説明

ホログラムラベル

【課題】
ホログラムを用いたホログラムラベルにおいて、その真正性を高めるために、照明光と同一の波長のホログラム再生像を再生するホログラムとは異なり、照明光とは異なる波長のホログラム再生をする新規なホログラムラベルを提供する。
【解決手段】
ホログラム形成層上にフォトクロミック薄膜層を設け、フォトクロミック薄膜層を励起する光で照明して、可視光領域にある、その発光の色調によるホログラム再生像を目視にて判定可能とし、偽造防止性を高めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なホログラムラベル、特に、位相ホログラムを呈するレリーフホログラムのレリーフ位置に、フォトクロミック薄膜を配した発色型、または、「変色」型のホログラムラベルに関するものである。
以下、フォトクロミック薄膜層が「無色」乃至は「白色」の状態から「有色」の状態へ変化することを所定の励起光(紫外線等。)による「発色」といい、「ある色調」から「別の色調」へと変化することを所定の励起光(紫外線等。)による「変色」という。
本明細書において、配合を示す「部」は質量基準である。また、「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。「回折格子」には、光干渉縞などの光学的に形成したものや、電子線描画方法などの直接描画方法によって形成したものを含む。
本発明において、「不活性化処理」とは、「ある樹脂層」の表面の表面張力を低下させるなどして、その樹脂層のその表面の上に積層する、「別の樹脂層」との接着性を低下させ、「ある樹脂層」と「別の樹脂層」との積層における、その両層の界面の接着強度(JIS Z0237で規定する180°剥離試験による、「剥離強度」を意味する。以下、剥離強度ともいう。)に関し、「不活性化処理」している領域の「接着強度の大きさ」を、「不活性化処理」していない領域における本来の「接着強度の大きさ」より低下させる処理を施すことを意味する。
この処理により、「ある樹脂層」の最表面に、表面張力の大きい領域と、小さい領域が現れることとなる。
この「不活性化処理」には、「ある樹脂層」の表面全面を「活性化処理」した後、その一部を不活性化処理することも含み、結果として、「積層」された両層の界面の一部領域に、他の領域よりも接着強度の低い部分を形成することを含む。
もちろん、「ある樹脂層」と「別の樹脂層」との接着強度が小さい場合(すなわち、「別の樹脂層」の表面張力が小さいことを意味する。)にも、「ある樹脂層」の最表面の一部を「不活性化処理」することによって、結果として、「積層」された両層の界面の一部領域に、他の領域よりも接着強度の低い部分を形成することを含む。
【背景技術】
【0002】
(主なる用途)
本発明のホログラムラベルの主なる用途としては、偽造防止分野に使用されるホログラムラベルであって、具体的には、クレジットカード等の偽造されて使用されると、カード保持者やカード会社等に損害を与え得るもの、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や公衆電話用のプリペイドカード等がある。
これらはいずれも、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報を保持した情報記録体であり、偽造による損害を防止する目的で、記録体そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0003】
また、これら情報記録体以外であっても、高額商品、例えば、高級腕時計、高級皮革製品、貴金属製品、もしくは宝飾品等の、しばしば、高級ブランド品と言われるもの、または、それら高額商品の収納箱やケース等も偽造され得るものである。また、量産品でも有名ブランドのもの、例えば、オーディオ製品、電化製品等、または、それらに吊り下げられるタグも、偽造の対象となりやすい。
さらに、著作物である音楽ソフト、映像ソフト、コンピュータソフト、もしくはゲームソフト等が記録された記憶体、またはそれらのケース等も、やはり偽造の対象となり得る。また、プリンター用のトナー、用紙など、交換する備品を純正材料に限定している製品などにも、偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0004】
(背景技術)
従来、情報記録体や上記した種々の物品(総称して、真正性識別対象物と言う。)の偽造を防止する目的で、その構造の精密さから、製造上の困難性を有すると言われるホログラムを真正性の識別可能なものとして適用することが多く行なわれている。しかしながら、ホログラムの製造方法自体は知られており、その方法により精密な加工を施すことができることから、ホログラムが単に目視による判定だけのものであるときは、真正なホログラムと偽造されたホログラムとの区別は困難である。
これらの真正性識別対象物、特にラベル形態や転写形態にてホログラム画像を施された物品は、ホログラム画像の目視確認という真正性識別のみでなく、新たな真正性識別方法を用いてその対象物の真正性を識別する必要が生じている。
【0005】
(先行技術)
これらの要求に応えるため、ホログラムに積層して、入射した光の内、左回り偏光もしくは、右回り偏光のいずれか一方の光のみを反射する光選択反射層を有するホログラムラベルが提案された。(例えば、特許文献1参照。)
この光選択反射層として、コレステリック液晶を使用し、偏光版等を用いて確認する方法で偽造防止性を高めている。
しかしながら、特許文献1の記載にあるように、ホログラム形成層上の反射性薄膜層の反射率が高いため、コレステリック液晶層で反射されず透過した光(選択的反射光の補色光)が、この反射性薄膜層で反射し、再びコレステリック液晶層へ戻る(以下戻り光とする)ことにより、この戻り光が、コレステリック液晶を観察する際のノイズ成分となって、選択的反射光に付加・混在し、液晶本来の色調とならず、視認・識別することすら難しくなっていた。
【0006】
また、コレステリック液晶材料そのものが高価であり、その液晶性能を引き出すためには液晶層に接して、配向膜の形成が不可欠であって煩雑であり、さらには、コレステリック液晶の光散乱性により、ホログラム画像を再生する光がその液晶層を通過するときに画像にボケ・歪みを生じる等の問題があった。
このため、コレステリック液晶層の光散乱性を抑えたり、コレステリック液晶層そのものを薄くする等の工夫が考えられたが、コレステリック液晶層の光散乱性を抑えるために屈折率差を小さくしたり、コレステリック液晶層を薄くしたりすると、上記した光選択反射層としての機能が低下してしまい、ホログラム画像の鮮明性と偽造防止性能を確保する最適な条件を得ることが難しいという欠点を有していた。
さらには、ホログラム形成層をフォトクロミック材料で構成し、そのフォトクロミック層の一方の面にホログラムレリーフと反射性薄膜層を形成することで、そのホログラムレリーフの存在を隠蔽する偽造防止方法が提案されているが、この積層におけるフォトクロミック層は、あくまで「意外な色調変化をする」層としての役目をしているのみであり、偽造防止効果としては不十分であった。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−90538号公報
【特許文献2】特開平3−248188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、位相ホログラムのホログラム形成層、すなわちホログラムレリーフに接するようにフォトクロミック薄膜層を設け、もしくは、ホログラムレリーフに同調してフォトクロミック薄膜層を部分形成して、定められた条件下でのみ、所定の色調からなるホログラムを視認することができ、もしくは、定められた条件下で、色調が変化したホログラムを視認することができる、新規なホログラムラベルを提供することである。さらに、このホログラムラベルを不正に剥がした際にはフォトクロミック薄膜層に変形が生じ、不正を行った者には気づかれないうちに、再生されるホログラムが不鮮明化されているという高い偽造防止性を有するホログラムラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、
本発明のホログラムラベルの第1の態様は、
透明基材の一方の面に、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して、且つ、均一な厚さで設けられたフォトクロミック薄膜層、及び、接着剤層が設けられているホログラムラベルであって、前記透明樹脂層の前記ホログラムレリーフ面の一部が不活性化処理されていることを特徴とするものである。
上記第1の態様のホログラムラベルによれば、
透明基材の一方の面に、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して、且つ、均一な厚さで設けられたフォトクロミック薄膜層、及び、接着剤層が設けられているホログラムラベルであって、前記透明樹脂層の前記ホログラムレリーフ面の一部が不活性化処理されていることを特徴とするホログラムラベルを提供することができ、不正にホログラムラベルを剥がした者には気づかれずに、その不正の痕跡を残すことができる高い偽造防止性を有するホログラムラベルを提供することができる。
また、本発明のホログラムラベルの第2の態様は、
前記フォトクロミック薄膜層が、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸の凹部にのみ形成されていることを特徴とするものである。
上記第2の態様のホログラムラベルによれば、
前記フォトクロミック薄膜層が、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸の凹部にのみ形成されている第1の態様に記載のホログラムラベルが提供でき、第1の態様の特徴に加えて、フォトクロミック薄膜層を発光させたときに、より鮮明なホログラム再生像を視認可能な、ホログラムラベルを提供することができる。
さらに、本発明のホログラムラベルの第3の態様は、
前記フォトクロミック薄膜層の厚さが、0.01μm以上0.5μm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
上記第3の態様のホログラムラベルによれば、
前記フォトクロミック薄膜層の厚さが、0.01μm以上0.5μm以下である第1の態様または第2の態様に記載のホログラムラベルが提供でき、第1または第2の態様の特徴に加えて、フォトクロミック薄膜層を発光させたときに、著しく鮮明なホログラム再生像を視認可能な、ホログラムラベルを提供することができる。
そして、本発明の第4の態様であるホログラムラベルは、
第1〜第3の何れか一つの態様のホログラムラベルの前記ホログラムレリーフ面の前記不活性化処理されている前記一部の領域が、50μm〜300μmの大きさの微細なパターン形状の集まりであることを特徴とするものである。
上記の態様のホログラムラベルによれば、
第1〜第3の何れか一つの態様のホログラムラベルの前記ホログラムレリーフ面の前記不活性化処理されている前記一部の領域が、50μm〜300μmの大きさの微細なパターン形状の集まりであることを特徴とするホログラムラベルを提供することができ、不正にホログラムラベルを剥がした際のホログラム再生像の不鮮明化をさらに著しくすることが可能な、ホログラムラベルを提供することができる。

本発明のホログラムラベルにおいては、ホログラム画像を再生する回折格子群が、ホログラムレリーフとして、透明基材の一方の面に形成された透明樹脂層面上に略一平面として形成されており、このレリーフ上に、若しくは、このレリーフに追従して均一な厚さでフォトクロミック薄膜層が設けられている。
【0011】
すなわち、ホログラムレリーフは、位相ホログラムとしての位相差を「レリーフ形状(凹凸形状を意味する。)」に現しているが、この位相差を有する「レリーフ形状」に追従して(沿って)フォトクロミック薄膜層が設けられることにより、フォトクロミック薄膜層が呈する色調が、上記位相差を有して(含んで)観察されることになる。言い換えれば、フォトクロミック薄膜が所定の条件下において呈する「色調」を有する「光」がそのフォトクロミック薄膜層から「発する」ことになる。
