説明

ホログラム用ハロゲン化銀写真材料並びにホログラム及びその作製方法

【課題】回折効率が高く、優れた画像が得られ、且つ透明部の色残りやノイズの少ないホログラム用ハロゲン化銀写真材料並びにホログラム及びその作製方法を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真材料において、ハロゲン化銀乳剤中のハロゲン化銀粒子の平均粒径が0.03μm〜0.07μm、前記ハロゲン化銀乳剤層の膜厚が4μm〜9μmであり、前記ハロゲン化銀乳剤層の銀/ゼラチン比率が0.3〜0.6であり、且つ、該ハロゲン化銀乳剤層中に 特定構造の増感色素を含有することを特徴とするホログラム用ハロゲン化銀写真材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン化銀乳剤層を有するホログラム用ハロゲン化銀写真材料並びにホログラム及びその作製方法に関し、詳しくは、感度および回折効率が高く、優れた画像が得られ、且つ透明部の色残りやノイズの少ないホログラム用ハロゲン化銀写真材料並びにホログラム及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは鑑賞用あるいは医療用として近年徐々にその応用範囲が広がっている。なかでも画像の明るい位相型ホログラムが注目されている。
【0003】
ホログラム は物体からくる光の波を、参照波との干渉縞の形で感光材料上に記録し、このホログラム からの回折光として物体光の波面を再生する方法である。
【0004】
このホログラム に使用できる高い分解能を有し、且つ、十分な感度を有する感光材料として、ハロゲン化銀写真材料(感光材料)が挙げられる。また、ホログラムで明るい再生像を得るためには回折効率が高いことが必要である。回折効率を高くするには、ハロゲン化銀感光材料としては塗布銀量を多くすることが挙げられる。しかし塗布銀量を多くすると現像速度が低下し、画像を得るのに時間がかかってしまう。
【0005】
再生像が明るく鮮明な画像を得る方法としては、漂白前に沃化カリウムを用いる方法(特許文献1)、或いは現像処理後に硬膜を行う方法(特許文献2)などが知られている。しかし、これら従来技術も十分とは言えず更なる改良が必要であった。
また、これらのホログラムをレーザー露光するにあたって、もっとも安価で簡便な光源としては赤色半導体レーザーやHe−Neレーザーなどの赤光源が一般的である。これらの光源に対しての増感色素は現像処理水洗後にゼラチン膜中に沈着し、色残りやノイズの原因となるものが多く、特に回折効率を有る程度得ようと塗布銀量を上げる場合に顕著にこの現象が現れ、良好な回折効率を得ることが困難であった。
【特許文献1】米国特許4,720,441号
【特許文献2】米国特許3,695,879号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、回折効率が高く、優れた画像が得られ、且つ透明部の色残りやノイズの少ないホログラム用ハロゲン化銀写真材料並びにホログラム及びその作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
1.支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真材料において、ハロゲン化銀乳剤中のハロゲン化銀粒子の平均粒径が0.03μm〜0.07μm、前記ハロゲン化銀乳剤層の膜厚が4μm〜9μmであり、前記ハロゲン化銀乳剤層の銀/ゼラチン比率が0.3〜0.6であり、且つ、該ハロゲン化銀乳剤層中に下記一般式〔D〕で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とするホログラム用ハロゲン化銀写真材料。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、Yは、−N(R)−基、酸素原子、硫黄原子、又はセレン原子を表す。Rは炭素数10以下の脂肪族基を表す。Rは、少なくとも1つの水可溶性基を置換基として含む脂肪族基、アリール基又は複素環基を表す。V及びVは各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はVとVで結合してアゾール環と共に縮合環を形成する置換若しくは無置換の基を表す。nは1又は2を表し、mは0又は1を表す。L、L、L及びLは各々、メチン基を表し、nが1又は2で、かつmが0のときはL及びLの少なくとも1つ、nが1又は2で、かつmが1のときはL、L、L及びLの少なくとも1つは、炭素数が3以上のSP<539となるような置換基を有する。ここで、SPとはSP=3.563L−2.661B+535.4で表される値であり、LはSterimolパラメータ(Å)を表し、BはSterimolパラメータの和B+B、B+Bのうち小さい方の値(Å)を表す。Q及びQは各々、酸性の環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Mは分子の総電荷を相殺するに必要なイオンを表し、n1は分子の電荷を中和させるのに必要な数を表す。n1≧3である。〕
