説明

ホログラムラベル

【課題】ホログラムラベルは、被貼着体に貼付後、その被貼着体の真正性を証明するものであるため、不正に剥離されて、真正でない他の被貼着体へ再貼付して使用されることが可能であると、その証明性を維持することができなくなるという課題を有していた。
【解決手段】ホログラムラベルを構成する透明基材の一方の面に、回折格子からなる微細なパターン領域の集合により構成されている、パターンをその表面に有する回折格子形成層を形成し、ホログラムラベルを剥そうとすると、透明基材のみが容易に剥離して、その後にその「パターン」が浮き上がるという効果を持つとともに、さらに剥離しようとすると、さらなる「パターン」が浮き上がるホログラムラベルを開発し、その真正性を維持可能なホログラムラベルとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム脆性シールに係り、詳しくは、ホログラムの貼り換えなどによる偽造若しくは改竄を困難とする脆性ホログラムを形成するホログラム脆性シールに関するものである。
本明細書において、配合を示す「部」は特に断わらない限り質量基準である。また、 「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
【背景技術】
【0002】
(主なる用途)本発明のホログラムラベルの主なる用途としては、偽造防止分野や意匠用途などに使用されるホログラムラベルであって、具体的には、
(1)製造メーカー純正品等、純正品の認証が意義を持つ種々の商品分野、例えば、電子機器、電気機器、コンピュータ関連製品、及び、それらの構成部品、コンピュータ関連ソフト、純正備品類(用紙やトナーなどのプリンタ消耗品等。)医薬品、医薬部外品もしくは化成品等、
(2)商品そのものが真正品であることを消費者に強く求められる分野、もしくは、ラベルを貼付することで意匠性を高めたり、商品が高価であることを示し、その商品の付加価値を高める分野など、例えば、書籍、文書、講演、演劇、映画、写真、絵画、彫刻、版画、図面、模型等もしくは、それらの編集物、又は記録媒体に記録したもの(ビデオカセット、コンパクトディスク、デジタルビデオディスクなど)等の著作物、所定の設定をされ、変更を防止しているROMボード(コンピューター機器、ゲーム機、遊技機等に用いられるもの。ROMとボードに渡る貼付も含む。)、時計、衣類、バッグ、宝石等の宝飾品、スポーツ用品、化粧品、及びそれらの高級ブランド品等、
(3)本人確認の手段(ID証)分野、例えば、パスポート、運転免許証、保険証、会員証、身分証、住民登録証、病院カード、もしくは図書館カード等、
(4)経済秩序を保つ上で真正品であることが求められる分野、例えば、商品券、ギフト券等の金券類、もしくはプリペイドカード、クレジットカード、キャッシュカード等のカード類、
(5)さらには、これらのものを包装し、その包装を封印する分野、例えば、単に保管のため、もしくは郵便物や小荷物として封筒に入れたり、パッケージに入れて配達や配送をする分野、商品をパッケージに入れて販売する分野、単純に包装する分野、それらの封緘シールとして使用する分野、また、それらの説明書や効能書等にその真正性を証明するために貼付する分野等、
などに関し、特に、そのホログラムラベルを巧妙に剥がして、そのものの価値を下げられたり、そのホログラムラベルを再利用されることをに配慮すべき、もしくは配慮している分野に好適である。
【0003】
(先行技術)近年、光の干渉を用いて立体画像を再生し得るホログラムの開発が進められ、このホログラムは高度な製造技術を要するとともに様々な形態、例えばラベル、シール、箔状に形成可能なことから、これを応用し偽造防止手段として、上記分野を含め、様々なものの一部に貼着して使用されている。このホログラムは、一見して本物か否かが判り、しかも上述したように製造が困難であることから、広く利用されるようになってきた。
そしてこれらは物品に貼付された後に剥がされ、悪用されることがないように、支持体とホログラム層、或いは、これらの間に設けられた剥離層と支持体またはホログラム層との間で剥離するようにし、被着物から故意に剥離させた場合にホログラム全体が破壊されるものがある。特に、実公平5−48210号公報に開示されるホログラム脆性シールのように、支持体とホログラム形成層がパターン状剥離層を介して積層され、ホログラム形成層上に反射性金属薄膜層、及び接着剤層を順次積層し、使用に際しては所要の大きさ、形状に切断し、証書や身分証明書のような偽造、変造されたくない被着体、または封書等の封印部に加圧により、必要に応じて加熱をしながら貼りつけるものがある。
このようにして一度被着体に貼りつけられたホログラムラベルは、剥がそうとすると、剥離層部と非剥離層部との境界断面でホログラムが破壊し、支持体上と被着体上にホログラムが分離して残存してしまうのでラベル全体をそつくりそのまま剥がすことができないため、他の物品にホログラムラベルを貼りかえることができず、ホログラム自体の偽造・変造の困難性により、ホログラムラベルが被着体の真正さを保証できるものである。
【0004】
従つて、ラベルが貼つてあつた箇所の記載事項や印影写真等を書替えるには、ラベルの残存部分を除去する必要があり、偽造、変造が困難である。また、支持体上にはパターン状にしかホログラムが残存しない為、ラベルの貼替えは不可能であり、かつ封印部の開封は被着体にパターン状に残存したホログラムにより容易に認識できうる。
従つて、本考案のホログラムラベルは偽造されたくない被着体への適用は勿論のこと、包装物の封印として適用でき、さらにはホログラムラベルは美麗により装飾物としても使用できる。
しかしながら、全面破壊型のホログラム脆性シールは、剥がし方によってはホログラム層及び反射性薄膜層が破壊されることなく、ホログラムシール全体を完全に剥離させて、その結果再使用できることで悪用されてしまう可能性がある。そのため、ホログラム層や反射性薄膜層自体を破壊する方法として上記、実公平5−48210号公報の方法があるが、この方法ではホログラム脆性シールを貼着された状態で見るとホログラム層の上にパターン状の剥離層が設けられているため、そのパターンの存在を容易に目視により判別でき、ホログラムの再生画像の見え方に影響を与えるだけでなく、偽造防止策の存在が明らかになってしまう問題を有する。
この問題を解決するため、特開平8−152842号公報には、脆性剥離層を、反射性薄膜層と接着剤層との間に設ける等の方法も提案されているが、いずれも、ホログラム形成層の強度が大きく、基材との接着強度差や、脆性剥離性の存在程度では、ホログラム形成層そのものを破断するに至らないか、部分的に破断され、その目的を十分に達成できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平5−48210号公報
【特許文献2】特開平8−152842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ラベルとしてホログラムラベルを被貼着体に貼付(もしくは貼着ともいう。)する際には、問題なく貼付可能であって、その被貼着体からホログラムラベルを不正に剥そうとすると、ラベル基材のみが剥がれ、その剥した痕跡として、被貼着体側に残ったもの(ホログラム形成層、反射性薄膜層、及び粘着層)に、「開封」等の視認可能な明確なメッセージが表示され、さらに、その残ったホログラム部分をも除去しようとすると、ホログラムが剥がれたあとに、再び、「開封」若しくは「不正」等の視認可能なメッセージが表示されるホログラムラベルを提供する。
本発明は上記従来の問題点に鑑み為されたものであり、その目的とするところは、不正な剥離行為によるホログラムシールの貼り替えを確実に防止することが可能で、しかも、容易に分離する界面の存在を発見しにくいホログラム脆性シールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、