フォトクロミック薄膜層は、透明性を有しているか、もしくは、「白色」(フォトクロミック材料表面の光散乱性により、「白色」と視認されることを意味する。)である場合には、フォトクロミック薄膜層を発光させる照明光以外の照明光の下では、単なる透明なラベル、もしくは、白色ラベルとして視認される。
そのため、上記した種々のホログラムラベルの用途においては、その用途に適合する文字や絵柄等の印刷層を、ホログラムラベルを構成する各層の上下、特には、透明基材と透明樹脂層との間に設けることが好適である。
また、フォトクロミック薄膜層が既に「ある色調」を呈している(「有色」の状態を意味する。)場合には、通常の室内照明光の下で、その色調によるホログラムラベルとして視認できるため、「ある色調」と「同一の色」(色の三要素である「色相」「色彩」「明度」が実質的に一致することを意味する。)を呈する「真正」等のそのホログラムラベルが本物であることを意味する文字や図柄等印刷層を、ホログラムラベルを構成する各層の上下、特には、透明基材と透明樹脂層との間に設けることが好適である。
これにより、フォトクロミック薄膜層に対して所定の励起光を照射し、所定の励起光による「変色」をさせた際に、その「真正」等の文字が浮き上がるようにすることができる。
この場合における「同一の色」の範囲は、「色差」、例えば、L*a*b*色度図(LAB表色系)における△E{=(△a2+△b2+△L21/2)}で表される「色差」において、△Eが、0.5以下となることを意味する。
国際照明委員会(CIE)が提唱する表色系には、その他RGB系、XYZ系(Yxy系)、UVW系(Luv系)等があるが、これらは相関しており、容易に換算が可能であって、その換算値を用いることもできる。
そして、「色」の変化は、この△Eが0.5を超えると「差があるもの」として認識され(SLIGHT:差がわずかに感じられる。)、1.5を超えると明確にその「違い」を視認できる(NOTICEABLE:差がかなり感じられる。)。
【0012】
このような「通常のデザインを有する通常のラベル」もしくは、ある色調を呈するホログラムラベルとしか視認されない「ラベル」が、所定の励起光により「発色」乃至は「変色」して、その「発色」波長、乃至は「変色」波長のホログラム再生像を出現する。
その上、ホログラムラベルを不正に剥がそうとすると、その剥がす力により、ホログラムラベルに変形応力や張力が負荷としてかかり、その力により、透明樹脂層のホログラムレリーフ面の一部の「不活性化処理されている領域」において優先的に界面剥離が発生し、その部分において、ホログラムラベルのフォトクロミック薄膜層が一部変形を起こすこととなる。
すなわち、ホログラム再生像を再生する発光面であるフォトクロミック薄膜層のホログラムレリーフ形状が部分的に歪み、フォトクロミック薄膜層の形状が保持する「位相情報」が乱れることにより、その「領域」においてホログラムレリーフの干渉効果(ホログラムレリーフの一つ一つの凹凸から発する光が互いに干渉し、強め合ったり、弱めあったりして、ホログラム再生像を結像する、その効果を意味する。)を低減させて、ホログラム再生像の輝度、さらには、そのコントラストが低下し、不鮮明なものとなる。
そして、その変形がフォトクロミック薄膜層の比較的大きな領域(ホログラムレリーフ形成面の大半を意味する。)に及ぶと、再生されるホログラム再生像そのものに歪みを生じることとなる(互いに干渉し、強め合って進む、「ホログラム再生像を結像する光」の進行方向が乱れることを意味する。)。
さらに、界面剥離が生じた部分において、「空隙」が発生し、この部分に「空気」が入り込むことによって、この「空気」と透明樹脂層との界面、及び、「空気」とフォトクロミック薄膜層との界面において、所定の励起光が「界面反射」を生じ、この「空隙」の下に位置するフォトクロミック薄膜層においては、所定の励起光の照度が大幅に低下し、その位置のフォトクロミック薄膜層の「発色」や「変色」が十分に起こらず、「発色」においては、その明るさ(明度)に欠けるものとなったり、「変色」においては、「元の色調」と、「新たな色調」とが混ざり合ったものとなる。
【0013】
従って、その結果、この「空隙」の下に位置するフォトクロミック薄膜層と、それ以外の位置にあるフォトクロミック薄膜層とで、その「明るさ」や、「色調」に差を生じることとなる。
このような現象を、目視にて容易に判定できるように、「空隙」が発生していない領域における「変色」前の「色」による「印刷層A」と、「変色」後の「色」と「同一の色」による「印刷層B」とを、ホログラムラベルの中に併設することが好適である。
すなわち、「変色」するフォトクロミック薄膜層においては、
その「空隙」が発生していない領域においては、
・「変色」前には、「印刷層A」が視認できず、「印刷層B」が鮮明に視認でき、
・「変色」後には、「印刷層A」が視認できて、「印刷層B」が視認でき なくなる
現象を確認して、そのホログラムラベルの「真正性」を判定し、
その「空隙」が発生している領域においては、
・「変色」前は、上記と同様に視認されるが、
・「変色」後には、「印刷層A」が視認できて、さらに、「印刷層B」を も視認できる状態となり、その「ホログラムラベルを剥離した痕跡」 を容易に判定できることとなる。
また、「発色」するフォトクロミック薄膜層においても、「発色」後の「色」と「同一の色」による「印刷層B」を、ホログラムラベルの中に設けることで、
その「空隙」が発生していない領域においては、
・「発色」後には、「印刷層B」が視認できなくなる現象を確認して、そ のホログラムラベルの「真正性」を判定し、
その「空隙」が発生している領域においては、
・「発色」後には、その「明度」の差によって、「印刷層B」が視認でき る状態としてのこり、その「ホログラムラベルを剥離した痕跡」を容 易に判定できることとなる。
そして、このような「フォトクロミック薄膜層の変形」は、ホログラムラベルの外観上において、何らの変化も示さないため、不正行為を行った者には、このような「不正の痕跡」が残されたことを知るすべもなく、且つ、不正行為を確認する者にとっては、容易にその「不正の痕跡」の有無を判定せしめるものである。
【0014】
本発明で使用される透明基材には、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムラベルを製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、5〜250μm厚さのフィルム状もしくはシート状のプラスチックを用いる。
透明基材の上に形成される、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層(以下、ホログラム形成層ともいう。)を構成する、透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができ、グラビアコーティング方式等の各種コーティング方式や、オフセット印刷方式、スクリーン印刷方式等の各種印刷方式を用いて、5μm〜50μm厚さの透明樹脂層を形成する。
上記の透明な樹脂材料を用いてホログラムレリーフを有する透明樹脂層を形成するには、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層に押し付けることにより、賦型を行うことが好適である。
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
レリーフホログラムは、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
【0015】
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.1μm〜1μmである。
そして、このホログラムレリーフを有する透明樹脂層の表面の一部に、「不活性化処理」を施す。ここで、「一部」とは、ホログラムレリーフ面全体に対して、「一部」の面積、すなわち、「領域」を意味する。この「領域」は、連続する領域であっても、離散的な領域の集まりであってもよい。
この「領域」への不活性化処理においては、ホログラムレリーフ面の最表面のみ、すなわち、その表面から透明樹脂層の内側(厚さ方向)に対して、僅かな距離のみ(例えば、0.001μm〜0.01μm程度。)の部分の樹脂の性質を、変性乃至は改質する。もしくは、これ以上の距離を変性乃至改質する場合においても、その透明樹脂層のホログラムレリーフ形状に実質的な変化を起こさない方法を用いる。
「不活性化処理」は、透明樹脂層上に直接「不活性化処理」を行う方法、例えば、熱硬化性樹脂や、硬化剤を添加した樹脂を用いて、その最表面の一部を赤外線加熱等により完全硬化させて、未反応成分を解消したり、離型成分を含む樹脂の部分加熱や部分硬化により、その離形成分を最表面にブリードする方法等と、まず、「活性化処理」、例えば、炭酸ガスレーザー照射、遠赤外線炭酸ガスレーザー照射、172nm真空紫外線(VUV、エキシマ光)照射、酸素増感エキシマ光照射、プラズマ処理等の透明樹脂層最表面の化学結合エネルギーよりも大きいエネルギー(7.2eV)により、透明樹脂層最表面の化学結合を切断し、または、172nmの真空紫外線等のように、大気中の酸素に吸収されてオゾンまたは直接励起酸素を発生し、この接触により官能基を生成する等の物理的処理等を用いて、透明樹脂層の最表面のみを「活性化(表面張力が大きくなることを意味する。)」し、その後、活性化した透明樹脂層の最表面の一部(領域)に、その最表面のみを部分的に溶解する、もしくは、その最表面の活性化した官能基と反応して官能基の活性を解消する、溶剤類等を、活版印刷方式やインクジェット方式を用いて、活性化処理面への接触を避けてパターン形成し、透明樹脂層の活性化された最表面の部分のみと反応して、その部分のみを不活性化させる方法とがある。
【0016】
これらの方法によれば、透明樹脂層上のホログラムレリーフの形状には、精密な意味において、「何らの変化」も生じないため、この上に形成するフォトクロミック薄膜層の形状は、精密に「ホログラムレリーフ」の形状となる。
例えば、後者の不活性化処理によれば、ポリエチレンテレフタレート樹脂で、60mN/mに増大した表面張力が、36mN/mとなり、透明樹脂層としてのメラミン樹脂との剥離強度が0.8kg/25mm幅から0.1kg/25mm幅へと小さくなり、「不活性化処理」領域と、他の領域のとの剥離強度の差を大きくすることができる。
また、「不活性化処理」としては、透明樹脂層とはそもそも接着し難い、表面張力の小さい樹脂、例えば、シリコーン樹脂やパラフィン系樹脂等を透明樹脂層上に形成して、その上に形成するフォトクロミック薄膜層と透明樹脂層との剥離強度を低下させる方法もあるが、この場合には、このシリコーン樹脂等が、透明樹脂層のホログラムレリーフ上に「厚さ」を有して残り、この上に形成するフォトクロミック薄膜層の「レリーフ形状」を本来のホログラムレリーフ形状からかけ離れたものとしてしまうため、その方法を用いることができない。(もちろん、透明樹脂層内に「浸み込むタイプ」のものであって、ホログラムレリーフ上に実質的に何らの「厚さ」を付加しないものであれば、使用可能である。)
これは、ホログラムレリーフの凹凸形状の深さが0.1μm程度であるため、その1/10の深さである「0.01μm」程度の厚さの樹脂残りがあっても、ホログラム再生像の鮮明さに大きな影響を及ぼすためである。
そこで、このようなシリコーン樹脂等による「不活性化処理」は、透明樹脂層上にフォトクロミック薄膜層を形成して、そのフォトクロミック薄膜層を「精密なホログラムレリーフ形状」とした、そのフォトクロミック薄膜層上にそのシリコーン樹脂等を設けて、フォトクロミック薄膜層と、接着剤層との界面において、容易に剥離する部分を設ける方法が好適である。
もちろん、フォトクロミック薄膜層上に、透明樹脂層と同様な不活性化処理を施すことも好適であり、その際には、透明樹脂層上の不活性化処理の位置と、フォトクロミック薄膜層の不活性化処理の位置とを同調させることも、フォトクロミック薄膜層の変形効果が大きくなり、好適である(同調とは、ホログラムラベルの観察側から、ホログラムラベルに対して垂直方向に見て、全く重なる位置としてもよく、また、敢えて、互い違いに位置するようにしてもよい。いずれにしても、フォトクロミック薄膜層の厚さや材質に合わせ、フォトクロミック薄膜層の変形がし易い組み合わせとする。)。
【0017】
