説明

ホログラム記録媒体、再生装置

【課題】 光導波路型のホログラム記録媒体において、データの読み出しレート向上、及びクロストークの抑制を図る。
【解決手段】 参照光B1が入射される光導波路としてのコア層2を挟むようにして積層される2つのクラッド層3,4のうち、例えば一方のクラッド層4を二層としてこれらの間にホログラムパターンを形成する。このとき、コア層2と接する第1クラッド層4aを上記参照光B1とは別のアクセス光B2の照射に応じて屈折率の上昇するフォトリフラクティブ材料で構成することにより、その照射領域でのみホログラムパターン5に応じた回折光を外部に放射させることができる。これによって光の利用効率が向上してデータ読み出しレートの向上が図られ、且つ迷光も抑制されてクロストークの抑制が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に光導波路型によるホログラム記録媒体に関する。また、このようなホログラム記録媒体についての再生を行う再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は、従来の光導波路型によるホログラム記録媒体の構造とそのデータ読み出し方法について説明する図である。
なお、図14では、従来のホログラム記録媒体110の構造を断面図により示している。
図14において、従来のホログラム記録媒体110は、例えば図示するようにして基板111上にクラッド層114、コア層112、クラッド113層をこの順に積層して成る。コア層112は、この場合の光導波路であり、これを挟む2つのクラッド層113、114よりも屈折率の高い部材により形成されている。
光導波路は、光が屈折率の高い領域に伝播する性質を有することを利用したものである。つまり、このように屈折率の低いクラッド層113、114の間に屈折率の高いコア層112が挿入されることで、図示するように記録媒体端面側から入射される参照光B1がこのコア層112を介して伝播するようにされている。
また、この場合は、コア層112とクラッド層113とが接する面の形状が、図のように凹凸形状となるようにされている。すなわち、これによって屈折率が互いに異なる凹凸形状(図中ホログラムパターン115)が形成され、そのパターンにより所望の情報の記録が可能とされている。
【0003】
そして、このようなホログラム記録媒体110に対するデータの読み出しとしては、先ずは図示する参照光B1を入射するようにされる。上記もしたように、この参照光B1は光導波路であるコア層112を伝播する。
そして、このようにコア層112を介して参照光B1が伝播することで、この参照光B1は上記したホログラムパターン115が形成された部分で回折をうけ、図示するように回折光となって光導波路外に放射される。
【0004】
再生装置側では、このように放射される回折光のうち、例えば所望のデータ部分に対応する回折光のみを図示するアパーチャ121によって絞り込む。そして、このようにアパーチャ121を介した回折光を二次元光検出器120上に結像させ、その像をデータ信号として得ることでホログラム記録媒体110に記録されたデータを読み出すようにされる。
【0005】
なお、このような光導波路型によるホログラム記録媒体についての先行文献としては、下記特許文献を挙げることができる。
【特許文献1】特開2003−228848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記説明によると、従来のホログラム記録媒体110とその再生装置の構成では、コア層112に入射した参照光B1は、ホログラムパターン115が形成されるすべての面で放射された上で、そのうちの必要な部分の回折光のみが光検出器120に入射されてデータの読み出しが行われていることがわかる。
これによると、所望のデータ部分の読み出しにあたっては、入射される参照光B1のうち一部の光しか利用されていないことになる。すなわち、殆どの参照光B1は情報読み出しにとっては無効な光となる。
従って、従来のホログラム記録媒体110とその再生装置の構成では、情報読み出しにあたっての光の利用効率が著しく低いものとなっている。
【0007】
ここで、光検出器120に入射する光量は、記録媒体からのデータの読み出しレートを大きく左右するものとなる。
すなわち、光検出器120への入射光量が少なければ、その分、ホログラムパターン115に応じた回折光の結像効率は低いものとなり、データ検出までの時間を長く要し、結果的にデータの読み出しレートは悪化する傾向となる。また、逆に入射光量が多ければ結像効率は向上し、読み出しレートは向上する。
【0008】
このことを踏まえると、上記のようにして情報読み出しのための光の利用効率が低いということは、その分、読み出しレートの向上に不利となる。
また、これを換言すれば、上記のように光の利用効率が低いということは、所定の読み出しレートを得るにあたっての参照光B1の光量をその分増大させなければならないことになる。すなわち、これによって装置の消費電力の増大にもつながることになる。
【0009】
また、従来の構成では、上記のようにして入射された参照光B1がホログラムパターン115の形成されるすべての面で放射されることで迷光が生じ易く、これによってクロストークの面でも不利となる。
そして、このようにクロストークの面で不利であることから、記録媒体の情報記録密度の向上も有効に図られないことになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明では以上のような問題点に鑑み、ホログラム記録媒体として以下のように構成することとした。
つまり、本発明のホログラム記録媒体は、2つのクラッド層と、これらクラッド層に挟まれたコア層とが備えられて光導波路が形成されると共に、上記コア層又は上記クラッド層に対して所要のホログラムパターンが形成されることで情報信号が記憶される光導波路型のホログラム記録媒体であって、上記コア層又は一方の上記クラッド層のうちの、少なくとも何れかにおける、少なくとも一部の領域がフォトリフラクティブ材料又はフォトクロミズム材料により構成されるものである。
【0011】
また、本発明では、このようなホログラム記録媒体について再生を行う再生装置として、以下のように構成することとした。
つまり、2つのクラッド層と、これらクラッド層に挟まれたコア層とが備えられて光導波路が形成されると共に、上記コア層又は上記クラッド層に対して所要のホログラムパターンが形成されることで情報信号が記憶される光導波路型のホログラム記録媒体について再生を行う再生装置であって、先ずは、上記ホログラム記録媒体に形成される上記光導波路に参照光を伝播させるための第1の光を照射する第1の光照射手段を備える。
また、上記第1の光とは異なる第2の光を上記ホログラム記録媒体に対して照射する第2の光照射手段を備える。
その上で、上記参照光と上記第2の光との照射によって上記ホログラム記録媒体から放射される上記ホログラムパターンに応じた回折光を検出して情報信号を得る情報信号検出手段を備えるものである。
【0012】
上記本発明のように、記録媒体の所要部分に対して例えばフォトリフラクティブ材料が用いられれば、所要の光の照射に応じてその部分のみの光の屈折率が変化される。
