説明

ホログラム記録材料

【課題】3次元ディスプレイ、高密度光記録媒体、ホログラフィック光学素子等への応用可能な高感度かつ高解像度、高回折効率、高保存性を有するホログラム記録材料を提供する。
【解決手段】超高圧乳化による乳化物の油滴の微粒子化により、感材の光散乱を抑制するホログラム記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム記録材料、及びホログラム記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラム作製に関する一般的原理は、いくつかの文献や専門書、たとえば「ホログラフィックディスプレイ」(辻内順平編、産業図書[非特許文献1])2章に記載されている。これらによれば、2光束のコヒーレントなレーザー光の一方を記録対象物に照射し、それからの全反射光を受け取れる位置に感光性のホログラム記録材料が置かれる。ホログラム記録材料には、対象物からの反射光の他に、もう一方のコヒーレントな光が、対象物に当たらずに直接照射される。対象物からの反射光を物体光、また直接記録材料に照射される光を参照光といい、参照光と物体光との干渉縞が画像情報として記録される。次に、処理された記録材料に参照光と同じ光(再生照明光)を照射すると、記録の際に対象物から記録材料に最初に到達した反射光の波面を再現するようにホログラムによって回折され、その結果、対象物の実像とほぼ同じ物体像を3次元的に観測することができる。
【0003】
参照光と物体光を同じ方向からホログラム記録材料に入射させて形成されるホログラムを透過型ホログラムと呼ぶ。干渉縞は記録材料膜面方向に垂直または垂直に近い形で1mmに1000〜3000本程度の間隔で形成される。
一方、互いにホログラム記録材料の反対側から入射させて形成したホログラムを、一般に反射型ホログラムと呼ぶ。干渉縞は記録材料膜面方向に平行または平行に近い形で1mmに3000〜7000本程度の間隔で形成される。
透過型ホログラムは、例えば特開平6−43634号[特許文献1]などで開示されているような公知の方法によって作成できる。また、反射型ホログラムは、例えば特開平2−3082号[特許文献2]、特開平3−50588号[特許文献3]などに開示された公知の方法によって作成できる。
【0004】
一方、干渉縞間隔に対して膜厚が十分に厚い(通常は干渉縞間隔の5倍以上程度、または1μm以上程度の膜厚を言う)ホログラムを体積型ホログラムという。
それに対し膜厚が干渉縞間隔の5倍以下程度または1μm以下程度のホログラムを平面型または表面型という。
【0005】
さらに、色素や銀などの吸収により干渉縞を記録するホログラムを振幅型ホログラムと呼び、表面レリーフまたは屈折率変調により記録するホログラムを位相型ホログラムと呼ぶ。振幅型ホログラムは光の吸収により、光の回折効率または反射効率が著しく低下するため光の利用効率の点で好ましくなく、通常は位相型ホログラムが好ましく用いられる。
【0006】
体積位相型ホログラムでは、ホログラム記録材料中に光学的吸収ではなく屈折率の異なる干渉縞を多数形成することによって、光を吸収することなく光の位相を変調することができる。
特に反射型の体積位相型ホログラムはリップマン型ホログラムとも呼ばれ、ブラック回折による波長選択的反射により、高回折効率にてフルカラー化、白色再生、高解像度化が可能となり、高解像フルカラー3次元ディスプレイ(イメージング)ホログラムの提供が可能となる。
また最近ではその波長選択的反射を生かして、自動車搭載用のヘッドアップディスプレイ(HUD)、光ディスク用ピックアップレンズ、ヘッドマウントディスプレイ、液晶用カラーフィルター、反射型液晶反射板等に代表されるホログラフィック光学素子(HOE)に広く実用化されてきている。
他にも例えば、レンズ、回折格子、干渉フィルター、光ファイバー用結合器、ファクシミリ用光偏光器、建築用窓ガラス等に実用または応用が検討されている。
【0007】
ところで、最近の高度情報化社会の流れの中で、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための高密度記録媒体の要求が高まっている。
さらにコンピューター高容量化等の流れの中で、コンピューターバックアップ用途や放送バックアップ用途等の業務用途においても、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる超高密度記録媒体が求められている。
そのような中、ランダムアクセスが不可能な磁気テープ媒体や可換不可能で故障しやすいハードディスクに対し、可換かつランダムアクセス可能で小型、安価な光記録媒体がより注目されてきている。しかしながら、DVD−Rのような既存の2次元光記録媒体は物理原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい片面25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
【0008】
そこで、究極の超高密度記録媒体として、膜厚方向に記録を行う3次元光記録媒体が注目されてきている。その有力な方法として2光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法とがあり、そのため体積位相型ホログラム記録材料は、3次元光記録媒体(ホログラフィックメモリ)として、最近俄然注目を集めるようになった。
【0009】
体積位相型ホログラム記録材料を用いたホログラフィックメモリでは、3次元物体から反射する物体光の代わりに、DMDやLCDといった空間光変調素子(SLM)を用いた2次元デジタル情報(信号光と呼ぶ)を数多く記録していく。記録の際、角度多重、位相多重、波長多重、シフト多重などの多重記録を行うため1TBにも達する高容量化が可能となる。また、読み出しには通常CCDやCMOS等を用い、それらの並列書き込み、読み出しにより、1Gbpsにも達する高転送速度化も可能となる。
【0010】
ここで、前述したような3Dディスプレイ(イメージング)用途、ホログラフィック光学素子用途、ホログラフィックメモリ用途等に用いる公知の体積位相型ホログラム記録材料には、ライトワンス方式として重クロム酸ゼラチン方式、漂白ハロゲン化銀塩方式及びフォトポリマー方式などが知られ、リライタブル方式として、フォトリフラクティブ方式及びフォトクロミック高分子方式などが知られている。
【0011】
しかし、これらの公知の体積位相型ホログラム記録材料において求められる要件となる、高感度と高解像度、高回折効率、高保存性等をすべて両立しうる材料は未だなく、改良が望まれている。
具体的には例えば、重クロム酸ゼラチン方式は高い回折効率と低ノイズ特性という長所を有するが、保存性が極めて悪く、低感度という問題を有し、3Dディスプレイ用途やホログラフィックメモリ用途等には適さない。
例えば、特開平10−149083号[特許文献4]、特開平10−149084号[特許文献5]、特開平10−123643号[特許文献6]号に開示されている漂白ハロゲン化銀方式は、ハロゲン化銀感光材料にホログラム露光後いったん白黒現像を行った後、現像銀を漂白してハロゲン化銀に戻す方法であるが、高感度という長所を有するものの、漂白処理が煩雑でまた強い酸化剤を必要とし、また、ハロゲン化銀粒子を屈折率変調用に残すために散乱が大きく、感光による保存性悪化という問題点を有し、やはり3Dディスプレイ用途、ホログラフィック光学素子用途、ホログラフィックメモリ用途等に用いるには課題が多い。
一方、前述の特許文献1〜3に開示された乾式処理フォトポリマー方式は、バインダー、ラジカル重合可能なモノマーおよび光重合開始剤を基本組成とし、屈折率変調を向上させるためにバインダーまたはラジカル重合可能なモノマーのどちらか一方に芳香環または塩素、臭素を有する化合物を用いて屈折率差を持たせる工夫をしており、その結果、ホログラム露光の際形成される干渉縞の明部にモノマーが、暗部にバインダーが集まりつつ重合が進行することにより屈折率差を形成することができる。したがって、高回折効率と乾式処理を両立できうる比較的実用的な方式といえる。
しかしながら、漂白ハロゲン化銀方式に比べると感度が1000分の1程度であること、回折効率を高めるためには2時間近い加熱定着処理を必要とすること、ラジカル重合であるため、酸素による重合阻害の影響を受け、また露光、定着後記録材料の収縮を伴い、再生時の回折波長及び角度が変化してしまう問題点があること、膜が柔らかいため保存性の点でも不足していること等の問題があった。
また、特許文献7に開示された方式は、ホログラム露光により干渉縞に応じてハロゲン化銀を感光させて潜像を形成した後、現像処理を行い、感光したハロゲン化銀を現像することにより有機屈折率変調剤を反応させて、屈折率変調による干渉縞を記録する高回折効率な方式である。該記録方式は処理工程でハロゲン化銀を脱銀することで、ハロゲン化銀粒子に由来する光散乱が抑制されて回折効率が向上するものの、未だ不充分なレベルであり更なる改善が望まれていた。
【0012】
なお、3Dディスプレイ(イメージング)用途やホログラフィック光学素子用途においては必ずしも乾式処理は必須ではない。また、ホログラフィックメモリ用途においても、特にROM(Read Only Memory)用途においては乾式処理は必ずしも必須ではなく、たとえ湿式処理であっても高感度で生産性が高くかつ高解像度、高回折効率、高保存性であるホログラム記録材料の開発が望まれている。
【0013】
以上より、ホログラム記録材料を3Dディスプレイ(イメージング)用途、ホログラフィック光学素子用途、ホログラフィックメモリ用途等へ応用するためには、そのような課題を抜本的に解決した、光散乱の低減による高回折効率である記録材料の開発が強く望まれていた。
【特許文献1】特開平6−43634号公報
【特許文献2】特開平2−3082号公報
【特許文献3】特開平3−50588号公報
【特許文献4】特開平10−149083号公報
【特許文献5】特開平10−149084号公報
【特許文献6】特開平10−123643号公報
【特許文献7】特開2006−227259号公報
【非特許文献1】「ホログラフィックディスプレイ」、辻内順平編、産業図書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで本発明の目的は、3次元ディスプレイ(イメージング)、ROM用途を中心とした高密度光記録媒体、ホログラフィック光学素子等への応用可能な高感度かつ高解像度、高回折効率、高保存性を両立することができるホログラム記録材料、及びホログラム記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)平均粒径が100nm以下である乳化物粒子を含むことを特徴とするハロゲン
化銀ホログラム記録材料。
(2)前記記載の乳化物粒子が、現像処理時に現像主薬酸化体とのカップリング反応により屈折率を変調できる屈折率変調カプラーを含むことを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀ホログラム記録材料。
(3)前記記載の屈折率変調カプラ−が下記一般式(1−1)または(1−2)で表されることを特徴とする(1)又は(2)に記載のハロゲン化銀ホログラム記録材料。
【0016】
【化1】

