説明

ホルムアルデヒド捕捉剤及びそれを用いる木質材料

【課題】木質材料の変色や新たな健康被害の原因となることの無く、優れたホルムアルデヒド捕捉性能が得られるホルムアルデヒド捕捉剤及びそれを用いる木質材料を提供する。
【解決手段】ホルムアルデヒド捕捉剤は、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを含む。第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを、第1リン酸アンモニウム/第2リン酸アンモニウム=70/30〜10/90の範囲の重量比で含むことが好ましく、第1リン酸アンモニウム/第2リン酸アンモニウム=60/40〜10/90の範囲の重量比で含むことがさらに好ましい。木質材料は、前記ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布してなる。前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、乾燥重量で1〜30g/mの範囲で塗布することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具、建材、保温材、緩衝材、断熱材、車両用内装材等から放散されるホルムアルデヒドを捕捉するホルムアルデヒド捕捉剤及びそれを用いる木質材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合板、パーティクルボード等の木質材料の製造、あるいは前記木質材料を用いる家具、建材等の製造の際には、ホルムアルデヒド系接着剤が用いられていることがある。この場合、前記家具、建材等からは、前記接着剤から遊離したホルムアルデヒドが放散されるが、近年、家屋の気密性が高くなるに従って、該ホルムアルデヒドによりシックハウス症候群等の健康被害が起きている。
【0003】
また、車両用シート等の車両用内装材の製造の際にも前記ホルムアルデヒド系接着剤が用いられていることがある。この場合には、車室が一般家屋に比較して狭い上、一般家屋よりも格段に気密性が高いために、前記ホルムアルデヒドによる被害が深刻である。
【0004】
また、これら以外にも保温材、緩衝材、断熱材等はグラスウール、ロックウール等をアミノ樹脂接着剤を用いて固定することにより製造されており、一般住宅を初め、ビル、工場、倉庫等の内装材として使用されている。これらの材料からも前記ホルムアルデヒドが放散されており、居室内部が僅かではあるが汚染されている。
【0005】
そこで、従来、前記ホルムアルデヒドを捕捉、分解するホルムアルデヒド捕捉剤が知られている。前記ホルムアルデヒド捕捉剤として、例えば、亜硫酸ナトリウムと第1リン酸アンモニウムとを含むものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、前記従来のホルムアルデヒド捕捉剤は、前記家具、建材等に塗布したときに前記亜硫酸ナトリウムにより木質材料が変色することがあるという不都合がある。また、前記亜硫酸ナトリウムは、皮膚に対する感作性があり、吸入したときには喘息様反応を起こすことがあるため、新たな健康被害の原因となる虞がある。
【特許文献1】特開昭62−183305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、木質材料を変色させたり、新たな健康被害の原因となることの無く、優れたホルムアルデヒド捕捉性能を得ることができるホルムアルデヒド捕捉剤を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の目的は、前記ホルムアルデヒド捕捉剤を用いることにより、変色したり、新たな健康被害の原因となることの無い、ホルムアルデヒド放散量の低減された木質材料を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを含むことを特徴とする。本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを含むことにより優れたホルムアルデヒド捕捉性能を得ることができる。また、亜硫酸ナトリウムを含まないので、木質材料を変色させにくく、新たな健康被害を起こすことがない。
【0010】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを、第1リン酸アンモニウム/第2リン酸アンモニウム=7/3〜1/9の範囲の重量比で含むことが好ましい。第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとの重量比が第1リン酸アンモニウム/第2リン酸アンモニウム=7/3より大きいと、十分なホルムアルデヒド捕捉性能を得ることができないことがある。また、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとの重量比が第1リン酸アンモニウム/第2リン酸アンモニウム=1/9より小さいと、家具、建材等に塗布したときに、木質材料が変色することがある。
【0011】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを、第1リン酸アンモニウム/第2リン酸アンモニウム=6/4〜1/9の範囲の重量比で含むことがさらに好ましい。本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとの重量比が前記範囲にあることにより、特に優れたホルムアルデヒド捕捉性能を得ることができ、ホルムアルデヒドの放散量を著しく低減することができる。
