説明

ホログラフィックデータストレージに使用するための位相マスク

空間光変調器(SLM)は、その内部構成要素として提供された位相マスクを有する。位相マスクは、透過型被覆窓の内面上にある比較的高屈折率の材料の多レベル表面として提供され得るか、あるいは被覆窓とSLMの画素との間にある独立した透過型窓として提供され得る。仮に位相マスクが液晶SLMと共に使用される場合、多レベル表面に隣接して比較的低屈折率の材料層を提供することにより、液晶と接触する被覆窓の表面を平坦化することが望ましいであろう。位相マスクはまた、パターン化されたイオン堆積により、パターン化された光を感光性ポリマー材料にさらすことにより、或いはその他幾らかの適切な様式により、透過型被覆窓に設けられ得る。画素電極を、正確に平坦な関係にて配置するよりはむしろ複数のレベルのうちの一つに配置することにより、位相マスクを効果的に作出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してホログラフィックデータストレージ(HDS)に関し、より詳細には、HDSのための空間光変調器(SLM)書き込みヘッド及びHDSにおける位相マスクの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィック光データストレージは、磁気テープ、磁気ディスク及びデジタルコンピュータデータの光学ディスクストレージに対する魅力的な代替物である。本明細書において参照により援用されているエイチ.ジェイ.コーファル(H.J.Coufal)、ディ.プサルティス(D.Psaltis)、ジー.ティ.シンセルボックス(G.T.Sincerbox)編による「ホログラフィックデータストレージ」(シュプリンガー−フェアラーク社、ベルリン、2000年)に記載されているように、それは、ドライブから除去可能な記憶媒体に高い許容量と、高い記録及び読み取りのデータ速度とを提供する。記憶されるべきデータは、情報を保持する光ビーム(信号ビーム)を参照光ビームと重ねることにより感光性の記憶媒体に書き込まれる。ビームがコヒーレントである、例えば、同一のレーザから到来する場合、ビームの干渉パターンにおける定在波は感光性材料の屈折率を変化させ、ホログラムを形成する。記憶されたデータは、記録されたホログラムを参照ビームのみを照射することによって読み出され、ホログラムは参照ビームから光を回折し、もとの情報保持ビームのコピーを作製する。マルチホログラムは、例えば参照ビームの角度を変えることにより、同容量の記憶媒体内に記録され得る。これは角度多重方式として公知である。その他多くのホログラム−多重技術は当業者に周知である。容量ストレージの使用は、非常に高い収容能力を可能にし、かつページ指向型ストレージ特有の平行性は、従来の1度に1ビットずつ(serial bit−at−a−time)の技術よりもはるかに高いデータ速度を提供する。
【0003】
記録されるべき、又は記憶されるべき情報は、空間光変調器(SLM)の使用を介する光ビームにより与えられる。SLMは入力された電子データを、例えば明画素と暗画素とからなる二次元画像に変換する。SLMにより変調された光は、ストレージ媒体内の記録されるべきHDS装置又はドライブの光学系を通過させられる。幾らかの場合、SLMは光の(強度又は振幅というよりはむしろ)位相を変調する。典型的には、SLMと記録媒体との間にてレンズを使用して、ストレージ媒体の感光性材料のホログラムが記録されるべき領域に、SLM画像の空間フーリエ変換を形成する。引き続いて、該媒体に記憶されたデータを読み取りたい場合には、記録媒体に記憶されたホログラムを参照ビームにより照射して、SLM画像を再構築し、該SLM画像は次にCCDカメラのような光検出器により検出される。ホログラフィックデータストレージシステムに適したSLMの一例は、米国特許第5748164号明細書及び米国特許第5808800号明細書に記載されているマイクロディスプレイ装置と同様に構築されたCMOSバックプレーン上の強誘電性液晶(FLCs)を使用して形成され、当該明細書の内容は、本明細書において参照により援用される。これらのSLMは例えば、マーク ハンドスキ(Mark Handschy)による「強誘電性液晶マイクロディスプレイのための半導体製造技術(Semiconductor manufacturing techniques for ferroelectric liquid crystal microdisuplays」(Solid Sate Technology、第43巻、第151−161頁、2000年)に記載されているように当業者には周知の技術により製造され得、当該文献は本明細書において参照により援用される。
【0004】
しかしながら、実用的なホログラフィックデータストレージシステムの実施に伴う幾らかの困難性は、単一ビームの光学経路のデザイン及び性能に帰着する。また、上述の特許明細書に記載されているような特定のFLC・SLM装置は、理想的な書き込みヘッドを形成しない。例えば、SLMが強度変調器として動作される場合、そのフーリエ変換は明るい中央スポット、DCスポットを含み、それらは周囲の光強度よりも60dB(100万倍)も明るい。このブライトスポットは光学記録媒体を飽和し、データを高品質にて記録及び再構築することを困難にする。
フーリエ面のDCブライト−スポットの問題は、波面を超えて固定された擬似ランダムな光学位相変化を課する位相マスクを光学系に導入することにより解決できることは当業者には周知である。しかしながら、位相マスク画像はSLM上に画像化される必要のあること及び位相マスク画像がSLMと非常に正確に整列される(マスク内の画素がSLM画像の画素と整列されること)必要のあることもまた当業者には認識されている(例えば、米国特許明細書第6281993号明細書の第1カラム第65行乃至第2カラム第4行、或いは、マリア−ピー.ベルナール(Maria−P.Bernal)、ジェフリー ダブリュ.バール(Geoffrey W.Burr)、ハンス コウファル(Hans Coufal)、ジョン エイ.ホフナグル(John A.Hoffnagle)、シー.マイケル ジェファーソン(C.Michael Jefferson)、ロジャー エム.マクファーレン(Roger M.Macfarlane)、ロバート エム.シェルビー(Robert M.Shelby)及びマニュエル クィンタニラ(Manuel Quintanilla)による「デジタルホログラフィックシステムの六段階位相マスクの影響の実験的研究(Experimental study of the effects of a six−level phase mask on a digital holographic system」(Applied Optics、第37巻、第2094−2101頁、1998年、当該技術文献は本明細書において参照により援用される)を参照されたい)。位相マスク及び該位相マスクに関連したリレー結像光学系は、ドライブの光学系にサイズと費用とを加えることになる。それは特に、マスク画像をSLMにミクロンのスケールにて整列させるという正確なオプトメカニクス技術が必要とされるからである。