そして、この不活性化処理する領域、すなわち、ホログラムレリーフ面の不活性化処理されている一部の領域を、50μm〜300μmの大きさの「微細なパターン形状の集まり」とすることで、フォトクロミック薄膜層の変形をより効率的に発生させ、しかも、この「「微細なパターン形状の集まり」状に「発色」や「変色」の不十分な部分と、「発色」や「変色」が十分な部分とが発生させて、不正な剥離行為が行われた痕跡を目視にて容易に判定可能とすることができる。
その「微細なパターン形状」は、例えば、網点形状、市松模様状、ランダムパターン等とし、その「微細なパターン」の部分のみ不活性化処理することで、すなわち、「微細なパターン」と「微細なパターン」の間の領域は不活性化処理しないことで、
網点形状の場合には、その網点の中を不活性化処理し、網点と網点の間の領域は不活性化処理せず、市松模様状の場合には、升目で一様に区切り、その一つ飛ばしの升目の部分のみ、不活性化処理し、それ以外の升目は、不活性化処理しないことにより、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層とフォトクロミック薄膜層との界面の剥離強度に微細な網点状や微細な市松模様状の強弱を付与することで、フォトクロミック薄膜層に与える変形、及び、空隙の大きさを、目視可能な大きさである、50μm〜300μmとする。
このため、「微細なパターン」の個々の大きさ(市松模様であれば、その一つのマスの大きさを意味する。)は、50μm〜300μmとする。好適には、100μm〜300μmである。
「微細なパターン」の個々の大きさが、300μmより大きいと、フォトクロミック薄膜層のホログラムレリーフ形状に対する変形の周期が大きすぎ、この部分の凹凸の干渉効果を低減するような変形となり難く、また、50μm未満とすると、不活性化処理の個々の領域が小さくなりすぎて、上記した方法による、目視判定がし難くなる。
この不活性化処理を施す範囲は、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層全体に渡って施すこともできるが、この不活性化処理の目的が「不正行為の判定」であるため、ホログラムラベルの所定の一部範囲(1/10〜1/25の範囲。)に限定して施すことも、そのような処理が存在することをさらに秘匿する意味で好適である。
【0018】
ここで、ホログラム再生像が出現する原理について以下に説明する。
フォトクロミック薄膜層が「発光」もしくは「変色」により呈する「光」は、レリーフホログラムを再生する場合に生じる(ホログラム再生の元となる)ホイヘンスの2次波に対し、本発明のホログラムラベルの場合において、この2次波に相当するものが、ホログラムレリーフ面に配されたフォトクロミック薄膜の呈する色調(以後、「発した色」、もしくは、「変色した色」からでる「光」を便宜上まとめて、「発色光」、又は「発光光」とも表現する。)であり、この発色光がその役目を担い、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフが有する位相差を含んで発色光を観察者側に発するものである。
この発色光が、ホログラムレリーフ面上の空間において干渉現象を起こし、その結果、所定の方向に所定のホログラム再生像を発現する。
フォトクロミック薄膜が、その色調を変化させる様子を、フォトクロミック分子ポテンシャル曲線(図1参照。)を用いて、以下に説明する。
フォトクロミック分子Aは、ある波長λの光照射によってエネルギーを得て、励起状態の分子A*になる。(STEP1)
このとき、励起状態となったフォトクロミック分子A*は分子内反応、例えば、cis−trance異性化反応や、閉環・開環反応、酸化・還元反応、水素移動による互変異性等を起こして、その分子の幾何構造や、電子構造を変化させる。
この変化によって、フォトクロミック分子A*は、フォトクロミック分子Aとは違った波長の光λ′を吸収するフォトクロミック分子B へと変化する。
そして、フォトクロミック分子B は、その吸収波長λ′の光の吸収(STEP2)、もしくは、熱エネルギーを吸収(STEP3)して、再び、フォトクロミック分子A へと戻る。
そしてこのSTEP1〜STEP3を繰り返すことが可能である。
このとき、フォトクロミック分子B からフォトクロミック分子A への熱戻りのしやすさは、その基底状態ポテンシャルエネルギー△E(図1:STEP3
)の大きさに依存することになる。
熱戻りがしにくい、つまり△E が極端に大きければ暗所に保存しておけばその
まま着色体を維持し続けることになる。(このようなフォトクロミック分子は、これを光のみに依存するという意味でP 型という。)
逆に、光が当たらなくなって、すみやかに脱色、もしくは、元の色調に戻る場合には、△E は比較的小さい。(このようなフォトクロミック分子は熱依存性が
あるという意味で、T 型という。)
【0019】
すなわち、フォトクロミック薄膜は、あるときはフォトクロミック分子Aで構成され、あるときは、フォトクロミック分子Bで構成されていることになる。
フォトクロミック分子Aもしくは、Bはそれぞれ特徴のある光吸収曲線を有しており、フォトクロミック分子Aは波長λにおいて、フォトクロミック分子Bは波長λ´において大きな吸収(曲線)部分を持つ。
一例として、フォトクロミック分子Aにおける波長λが、紫外線領域にある場合、フォトクロミック分子Aは、無色透明であって、励起状態A*を経て、フォトクロミック分子Bに変化して初めて、可視光領域にある特定の波長(これが波長λ´の場合もある。)を中心とする光の吸収により、特定の色調を呈するようになる。
この「色調を呈する」状況は、フォトクロミック分子Bが、可視光領域において所定の光吸収曲線を有しており、このフォトクロミック分子Bに白色光を当てた際に、特定の波長を含む所定の波長領域の光を吸収し、吸収されなかった波長領域の光が発散光として、フォトクロミック分子Bからなるホロクロミック薄膜層から発することになる。
この例によるホログラムラベルにおいては、フォトクロミック分子Bから発する発散光が、上記したホイヘンスの2次波の役割を担うことになる。
従って、フォトクロミック薄膜層がフォトクロミック分子Aで構成されているときには、このフォトクロミック薄膜層が無色透明であって、その位置にホログラムがあるとは認識できず、そのフォトクロミック薄膜層の背景にあるものが見えているが、波長λの照明光をフォトクロミック薄膜層に当てることにより、フォトクロミック薄膜層が上記した波長領域の光を発散し、その発散光の干渉により、その発散光の「色調」によるホログラムが空中に浮かんで見えることになる。
【0020】
この発散光の「色調」によるホログラム再生像は、フォトクロミック薄膜層が、上記したP型である場合には、その「色調」をしばらく維持し、徐々に消色し、また、フォトクロミック薄膜層が、上記したT型である場合には、比較的すみやかに「色調」が消色し、再び、無色透明となる。
また、フォトクロミック分子A、Bがいずれも可視領域の色調を呈する場合には、ホログラム再生像の色調が変わる現象が現れることになる。
本発明のホログラムラベルのこのような効果を意匠性ととらえて、鑑賞用途に採用してもよい。
また、T型の中でも、その消色の速さを非常に早いものとして、波長λの照明をはずすと同時に消色するように設計し、ホログラム真正性判定者が、ホログラムラベル(もしくはホログラムラベル貼着物)保持者から、そのホログラムラベル(もしくはホログラムラベル貼着物)を預かり、素早く波長λの照明を僅かな時間照射し、その瞬間に、上記した発色光によるホログラム再生像を視認して、真正であることを確認し、その後、すみやかに、そのホログラムラベル(もしくはホログラムラベル貼着物)を、その保持者に返却するなど、その真正性判定を、その保持者に気づかれずにに行うことを可能とすることもできる。
この場合には、消色の速さを、発色強度(発色濃度)の半減期で表現して、その半減期が、0.1秒〜数秒となるように設計する必要がある。こうすることで、波長λの光を照射すると、速やかに上記した変化が生じ、フォトクロミック分子Bの「色調」のホログラム再生像が現れ、波長λの光の照射を止めると、速やかに無色透明となる、真正性判定に優れるホログラムラベルを提供することができる。
もちろん、波長λの光を照射後、発色を確認し、速やかに波長λ´の光を照射して消色するような判定システムを用いることも好適である。
【0021】
次に、ホログラフィの原理について説明する。
物体がコヒーレント光で照明され,物体から回折された光が記録媒体(フォトレジスト等。)を照明しているとした場合、物体から回折されて記録面に到達した物体波は、
F(x,y)=A(x,y)EXP[φ(x,y)]
であらわされる。ここで、
A(x,y) は物体波の振幅分布とし、
φ(x,y) は位相分布とする。
このとき、記録媒体には、記録媒体に到達する光波の強度分布が記録される。その強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)|2=A2(x,y) (1)
となり、位相分布は記録されない。
ここで,物体波にこれと干渉性のある光波(参照波という)を重ね合わせると,記録される光波の強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)+R(x,y)|2
=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+F(x,y)R*(x,y)+F*(x,y)R(x,y) (2)
となる.(*は複素共役項を表す。)
【0022】
ただし,参照光が記録面に角度θで入射する平面波であるとすれば、
R(x,y)=r(x,y)EXP(2πiαx) (3)
と書け、
α = SIN(θ)/λ (4)
である。(2)の第1項と第2項はそれぞれ、物体波の強度と参照波の強度でいずれも位相情報は欠落している。第3項と第4項は干渉の項でそれぞれ
F(x,y)R*(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[i [φ(x,y)−2παx] ] (5)
F*(x,y)R(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[−i [φ(x,y)−2παx]] (6)
とあらわされ、物体の位相項 φ(x,y) が残っている。(5)、(6)は互いに複素共役であり、(4.2)の第3項は物体の複素振幅分布を含んでいる。(5)、(6)を(2)に代入すると、
I(x,y)=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+2A(x,y)r(x,y)COS [2παx−φ(x,y)] (7)
となる.物体波と参照波が干渉して干渉縞を形成していることがわかる。
【0023】
このように、物体波に参照波を重ね合わせて干渉記録し、 物体の位相情報を欠落させずに記録する方法がホログラフィである。(7)を記録したものが「ホログラム」と呼ばれる。ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布 I(x,y)に比例し、
T(x,y)=τI(x,y) (8)
とかけるとする。このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてると、ホログラムを透過もしくは反射してきた波面は、
T(x,y)R(x,y)=τ(|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+τF(x,y)|R(x,y)|2
+τF*(x,y)R2(x,y) (9)
とあらわすことが出来る.この第2項は
τF(x,y)|R(x,y)|2
τA(x,y)r2(x,y)EXP[iφ(x,y)]] (10)
第3項は、
τF*(x,y)R2(x,y)=
τA(x,y)r2(x,y)EXP[−iφ(x,y)+2πiα] (11)
とかける。
【0024】
このことから、(9)の第1項は、照明光と同じ方向にホログラムを突き抜ける光束もしくは正反射する光束であり、第2項は、(10)より、物体光に比例した振幅を持つ光波であることがわかり、第3項は、(11)より、物体波と共役な位相分布を持ち、2θの方向に伝播する光波であることがわかる。
このようにして,ホログラフィの技術を使うと複素振幅分布を記録して再生することが出来る。
