−ホルミルブタンの収率は0%であり、3−ホルミル−1−アセトキシ−2−ブテンの収率は21.6%であり、3−ホルミル−1−アセトキシブタンの収率は52.9%であった。また、1,2−ジアセトキシ−4−ホルミルブタンの収率は25.4%であった。
【0096】
実施例12
一段階ヒドロホルミル化−脱カルボン酸反応
実施例1において、シス−1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを111g(646mmol)用い、原料比、温度、圧力、操作方法を実施例1の条件に合わせ、内容量500mLのステンレス鋼オートクレーブにて6時間攪拌した。得られた反応液をオートクレーブから500mLのナスフラスコへ移し、20mmHgの減圧下で150℃のオイルバスに浸して、蒸留精製を行ったところ、80.5gの3−ホルミル−1−アセトキシブタン(105℃/20mmHg、純度92%)溶液(溶液I)を得た。
【0097】
水素添加反応
内容量200mLのステンレス鋼オートクレーブに、水素気流下150℃で加熱し還元活性化を行った水素添加触媒(珪藻土を担体とし、ニッケル担持量12重量% 、クロム担持量2 重量%の固体触媒)17gを窒素下で仕込んだ。一方、500mLの耐熱瓶に3−ホルミル−1−アセトキシブタン溶液(溶液I)を40.02g、トルエンを40.02g加え混合し、当該溶液を前記内容量200mLのステンレス鋼オートクレーブに窒素雰囲気下で仕込んだ後、オートクレーブを密閉した。
【0098】
当該オートクレーブを100℃まで昇温した後、水素を系内圧力が5MPaになるように圧入して反応を開始した。なお、水素はオートクレーブ内に取り付けられたフィード管を通して、反応液中にバブリングさせながら導入し、反応液の撹拌はオートクレーブ内に磁性撹拌子を予め入れておき、磁性撹拌機を用いて撹拌した。また、反応器内でガスが消費され内圧が低下した場合には、蓄圧器から二次圧力調整器を通して混合ガスを自動供給し、系内圧力を絶えず5MPaに保った。反応は、蓄圧器の内圧をモニタリングし、ガス消費に伴う蓄圧器の圧力低下がほぼ停止するまで継続し、本実施例では前記の条件で4時間攪拌した。
【0099】
反応終了後、オートクレーブを室温まで冷却し、反応液を取り出して、ロータリーエバポレータを用いて蒸発濃縮処理を行うことによりトルエンを除去し、粗4−アセトキシ−2−メチル−1−ブタノール(純度85%)溶液(溶液II)を得た。
【0100】
分子内環化反応
単蒸留装置を備えた内容量50mLの2口フラスコに、粗4−アセトキシ−2−メチル−1−ブタノール(純度85%)溶液(溶液II)を30g、強酸性陽イオン交換樹脂であるダイヤイオンSK1BH(三菱化学株式会社の登録商標)を10g加え、100℃のオイルバスに浸し7時間加熱し、さらにオイルバスの温度を110℃まで昇温し7時間加熱し、留出温度が50℃の留出液を17.98g得た。この留出液は水層と有機層に分離しており、有機相側のみを取り出し、3−メチルテトラヒドロフラン14.31g(純度90%)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0101】
ホルミルアシロキシアルカンは、環状エーテル等の原料として工業的に有用な化合物である。本発明は、ホルミルアシロキシアルカンをジアシロキシアルケンから一段階の反応で生成することから、ホルミルアシロキシアルカンに由来する化合物の工業的な生産に大きく貢献することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジアシロキシアルケンを、周期表の第8〜10族遷移金属化合物、有機リン化合物、及び周期表の第8〜10族遷移金属化合物に対して5〜7,000モル量の塩基性物質の存在下で、水素及び一酸化炭素と反応させて、下記式(2)で表されるホルミルアシロキシアルカンを製造する方法。
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2及びR4はそれぞれ水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜10のアシロキシ基、又は炭素数2〜11のアシロキシアルキル基を表し、R3及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基を表す。ただし、R2及びR4のいずれか一つは前記アシロキシ基又は前記アシロキシアルキル基を表す。)
【化2】

(式(2)中、R2〜R5は式(1)と同じである。)
【請求項2】
塩基性物質の量が周期表の第8〜10族遷移金属化合物に対して50〜7,000モル量である請求項1に記載のホルミルアシロキシアルカンの製造方法。
【請求項3】
前記ジアシロキシアルケンが1,4−ジアシロキシ−2−ブテンである請求項1又は2に記載のホルミルアシロキシアルカンの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法によりホルミルアシロキシアルカンを得て、得られたホルミルアシロキシアルカンを水素添加反応させた後に分子内環化反応させることを特徴とする環状エーテルの製造方法。

【公開番号】特開2011−246426(P2011−246426A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124440(P2010−124440)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】