本発明のホログララベルの第1の態様は、
透明基材上に、回折格子からなる微細なパターン領域の集合により構成されている、パターンをその表面に有する回折格子形成層が形成され、その上に、ホログラムレリーフを有するホログラム形成層、反射性薄膜層、微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフを有する光散乱層及び、粘着層が設けられていることを特徴とするものである。
上記第1の態様のホログラムラベルによれば、
透明基材上に、回折格子からなる微細なパターン領域の集合により構成されている、パターンをその表面に有する回折格子形成層が形成され、その上に、ホログラムレリーフを有するホログラム形成層、反射性薄膜層、微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフを有する光散乱層及び、粘着層が設けられていることを特徴とするホログラムラベルを提供することができる。
本発明のホログラムラベルの第2の態様は、
前記回折格子からなる微細なパターン領域の集合が、網点状の領域からなることを特徴とするものである。
上記第2の態様のホログラムラベルによれば、
前記回折格子からなる微細なパターン領域の集合が、網点状の領域からなることを特徴とする請求項1記載のホログラムラベルを提供することができる。
本発明のホログラムラベルの第3の態様は、
前記回折格子からなる微細なパターン領域の集合が、微細な帯からなることを特徴とするものである。
上記第3の態様のホログラムラベルによれば、
前記回折格子からなる微細なパターン領域の集合が、微細な帯からなることを特徴とする請求項1記載のホログラムラベルを提供することができる。
【0008】
すなわち、ホログラムラベルは、透明基材の一方の面に、ホログラムレリーフを有するホログラム形成層、反射性薄膜層、粘着層がこの順序で形成され、上記したホログラムラベルの用途において、所望の被貼着体の一部や、封筒等の封緘部分等に貼着される。
このホログラムラベルを、その被貼着体、もしくは、封緘部分から、貼着した痕跡を残さず、ホログラムラベルも完全な元の状態で剥して、不正に準備した別の被貼着体に貼り替えたり、封筒や箱を開封して内容物を取り替えた後、その被貼着体や封筒や箱の内容物が本物であると主張したり、逆に、真正なホログラムラベルを剥したものは、本物でないとして、その価値を低下させるなどの不正を防止するためには、
ホログラムラベルのホログラム形成層そのものが破断することが望ましいが、ホログラムラベルの基材及び、ホログラム形成層の破断強度は、非常に大きく、ラベルとしての粘着力等(JIS Z0237で規定する180°剥離試験にて、0.1〜1.0kg/25mm幅。)では、それらの層を100%破断させることは困難である。
そのため、ホログラム形成層を破断するのではなく、透明基材上に、回折格子からなる微細なパターン領域の集合により構成されている、パターンをその表面に有する回折格子形成層(以下、回折格子形成層ともいう。)を設け、この回折格子形成層とホログラム形成層との界面で剥離が発生するように、回折格子形成層とホログラム形成層間の界面の剥離強度を小さいものとし、それ以外の界面である、透明基材と回折格子形成層との間、ホログラム形成層と反射性薄膜層との間、反射性薄膜層と微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフを有する光散乱層(以下、光散乱層ともいう。)との間、光散乱層と粘着層との間、さらには、粘着層と被貼着体との間の界面の剥離強度より小さいもの、好ましくは、その最も小さいものの1/2以下、より好ましくは、1/5以下とする。
【0009】
従って、上記した界面の剥離強度(粘着力)に対して、回折格子形成層とホログラム形成層との間の剥離強度は、例えば、粘着層の粘着力が0.1kg/25mm幅であるならば、0.1kg/25mm幅以下、好ましくは、0.05kg/25mm幅以下、さらに好ましくは0.02kg/25mm幅以下とする。
但し、ホログラムラベルとしてのハンドリング等を考慮して、その界面の剥離強度は、0.01kg/25mm幅以上とする必要がある。それ以下であると、ホログラムラベル加工中や、貼付等の作業中に、その界面において剥離や、空隙が発生する等の不具合が生じる。
また、例えば、粘着層の粘着力、そして上記した他の界面が1.0kg/25mm幅もしくはそれ以上であるならば、その界面の剥離強度は、1.0kg/25mm幅以下、好ましくは、0.5kg/25mm幅以下、さらに好ましくは0.2kg/25mm幅以下とする。もちろん、この場合は、それより小さい値のもの(例えば1/10以下等。)とすることもできる。
【0010】
そして、上記したように、ホログラムラベルを剥離した際、回折格子形成層とホログラム形成層との間で、剥離が発生して、被貼着体上にホログラム形成層、反射性薄膜、光散乱層、粘着層が残ったとき、そのホログラム形成層の最表面、すなわち、ホログラムレリーフとは反対の面に、その回折格子からなる微細なパターン領域の集合により構成されている、パターン(回折格子領域ともいう。)がむき出しとなり、この部分がホログラム再生像の上で光を部分的に回折し、そのホログラム再生像をパターン状に遮蔽するものである。
例えば、この「パターン」を、視認可能な所望のパターン(文字、図形、記号等、視認可能な表示であればいずれも使用できる。代表的には、ラベルを剥離した証拠を示すという意味で、「開封」等の文字表示をする。)とし、そのパターン内を、回折格子からなる「微細なパターン領域」の集合により構成することにより、言い換えれば、回折格子からなる「微細なパターン領域」と、回折格子の無い「その他の領域」の組み合わせで、「所望のパターン」を埋めることにより、例えば、「開」の文字の画線部を、この「微細なパターン領域」と、「その他の領域」で描くことにより、透明基材を剥離後に、その被貼着体上に残ったホログラム形成層を観察したとき、その「所望のパターン」部分において、「そのままホログラム再生像が覗ける部分」と、「回折光が見える部分」とが混ざりあい(位置的に重なり)、結果として、「所望のパターン」部分が、そのホログラム再生像でもなく、また回折格子でもない、「虹色に反射する光」のみが見える領域として視認されることになる。
これは、ホログラム再生像を出現する光と、回折光を出現する光が、「微細な領域」に分断されてかつ混成されているときに、ホログラム再生像や回折像の「結像」を現出する「個々の光の干渉現象」を、互いの光が阻害し、「個々の光の十分な干渉」を妨げて、結果として、単なる虹色に輝く領域としてしまう現象である。
この阻害現象は、一つのホログラム再生像を結像するホログラムレリーフの領域が50μm〜300μm程度の微細な領域であって、このホログラムレリーフとは全く無関係の回折光を発生する回折格子領域が、同様に50μm〜300μm程度の微細な領域として、互い違いに接して設けられているときに強く発生する。このときの、各領域の形そのものは、任意の形とすることができる。
【0011】
すなわち、各微細な領域から発生する反射光が、その反射面から数十乃至は数百μm離れたところで、光の干渉を生じ(干渉領域。)この干渉がじゅうぶんなされたときに、はじめて、それぞれのホログラム再生像や回折像が、所定の位置に結像するものであるため、この干渉領域に別の回折光等が侵入すると、上記した像を形成する為の干渉現象が十分起こらず、単なる乱れた光(虹色の光)として目に届くものである。
本発明の場合は、ホログラム再生像の上に、「開封」の文字状の虹色領域(虹色の開封文字。)が重なって観察される。