【0017】
一般式(1−1)中、R、Rはそれぞれ独立に置換基を表し、RとRは互いに連結して環を形成しても良く、Xは水素原子または現像主薬とのカップリング反応時にアニオンとして脱離可能な脱離基を表す。
一般式(1−2)中、Rは置換基を表し、aは0〜4の整数を表す。aが2以上の時、複数のRは同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良い。Xは水素原子または現像主薬とのカップリング反応時にアニオンとして脱離可能な脱離基を表す。
(4)乳化物調製時に用いられる界面活性剤の質量が、前記記載の屈折率変調カプラ−の質量との比率で、乳化物中に10%以上存在することを特徴とする(1)から(3)のいずれか1に記載のハロゲン化銀ホログラム記録材料。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、3次元ディスプレイ(イメージング)、ROM用途を中心とした高密度光記録媒体、ホログラフィック光学素子等への応用可能な高解像度かつ高回折効率を具備することができるホログラム記録材料およびホログラム記録方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明のホログラム記録材料、及びホログラム記録方法について詳しく説明する。
【0020】
本発明のホログラム記録材料は、少なくとも乳化物、感光性ハロゲン化銀及びバインダーを有するホログラム記録材料である。
【0021】
ホログラム記録材料用の乳化物において、乳化物の平均粒径は100nm以下であることが好ましく、90nm以下がより好ましく、80nm以下が更に好ましい。乳化物の平均粒径の下限は好ましくは5nm、より好ましくは10nmである。本明細書における平均粒径は、全微粒子中の体積平均粒径の分布において、平均値に該当する50%分布の粒径をいう。50%分布の粒径は、累積中位径(Median径)として一般的に粒度分布を評価するパラメータである。乳化物の平均粒径を小さくすることで、ホログラム記録材料の光散乱を抑制することができる。
【0022】
本発明のホログラム記録方法は、少なくとも感光性ハロゲン化銀及びバインダーを有するホログラム記録材料において、ホログラム露光により干渉縞に応じてハロゲン化銀を感光させて潜像を形成した後、現像処理を行い、感光したハロゲン化銀を現像することにより屈折率変調カプラーを反応させ、屈折率変調による干渉縞を記録することを特徴とするホログラム記録方法である。ここで言う屈折率変調カプラーとは、ハロゲン化銀の現像進行の有無に伴う反応により自身が高屈折率化もしくは低屈折率化することが可能な化合物、または高屈折率化合物もしくは低屈折率化合物を放出することが可能な化合物を意味する。さらに、本発明のホログラム記録材料の処理方法として好ましくは、現像処理時もしくは現像処理後にホログラム記録材料に存在する現像された銀を漂白処理し、さらに残存するハロゲン化銀と共にホログラム記録材料から脱銀して処理液に回収する方法である。
【0023】
まず、本発明のホログラム記録材料における感光性ハロゲン化銀について説明する。
本発明の感光性ハロゲン化銀含有ホログラム記録材料はハロゲン化銀を含有するが、該ハロゲン化銀はいわゆる、ハロゲン化銀乳剤の形で用いることが好ましく、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を支持体上に有する材料として用いることが好ましい。
支持体はハロゲン化銀感光材料に通常用いられる支持体を用いることができ、ガラス、TAC、PET、PEN等を代表例として挙げる事ができる。好ましくは、光学的異方性を持たないガラス、TACが用いられる。支持体の厚みの選択は、その用途、使用法に応じて適宜選択することができる。これら支持体に上述した乳剤層を塗布する。さらに乳剤層に追加して、保護層、YF層、中間層、ハレ−ション防止層、下塗り層、バック層等、目的に応じて適宜選択して塗布することができる。TAC等のフレキシブルな支持体に対しては、そのカ−ル特性を良好に保つためにバック層の塗布は極めて有効である。さらに保護層がない場合には、このバック層にマット剤等を導入し、試料間の接着性を改良することができる。また、静電気起因の各種障害、たとえばほこりの付着などを帯電性の調整により積極的に排除することが可能である。
ハロゲン化銀乳剤層ならびに各種層の塗布銀量、塗布バインダー(好ましくはゼラチン)量は特に制限はない。塗布銀量は1g/mから10g/mの範囲が好ましい。塗布バインダー(好ましくはゼラチン)量は0.1g/mから10g/mの範囲が好ましい。銀/ゼラチン塗布量比率についても任意の範囲で選択することができる。好ましくは0.3〜2.0の範囲である。塗布膜厚は通常3μm〜12μmの範囲が好ましく用いられる。薄いと干渉波の記録が十分に行えないし、厚すぎても光散乱等の増加により解像力が低下してしまう。処理工程での膨潤膜厚については、硬膜剤の使用量の調整により任意に選ぶことができる。好ましくは硬膜の程度は処理後の膜厚変化、すなわちゼラチン等の抜けがない様に、強くしておくことが好ましい。
【0024】
本発明のハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀粒子は、正常晶であることが好ましく、8面体、立方体,十四面体、ならびにそれらが丸みを帯びた形状を持つことが出来る。好ましくは丸みを帯びた立方体または角が明確な立方体である。双晶は混入していないことが好ましい。特に好ましくは、双晶粒子の混入比率は個数で3%以下であり、さらに好ましくは、1%以下である。ここで双晶とは1重双晶、2重双晶、多重双晶、ならびに平行双晶、非平行双晶を含む。
【0025】
本発明のハロゲン化銀粒子は単分散性であることが好ましい。全ハロゲン化銀粒子の投影面積換算した円相当径の変動係数は25%以下であることが好ましく、さらに好ましくは20%以下であり、特に好ましくは15%以下である。ここで円相当径の変動係数とは個々のハロゲン化銀粒子における円相当径の分布の標準偏差を平均円相当径で割った値である。
【0026】
円相当径は、例えば直接法による透過電子顕微鏡写真を撮影して個々の粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を求めることができる。本発明においてはハロゲン化銀粒子が超微粒子であるため、低温にて高電圧の電子顕微鏡を用いて撮影することにより明確な粒子像を求めることが可能である。
【0027】
本発明においてハロゲン化銀粒子は好ましくは、臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀、塩臭化銀である。沃化銀含有率は特に好ましくは1モル%以上5モル%以下である。塩化銀含有率は特に好ましくは5モル%以下である。また各々の粒子の塩化銀ならびに沃化銀含有率は分布がないことが好ましい。塩化銀ならびに沃化銀含有率の粒子間分布の変動係数は20%以下が好ましく、10%以下がとくに好ましい。個々の粒子の塩化銀および沃化銀含有率の測定には通常、EPMA法(Electron Probe Micro Analyzer法)が有効である。乳剤粒子を互いに接触しないように分散させた試料を作成し、電子線を照射することにより放射されるX線を分析することにより、電子線を照射した極微小領域の元素分析を行うことができる。この時、測定は電子線による試料損傷を防ぐため低温に冷却して行うことが好ましい。
本発明のハロゲン化銀粒子は超微粒子であるため、ハロゲン組成の構造付与は容易ではないが、内部高沃化銀含量の構造、外部高沃化銀含量の構造等が可能である。塩化銀についての構造についても同様である。さらには3重構造以上の多層構造も可能である。
【0028】
本発明のハロゲン化銀粒子は数平均円相当径が10nm以上80nm以下である。より好ましくは10nm以上50nm以下である。一般的に粒子サイズが大きすぎると波面再生の画質が劣ることになり,粒子サイズが小さすぎると粒子サイズの変動等の不安定化を完全に抑制することが出来なくなる。
【0029】
本発明のハロゲン化銀粒子は、従来公知の方法にて調製できる。好ましくはゼラチン水溶液中に硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液をダブルジェット法にて添加することである。この時、流量を加速して添加することは好ましい。また添加時の系のpHとpAgは制御することが好ましい。pHは5〜8の範囲が好ましく用いられる。pAgは5〜9の範囲が好ましく用いられる。超微粒子の調製のためには温度は低温が好ましく、特に好ましくは20℃〜40℃の範囲が用いられる。後述する種々の添加剤を粒子サイズ調整、粒子サイズ分布調整、感度/かぶり調整、階調/現像進行調整等のために添加することが可能である。
【0030】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は化学増感が施されている。特に化学増感時に金−カルコゲン増感と還元増感が施されている。ここで化学増感とはハロゲン化銀乳剤の製造工程を時間に従って粒子形成過程、水洗過程、化学増感過程の3段階に分けた場合の化学増感過程に相当する工程を意味する。化学増感とは各種化学増感剤を添加して温度を上昇させ熟成する工程である。
化学増感時の金−カルコゲン増感と還元増感の併用は従来困難とされていたが、前記の範囲にある粒子サイズ域においては可能である。この併用により極めて高い感度が達成でき、またその保存性も実用上何ら問題ないレベルにすることが可能である。カルコゲン増感と貴金属増感については、ジェームス(T.H.James)著、ザ・フォトグラフィック・プロセス、第4版、マクミラン社刊、1977年、(T.H.James、The Theory of the Photographic Process,4thed,Macmillan,1977)67〜76頁に詳細が記述されている。またリサーチ・ディスクロージャー、120巻、1974年4月、12008;リサーチ・ディスクロージャー、34巻、1975年6月、13452、米国特許第2,642,361号、同第3,297,446号、同第3,772,031号、同第3,857,711、同第3,901,714号、同第4,266,018号、および同第3,904,415号、並びに英国特許第1,315,755号に記載されるようにpAg5〜10、pH5〜8および温度30〜80℃において硫黄、セレン、テルルのカルコゲン増感剤と金増感剤、それに加えて白金、パラジウム、イリジウムまたはこれら増感剤の複数の組合せとすることができる。金増感の場合には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドのような公知の化合物を用いることができる。パラジウム化合物はパラジウム2価塩または4価の塩を意味する。好ましいパラジウム化合物は、RPdXまたはRPdXで表わされる。ここでRは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表わす。Xはハロゲン原子を表わし塩素、臭素または沃素原子を表わす。
【0031】
具体的には、KPdCl、(NHPdCl、NaPdCl、(NHPdCl、LiPdCl、NaPdClまたはKPdBrが好ましい。金化合物およびパラジウム化合物はチオシアン酸塩あるいはセレノシアン酸塩と併用することが好ましい。
【0032】
硫黄増感剤として、ハイポ、チオ尿素系化合物、ロダニン系化合物および米国特許第3,857,711号、同第4,266,018号および同第4,054,457号に記載されている硫黄含有化合物を用いることができる。いわゆる化学増感助剤の存在下に化学増感することもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデン、アザピリダジン、アザピリミジンのごとき、化学増感の過程でカブリを抑制し、且つ感度を増大するものとして知られた化合物が用いられる。化学増感助剤の例は、米国特許第2,131,038号、同第3,411,914号、同第3,554,757号、特開昭58−126526号および前述ダフィン著「写真乳剤化学」、138〜143頁に記載されている。
【0033】
金増感剤の好ましい量としてハロゲン化銀1モル当り1×10−6〜1×10−2モルであり、さらに好ましいのは1×10−5〜5×10−3モルである。パラジウム化合物の好ましい範囲はハロゲン化銀1モル当たり1×10−3から5×10−7モルである。チオシアン化合物あるいはセレノシアン化合物の好ましい範囲はハロゲン化銀1モル当たり1×10−4から1×10−2モルである。
【0034】
本発明において用いるハロゲン化銀粒子に対して使用する好ましい硫黄増感剤量はハロゲン化銀1モル当り1×10−6〜1×10−2モルであり、さらに好ましいのは1×10−5〜5×10−3モルである。
【0035】
本発明の乳剤に対して好ましいカルコゲン増感法としてセレン増感がある。セレン増感においては、公知の不安定セレン化合物を用い、具体的には、コロイド状金属セレニウム、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N−ジエチルセレノ尿素)、セレノケトン類、セレノアミド類のようなセレン化合物を用いることができる。カルコゲン増感(好ましくはセレン増感)は硫黄増感と組み合せてカルコゲン増感として用いた方が好ましい。
【0036】
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4−224595号、同4−271341号、同4−333043号、同5−303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208184号、同6−208186号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などに記載されている不安定テルル化合物を用いることができる。
【0037】
具体的には、ホスフィンテルリド類(例えば、ノルマルブチル−ジイソプロピルホスフィンテルリド、トリイソブチルホスフィンテルリド、トリノルマルブトキシホスフィンテルリド、トリイソプロピルホスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニル−N−ベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N’−ジメチルエチレンテルロ尿素)、テルロアミド類、テルロエステル類などを用いればよい。好ましくはホスフィンテルリド類、ジアシル(ジ)テルリド類である。
【0038】
本発明のハロゲン化銀乳剤は化学増感時に金−カルコゲン増感に加えて還元増感することも好ましい。ここで、還元増感とは、ハロゲン化銀乳剤に還元増感剤を添加する方法、銀熟成と呼ばれるpAg1〜7の低pAgの雰囲気で熟成させる方法、高pH熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気で熟成させる方法のいずれを選ぶこともできる。また2つ以上の方法を併用することもできる。
【0039】
還元増感剤を添加する方法は還元増感のレベルを微妙に調節できる点で好ましい方法である。
還元増感剤としては、例えば、第一錫塩、アスコルビン酸およびその誘導体、アミンおよびポリアミン類、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物、ボラン化合物が公知である。用いる還元増感にはこれら公知の還元増感剤を選んで用いることができ、また2種以上の化合物を併用することもできる。還元増感剤としては塩化第一錫、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボラン、アスコルビン酸およびその誘導体が好ましい化合物である。還元増感剤の添加量は乳剤製造条件に依存するので添加量を選ぶ必要があるが、ハロゲン化銀1モル当り10−7〜10−3モルの範囲が適当である。
【0040】
還元増感剤は、例えば、水あるいはアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類のような有機溶媒に溶かし化学増感中に添加される。添加する時期は金増感剤、カルコゲン増感剤の添加前でも添加後でもいずれでも良い。好ましくは還元増感剤を添加して熟成した後カルコゲン増感剤、金増感剤を添加しさらに熟成して化学増感を終了するのが良い。また還元増感剤の溶液を何回かに分けて添加しても連続して長時間添加するのも好ましい方法である。
【0041】
本発明においては、ハロゲン化銀粒子の銀1モル当たりテトラザインデン化合物が3×10−3モル以上3×10−2モル以下含有されていることが好ましい。本発明で用いられるテトラザインデン化合物は、写真乳剤の安定剤、かぶり防止剤として知られており、リサーチ・ディスクロージャー誌307巻866頁に記載されている。本発明に用いるテトラザインデン化合物としては置換基としてヒドロキシ基を有するテトラザインデン化合物、とくにヒドロキシテトラザインデン化合物が好ましい。テトラザインデンの複素環にはヒドロキシ基以外の置換基を有していてもいい。置換基としては、例えば、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アシルアミノ基、シアノ基などを有していてもよい。ただし、硫黄を含む置換基(例えば、メルカプト基)を有するものは好ましくない。
【0042】
以下に本発明のテトラザインデン化合物の具体例を列記するが、これらのみに限定されるものではない。
4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン
4−ヒドロキシ−6−t−ブチル−1,3,3a,7−テトラザインデン
4−ヒドロキシ−6−フェニル−1,3,3a,7−テトラザインデン
4−ヒドロキシ−1,3,3a,7−テトラザインデン
4−メチル−6−ヒドロキシ−1,3,3a,7−テトラザインデン
2−メチルチオ−4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン
4−ヒドロキシ−5−ブロム−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン
4−ヒドロキシ−6−メチル−1,2,3a,7−テトラザインデン
4−ヒドロキシ−6−エチル−1,2,3a,7−テトラザインデン
2,4−ジヒドロキシ−6−フェニル−1,3,3a,7−トリアザインデン
4−ヒドロキシ−6−フェニル−1,2,3,3a,7−ペンタザインデン
【0043】
これらテトラザインデン化合物の添加量は、好ましくはハロゲン化銀1モル当り3×10−3モル〜3×10−2モル、好ましくは4×10−3モル〜3×10−2モル、より好ましくは6×10−3モル〜2×10−2モルであり、化学増感開始前、化学増感中、化学増感後、塗布時のいずれかの時期に添加することが好ましい。添加量が少なすぎるとテトラザインデン化合物の添加による粒子サイズの経時での安定化の効果が認められない。ここで経時とはハロゲン化銀乳剤粒子調製時もしくは調製してから塗布するまでの間における時間経過を意味する。この経時変化を抑えることにより安定した製造、品質の達成が可能となる。テトラザインデン化合物の添加量が多すぎると逆に経時での粒子サイズ変化が添加していない場合と比較して大きくなる。
【0044】
本発明においては、ハロゲン化銀粒子の銀1モル当たりチオシアン酸塩が1×10−4以上1×10−2モル以下含有されることが好ましい。より好ましくは、ハロゲン化銀粒子の銀1モル当たりチオシアン酸塩が5×10−4以上5×10−3モル以下含有される。少なすぎると高感度化の効果が小さく、多すぎるとチオシアン酸塩のハロゲン化銀溶剤としての粒子サイズ変動等の不安定化による悪化作用が大きくなりすぎる。本発明においてはチオシアン酸塩以外のハロゲン化銀溶剤も好ましく用いられる。ハロゲン化銀溶剤としては、米国特許第3,271,157号、同第3,531,286号、同第3,574,628号、特開昭54−1019号、同54−158917号等に記載された(a)有機チオエーテル類、特開昭53−82408号、同55−77737号、同55−2982号等に記載された(b)チオ尿素誘導体、特開昭53−144319号に記載された(c)酸素または硫黄原子と窒素原子とにはさまれたチオカルボニル基を有するハロゲン化銀溶剤、特開昭54−100717号に記載された(d)イミダゾール類、(e)亜硫酸塩、(f)アンモニア等があげられる。
【0045】
本発明において好ましく用いられるチオシアン酸塩の添加時期はハロゲン化銀乳剤粒子の調製のいかなる段階であっても良いが、好ましくはハロゲン化銀粒子形成工程終了後、より好ましくは脱塩工程終了後塗布工程前である。特に好ましくは化学増感工程時である。添加方法としては水溶液として添加することが好ましい。チオシアン酸塩としては、好ましくはKSCN、NaSCN、またはNHSCNである。
【0046】
ハロゲン化銀が増感色素の吸着により可視光域が分光増感されていることが好ましい。
本発明においては増感色素としてハロゲン化銀粒子の銀1モル当たりJ会合性シアニン色素が1×10−4モル以上5×10−2モル以下含有されていることが好ましい。J会合性シアニン色素が該添加量含有されることにより、前述したハロゲン化銀溶剤の使用によるハロゲン化銀超微粒子に対する不安定化効果を顕著に抑制することができる。ここでJ会合性とは色素の溶液中での吸収極大に対してハロゲン化銀粒子に吸着した状態での吸収極大が10nm以上、より好ましくは20nm以上、長波長にシフトすることを意味する。特に好ましくはハロゲン化銀粒子の銀1モル当たりJ会合性シアニン色素が5×10−4モル以上5×10−3モル以下含有されている。
【0047】
一般に本発明において用いられる増感色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。特に有用な色素は、前述したシアニン色素またはメロシアニン色素である。さらに増感色素がJ会合状態でハロゲン化銀に吸着していることが好ましい。
これらの色素類には、塩基性複素環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれをも適用できる。すなわち、例えば、ピロリン核、オキサゾリン核、チオゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核;これらの核に脂環式炭化水素環が融合した核;及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、即ち、例えば、インドレニン核、ベンゾインドレニン核、インドール核、ベンゾオキサドール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンゾイミダゾール核、キノリン核が適用できる。これらの核は炭素原子上に置換基を有していてもよい。
【0048】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は米国特許第2,688,545号、同第2,977,229号、同第3,397,060号、同第3,522,052号、同第3,527,641号、同第3,617,293号、同第3,628,964号、同第3,666,480号、同第3,672,898号、同第3,679,428号、同第3,703,377号、同第3,769,301号、同第3,814,609号、同第3,837,862号、同第4,026,707号、英国特許第1,344,281号、同第1,507,803号、特公昭43−4936号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号に記載されている。
【0049】
増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を同時または別個に添加してもよい。本発明においては、スチルベン系の強色増感剤を用いることは、特に好ましい。
【0050】
本発明において増感色素の添加時期はハロゲン化銀乳剤粒子の調製のいかなる段階であっても良いが、好ましくは化学増感工程以前、より好ましくはハロゲン化銀粒子形成工程終了後脱塩工程以前である。添加方法としては従来公知の方法を用いることが可能である。好ましくは水溶液もしくは水系分散液として添加する。
【0051】
また、ホログラム記録材料の記録波長光の透過率は10〜99%であることが好ましく、20〜95%であることがより好ましく、30〜90%であることがさらに好ましく、40〜85%であることが、回折効率、感度、記録密度(多重度)の点で最も好ましい。したがって、そのようになるようにホログラム記録材料の膜厚に合わせてハロゲン化銀添加量と、それに吸着させる増感色素の記録波長におけるモル吸光係数と吸着量を調整することが好ましい。
【0052】
本発明においてはハロゲン化銀粒子の銀1モル当たりイリジウム塩が1×10−4モル以上1×10−2モル以下含有されていることが好ましい。イリジウム塩が該添加量含有されることにより、ハロゲン化銀溶剤の使用によるハロゲン化銀超微粒子に対する不安定化効果を顕著に抑制することができる。特に好ましくはハロゲン化銀粒子の銀1モル当たりイリジウム塩が2×10−4モル以上1×10−3モル以下含有されている。
【0053】
本発明においてイリジウム塩の添加時期はハロゲン化銀乳剤粒子の調製のいかなる段階であっても良いが、好ましくはハロゲン化銀粒子形成工程中である。添加方法としては好ましくは水溶液として添加する。
【0054】
イリジウム塩としては3価もしくは4価のイリジウム錯体が好ましく用いられる。代表的なイリジウム塩としては、KIrCl、KIrCl、KIrCl(HO)、KIrCl(HO)等を挙げることができる。K塩以外にナトリウム塩、アンモニウム塩も好ましく用いられる。Irの配位子としてはCl、HO以外に従来公知であるものが用いられる。好ましくは特開平7−072569号に記載の有機配位子を含むイリジウム錯体が用いられる。さらに好ましくは特開平2−761027号に記載のシアノ基を含むイリジウム錯体が用いられる。
【0055】
本発明においてはイリジウム塩以外にハロゲン化銀粒子中に6シアノ金属錯体がドープされているのが好ましい。6シアノ金属錯体のうち、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム又はクロムを含有するものが好ましい。金属錯体の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり10−6乃至10−2モルの範囲であることが好ましく、ハロゲン化銀1モル当たり10−5乃至10−3モルの範囲であることがさらに好ましい。金属錯体は、水または有機溶媒に溶かして添加することができる。有機溶媒は水と混和性を有することが好ましい。有機溶媒の例には、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、及びアミド類が含まれる。
【0056】
金属錯体としては、下記式(I)で表される6シアノ金属錯体が特に好ましい。
【0057】
(I)[M(CN)n−
(式中、Mは鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウムまたはクロムであり、nは3または4である。)。
【0058】
6シアノ金属錯体の具体例を以下に示す。
(I−1) [Fe(CN)4−
(I−2) [Fe(CN)3−
(I−3) [Ru(CN)4−
(I−4) [Os(CN)4−
(I−5) [Co(CN)3−
(I−6) [Rh(CN)3−
(I−7) [Ir(CN)3−
(I−8) [Cr(CN)4−
【0059】
6シアノ錯体の対カチオンは、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈殿操作に適合しているイオンを用いることが好ましい。対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、リチウムイオン)、アンモニウムイオンおよびアルキルアンモニウムイオンが含まれる。
【0060】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は通常、水洗を行う。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5℃〜50℃の範囲で選ぶことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが2〜10の間で選ぶことが好ましい。さらに好ましくは3〜8の範囲である。水洗時のpAgも目的に応じて選べるが5〜10の間で選ぶことが好ましい。水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法の中から選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
【0061】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、ホログラム材料の製造工程、保存中あるいは処理中のかぶりを防止し、あるいは乳剤性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちチアゾール類、例えば、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール);メルカプトピリミジン類;メルカプトトリアジン類;例えば、オキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、例えば、トリアザインデン類、ペンタアザインデン類のようなかぶり防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。例えば、米国特許第3,954,474号、同第3,982,947号、特公昭52−28660号に記載されたものを用いることができる。好ましい化合物の一つに特開昭63−212932号に記載された化合物がある。かぶり防止剤および安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、水洗工程、水洗後の分散時、化学増感前、化学増感中、化学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加することができる。乳剤調製中に添加して本来のかぶり防止および安定化効果を発現する以外に、粒子の晶壁を制御する、粒子サイズを小さくする、粒子の溶解性を減少させる、化学増感を制御する、色素の配列を制御するなど多目的に用いることができる。
【0062】
本発明の乳剤調製時、例えば粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前に金属イオンの塩を存在させることは目的に応じて好ましい。粒子にドープする場合には粒子形成時、粒子表面の修飾あるいは化学増感剤として用いる時は粒子形成後、化学増感終了前に添加することが好ましい。粒子全体にドープする場合と粒子のコアー部のみ、あるいはシェル部のみにドープする方法も選べる。例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Y、La、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au、Cd、Hg、Tl、In、Sn、Pb、Biを用いることができる。これらの金属はアンモニウム塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、水酸塩あるいは6配位錯塩、4配位錯塩など粒子形成時に溶解させることができる塩の形であれば添加できる。例えば、CdBr、CdCl、Cd(NO、Pb(NO、Pb(CHCOO)、K[Fe(CN)]、(NH[Fe(CN)]、KIrCl、(NHRhCl、KRu(CN)があげられる。配位化合物のリガンドとしてハロ、アコ、シアノ、シアネート、チオシアネート、ニトロシル、チオニトロシル、オキソ、カルボニルのなかから選ぶことができる。これらは金属化合物を1種類のみ用いてもよいが2種あるいは3種以上を組み合せて用いてもよい。
【0063】
金属化合物は水またはメタノール、アセトンのような適当な有機溶媒に溶かして添加するのが好ましい。溶液を安定化するためにハロゲン化水素水溶液(例えば、HCl、HBr)あるいはハロゲン化アルカリ(例えば、KCl、NaCl、KBr、NaBr)を添加する方法を用いることができる。また必要に応じて酸・アルカリなどを加えてもよい。金属化合物は粒子形成前の反応容器に添加しても粒子形成の途中で加えることもできる。また水溶性銀塩(例えば、AgNO)あるいはハロゲン化アルカリ水溶液(例えば、NaCl、KBr、KI)に添加しハロゲン化銀粒子形成中連続して添加することもできる。さらに水溶性銀塩、ハロゲン化アルカリとは独立の溶液を用意し粒子形成中の適切な時期に連続して添加してもよい。さらに種々の添加方法を組み合せるのも好ましい。
【0064】
本発明の乳剤においては銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、例えば、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀のような水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀のような水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、例えば、オゾン、過酸化水素およびその付加物(例えば、NaBO・H・3HO、2NaCO・3H、Na・2H、2NaSO・H・2HO)、ペルオキシ酸塩(例えば、K、K、K)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K[Ti(O)C]・3HO、4KSO・Ti(O)OH・SO・2HO、Na[VO(O)(C]・6HO)、過マンガン酸塩(例えば、KMnO)、クロム酸塩(例えば、KCr)のような酸素酸塩、沃素や臭素のようなハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば、過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)およびチオスルフォン酸塩がある。
【0065】
また、有機の酸化剤としては、p−キノンのようなキノン類、過酢酸や過安息香酸のような有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシンイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
【0066】
本発明において用いる好ましい酸化剤は、オゾン、過酸化水素およびその付加物、ハロゲン元素、チオスルフォン酸塩の無機酸化剤及びキノン類の有機酸化剤である。前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。酸化剤を用いたのち還元増感を施こす方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法の中から選んで用いることができる。これらの方法は粒子形成工程でも化学増感工程でも選んで用いることができる。
【0067】
本発明のホログラム用材料には特開平07−134351号に記載のハロゲン化銀への吸着基を有するヒドラジン化合物、特開平08−114884号、同08−314051号記載のヒドロキサム酸系化合物、特開平10−090819号記載のヒドロキシセミカルバジド系化合物、特開2002−323729号記載のハロゲン化銀への吸着基を有するヒドロキシルアミン系化合物、を含有することが特に好ましい。これら化合物の添加は乳剤粒子形成から塗布するまでの間から選ぶことができるが、好ましくは化学増感時またはそれ以降の塗布するまでの間から選択することができる。添加量についても任意であるが、超微粒子乳剤の特徴として、これらの特許文献に記載された量よりも10倍以上の大過剰量用いた方が好ましい場合がある。具体的な添加量は実験的に容易に決定することができる。
【0068】
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物は本発明のホログラム材料に好ましく用いられる。これらの化合物は以下のタイプ1、2から選ばれる化合物である。
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
【0069】
タイプ1の化合物について説明する。
タイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子を放出し得る化合物としては、特開平9−211769号(具体例:28〜32頁の表Eおよび表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(具体例:化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(具体例:化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(具体例:化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などに記載の「1光子2電子増感剤」または「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0070】
タイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物で1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、特開平2003−140287号に記載の一般式(1)の化合物、特開2004−245929(特願平2003−33446)号に記載の化学反応式(1)で表される反応を起こしうる化合物であって特開2004−245929(特願平2003−33446)号に記載の一般式(2)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0071】
次に本発明のホログラム記録材料におけるバインダーについて説明する。
本発明のホログラフイ−用ハロゲン化銀ホログラム材料には低分子量ゼラチンが含有されることが好ましい。より好ましくはハロゲン化銀乳剤中に低分子量ゼラチンが含まれる。本発明における低分子量ゼラチンとは数平均分子量が3000から50000のものを意味する。より好ましくは数平均分子量が10000以上30000以下である。本発明で使用するゼラチンは、下記の各種修飾処理を施されていても良い。例えば、アミノ基を修飾したフタル化ゼラチン、コハク化ゼラチン、トリメリットゼラチン、ピロメリットゼラチン、カルボキシル基を修飾したエステル化ゼラチン、アミド化ゼラチン、イミダゾール基を修飾したホルミル化ゼラチン、メチオニン基を減少させた酸化処理ゼラチンや増加させた還元処理ゼラチンなどが挙げられる。
【0072】
一方、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼインのような蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類のようなセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体のような糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾールのような単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Photo.Japan.No.16.P30(1966)に記載されたような酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
【0073】
本発明のホログラム記録材料は、干渉縞明部において屈折率が高くなり干渉縞暗部において屈折率が低くなる材料であっても、逆に干渉縞明部において屈折率が低くなり干渉縞暗部において屈折率が高くなる材料であってもどちらでも良い。位相ホログラムであって、記録光に対して透明であることが好ましい。
【0074】
次に、本発明のホログラム記録材料に用いる屈折率変調カプラ−について説明する。本発明の屈折率変調カプラ−は、現像処理時に現像主薬酸化体とのカップリング反応により屈折率を変調できることが好ましい。
【0075】
本発明において、屈折率変調カプラーは下記一般式(1−1)または(1−2)で表されることが好ましい。
【0076】
【化2】