本発明の場合は、ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布に比例し、(8)の式で表されてはいるものの、このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてるのではなく、(8)の振幅透過率もしくは振幅反射率と同様の空間的な分布を持つ発光波がこのホログラムから発せられることになる。
従って、参照光にホログラムに記録された位相項を付与するという従来のホログラム再生の原理によらず、既にホログラムに記録されている位相項を保持して発光波を放射するものである。従って、理論上は、物体の位相差を含む空間関数を持つ3次元の連続曲面状の発光面を有し、その1曲面から光が放射されることになる。
【0025】
従来のホログラム再生原理を透過タイプについて、単純化して説明すると、参照光としての平行光をホログラムにあてた際、遮蔽部分では、平行光が遮蔽され、透過部分からのみその平行光を透過し、透過部分と遮蔽部分との境界において回折が起こり、物体の持つ位相項を受け取り、ホログラムを透過した成分全体が重ね合わさり、それがホログラム再生光となって観察者の目に届くものである。
本発明の場合は、上記した参照光としての平行光が存在せず、ホログラムレリーフに接するように設けられた発光面での発光時(「変色」により「色」が発することも「発光」と捉え、ホログラム原理の説明をする場合においては、敢えてこの「発光」という言葉に集約して使用する。)、その放射光が物体の位相項を保持しており、その放射光同士の干渉現象により、ホログラム再生がなされるものである。
時間的且つ空間的コヒーレンス性を持たない放射光同士の干渉効果は、レーザー光のような十分な干渉を生じないが、低コヒーレント光で ホログラムを照明した際と同様のレベルでホログラム再生が行われる。例示すれば、レーザー光のような特別な光源による照明を用いず、一般家庭や、一般的な事務所等において用いられている「蛍光灯」のような、「人工的に発生させた自然光」によっても、ホログラムを再生させることが十分可能である。但し、「人工的に発生させた自然光」であっても、その光源の大きさが、「点光源」であるか、「線状」であるか。もしくは「平面状」であるかによっても、また、その発光波長が、「単色光」であるか否か、さらには、その発光曲線の半値幅が狭いか否か等によって、その「ホログラム再生像の鮮明さ」は大きく左右されることになる。
以上のような原理によるホログラム再生であるため、ホログラム撮影時の参照光は平行光であることが好ましく(複雑な参照光を再現できないため。)、もしくは、「回折格子により表現されたホログラム」(回折格子は、物体光、参照光とも平行光である。)であることが好ましく、さらに、回折格子は計算機ホログラム等、電子線描画により形成したものが精密であり、好適である。
【0026】
さらに、上記の理由から、ホログラム再生像をより鮮明にするためには、放射光に、時間的若しくは空間的なコヒーレンス性に類する特性を付与することが必要であり、例えば、発光する層の厚さを薄いものとしたり、発光波長の幅を狭くすることが望ましい。さらに、励起光源も小さい形状であることが好ましく、スポット形状等が特に好適である。
また、発光する層を励起する励起光と、変化後の発光波長との波長差は大きい方が望ましく、さらに、観察時、その励起光をフィルタリングして発色光のみを取り出したり、さらにそれを増幅することも有効である。
励起光源として、紫外線、可視光線、電子線、X線等のエネルギー及び、場合に応じて、赤外線エネルギーを放射可能な光源を用いて、発光等をさせることができるが、ホログラム観察用さらには、ホログラム認証用に用いるためには、フォトクロミック薄膜に応じた光源を用いる必要があり、所定の強度、波長、さらには照明スポットのサイズを有する紫外線光源、可視光光源、場合により赤外光光源を用いることが好適である。
これらの光源による照明により、ホログラムレリーフ面に接するように設けられたフォトクロミック薄膜層から、さらに言及すれば、そのフォトクロミック薄膜層に含まれるフォトクロミック分子等から個々に、照明光源の波長とは異なる波長の発光等が発現する。その発光等が、ホログラムレリーフと同一の空間的位相を含み、且つ、照明光源とは異なる波長(発光波長。)を有することから、ホログラムレリーフによる正反射光(0次回折光)方向や、照明光波長(励起光波長)による回折方向とは異なる方向、すなわち、発光波長による回折方向へホログラム像の再生が行われる。
【0027】
但し、このフォトクロミック薄膜層の厚さが、ホログラムレリーフとは無関係にそのホログラム面上に分布している場合には、その厚さ分布に起因する発光強度分布が、場合によっては、ホログラムを再生する光と不要な干渉を生じ、ホログラム再生像を不鮮明にする要因となり得る。
この要因を排除するため、フォトクロミック薄膜層を、ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して均一な厚さで形成して、ホログラムレリーフ面のどの位置からも、同一の強度の発光が生じるようにし、ホログラム再生像の鮮明化を図る。
本発明のホログラムラベルの照明光(励起光)として、可視光以外の紫外光や赤外光を使用した場合は、その光は観察者には見えず、あたかも照明光のないところからホログラム再生像が浮き上がっているように観察されるが、このホログラム再生像は、例え、照明光が、時間的・空間的なコヒーレント性を有していても、結果として、励起・発光というプロセスを経て発光するものであるため、その発光時の空間的なホログラムの位相を含んではいるとはいえ、その発色光同士の時間的及び空間的なコヒーレント性は小さく、ホログラム再生像は通常のレーザー再生レリーフホログラムのレーザー光による再生像より微弱であって且つ不鮮明となっている。
もちろん、ビーム形状の回折光を観察するのみであれば、その色調と回折方向を確認することは容易であり、そのままでも真正性の判定に差し支えないが、このため、この微弱且つ不鮮明なホログラム再生像を観察者が認識しその存在を正確に判定可能とするために、フォトクロミック薄膜の発光性能を向上させ、且つ、回折角度を大きくとって波長―回折角依存性を強め、照明光回折角度と発光光回折角度の差を大きくし、さらには、フォトクロミック薄膜層を薄くして、フォトクロミック薄膜層厚さ方向のばらつきを抑え且つ均一なものとすることが必要となる。(発光面が位相情報を含んでいるため、その空間的な形状を正確に再現するものとする。)
【0028】
さらには、時間的なコヒーレント性を発現するため、光源として発光時間が10-15sec以下のパルスレーザーで励起して、パルスとパルスの時間的間隔をA−B分子間遷移時間以上あけて照明することも好適である。これにより、一つの励起パルスによって生じた一つの発光の発光面が、次の励起パルスによって生じた発光面とは、互いに撹乱現象を起こさず、一つのパルスによって発現した一つの発光面によって生じるホログラフィックな干渉現象により、鮮明なホログラム再生像を観察することができるようになる。もちろん、単純に秒単位でON−OFFするストロボ状の光源を使用した場合でも、観察者には、連続して発光しているようにも見えるため、このような簡易な手段であっても目視で確認する場合には、上記した効果を十分得ることができる。
フォトクロミック薄膜層は、フォトクロミック分子を樹脂に混入させたり、溶剤(若しくは水)に分散させたりしたフォトクロミック分子含有インキを、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、ノズルコート方式さらにはインクジェット方式等でホログラムレリーフ上に形成することができる。
このとき、インキ中のフォトクロミック分子の含有割合を調整する等により、形成したフォトクロミック薄膜層を、ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して均一な厚さで形成することができる。
ホログラムレリーフの凹凸は例えれば、1μmレベルの周期で、深さ0.01μmレベルの凹凸を持つ、ゆるやかな曲線であって略平面と見做せるため、この略平面上に適宜な粘度(0.1〜10パスカル・秒)に調整し、インキの自重によるレベリング効果を発揮させることと、インキ中の固形分を10%以下、さらには5%以下とすることで、例えば、厚さ1μmに対して、そのばらつきを1/10以下に、さらには1/20以下に抑えることができる。
【0029】
ここで、フォトクロミック薄膜層を1μmオーダーとしたが、ホログラム再生像の鮮明度を向上させるためには、フォトクロミック薄膜層を離散的に設けることも好ましく、このために、フォトクロミック薄膜を形成する領域の単位(サイズ)を1.0μm程度もしくはそれ以下、例えば0.01μm〜0.5μm、より好適には、0.01〜0.05μmとし、ホログラムレリーフ面内に均一に点在させることも好適である。そして、フォトクロミック薄膜層厚さ方向には、フォトクロミック分子、もしくは、フォトクロミック分子を吸着させた微粒子を単位として1〜10分子もしくは1〜10粒子で並んでいる状態とすることが好ましい。
中でも、ノズルコート方式やインクジェット方式、さらには、化学蒸着等の物理的蒸着法では、樹脂を使用せず溶剤等とフォトクロミック分子や粒子のみで薄膜を形成可能であり、フォトクロミック薄膜層として非常に薄く形成(フォトクロミック分子や粒子1〜10分子等。)することができるため好適である。その上にそれらのフォトクロミック薄膜を固定するために適宜な透明樹脂層を保護層として形成してもよい。
ところで、フォトクロミック材料は、ホログラム記録材料や、光メモリ用記録材料そのものとして用いることは可能であり、そのような用途は既に公知であるが、これらは、フォトクロミック材料に直接ホログラフィックな記録(干渉縞の記録)を行うものであって、フォトクロミック材料に微細な明暗の記録を行うものである。
この記録は、記録した領域のフォトクロミック分子に変化を与えない手法(変化を与えない波長の光を照射するなど。)を用いて、読み出されることになる。
これに対して、本発明のホログラムラベルは、均一に形成したフォトクロミック薄膜層を全て同様に(均一に)照明し、均一な発色を生じさせるだけのものであって、ホログラム撮影光学系を組んでフォトクロミック薄膜層を露光するというような複雑な工程を必要とせず、フォトクロミック薄膜層そのものが「その形状として保有」している凹凸形状に、そのホログラム情報を担持させており、フォトクロミック薄膜層を均一に形成するだけでホログラム情報を「取得する」(「ホログラム再生情報」を「獲得する」という意味。)ことができるという顕著な効果を有するものである。
【0030】
ホログラムレリーフは、周期1μm程度で、深さは、0.01μm、最大でも0.5μmの凹凸形状をしており、この凹部にのみフォトクロミック薄膜層を設けることで、ホログラムレリーフの周期に同調するかたちで、フォトクロミック薄膜層の有無、すなわち、発光の有無を設けることができる。
ホログラムレリーフの凹部とは、ホログラムレリーフ上にフォトクロミック薄膜層を形成する際の凹部であって、通常の観察の仕方、すなわち、ホログラム形成層側から観察する場合には、凸部側となる。フォトクロミック薄膜層の有無を利用して発光強度分布を形成するためには、凹凸どちらかに部分的に形成すればよく、さらには、凹部全体をフォトクロミック薄膜層で埋めてもよく、もしくは、凹部の底の部分のほんの一部のみに形成してもよい。但し、その位相分布と形成する分布が同調する必要があるため、一部に形成する場合は、常に同一の位置に同一のフォトクロミック薄膜「量」を持って形成しなければならない。(この「量」が、発光強度に比例するため。)
凹部に選択的にフォトクロミック薄膜層を形成する方法としては、溶剤等に分散した粒径の非常に小さい、フォトクロミック分子を含むか、その表面に吸着させた微粒子(粒径が0.01μm等。樹脂を含まない。)インキを使用して、ホログラムレリーフの上にインキ層を形成し、溶剤が揮発する間に、微粒子が自重で凸部から凹部へと移動するようにしても良い。
また、規則的な回折格子を設け、その上に均一に設けたフォトクロミック薄膜層をフォトリソグラフィーを用いて、その規則的な回折格子に同調させて露光現像、エッチングすることにより、凹凸とフォトクロミック薄膜層を同調して設けることもできる。この方法によると、各凹部に点在するフォトクロミック薄膜層の厚さや大きさを制御可能であり、レリーフ面全体に、いわば”均一に”形成することができる。
【0031】