【0005】
SLMを位相マスク上に画像化するために、独立したリレーレンズの必要性を排除するという大まかな試みが、上述の書物(コーファル、プサルティス及びシンセルボックス編)に記載されており、その中で、チョウ(Zhou)、モク(Mok)及びプサルティスは、ホログラフィックデータストレージシステムのためのSLMを形成するために、コーピン(Kopin)社のネマティック液晶SLMマイクロディスプレイの外側に位相マスクを取り付けることを開示している(249頁)。彼らは、SLMの画素のピッチと同じレイアウトのピッチを有する小型レンズ列として位相マスクを製造し、各小型レンズは、0、π/2、π、及び3π/2の位相の遅れに対応する4つの異なる量の一つをランダムに選択することにより基板内に埋め込まれている。次に、小型レンズの基板を完成した透過型液晶マイクロディスプレイの外側に取り付けた。
【0006】
このデザインにおいて、位相マスクの機能は異なる凹部の深さにより提供される。小型レンズの機能は、対応する画素開口上にある所定の凹部の領域を貫通する光を集光することである。ネマティック液晶SLMの構築にはほぼ1mmの厚みのガラス基板を必要とするので、凹部のレリーフパターンは画素開口面から少なくともこの距離だけ離間している。10−20μmの範囲において所望の画素ピッチを備えることにより、位相マスクの画素を通過する光は、小型レンズの恩恵を受けることなく、SLM基板の厚みを横切る時点までには多くの液晶画素を貫通するために不都合にも広がってしまうことになる。しかしながら、回折により、大きな距離だけ離間した面の小さなスポットに光を集光させるという直径の小さい小型レンズの能力が制限される。通常のガウスビーム光学は、小型レンズがビームの焦点を合わせることのできる最も小さいスポットは、d=(4λ/nπ)(F/D)である直径を有し、ここでF及びDはそれぞれ焦点距離及び小型レンズの直径であり、λは可視波長であり、nは窓の屈折率である、と指示している。小型レンズの直径Dは画素のピッチp以下であり、光の焦点を画素面に合わせるには小型レンズの焦点距離Fはガラス基板の厚みと等しく設定されることになるであろう。これらの関係に従うと、収容されるべき最も厚いガラス基板は、F=(π/4)(np/λ)の厚みを有する。適切な品質の画像を得るには、実際には、この式により示されたものよりさらに近接した間隙が画素と小型レンズに位相マスクを加えたものとの間には必要である。SLM画素ピッチp=12μm、かつ光の波長λ=0.5μmという典型的な場合に対して、屈折率n=1.5であるSLM基板の外側に位相マスクを配置するこの試みは、基板の厚みが実質的には340μm未満である場合にのみ有効である。そのような非常に薄くかつ壊れやすいガラス基板を用いてSLMを工業的に製造することは非実用的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景技術を鑑みて、そして従来技術における改善を望み、本願発明が達成された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ホログラフィックデータストレージシステムのための書き込みヘッドが提供され、該書き込みヘッドは空間光変調器と位相マスクとを含み、該空間光変調器は画素列に配置されており、該画素列を構成する画素の各々は該空間光変調器に指向する光を別々に変調することが可能であり、該位相マスクは、それを透過する光の位相を変更することが可能であり、位相変化の強度は、光が透過する位相マスクの特定の部分に依存する。位相マスクは、空間光変調器の内面に設けられている。
【0009】
空間光変調器は液晶空間光変調器であり得る。空間光変調器は、強誘電性液晶空間光変調器であり得る。空間光変調器は二つのほぼ平坦な表面の間に挟持された液晶材料の層を含み得る。平坦な表面の一方は、多レベル(multilevel)表面を有する比較的高屈折率の材料からなる層と、多レベル表面を有する比較的低屈折率の材料からなる層とを含む層状基板上に存在し、二つの多レベル表面は互いに対面している。層状基板はまた導電性の電極層を含み得る。
【0010】
導電性の電極層は、比較的高屈折率の材料からなる層の多レベル表面とは相対向する側に配置され得る。導電性の電極層は、比較的低屈折率の材料からなる層の多レベル表面とは相対向する側に配置され得る。平坦な表面の一つは、イオン拡散により達成される屈折率の変化する領域を含む基板上に存在し得る。平坦な表面の一つは、屈折率パターンを形成するためにパターン化された光にさらされた感光性ポリマー層を含む層状基板上に存在し得る。平坦な表面の一つは、層状の透過性窓の内面上に存在し得、該内面に隣接する層の一つが位相マスクを含んでいる。
【0011】
位相マスクは、空間光変調器の200μmの画素の内部に配置され得る。位相マスクは、空間光変調器の画素の距離dの範囲内にあり、ここで、dはp/λに等しく、pは空間光変調器の画素のピッチであり、かつλは空間光変調器に指向する光の波長である。ホログラフィックデータストレージシステムは画像系を有し、かつ位相マスクは、該ホログラフィックデータストレージシステムの画像系が位相マスクと画素とのいずれも解像することを可能にするために空間光変調器の画素に十分に接近され得る。位相マスクは画素化されているか、又はされていない。
【0012】
本発明の別の態様は、ホログラフィックデータストレージシステムのための書き込みヘッドであって、該書き込みヘッドは空間光変調器とガラス窓と位相マスクとを含み、該空間光変調器は画素列に配置されており、該画素列を構成する画素の各々は該空間光変調器に指向する光を別々に変調することが可能であり、該ガラス窓は、該空間光変調器の画素列に近接した状態にて、該空間光変調器の一方の側に配置されており、該位相マスクは、それを透過する光の位相を変更することが可能であり、位相変化の強度は光が透過する位相マスクの特定の部分に依存する、書き込みヘッドに関する。位相マスクは、ガラス窓と空間光変調器の画素列との間に提供される。
【0013】
位相マスクは空間光変調器の画素に対面するガラス窓の表面に隣接し得る。
本発明の別の態様は、ホログラフィックデータストレージシステムのための書き込みヘッドであって、該記書き込みヘッドは、空間光変調器と位相マスクとを含み、該空間光変調器は画素列に配置されており、該画素列を構成する画素の各々は該空間光変調器に指向する光を別々に変調することが可能であり、位相マスクは、該位相マスクを透過する光の位相を変更することが可能であり、かつ位相変化の強度は光が透過する位相マスクの特定の部分に依存する、書き込みヘッドに関する。位相マスクは空間光変調器の200μmの画素の範囲内に配置されている。
【0014】