上記した、回折格子からなる「微細なパターン領域」と、回折格子の無い「その他の領域」の組み合わせとして、「微細なパターン領域」を50μm〜300μm程度の所定の大きさの網点領域とし、その網点を囲む領域を、「その他の領域」とすると、上記干渉の阻害レベルが安定し、虹色の見え方が安定したものとなる。この場合の網点%は、30%〜70%とし、「微細なパターン領域」に設ける回折格子の回折効率は、ホログラム形成層に設けているホログラムレリーフの回折効率より大きいものとする。
特に、ホログラム形成層のホログラムレリーフに反射性薄膜層として、金属薄膜を形成している場合には、その界面反射率は大きいものとなり、透明基材等を剥離した後の回折格子領域部分の、空気と樹脂との界面における界面効率に対して、数倍以上となるため、このホログラムレリーフからの光の干渉を十分阻害するために、回折格子領域の回折効率をより高いものとすることが望ましい。
さらに、ホログラム再生像自体は非常に冗長性が高いため、この遮断(虹色領域の幅、例えば「開封」の文字の線幅を意味する。)を、そのホログラムレリーフの干渉縞の周期0.5μm〜2μmの200倍〜5000倍、より好適には、500倍〜2000倍とする。
この遮断が、200倍未満であると、ホログラムの冗長性からホログラム再生像が強く再現されて遮断が弱まり、この遮断が5000倍を超えると、界面の延べ面積が大きくなりすぎて(斜面の面積が増大する。)、透明基材が剥離しにくくなったり、ホログラムラベル全体(粘着層ごとという意味。)が剥離容易となったりする等の不具合が発生する。
また、透明基材を剥離した際の遮断(文字等。)の鮮明さ(認識性)は、500倍〜2000倍が最も良好となる。
【0012】
本発明は、上記したように、ホログラムラベルを剥離した際に被着体上に残った、「ホログラム形成層、反射性薄膜、光散乱層、粘着層」を、さらに除去しようとすると、今度は、光散乱層と粘着層との界面において剥離が生じ、被貼着体上に、粘着層が残ったときに、その粘着層の表面に、光散乱をする「微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフ」(光散乱部分、もしくは、光散乱領域。)がむき出しとなり、この部分が被貼着体の上で光を散乱し、その被貼着体の色調やその上にあらかじめ印刷等されているデザイン等をパターン状に遮断するものである。
このため、光散乱層と粘着層との間の界面の剥離強度を、回折格子形成層とホログラム形成層間の界面の剥離強度より大きく、且つ、その他の界面の剥離強度より小さいものとし、好ましくは、その他の界面の剥離強度の最も小さいものの1/2以下、より好ましくは、1/5以下とする。
従って、上記した界面の剥離強度(粘着力)に対して、光散乱層と粘着層との間の界面の剥離強度は、粘着層の粘着力が0.1kg/25mm幅であるならば、0.1kg/25mm幅以下、好ましくは、0.05kg/25mm幅以下、さらに好ましくは0.02kg/25mm幅以下とし、且つ、回折格子形成層とホログラム形成層間の界面の剥離強度より大きくし、好ましくは、2倍以上、より好ましくは、5倍以上とする。
回折格子形成層とホログラム形成層間の界面の剥離強度とほぼ同じ、若しくは、それ以下の大きさであると、最初のホログラム剥離動作の際に、いきなり光散乱層と粘着層との間の界面で剥がれ、第1段階(最初の剥離の際)で、ホログラム再生像の上に、「開封」の文字が浮き上がって見え、第2段階で(さらに、残ったホログラムを剥そうとする際)、被貼着体上に「開封」若しくは「不正」等の文字が表示されるという、本発明の目的を達成できなくなる。
このように、剥離する段階を2つの段階とする理由は、第1段階の剥離対策のみを施している脆質ホログラムラベルにおいて、最初の剥離の際に、透明基材のみが剥離し(上記の第1段階の剥離)、被貼着体上に「ホログラム形成層、反射性薄膜層、粘着層」が残ったとき、さらに、この残った部分を注意深く剥離すると、粘着層の塑性変形(極端にゆっくり時間をかけて圧力をかけると、粘着層が徐々にその形を変えていくこと)により、「ホログラム形成層と粘着層」が被貼着体から剥離できてしまい、この「ホログラム形成層と粘着層」を悪用できてしまう、という問題が残るためである。
本発明は、これに対処するものであって、剥離する段階を2つの段階とし、上記のごとく、残った部分を注意深く剥離しようとしても、容易に第2の剥離が生じ、その剥離した「ホログラム形成層、反射性薄膜層及び光散乱層」は、その厚さが非常に薄いことから、ハンドリングが非常に困難であって、これを悪用することができないものとするものである。
しかも、たとえ万が一その極く薄い層をハンドリングして他の不正品に貼着しようとしても、その光散乱層とわずかでも屈折率の異なる粘着剤を用いた場合は、この光散乱領域は消滅せず(その界面での反射・散乱性が残るという意味。)、不正を容易に発見することができるものである。反射性薄膜層を、透明反射性薄膜とした場合は、ラベル上からこの光散乱による文字等を容易に発見できる。
【0013】
もちろん、最後に残存する粘着層を、ポリオール/イソシアネート系等の2液硬化タイプ、電離放射線硬化タイプなどのラベル貼着後にその被貼着体との接着強度が増大するものとして、第2段階剥離後、さらに粘着層を除去する行為をも阻止することも好適である。この場合には、もはや、硬化後の粘着層をも溶解する溶解力の大きい有機溶剤を用いるか、サンドブラスト処理のような物理的方法に拠るしか、この残存層を除去する方法はなく、その行為によって、被貼着体が溶解や破損を生じることは明白である。
例えば、粘着層の粘着力、そして他の界面が1.0kg/25mm幅もしくはそれ以上であり、回折格子形成層とホログラム形成層との界面の剥離強度が、0.2kg/25mm幅以下であるならば、光散乱層と粘着層との間の界面の剥離強度は、0.5kg/25mm幅とすることができる。
回折格子からなる微細なパターン領域の集合により構成されている、パターンをその表面に有する回折格子形成層には、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。
その回折格子形成層を、透明基材上に、コーティング方式等の印刷方式、もしくは、下記する電離放射線硬化方法による直接形成方式を用いて、回折格子の凹凸の深さに適合させ、1μm〜20μmの厚さで形成する。
この回折格子形成層に、光を回折するための凹凸形状(以下、回折形状ともいう。)を形成する方法は、感光性樹脂材料に、光干渉露光や、マスクパターン露光(パターン状の開口部を有し、そのパターン内が微細な開口部と微細な遮蔽部を交互に有するマスク。)を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成した回折形状もしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層(回折格子形成層)に押し付けることにより、賦型を行なうこともできる。
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面に回折形状を形成することもできる。
回折形状を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計された、回折形状を作り出し、より精密で複雑な回折光を作り出すものであってもよい。
この回折形状は、光を回折するものであればよく、凹凸の周期が、0.4μm〜2μmの間で、そしてその深さが0.1μm〜1.0μmの間で周期的に形成されているものとする。
【0014】
この回折格子は、単純格子、ブレーズド格子、特殊形状を単位格子としたものの他、フネレルレンズ、マイクロレンズ等、さらには、ホログラムを結像する干渉縞であってもよい。
レリーフを複製(賦形ともいう。)する方法は、凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパともいう。)として用い、上記の回折格子形成層上に、その原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸を複製することができる。