【0077】
一般式(1−1)中、R、Rはそれぞれ独立に置換基を表し、置換基として好ましい例は例えば、アルキル基(好ましくは炭素数(C)数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、キノリル、キナリジル)、アルキニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、エチニル、2−プロピニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基が含まれ、好ましくはC数0〜20、例えば、アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、アニリノ)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アシル基(好ましくはC数1〜20、例えば、アセチル、ベンゾイル、サリチロイル、ピバロイル)、アルコキシ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メトキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくはC数6〜26、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、アルキルチオ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アリールチオ基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニルチオ、4−クロロフェニルチオ)、アルキルスルホニル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくはC数6〜20、例えば、ベンゼンスルホニル、パラトルエンンスルホニル)、スルファモイル基(好ましくはC数0〜20、例えばスルファモイル、N−メチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、カルバモイル基(好ましくはC数1〜20、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N、N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル)、アシルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、イミノ基(好ましくはC数2〜20、例えばフタルイミノ)、アシルオキシ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシカルボニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル)、カルバモイルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばカルバモイルアミノ、N−メチルカルバモイルアミノ、N−フェニルカルバモイルアミノ)、またはアルコキシカルボニルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばメトキシカルボニルアミノ、イソペンチルオキシカルボニルアミノ)であり、より好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシルオキシ基、またはアルコキシカルボニル基であり、さらに好ましくは、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基である。上記の置換基は更に置換基を有していてもよい。
【0078】
とRは互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくは後述の一般式(6−1)〜(6−5)に記載されているような環が挙げられる。
【0079】
は水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応時にアニオンとして脱離可能な脱離基を表し、脱離基として好ましくはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環基(ヘテロ環として、好ましくはヒダントイン、チオヒダントイン等も挙げられる)、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基など(以上好ましい例はRに挙げた例に同じ)が挙げられる。
として好ましくは、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、またはヘテロ環基であり、より好ましくはヒダントイン環基(ジケトイミダゾリジノ)である。
【0080】
一般式(1−1)で表される屈折率変調カプラーは下記一般式(6−1)〜(6−8)のいずれかで表されることも好ましい。
なお、一般式(6−2)〜(6−5)は下記のように平衡式で表される。
【0081】
【化3】