ここで、本発明のような光導波路型のホログラム記録媒体では、コア層、クラッド層の一部には参照光(第1の光)が入射するが、このとき、上記参照光とは別の他の光(第2の光)が照射されることにより、コア層またはクラッド層の一部の、この光が照射された部分のみの屈折率が変化される、つまり、この屈折率が変化した部分で各層間の屈折率の関係を変化させることができる。
このように参照光とは別の他の光が照射された部分のみ、各層間の屈折率の関係を変化させることができることで、この光が照射された部分でのみホログラムパターンに応じて参照光を回折させることが可能となる。つまり、回折光を光導波路外に放射させることができる。
また、フォトクロミズム材料が用いられる場合は、上記他の光の照射に応じてその部分のみの光の吸収率が変化される。そして、このようなフォトクロミズム材料を少なくともホログラムパターンが形成される部分で用いるものとすれば、上記他の光が照射された部分だけホログラムパターンを光学的に顕在化させることができる。
従ってこの場合としても、参照光とは別の他の光を照射した所望の部分のみからホログラムパターンに応じた回折光を放射させることができる。
【発明の効果】
【0013】
このようにして本発明によれば、参照光(第1の光)とは別の他の光(第2の光)を照射した所望の部分のみから回折光を放射させることができ、これによって所望のデータ部分の読み出しにあたっては、参照光の利用効率を従来よりも格段に向上させることができる。
このように参照光の利用効率が向上すれば、その分回折光の光検出器への結像効率も向上でき、これによってデータの読み出しレートの向上も図られる。
また、回折光についての光検出器への結像効率が向上するということは、換言すれば所定の読み出しレートを得るにあたっての参照光の光量はより少なくできるので、その分再生装置側の消費電力の削減も図られるものとなる。
【0014】
また、上記のようにして参照光とは別の他の光を照射した所望の部分のみ回折光が得られることで、迷光も効果的に抑制でき、よってクロストークの抑制も有効に図られる。
そして、このようにクロストークの抑制が図られることで、記録媒体の情報記録密度の向上を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、発明を実施するための最良の形態について説明していく。
なお、発明を実施するための最良の形態は、以下実施の形態と呼ぶ。
【0016】
<第1の実施の形態>
先ず、図1、図2は、本発明の第1の実施の形態における、それぞれ第一例、第二例としてのホログラム記録媒体の構造を断面図により示している。
先ず、これらの図に示されるように、本発明のような光導波路型のホログラム記録媒体としては、2つのクラッド層と、これらクラッド層の間に挟まれるようにして積層されたコア層とを備えた光導波路が形成される。この光導波路は、ホログラム記録媒体に記憶される情報の読み出しのために、図のように記録媒体の端面側から照射される参照光B1をホログラム記録媒体内において伝播するために形成される。
光導波路は、光が屈折率の高い領域を伝播する性質を利用したものである。すなわち、一般的に光導波路は、屈折率(参照光B1に対する)が比較的低くされた2つのクラッド層に挟まれた、比較的屈折率の高いコア層に参照光B1が伝播するように構成されている。
【0017】
第1の実施の形態としても、このように屈折率が比較的低くされた2のクラッド層に挟まれた、比較的屈折率の高い領域において参照光B1を伝播させる光導波路型としての基本構造を採る。
そして、その具体的構造として、第1の実施の形態では、これら図1、図2に示されるようにして、先ずは一方のクラッド層を二層により構成するものとしている。
つまり、コア層2を挟むようにして形成されるクラッド層3とクラッド層4のうち、この場合はクラッド層4について第1クラッド層4aと第2クラッド層4bとの二層により構成するものとしている。この場合、コア層2と接する層を第1クラッド層4aとする。
さらに、上記第1クラッド層4aと第2クラッド層4bとにおける互いの層が接する面に対し、ホログラムパターン5を形成している。
つまり、図示するように互いの層の接触面の断面形状が凹凸形状とされ、この凹凸形状の形成パターンによって所要の情報が記憶されるものである。
【0018】
ここで、上記のような構造において、第1の実施の形態としても、コア層2とクラッド層3、クラッド層4の屈折率の関係としては、クラッド層3,4に対してコア層2の屈折率の方が高くなる関係が得られるようにしている。
これによれば、記録媒体の端面側から照射される参照光B1は、通常はコア層2のみを介して伝播するようにされ、従って第1クラッド層4aと第2クラッド層4bと間に形成されたホログラムパターン5に応じた回折光は外部に放射されないものとなっている。すなわち、これまでで説明した限りの構成によれば、従来のように回折光が全面にわたって放射されることがないようにされる。
なお、図中では説明をわかりやすくするために、参照光B1に対する屈折率の高い層ほど濃色によって示している。
【0019】
そして第1の実施の形態としては、これまでの構成を採った上で、少なくともコア層2と第1クラッド層4aとの何れかを、光の照射に応じて屈折率が変化するフォトリフラクティブ材料により構成するものである。
【0020】
先ず、その具体例として、図1に示される第一例としてのホログラム記録媒体1では、第1クラッド層4a側をフォトリフラクティブ材料により構成するものとしている。すなわち、図示するような参照光B1とは別の、他のレーザ光(アクセス光とする)B2の照射に応じて屈折率が変化する材料を選定している。
そして、このように第1クラッド層4aに選定されるフォトリフラクティブ材料としては、上記のようなアクセス光B2の照射が行われている間のみ屈折率が上昇する性質を持つ材料を選定するものとしている。
このような第一例で用いるフォトリフラクティブ材料としては、例えば4−アミノ−4ニトロアゾベンゼン等が添加されたフタル酸ベンジルブチル等によるフォトリフラクティブポリマーが用いられればよい。或いは、酸化銀(AgO)等の無機材料が用いられてもよい。
なお、他のクラッド層3、コア層2、第2クラッド層4bについては、アクセス光B2の照射に応じても屈折率の変化しない材料が用いられる。例えば、クラッド層3、第2クラッド層4bについては、従来で用いられているような屈折率の変化しないフォトポリマーやUV樹脂等の材料が用いられればよい。
【0021】
そして、このような第1クラッド層4aとしてのフォトリフラクティブ材料の屈折率については、アクセス光B2の照射がなくフォトリフラクティブ効果が得られていない部分での屈折率をnCL、アクセス光B2が照射されてフォトリフラクティブ効果が得られた部分での屈折率をnCL+ΔnCL、そしてコア層2の屈折率をnCとした場合に、少なくとも以下の関係が成り立つようにしている。
「nCL<nc≦nCL+ΔnCL」
すなわち、第1クラッド層4aは、アクセス光B2の照射されない部分ではコア層2よりも屈折率が低く、アクセス光B2が照射された部分はコア層2以上の屈折率が得られるようにされているものである。
【0022】