上記の微細な形状を精密に再現するため、また、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、原版は金属を使用し、低温・高圧下で複製を行うことも好適である。
複製方式は、高圧とするため、平板式でなく、回転式を用い、高い線圧とすることが望ましい。
この回折形状領域(回折領域ともいう。)と、平坦な領域をその表面に有する回折格子形成層の上に、その凹凸形状を埋めるように、ホログラム形成層を形成する。ホログラム形成層は、上記した回折格子形成層と同様の方法にて形成することができる。
その厚さは、1μm〜5μmとする。
ホログラム形成層には、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。
ホログラム形成層を、回折格子形成層の上に、その回折領域を埋めるように形成すると、その光を回折する効果が著しく減少し、あたかも、「(一体となった)一つの層があるのみ」のように観察される。
【0015】
特に、この回折形状を有する回折格子形成層と、ホログラム形成層に用いる樹脂を同一のものとして、すなわち、両層の屈折率が同一のものとすると、その界面での光の反射や、屈折は全く起こらず、光学的には実質的に「1つの層」のように振舞う。すなわち、その層の中に、回折格子領域が存在することは、目視では勿論のこと、レーザー光をあてても(機械認識方法においてレーザー光照明をする際等を含む。)、認識することは出来なくなる。このことは、ホログラムラベルの偽造防止性を著しく高める。
例え、上記2つの層が異なる樹脂を用いたとしても、その屈折率差が0.03以下であれば、この効果を十分引き出せる。
その屈折率差が、0.03を超えると、2つの層の界面での光の屈折や、反射が強くなり、回折格子領域の存在が、レーザー光では勿論のこと、目視にても認識できるようになるため、ホログラムラベルの中に、所望のパターンが存在することを、そのホログラムラベルを剥す前から知られてしまったり、すでに不正な剥し行為が為されてしまったとの誤解を招く。
従って、この2つの層に使用する樹脂は、同一のものを使用するか、別の樹脂であってもその屈折率差が、0.03以内であるものを使用する。
【0016】
同一の熱可塑性樹脂を用いる場合は、溶剤系を同一とすると、ホログラム形成層を重ねて形成する際に、下の層である回折格子形成層を部分的に溶解した上、その界面剥離強度が増大させてしまうため、ホログラム形成層形成時に使用する溶剤系を、下層の回折格子形成層を溶解しないものとする必要がある。
同一の樹脂であっても、熱硬化樹脂や、電離放射線硬化樹脂の場合には、下層の回折格子形成層を十分硬化した後、ホログラム形成層を設けるため、その界面剥離強度は、安定したものとなる。
もちろん、この界面での剥離強度をより小さくするため、2つの層に使用する樹脂の互いの相溶性が低いものや、密着性の低いものを選定する方法もある。
上記のように形成した回折格子形成層の凹凸面は、一度、剥離して、その間に空気が入り込むと、その界面をきっちり合わせなおして再度貼り合わせようとしても、その回折格子形成層の凹凸面での摩擦抵抗や、凹凸面の変形等により、もはや、完全には復元不可能であって、空気を含んだ、「回折格子形成層/空気/ホロググラム形成層」の構成からなる大きな屈折率差を有する、散乱性を有する部分が発生することになる。
また、回折格子形成層を形成した後、その表面を長時間放置したり、加工時に何らかの汚染等により、その表面が変化すると、その上に、同一樹脂によるホログラム形成層を設けたときに、その界面部分が光学的に異なる性質を示し、その回折格子形成層の存在を認識しやすくなるため、回折格子形成層形成後、すみやかに、ホログラム形成層を設ける必要がある。
ホログラム形成層に適宜なホログラムレリーフを形成した後、適宜な方法を用いて、反射性薄膜層を形成する。
【0017】
この反射性薄膜層上に、微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフを有する光散乱層を形成する。
この光散乱層には、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。
その光散乱層を、反射性薄膜層上に、コーティング方式等の印刷方式、もしくは、下記する電離放射線硬化方法による直接形成方式を用いて、レリーフの深さに適合させた厚さで形成するが、その厚さは、薄いものとし、剥離後のハンドリングを困難とするため、0.5μm〜20μmの厚さで形成する。好適には、0.5μm〜5μmとする。
この光散乱層に、光を散乱するための微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフを形成する方法は、感光性樹脂材料にマスクパターン露光(パターン状の開口部を有し、そのパターン内が微細な開口部と微細な遮蔽部を交互に有するマスク。)を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成した微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層(光散乱層)に押し付けることにより、賦型を行なうこともできる。
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフの微細凹凸を形成することもできる。
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計された、微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。
【0018】
この微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフは、光を散乱するものであればよく、凹凸の周期が、0.01μm〜30μmの間で、そしてその深さが0.1μm〜20μmの間でランダムに変化するものとする。
特に、その変化が著しいものが望ましく、0.01μm周期、0.1μm深さの凹凸の隣に、1μm周期、5μm深さの凹凸、そしてその隣に、再び0.01μm周期、0.1μm深さの凹凸がくるというように、その周期や、深さの変化が10倍〜50倍変化する部分を有するものが好適である。この変化の大きいものほど、光を散乱する性質が大きく、好適である。
但し、レジスト処理において、露光処理過程や現像処理過程における、アスペクト比や、解像度等には制限があり、50倍以上の変化を設定することは難しく、また、その凹凸形状からなるレリーフを複製する工程においても、その再現性に不安定性(ムラとなる。)が発生する。
特に、その微細な凹凸形状が、可視光波長より短い周期、すなわち、0.4μm(400nm。)以下である場合には、この光散乱領域は、入射する光を吸収し、それ以外の領域とのコントラストの大きいものとなる。
この光吸収性は、その周期が、0.01μm〜0.1μmの間で、且つ、そのアスペクト比が、3以上10以下の凹凸が均一に設けられているときに、最も効果的に起こる。
アスペクト比が3未満では、その光吸収効果が不十分であり、アスペクト比10を超えると、その複製が安定せず、逆に、その効果が低下する。
【0019】
そして、このような高いアスペクト比を有するレリーフを、精密に複製するためには、通常のスタンパー方式(熱可塑性樹脂面をスタンパーを用いて加熱・加圧による複製方法等。)では、不十分であり、電離放射線硬化性の樹脂を加熱や溶剤希釈により低粘度化(0・001〜0.01パスカル・秒とする。)して、その樹脂を、レジストの凹凸の隅々までいきわたらせた後、電離放射線硬化処理を施す方式を用いることが望ましい。