【0010】
2.前記1に記載のホログラム用ハロゲン化銀写真材料を用いて露光、現像、漂白を行ったことを特徴とするホログラム。
【0011】
3.前記2に記載のホログラムにおいて、露光量100μJcm−2における回折効率が40%以上であることを特徴とするホログラム。
【0012】
4.前記1に記載のホログラム用ハロゲン化銀写真材料に露光を行い、現像を行い、漂白を行うことを特徴とするホログラム作製方法。
【0013】
5.前記4に記載の現像はアスコルビン酸、炭酸ナトリウム、フェニドンを含有する現像液により行うことを特徴とするホログラム作製方法。
【0014】
6.前記4に記載の漂白は、パラベンゾキノン、クエン酸、臭化カリウムを含有する漂白液により行うことを特徴とするホログラム作製方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、回折効率が高く、優れた画像が得られ、且つ透明部の色残りやノイズの少ないホログラム用ハロゲン化銀写真材料並びにホログラム及びその作製方法を提供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳述する。
先ず、Sterimolパラメータについて説明する。例えば、化学の領域増刊122号「薬物の構造活性相関−ドラッグデザインと作用機作研究への指針」139〜141頁、1979年(南江堂)、又はVerloop.A.,Hoogenstraaten,W.,Tipker,J.,:“Drug Design,Vol.VII”(Ariens,E.J.,Ed.)AcademicPress,New York(1976),pp.180−185に記載されているように、Sterimolパラメータは薬物の構造活性相関の分野で広く使用されている立体パラメータのひとつである。SterimolパラメータL、B、B、B及びBは次のように定義されている。L:置換基はすべてベンゼン核についていると仮定する。置換基とベンゼン核を結び付けている結合軸方向にL軸を取る。置換基を構成している各原子の結合距離とvan der Waals半径を考慮して、これらのL軸への投影を考え、そのうち、最も長い値をLとする。B、B、B及びB:置換基の形をL軸に垂直な平面へ投影する。その投影図において、L軸の通過点(結合点)を起点とした互いに直角な4方向の幅を、小さいものからB、B、B、Bと決める。即ち、B≦B≦B≦Bである。このようなSterimolパラメータは種々の利点をもっており、例えば、(1)立体効果定数E値が実測されている置換基は限られているがSterimolパラメータはどのような置換基についても計算によって求めることができること、(2)薬効に及ぼす置換基の立体効果を置換基の幅の効果と長さの効果に分けることができるので立体効果の内容をより正確に認識できることが挙げられる。
【0017】
炭素数が3以上のSP<539となるような置換基の好ましい例としては、具体的には、置換若しくは無置換の炭素数3以上の分岐アルキル基、置換若しくは無置換のベンジル基、置換若しくは無置換のフェネチル基、置換若しくは無置換の炭素数4以上のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。また、上記の置換基はいずれも無置換である方が好ましい。さらに好ましい例として、イソプロピル基、分岐ブチル基、分岐ペンチル基、分岐ヘキシル基、分岐オクチル基、ベンジル基、フェネチル基、t−ブチルオキシカルボニル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基などが挙げられる。
【0018】
及びQは各々、酸性の環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Mは分子の総電荷を相殺するに必要なイオンを表し、n1は分子の電荷を中和させるのに必要な数を表し、n1≧3である。Q及びQを有する環の具体例を次に示す。
【0019】
【化2】

【0020】
上記具体例において、R及びRは各々、水素原子、アルキル基、芳香族基、ヘテロ環基、カルボニルアルキ基、アルキルチオ基、アミド基、ウレイド基、チオウレイド基、オキシアルキル基等を表す。これらの基はさらに置換されていてもよく、特に好ましくは、RとRが存在するときは、いずれか一方が水可溶性基で置換されていることである。水可溶性基の好ましい例は先述したものと同様である。
【0021】