上記構造による第1の実施の形態の第一例としてのホログラム記録媒体1によれば、アクセス光B2が照射されない非照射領域においては、図示する参照光B1についての光波の界分布KBのうちのKB1、KB3によって示されるように、端面側から照射される参照光B1はコア層2のみを伝播するようにされる。
この場合は、図からもわかるようにホログラムパターン5が第1クラッド層4aと第2クラッド層4b間に形成されていることから、このように参照光B1がコア層2のみを伝播することによっては回折光が外部に放射されることはない。
【0023】
そして、アクセス光B2が照射される照射領域では、図中にAと示されるように、この部分での第1クラッド層4aは、フォトリフラクティブ効果によりコア層2以上の屈折率となるようにされる。つまり、この照射領域においては、両側の屈折率の低いクラッド層3と第2クラッド層4bとに挟まれて、屈折率が高くされた第1クラッド層4aとコア層2とによる光導波路が形成されることになる。
従って、この照射領域での参照光B1は、図中の界分布KB2と示されるように、コア層2と共に第1クラッド層4aを介しても伝播されるようになる。そして、このように参照光B1が第1クラッド層4aを介しても伝播されることで、参照光B1は第1クラッド層4aと第2クラッド層4b間に形成されたホログラムパターン5によって回折をうけるようになり、図示する回折光として光導波路外に放射されることになる。
なお、この回折光は、当該ホログラム記録媒体1について再生を行う再生装置側に備えられた二次元光検出器に対して入射されるべきものであり、この二次元光検出器にて回折光が結像してこれが電気信号として検出されることで、ホログラムパターン5に応じた情報の読み出しが行われるものである。
【0024】
このようにして、図1に示すホログラム記録媒体1によれば、アクセス光B2が照射された部分でのみ、ホログラムパターン5によって回折をうけた回折光を外部に放射することができる。
これによれば、所望のデータ部分の読み出しにあたっては、従来のように参照光B1の照射に基づく回折光をホログラムパターンが形成されるすべての面において放射していた構成と比較して、参照光B1として照射されるレーザ光の光の利用効率は格段に向上させることができる。
【0025】
このように参照光B1の光の利用効率を向上できれば、その分、当該ホログラム記録媒体1の再生装置側における回折光の光検出器への結像効率も向上させることができ、これによって再生装置側におけるデータの読み出しレートの向上を図ることができる。
また、このように回折光についての光検出器への結像効率が向上するということは、所定の読み出しレートを得るにあたって照射されるべき参照光B1の光量はより少ないものとできるので、その分再生装置側の消費電力の削減も図られるものとなる。
【0026】
また、上記のようにしてアクセス光B2を照射した所望の部分のみ回折光が得られることで、従来の構成で問題となっていた迷光も効果的に抑制でき、よってクロストークの抑制も有効に図られる。
そして、このようにクロストークの抑制が図られれば、ホログラム記録媒体1の情報記録密度の向上も図ることができる。
【0027】
続いて、図2に示される第二例のホログラム記録媒体12としては、コア層2側をフォトリフラクティブ材料により構成するものである。
そして、このようにコア層2側に用いるフォトリフラクティブ材料としては、アクセス光B2の照射に応じて屈折率が低下する性質のものを選定する。このような第二例で用いるフォトリフラクティブ材料については、例えばニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム、或いはチタン酸バリウム等が選定されればよい。
なお、他のクラッド層3、第クラッド層4(第1クラッド層4a、第2クラッド層4b)については、アクセス光B2の照射に応じても屈折率の変化しない材料が用いられる。例えば、この場合も、従来で用いられているような屈折率の変化しないフォトポリマーやUV樹脂等の材料が用いられればよい。
【0028】
さらに、第二例では、上記のようなフォトリフラクティブ材料によるコア層2の屈折率について、アクセス光B2の照射がなくフォトリフラクティブ効果が得られていない部分での屈折率をnC、アクセス光B2が照射されてフォトリフラクティブ効果が得られた部分での屈折率をnC−ΔnC、そして、このコア層2と接する第1クラッド4aの屈折率をnCLとした場合に、少なくとも、
「nC−ΔnC≦nCL<nc」
の関係が成り立つようにしている。
すなわち第二例において、コア層2は、アクセス光B2が照射されない部分では第1クラッド層4aよりも屈折率が高く、アクセス光B2が照射された部分では第1クラッド層4a以下の屈折率が得られるようにされているものである。
【0029】
このような第二例としてのホログラム記録媒体12によれば、アクセス光B2が照射されない非照射領域においては、界分布KB1、KB3に示されるように、この場合も参照光B1はコア層2のみを伝播するようにされる。
上述もしたように第1の実施の形態ではホログラムパターン5が第1クラッド層4aと第2クラッド層4b間に形成されるから、この場合も非照射領域において回折光が外部に放射されることはない。
そして、アクセス光B2が照射される照射領域では、図中にAと示されるように、この部分でのコア層2はフォトリフラクティブ効果により第1クラッド層4a以下の屈折率となるようにされる(図中A)。つまり、このようにコア層2の屈折率が第1クラッド層4aの屈折率以下とされることで、この部分での参照光B1は、少なくとも第1クラッド層4aを介して伝播するようになる。なお、このとき、コア層2の屈折率の低下具合によっては、図中の界分布KB2に示されるように参照光B1はこのコア層2を介しても伝播することになる。
【0030】
従って、この場合としても、結果的には参照光B1が照射領域においてのみ、第1クラッド層4aと第2クラッド層4b間に形成されたホログラムパターン5によって回折をうけ、回折光として光導波路外に放射されるものとなる。
このようにして、アクセス光B2が照射される照射領域でのみホログラムパターン5による回折光を放射できることで、この場合としても図1に示した第一例と同様の効果を得ることができる。
【0031】
ここで、このような第二例としてのホログラム記録媒体12を実現するにあたっては、上述もしたようにコア層2と第1クラッド層4aとの屈折率について「nC−ΔnC≦nCL<nc」の関係が成り立つ必要がある。
そして、この関係によると、この場合は第1クラッド層4aの屈折率(nCL)を、コア層2の照射領域での屈折率(nC−ΔnC)と非照射領域での屈折率(nc)との間に精度良く合わせ込む必要があることになる。
この調整は、例えば第1クラッド層4aを酸化ニオブ膜や酸化タンタル膜をスパッタリング法で成膜して形成する場合を例に挙げれば、その成膜条件を調整することで行うことができる。
例えば、通常のスパッタリングでは、プロセスガスとしてアルゴンガスが利用されるが、このアルゴンガスと共に酸素ガスをプロセスガスとして用いた上で、これらのガス分圧を調整して行うことができる。つまり、酸素ガス分圧を上げると屈折率は低く調整でき、逆に酸素ガス分圧を下げると屈折率は高く調整することができるといったものである。