本発明の別の態様は、ホログラフィックデータストレージシステムのための書き込みヘッドに関し、該書き込みヘッドは空間光変調器を含み、該空間光変調器は画素列に配置されており、該画素列を構成する画素の各々は該空間光変調器に指向する光を別々に変調することが可能であり、かつ該画素はピッチpを有する。該書き込みヘッドは更に位相マスクを含み、該位相マスクは、該位相マスクを透過する光の位相を変更することが可能であり、かつ位相変化の強度は、光が透過する位相マスクの特定の部分に依存している。該位相マスクは該空間光変調器の画素の距離dの範囲内に配置されており、ここでdはp/λに等しく、かつλは空間光変調器に指向する光の波長である。
【0015】
本発明の別の態様は、ホログラフィックデータストレージシステムのための書き込みヘッドに関し、該ホログラフィックデータストレージシステムは画像系を有する。該書き込みヘッドは空間光変調器と位相マスクとを含み、該空間光変調器は画素列に配置されており、該画素列を構成する画素の各々は該空間光変調器に指向する光を別々に変調することが可能であり、該位相マスクは、それを透過する光の位相を変更することが可能であり、位相変化の強度は、光が透過する位相マスクの特定の部分に依存する。位相マスクは、該ホログラフィックデータストレージシステムの画像系が位相マスクと画素とのいずれも解像することを可能にするために空間光変調器の画素に十分に接近され得る。
【0016】
位相マスクは画像系の画素の焦点深度内に配置され得る。
本発明の種々の付随的な特徴及び利点は以下に記載された更なる詳細な説明を考慮することにより当業者には明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の種々の関連した特徴を容易に示すべく添付した図面にて以下に参照される。本発明は主としてホログラフィックデータストレージの適用と関連して以下に記載されているが、位相マスクを用いて画像を変更することが必要であるか、又は望ましいその他の用途においても適用されることが明らかに理解されるべきである。この点に関して、改善されたホログラフィックデータストレージシステムの以下の記載は、例示及び記載の目的のために示されている。更に、その記載は、明細書に開示された形態に本発明を制限することを意図してはいない。従って、以下の示唆並びに関連した技術の技能及び知識と同等の変更例及び修正例も本発明の範囲内にある。本明細書に記載された実施形態は、本発明を実施するのに周知の形態を説明することを更に意図しており、そのような形態において、あるいはその他の実施形態及び本発明の特定の用途又は使用により必要とされる種々の修正例とともに本発明を使用することが当業者に可能であることが意図されている。
【0018】
図1は本発明に従うホログラフィックデータストレージシステム20の光学的配置を示す。図示されるように、レーザのようなコヒーレントな光源からのビーム22はビームスプリッタ24により二つのビーム、即ち信号ビーム26と参照ビーム28とに分けられる。信号ビーム26はディスプレイテック社(コロラド州、ロングモントに所在)により製造される製品により例示される強誘電性液晶変調器のような空間光変調器30に指向される。代替的に、空間光変調器(SLM)は、強誘電性液晶又はネマティック液晶のようなその他のタイプの液晶であるその他任意の適切なタイプのSLM、DLPの商標名にてテキサスインスツルメンツ(Texas Instruments)社により製造されているようなディジタルマイクロミラーデバイス(DMD)のようなMEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)装置若しくはその他のMEMS装置、或いは半導体多重量子井戸(MQW)SLMのような任意のその他適切なSLMであり得る。
【0019】
参照ビーム28及び信号ビーム26の一方(この場合は参照ビーム)は、軸から外れて指向しており、その後、光学ストレージ手段32に再指向している。該光学ストレージ手段32は任意の適切な感光性材料から構成され得る(例えば、インフェーズテクノロジーズ(InPhase Technologies)社(コロラド州、ロングモントに所在)又はアプリリス(Aprilis)社(マサチューセッツ州、ケンブリッジに所在)から入手される製品のような光屈折結晶又は感光性ポリマー)。信号ビーム26からの光は、SLM30にて変調され(透過又は反射にて作用する)、ストレージ手段32の同一の地点に同様に指向する。SLMにより変調された後、光学ストレージ手段32の内部にて信号ビーム26が参照ビーム28と干渉して、SLM30により表示されるデータの全てを表す三次元ホログラムを形成する。これが、ホログラフィックデータストレージシステム20を用いてデータをストレージ手段32に書き込む方法である。記憶されたホログラムは、データの画像又はページを表す。1000×1000の画素列を有するSLMにて理解されるように、1,000,000ビットのデータが各ホログラムに記憶可能である。
【0020】
ホログラフィックデータストレージシステム20を用いてストレージ手段32からデータを読み出すために、信号ビーム26及び空間光変調器30は必要ではなく、参照ビーム28のみをホログラムに照射する。検出器アレイの形態である検出器34は、ホログラムが参照ビーム28により照射された場合に生成された画像を読み取るために、ストレージ手段32の反対側に配置され得る。このようにして、画像を表示するか、又はデータのページに記憶されたデータビットを読み取ることにより、画像が再び読み取られ得る。明らかなように、CD−ROMドライブのような1回に1ビットずつの光学ストレージシステムよりははるかに速くデータを読み出すことが可能である。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態に従う空間光変調器40を示す。既に記載したFLCマイクロディスプレイの特許に開示されたSLMの様式において、このSLM40は、シリコン集積回路バックプレート42と、ガラス窓44とからなり、該バックプレート42とガラス窓44との間に挟持された液晶の薄膜46を備えている。記載されている実施形態は主として反射SLMに関するものであるが、本明細書において、本発明は透過型SLMにも等しく適用可能である。集積回路42の上面の金属パッド48は、反射画素を定義するミラーとして提供されるとともに膜46内の関連した液晶材料を駆動する電極としても提供されている。ミラー電極(金属パッド)48の下側にある集積回路は、各画素に電気駆動を供給する。窓44は、該窓の内面に隣接する、即ち、集積回路42に対面するとともに液晶材料の膜46と接触する窓の表面に隣接する位相マスク50を含む。位相マスク50は以下に詳細に述べるような種々の技術のうちのいずれかにより製造され得る。本実施形態において、位相マスク50は、液晶セルの間隙の厚みが、画素内において、及び一つの位相シフトを伴う画素から異なる位相シフトを伴う別の画素までにおいて、一定かつ均一であるように、窓の内面が平滑となるような方法にて製造される。
【0022】