【0012】
また、本発明の木質材料は、前記ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布してなることを特徴とする。本発明の木質材料は、前記ホルムアルデヒド捕捉剤を、乾燥重量で1〜30g/mの範囲で塗布してなることが好ましい。前記ホルムアルデヒド捕捉剤の塗布量が乾燥重量で1g/m未満ではホルムアルデヒドの放散量を低減する効果を十分に得ることができないことがあり、30g/mを超えると該ホルムアルデヒド捕捉剤の粉末が木質材料の表面に残り、外観品質を低減することがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0014】
本実施形態のホルムアルデヒド捕捉剤は、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを含むものである。ここで、第1リン酸アンモニウムは、NHPOで示され、リン酸二水素アンモニウムとも呼ばれる。また、第2リン酸アンモニウムは、(NHHPOで示され、リン酸水素二アンモニウムとも呼ばれる。
【0015】
リン酸アンモニウム塩としては、さらに(NHPOで示される第3リン酸アンモニウムが考えられるが、第3リン酸アンモニウムは分解しやすく、利用することが難しい。
【0016】
本実施形態のホルムアルデヒド捕捉剤は、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを、第1リン酸アンモニウム/第2リン酸アンモニウム=7/3〜1/9の範囲の重量比で含むことが好ましく、第1リン酸アンモニウム/第2リン酸アンモニウム=6/4〜1/9の範囲の重量比で含むことがさらに好ましい。本実施形態のホルムアルデヒド捕捉剤は、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを、前記範囲で含むことにより、家具、建材等に塗布したときに、木質材料を変色させることなく、優れたホルムアルデヒド捕捉性能を得ることができる。
【0017】
本実施形態のホルムアルデヒド捕捉剤は、そのホルムアルデヒド捕捉性能を損なわない範囲で、他の公知のホルムアルデヒド消臭剤が配合されていてもよく、界面活性剤、防腐剤、防菌剤、防黴剤、防虫剤、防蟻剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、防錆剤、染料、顔料、分散剤、消泡剤、凍結防止剤、弱酸金属塩、金属ハロゲン化物、増量剤、充填剤、合成樹脂エマルジョン等の各種配合剤が配合されていてもよい。前記公知のホルムアルデヒド消臭剤としては、例えば、パーライト、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、尿素、エチレン尿素、硫酸第一鉄とL−アスコルビン酸との結合体、ヒドラジド化合物、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、苛性ソーダ等を挙げることができる。また、前記界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、硫酸エステル型陰イオン界面活性剤、リン酸エステル型陰イオン界面活性剤等を挙げることができる。また、前記弱酸金属塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。また、前記金属ハロゲン化物としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等を挙げることができる。また、前記増量剤、充填剤としては、例えば、結晶シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ等を挙げることができる。また、前記合成樹脂エマルジョンとしては、例えば、酢酸ビニル重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、酢酸ビニル−バーサテート共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、アクリル酸エステル重合体エマルジョン、アクリル酸エステル−スチレン共重合体エマルジョン、塩化ビニル重合体エマルジョン、ウレタン重合体エマルジョン、シリコーン重合体エマルジョン、エポキシ重合体エマルジョン、ワックスエマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス等を挙げることができる。
【0018】
本実施形態のホルムアルデヒド捕捉剤は、イオン交換水に溶解して、例えば1〜30重量%の濃度の範囲の水溶液として、家具、建材等の木質材料、車両内装材等に塗布することにより使用される。このとき、前記木質材料に対しては、乾燥重量で1〜30g/mの範囲となるように塗布することが好ましい。前記木質材料に対して、前記ホルムアルデヒド捕捉剤を、前記範囲の乾燥重量となるように塗布することにより、ホルムアルデヒド放散量が低減され、しかも変色の無い木質材料を得ることができる。
【0019】
尚、リン酸塩としては、前記第1乃至第3のリン酸アンモニウムに対応して、第1乃至第3リン酸ナトリウム、第1乃至第3リン酸カリウム等がある。しかし、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを除く、他のリン酸塩を単独または相互に混合しても、十分なホルムアルデヒド捕捉性能を得ることができないか、あるいは木質材料に変色が発生する。
【0020】