【0032】
なお、これまでで説明した第1の実施の形態において、先の図1に示したホログラム記録媒体1では、コア層2をフォトリフラクティブ材料でない材料として、アクセス光B2の照射に応じても屈折率が変化されないようにしたが、第1の実施の形態としては、照射領域において、コア層2と第1クラッド層4aとの間で相対的に第1クラッド層4aの屈折率がコア層2の屈折率以上となるようにされていればよいものである。
従って、図1の構成では、先に説明したように第1クラッド層4aを照射領域にて屈折率の上昇するフォトリフラクティブ材料で構成すると共に、コア層2を、照射領域において屈折率が低下するフォトリフラクティブ材料により構成することによっても、同様の効果を得ることが可能である。
また、図2においては、コア層2のみを屈折率が低下するフォトリフラクティブ材料としたが、この場合も同様の理由から、コア層2をフォトリフラクティブ材料により構成した上で、第1クラッド層4a側を、屈折率が上昇するフォトリフラクティブ材料により構成するとしても同様の効果を得ることが可能である。
【0033】
<第2の実施の形態>
図3、図4は、本発明の第2の実施の形態における、それぞれ第一例、第二例のホログラム記録媒体の構成を断面図により示している。なお、これらの図において、既に図1において説明した部分については同一の符号を付して説明を省略する。
第2の実施の形態のホログラム記録媒体としては、第1の実施の形態とは異なり、コア層2を挟むようにされて積層されるクラッド層3とクラッド層4は共に一層とされる。そして、この場合は、図示するようにしてコア層2を第1コア層2aと第2コア層2bとの二層により構成している。この場合、クラッド層3と接する方を第1クラッド層2aとする。
その上で、ホログラムパターン5は、これら第1コア層2aと第2コア層2bとの間に形成するものとしている。
【0034】
このような構造において、第2の実施の形態としても、参照光B1についての光導波路が形成されるように、クラッド層3、クラッド層4の屈折率に対するコア層2の屈折率が高くなるようにされている。
また、第2の実施の形態としても、先の第1の実施の形態と同様の効果を得るにあたっては、参照光B1の照射のみでは回折光が外部に放射されないようにする必要がある。この仕組みとして、第2の実施の形態の場合は、上記第1コア層2aと第2コア層2bとの屈折率及び吸収率を同等に設定するものとしている。これにより、第1コア層2aと第2コア層2bとの間では、屈折率及び吸収率の差は生じないものとなり、これらの層間に形成されるホログラムパターン5としては光学的に顕在化しないものとなる。つまり、ホログラムパターン5による参照光B1の回折は生じないものとなり、結果的に非照射領域では回折光を外部に放射させないようにすることができる。
【0035】
そして、第2の実施の形態は、上記構造において、第1コア層2aと第2コア層2bとの何れかをフォトリフラクティブ材料によって構成するようにしたものである。
【0036】
先ず、図3に示される第一例としてのホログラム記録媒体13では、第1コア層2aにフォトリフラクティブ材料を用いるものとしている。
そして、この場合のフォトリフラクティブ材料としては、図1の構成において用いたものと同様に、アクセス光B2の照射に応じて屈折率が上昇する性質のものを選定している。
【0037】
上記構成による第一例としてのホログラム記録媒体13によれば、アクセス光B2が照射される照射領域では、上記性質とされたフォトリフラクティブ材料による第1コア層2aの屈折率が上昇するようにされる(図中A)。
これによれば、上述のようにしてアクセス光B2の照射がない状態では同等の屈折率(及び吸収率)とされていた第1コア層2aと第2コア層2bとの間に屈折率の差が生じることとなって、この照射領域でのみ、これら第1コア層2aと第2コア層2b間に形成されているホログラムパターン5を光学的に顕在化させることができる。
なお且つ、上記のように第1コア層2aの屈折率が上昇することで、参照光B1は、非照射領域では第1コア層2aと第2コア層2bとの双方を介して伝播していたものが、照射領域では屈折率が高くなるようにされた第1コア層2aのみを介して伝播することになる(図中の界分布KB1〜3参照)。
【0038】
このようにして、照射領域においてホログラムパターン5が顕在化し、且つ参照光B1がホログラムパターン5の形成された第1コア層2aを介して伝播することで、この場合もアクセス光B2の照射される部分においてのみ回折光を外部に放射することができる。
つまり、これによって図3に示す第一例としてのホログラム記録媒体13によっても、先の図1に示したホログラム記録媒体1と同様の効果を得ることができる。
【0039】
次に、図4に示される第二例としてのホログラム記録媒体14としては、図3と同様に、第1コア層2aにフォトリフラクティブ材料を用いるが、この場合は先の図2に示した構成と同じく、アクセス光B2の照射に応じて屈折率が低下する性質のフォトリフラクティブ材料を選定したものである。
【0040】
このような第二例のホログラム記録媒体14によれば、上記第一例の場合と同様に、アクセス光B2が照射されない非照射領域での屈折率(及び吸収率)は、第1コア層2aと第2コア層2bとで同等とされていることで、この場合としても非照射領域では、これら第1コア層2aと第2コア層2b間に形成されたホログラムパターン5が光学的に顕在化しない。また、これと共に、参照光B1としては、これら第1コア層2aと第2コア層2bとを介して伝播することになる(図中KB1、KB2参照)。
そして、アクセス光B2が照射された照射領域では、上記性質のフォトリフラクティブ効果により第1コア層2aの屈折率が低下して(図中A)、ホログラムパターン5が光学的に顕在化し、且つ参照光B1は、この場合は相対的に屈折率が高くなるようにされた第2コア層2b側を介してのみ伝播することになる(図中の界分布KB2)。
【0041】
このようにして、照射領域においてのみ、ホログラムパターン5が顕在化し、また参照光B1がホログラムパターン5の形成された第2コア層2bを介して伝播することで、この第二例としても、アクセス光B2の照射される部分においてのみ回折光を外部に放射することができる。すなわち、この第二例のホログラム記録媒体14によっても、先の図1に示したホログラム記録媒体1と同様の効果を得ることができる。
【0042】
なお、第2の実施の形態において、第一例と第二例としては共に第1コア層2aのみにフォトリフラクティブ材料を用いるものとしたが、第2コア層2bに対してフォトリフラクティブ材料を用いた場合としても、これら第一例と第二例と同様の効果が得られる。なお、このように第2コア層2bにフォトリフラクティブ材料を用いる場合の作用は第一例、第二例と同様であるのでここでの図示による説明は省略する。
【0043】
<第3の実施の形態>
図5、図6は、本発明の第3の実施の形態における、それぞれ第一例、第二例のホログラム記録媒体の構成を断面図により示している。なお、これらの図において、既に図1において説明した部分については同一の符号を付して説明を省略する。