【0082】
一般式(6−1)〜(6−8)中、Xは一般式(1−1)と同義である。一般式(6−1)〜(6−8)中、R31〜R42、R44、R46はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し(好ましい例はRに挙げた例と同じ)、R31は好ましくはアルキル基、アリール基、アニリノ基、またはアシルアミノ基であり、R32は好ましくはアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基であり、R33〜R36、R39、R42は好ましくはアルキル基、またはアリール基であり、R40は好ましくはシアノ基であり、R41は好ましくはアルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基である。R44、R46は好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基である。
一般式(6−6)〜(6−8)中、R43、R45、R47、R48はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。a31は0〜5の整数を表し、好ましくは0または1であり、a32は0〜4の整数を表し、好ましくは0または1である。
a31が2以上の時、複数のR44は同じでも異なっても良く、a32が2以上の時、複数のR46は同じでも異なっても良い。
【0083】
次に、一般式(1−2)中、Rは置換基を表し(好ましい例はRに挙げた例に同じ)、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイルアミノ基、またはアルコキシカルボニルアミノ基であり、より好ましくは、アルキル基、アルケニル基、ハロゲン原子、アミノ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイルアミノ基、またはアルコキシカルボニルアミノ基である。
【0084】
a1は0〜4の整数を表し、好ましくは2〜3の整数を表す。a1が2以上の時、複数のRは同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良く、形成する環としては好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、シクロヘキセン環等が挙げられる。
【0085】
は水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応時にアニオンとして脱離可能な脱離基を表し、脱離基として好ましくはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基など(以上好ましい例はRに挙げた例に同じ)が挙げられる。
【0086】
一般式(1−2)で表される屈折率変調カプラーは下記一般式(6−9)または(6−10)のいずれかで表されることも好ましい。
【0087】
【化4】