位相マスク50は、SLM画素アレイの輪郭のはっきりした高品質の画像を容易に作出するために、以下に詳細に述べられた指針に従って、窓の内面に近接して配置される。仮に位相マスク50が画素面から離間するように離れてしまった場合、その位相の変化が画像化されるべき一つの画素から隣接する画素の位置まで光を広げるので、すりガラスにより窓の反対側にある物体がはっきりとは見えなくなる現象と全く同じように画像が不鮮明になってしまう。位相マスク50を画素に十分に接近させることにより、位相マスクの構造と画素とが同時に結像光学系により集光されることが好ましい。即ち、位相マスク50及び画素は結像光学系の焦点の深さ又は視野の深さの範囲内に両方が配置されるように十分に近接した状態にて離間されていることが好ましい。しかしながら、位相マスクと画素とをこのように近接した状態にて離間してSLMを製造することは幾分困難である。特に結像光学系が比較的大きい開口数(NA)を有する場合は困難である。画素画像の解像度が、画素が解像できるべき地点を越えて低減しないように位相マスクを画素に十分に近接させた状態でありながら、やや広い間隙の基準が必要である(たとえ、結像光学系が画素を解像するのに必要であるよりはるかに優れた解像度を有していたとしても)。この間隙は、結像光学系により最終的には回収される所定の画素の中心から広がる光線の束が画素と同じ大きさのスポットの大きさまで広がった距離から推定可能である。この距離Lは以下の式に従って、画像結像系の受光角(θ)に依存する:
【0023】
【数1】

ここで、pはSLMの画素のピッチであり、θは光学系の受光半角である。小さな受光角を備えた結像光学系は大きな焦点深度を有し、それは位相マスクを画素面から更に離間して配置することを可能にし、たぶん一体的な位相マスクを備えたSLMの製造が一層容易になるであろう。しかしながら、光の波動性は、受光角が小さくなると光学系の解像度を低下させる。アッベ(Abbe)の基準に従って、光学系は、以下の場合に画素を解像することが可能である:
【0024】
【数2】

ここで、光学系の開口数NAは、SLM窓の屈折率nと、光学系の開口を最終的には満たすSLM窓における光線の円錐部の半角θとにより定義される。輪郭の際立った再構築画像を保証するために、複数(m≧1)のSLMの空間高調波を通過させることが望ましく(典型的にはm≦3)、この場合上述の解像度の基準は以下のようになる:
【0025】
【数3】

式(3)により与えられた制限された開口数における光学系に対して、小さな角度の制限(sinθ≒tanθ)において式(1)に従う位相マスクとSLM画素との間の最大間隙Lは以下のようになる。
【0026】
【数4】

p=12μm、λ=0.5μm、n=1.5及びm=1.2という典型的な値の場合、この制限された間隙は、L=360μmとなる。位相マスクにより形成される画像の品質の低下を更に制限するために、位相マスクをSLM画素に更に近接して配置する、例えば、2倍近接して配置することが大いに好ましく、位相マスクとSLM画素との間隙が約200μm未満であることが必要とされる。
【0027】
好ましい許容可能な最大間隙Lの正確な値は、n及びmのような数値の特定の値、及び一つのデザインの系から別のデザインの系まで変更するホログラフィックデータストレージシステムの動作の多岐にわたる詳細に依存する。これらの理由から、既に記載されたLの値は推定値のみであり、いかなる場合においても、許容可能な最大値Lの値は、p/λとして計測され、画素ピッチp=12μmであるSLMを用いてλ=0.5μmにて動作するホログラフィックデータストレージシステムの場合、200μmに近い値をとるであろう。上記参照されたマイクロディスプレイ特許に記載されたようなSLMを製造する費用は、ホログラフィックデータストレージ光学系の費用の多くがそうであるように、画素のピッチを備えることにより急激に増大する。従って、pを今日の典型的な値である約12μm以下に低減するという強い動機が存在する。従って、本発明に従って形成されるがより小さな画素ピッチを有する将来的なSLMは、画素面に対して200μmよりはるかに近接した位相マスクを必要とするであろう。例えば、位相マスクを必要とする12μmのピッチであるSLMを備えたHDS系が200μmの画素面の範囲内にある場合、同様の特性を備えるが6μmのピッチであるSLMを備えた系は50μmの画素面の範囲内にある位相マスクを必要とする。
【0028】
今日の典型的な12μmの画素ピッチであるSLMと、実質的に画素ピッチが低減された将来的なSLMの両方に対して、高品質のSLMの画像の再構築を可能にするのに十分にSLM画素面に近接して配置された一体的な位相マスクを備えるSLMを製造する一方で、フーリエ面DCブライトスポットの問題を多少なりとも解決するための技術を提供することは本発明の目的である。
【0029】
図2に示される実施形態のSLM40に対して、位相マスクを備えた窓60を製造するための第一の方法が図3を参照して記載されている。TiO(n≒2)のような高屈折率材料の膜62は、SLM窓を形成するのに適したガラスウェハ64上に堆積されている。標準的な蒸着、化学蒸着(CVD)、イオンビームスパッタリング又はゾルゲルスピンオン技術がTiO膜を堆積させるために使用され得る。[例えば、エヌ.オーザー(N.Ozer)、エイチ.デミリオント(H.Demiryont)及びジェイ.エイチ.シモンズ(J.H.Simmons)による「ゾル−ゲルスピンコートTiO膜の光学特性及びイオンビームスパッタ膜との特性の比較(Optical properties of sol−gel spin−coated TiO films and comparison of the properties with ion−beam−sputtered films)」、Applied Optics、第30巻、第3661頁、1991年、を参照されたい。当該文献の内容は本明細書において参照により援用される。]高屈折率コーティングを形成するのに有用なその他の材料は、SiN、Ta、HfO、ZrO及びNbを含む。この高屈折率膜62の厚みは、次に、例えば、フォトリソグラフィーエッチングによりパターン化され、所定の光学位相シフト構造体を形成する。適度な厚みの均一な高屈折率膜を堆積し、(λ=400nmにて動作するTiO/ガラス構造体に対しては、200nmにほぼ等しい厚みであると言える)、次に、その下側にあるガラスウェハまでその一部がエッチングにより除去されることにより二成分位相マスクが形成される。代替的に、グレイスケールのホトリソグラフィーを用いて高屈折率膜をパターン化するか、或いは異なる厚みの一連の膜を連続的に堆積及びパターン化する当業者に周知の技術により多レベル位相マスクが形成され得る。チタニアパターンを形成する特に簡単な技術は米国特許第6303270号明細書に開示されており、当該明細書の内容は本明細書において参照により援用される。TiOのいずれかの側に選択的に反射防止コーティング(典型的にはアルミナのような中間の屈折率の材料からなる)を施すことにより不必要な反射が低減される。