第3の実施の形態のホログラム記録媒体としても、先の第2の実施の形態と同様に、コア層2を挟むようにされて積層されるクラッド層3とクラッド層4は共に一層とされ、この場合もコア層2は、第1コア層2aと第2コア層2bとの二層とされる。ここでも、クラッド層3と接する方を第1クラッド層2aとする。
また、ホログラムパターン5は、この場合も第1コア層2aと第2コア層2bとの間に形成される。
【0044】
このような構造において、第3の実施の形態としても、参照光B1についての光導波路が形成されるように、クラッド層3、クラッド層4の屈折率に対してコア層2の屈折率を高くしている。
そして、第3の実施の形態としても、先の第2の実施の形態と同様に、上記第1コア層2aと第2コア層2bとの屈折率及び吸収率を同等に設定することで、参照光B1の照射のみでは回折光が外部に放射されないようにしている。
【0045】
第3の実施の形態は、上記構造において、コア層2の少なくとも一部を、アクセス光B2の照射に応じて光の吸収率が変化するようにされたフォトクロミズム材料によって構成するようにしたものである。
【0046】
その一例として、先ず図5に示される第一例としてのホログラム記録媒体15では、第2コア層2b全体をフォトクロミズム材料により構成するものとしている。
そして、この場合のフォトクロミズム材料としては、アクセス光B2の照射に応じて吸収率が上昇する性質のものを選定している。なお、このような性質のフォトクロミズム材料としては、例えばジアリールエテンを挙げることができる。
【0047】
上記構成による第3の実施の形態の第一例としてのホログラム記録媒体15によれば、アクセス光B2が照射されない非照射領域では、第1コア層2aと第2コア層2bの屈折率、及び吸収率は同等(例えば双方とも無色)であることから、これら第1コア層2aと第2コア層2bとの間に形成されるホログラムパターン5は光学的に顕在化せず、よって参照光B1が外部に放射されることはない。
そして、アクセス光B2が照射される照射領域では、上記した性質のフォトクロミズム材料による第2コア層2bの、参照光B1に対する吸収率が上昇するようにされる(図中A)。このような吸収率の上昇により、第2コア層2bは着色され、この第2コア層2bと第1コア層2aとの間に形成されているホログラムパターン5は光学的に顕在化するようになる。
さらにこの場合は、照射領域においても第1コア層2aと第2コア層2bの屈折率は同等とされるので、参照光B1はこれら第1コア層2aと第2コア層2bを介して伝播する(KB2参照)。
【0048】
このようにして、照射領域においては、ホログラムパターン5が顕在化し且つ参照光B1が第1コア層2aと第2コア層2bと介して伝播することで、この場合もアクセス光B2の照射される部分においてのみ回折光を外部に放射することができる。
これによって、第3の実施の形態の第一例としてのホログラム記録媒体15によっても、図1に示したホログラム記録媒体1と同様の効果を得ることができる。
【0049】
なお、第1コア層2aに対して同様のフォトクロミズム材料を用いた場合としても、上記と同様の作用が得られて、結果的に同様の効果を得ることができる。但しこの場合、回折光KSは図5中に示される方向とは逆方向に放射されることになるので、再生装置側としてはこれに応じた側に二次元光検出器を配置するものとすればよい。
【0050】
続いて、図6に示される第3の実施の形態の第二例としてのホログラム記録媒体16では、コア層2における、第1コア層2aと第2コア層2bとの間のホログラムパターン5が形成される部分に対してフォトクロミズム材料を用いるものとしている。
この場合のフォトクロミズム材料としても、吸収率が上昇する性質のものを選定する。
そして、このフォトクロミズム材料としては、参照光B1のみが照射される状態ではコア層2(第1コア層2aと第2コア層2b)と同等の屈折率・吸収率を有するようにされている。
【0051】
このような第二例のホログラム記録媒体14によれば、アクセス光B2が照射されない非照射領域では、ホログラムパターン5としてのフォトクロミズム材料は、コア層2と屈折率・吸収率が同等とされるので、ホログラムパターン5は光学的に顕在化しない。よって回折光が外部に放射されることはない。なおこの場合、コア層2内では屈折率が異なる部分はないので、参照光B1は界分布KB1〜KB3に示されるようにコア層2を介して伝播する。
そして、アクセス光B2が照射された照射領域では、ホログラムパターン5としてのフォトクロミズム材料の吸収率が上昇して(図中A)、ホログラムパターン5が光学的に顕在化する。
すなわち、この図6に示される第二例としても、アクセス光B2の照射される部分においてのみ回折光を外部に放射することができ、先の図1に示したホログラム記録媒体1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
なお、この第二例の構成では、ホログラムパターン5が形成される部分にフォトリフラクティブ材料を用いて、アクセス光B2の照射領域でのみホログラムパターン5の部分の屈折率がコア層2の他の部分の屈折率とは異なるようにすることによっても、同様の効果を得ることが可能となる。
【0053】
ここで、これまででは本発明における実施の形態としてのホログラム記録媒体について説明してきたが、これらでは、コア層2又はクラッド層3,4の少なくとも一部をフォトリフラクティブ材料、或いはフォトクロミズム材料により構成することで、光導波路を伝播する参照光B1とは別のアクセス光B2の照射される領域でのみ回折光が得られるようにしている。そして、これによって必要とされる領域のみからホログラムパターン5に応じた回折光を得るようにされて、参照光B1としての光の利用効率の向上や迷光の抑制効果が得られるものである。
しかしながら、このとき、アクセス光B2の照射以降も、屈折率や吸収率の変化する状態が継続されてしまったのでは、アクセス光B2の照射後も回折光が放射されてしまい、結果として必要とされる領域外からも回折光の放射が為され、その分光の利用効率向上や迷光抑制が図られなくなってしまう。
このため、各実施の形態にて用いられるフォトリフラクティブ材料・フォトクロミズム材料としては、できるだけアクセス光B2の照射に応じた性質変化についての時定数が低い材質を選定することが好ましいものとなる。
【0054】
また、各実施の形態では、説明の便宜上、ホログラム記録媒体においてホログラム記録層(ホログラムパターン5が形成される層)が単層とされる場合について説明したが、各図に示した「クラッド層3・コア層2・クラッド層4」による組を積層することによって、ホログラム記録層が多層化されたホログラム記録媒体を実現することができる。
【0055】
続いては、以下の図7〜図13を参照して、これまでに説明してきた実施の形態のホログラム記録媒体について再生を行う再生装置の構成について説明する。
なお、図7〜図13では、図1に示した第1の実施の形態の第一例のホログラム記録媒体1について再生を行う場合についてのみ示しているが、図2〜図6に示した各ホログラム記録媒体について再生を行う場合としても同様の構成を採ることで、その再生が可能となる。
また、これら図7〜図13においては、実施の形態の再生装置における、本発明の要旨に係る光学系の構成についてのみ示し、他の部分については省略している。