【0088】
一般式(6−9)、(6−10)中、Xは一般式(1−2)と同義である。
一般式(6−9)、(6−10)中、R50、R52はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基(置換アミノ基を含む)またはヘテロ環基を表し、好ましくはアルキル基、またはアミノ基である。R49、R51はそれぞれ独立に置換基を表し(以上好ましい例はRに挙げた例に同じ)、R49は好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、アシルアミノ基、またはカルバモイルアミノ基を表し、R51はより好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、アシルアミノ基、またはアルコキシカルボニルアミノ基を表す。
a33は0〜3の整数を表し、好ましくは1または2であり、a34は0〜5の整数を表し、好ましくは0または1である。a33が2以上の時、複数のR49は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良く、形成する環としては好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、シクロヘキセン環等が挙げられる。a34が2以上の時、複数のR51は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良く、形成する環としては好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、シクロヘキセン環等が挙げられる。
【0089】
本発明の屈折率変調カプラーは、
A)発色反応
B)高屈折率である現像主薬酸化体とカップリング
のいずれかの方式、あるいはそれらの併用によってより大きな屈折率変調度が得られるものが好ましい。
【0090】
A)の発色反応を用いる方式の場合は、現像主薬酸化体との反応により生成する化合物がホログラム記録波長に吸収を有さないことが、高回折効率が得られる点で好ましい。
【0091】
ここで、本発明にて発色反応とは、200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光の領域にて、吸収スペクトル形が変化するような反応を示し、より好ましくは吸収スペクトルにおいてλmaxが長波長化、εが増大のいずれかが起こるような反応を示し、さらに好ましくはその両方が起こるような反応を示す。また、発色反応は200〜1000nmの波長領域で起こることがより好ましく、300〜800nmの波長領域で起こることがさらに好ましい。
【0092】
ここで、色素の屈折率は一般に、線形吸収極大波長(λmax)付近からそれより長波長な領域で高い値を取り、特にλmaxからλmaxより200nm程長波長な領域において非常に高い値を取り、色素によっては1.8を超え、場合によっては2を超えるような高い値をとる。その一方で、バインダーポリマー等の色素ではない有機化合物は通常1.4〜1.6程度の屈折率である。
よって、ホログラム露光により屈折率変調カプラーを発色させることは、吸収率差だけでなく、大きな屈折率差も好ましく形成できることがわかる。
【0093】
以下に一般式(1−1)または(1−2)で表される本発明の屈折率変調カプラーの好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0094】
【化5】