高屈折率膜62が堆積され、かつ適切なレリーフパターンが形成された後に、該レリーフは、例えばSiO(n≒1.46)からなる膜のような低屈折率膜66で高屈折率構造体を上塗りすることにより平坦化される。SiOは、CVDにより、蒸発により、或いは当業者に周知のその他種々の技術の任意のものにより再び堆積される。低屈折率材料は、高屈折率材料レリーフ構造体の頂部から底部までの高さに少なくとも等しい厚みを有するべきである。次に、残りのいかなるレリーフをも除去するために、低屈折率膜66の表面を、例えばシリコンVLSI産業において日常的に実施されている化学機械平坦化(CMP)工程のような研磨工程により平坦化される。代替的に、低屈折率材料は、スピン−オンガラス(SOG)として堆積され、この堆積法は本質的に平坦化を形成する。レリーフの高さと比較して低屈折率膜66の厚みが厚い程、平坦化の程度は高くなる。しかしながら、低屈折率膜66の厚みは、その厚みが上述の画素の間隙に対する位相マスクのガイドラインを超える地点を越えて増大させるべきではない。
【0030】
位相マスクを製造し、かつ平坦化した後、位相マスクに最も近い表面上にてガラスウェハ64はインジウムスズ酸化物のような透明な導電層68でコーティングされる。次に、埋め込まれた平坦化された位相マスク(位相マスク窓60)を備えたウェハ64は、これまでに使用された簡単なガラスウェハ又は窓と置換され、上述のマイクロディスプレイ特許及び論文に記載された技術に従ってSLM製造工程が完了する。透明なウェハ64は、コーピン社(マサチューセッツ州、タウントンに所在)により製造された透過型液晶SLMのような透過型SLM又はその他のAMLCD型装置を形成する方法において等しく置換され得る。
【0031】
窓に一体的に組み込まれた位相マスクを備えたSLMを製造する上述の技術には種々の変更例が存在する。例えば、低屈折率膜と高屈折率膜の役割を逆にすることもできる。即ち、低屈折率の膜をガラス基板上に堆積し、適切なレリーフを有するようにパターン化し、次に高屈折率コーティングを充填して平坦化することもできる。一般的なガラスウェハは既に低屈折材料を提供しているので、代替的に、レリーフ構造はガラスウェハを直接エッチングして、次に高屈折率コーティングを充填して、かつ平坦化することができる。更なる代替として、高屈折率材料を通常のガラス基板と代えることができる。例えば、サファイア又はSF6ガラスを使用することができる。次に、レリーフのプロファイルは高屈折率基板上に直接エッチングを行い、SiOのような低屈折率材料を充填し、かつ平坦化することも可能である。低屈折率及び高屈折率コーティング材料としてポリマー材料がまた使用され得る。クロロベンゼンに溶解させたPMMA(ポリメチルメタクリレート)は、低屈折率膜を形成するのに有用なスピンコーティング可能な材料の一例である。高屈折率ポリマー膜は例えば、ブリューワ・サイエンス(Brewer Science)社(ミズーリ州、ローラに所在)により提供される材料のようなポリマー/金属酸化物混成材料から形成され得る。ブリューワ・サイエンス社により提供されるT−Polyimのような選択されたポリイミドもまた高屈折率コーティングとして提供される。TiOはSiOに対して十分な屈折率コントラストを有し、400nmの厚みの層において2π位相シフト(ダブルパス反射形)を与える。
【0032】
SLM位相マスク窓80を製造する第二の方法は図4を参照して記載する。この第二の方法は、平坦な導波路を形成するために使用される種々のイオン交換技術に依存する[例えば、エス.ディ.ファントン(S.D.Fantone)の「傾斜屈折率材料のための屈折率及びスペクトルモデル(Refractive index and spectral models for gradient−index materials)」、Applied Optics、第22巻、第432頁、1983年を参照されたい。当該文献の内容は本明細書において参照により援用される]。ガラスウェハ82を溶融塩浴に浸漬し、一種類(Na+)のイオンをガラスから浴内に拡散する一方で、別の種類(K+又はAg+)のイオンを浴からガラスに拡散して、その屈折率を変更させる。0.007の屈折率の変化は、反射SLM画素に隣接して配置されるガラス表面の30μmの範囲内において2πの位相シフトを与える(ダブルパス)のに十分である。溶融塩浴に配置される前に、位相マスクを最終的には保持するであろうガラスウェハ82の側部は、イオンの拡散のバリアとして提供されるアルミニウムのような材料の薄層でコーティングされる。このバリア層は、イオンの拡散が望ましい箇所においては層を貫通するように孔をエッチングすることにより拡散マスクにパターン化される。空間的なプロファイルの屈折率の変化は、バリア層内の孔の密度、サイズ及び形状の適切なデザインにより制御され得る。更なる制御は、溶融塩浴の温度及び浸漬時間により得られる。浸漬は、複数の時間間隔に分けて実施することができ、拡散マスクは各浸漬時間の間の異なるパターンの新たな一つにより置き換えることができる。イオン拡散工程が完了後、拡散マスクは除去される。
【0033】
仮に空間的に変化するイオン拡散工程がガラスウェハ表面を不均一にした場合、再び平坦に再研磨される。特に液晶SLMにおける使用では、使用時にいかなるイオンも窓から液晶材料に拡散しないように、SiOの薄層のような透明な拡散バリアでイオン拡散ガラスウェハをコーティングすることが望ましい。ウェハ82の位相マスク側をインジウムスズ酸化物のような透明な導電コーティング84を用いてコーティングした後、ガラスウェハ80(今では位相マスク窓80である)は、これまでに参照された技術に従って容易にSLM(透過型或いは反射型のいずれか)に製造される。
【0034】
SLM位相マスク窓90を製造する第三の方法は、図5を参照して記載されている。ガラスウェハ92は感光性ポリマー94でコーティングされており、ランダムなパターン又は特定の屈折率のパターンを形成するためにパターン化した光にさらされる。適切な感光性ポリマーは従来のフォトレジスト並びに米国特許明細書第6103454号明細書、第6221536号明細書及び第5759721号明細書に開示されているようなホログラムを記録することを意図された感光性ポリマーを含み、該明細書の各々の内容は本明細書において参照により援用される。感光性ポリマー層94をウェハ92に配置した後(レーザ書き込みの前又は後に)、感光性ポリマー94は、可能性としては介在するバリア層(例えば、SiO)を備えた状態にて、インジウムスズ酸化物のような透明な導電コーティング96にて上塗りされる。次にガラスウェハはこれまでに参照された技術に従って容易に種々のSLMタイプに製造される。
【0035】
代替物として、実施可能な更なる新たな技術は、SLM画素との精密な整合を必要としない新規なシフトしない位相マスクの使用であり、コストを更に低減する。