また、図7〜図13において、ホログラム記録媒体1については既に図1において説明済みであることから同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
先ず、図7〜図13に示される実施の形態としての再生装置の共通事項としては、参照光B1を照射するための第1レーザLD1を備えると共に、アクセス光B2を照射するための第2レーザLD2を備えていることである。
そして、これら第1レーザLD1による参照光B1と第2レーザLD2によるアクセス光B2とを、ホログラム記録媒体に対して同時に照射することによって、アクセス光B2を照射した照射領域のみからホログラムパターン5に応じた回折光を得て、この回折光を二次元光検出器52にて検出してデータ読み出しを行うように構成される。
【0057】
図7は、このような実施の形態としての再生装置における、第一例としての再生装置50の構成を示している。
この第一例としての再生装置50は、図示するようにアクセス光B2の照射のための第2レーザLD2を備えたピックアップ51を設け、このピックアップ51を移動させてホログラム記録媒体1上の所望部分のデータを読み出すように構成されたものである。
【0058】
図7において、先ず第1レーザLD1は、上記もしているように参照光B1の照射のためのレーザ光源であり、この第1レーザLD1より出射したレーザ光は図示する集光レンズL1によって集光されて、ホログラム記録媒体1の端面側から内部に形成される光導波路に入射するようにされる。
【0059】
また、アクセス光B2を照射するための第2レーザLD2から出射したレーザ光は、コリメータレンズL2を透過することで、所望の平行光または発散光または収束光とされてダイクロイックミラー53に照射される。このダイクロイックミラー53は、第2レーザLD2からの波長による光は反射し、上記した第1レーザLD1からの波長による光は透過するようにされている。従って、上記のように照射される第2レーザLD2からのレーザ光は、このダイクロイックミラー53にて反射される。
ダイクロイックミラー53にて反射された第2レーザLD2からのレーザ光は、図示する対物レンズL3を介して集光されて、アクセス光B2としてホログラム記録媒体1上に照射される。
この場合、対物レンズL3を介して照射されるアクセス光B2は、図示するように参照光B1の照射方向に対して直行する方向から照射するようにされている。
【0060】
先に説明したように、実施の形態のホログラム記録媒体では、参照光B1が照射された状態で、上記のようにアクセス光B2が照射された部分からホログラムパターン5に応じた回折光が放射される。
このように放射された回折光は、対物レンズL3を介し、ダイクロイックミラー53を透過するようにされ、図示する二次元光検出器52上に結像される。すなわち、これによって二次元光検出器52上には、アクセス光B2の照射領域において形成されたホログラムパターン5が結像される。
二次元光検出器52では、このように結像したホログラムパターン5が電気信号として検出され、これによってアクセス光B2の照射領域に記憶された情報がデータ信号として読み出される。
【0061】
そして、上記した第2レーザLD2、コリメータレンズL2、対物レンズL3、及び二次元光検出器52は、図中に破線で囲ったピックアップ51内に形成されている。このピックアップ51が、例えば図示されないスライド機構によって図中X方向に移動可能に保持されることで、ホログラム記録媒体1上の所望部分のデータを読み出すことが可能とされる。
【0062】
以上のような構成によって、図7に示される再生装置50は、実施の形態のホログラム記録媒体について再生を行うことが可能とされる。
【0063】
ここで、先に説明した第1及び第2の実施の形態としてのホログラム記録媒体にて用いられていたフォトリフラクティブ材料について、フォトリフラクティブ効果は、特に短波長の光に対して顕著となる。
このため、第2レーザLD2により照射するアクセス光B2としては、紫外光等の短波長に設定された方が、先に説明した実施の形態としての作用を確実に得ることができて好ましい。
また、これによると、逆に参照光B1の照射に対するフォトリフラクティブ効果はより小さくすることが好ましい。よって、第1レーザLD1による参照光B1は、例えば赤色光や赤外光等の長波長とされるのが好ましい。
また、第3の実施の形態としてのホログラム記録媒体にて用いられるフォトクロミズム材料としても、吸収率の変化は短波長の光に対し顕著となる。従って第3の実施の形態のホログラム記録媒体について再生を行う場合も、参照光B1、アクセス光B2の波長については上記と同様のことが言える。
なお、フォトクロミズム材料に対しては、アクセス光B2の波長を青色光〜赤外光とするのがより好ましい。
【0064】
また、ここでのアクセス光B2は、レーザ光源からのいわゆる「コヒーレント」な光としたが、これに代え、例えばLED(Light Emitting Diode)等を光源とした「インコヒーレント」な光とすることもできる。
また、特にホログラム記録媒体として、ホログラム記録層が多層とされる場合は、各層での読み出しが可能となるように、第1レーザと集光レンズL1とがホログラム記録媒体における各層の積層方向と同方向に移動可能となるように構成すればよい。
【0065】
次の図8には、第二例としての再生装置60の構成を示す。
なお、この図では既に図7にて説明した部分について同一符号を付して説明を省略する。
第二例の再生装置60としては、アクセス光B2を照射するための第2レーザLD2と二次元光検出器52とを、図示するようにホログラム記録媒体1を介してそれぞれ対向する位置に設けたことにより、先の図7の構成にて必要とされていたダイクロイックミラー53を省略可能としたものである。
【0066】
この場合、第2レーザLD2を出射したレーザ光は、図示するコリメータレンズL2及び対物レンズL3を介して集光され、アクセス光B2としてホログラム記録媒体1上に照射される。そして、この場合も第1レーザLD1側からの参照光B1の入射と、このアクセス光B2との照射によって、ホログラム記録媒体1におけるアクセス光B2の照射領域からは、ホログラムパターン5に応じた回折光が放射される。
【0067】
第二例の場合、この回折光を二次元光検出器52に導くために、第2レーザLD2側から見た、ホログラム記録媒体1を介した反対側には、対物レンズL4が設けられる。この対物レンズL4を透過することで、放射された回折光は二次元光検出器52上に像を結ぶようにされる。これによって二次元光検出器52においては、先の第一例と同様に、ホログラム記録媒体1におけるアクセス光B2の照射領域に形成されたホログラムパターン5をデータ信号として読み出すことができる。
【0068】
そして、この場合は、ホログラム記録媒体1を介してそれぞれ対向する位置に設けられた、第2レーザLD2・コリメータレンズL2・対物レンズL3と、対物レンズL4・二次元光検出器52とが、図示するピックアップ61として一体となって少なくともX方向にスライド駆動が可能とされていることで、所望部分のデータの読み出しが可能となる。
【0069】