特開昭63−239436号公報には、Sterimolパラメーターを定義した増感色素に関する技術が開示されているが、これは感度と保存性に係わるものであり、本発明の一般式(D)で表される母核の色素に関して汚れ改良の効果があることは全く知られていなかったことである。
【0022】
次に、一般式(D)で表される化合物の具体例を示す。
【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
【化8】

【0029】
D−1〜D−27の全てにおいて、n1=3である。一般式(D)で表される化合物は公知の合成方法で合成することができ、例えば、特開平10−219125号公報を参考とすることができる。
【0030】
一般式(D)で表される化合物は、ハロゲン化銀乳剤層に含有させることが好ましい。一般式(D)で表される化合物は、直接ハロゲン化銀乳剤中に分散することができる。また、該化合物を適当な溶媒、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、メチルセロソルブ、アセトン、水、ピリジンあるいはこれらの混合溶媒に溶解して乳剤へ添加することもできる。該化合物の乳剤を含む親水性コロイド層塗布液への添加方法は、公知の増感色素 の添加方法を適用することができる。
【0031】
一般式(D)で表される化合物の含有量は、通常ハロゲン化銀1モル当たり1×10−6〜5×10−3モル、好ましくは、3×10−6〜2.5×10−3モルの範囲である。
【0032】
本発明のハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子の平均粒径は0.03〜0.07μmであり、好ましくは0.02〜0.06μmである。0.03μm未満では著しく感度が劣化することがある。また0.07μmを超えると画質が劣化することがある。
【0033】
ハロゲン化銀粒子の粒径は、走査型又は透過型電子顕微鏡観察により測定し、6面体の場合には正方形の一辺の長さとして求められるか、又は長方形の長辺の長さと短辺の長さとの算術平均値として求められる。また球体の場合には同体積の真球の直径の長さとして求められる。本発明において、ハロゲン化銀粒子の平均粒径とは、透過型電子顕微鏡観察により上記のようにして測定し求められたハロゲン化銀粒子30個(好ましくは30個以上)の粒径を算術平均して求められる平均粒径を意味する。
【0034】
ハロゲン化銀乳剤層の膜厚は乳剤塗布乾燥後の膜厚を指し、23℃、50%RH条件下で測定したものを指す。測定方法としては乳剤膜面にガラスまで傷を入れ、テーラーホブソン社製タリステップなどの機械を用いて、膜表面からの深さを測定することで得られる。乳剤層の膜厚は4μm〜9μmであり、好ましくは6μm〜9μmである。厚すぎれば現像速度が落ち、回折効率は低下する。また、薄ければ十分な回折効率は得られない。
【0035】
本発明で言うハロゲン化銀乳剤層の銀/ゼラチン比率とはハロゲン化銀乳剤層中に含まれる銀(金属銀換算値)とゼラチンの単位平米あたりの重量比率を現す。
【0036】
本発明のハロゲン化銀乳剤層には当業界公知の各種技術、添加剤等を用いることができる。例えば、ハロゲン化銀乳剤層、保護層、バッキング層等には、各種の化学増感剤、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、現像抑制剤、紫外線吸収剤、イラジェーション防止剤染料、重金属原子、マット剤等を各種の方法で必要に応じて適宜に含有させることができる。又、本発明ハロゲン化銀乳剤層中にはポリマーラテックスを含有させることができる。
【0037】
これらの添加剤は、より詳しくは、リサーチディスクロージャ第176巻7643(1978年12月)及び同187巻8716(1979年11月)に記載されており、その該当個所を下記にまとめて示す。
【0038】
添加剤種類 RD7643 RD8716
1.化学増感剤 23頁 648頁右欄
2.感度上昇剤 同 上
3.分光増感剤、強色増感剤 23〜24頁 648頁右欄〜649頁右欄
4.増白剤 24頁
5.カブリ防止剤、安定剤 24〜25頁 649頁右欄
6.光吸収剤、フィルター染料、紫外線吸収剤
25〜26頁 649頁右欄〜650頁左欄
【0039】
7.ステイン防止剤 25頁右欄 650頁左〜右欄
8.色素画像安定剤 25頁
9.硬膜剤 26頁 651頁左欄
10.バインダー 26頁 同 上
11.可塑剤、潤滑剤 27頁 650頁右欄
12.塗布助剤、表面活性剤 26〜27頁 同 上
13.スタチック防止剤 27頁 同 上
【0040】
本発明は、上記本発明に係るホログラム用ハロゲン化銀写真材料を用いて露光、現像、漂白を行ったことによってホログラムを得る。このホログラムにおいて、露光量100μJcm−2における回折効率が40%以上であることが好ましい。
【0041】