また、上記のようにランダムに変化したレリーフの界面は、一度、剥離して、その間に空気が入り込むと、その界面をきっちり合わせなおして再度貼り合わせようとしても、そのレリーフ同士の摩擦抵抗や、非常に細い先端の変形等により、もはや、完全には復元不可能であって、必ず、空気を含んだ、「光散乱層/空気/粘着層」の構成からなる大きな屈折率差を有する散乱部分が残るものとなる。
さらに、光吸収性を高めるために、一つ一つの凹部形状を、円錐形状とすることがのぞましく、電子線描画方法を用いて、電子線露光強度を階段状として、例えば、0.05μm正方の単位で、その深さを0.2μmずつ変化させて、半径0.2μm深さ1μmの円錐を形成することができる。各段の段差は、現像処理過程で滑らかとなり、より円錐形に近くなる。この円錐を隙間なく設けることで、その光吸収効果を最大とすることができる。
もちろん、この光散乱層として、上記したような回折格子形成層に用いた回折格子の回折形状を採用することも可能である。
【0020】
レリーフを複製(賦形ともいう。)する方法は、上記した回折格子形成層の回折格子形状形成や、ホログラムレリーフを形成する方法と類似の方法を用いることができる。
但し、そのレリーフは非常に微細であるため、より精密な複製が求められる。
粘着層を、光散乱層の上に、その光散乱領域を埋めるように形成すると、その光を散乱する効果、特に、光を吸収する効果が著しく減少し、あたかも、「一つの層がある」ように観察される。
特に、光散乱領域が、上記したような非常に微細、且つ、アスペクト比の大きい円錐形の場合には、この「埋める」効果が不十分となりやすいため、粘着層を形成する場合に、その樹脂の粘度を適宜、最適なものとし、さらには、その円錐形を凹部とするのでなく、凸部とし、その周りを粘着層で覆うようにすると、この「埋める」効果が最適となり、2つの層が一体となりやすい。
特に、この微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフを有する光散乱層と、粘着層に用いる樹脂を同一のもの、すなわち、屈折率が同一のものを用いると、その界面での光の反射や、屈折は全く起こらず、光学的には実質的に「1つの層」のように振舞う。すなわち、その層の中に、光散乱部分が存在することは、目視では勿論のこと、レーザー光をあてても(機械認識方法においてレーザー光照明をする際等を含む。)、認識することは出来なくなる。このことは、ホログラムラベルの偽造防止性を著しく高める。
例え、上記2つの層が異なる樹脂を用いたとしても、その屈折率差が0.03以下であれば、この効果を十分引き出せる。
その屈折率差が、0.03を超えると、2つの層の界面での光の屈折や、反射が強くなり、光散乱部の存在が、レーザー光では勿論のこと、目視にても認識できるようになるため、ホログラムラベルの中に、所望のパターンが存在することを、そのホログラムラベルを剥す前から知られてしまったり、すでに、不正な剥し行為が為されてしまったとの誤解を招く。
【0021】
光散乱層の微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフは、回折格子からなる微細なパターン領域の集合により構成されている、パターンをその表面に有する「回折格子形成層」のパターン位置と同一パターン位置(目視した際に同一位置に視認できるという意味。)に同一形状のものとして形成しても良いが、もちろん、その位置、形状を異ならせてもよい。
但し、厚さに制限があるため、その厚さの範囲内において、十分な光散乱性(視認可能という意味。)を有する凹凸深さを有するものとする。
光散乱層は、ホログラムレリーフ上に形成した反射性薄膜層の上に形成するため、そのホログラムレリーフや、反射性薄膜層にダメージを与えるような、硬化収縮性の無いもの(収縮により、ホログラムレリーフに歪みが生じたり、反射性薄膜にシワや、割れが発生するため。)が望ましく、さらには、その形成時にホログラム形成層を再溶解しない溶剤を用いる必要があり、また、加熱・加圧等の条件も上記の様なダメージを与えないものとする。
その光散乱層の上に、その散乱領域を埋めるように粘着層を形成して、本発明のホログラムラベルを作製することができる。
粘着層を硬化タイプ等として、被貼着体との接着強度を非常に大きいものとし、2段階剥離後の粘着層の除去を困難なものとすることも好適である。
この界面での光散乱性や、剥離後の効果は、上記した回折格子形成層とホログラム形成層との界面と同様である。
このホログラムラベルを所望の被貼着体上の適宜な位置に貼付した後、このホログラムラベルを剥そうとすると、第1段階として、「透明基材と回折格子形成層」の積層体が一体となって剥がれ、被貼着体側に「ホログラム形成層と反射性薄膜層と光散乱層及び粘着層」が残り、ホログラム形成層の最表面にパターン状に形成されている回折格子領域が、空気との屈折率差による大きな光回折効果を発現して、ホログラムレリーフによるホログラム再生像を遮断するように、そのパターンを虹色に浮き上がらせ(表示して)、不正なホログラムラベルの剥し行為が行われたことを明示する。
さらに、被貼着体上に残存する「ホログラム形成層と反射性薄膜層と光散乱層及び粘着層」を剥離しようとすると、第2段階として、「ホログラム形成層と反射性薄膜層と光散乱層」の積層体が剥がれ、粘着層の最表面にパターン状に形成されている光散乱領域が、空気との屈折率差による大きな光散乱効果を発現して、そのパターンを浮き上がらせ(表示して)、不正なホログラムラベルの剥し行為が行われたことをさらに明示する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、透明基材に、回折格子からなる微細なパターン領域の集合により構成されている、パターンをその表面に有する回折格子形成層を形成し、その上に、ホログラムレリーフを有するホログラム形成層、反射性薄膜層、微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフを有する光散乱層及び、粘着層が設けられていることを特徴とするホログラムラベルを提供することができ、このホログラムラベルを、所望の被貼着体に貼着後、本来剥すことのないそのホログラムラベルを不正な目的のために剥そうとすると、その回折格子形成層とホログラム形成層との界面で優先して剥離が発生し、その剥離した後には、不正行為であるという鮮明なメッセージを表出することができ、不正が行われたことを、容易に視認することができる。
さらに、その残ったホログラム部分をも除去しようとすると、ホログラムが剥がれたあとに、再び、不正行為であるという鮮明なメッセージを表出することができ、不正が行われたことを、容易に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【図1】本発明の1実施例を示すホログラムラベルAの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(透明基材)
本発明のホログラムラベルで使用される透明基材1は、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムラベルAを製造する際の処理や加工に適した耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
透明基材の一方の面に、表面活性化処理を全面に施し、その後、所望のパターン状に不活性化処理を行うが、これらの処理において、活性化処理面と不活性化処理面のホログラム形成層との密着性、すなわち、剥離強度の差が大きくなるものが望ましい。
透明基材1の厚さは、通常5〜250μmであるが、ラベルとしての取り扱い適正から25〜100μmとすることが望ましい。
【0025】
(回折格子からなる微細なパターン領域の集合により構成されている、パターンをその表面に有する回折格子形成層)