また、本実施形態のホルムアルデヒド捕捉剤は、粉末または該粉末の溶液もしくは分散液の形に調製することができ、これを適当な合成樹脂と混合することにより消臭性樹脂組成物とすることもできる。前記合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、メタアクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテルポリスルホン、ポリフェニレンエーテルポリスルフィド等の熱可塑性合成樹脂;エポキシ樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、マレイン酸樹脂、ケイ酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性合成樹脂;ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、でんぷん、デキストリン、イソブチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、ポリアクリルアミド樹脂等の水性高分子等を挙げることができる。
【0021】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例1】
【0022】
本実施例では、第1リン酸アンモニウム80重量部と、第2リン酸アンモニウム20重量部とを混合してホルムアルデヒド捕捉剤を調製した。前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、全量に対して20重量%の第2リン酸アンモニウムを含む。
【0023】
次に、本実施例で得られたホルムアルデヒド捕捉剤をイオン交換水に溶解して、10重量%の濃度のホルムアルデヒド捕捉剤水溶液を調製した。次に、前記ホルムアルデヒド捕捉剤水溶液を、予め調製した試験材の両面に、各面に対する前記ホルムアルデヒド捕捉剤の塗布量が2g/900cmとなるように塗布し、2〜3日風乾したものをホルムアルデヒド放散量測定のための試料とした。前記試料は、木質材料として見た場合、乾燥重量で2.2g/mの前記ホルムアルデヒド捕捉剤をその表面に塗布したものである。
【0024】
前記試験材は、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂系接着剤を用いて、厚さ1.7mmの黄ラワンの両面に、厚さ0.7mmの黄ラワンを貼り合わせることにより調製した合板である。前記メラミン・ホルムアルデヒド樹脂系接着剤は、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂100重量部、粒状尿素3重量部、小麦粉(赤花)20重量部、水10重量部、塩化アンモニウム2重量部の組成を備えている。また、前記メラミン・ホルムアルデヒド樹脂は、不揮発分59%、粘度0.22Pa・s(23℃)、pH9.0、密度1.200g/cm、ゲル化時間15分(60℃)、遊離ホルムアルデヒド0.5%である。
【0025】
前記合板は、各黄ラワンの間に28g/900cmとなるように前記メラミン・ホルムアルデヒド樹脂系接着剤を塗布した後、10kg/cmで30分間の冷圧と、120℃、10kg/cmで60秒間の熱圧とをかけて接着した。この結果、前記合板は、ホルムアルデヒドの放散量がJASに定められたホルムアルデヒド放散量基準でF☆☆(平均値1.5mg/L、最大値2.1mg/L)となっている。
【0026】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布した前記試料のホルムアルデヒド放散量は、JASのガラスデシケータ法により測定し、次式により捕捉率を算出した。
【0027】
捕捉率(%)=(Fc−Fd)/Fc×100
式中、Fcは前記ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布していない前記試験材のホルムアルデヒド放散量であり、Fdは前記ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布した前記試験材のホルムアルデヒド放散量である。
【0028】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布した前記試験材のホルムアルデヒド放散量、該ホルムアルデヒド捕捉剤の捕捉率を表1に、該ホルムアルデヒド捕捉剤の組成と該捕捉率との関係を図1に示す。
【0029】
次に、前記ホルムアルデヒド捕捉剤水溶液を、ラーチ材の表面に前記ホルムアルデヒド捕捉剤の塗布量が4g/900cmとなるように塗布し、2〜3日風乾した後、目視により、木質材料に対する汚染(変色)の有無を判定した。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0030】
本実施例では、第1リン酸アンモニウム70重量部と、第2リン酸アンモニウム30重量部とを混合してホルムアルデヒド捕捉剤を調製した。前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、全量に対して30重量%の第2リン酸アンモニウムを含む。
【0031】
次に、本実施例で得られたホルムアルデヒド捕捉剤を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布した前記試験材のホルムアルデヒド放散量、該ホルムアルデヒド捕捉剤の捕捉率を測定すると共に、木質材料に対する汚染(変色)の有無を判定した。結果を表1、図1に示す。