本発明に係るホログラム作製方法は、上記ホログラム用ハロゲン化銀写真材料に露光を行い、現像を行い、漂白を行うことを特徴とする。
【0042】
上記現像はアスコルビン酸、炭酸ナトリウム、フェニドンを含有する現像液により行うことが好ましく、低い露光量で高い回収効率を得ることができる。尚、上記アスコルビン酸、炭酸ナトリウム、フェニドンを含有する現像液としては、市販品でもよいし、また使用前に調合してもよい。
【0043】
上記漂白は、パラベンゾキノン、クエン酸、臭化カリウムを含有する漂白液により行うことが好ましく、反射型ホログラムに関しては、上記アスコルビン酸、炭酸ナトリウム、フェニドンを含有する現像液による現像処理と組合せることにより、露光量による再生波長のシフトが小さいという効果を発揮する。尚、上記パラベンゾキノン、クエン酸、臭化カリウムを含有する漂白液としては、市販品でもよいし、また使用前に調合してもよい。
【0044】
尚、本発明のホログラム用ハロゲン化銀写真材料の露光光源としては、一般に位相の揃った可視域波長のレーザー光を用いて画像露光することが好ましい。また、画像再生も画像形成したレーザー光の波長の光が最も主要な役割を演じる。この観点から、処理後の写真材料の未露光部には、画像形成したレーザー光の波長を吸収しない好ましい再生画像が得られる。可視域波長のレーザー光としては、例えば、Nd:YAGレーザー、Krレーザー、Arレーザー、HeNeレーザー、半導体レーザー等が用いられる。また、特開平8−160479号に記載の固体レーザーやSHGレーザー共振器を用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらにより限定されるものではない。
実施例1
(ハロゲン化銀乳剤1の作製)
溶液A
水 25L
臭化カリウム 15g
ゼラチン 2747g
溶液B
水 11L
沃化カリウム 69g
臭化カリウム 1260g
溶液C
水 11L
硝酸銀 1800g
【0046】
53℃に保温されたゼラチン及び臭化カリウムを含む溶液A中に攪拌下、3.1%アンモニア水350ml加えた溶液Bと溶液Cを同時に1分間に亙って加え、更に1分撹拌したのち、40.0%クエン酸水溶液150mlを加えた後、4℃に冷却し、ハロゲン化銀乳剤をセットした後、ヌードル水洗法により水洗して過剰の水溶液中の塩を除去する。その後、−40℃に冷凍後水洗し、余分な水分を除きハロゲン化銀乳剤を濃縮した。
【0047】
これによって臭化銀96モル%、沃化銀4モル%、透過型電子顕微鏡観察においての30個の平均粒径測定で平均粒径0.05μmの球形ハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤1を作製した。
【0048】
(ハロゲン化銀乳剤2の作製)
ハロゲン化銀乳剤1の作製において、アンモニア水を加えた溶液Bと溶液Cの同時添加時間を2分に変更した他はハロゲン化銀乳剤1の作製と同様にして、平均粒径測定にて平均粒径0.1μmの球形ハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤2を作製した。
【0049】
(各ハロゲン化銀乳剤の熟成)
上記で作製した各ハロゲン化銀乳剤に下記の化学熟成を施した。即ち、上記で作製したハロゲン化銀乳剤各々について、温度を59℃に保ちながらチオ硫酸ナトリウムを銀1モル当たり、ハロゲン化銀乳剤1には28mg、ハロゲン化銀乳剤2には14mg各々添加し45分熟成後42℃に冷却し、各ハロゲン化銀乳剤の熟成を終了した。
【0050】
(ハロゲン化銀乳剤層液の調製)
上記で熟成を終了したハロゲン化銀乳剤1,2各々に、下記の添加剤を下記の銀1モル当たりまたは塗布の単位面積当たりの添加量で添加する。
【0051】
化合物(表−1に表示) 280mg/Ag1モル
化合物 A−1 140mg/Ag1モル
化合物 A−2 3.4g/Ag1モル
硬膜剤 H−1 36mg/m
シランカップリング剤 H−2 230mg/m
【0052】
【化9】

【0053】
(バッキング層液の調製)
下記組成のバッキング層液を調製した。
化合物 E 28g
化合物 (1) 2.5g
化合物 (2) 5.0g
化合物 (3) 3.5g
メチルセロソルブ 28ml
エタノール 450ml
メタノール 450ml
【0054】
【化10】

【0055】
(ハロゲン化銀写真乾板の作製)
(1)バッキング層の塗布
サイズが17インチ×17インチ、厚さが2.3mmのフッ酸処理したフロートガラス支持体面上に、バッキング層がある場合は上述したバッキング液を化合物Eの付き量が300mg/mになるようにナプキンコーターで塗布して、バッキング層を設けた。バッキング層が無い場合は、フッ酸処理のみ実施した。
【0056】
(2)ハロゲン化銀乳剤層の塗布