本発明の回折格子領域3を有する、「回折格子からなる微細なパターン領域の集合により構成されている、パターンをその表面に有する回折格子形成層」(回折格子形成層)2を構成するための透明な樹脂材料としては、透明基材との密着性の良好な、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの樹脂の1種もしくは2種以上は、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。
【0026】
上記の樹脂材料を用いて回折格子形成層2を形成するには、感光性樹脂材料に直接的に形成することもできるが、予め作成した凹凸形状(所望の回折格子領域3を含む。)もしくはその凹凸形状のの複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を、コーティング方法や、印刷方法等の適宜な形成方法を用いて形成した、上記の樹脂材料層に押し付けることにより、賦型を行なうことができる。
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にその回折格子形状を形成することができる。
回折格子形状を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計された凹凸構造(所望の回折格子領域3を含む。)を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。
その回折格子領域の凹凸形状(所望の回折格子領域3を含む。)は、複製により凹凸を反転することができ、以下に記載するホログラム形成層の十分な回りこみを達成しやすい方を選択可能である。
【0027】
(ホログラム形成層)
本発明のホログラム形成層4を構成するための透明な樹脂材料としては、上記の回折格子形成層2と同一の樹脂、または、その回折格子形成層に用いた樹脂との相溶性の低い、もしくは、界面剥離強度の小さい、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの樹脂の1種もしくは2種以上は、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。
【0028】
上記の樹脂材料を用いてホログラム形成層4のホログラムレリーフを形成するには、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層に押し付けることにより、賦型を行なうのがよい。
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
【0029】
レリーフ形状を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.1μm〜1μmである。
単一回折格子のように、全く同一形状の凹凸の繰り返しであるものは、隣り合う凹凸が同じ形状であればある程、反射する光の干渉度合いが増しその強度が強くなり、最大値へと収束する。回折方向のぶれも最小となる。立体像のように、画像の個々の点が焦点に収束するものは、その焦点への収束精度が向上し、再現もしくは再生画像が鮮明となる。
さらに、透明金属化合物薄膜の場合は、その薄膜の上下の面が、同一レリーフ形状であり且つ、その面と面の距離(すなわち膜厚さ)が均一であればあるほど、再現もしくは再生強度が大きくなる。また、レリーフ面にホログラム画像の凹凸とは異なる周期、形状の凹凸が存在すると、それはホログラムもしくは回折格子の再現もしくは再生時のノイズとなり、画像を不鮮明にする要因となる。
【0030】
レリーフ形状を賦形(複製ともいう)する方法は、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記ホログラム形成層4上に、もしくは、下記する反射性薄膜層5上に、前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。形成するホログラムパターンは単独でも、複数でもよい。
上記の極微細な形状を精密に再現するため、また、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、原版は金属を使用し、低温・高圧下で複製を行う。
原版は、Niなどの硬度の高い金属を用いる。光学的撮影もしくは、電子線描画などにより形成したガラスマスターなどの表面にCr、Ni薄膜を真空蒸着法、スパッタリングなどにより5〜50nm形成後、Niなどを電着法(電気めっき、無電解めっき、さらには複合めっきなど)により50〜1000μm形成した後、金属を剥離することで作ることができる。
高圧回転式の複製に用いるためには、このNi層の厚み精度を高くする必要があり、通常±10μm、好ましくは、±1μmとする。このため、裏面の研磨や、平坦化方法を用いてもよい。
【0031】
複製方式は、高圧とするため、平板式でなく、回転式を用い、線圧0.1トン/m〜10トン/m、好ましくは、5トン/m以上とする。複製用シリンダーは、その直径が小さいとレリーフの再現性が低下するため、複製シリンダー直径は大きい方が好ましく、通常、直径0.1m〜2.0m、好ましくは、1.0m以上の弧を使用する。
透明基材1/回折格子形成層2上のホログラム形成層4をこの複製用シリンダーに沿って押し当て、裏面より金属製シリンダーにより上記圧力にて複製を実施する。複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小限とするためには、透明な基材1側から全体を加熱するのではなく、ホログラム形成層4面側の一部のみを加熱する方法が望ましい。これにより、回折格子形成層2と、ホログラム形成層4の不要な剥離強度の増加を回避できる。
通常、この加熱温度は60℃〜110℃とする。さらには、裏面の金属製シリンダーを常温に保つ、もしくは冷却することで、さらにその精度を向上させることができる。
【0032】
(反射性薄膜)
本発明のホログラムラベルでは、ホログラム形成層4の上に形成されているホログラムレリーフに接して、且つ、追従するように反射性薄膜層5を形成する。この薄膜は、入射した光を反射する必要があるため、ホログラム形成層4よりも高い屈折率を有する薄膜であれば、特に限定されない。
反射性薄膜層5としては、真空薄膜法などにより形成される金属薄膜などの金属光沢反射層、又は透明反射層のいずれでもよいが、金属光沢反射層を部分的に設けたり、透明反射層を設けた場合は、ラベル貼着後にそのラベルに覆われた被貼着体上の画像などがホログラムを通して観察できるので好ましい。
透明反射層としては、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム形成層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できることから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム形成層4よりも光屈折率の高い薄膜、例として、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITOなどがある。好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Ti、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Auなどの酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したものなどが例示できる。またアルミニウムなどの一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが20nm以下になると、透明性が出て使用できる。