以上の手法により形成したものは、上記のホログラムの原理において説明した、発光(放射光)にホログラムレリーフの位相情報を含ませること、に加え、その位相情報に同調した振幅情報をさらに含ませるものである。
従って、発光放射光に位相ホログラムと振幅ホログラムの両方のホログラム情報を含ませることができ、より鮮明なホログラムを得ることが可能となる。
これにより、その意匠性及び真正性判定性を向上することができる。
上記したホログラムの原理より、ホログラム再生像の鮮明度を高めるためには、フォトクロミック薄膜層の厚さは薄いことが望ましいが、薄くすればするほど、ホログラム再生時の発光強度が弱くなるため、フォトクロミック薄膜層厚さは、0.01μm以上1.0μm以下である必要があり、さらには、0.01μm以上0.5μm以下であることが好ましい。
0.01μm未満(最小粒径の粒子1個分)では、発光強度が弱すぎて、光電子倍増管を用いて増幅したとしても、迷光等のノイズとの区別がつきにくく、1.0μmを超えると、発光強度は本発明の目的には十分な強度を得ることが可能であるが、厚さ方向に複数存在する粒子からの発光により、ホログラムレリーフの位相情報を担う曲面の位置がその厚み方向に複数存在することになり、結果としてホログラム再生像が不鮮明となる。
これに対して、0.01μm以上として発光強度を確保し、0.5μm以下として、位相情報を担う曲面の位置を明確にして、ホログラム再生像を鮮明なものとする。
このようなフォトクロミック薄膜層は、ホログラムラベルを不正に剥がした際に非常に変形しやすいことから、真正性の判定性をさらに向上することができる。
【0032】
このフォトクロミック薄膜層上、もしくは、フォトクロミック薄膜層が無い領域においては、透明樹脂層上に直接、接着剤層を設け、本発明のホログラムラベルを形成することができる。
接着剤層に用い得る透明な樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリビニリデン、メチルセルロース、フッ素樹脂、メラミン樹脂、もしくは、この混合体等を適宜用いることができ、更に必要に応じて可塑剤、その他の添加剤を加えて使用することができる(接着剤を意味する。)。
これらの接着剤は、適宜、溶剤や、水に溶解させ、グラビア印刷等のコーティング方式や、シルク印刷、さらには、無溶剤のホットメルト方式等を用いて、上記のレリーフホログラムのホログラムレリーフ上に、乾燥後の形成厚さ、5μm〜50μmで、設けることができる。
5μm未満では、ホログラムラベルを貼着する被貼着体との接着力(接着強度、もしくは、剥離強度を意味する。)が不十分であり、また、50μmを超えると、ホログラムラベルの取扱い適性に欠けるものとなる。
この際、接着剤層の厚さと[透明基材+透明樹脂層]の厚さをほぼ等しくすると、透明樹脂層と接着剤層との界面が、ホログラムラベルのほぼ中央に位置し、ホログラムラベルを不正に剥がそうとしたときの、変形応力や引っ張り力が、この界面のずれ応力、乃至は剥離力となり易く、好適である。
上記した接着剤層に用いる透明な樹脂は、フォトクロミック薄膜層や透明樹脂層との接着性の強いものを適宜選択する。
【0033】
また、接着剤層には、光散乱性を有するもの、例えば、高屈折率である透明無機顔料微粒子(二酸化チタン顔料:屈折率2.70、酸化鉄パール顔料:屈折率3.0など。)を比較的多く混入させることが可能であって(接着剤層を通過する光は、「ホログラム再生」には寄与しないため。)、これにより、フォトクロミック薄膜層を発色、または、変色させた際の、観察側とは反対の方向に進む光を乱反射させて減衰させることができるとともに、接着剤層の粘性を抑制してホログラムラベルのブロッキングを防止でき、好適である。
接着剤層と、フォトクロミック薄膜層や透明樹脂層との180度剥離強度(剥離強度測定は、JIS Z−0237に準じ、剥離速度500mm/分とする。)は、100g/25mm〜3kg/25mm、特に、300g/25mm以上とすることが望ましい。100mm/25mm未満では、ホログラムラベルを被貼着体に貼着した後、ホログラムラベルを不正に剥がそうとした際に、被貼着体と接着剤層との界面においての剥離が起こり易くなり、ホログラムラベルに対して、曲げや、引っ張り等の力がほとんど働かず、フォトクロミック薄膜層の変形が小さいものとなる。
また、不正防止という意味では、剥離強度は、大きいことが望ましいが、3kg/25mmを超えると、ラベル加工適性や、ラベル貼付適性に劣るものとなる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のホログラムラベルによれば、
透明基材の一方の面に、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層、及び、前記ホログラムレリーフに接するようにフォトクロミック薄膜層が設けられていることを特徴とするホログラムラベルが提供され、照明光の波長と異なる波長によるホログラム再生像を持ち、且つ、ホログラムラベルを不正に剥がした際にはフォトクロミック薄膜層に変形が生じ、不正を行った者には気づかれないうちに、再生されるホログラムの不鮮明化等の不正の痕跡が残されているという、偽造防止性に優れるホログラムラベルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】は、フォトクロミック分子ポテンシャル曲線を説明する図である。
【図2】は、本発明の一実施例を示すホログラムラベルAの断面図である。 (フォトクロミック薄膜層が、「ホログラムレリーフを形成する凹凸 に追従して均一な厚さで形成されている」例。)
【図3】は、本発明の他の実施例を示すホログラムラベルA´の断面図である。 (フォトクロミック薄膜層が、「ホログラムレリーフを形成する凹凸 の凹部にのみ形成されている」例。)
【図4】は、本発明の一実施例を判定するプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
(透明基材)本発明で使用される透明基材1は、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムラベルAを製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
その中でも、紫外線等の励起光に対する耐性を有するもの、例えば、紫外線吸収剤を含むものであってもよい。紫外線吸収剤を含むものは、自然光等の中に含まれる紫外線により微かではあるが、予定外のホログラム再生を防ぐ効果も有する。
透明基材1の厚さは、5〜250μmであるが、ホログラム再生像の視認性を配慮する場合には、5〜50μm、特に5〜25μmとすることが望ましい。(図2または図3参照。)
【0037】
(ホログラムレリーフを有する透明樹脂層:ホログラム形成層ともいう。)
本発明のホログラムレリーフを有する透明樹脂層2(ホログラム形成層2)を構成するための透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、アクリル酸エステル樹脂(屈折率n=1.47)、アクリルアミド樹脂(n=1.50)、ニトロセルロース樹脂(n=1.54)、酢酸ビニル樹脂(n=1.47)、もしくは、ポリスチレン樹脂(n=1.60)等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂(n=1.64)、ウレタン樹脂(n=1.60)、エポキシ変性アクリル樹脂(n=1.55)、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂(n=1.64)、アルキッド樹脂(n=1.54)、もしくはフェノール樹脂(n=1.60)等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの樹脂の1種もしくは2種以上は、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
【0038】
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。
上記の樹脂材料を用いてホログラム形成層2を形成するには、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層に押し付けることにより、賦型を行なうのがよい。
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
【0039】
また、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフである、微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。
さらに、カラーホログラム画像を、回折格子線からなる回折格子画素(同一の回折格子線からなる単一回折格子エリアの最小単位。これら画素から回折光としてでてくる光の集合が一つのカラーホログラム画像を形成する。)に要素分解し、所定の画素のサイズ、格子線ピッチ、格子線角度をその各要素に割り当てて再現するという画像処理方法を用いて形成することも可能である。(図示せず。)
凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.01μm〜0.5μmである。
単一回折格子のように、全く同一形状の凹凸の繰り返しであるものは、隣り合う凹凸が同じ形状であればある程、反射する光の干渉度合いが増しその強度が強くなり、最大値へと収束する。回折方向のぶれも最小となる。立体像のように、画像の個々の点が焦点に収束するものは、その焦点への収束精度が向上し、再現もしくは再生画像が鮮明となる。
【0040】
ホログラムレリーフ形状を賦形(複製ともいう)する方法は、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記ホログラム形成層2上に、前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。形成するホログラムパターンは単独でも、複数でもよい。
上記の極微細な形状を精密に再現するため、また、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、原版は金属を使用し、低温・高圧下で複製を行う。
原版には、Niなどの硬度の高い金属を用いる。この原版は、光学的撮影もしくは、電子線描画などにより形成したガラスマスターなどの表面に、Cr、Ni薄膜層を真空蒸着法、スパッタリングなどにより、5〜50nmの厚さで形成し、Niなどを電着法(電気めっき、無電解めっき、さらには複合めっきなど。)により、50〜1000μmの厚さにて形成した後、金属を剥離することで、作ることができる。
複製方式は、平板式もしくは、回転式を用い、線圧0.1トン/m〜10トン/m、複製温度は、通常60℃〜200℃とする。
(不活性化処理、及び、不活性化処理した領域)
このホログラムレリーフを有する透明樹脂層2の表面の一部に、「不活性化処理」を施して、[不活性化処理した領域]3を形成する。(図2または図3参照。)
「不活性化処理」は、まず、「活性化処理」として、炭酸ガスレーザー照射、遠赤外線炭酸ガスレーザー照射、172nm真空紫外線(VUV、エキシマ光)照射、酸素増感エキシマ光照射、プラズマ処理、オープンプラズマ処理、コロナ処理、電子線照射処理等の透明基材最表面の化学結合エネルギーよりも大きいフォトンエネルギー(7.2eV)、放電エネルギー、電子線エネルギー等により、透明樹脂層2の最表面の化学結合を切断し、または、172nmの真空紫外線等のように、大気中の酸素に吸収されてオゾンまたは直接励起酸素を発生し、この接触により官能基を生成する等の物理的処理等を用いて、透明樹脂層2の最表面のみを「活性化(表面張力が大きくなることを意味する。)」し、その後、活性化した透明樹脂層2の最表面の一部に、その最表面のみを部分的に溶解する、もしくは、その最表面の活性化した官能基と反応して官能基の活性を解消する、溶剤類等を、活版印刷方式やインクジェット方式を用いて、活性化処理面への接触を避けてパターン形成し、透明樹脂層2の活性化された最表面の部分のみと反応して、その部分のみを不活性化させ、不活性化した領域3を得る。(活性化領域、及び、プロセスは図示せず。)
【0041】