ハロゲン化銀乳剤層は、上記各ハロゲン化銀乳剤層液を膜厚が表1になるようにカーテンコーターでガラス支持体のバッキング層がある場合は設けた側とは反対側に、バッキング層が無い場合は任意の面上に塗布してハロゲン化銀乳剤層を設けた。
【0057】
その後、50℃、55%相対湿度の環境下に6時間おいてシーズニングし、ハロゲン化銀写真乾板1〜6を各々作製した。
【0058】
(試料の評価)
得られた各試料に対し、He−Neレーザーを光源とし、反射型ホログラムを記録した。このときの乳剤膜面の露光強度は760μWcm−2とした。その後下記現像液にて20℃2分の処理の後1.5%酢酸にて30秒停止処理後、下記漂白液で3分漂白処理、流水で15分洗浄後自然乾燥し反射型ホログラム画像を得た。このときの最大回折効率(%)、感度(露光エネルギー量;相対値)および、透明部分のステイン(目視)の状態について評価を行った。
【0059】
(現像液処方)
アスコルビン酸 18g
炭酸ナトリウム 60g
フェニドン 0.5g
純水で総量を1000mlにした。
【0060】
(漂白液処方)
純水 800ml
クエン酸 15g
臭化カリウム 50g
p−ベンゾキノン 2g
純水で総量を1000mlにした。
【0061】
以上の経過および結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
相対感度:試料No.5を100とする相対感度である。
【0064】
【化11】

【0065】
表1から明らかの如く、本発明の試料は回折効率が高く、感度・ステインも良好であることがわかる。
【0066】
2.透過型ホログラムの評価
上記で得られたハロゲン化銀写真乾板〔試料No.5(以下、図面中を含めて「P7000」という。)に相当〕に、He−Neレーザーを光源とし、以下の光学配置にてホログラムを記録した。このときの乳剤面での露光強度は580μWcm−2とした。現像は以下に示す3種(現像液A、B、C)の処方で20℃、2分間行い、停止は1.5%酢酸水溶液でおよそ30秒間行った。
【0067】
現像液A(CW−C2)
カテコール 10g
L−アスコルビン酸 5g
無水亜硫酸ナトリウム 5g
尿素 50g
無水炭酸ナトリウム 30g
純水を加えて1000mlにした。
【0068】
現像液B(PAAC)
アスコルビン酸 18g
炭酸ナトリウム 60g
フェニドン 0.5g
純水を加えて1000mlにした。
【0069】
現像、停止工程後に漂白を行った。漂白は漂白液a(PBQ2)、漂白液b(鉄−EDTA)の2種の処方で時間は黒化部分が十分に処理される時間とした。処理温度は20℃で行った。
【0070】
漂白液a
パラベンゾキノン 2g
クエン酸 15g
臭化カリウム 50g
純水を加えて1000mlにした。
【0071】
漂白液b(鉄−EDTA)
鉄EDTA 30g
臭化カリウム30g
純水を加えて1000mlにした。
【0072】
漂白後、十分に水洗し、富士写真フィルム社ドライウエルで30秒間水切り処理を行った。その後、1時間室温にて風乾した。
【0073】
得られたホログラムは露光に用いたレーザー光により再生して評価した。
尚、記録は、図1に示す如くハロゲン化銀写真乾板(銀塩)に対する2光束入射(入射角22.5°)で行ない、再生は、図2に示す如くハロゲン化銀写真乾板(銀塩)に対する再生照明光22.5°にて22.5°の回析光を得た。
【0074】
以下に現像、漂白処理を変えて作製したホログラムの回折効率を図3に示す。
図3から明らかなように、現像液CW−C2に比べ、PAAC現像の方が低い露光量で回折効率が得られた。尚、漂白はいずれの処方においても差異がなかった。
【0075】
以上より、透過型ホログラムの場合にはPAACにて現像することで効率よい回折効率の高いホログラムを作製できることがわかった。
【0076】
3.反射型ホログラムの評価
図4、図5に示す光学配置にてホログラムを記録・再生した以外は透過型ホログラムと同様である。現像、漂白も透過型ホログラムと同様の条件にて行って評価を行った。
【0077】
即ち、図4に示すように、ハロゲン化銀写真乾板(銀塩)に対する2光束入射(入射角30°と直角)で行ない、再生は、図5に示すようにハロゲン化銀写真乾板(銀塩)に対する再生照明光を直角とし、30°の回析光を得た。
【0078】
反射型ホログラムは、紫外可視分光光度計(日立製作所社製 U−3210)により反射スペクトルを測定して評価した。結果は図6に示す通りであった。
【0079】
図6から明らかなように、反射型ホログラムにおいてもPAACで現像を行う方が、CW−C2で現像を行うよりも低い露光量において高い回折効率を得ることができた。
【0080】
また、得られたホログラムについて以下の評価も行った。
ホログラムの再生波長は波長選択性により決まる。図7は、上記で得られたハロゲン化銀写真乾板(銀塩)をU−3210(日立製作所社製)を用いて、再生波長に対する反射率を測定したものである。