【0033】
透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、ホログラム形成層4の一方面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(化学蒸着法)などの真空薄膜法などにより設ければよい。特にCVD法はホログラム形成層4等への熱的ダメージが少ない。また、他の薄膜形成法を用いても、形成する薄膜層を薄くしておくと、その熱的ダメージを少なくすることができる。例えば、AL蒸着層であれば、形成条件によるが、ほぼ20nmが透明性が無くなり全反射性を出現する臨界点である。この厚さは薄膜材料、形成方法、金属加熱温度・真空度等の形成条件により異なる。
(微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフを有する光散乱層)
本発明の微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフ(光散乱領域)7を有する光散乱層6を構成するための透明な樹脂材料としては、反射性薄膜層5との密着性の良好な、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの樹脂の1種もしくは2種以上は、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。
【0034】
上記の樹脂材料を用いて光散乱層6を形成するには、感光性樹脂材料に光散乱性の凹凸を形成するためのマスクパターン露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフ(所望の光散乱領域7を含む。)もしくはそのレリーフの複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を、コーティング方法や、印刷方法等の適宜な形成方法を用いて形成した、上記の樹脂材料層に押し付けることにより、賦型を行なうことができる。
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にその微細凹凸を形成することができる。
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造(所望の光散乱領域7を含む。)を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。光散乱領域7の凹凸を光吸収性とするために、光学的理論に基づいた凹凸形状を、微細な階段状に近似して形成してもよく、その階段状の段差を現像手法により滑らかなものとしても好適である。
その散乱性領域のレリーフ(所望の光散乱領域7を含む。)は、複製により凹凸を反転することができ、以下に記載する粘着層の十分な回りこみを達成しやすい方を選択可能である。
第2段階剥離後は、剥離した「ホログラム形成層4、反射性薄膜層5及び、光散乱層6」からなる積層体の、その両面にそれぞれの表示及びホログラム再生像を視認できるため、これらの表示間、さらには、ホログラム再生像との間に、文字の重なりが、別の文字となる等、目視した際に、重なることによる「新たなメッセージの表出」等ができるものとしても好適である。
【0035】
(粘着層)
粘着層8としては、従来公知の溶剤系及び水系のいずれの粘着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴムなどのゴム系樹脂などが挙げられる。自然にやさしい材料構成とするために、特に、天然ゴムを主成分とするラテックス、それを変性したもの、特に天然ゴムにスチレン特にメタクリルさんメチルとをグラフト重合させて得た天然ゴムラテックス等の天然素材から作製されたものを用いても良い。
粘着層8の塗工量は、約8〜30g/m2(固形分)が一般的であり、従来公知の方法、すなわち、グラビアコート、ロールコート、コンマコートなどの方法で、塗布し乾燥して粘着層8を形成する。また、粘着層8の粘着力は、光散乱層6と粘着層8との剥離強度で、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、0.1〜1kg程度の範囲にすることが望ましい。もちろん、それ以上の剥離強度を有していても、本発明の目的には適合している。
以上の如き粘着剤の種類や、塗工量は、透明基材1、回折格子形成層2、ホログラム形成層4及び反射性薄膜層5及び光反射層6上に粘着剤層8を形成する際に、その剥離強度が前記範囲になるように、選択して使用することが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
(実施例1)
透明基材1として、38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、その一方の面に、位置検出用マークを墨インキにて印刷したものの上に、下記組成からなる回折格子形成用組成物をグラビアリバースコーティング方式により塗布し、乾燥して、厚さ5μmの回折格子形成層2を得た。
〈回折格子形成用組成物〉
メラミン樹脂 20部
トルエン 40部
メチルエチルケトン 40部
【0037】
この回折格子形成層2上に、電子線描画方法により、位置検出用マークとの見当を合わせた、20mm×20mmの領域内に、タテ5mm×ヨコ5mmの「開」、「封」の文字パターンを連続的に設けた「パターン」のその文字部分(画線部分は400〜500μmの幅となる。)を埋めるように、一辺の長さが、50μm〜200μmの間でランダムに設定する正方形(回折格子領域3。)を、隣接する正方形(回折格子領域3)が少なくとも50μm以上離れるようにランダムに設定し、さらにその正方形の中を、周期1.2μm、深さ0.3μm(回折効率15%。)で所定の回折格子角度を有する回折格子で埋めて形成してある、回折格子領域3を有するプレス盤を重ね、加熱・加圧することにより、その凹凸形状を回折格子形成層2上に転写し、回折格子形成層2の表面に回折格子領域3を形成した。
その後、この回折格子形成層2を加熱硬化させた。この回折格子形成層2上に、その回折格子領域3の凹凸形状を埋めるように、下記組成のホログラム形成層用組成物を用いて、3本リバースロールコーティング方式により、ホログラム形成層4を3μm厚さで設け、
〈ホログラム形成層用組成物〉
アクリル樹脂 20部
トルエン 20部
酢酸エチル 40部
イソプロピルアルコール 20部
レーザ光学系を用いて撮影した意匠性の高いホログラム(再生画像サイズ20mm×20mm。)を備えたNi原版を用意し、上記したホログラム形成層4に、そのNi原版のレリーフ面を合わせて(光散乱層2の光散乱領域3との位置検出用マークによる位置合わせをした上で)、回転式レリーフホログラム形成装置(原版シリンダー径1.0m・原版面温度100℃、加圧シリンダー径0.3m水冷式、圧力2トン/m、複製速度10m/分)にてホログラムレリーフをホログラム形成層4上に形成した。
【0038】
次に、アルバック社製真空蒸着機にて、そのホログラムレリーフ面に接して、且つ、追従するように200nm厚さのAL薄膜からなる反射性薄膜層5を形成した。
このAL薄膜形成面に、下記組成からなる光散乱層用組成物2をグラビアリバースコーティング方式により塗布し、乾燥して、厚さ1μmの光散乱層6を得た。
〈光散乱層用組成物2〉
メラミン樹脂 20質量部
トルエン 20質量部
酢酸エチル 40質量部
イソプロピルアルコール 20質量部
この光散乱層6上に、電子線描画方法により、位置検出用マークとの見当を合わせた、20mm×20mmの領域内に、タテ5mm×ヨコ5mmの「不」、「正」の文字パターンを連続的に設けた「パターン」のその文字部分(画線部分。)を埋めるように、一辺の長さが、1μm〜10μmの正方形で、深さが0.1μm〜0.5μmの凹部をランダムに敷き詰めた凹凸を有するレリーフ(文字部分が光散乱領域3となる。)を形成したプレス盤を重ね、加熱・加圧することにより、そのレリーフを光散乱層6上に転写し、光散乱層6の表面に光散乱領域7を形成した。その後、この光散乱層6を加熱硬化させた。