このうちの「活性化処理」の方法として、さらに、過マンガン酸塩、過酸化物等の酸化剤を塗布することによる酸化処理後、酸化剤を洗浄除去する化学的な処理や、ビニル、エポキシ、メタクリキシ、アミノ、メルカプト、アクリロキシ、イソシアネート、またはスチリル、アルコキシオリゴマータイプシランカップリング剤を用いた化学的な処理、さらには、真空処理であるアルゴンビームエッチング処理、もしくは、透明樹脂層2を部分的に溶解するエッチング液処理を、その透明樹脂層2の最表面の改質にのみ用いる等の物理的な処理も用いることができる。
さらに、使用する溶剤類として、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロン、ジイソブチルケトン、等。)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール等、さらにはその水溶液。)、芳香族類(ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベッソNo.100、ソルベッソNo.150、カクタスP−180等。)、環状炭化水素類(シクロヘキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セルソルブ、エチルー3−エトキシプロピオネート等。)、エーテル類(テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブ等。)等を、「不活性化処理した領域3」を形成する領域に対して、活版印刷方式やインクジェット方式を用いて、活性化処理面への接触を避けてパターン形成し、その領域における「透明樹脂層2の活性化された最表面の部分のみ」と反応して、その部分のみを不活性化させる。
【0042】
このとき、溶剤が瞬時に揮発せず、所定時間、透明樹脂層2の表面に留まる必要があるため、その沸点は、60度以上200度以下、好適には、100度以上160度に調整する。 この方法は、透明樹脂層2のホログラムレリーフ(特に、「レリーフ」曲線の精度。)に悪影響をほとんど与えず、その最表面の性質のみを変化させる。
この不活性化処理により、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層2のホログラムレリーフ面の不活性化処理した領域3の表面張力を、22mN/m〜40mN/m(ぬれ張力試験用混合液[濡れ試薬]による値。)とし、それ以外の領域を41mN/m〜73mN/mとする。
そして、不活性化処理した領域2とそれ以外の領域の表面張力の大きさの比を、1/1.5〜1/3とする。
この比が、1/1.5より大きいと、二つの領域の剥離強度の差が小さくなって、フォトクロミック薄膜層4の変形が生じ難くなり、1/3より小さいと、フォトクロミック薄膜層4の変形は非常に生じやすくなるものの、そのような大きな差を発現する、透明樹脂層2とその表面処理方法の組み合わせを得ることが物理的に難しくなる。
シリコーン樹脂等による「不活性化処理」は、透明樹脂層2上にフォトクロミック薄膜層4を形成して、そのフォトクロミック薄膜層4を「精密なホログラムレリーフ形状」とした後、そのフォトクロミック薄膜層4上にそのシリコーン樹脂等を設けて、フォトクロミック薄膜層4と、接着剤層5との界面において、容易に剥離する部分を設ける。(図示せず。)
もちろん、フォトクロミック薄膜層4上に、透明樹脂層2と同様な不活性化処理を施すことも可能である。
さらには、この「不活性化処理」の目的は、透明樹脂層2とフォトクロミック薄膜層4との界面において、一部とその他の部分とで、接着強度(剥離強度)の差を発現させることが目的であるため、表面張力の大きい透明樹脂層2上に、その透明樹脂層2との接着強度の小さいフォトクロミック薄膜層4を積層した場合においても、その透明樹脂層2上の一部を不活性化処理することで、その不活性化処理後の表面張力そのものの値が上記したものより大きいものであったとしても、結果として、両層の界面において、その部分の接着強度は非常に小さいものとなり、本発明の目的を達するものである。
そして、この不活性化処理する領域3、すなわち、「ホログラムレリーフ面の不活性化処理されている一部の領域」を、「微細なパターン形状の集まり」とすることで、フォトクロミック薄膜層4の変形をより効率的に発生させる。(図示せず。)
【0043】
「微細なパターン形状」の「形状」としては、網点形状、市松模様状、ランダムパターン等の「形状」を用いることができるが、これらの集合体である「微細なパターン形状の集まり」(図示せず。)を、「不活性化処理する領域3」とするためには、その「微細なパターン形状」の個々の「形状」の内側部分のみを不活性化処理する必要がある。
このためには、透明樹脂層2の最表面全体を上記の方法により、一様に「活性化」処理した後、この個々の「微細なパターン形状」の内側の領域のみに対して「不活性化処理」を施して、「不活性化処理した領域3」とすることが好適である。(図示せず。)
特に、この「微細なパターン形状」の「形状」は、精密に形成する必要がないため(個々の大きさや形を高い精度で同一とする必要はないということを意味する。)、上記した溶剤類を用い、インクジェット方式により「不活性化処理」をする方法、もしくは、炭酸ガスレーザー照射等の光学的手法により、レーザー照射のシャッターの開閉とその走査速度を制御することにより、「微細なパターン」状の活性化処理を行い、その未処理領域(不活性化処理した領域3に対応する。)を「微細なパターン形状」の集まり(集合体)とすることができる。
このため、「微細なパターン形状」の個々の大きさは、すなわち、不活性化処理した領域3の個々の大きさは、50μm〜300μmとする。好適には、100μm〜300μmである。
【0044】
この不活性化処理により、その不活性化処した領域3は、透明樹脂層2とフォトクロミック薄膜層3との剥離強度を、0.01kg/25mm幅以上0.1kg/25mm幅以下とすることができ、ホログラムラベルAもしくは、ホログラムラベルA´を一旦、被貼着体に貼着した後(図示せず。例えば、接着剤層5と被貼着体との剥離強度を、1kg/25mmとすると、不活性化処した領域3における、透明樹脂層2とフォトクロミック薄膜層3との剥離強度は、この1/10〜1/100ということになる。)、これを剥そうとすると、どのように工夫しても、必ず、不活性化処した領域3において、透明樹脂層2とフォトクロミック薄膜層3との間に剥離が生じ、空隙が発生するとともに、フォトクロミック薄膜層3の変形が発生する。
この変形は、フォトクロミック薄膜層3が透明、または、白色であるため、視認することはできず、もちろん、有色であっても、視認は難しく、フォトクロミック薄膜層3に用いるフォトクロミック材料に適合する波長の照明光を照射して初めて、本来のホログラム再生像より不鮮明なホログラム再生像、歪みを生じたホログラム再生像、さらには、発色や変色のムラを確認することができる。
このホログラム再生像の鮮明度の低下は、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層2、フォトクロミック薄膜層3、及び接着剤層5に使用する材料、形成方法、層としての物理的特性や光学的特性、さらには、このホログラムラベルA、またはA´を剥がす方向や剥がそうとする力の大きさや速度に依存するが、JIS Z−0237に準じた剥離方法により(剥離速度500mm/分)、回折格子の回折効率に換算して、10%〜30%の低下に相当するようにする。
この低下が、10%未満では、剥がし行為の痕跡を確認する際の「判定精度」が不確かなものとなり。また、30%を超える低下とすると、その実現が物理的に困難である上、不正者にも何らかの異常が起こっていると察知される可能性がでてくる。
【0045】
(フォトクロミック薄膜層)
本発明では、ホログラム形成層2のホログラムレリーフ面に、フォトクロミック薄膜層4を形成する。
このフォトクロミック薄膜層4に用いられる、フォトクロミック分子(フォトクロミック材料)としては、有機化合物系と、無機化合物系があり、
有機化合物系としては、
アゾベンゼン類(cis−trance異性):ジメチルアミノアゾベンゼン類等、
スピロピラン類(分子内開環―閉環):スピロベンゾチオピラン,スピロセレナゾリノベンゾピラン,スピロベンゾセレナゾリノナフトオキサジン等、より具体的には、1,3,3−トリメチルインドリノ−6'−ニトロベンゾピリロスピラン、1',3'−ジヒドロ−8−メトキシ−1',3',3'−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2',2'−(2H)−インドール]、1,3,3−トリメチルインドリノベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6'−ブロモベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−8'−メトキシベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリロスピラン等、
スピロオキサジン類(分子内開環―閉環):スピロキノオキサジン類、スピロナフトオキサジン類、スピロフェナントロオキサジン類、スピロビピリドオキサジン類等、分子内に窒素原子を含む複素環構造を有する化合物等(赤紫〜青色。「着色」が速やかに消色。)、
スピロペリミジン類:2,3-ジヒドロ-2-スピロ-4'-[8'-アミノナフタレン-1'(4'H)-オン]ペリミジン、2,3-ジヒドロ-2-スピロ-7'-[8'-イミノ-7',8'-ジヒドロナフタレン-1'-アミン]ペリミジン等、
【0046】
アリールエテン類:対称型ジアリールエテン、非対称型2,3−ジアリールマレイン酸無水物、非対称ジアリールペルフルオロシクロペンテン等、
1,2-ビス(2,4-ジメチル-5-フェニル-3-チエニル)-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-シクロペンテン、1,2-ビス[2-メチルベンゾ[b]チオフェン-3-イル]-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-シクロペンテン、2,3-ビス(2,4,5-トリメチル-3-チエニル)マレイン酸無水物、2,3-ビス(2,4,5-トリメチル-3-チエニル)マレイミド、cis-1,2-ジシアノ-1,2-ビス(2,4,5-トリメチル-3-チエニル)エテン等、より具体的には、発色波長:425nm、469nm、526nm、534nm、550nm、562nm、578nm、583nm、611nm、620nm、628nm、665nm、680nm、828nm等(構造により、青色、緑色、黄色、赤色等に発色。)、
フルギド類:ジフェニルフルギド、トリフェニルフルギド等、
クロメン類:6−モルホリノ−3,3−ビス(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−ピペリジノ−3−メチル−3−(2−ナフチル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−ピペリジノ−3−メチル−3−フェニル−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−ヘキサメチレンイミノ−3−メチル−3−(4−メトキシフェニル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3−(2−フリル)−3−メチル−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3−(2−チエニル)−3−メチル−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3−(2−ベンゾフリル)−3−メチル−3H−ベンゾ(f)クロメン等(橙色〜黄色に発色。)、
【0047】
シクロファン類:アントラセノファン、アントラセノナフタレノファン、アントラセノパラシクロファン等のアントラセン含有シクロファンやメタシクロファン等、
カルコン(1,3-ジフェニル-2-プロペン-1-オン)―フラビリウム系等、