図6は本発明の示唆に従うDMD装置100の一体的な部分として提供される位相マスクを示す。基板102はマイクロメカニカルミラー104の画素化アレイを含み、該ミラーは、周知のように、二つ以上の選択可能な方向のうちの一方に光を反射させるために制御され得る。従来のように、基板102はパッケージ化ハウジング104に取り付けられ、保護透過窓106により覆われた上方開口部を備えている。新規な様式においては、別の透過型窓108が、アレイ又はマイクロミラー104に近接した領域にて、基板に、接着剤110又はロウ付け若しくはフリットのようなその他適切な固定手段により取り付けられている。この透過型窓108は、貫通する光の位相を空間的に変更するために設けられた位相マスク112を含む。位相マスク110は必ずしも平坦化されている必要はない。それは、液晶の場合と異なり、位相マスク窓108の内面を平坦にする差し迫った理由がないからである。光は上方から、保護窓106及び位相マスク窓108を透過して、マイクロミラーのアレイで反射し、再び二つの窓106及び108を貫通する。理解されるように、仮に市販のDMD装置を購入して、そこに位相マスクを取り付けようと試みたとしたら、該位相マスクを保護窓106の外側に取り付けるか、あるいは幾分更に離れた位置に窓を配置する必要があるであろう。これにより画素面からかなり遠く離れてしまい、所望の結果が達成できないことになる。
【0036】
図7は、本発明に従って位相マスクを提供する代替的な試みを示す。この試みは液晶SLMについて記載されているが、DMD等のMEMS装置を含むその他任意のタイプのSLMにも等しく適用可能である。液晶SLM120はシリコン基板122及びガラス窓124を含む。ガラス窓124は、そのシリコン基板122と対面する側に透明な導体126(例えば、ITOから構成されているもの)を備える。この種のSLMにおいて従来的に使用されているように、ポリマー整合層128が透明な導体126に適用され得る。液晶材料140は二つの基板の間の間隙を満たしている。
【0037】
シリコン基板122は、反射画素ミラー130(例えば、アルミニウムからなる)で被覆された多レベル表面を含む。ミラー130は互いに対して異なる高さにあり、該ミラーが反射する光線間の位相差を提供し、それにより位相マスクの機能を実施する。ミラーは、種々の独立した高さにて存在する(例えば、二つの、四つの、八つの、又はそれ以上の異なる高さ)。種々のミラーから反射された光線間の光学的な位相差は高さの差に比例して生成される。例えば、ミラーが異なる二つの異なる高さにある場合、一つの高さにおけるミラーから反射されたビームと、別の高さのミラーから反射されたビームとの間は半波長の差であることが望ましいであろう。仮に液晶材料がn=1.5の屈折率を有し、かつSLMがλ=405nmの波長の光で動作している場合、二組のミラーの間の高さの差t=λ/(4n)=68nmであれば十分であろう。全波までの位相シフトは、135nmまでの範囲のミラー間の高さの差異を伴って生成される(例示した波長及び屈折率に対して)。必要とされる比較的小さな値のミラーの高さの差が与えられると、シリコン基板の表面は比較的滑らかかつ平坦な状態のままであり、液晶SLMの製造においても同様に使用され得る。代替的に、僅かに離間されたミラー130の多レベル表面の頂部上において、透明な誘電体の層132が適用され、次に、例えばCMPにより平坦化される。ミラーの各々130に対して、誘電体132を貫通するビア134が作製される。誘電体材料層132の頂部において、透明な導体136のアレイ(電極として作用する)が作製される。各導体136はビア134の一つにより、真下にある対応するミラー130に導電的に取り付けられる。透明な導体136のアレイの頂部には、ポリマー整合層138が設けられている。
【0038】
別のSLM150が図8乃至10に示されている。図8及び9に示されるように、SLM150はシリコンチップ152を含み、その上に画素ミラー/電極154アレイが画定されている。FLC材料層156はシリコンチップ152とガラス窓158との間に挟持されており、該材料層156はITOの透明な導体層160と整合層(図示しない)とを含み得る。別の整合層(図示しない)は画素ミラー/電極154の頂部に配置され得る。画素ミラー/電極154の一つに対する3−ステートドライバ162が図9のシリコンチップ152に示されている。
【0039】
3つの光変調状態が図10に示されており、FLCの光学軸は、3つの異なるドライブ状態の各々について示されている(光学軸164、166及び168)。少なくとも3つの状態は、非常に低い出力光振幅又は強度(OFFの状態)である一つの状態164と、高い出力強度である二つのその他の状態166及び168(ONの状態)を含み、そのうちの少なくとも二つは異なる光学位相を有する。これは画素の光学状態の総数が三つであるか、又は三つ以上であるかに関わらず、三元変調(ternary modulation)として参照される。
【0040】
これは図11により詳細に図示されており、SLM画素の挟持可能なFLC膜170が交差した偏光器(偏光器172及び分析器174)の間に配向されており、それによりFLCの光学軸が入射光の偏光方向のいずれかの側に切り替えられる。ここに示した例において、二つのFLC光学軸の配向が入射偏光の一方の側に等しく配置されており、出力光は、各状態に対して等しい強度であるが異なる位相を有する(即ち、一つの出力状態の位相は+π/2であり、別の状態の位相は、−π/2である)。これら二つの出力状態の強度は、通常通り、SLMのFLC膜170が半波長の総リターダンスを有する場合、即ち、反射SLMに対して4分の1波長のシングルパスリターダンスを有する場合に最大化される。二つのFLC光学軸の配向が入力偏光のいずれの側において完全に45°である場合に、出力強度は更に最大化される。ほぼゼロである出力強度の第三の状態(OFF状態)が、入射偏光とほぼ並行なFLC光学軸配向から得られる。印加された電気駆動信号を用いてFLC光学軸の配向をアナログ変更させることは、例えば、電傾効果、変形螺旋(deformable−helix)効果及びいわゆる「V型」スイッチング効果において周知である[例えば、マイケル ジェイ.オキャラハン(Michael J.O‘Callaghan)による「無しきい値のV型スイッチング強誘電性液晶におけるスイッチング動力学及び表面応力(Switching dynamics and surface forces in thresholdless “V−shaped” switching ferroelectric liquid crystals)」、Physical Review E、第67巻、論文011710、2003年を参照されたい。該文献の内容は本明細書において参照により援用される]。図7に示されている三つの光学軸の状態は、適切なアナログ応答を有するSLMの画素に対して三つの異なるレベルの電気駆動を適用することにより、得られる。
【0041】