【0095】
【化6】

【0096】
【化7】

【0097】
次に前述のB)高屈折率な現像主薬酸化体とカップリングする方式について説明する。
【0098】
本発明のホログラム記録に用いる現像主薬について説明する。本発明における現像主薬とは、露光により潜像が形成されたハロゲン化銀粒子については速やかに還元して銀像を生成するのに対し、未露光のハロゲン化銀粒子は容易に還元できないような還元剤を意味し、更に化合物単独では、現像処理により生成する銀像以外ホログラム露光により生成した干渉縞に対応する屈折率変調を行うことができない化合物を意味する。また現像主薬酸化体とは、現像主薬が現像処理時にハロゲン化銀を金属銀に還元する代わりに自身が酸化されて生成する化学種を意味する。
本発明のホログラム記録方法に用いる現像主薬として好ましくは、一般式(4)、一般式(6)または一般式(7)にて表され、現像処理時にハロゲン化銀を金属銀に還元する代わりに自身が酸化される還元剤であり、かつその酸化体が屈折率変調カプラーと反応できる現像主薬である。
【0099】
【化8】

【0100】
一般式(4)中、X、Xはそれぞれ独立に−NR1718基または−OR19基を表し、R17、R18、R19はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基のいずれかを表し(以上好ましい例はRに挙げた例に同じ)、好ましくは水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。X、Xの少なくとも1つが−NR1718基である場合が好ましい。R、R10は水素原子または置換基を表し(以上好ましい例はRに挙げた例に同じ)、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、またはヒドロキシル基を表す。RとR10は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環としてはベンゼン環が好ましい。
a4は0〜5の整数を表し、a4が2以上の時、複数のR及びR10は同じでも異なっても良い。
【0101】
一般式(6)および一般式(7)において、Zはアシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、またはアリールオキシカルボニル基を表し、好ましくはカルバモイル基である。Zはカルバモイル基、アルコキシカルボニル基、またはアリールオキシカルボニル基を表し、好ましくはカルバモイル基である。
、Y、Y、Y、Yはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。ただし、Y、Y、Yのハメットの置換基定数σp値とY、Yのハメットの置換基定数σm値の和は0.80以上、3.80以下である。ハメットの置換基定数σp、σmについては、例えば稲本直樹著「ハメット則−構造と反応性−」(丸善)、「新実験化学講座14・有機化合物の合成と反応V」2605頁(日本化学会編、丸善)、仲矢忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、ケミカル・レビュー(91巻)165〜195頁(1991年)などの成書に詳しく解説されている。Aはヘテロ環基を表す。
【0102】
が表すアシル基としては炭素数1〜50が好ましく、より好ましくは炭素数は2〜40である。具体的な例としては、アセチル基、2−メチルプロパノイル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−オクタノイル基、2−ヘキシルデカノイル基、ドデカノイル基、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、4−ドデシルオキシベンゾイル基、2−ヒドロキシメチルベンゾイル基、3−(N−ヒドロキシ−N−メチルアミノカルボニル)プロパノイル基、が挙げられる。
、Zがカルバモイル基の場合は後に一般式(8)及び(9)にて、詳細に説明する。アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基としては、炭素数2〜50が好ましく、より好ましくは2〜40である。具体的な例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル基、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル基、2−ドデシルオキシフェノキシカルボニル基などが挙げられる。
【0103】
〜Yが置換基の場合、その例としては炭素数1〜50の直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル、メチル、エチル、プロピル、ヘプタフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシルなど)、炭素数2〜50の直鎖または分岐、鎖状または環状のアルケニル基(例えばビニル、1−メチルビニル、シクロヘキセン−1−イルなど)、炭素数2〜50のアルキニル基(例えばエチニル、1−プロピニルなど)、炭素数6〜50のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、アントリルなど)、炭素数1〜50のアシルオキシ基(例えばアセトキシ、テトラデカノイルオキシ、ベンゾイルオキシなど)、炭素数1〜50のカルバモイルオキシ基(例えばN,N−ジメチルカルバモイルオキシなど)、炭素数1〜50のカルボンアミド基(例えばホルムアミド、N−メチルアセトアミド、アセトアミド、N−メチルホルムアミド、ベンツアミドなど)、炭素数1〜50のスルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド、ドデカンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミドなど)、炭素数1〜50のカルバモイル基(例えばN−メチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−メシルカルバモイルなど)、炭素数0〜50のスルファモイル基(例えばN−ブチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)スルファモイルなど)、炭素数1〜50のアルコキシ基(例えばメトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、オクチルオキシ、t−オクチルオキシ、ドデシルオキシ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エトキシなど)、炭素数6〜50のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、4−メトキシフェノキシ、ナフトキシなど)、炭素数7〜50のアリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニルなど)、炭素数2〜50のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなど)、炭素数1〜50のN−アシルスルファモイル基(例えばN−テトラデカノイルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイルなど)、炭素数1〜50のアルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル、オクチルスルホニル、2−メトキシエチルスルホニル、2−ヘキシルデシルスルホニルなど)、炭素数6〜50のアリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、4−フェニルスルホニルフェニルスルホニルなど)、炭素数2〜50のアルコキシカルボニルアミノ基(例えばエトキシカルボニルアミノなど)、炭素数7〜50のアリールオキシカルボニルアミノ基(例えばフェノキシカルボニルアミノ、ナフトキシカルボニルアミノなど)、炭素数0〜50のアミノ基(例えばアミノ、メチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、アニリノ、モルホリノなど)、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、スルホ基、メルカプト基、炭素数1〜50のアルキルスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル、オクタンスルフィニルなど)、炭素数6〜50のアリールスルフィニル基(例えばベンゼンスルフィニル、4−クロロフェニルスルフィニル、p−トルエンスルフィニルなど)、炭素数1〜50のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオなど)、炭素数6〜50のアリールチオ基(例えばフェニルチオ、ナフチルチオなど)、炭素数1〜50のウレイド基(例えば3−メチルウレイド、3,3−ジメチルウレイド、1,3−ジフェニルウレイドなど)、炭素数2〜50のヘテロ環基(ヘテロ原子としては例えば窒素、酸素および硫黄などを少なくとも1個、好ましくは1〜9個含み、3〜12員環の単環もしくは縮合環で、例えば2−フリル、2−ピラニル、2−ピリジル、2−チエニル、2−イミダゾリル、モルホリノ、2−キノリル、2−ベンツイミダゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾオキサゾリルなど)、炭素数1〜50のアシル基(例えばアセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチルなど)、炭素数0〜50のスルファモイルアミノ基(例えばN−ブチルスルファモイルアミノ、N−フェニルスルファモイルアミノなど)、炭素数3〜50のシリル基(例えばトリメチルシリル、ジメチル−t−ブチルシリル、トリフェニルシリルなど)、またはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子など)が挙げられる。上記の置換基は更に置換基を有していてもよく、その置換基の例としてはここで挙げた置換基が挙げられる。またY、Y、Y、Y、Yは互いに結合して縮合環を形成しても良い。
【0104】
〜Yの好ましい例は、水素原子、シアノ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アシルチオ基またはヘテロ環基であり、Y〜Yのうちにこれらの基が2〜5個含まれることが好ましく、これらの基が3〜5個含まれることが更に好ましい。ここでヘテロ環の好ましい例としては、窒素を含む5〜8員環のヘテロ環が挙げられ、例えばピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2,4−チアジアゾールなどが挙げられる。
【0105】
一般式(7)において、Aはヘテロ環基を表す。ここで好ましいヘテロ環基は炭素数1〜50のヘテロ環基であり、ヘテロ原子としては例えば窒素、酸素、および硫黄原子などを1個以上9個以下を含み、飽和または不飽和の、3〜12員環(好ましくは3〜8員環)の、単環または縮合環であり、その具体例としてはフラン、ピラン、ピリジン、チオフェン、イミダゾール、キノリン、ベンツイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンツオキサゾール、ピリミジン、ピラジン、1,2,4−チアジアゾール、ピロール、オキサゾール、チアゾール、キナゾリン、イソチアゾール、ピリダジン、インドール、ピラゾール、トリアゾール、キノキサリンなどが挙げられる。ヘテロ環の好ましい例としては、窒素(好ましくは1〜4個の窒素)を含む5〜8員環のヘテロ環が挙げられ、例えばキナゾリン、キノキサリン、フタラジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾチアゾール、ベンツオキサゾール、ベンツイミダゾール、プテリジン、プリンなどが挙げられる。これらのヘテロ環基は置換基を有していてもよく、1個以上9個以下の電子求引性基を有しているものが好ましい。ここで電子求引性基とはハメットのσp値で正の値を有しているものを意味する。
【0106】
さらに、一般式(4)で表される現像主薬は、好ましくは一般式(5)にて表される。
【0107】
【化9】