フルギミド化合物類:N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−2−(4'−メトキシフェニル)−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノ−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノ−6,7−ジヒドロ−4−メチルルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕フランジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノ−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕フランジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノ−6,7−ジヒドロ−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロ−2−(4'−メトキシフェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロ−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−(3'−シアノフェニル)−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−(4'−メトキシフェニル)スピロベンゾチオフェンカルボキシイミド−7,2'−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(橙色〜青色に発色。)、
【0048】
チオインジゴ類(cis−trance異性)、サリチリデンアニリン類(分子内水素移動:結晶タイプ。)、ニトロベンジルピリジン類(分子内水素移動:結晶タイプ。)、テトラクロル−α−ケトジヒドロナフタリン類、ビス(トリフェニルイミダゾリル)類、テトラフェニルヒドラジン類、ビアンスロン類、ピリジルシドノン類、アントラセン誘導体(光二量化)、メチレンブルー(光酸化還元)、トリフェニルメタン類(イオン解離)、ヘキサフェニルビイミダゾル(ラジカル解離)、多環芳香族化合物(酸素付加)等、
を用いることができる。

特に、ジアリールエテン類を透明樹脂に分散させたもの、ジアリールエテン類の結晶化物は、物理特性、耐候性に優れる。
また、無機化合物系としては、
AgBr、AgCl、AgI、CuBr2、CuCl2、CuCl、CuI2、CuI、Ag単体、Cu単体等の中から選択した三成分系化合物等、
銀ナノ粒子-酸化チタン系等、
を用いることができる。
さらに、これらのフォトクロミック分子(材料)の中で、フォトクロミック分子Bとしての発光強度曲線(波長を横軸として。)が、可視領域において、一つのみのピークを持つものが好適であり、さらには、そのピークの半値幅が、10〜50nmであるものが、より鮮明なホログラム再生像を与えるため好適である。
【0049】
形成方法としては、一般的印刷方法、コーティング方法等も用いることは可能であるが、より精密な薄膜を形成する方法として、回転塗布法、キャスト法、スクリーン印刷法、ブレードコーティング法、ロール塗布法、水面展開法、LB(ラングミュア・ブロジェット)法等が挙げられ、ドライ・プロセスとしては真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等が挙げられる。
特に、有機化合物系を均一に、且つ、分子レベルで薄膜形成するには、化学蒸着法が好適である。
より具体的には、フォトクロミック分子を透明な樹脂に均一に分散した樹脂分散型のインキや、水又は溶剤にフォトクロミック分子を分散した溶媒分散型のインキを作製し、それらを用いて、印刷方式や、コーティング方式さらには、インクジェット方式等の種々の形成方法を用いて、ホログラム形成層2に、そのホログラムレリーフに接するように、また、追従するよう均一に、若しくは凹部に部分的に、フォトクロミック薄膜層4を形成することができる。(図2または図3参照。)
また、ホログラム形成層2のホログラムレリーフ面上に、直接、フォトクロミック分子を化学蒸着法によりフォトクロミック薄膜層4を形成することも、そのホログラムレリーフ追従性や、その均一性から好適であるとともに、電子ビーム加熱真空蒸着法における高温の電子ビームや、スパッタリング法におけるアルゴン原子の衝突がなく、分子の構造を維持しやすいため好適である。
また、ホログラム形成層2上にフォトクロミック薄膜層4を形成した後、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー法により、回折格子パターンに位置合わせして露光、現像、不要部除去によりフォトレジストのパターンを回折格子パターンの凹部に同調させ、エッチングによりフォトクロミック薄膜層を除去して、凹部のみにフォトクロミック薄膜層を残すことができる。(図3参照。)
逆に、ホログラム形成層2上にフォトレジスト層を形成し、回折格子パターンに位置合わせして露光、現像、不要部除去により、凸部にフォトレジストを残し、凹部を露出させて、この上にフォトクロミック薄膜層を形成後、凸部上のフォトレジストを除去すると同時に、その真上にあるフォトクロミック薄膜層を部分的に除去することにより、凹部のみにフォトクロミック薄膜層4を残すことができる。(図3参照。)
【0050】
樹脂分散型のインキは、上記したフォトクロミック分子を、透明樹脂、例えば、熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等に混入し、2次凝集を少なくするように、ガラスビーズやスチールビーズを用いたボールミル、ニーダー、ロールミル等による混練りを十分行い、溶剤等で粘度調整をして、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、カーテンコート方式、ノズルコート方式、さらには、インクジェット方式を適宜用いて均一な厚さに形成することができる。
但し、フォトクロミック薄膜層4の厚さを、0.003μm以上1.0μm以下、さらには、0.01μm以上0.5μm以下とするためには、樹脂分散型インキの固形分を1〜10%とし、溶剤若しくは水を溶媒とした塗布膜が、例えば、5μmであったときに、溶媒を蒸発させた後の厚さ(フォトクロミック薄膜層の厚さ)がその1/10乃至は1/100となるようにし、0.5μm〜0.05μmとする。
【0051】
溶媒分散型のインキは、樹脂成分を含まず、フォトクロミック分子と溶媒のみであるため、樹脂分散型よりフォトクロミック薄膜層4の厚さを薄くすることができる。
溶媒としては、使用するフォトクロミック分子の極性に合わせ、水やアルコール系溶剤、若しくは、セルソルブ系、パラフィン系溶剤を用いて、フォトクロミック分子を溶解・保持させ、攪拌しながらカーテンコート、ノズルコート等によりホログラム形成層2上に設けることができる。
さらには、ホログラムレリーフ面を形成している透明樹脂層2に対して、溶解性を有する遅い揮発性の溶剤を数μm塗布し(アクリル・塩ビ・酢ビ樹脂や、ポリエステル樹脂等に対するケトン系溶剤、例えばシクロヘキサノン等。この溶剤を非溶解性の溶剤で希釈して使用し、残留する成分を0.1μm以下にすることも可能である。)、そのホログラムレリーフ面の最表面のみを溶解して、その最表面に粘着性を付与し、その上に、フォトクロミック分子を霧状として吹きかけて、その粘着性の面に接するフォトクロミック分子のみがホログラムレリーフ面上に残るようにするフォトクロミック薄膜層形成方法も好適である。
この方法によると、フォトクロミック薄膜層4がLB膜のように分子レベルの膜となり、ホログラムレリーフ面上に(フォログラムレリーフの大きさに比較して)均一に形成され、ホログラム形成層2側から励起光を当てた場合の発光面が、ホログラムレリーフ面と「同一」となる。
いずれにしても、ホログラムレリーフの凹凸が非常に小さい為、フォトクロミック薄膜層4を均一厚さで、且つ、その中のフォトクロミック分子が均一な密度となるように、もしくは、ホログラムレリーフ面上に均一に(部分形成の場合には形成してある部分同士が均一に)形成するためには、フォトクロミック分子が凝集して2次粒子状とならないようにする必要があり、溶剤(溶媒)へ溶解する方法や、ナノ粒子の表面に吸着させて、ナノ粒子顔料として薄膜形成することが好適である。
さらに、このような非常に薄いフォトクロミック薄膜層4を物理的に保護するために、上記した透明な樹脂を適宜な形成方法を用いて、1.0μm〜3.0μmの厚さで設けてもよい。
また、ホログラム形成層2、フォトクロミック薄膜層4、及び上記保護のための層の互いの屈折率差を、0.1以内、さらには、0.03以内とすることで、励起前における不要なホログラム再生像の出現を防ぎ、より偽造防止性を高めることが可能となる。
【0052】
(接着剤層)
このフォトクロミック薄膜層4の上に、または、透明樹脂層2のホログラムレリーフ上に、接着剤層5を設ける。
後者の場合には、透明樹脂層2のレリーフホログラムと接着剤層5との界面が、ホログラムレリーフの凹凸形状となるため、不要なホログラム再生像を出現を抑える目的で、接着剤層5の屈折率を、透明樹脂層2の屈折率に対して、同一、もしくは、その屈折率差を0.1以下とする。
接着剤層5に用い得る透明な樹脂(すなわち、接着剤。)としては、ポリメチルメタクリレート(屈折率n=1.49)、ポリメチルアクリレート(n=1.47)、ポリベンジルメタクリレート(n=1.57)、ポリブチルアクリレート(n=1.44)、ポリビニリデン(n=1.42)、ポリイソブチルアクリレート(n=1.48)、硝酸セルロース(n=1.54)、メチルセルロース(n=1.50)、セルロース・アセテートプロピオネート(n=1.47)、ポリスチレン(n=1.60)、ポリエチレンテレフタレート(n=1.64)、ポリ酢酸ビニル(n=1.47)、ポリ塩化ビニル・酢酸ビニル(n=1.54)、フッ素樹脂(n=1.32)、メラミン樹脂(n=1.56)、ポリカーボネート(n=1.59)、エポキシ樹脂(n=1.60〜1.65)、フェノール樹脂(n=1.60)、チオウレタン樹脂(n=1.55〜1.75)、酢酸ビニル樹脂(n=1.47)、アクリル樹脂(n=1.45)、酢酸ビニル−アクリル共重合体(n=1.48)、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体(n=1.54)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂(n=1.60)、チオウレタン樹脂(n=1.55〜1.75)等や、天然ゴム(n=1.52)、クロロプレンゴム(n=1.35〜1.56)などのゴム系樹脂等もしくは、この混合体等を適宜用いることができる。
【0053】
また、溶剤系及び水系のいずれの接着剤も用いることができ、特に、透明樹脂層2や、フォトクロミック薄膜層4を構成する材料に対して、溶解したり、膨潤させたりすること(わずかな溶解、膨潤でもホログラム再生像への影響は大きい。)の少ない、水系のものがより好適である。
自然にやさしい材料構成とするために、特に、天然ゴムを主成分とするラテックス、それを変性したもの、特に天然ゴムにスチレン特にメタクリルさんメチルとをグラフト重合させて得た天然ゴムラテックス等の天然素材から作製されたものを用いても良く、また、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂(n=1.60)、ポリアミド系樹脂(n=1.53)、または、これらのゴム変性物などの比較的内部凝集力の大きいものも適宜選択して使用でき、単体、もしくは2種以上の混合系で、更に必要に応じて可塑剤、その他の添加剤を加えて使用することができる。
これらの接着剤は、適宜、溶剤や、水に溶解させ、各種コーティング方式や、シルクスクリーン印刷方式、ホットメルト方式等を用いて、フォトクロミック薄膜層4の上に、または、透明樹脂層2のホログラムレリーフ上に、接着剤層5として、乾燥後の形成厚さ、5μm〜50μmで設け、ホログラムラベルA、または、A´を得る。
【0054】
この様にして作成したホログラムラベルA、または、A´を、室内照明等の照明光[可視光線(照明光)6]下において観察した場合には、ホログラム再生像(再生しない。)7は観察されず(紫外線励起タイプの場合。)、