図11を参照して記載された少なくとも三つの光学状態を有するSLMは、上述の位相マスクと類似の様式にて、フーリエ面のDCブライトスポットに関する問題を解決することができる。出力強度がゼロであることが望ましい画素は、入射偏光と平行なFLC光学軸を有するOFF状態を生成する電気レベルにて書き込まれる。ONであることが望ましい画素は、図11を参照して記載されたその他二つの状態のいずれかに書き込まれる。二つのON状態間の選択、即ち、+πの状態又は−πの状態(以下において、それぞれ+ON状態及び−ON状態と記載する)であるかの選択は、固定した位相マスクのデザインに対する規定と同じ様式にて正確になされる。
【0042】
上述のSLMの3−ステートスイッチングを実施するための別の方法が図12に示されている。その内容が本明細書において参照により援用されている米国特許第5182665号明細書及び米国特許第5552916号明細書に既に記載されているように、切り替え可能な回折は従来の二元FLC装置にて形成可能であり、光を変調するために使用され得る。実際に、我々が本明細書において開示しているように、上述の固定された位相マスクのそれとまさに類似する様式にてフーリエ面DCブライトスポットに関する問題を低減するためにそのようなSLMが機能することを可能とする様式にて位相と増幅変調との組み合わせを生成するために使用され得る。各画素電極180は図12に示されるように、二つのインターリーブセグメント、即ちセグメント182及びセグメント184に分割され、各セグメントはq/2の幅を有する。印加された電気駆動の二つのサインに対して、以下に列挙されるように、各画素が四つの状態を有する。
【0043】
【表1】

上記表の最初の二つの欄は、積層したFLCに対するセグメント電極により印加される電気駆動の極性を示す。正の駆動電圧が両方のセグメントに印加されると、それらのFLCの配向は平行となり、いずれも入射偏光方向の同じ側に配置され、アナログFLC位相変調器に対して上述のように同一の+ON状態を生成する。負の駆動電圧が両方の電極セグメントに印加されると、それらのFLCの配向は再び平行となるが、この場合はいずれも入射偏光方向の別の側に配置され、アナログFLC位相変調器に対して上述のように同一の−ON状態を生成する。相反する極の電圧が二つのセグメントに印加される場合、関連するFLC材料は、相反する光学軸方向を有するように切り替えられ、かつ「格子」を生成する。この格子は、上述の米国特許第5182665号明細書及び米国特許第5552916号明細書に従ってsinβ〜λ/qであるβ以上である角度にて、入射光の少なくとも一部を回折する。画素のピッチと比較して小さい格子ピッチを形成することにより、光は光学系の外側にて完全に回折され、該光学系の開口はSLMに書き込み可能な最も高い空間周波数、1/(2p)、の最初の2,3の高調波のみを回収するべく制限されており、それによりそのようにして駆動された画素に対してOFF状態の暗い画像を生成する。
【0044】
理解されるように、本明細書にて示唆された技術の多くは、画素列に十分に近接する位相マスクを構築する方法を扱うものである。これは、SLMにおける一体的かつ内側の位置に位相マスクを構築して配置することにより、本明細書に記載されている実施形態の全てではないにせよ大部分において達成される。米国特許第6281993号明細書において認識されるように、画素化された位相マスクは、好ましくない影響を回避するためにSLMに非常に接近させて配置するか、或いは画像化させることが必要であるとこれまで認識されてきた。しかしながらまた、そのようなシステムを構築し、かつ整列させることは困難で費用のかかるものであるとも認識されてきた。993号特許は、位相マスクとして画素化されていないアキシコンの使用を提唱している。プサルティスは、液晶マイクロディスプレイの外側に小型レンズ列を取り付けることを提唱しており、そして、そのような試みは既に述べたように幾らかの問題点を抱えている。本発明より以前において、SLM内に一体的かつ内側の位置に位相マスクを配置することが当業者にとって自明ではなかったことは明らかである。更に、200μm以内、p/λ内に位相マスクを提供する方法、或いは位相マスクと画素面との両方を画像系が解像することを可能にするために画素面を十分に接近させる方法は自明ではなかった。
【0045】
種々の異なる技術及び実施形態を本明細書において詳細に記載してきた。しかしながら、本明細書における示唆は、本発明の範囲内でもあるその他の実施形態を達成するために任意の組み合わせにて組み合わせられることが理解されるべきである。
【0046】
本発明の上述の記載は例示及び記載の目的のために提示されたものである。更に、該記載は、本明細書に開示された形態に本発明を制限することを意図してはいない。従って、上記示唆に対応する変更及び修正並びに同等の技術の技量及び知識も、本発明の範囲内にある。上述の実施形態は更に、本発明を実施するために知られている最良の形態を説明することと、本発明そのもの或いは本発明の特定の用途若しくは使用において必要とされるその他の実施形態及び種々の修正を伴うものをその他の当業者が使用可能とすることを意図している。添付された請求の範囲は、当業者に許容されている程度までの代替的な実施形態を含むべく構成されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】ホログラフィックデータストレージシステムの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に従って構築されたSLMの側面図であり、より詳細に示すためにその一部が拡大されている。
【図3】本発明の実施形態に従って構築されたSLMの一部の側面図であり、異なる屈折率を有する材料の隣接する多レベル層を備えた状態にて一体的に作製された位相マスクを示す。
【図4】本発明の実施形態に従って構築されたSLMの一部の側面図であり、イオン交換技術を用いて作製された一体的な位相マスクを示す。
【図5】本発明の実施形態に従って構築されたSLMの一部の側面図であり、パターン化された光にさらされた感光性ポリマー層を備えた状態にて一体的に作製された位相マスクを示す。
【図6】本発明の実施形態に従って構築されたDMD SLMの一部の側面図であり、一体的な位相マスクを示す。
【図7】本発明の実施形態に従って構築されたSLMの一部の側面図であり、複数のレベルの一つに画素ミラーを配置することにより、シリコン基板に作製された一体的な位相マスクを示す。
【図8】位相マスクを含むSLMの斜視図である。
【図9】図8のSLMの一部の概略側面図であり、画素電極に対する3−ステートドライバを示す。
【図10】図8のSLMから可能な三つの光学的状態を示す図である。
【図11】偏光子、3−ステートSLM及び分析器の概略図である。
【図12】3−ステートの切り替えを達成するための別の実施形態の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィックデータストレージシステムのための書き込みヘッドであって、前記書き込みヘッドは空間光変調器と位相マスクとを含み、