【0108】
一般式(5)中、Xは一般式(4)と同義であり、R11は置換基を表し(好ましい例はRに同じ)、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、またはハロゲン原子を表し、より好ましくはアルキル基(メチル、エチル)、アルコキシ基(メトキシ)、またはハロゲン原子(Cl、Br、I)を表し、更に好ましくはメチル基を表す。a5は0〜4の整数を表し、好ましくは0または1を表し、より好ましくは1を表す。a5が2以上の時、複数のR11は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良く、形成する環としてはベンゼン環、シクロヘキセン環などが好ましい。
【0109】
一般式(6)および一般式(7)で表される現像主薬は、好ましくはそれぞれ一般式(8)および一般式(9)にて表される。
【0110】
【化10】

【0111】
一般式(8)において、A、Aはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Y、Y、Y、Y、Y10はそれぞれ独立に水素原子、シアノ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アシルチオ基、またはヘテロ環基を表す。ただし、Y、Y、Y10のハメットの置換基定数σp値とY、Yのハメットの置換基定数σm値の和は1.20以上、3.80以下である。一般式(9)において、A、Aは水素原子または置換基を表し、QはCと共に含窒素の5〜8員環のヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
【0112】
一般式(8)におけるA、A、一般式(9)におけるA、Aはそれぞ
れ独立に水素原子または置換基を表し、置換基の具体例としてはY〜Yにつ
いて述べたものと同じものが挙げられるが、好ましくは水素原子または炭素数1〜50の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜50の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜50の置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、更に好ましくはA、Aの少なくとも一方、およびA、Aの少なくとも一方は水素原子である。上記の基に置換される置換基としてはY〜Yで示される基を挙げることができる。
【0113】
一般式(9)において、QはCと共に含窒素の5〜8員環のヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。このQとCとから形成されるヘテロ環は一般式(7)のAと同義であり、好ましい例も同じである。
【0114】
さらに、上記一般式(4)〜(9)で表される現像主薬はホログラム記録材料に含まれても現像処理液に含まれても良いが、現像処理液に含まれることが好ましい。
【0115】
以下に一般式(4)〜(9)で表される本発明の現像主薬の好ましい例を挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0116】
【化11】

【0117】
【化12】

【0118】
本発明のホログラム記録材料の処理工程は、ハロゲン化銀写真感光材料の分野で通常用いられる白黒処理及びカラー処理の工程が適用できる。本発明のホログラム記録材料処理工程の好ましい具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
現像−漂白−定着−水洗−乾燥
現像−漂白−定着−水洗−安定−乾燥
現像−漂白−定着−安定−乾燥
現像−水洗−漂白−定着−安定−乾燥
現像−水洗−漂白−定着−水洗−乾燥
現像−水洗−漂白−定着−水洗−安定−乾燥
現像−水洗−漂白−水洗−定着−安定−乾燥
現像−水洗−漂白−水洗−定着−水洗−乾燥
現像−水洗−漂白−水洗−定着−水洗−安定−乾燥
また漂白と定着からなる脱銀工程は、漂白定着、漂白−漂白定着、漂白定着−定着のいずれでもよい。また現像の前工程として黒白現像、反転が行われても良い。
【0119】
本発明の乳化物は、水相中に油相が乳化し、油相中に界面活性剤が溶解しているO/W型乳化物である。成分は主に、カプラ−、オイルからなる有機相、界面活性剤、およびゼラチンを含む水層からなる。
【0120】
本発明の屈折率変調カプラ−オイル乳化物および/またはポリマー分散物として用いる油成分について説明する。一般式(1−1)、(1−2)の屈折率変調カプラーのオイル乳化および/またはポリマー分散は以下の方法により可能である。(1−1)、(1−2)化合物をオイル、すなわち実質的に水不溶で沸点が160℃以上の高沸点溶媒に溶解した液を親水性コロイド溶液に加えて分散する方法である。この高沸点溶媒としては、米国特許第2322027号に記載されているような、例えば、フタル酸アルキルエステル(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、リン酸エステル(ジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジオクチルブチルフォスフェート)、クエン酸エステル(例えばアセチルクエン酸トリブチル)、安息香酸エステル(例えば安息香酸オクチル)、アルキルアミド(例えばジエチルラウリルアミド)、脂肪酸エステル類(例えばジブトキシエチルサクシネート、ジエチルアゼレート)、トリメシン酸エステル類(例えばトリメシン酸トリブチル)等が使用できる。また、沸点約30〜150℃の有機溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルのような低級アルキルアセテート、プロピオン酸エチル、2級 ブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、β−エトキシエチルアセテート、メチルセロソルブアセテートや水に溶解しやすい溶媒、例えばメタノールやエタノール等のアルコール類を用いることもできる。ここでカプラーと高沸点溶媒の使用比率としてはカプラー/高沸点溶媒の重量比で10〜1/10が好ましい。
【0121】
乳化物調製時に用いる界面活性剤について詳細に説明する。乳化物調製時に用いられる界面活性剤の質量が、前記記載の屈折率変調カプラ−の質量との比率で、乳化物中に8%以上50%以下が好ましく、より好ましくは10%以上40%以下、更に好ましくは10%以上30%以下存在することが好ましい。
本発明で使用する界面活性剤は、特開2005−49542に記載された界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤として好ましいのは、分子中にアニオン基を少なくとも1個有する化合物である。アニオン基としては、例えばカルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、スルフィン酸アニオン、硫酸アニオン、亜硫酸アニオン、リン酸アニオン、亜リン酸アニオン、ホスホン酸アニオン、ホスフィン酸アニオン等が挙げられるが、好ましくはスルホン酸アニオン、又は硫酸アニオンである。具体的にはスルホン酸アニオン、又は硫酸アニオンを少なくとも1個有する化合物である。好ましくはスルホン酸のアニオン基、または硫酸モノエステルのアニオン基を少なくとも一つ有する化合物である。より好ましくは、スルホン酸のアニオン基、または硫酸モノエステルのアニオン基を少なくとも一つ有し、さらに置換基を有していてもよい少なくとも一つの芳香族基を有する化合物である。
スルホン酸のアニオン基、または硫酸モノエステルのアニオン基を少なくとも一つ有する化合物として、好ましくは一般式(I)又は(II)で表される化合物が挙げられる。
【0122】
【化13】

【0123】
式中、R101 、R102 は置換基を有していても良いアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。アルキル基としては、例えば炭素数1〜20個のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基等を好ましく挙げることができる。
シクロアルキル基としては単環型でも良く、多環型でも良い。単環型としては炭素数3〜8個のものであって、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基を好ましく挙げることができる。多環型としては例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、a−ピネル基、トリシクロデカニル基等を好ましく挙げることができる。
アルケニル基としては、例えば炭素数2〜20個のアルケニル基であって、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基を好ましく挙げることができる。
アラルキル基としては、例えば炭素数7〜12個のアラルキル基であって、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を好ましく挙げることができる。
アリール基としては、例えば炭素数6〜15個のアリール基であって、具体的には、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、9,10−ジメトキシアントリル基等を好ましく挙げることができる。
【0124】
また置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(F、Br、Cl、I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミド基、エステル基、アシロキシ基、カルボキシ基、カルボン酸アニオン基、又はスルホン酸アニオン基等が挙げられる。
【0125】
これらの置換基におけるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ステアリルオキシ基、メトキシエトキシ基、ポリ(エチレンオキシ)、ポリ(プロピレンオキシ)等の炭素数1〜40個、好ましくは炭素数1〜20個のものが挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜18個のものが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜24個のものが挙げられる。アミド基としては、アセトアミド基、プロピオン酸アミド基、ドデカン酸アミド基、パルチミン酸アミド基、ステアリン酸アミド基、安息香酸アミド基、ナフトイック酸アミド基等の炭素数2〜24個のものが挙げられる。アシロキシ基としては、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等の炭素数2〜20個のものが挙げられる。エステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ヘキシルエステル基、オクチルエステル基、ドデシルエステル基、ステアリルエステル基等の炭素数1〜24個のものが挙げられる。置換基は、上記置換基の2以上の組合せからなるものであってもよい。また、上記置換基は更に置換基を有していてもよい。
【0126】
また、式(I)または式(II)で表される化合物の中で、下記式(I−A)と式(I−B)で表される化合物が本発明の効果の点において好ましい。
【0127】
【化14】

【0128】
(上記式中、R103 、R105 はそれぞれ、直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基及び/または炭素原子数1〜20の(アルキレン−O−)基(エチレンオキシ、プロピレンオキシ)を表し;R104、R106 は直鎖または分岐鎖の炭素数1〜20のアルキル基を表し;p、qはそれぞれ独立に1又は2を表し;X 、Xはそれぞれ単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、好ましくは単結合である。;r、sはそれぞれ0〜100(好ましくは0〜30)の整数を表し、但しr及びsが2以上の場合には、R103またはR105 は2種類以上の基から選択されてもよい)。
【0129】
以下に一般式(I)、(II)で表される化合物を例示するが、本発明がこれにより限定されるものではない。
【0130】
【化15】