使用したフォトクロミック分子に適した励起光、例えば、紫外線(波長365nmや、波長245nm等。照明光)8を、10μW/cm2〜10mW/cm2の強度で、1.0秒〜100秒間照射するか、もしくは、可視領域内での色調変化をするものについては、所定波長に近いLED光や、半導体レーザー光(これが励起光となる。すなわち、照明光8となる。)を照射して、所定の色調に発色させ、もしくは、色調変化させ、その色調におけるホログラム再生像9を視認して、その真正性を判定することができる。
このとき、所定のフィルターや、再生光増幅装置等を用いて、その視認性を高めたり、機械的判定を行ってもよい。
また、所定の色調のホログラム再生像の存在を、ホログラムラベルを所持している者、すなわち、ホログラムラベルを転写形成、又は、貼付した真正性識別対象物を所持している者に悟られないよう、真正性確認後、速やかに(数秒〜数十秒以内。)その色調が消えるか、又は、元の色調に戻るよう工夫することも好適である。

そして、このホログラムラベルA、または、A´をステンレス上に貼着し、剥離強度を測定する方法に準拠して、のホログラムラベルA、または、A´を剥離し、再び、ステンレス上に貼着して、上記と同様に観察すると、室内照明等の照明光6下においては、ホログラム再生像(再生しない。)7も、ホログラムラベルA、または、A´の中のフォトクロミック薄膜層4における「剥離の痕跡」も観察されず、所定の紫外線(照明光)8を照射すると、非常に不鮮明なホログラム再生像(図示せず。)が再生され、且つ、発色した色のムラも視認でき、確認者には容易に、「ホログラムラベルA、または、A´を剥離する行為が行われた」ことを確認できるものである。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
透明基材1として、12μmのPETフィルムの表面に、ホログラム画像位置検知パターン及びタテ・ヨコ20mm×20mmサイズの「封」と「緘」の黒色文字をオフセット印刷方式にて1μm厚さに印刷し、その上を覆うように、メラミン樹脂組成物をグラビアコーティング方式にて塗布し、レリーフホログラム(「発光」の文字画像:図4参照)の複製用型の型面を、接触させたまま加熱硬化させることにより、レリーフホログラムの形成を行ない、厚さ3μmのホログラムレリーフを有する透明樹脂層2(ホログラム形成層2)を得た。
そのホログラムレリーフ面を、タテ・ヨコ5mm×5mmサイズの「開」と「封」の文字(画線の幅は、0.5mm。タテ・ヨコ方向の文字間隔1mm。)を縦横繰り返す白抜き文字パターン状に、エキシマ社製エキシマUV03改質装置を用いて、波長172nmのエキシマ光を走査しながら照射して活性化処理した。この活性化処理をしていない領域が、不活性化処理した領域3となる。(図2参照。)
このホログラム形成層2上に、下記組成の樹脂分散型のフォトクロミック分子含有インキ(フォトクロミック薄膜層4用インキ組成物)を用いてグラビアコーティング方式により、フォトクロミック薄膜層4を10μm厚さで、ホログラムレリーフに接するように形成し、乾燥して、0.1μm厚さとした。
このときのフォトクロミック薄膜層4と、ホログラム形成層2との間の剥離強度は、「不活性化処理した領域3」においては、0.08kg/25mm幅であり、その他の領域においては、0.4kg/25mm幅であった。
・<フォトクロミック薄膜層4用インキ組成物>
1,2−ビス[2−メチルベンゾ[b]チオフェン−3−イル]―
3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1−シクロペンテン
東京化成工業株式会社製結晶性材料B2629 0.1質量部
セルロース樹脂 1質量部
イソプロピルアルコール 40質量部
酢酸エチル 59質量部
【0056】
そのフォトクロミック薄膜層4上に、下記組成の接着剤層5用接着剤組成物をカーテンコート方式により、コーティングし乾燥して、接着剤層5を、20μmの厚さで形成し、実施例1のホログラムラベルAを作製した。(図2参照。)
・<接着剤層5用接着剤組成物>
酢酸ビニル−アクリル共重合体 30質量部
イソホロンジイソシアネート 1質量部
トルエン 20質量部
酢酸エチル 30質量部
メチルイソブチルケトン 19質量部
このホログラムラベルAを、封筒の封緘用に使用し、その封緘部分に貼着して、(2kg荷重のローラーにて圧着。)室内照明光(照明光6)の下で観察したところ、ホログラム再生像は観察されず(図4の7の状態。)、365nm波長の光源(浜松ホトニクス製UV-LEDモジュール LC―L2)を用いて照明(照明光8)したところ、この紫外線は目視では見えず、青色のホログラム再生像9「発光」を確認することができ、意匠性、且つ、偽造防止性に優れるものであった。(図4参照。)
そして、照明をはずしたところ、速やかに発光の再生像が消え、元の状態に戻った。(図示せず。)
さらに、このホログラムラベルAをその粘着剤層5と封筒との界面において一旦剥がし、その後、再び、封筒の同一位置に貼着して、同様に、室内照明光6の下で観察したところ、ホログラム再生像は観察されず(図4の7の状態。)、そして、365nm波長の光源(浜松ホトニクス製UV―LEDモジュール LC―L2)を用いて照明8したところ、この紫外線は目視では見えず、ホログラム再生像の輝度が低下しており、不鮮明な青色のホログラム再生像(不鮮明な「発光」。)及び、発色のムラ(「色」のムラであり、特に、「明度」が低下している。)を確認することができ、偽造防止性に優れるものであった。(図示せず。)
【0057】
(実施例2)
実施例1と同様に形成したホログラム形成層2上に、フォトクロミック分子含有インキ(フォトクロミック薄膜層4用インキ組成物)をホログラムレリーフ上に形成する方式を、スピンコート方式とし、均一な塗膜厚さを2μmとし、乾燥後のフォトクロミック薄膜層4を0.02μm厚さで形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のホログラムラベルAを作製した。(図2参照。)
このホログラムラベルAを実施例1と同様に観察したところ、より鮮明に青色のホログラム再生像8「発光」を確認することができ、、発色のムラもより明確に確認することができたこと以外は、実施例1と同様に良好な結果を得た。
(実施例3)
フォトクロミック分子含有インキを下記組成の溶媒分散型とし、カーテンコート方式を用い、乾燥速度を遅くした(乾燥エネルギー量として1/5とした。)こと以外は、実施例2と同様にして、
・<インキ組成物>
東京化成工業株式会社製結晶性材料B2629 0.1質量部
メチルエチルケトン 30質量部
トルエン 70質量部
実施例3のホログラムラベルA´を作製した。(図3参照。)
ホログラムレリーフの凸部より、凹部にフォトクロミック分子含有インキが偏ることで、乾燥後のフォトクロミック薄膜層4も、凹部に偏って形成されていた。
実施例2と同様にして観察したところ、実施例2より、さらに鮮明なホログラム再生像を確認することができたこと、及び、不鮮明化がより明確に表れたこと以外は、実施例2と同様の良好な結果を得た。
【0058】
(実施例4)
フォトクロミック分子として、2,3−ジヒドロ−2−スピロ−4’―[8’−アミノナフタレン−1−’(4’H)-オン]ペリミジン東京化成工業株式会社製D3618を用いたこと以外は、実施例1と同様として、実施例4のホログラムラベルAを作製した。(図2参照。)
励起照明光8として、オムロン社製UV−LEDを用いたこと以外は、実施例1と同様にして観察したところ、黄色から青色へ色調が変化し、実施例1より、鮮明で且つ発光強度の強いホログラム再生像を確認することができたこと以外は、実施例1と同様の良好な結果を得た。
(実施例5)
透明基材1上に、フォトクロミック薄膜層4の発色した「色」と「同一の色」の印刷用インキを用いて、タテ・ヨコ20mm×20mmサイズの「封」と「緘」の文字をオフセット印刷方式にて印刷したこと、及び、ホログラム形成層2のホログラムレリーフ上を、エキシマ社製エキシマUV03改質装置を用いて、波長172nmのエキシマ光を走査しながら照射してその全面を活性化処理した後、この上に、不活性化処理用溶剤組成物を用いたインクジェット方式を用いて、プリントし、ホログラムレリーフ面の不活性化処理されている一部の領域として、不活性化処理した領域3の「微細なパターン形状」を、直径200μm程度、網点率約50%の網点形状として全面に渡って形成し、「微細なパターン形状の集まり」としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のホログラムラベルAを得た。(図2参照。)
このときのフォトクロミック薄膜層4と、ホログラム形成層2との間の剥離強度は、「不活性化処理した領域3」においては、0.05kg/25mm幅であり、その他の領域においては、0.4kg/25mm幅であった。
〈不活性化処理用溶剤組成物〉
イソプロピルアルコール(沸点83度) 20部
トルエン(沸点100度) 20部
ブチルアルコール(沸点117度) 30部
メチルイソブチルケトン(沸点115度) 30部
実施例1と同様にして観察したところ、実施例1より、ホログラムラベルAを一旦剥がした後の発色のムラを、「封」と「緘」の文字の「色」と比較することによって、非常に容易、且つ、明確に確認することができたこと以外は、実施例1と同様の良好な結果を得た。(図示せず。)
【0059】
(比較例)
フォトクロミック薄膜層を形成せず、フォトクロミック薄膜層の代わりに、TiOxの透明反射性薄膜層を形成して透明ホログラムラベルを形成し、比較例とした。
実施例1と同様に観察したところ、室内照明光(照明光6)の下で、「発光」の文字画像のホログラム再生像が観察されるのみであって、365nm波長の光源(浜松ホトニクス製UVU−LEDモジュール LC―L2)を用いて照明(照明光8)しても、その照明光によるホログラム再生像は現れず、また、このホログラムラベルを一旦剥がして再び貼着した後も、その状況は変わらなかった。
このことより、このホログラムラベルによって、ホログラムラベルが存在していること以上の高度な真贋判定をすることは困難と思われた。
【符号の説明】
【0060】
A、A´ ホログラムラベル
1 透明基材
2 ホログラムレリーフを有する透明樹脂層(ホログラム形成層)
3 不活性化処理した領域(ホログラムレリーフを有する透明樹脂層 の最表面のみを不活性化処理している一部領域。模式的に波線で図 示している。)
4 フォトクロミック薄膜層(連続的な形成若しくは部分形成)
5 接着剤層
6 観察状態の例示 :可視光線(照明光)
7 同上 :再生像なし(紫外光励起の場合)
8 同上 :紫外線(照明光)
9 同上 :青色の再生像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面に、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して、且つ、均一な厚さで設けられたフォトクロミック薄膜層、及び、接着剤層が設けられているホログラムラベルであって、
前記透明樹脂層の前記ホログラムレリーフ面の一部が不活性化処理されていることを特徴とするホログラムラベル。
【請求項2】
前記フォトクロミック薄膜層が、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸の凹部にのみ形成されていることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシート。

【請求項3】
前記フォトクロミック薄膜層の厚さが、0.01μm以上0.5μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のホログラムシート。
【請求項4】
前記ホログラムレリーフ面の前記不活性化処理されている前記一部の領域が、50μm〜300μmの大きさの微細なパターン形状の集まりであることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載のホログラムラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−208365(P2012−208365A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74685(P2011−74685)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】