前記空間光変調器は画素列に配置されており、前記画素列を構成する画素の各々は該空間光変調器に指向する光を別々に変調することが可能であり、
前記位相マスクは、該位相マスクを透過する光の位相を変更することが可能であり、位相変化の強度は、光が透過する位相マスクの特定の部分に依存しており、
前記位相マスクは前記空間光変調器の内面に設けられている、書き込みヘッド。
【請求項2】
前記空間光変調器は液晶空間光変調器である請求項1に記載の書き込みヘッド。
【請求項3】
前記空間光変調器は強誘電性液晶空間光変調器である請求項2に記載の書き込みヘッド。
【請求項4】
前記空間光変調器は二つのほぼ平坦な面の間に挟持された液晶材料層を含む請求項2に記載の書き込みヘッド。
【請求項5】
前記平坦な面のうちの一方は、多レベル表面を有する比較的高屈折率材料の層と多レベル表面を有する比較的低屈折率材料の層とを含む層状基板上にあり、前記二つの多レベル表面は互いに対面している請求項4に記載の書き込みヘッド。
【請求項6】
前記層状基板は導電性電極層を更に含む請求項5に記載の書き込みヘッド。
【請求項7】
前記導電性電極層は、前記比較的高屈折率材料の層の前記多レベル表面とは相対向する側に配置されている請求項5に記載の書き込みヘッド。
【請求項8】
前記導電性電極層は、前記比較的低屈折率材料の層の前記多レベル表面とは相対向する側に配置されている請求項5に記載の書き込みヘッド。
【請求項9】
前記平坦な面のうちの一方は、イオン拡散により得られた屈折率の変化する領域を含む基板上にある請求項4に記載の書き込みヘッド。
【請求項10】
前記平坦な面のうちの一方は、パターン化された光に露出されて、パターン化された屈折率が形成された感光性ポリマー材料層を含む層状基板上にある請求項4に記載の書き込みヘッド。
【請求項11】
前記平坦な面のうちの一方は、層状かつ透過性の窓の内面上にあり、前記内面に隣接する層の一つは位相マスクを含んでいる請求項4に記載の書き込みヘッド。
【請求項12】
前記位相マスクは空間光変調器の200μmの画素内に配置されている請求項1に記載の書き込みヘッド。
【請求項13】
前記位相マスクは、前記空間光変調器の画素の距離d内にあり、ここでdはp/λに等しく、かつpは前記空間光変調器の画素のピッチであるとともにλは空間光変調器に指向する光の波長である請求項1に記載の書き込みヘッド。
【請求項14】
前記ホログラフィックデータストレージシステムは画像系を有し、前記位相マスクは、前記ホログラフィックデータストレージシステムの画像系が前記位相マスクと前記画素との両方を解像することを可能にするために、前記空間光変調器の画素に十分に近接している請求項1に記載の書き込みヘッド。
【請求項15】
前記位相マスクは画素化されている請求項1に記載の書き込みヘッド。
【請求項16】
前記位相マスクは画素化されていない請求項1に記載の書き込みヘッド。
【請求項17】
ホログラフィックデータストレージシステムのための書き込みヘッドであって、前記書き込みヘッドは空間光変調器と、ガラス窓と、位相マスクとを含み、
前記空間光変調器は画素列に配置されており、前記画素列を構成する画素の各々は該空間光変調器に指向する光を別々に変調することが可能であり、
前記ガラス窓は、前記空間光変調器の画素列に近接した状態にて、該空間光変調器の一方の側に配置されており、
前記位相マスクは、該位相マスクを透過する光の位相を変更することが可能であり、位相変化の強度は光が透過する位相マスクの特定の部分に依存しており、
前記位相マスクは前記ガラス窓と前記空間光変調器の画素列との間に配置されている、書き込みヘッド。
【請求項18】
前記位相マスクは、前記空間光変調器の画素に対面するガラス窓の表面に隣接している請求項17に記載の書き込みヘッド。
【請求項19】
ホログラフィックデータストレージシステムのための書き込みヘッドであって、前記書き込みヘッドは、空間光変調器と位相マスクとを含み、
前記空間光変調器は画素列に配置されており、前記画素列を構成する画素の各々は該空間光変調器に指向する光を別々に変調することが可能であり、
前記位相マスクは、該位相マスクを透過する光の位相を変更することが可能であり、位相変化の強度は、光が透過する位相マスクの特定の部分に依存しており、
前記位相マスクは前記空間光変調器の200μmの画素の範囲内に配置されている、書き込みヘッド。
【請求項20】
ホログラフィックデータストレージシステムのための書き込みヘッドであって、前記書き込みヘッドは、空間光変調器と位相マスクとを含み、
前記空間光変調器は画素列に配置されており、前記画素列を構成する画素の各々は該空間光変調器に指向する光を別々に変調することが可能であり、前記画素はピッチpを有し、
前記位相マスクは、該位相マスクを透過する光の位相を変更することが可能であり、位相変化の強度は、光が透過する位相マスクの特定の部分に依存しており、
前記位相マスクは前記空間光変調器の画素の距離dの範囲内に配置されており、ここでdはp/λに等しく、かつλは空間光変調器に指向する光の波長である、書き込みヘッド。
【請求項21】
画像系を有するホログラフィックデータストレージシステムのための書き込みヘッドであって、前記書き込みヘッドは、空間光変調器と位相マスクとを含み、
前記空間光変調器は画素列に配置されており、前記画素列を構成する画素の各々は該空間光変調器に指向する光を別々に変調することが可能であり、
前記位相マスクは、該位相マスクを透過する光の位相を変更することが可能であり、位相の変化の強度は、光が透過する位相マスクの特定の部分に依存しており、
前記位相マスクは、前記ホログラフィックデータストレージシステムの画像系が前記位相マスクと前記画素との両方を解像することを可能にするために、前記空間光変調器の画素に十分に近接している、書き込みヘッド。
【請求項22】
前記位相マスクは前記画像系の前記画素の焦点深度内に配置されている請求項21に記載の書き込みヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2007−519980(P2007−519980A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551491(P2006−551491)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/002678
【国際公開番号】WO2005/072396
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(593026188)ディスプレイテック,インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】Displaytech, Incorporated
【住所又は居所原語表記】2200 Central Avenue, Suite A, Boulder, Colorado 80301, United States of America
【Fターム(参考)】