【実施例3】
【0032】
本実施例では、第1リン酸アンモニウム60重量部と、第2リン酸アンモニウム40重量部とを混合してホルムアルデヒド捕捉剤を調製した。前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、全量に対して40重量%の第2リン酸アンモニウムを含む。
【0033】
次に、本実施例で得られたホルムアルデヒド捕捉剤を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布した前記試験材のホルムアルデヒド放散量、該ホルムアルデヒド捕捉剤の捕捉率を測定すると共に、木質材料に対する汚染(変色)の有無を判定した。結果を表1、図1に示す。
【実施例4】
【0034】
本実施例では、第1リン酸アンモニウム40重量部と、第2リン酸アンモニウム60重量部とを混合してホルムアルデヒド捕捉剤を調製した。前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、全量に対して60重量%の第2リン酸アンモニウムを含む。
【0035】
次に、本実施例で得られたホルムアルデヒド捕捉剤を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布した前記試験材のホルムアルデヒド放散量、該ホルムアルデヒド捕捉剤の捕捉率を測定すると共に、木質材料に対する汚染(変色)の有無を判定した。結果を表1、図1に示す。
【実施例5】
【0036】
本実施例では、第1リン酸アンモニウム20重量部と、第2リン酸アンモニウム80重量部とを混合してホルムアルデヒド捕捉剤を調製した。前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、全量に対して80重量%の第2リン酸アンモニウムを含む。
【0037】
次に、本実施例で得られたホルムアルデヒド捕捉剤を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布した前記試験材のホルムアルデヒド放散量、該ホルムアルデヒド捕捉剤の捕捉率を測定すると共に、木質材料に対する汚染(変色)の有無を判定した。結果を表1、図1に示す。
【実施例6】
【0038】
本実施例では、第1リン酸アンモニウム10重量部と、第2リン酸アンモニウム90重量部とを混合してホルムアルデヒド捕捉剤を調製した。前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、全量に対して90重量%の第2リン酸アンモニウムを含む。
【0039】
次に、本実施例で得られたホルムアルデヒド捕捉剤を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布した前記試験材のホルムアルデヒド放散量、該ホルムアルデヒド捕捉剤の捕捉率を測定すると共に、木質材料に対する汚染(変色)の有無を判定した。結果を表1、図1に示す。
〔比較例1〕
本比較例では、第1リン酸アンモニウムのみを用いてホルムアルデヒド捕捉剤とした。前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、第2リン酸アンモニウムを全く含んでいない。
【0040】
次に、本比較例のホルムアルデヒド捕捉剤を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布した前記試験材のホルムアルデヒド放散量、該ホルムアルデヒド捕捉剤の捕捉率を測定すると共に、木質材料に対する汚染(変色)の有無を判定した。結果を表1、図1に示す。
〔比較例2〕
本比較例では、第2リン酸アンモニウムのみを用いてホルムアルデヒド捕捉剤とした。前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、全量に対して100重量%の第2リン酸アンモニウムを含む。
【0041】
次に、本比較例で得られたホルムアルデヒド捕捉剤を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布した前記試験材のホルムアルデヒド放散量、該ホルムアルデヒド捕捉剤の捕捉率を測定すると共に、木質材料に対する汚染(変色)の有無を判定した。結果を表1、図1に示す。
〔比較例3〕
本比較例では、第1リン酸カリウム(KHPO)20重量部と、第2リン酸カリウム(KHPO)80重量部とを混合してホルムアルデヒド捕捉剤を調製した。
【0042】
次に、本比較例で得られたホルムアルデヒド捕捉剤を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布した前記試験材のホルムアルデヒド放散量、該ホルムアルデヒド捕捉剤の捕捉率を測定すると共に、木質材料に対する汚染(変色)の有無を判定した。結果を表1、図1に示す。
〔比較例4〕
本比較例では、第3リン酸カリウム(KHPO)のみを用いてホルムアルデヒド捕捉剤とした。
【0043】
次に、本比較例のホルムアルデヒド捕捉剤を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布した前記試験材のホルムアルデヒド放散量、該ホルムアルデヒド捕捉剤の捕捉率を測定すると共に、木質材料に対する汚染(変色)の有無を判定した。結果を表1、図1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1及び図1から、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを、80/20〜10/90の範囲の重量比で含む実施例1〜6のホルムアルデヒド捕捉剤によれば、第1リン酸アンモニウムのみからなる比較例1のホルムアルデヒド捕捉剤、または第1リン酸カリウムと第2リン酸カリウムとを含む比較例3のホルムアルデヒド捕捉剤に比較して、ホルムアルデヒドの放散量が少ないと共に、捕捉率が大きく、優れたホルムアルデヒド捕捉性能を備えており、しかも木質材料の変色を生じないことが明らかである。