また、図9には、第三例としての再生装置70の構成を示す。この図においても、既に図7にて説明した部分は同一符号を付して説明を省略する。
第三例の再生装置70は、図8に示した第二例の構成から対物レンズL4を省略したものである。つまり、このような第三例は、例えばホログラム記録媒体1内のホログラムパターン5にホログラムレンズが組み込まれる等して、対物レンズL4がない状態でも回折光が二次元光検出器52上に像を結ぶようにされている場合に好適である。
なお、この場合は、図示するように第2レーザLD2・コリメータレンズL2・対物レンズL3によるピックアップ71が少なくともX方向にスライド駆動可能とされていることで所望部分のデータ読み出しが可能となる。
つまりこの場合は、回折光の検出側の可動部は省略することができる。
【0070】
図10は、第四例としての再生装置80の構成を示している。この図としても既に図7にて説明した部分は同一符号を付して説明を省略する。
この第四例は、二次元光検出器52側からみて、ホログラム記録媒体1を介して対向する位置に、アクセス光B2を照射するための第2レーザLD2を複数設けるようにしたものである。これによって、例えばピックアップのような所望部分のデータ読み出しのための可動部を省略可能としたものである。
【0071】
この場合、上記のように複数設けられる第2レーザLD2としては、例えば第2レーザLD2a〜LD2dまでの4つが備えられる。そして、これら複数の第2レーザLD2の個々から出射されるレーザ光をアクセス光B2としてホログラム記録媒体1上に集光するための、図示するマイクロレンズアレイ81が設けられる。
このマイクロレンズアレイ81には、レンズ部81a〜81dによる複数のレンズ部が形成され、これらの各々は、上記した第2レーザLD2a〜第2レーザ2dから出射される各々のレーザ光を集光できる位置となるように設けられている。
【0072】
この第四例においては、次の図11(a)〜(d)に示されるように、第2レーザLD2a〜第2レーザLD2dのうち、選択的に所望の1つのレーザを点灯させることで、ホログラム記録媒体1上の所望部分のデータ読み出しを行うようにされる。
この図11の例では、第2レーザLD2a〜第2レーザLD2dを順次1つずつ点灯させていくことによりデータ読み出しを行う例が示されている。
先ず、図11(a)のように、第2レーザLD2aのみを点灯させた場合は、この第2レーザLD2aからの出射光はマイクロレンズアレイ81におけるレンズ部81aを透過することでアクセス光B2としてホログラム記録媒体1上に照射される。これに応じては、このアクセス光B2の照射領域に形成されたホログラムパターン5に応じた回折光が放射され、これによって二次元光検出器52においては、この第2レーザLD2aによる照射領域におけるホログラムパターン5がデータ信号として読み出される。
そして、図11(b)〜図11(d)の遷移として示されるように、第2レーザLD2b、第2レーザLD2c、第2レーザLD2dが各々点灯された場合は、それぞれレンズ81b、81c、81dを介したアクセス光B2がホログラム記録媒体1上に照射され、これによって各々の照射領域に形成されたホログラムパターン5についての読み出しが順次行われるものとなる。
【0073】
このようにして第四例の再生装置80によれば、複数設けられたうちの所望の1つの第2レーザLD2を点灯させることで、ホログラム記録媒体1上の所望部分のデータ読み出しを行うことができる。
そして、このような第四例の構成によれば、先に説明したピックアップ51、61、71のような可動部は省略することができる。このような可動部が省略可能となれば、装置の小型や消費電力の削減に有利となる。
【0074】
図12は、第五例としての再生装置90の構成について示している。この図としても既に図7にて説明した部分は同一符号を付して説明を省略する。
第五例は、図示するガルバノミラー91を用いることで、アクセス光B2のホログラム記録媒体1上の所望位置への照射を可能としたものである。
【0075】
この第五例では、二次元光検出器52が設けられる側からみて、ホログラム記録媒体1を介した反対側に、第2レーザLD2、コリメータレンズL2、ガルバノミラー91が設けられている。そして、この場合、第2レーザLD2から出射されたレーザ光は、コリメータレンズL2を透過してガルバノミラー91にて反射され、この反射光がアクセス光B2としてホログラム記録媒体1上に照射される。
このアクセス光B2と第1レーザLD1側からの参照光B1の入射に応じ放射される回折光は、ガルバノミラー91側からみてホログラム記録媒体1を介した反対側に設けられた対物レンズL4を介し、二次元光検出器52に結像する。
このとき、アクセス光B2のホログラム記録媒体1への照射位置は、ガルバノミラー91におけるミラー面の回転角によって制御でき、これによってアクセス光B2をホログラム記録媒体1上の所望部分に照射することが可能とされる。
そして、この場合は、二次元光検出器52と対物レンズL4とが図示するピックアップ92内に形成され、このピックアップ92を、上記アクセス光B2の照射に応じた回折光の放射位置に応じてスライド駆動することで、データの読み出しを行うことが可能となる。
このような構成により、第五例の再生装置90によっても、ホログラム記録媒体1上の所望部分のデータ読み出しを行うことが可能とされる。
【0076】
また、図13は、第六例としての再生装置100の構成について示している。この図においては、図7及び上記図12にて説明した部分について同一符号を付して説明を省略する。
この再生装置100は、図12に示した再生装置90と同様にガルバノミラー91によって所望部分へのアクセス光B2の照射を可能とした上で、対物レンズL4を省略したものである。
つまり、このような構成は、先の第三例と同様に、例えばホログラム記録媒体1内のホログラムパターン5にホログラムレンズが組み込まれる等して、対物レンズL4がない状態でも回折光が二次元光検出器52上に像を結ぶようにされている場合に好適なものである。
そして、このような第六例の構成によれば、図示されているように、図12の再生装置90では必要とされていたピックアップ91を省略することが可能となる。
【0077】
なお、本発明のホログラム記録媒体と再生装置としては、これまでに説明した実施の形態の構成に限定されるものではない。
例えば再生装置としては、実際の光学系の設計において適宜必要なレンズを追加する等、適宜必要な構成を追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明における第1の実施の形態としてのホログラム記録媒体の、第一例としての構造を示した断面図である。
【図2】第1の実施の形態としてのホログラム記録媒体の、第二例としての構造を示した断面図である。
【図3】本発明における第2の実施の形態としてのホログラム記録媒体の、第一例としての構造を示した断面図である。
【図4】第2の実施の形態としてのホログラム記録媒体の、第二例としての構造を示した断面図である。
【図5】本発明における第3の実施の形態としてのホログラム記録媒体の、第一例としての構造を示した断面図である。
【図6】第3の実施の形態としてのホログラム記録媒体の、第二例としての構造を示した断面図である。