【0081】
この図7より620nm付近に反射率のピークがあり、この波長付近に波長選択性を示すことがわかる。この値が最も感度が高い波長といえる。
【0082】
また、図8は、ハロゲン化銀写真乾板(銀塩)に対する露光量に対し、ピーク波長を測定し、その測定データをプロットしたものであり、露光量による波長依存性を示すものである。
【0083】
図8から明らかなように、PAACで現像し、PBQ2で漂白したものはほとんど再生波長のばらつきが見られない。それに対し、現像、漂白の組合せが他の処方によるものでは、再生波長にばらつきがみられた。
【0084】
この結果、PAACで現像し、PBQ−2で漂白したものが最も露光量による波長依存性のばらつきが少なく良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施例の「2.透過型ホログラムの評価」試験における「記録」の光学配置を示す説明図
【図2】同じく、「再生」の光学配置を示す説明図
【図3】同じく、ホログラムの回収効率を示すグラフ
【図4】実施例の「3.反射型ホログラムの評価」試験における「記録」の光学配置を示す説明図
【図5】同じく、「再生」の光学配置を示す説明図
【図6】同じく、ホログラムの回収効率を示すグラフ
【図7】同じく、再生波長に対する反射率を示すグラフ
【図8】同じく、銀塩(ハロゲン化銀写真乾板)について、露光量による波長依存性を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真材料において、ハロゲン化銀乳剤中のハロゲン化銀粒子の平均粒径が0.03μm〜0.07μm、前記ハロゲン化銀乳剤層の膜厚が4μm〜9μmであり、前記ハロゲン化銀乳剤層の銀/ゼラチン比率が0.3〜0.6であり、且つ、該ハロゲン化銀乳剤層中に下記一般式〔D〕で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とするホログラム用ハロゲン化銀写真材料。
【化1】

〔式中、Yは、−N(R)−基、酸素原子、硫黄原子、又はセレン原子を表す。Rは炭素数10以下の脂肪族基を表す。Rは、少なくとも1つの水可溶性基を置換基として含む脂肪族基、アリール基又は複素環基を表す。V及びVは各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はVとVで結合してアゾール環と共に縮合環を形成する置換若しくは無置換の基を表す。nは1又は2を表し、mは0又は1を表す。L、L、L及びLは各々、メチン基を表し、nが1又は2で、かつmが0のときはL及びLの少なくとも1つ、nが1又は2で、かつmが1のときはL、L、L及びLの少なくとも1つは、炭素数が3以上のSP<539となるような置換基を有する。ここで、SPとはSP=3.563L−2.661B+535.4で表される値であり、LはSterimolパラメータ(Å)を表し、BはSterimolパラメータの和B+B、B+Bのうち小さい方の値(Å)を表す。Q及びQは各々、酸性の環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Mは分子の総電荷を相殺するに必要なイオンを表し、n1は分子の電荷を中和させるのに必要な数を表す。n1≧3である。〕
【請求項2】
請求項1に記載のホログラム用ハロゲン化銀写真材料を用いて露光、現像、漂白を行ったことを特徴とするホログラム。
【請求項3】
請求項2に記載のホログラムにおいて、露光量100μJcm−2における回折効率が40%以上であることを特徴とするホログラム。
【請求項4】
請求項1に記載のホログラム用ハロゲン化銀写真材料に露光を行い、現像を行い、漂白を行うことを特徴とするホログラム作製方法。
【請求項5】
請求項4に記載の現像はアスコルビン酸、炭酸ナトリウム、フェニドンを含有する現像液により行うことを特徴とするホログラム作製方法。
【請求項6】
請求項4に記載の漂白は、パラベンゾキノン、クエン酸、臭化カリウムを含有する漂白液により行うことを特徴とするホログラム作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−193198(P2007−193198A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12545(P2006−12545)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年12月1日〜2日 社団法人日本写真学会主催の「2005年度日本写真学会秋季大会・研究発表会」において文書をもって発表
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】