【0046】
一方、第2リン酸アンモニウムのみからなる比較例2のホルムアルデヒド捕捉剤は、実施例1〜6のホルムアルデヒド捕捉剤と同等のホルムアルデヒド捕捉性能を備えているが、木質材料の変色を生じることが明らかである。また、第3リン酸カリウムのみからなる比較例4のホルムアルデヒド捕捉剤は、実施例1〜6のホルムアルデヒド捕捉剤より優れたホルムアルデヒド捕捉性能を備えているが、木質材料の変色を生じることが明らかである。
【0047】
JASに定められたホルムアルデヒド放散量基準によれば、F☆☆☆は平均値0.5mg/L、最大値0.7mg/Lであり、F☆☆☆☆は平均値0.3mg/L、最大値0.4mg/Lである。従って、F☆☆☆の平均値の木質材料にホルムアルデヒド捕捉剤を塗布して該木質材料をF☆☆☆☆の平均値とするためには、該ホルムアルデヒド捕捉剤が捕捉率40%以上の捕捉性能を備えている必要がある。また、F☆☆☆の最大値の木質材料にホルムアルデヒド捕捉剤を塗布して該木質材料をF☆☆☆☆の最大値とするためには、該ホルムアルデヒド捕捉剤が捕捉率42%以上の捕捉性能を備えている必要がある。さらに、F☆☆☆の最大値の木質材料にホルムアルデヒド捕捉剤を塗布して該木質材料をF☆☆☆☆の平均値とするためには、該ホルムアルデヒド捕捉剤が捕捉率58%以上の捕捉性能を備えている必要がある。
【0048】
この点について、実施例1〜6のホルムアルデヒド捕捉剤によれば、表1から明らかなように、捕捉率44%以上の捕捉性能を得ることができ、F☆☆☆の平均値の木質材料に該ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布すれば該木質材料をF☆☆☆☆の平均値とすることができ、さらにF☆☆☆の最大値の木質材料に塗布しても該木質材料をF☆☆☆☆の最大値とすることができる。さらに、実施例4〜6のホルムアルデヒド捕捉剤によれば、表1から明らかなように、捕捉率61%以上の捕捉性能を得ることができ、F☆☆☆の最大値の木質材料に該ホルムアルデヒド捕捉剤を塗布すれば該木質材料をF☆☆☆☆の平均値とすることができる。
【0049】
従って、実施例1〜6の試料は、木質材料として見た場合、ホルムアルデヒド放散量が低減されていてシックハウス症候群等の健康被害の原因となることを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のホルムアルデヒド捕捉剤の組成と捕捉率との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0051】
符号なし。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを含むことを特徴とするホルムアルデヒド捕捉剤。
【請求項2】
第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを、第1リン酸アンモニウム/第2リン酸アンモニウム=70/30〜10/90の範囲の重量比で含むことを特徴とする請求項1記載のホルムアルデヒド捕捉剤。
【請求項3】
第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを、第1リン酸アンモニウム/第2リン酸アンモニウム=60/40〜10/90の範囲の重量比で含むことを特徴とする請求項1記載のホルムアルデヒド捕捉剤。
【請求項4】
第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを含むホルムアルデヒド捕捉剤を塗布してなることを特徴とする木質材料。
【請求項5】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤を、乾燥重量で1〜30g/mの範囲で塗布してなることを特徴とする請求項4記載の木質材料。
【請求項6】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを、第1リン酸アンモニウム/第2リン酸アンモニウム=70/30〜10/90の範囲の重量比で含むことを特徴とする請求項4または5記載の木質材料。
【請求項7】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、第1リン酸アンモニウムと第2リン酸アンモニウムとを、第1リン酸アンモニウム/第2リン酸アンモニウム=60/40〜10/90の範囲の重量比で含むことを特徴とする請求項4または5記載の木質材料。

【図1】
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【公開番号】特開2007−191575(P2007−191575A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10893(P2006−10893)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000205742)株式会社オーシカ (40)
【出願人】(500242384)出光テクノファイン株式会社 (55)
【Fターム(参考)】