【図7】本発明における実施の形態としての再生装置の第一例の構成について、主に光学系の構成を示した図である。
【図8】本発明における実施の形態としての再生装置の第二例の構成について、主に光学系の構成を示した図である。
【図9】本発明における実施の形態としての再生装置の第三例の構成について、主に光学系の構成を示した図である。
【図10】本発明における実施の形態としての再生装置の第四例の構成について、主に光学系の構成を示した図である。
【図11】第四例の再生装置のデータ読み出し方法について例示した図である。
【図12】本発明における実施の形態としての再生装置の第五例の構成について、主に光学系の構成を示した図である。
【図13】本発明における実施の形態としての再生装置の第六例の構成について、主に光学系の構成を示した図である。
【図14】従来のホログラム記録媒体とその読み出し方法について説明するための図である。
【符号の説明】
【0079】
1,12,13,14,15,16 ホログラム記録媒体、2 コア層、2a 第1コア層、2b 第2コア層、3,4 クラッド層、4a 第1クラッド層、4b 第2クラッド層、5 ホログラムパターン、50,60,70,80,90,100 再生装置、51,61,71,92 ピックアップ、52 二次元光検出器、81 マイクロレンズアレイ、81a〜81d レンズ部、91 ガルバノミラー、LD1 第1レーザ、LD2(LD2a〜LD2d) 第2レーザ、L1 集光レンズ、L2 コリメータレンズ、L3 対物レンズ、L4 対物レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのクラッド層と、これらクラッド層に挟まれたコア層とが備えられて光導波路が形成されると共に、上記コア層又は上記クラッド層に対して所要のホログラムパターンが形成されることで情報信号が記憶される光導波路型のホログラム記録媒体であって、
上記コア層又は一方の上記クラッド層のうちの、少なくとも何れかにおける、少なくとも一部の領域がフォトリフラクティブ材料又はフォトクロミズム材料により構成されていることを特徴とするホログラム記録媒体。
【請求項2】
一方の上記クラッド層は、第1のクラッド層と第2のクラッド層との二層から成るようにされて、これら第1のクラッド層と第2のクラッド層との間に上記ホログラムパターンが形成されていると共に、上記コア層と、上記コア層と接する上記第1のクラッド層の少なくとも何れか一方が上記フォトリフラクティブ材料により構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録媒体。
【請求項3】
上記第1のクラッド層が、フォトリフラクティブ効果により屈折率が上昇する上記フォトリフラクティブ材料により構成されていることを特徴とする請求項2に記載のホログラム記録媒体。
【請求項4】
上記コア層が、フォトリフラクティブ効果により屈折率が低下する上記フォトリフラクティブ材料により構成されていることを特徴とする請求項2に記載のホログラム記録媒体。
【請求項5】
上記コア層は、互いの屈折率が同等とされた第1のコア層と第2のコア層との二層から成るようにされて、これら第1のコア層と第2のコア層との間に上記ホログラムパターンが形成されていると共に、これら第1のコア層と第2のコア層の少なくとも何れか一方が上記フォトリフラクティブ材料により構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録媒体。
【請求項6】
上記第1のコア層と第2のコア層の何れか一方が、フォトリフラクティブ効果により屈折率が上昇する上記フォトリフラクティブ材料により構成されていることを特徴とする請求項5に記載のホログラム記録媒体。
【請求項7】
上記第1のコア層と第2のコア層の何れか一方が、フォトリフラクティブ効果により屈折率が低下する上記フォトリフラクティブ材料により構成されていることを特徴とする請求項5に記載のホログラム記録媒体。
【請求項8】
上記コア層は、互いの屈折率が同等とされた第1のコア層と第2のコア層との二層から成るようにされて、これら第1のコア層と第2のコア層との間に上記ホログラムパターンが形成されていると共に、上記コア層における少なくとも一部が上記フォトクロミズム材料により構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録媒体。
【請求項9】
上記第1のコア層と第2のコア層との何れか一方が上記フォトクロミズム材料により構成されていることを特徴とする請求項8に記載のホログラム記録媒体。
【請求項10】
上記コア層における上記ホログラムパターンが形成される部分が上記フォトクロミズム材料により構成されていることを特徴とする請求項8に記載のホログラム記録媒体。
【請求項11】
2つのクラッド層と、これらクラッド層に挟まれたコア層とが備えられて光導波路が形成されると共に、上記コア層又は上記クラッド層に対して所要のホログラムパターンが形成されることで情報信号が記憶される光導波路型のホログラム記録媒体について再生を行う再生装置であって、
上記ホログラム記録媒体に形成される上記光導波路に参照光を伝播させるための第1の光を照射する第1の光照射手段と、
上記参照光とは異なる第2の光を上記ホログラム記録媒体に対して照射する第2の光照射手段と、
上記参照光と上記第2の光との照射によって上記ホログラム記録媒体から放射される上記ホログラムパターンに応じた回折光を検出して情報信号を得る情報信号検出手段と、
を少なくとも備えることを特徴とする再生装置。
【請求項12】
上記第2の光照射手段は、ダイクロイックミラーによって反射させた上記第2の光を上記ホログラム記録媒体に対して照射するように構成されると共に、
上記情報信号検出手段は、上記ホログラム記録媒体から放射され、上記ダイクロイックミラーを透過して得られる上記回折光を検出するように構成される、
ことを特徴とする請求項11に記載の再生装置。
【請求項13】
上記第2の光照射手段は、上記情報信号検出手段とは上記ホログラム記録媒体を介して対向する位置から、上記ホログラム記録媒体に対して上記第2の光を照射するように構成されている、
ことを特徴とする請求項11に記載の再生装置。
【請求項14】
上記第2のレーザ照射手段は、
上記情報信号検出手段とは上記ホログラム記録媒体を介した反対側に設けられると共に、上記第2の光を複数位置から選択的に照射可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項11に記載の再生装置。
【請求項15】
上記第2の光照射手段は、ガルバノミラーによって反射させた上記第2の光を上記ホログラム記録媒体に対して照射するように構成されることを特徴とする請求項11に記載の再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−119332(P2006−119332A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306505(P2004−306505)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】