この光散乱層6の上に、その光散乱領域7を埋めるように、次の組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が20μmになるように、塗工し70℃で乾燥させて、粘着層8を形成し、20mm×20mmのサイズにカットし、実施例1のホログラムラベルAを得た。
【0039】
・<粘着剤組成物>
酢酸ビニル−ビニルアルコール−アクリル共重合体 30質量部
ジイソシアネート硬化剤(XDI) 2質量部
トルエン 38質量部
酢酸ビニル 40質量部
このホログラムラベルを、重要書類を入れた封筒の封緘用に所定の圧力をかけて貼付し、24時間放置した後、目視にて観察したところ、回折格子領域3の部分(及び光散乱領域7の部分)に光学的な視認性の差は認識できず、「パターン状」の文字があることは確認できなかった。
そのホログラムラベルを剥そうとしたところ、透明基材1と回折格子形成層2の積層体のみが容易に剥離し、その剥離後のホログラム形成層4の最表面には、その「回折格子領域3」、すなわち、縦横に連続した、「開」「封」の文字が、ホログラム画像を遮蔽するように、光を散乱しており、ホログラムと、その「開」「封」の文字を鮮明に視認することができた。
さらに、封筒上に残存するホログラム形成層4等を剥そうとすると、ホログラム形成層4、反射性薄膜層5及び光散乱層6の積層体が容易に剥がれ、被貼着体上に、「不」、「正」の文字表示を表示する粘着層8が現れた。
このことから、ホログラムラベルAは、高い意匠性と開封防止効果を有するものと思われた。また、残存する粘着層8は、封筒に固着しており、この粘着層8を、封筒に何らのダメージも与えずに、封筒からきれいに除去することはかなり困難と思われた。
【0040】
(実施例2)
アルバック社製電子線加熱方式真空蒸着機を用いて、TiOx薄膜層40nmを形成する
こと、及び、封緘する封筒にデザインが印刷されていること以外は全て実施例1と同一とし、実施例2のホログラムラベルA(透明なホログラムラベル)を得た。
実施例1と同様に評価したところ、透明なホログラムラベルの中の「パターン状」の文字部分と、それ以外の部分において、光学的な差はなく、透明なホログラムラベルを通してて、封筒のデザインが鮮明に確認できたことに加えて、実施例1と同様の効果が得られた。
(実施例3)
回折格子形成2と、ホログラム形成層4に、下記組成物を用いて、両層の屈折率差をほぼ0とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3のホログラムラベルAを得た。
〈光散乱層用組成物〉
メラミン樹脂(屈折率n=1.56) 20部
トルエン 40部
メチルエチルケトン 40部
〈ホログラム形成層用組成物〉
メラミン樹脂(屈折率n=1.56) 20部
トルエン 10部
メチルイソブチルケトン 40部
酢酸エチル 30部
実施例1と同様に評価したところ、ホログラムラベルの中の「パターン状」の文字部分と、それ以外の部分において、光学的な視認性の差は全く無かったこと以外は、実施例1と同様の効果が得られた。
【0041】
(実施例4)
回折格子形成層2と、ホログラム形成層4に、下記組成物を用いて、両層の屈折率差を0.01とした以外は、実施例1と同様にして、実施例4のホログラムラベルAを得た。
〈光散乱層用組成物〉
メラミン樹脂(屈折率n=1.56) 20部
トルエン 40部
メチルエチルケトン 40部
〈ホログラム形成層用組成物〉
エポキシ樹脂(屈折率n=1.61) 20部
メチルメタアクリレート(屈折率n=1.49) 10部
酢酸エチル 40部
イソプロピルアルコール 30部
実施例1と同様に評価したところ、ホログラムラベルの中の「パターン状」の文字部分と、それ以外の部分において、光学的な視認性の差は全く無かったこと以外は、実施例1と同様の効果が得られた。
(実施例5)
回折格子形成層2上に、位置検出用マークとの見当を合わせた、20mm×20mmの領域内に、タテ5mm×ヨコ5mmの「開」、「封」の文字パターンを連続的に設けた「パターン」のその文字部分(画線部分は400〜500μmの幅となる。)を埋めるように回折格子を形成する方法として、光学的撮影方法を用い、網点の大きさ60μm、網点率40%の網点形成用マスクを用いて、60μmの網点で形成された回折格子領域3を有するようにしたこと、以外は、実施例1と同様にして、実施例5のホログラムラベルAを得た。
実施例1と同様に評価したところ、虹色の文字がより鮮明に観察された以外は、同様の結果が得られた。
【0042】
(実施例6)
回折格子形成層2上に、位置検出用マークとの見当を合わせた、20mm×20mmの領域内に、タテ5mm×ヨコ5mmの「開」、「封」の文字パターンを連続的に設けた「パターン」のその文字部分(画線部分は400〜500μmの幅となる。)を埋めるように回折格子を形成する方法として、電子線描画方法を用い、網点の代わりに、幅100μm、長さ300μmの帯を、幅方向には100μmの間を空け、且つ、長さ方向には、20μmの間を空けて形成したこと以外は、実施例5と同様にして、実施例6のホログラムラベルAを得た。
実施例1と同様に評価したところ、虹色の文字がさらに鮮明に観察された以外は、同様の結果が得られた。
(比較例)
(比較例1)回折格子形成層2を設けないこと以外は、実施例1と同様にし、比較例1のホログラムラベルを得た。
このホログラムラベルを実施例1と同様に評価したところ、透明基材1が容易には剥がれず、粘着層6から剥離し、剥離の途中から透明基材1とホログラム形成層4との間に空隙が発生したに止まった。
従って、このホログラムを丁寧に剥がせば、不正に剥すことも可能であると思われた。
【符号の説明】
【0043】
A ホログラムラベル
1 透明基材
2 透明基材に、回折格子からなる微細なパターン領域の集合により構成されている、 パターンをその表面に有する回折格子形成層(回折格子形成層)
3 回折格子領域
4 ホログラム形成層
5 反射性薄膜層
6 微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフを有する光散乱層(光散乱層)
7 微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフ(光散乱領域)
8 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に、回折格子からなる微細なパターン領域の集合により構成されている、パターンをその表面に有する回折格子形成層が形成され、その上に、ホログラムレリーフを有するホログラム形成層、反射性薄膜層、微細な凹凸形状からなるパターン状のレリーフを有する光散乱層及び、粘着層が設けられていることを特徴とするホログラムラベル。
【請求項2】
前記回折格子からなる微細なパターン領域の集合が、網点状の領域からなることを特徴とする請求項1記載のホログラムラベル。
【請求項3】
前記回折格子からなる微細なパターン領域の集合が、微細な帯からなることを特徴とする請求項1記載のホログラムラベル。

【図1】
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【公開番号】特開2011−203489(P2011−203489A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70684(P2010−70684)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】