【0131】
【化16】

【0132】
【化17】

【0133】
【化18】

【0134】
【化19】

【0135】
【化20】

【0136】
なお、上記具体例中のx、yは各々エチレンオキシ鎖、及びプロピレンオキシ鎖の繰り返し数を表し、1〜20の整数(それぞれ平均値)を表す。
一般式(I)、(II)で表される化合物の乳化物中の添加量(全量)は、屈折率変調カプラ−に対して、10質量%以上40質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上30質量%以下を添加することが効果的である。
一般式(I)、(II)で表される化合物は市場において、一般に入手することができる。市販品の例として、旭電化製、花王石鹸製、三洋化成製、新日本理化製、第一工業製薬製、竹本油脂製、東邦化学製、日本油脂製などのものが挙げられる。
【0137】
乳化分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー撹拌方式、インライン撹拌方式、コロイドミル等のミル方式、超音波方式など公知の装置を用いることができるが、本発明においては、超高圧乳化分散装置が好ましく、その中でも、超高圧ホモジナイザーが特に好ましい。超高圧分散とは、5mm以下のノズルから超高圧で噴射した乳化物を高速衝突させることにより、衝撃力、せん断力およびキャビテ−ションなどによって原料粒子が微細化することである。
【0138】
前記超高圧ホモジナイザーは、米国特許第4533254号、特開平6−47264号等に詳細な機構が記載されているが、市販の装置としては、ゴーリンホモジナイザー(A.P.VGAULININC.)、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDEXINC.)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン)等が挙げられる。
【0139】
また、近年になって米国特許第5720551号に記載されているような、超高圧ジェット流内で微粒子化する機構を備えた超高圧ホモジナイザーは本発明の乳化分散に特に有効である。この超高圧ジェット流を用いた乳化分散装置の例として、DeBEE2000(BEEINTERNATIONALLTD.)が挙げられる。
【0140】
前記超高圧乳化分散装置を用いて乳化分散する際の圧力としては、50MPa以上(500bar以上)が好ましく、60MPa以上(600bar以上)がより好ましく、180MPa以上(1800bar以上)が更に好ましい。本発明においては、前記乳化分散の際、例えば、撹拌乳化機で乳化した後、超高圧ホモジナイザーを通す等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。
【0141】
本発明の乳化物の平均粒径は100nm以下であるため、100nm以上の乳化物に比べて、入射光に対する光散乱を抑制することができる。散乱光を抑制することから、効率よく光を透過するため回折効率および解像度が向上する。
【0142】
本発明のホログラム記録材料およびホログラム記録材料の処理(記録)方法は、体積位相型ホログラム記録に用いることが好ましい。
【0143】
本発明のホログラム記録材料は、書き換えできない方式であることが好ましい。
なおここで、書き換えできない方式とは、不可逆反応により記録される方式であり、一度記録されたデータは、さらに上書き記録して書き換えしようとしても書き換えされることなく保存できる方式を示す。したがって重要でかつ長期保存が必要なデータの保存に適する。ただし無論、まだ記録されていない領域に新たに追記して記録していくことは可能である。そのような意味で、一般には「追記型」または「ライトワンス型」と呼ばれる。
【0144】
本発明のホログラム記録に用いる光は好ましくは波長200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかであり、より好ましくは波長300〜700nmの紫外光または可視光であり、さらに好ましくは400〜700nmの可視光である。
さらに、本発明の化学作用放射線としては、コヒーレントな(位相及び波長のそろった)レーザー光が好ましい。用いられるレーザーとしては、固体レーザー、半導体レーザー、気体レーザー、液体レーザーのいずれでも良いが、好ましいレーザー光としては例えば、532nmのYAGレーザー2倍波、355nmのYAGレーザー3倍波、400〜415nm付近のGaN等の半導体レーザー、650〜660nm付近の半導体レーザー、488または515nmのArイオンレーザー、633nmのHe−Neレーザー、647nmのKrイオンレーザー、694nmのルビーレーザーや636、634、538、534、442nmのHe−Cdレーザーなどが挙げられる。
また、ナノ秒やピコ秒オーダーのパルスレーザーを用いることも好ましい。
本発明のホログラム記録材料を光記録媒体に使用する場合は、532nmのYAGレーザー2倍波、400〜415nm付近のGaN等半導体レーザー、650〜660nm付近の半導体レーザー等を用いることが好ましい。
ホログラム露光(記録)に用いる光の波長に対し、ホログラム再生に用いる光の波長は同じであるか、長波長であることが好ましく、同じであることがより好ましい。
【0145】
なお、干渉縞記録の際の屈折率変調量は0.00001〜0.5であることが好ましく、0.0001〜0.3であることがより好ましい。なお、ホログラム記録材料の膜厚が厚い程屈折率変調量は少ない方が好ましく、ホログラム記録材料の膜厚が薄い程屈折率変調量は多い方が好ましい。
【0146】
ホログラム記録材料の(相対)回折効率ηは以下の式で与えられる。
η=Idiff/Io (式1)
ここでIoは回折されない透過光の強度であり、Idiffは回折(透過型)または反射(反射型)された光強度である。回折効率は0〜100%のいずれかの値を取るが、30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが最も好ましい。
【0147】
ホログラム記録材料の感度は、一般に単位面積当たりの露光量(mJ/cm
)で表され、この値が小さい程感度が高いと言える。しかし、どの時点の露光量をもって感度とするかは、文献(特許文献を含む)によってまちまちであり、記録(屈折率変調)のはじまる露光量とする場合、最大回折効率(屈折率変調)を与える露光量とする場合、最大回折効率の半分の回折効率を与える露光量とする場合、露光量Eに対し、回折効率の傾きが最大となる露光量とする場合などある。
また、クーゲルニックの理論式より、ある回折効率を与えるための屈折率変調量Δnは膜厚dに反比例する。つまり、ある回折効率を与えるための感度は膜厚によっても異なり、膜厚dが厚くなる程少ない屈折率変調量Δnで済む。したがって、膜厚等の条件を揃えない限り、感度は一概には比較することはできない。
本発明においては、感度は「最大回折効率の半分の回折効率を与える露光量(mJ/cm)」と定義する。
本発明のホログラム記録材料の感度は50mJ/cm以下であることが好ましく、20mJ/cm以下であることがより好ましく、10mJ/cm以下であることがさらに好ましく、1mJ/cm以下であることが最も好ましい。
【0148】
本発明のホログラム記録材料を光記録媒体としてホログラフィックメモリに用いる際は、DMDやLCDといった空間光変調素子(SLM)を用いて2次元デジタル情報(信号光と呼ぶ)を数多く記録していくことが好ましい。記録には記録密度を上げるために多重記録を用いることが好ましく、多重記録の方法には、角度多重、位相多重、波長多重、シフト多重などの多重記録を行う方法があるが、角度多重記録またはシフト多重記録を用いることが好ましい。また、再生される2次元データの読み出しにはCCDやCMOSが好ましく用いられる。
【0149】
本発明のホログラム記録材料は、光記録媒体としてホログラフィックメモリに用いる際は、容量(記録密度)を向上させるために多重記録を行うことが必須である。その際、10回以上の多重記録を行うことがより好ましく、50回以上の多重記録を行うことがさらに好ましく、100回以上の多重記録を行うことが最も好ましい。さらに、多重記録の際の露光量がいずれの多重記録の際も終始一定のまま多重記録できることが記録システム簡略化、S/N比向上等の点でより好ましい。
【0150】
なお、本発明のホログラム記録材料は、保存時ホログラム記録材料は遮光カートリッジ内に保存されていることが好ましい。
【0151】
また、本発明のホログラム記録材料が、記録光及び再生光以外の紫外光、可視光、赤外光の波長域の一部をカットすることができる遮光フィルターをホログラム記録材料の表面、裏面またはその両面に備え付けていることも好ましい。
【0152】
本発明のホログラム記録材料を光記録媒体に用いる際は、光記録媒体はディスク状でもカード状でもテープ状であっても良く、その他いかなる形状であっても良い。
【0153】
本発明のホログラム記録材料は、3次元ディスプレイ(イメージング)ホログラム、光記録媒体(ホログラフィックメモリ)、特にROM用光記録媒体、ホログラフィック光学素子(HOE、例えば、自動車搭載用のヘッドアップディスプレイ(HUD)、光ディスク用ピックアップレンズ、ヘッドマウントディスプレイ、液晶用カラーフィルター、反射型液晶反射板、レンズ、回折格子、干渉フィルター、光ファイバー用結合器、ファクシミリ用光偏光器、建築用窓ガラス)、書籍、雑誌等の表紙、POPなどのディスプレイ、ギフト、偽造防止用のセキュリティ目的としてクレジットカード、紙幣、包装などに好ましく用いることができる。
[実施例]
以下に実施例をもって本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0154】
<乳化物調製>
屈折率変調カプラ−C−3、158g、高沸点溶媒(リン酸エステル トリ2−エチルヘキシル)60g及び酢酸エチル252gに溶解し、この液を界面活性剤I−46、19g含む10%ゼラチン水溶液2554gに添加し、超音波で乳化分散し、粗分散物を得た。(株)スギノマシン社製のアルティマイザ−により、245MPaの超高圧下、乳化物の温度を40〜43℃に保ち、超高圧分散を行った。超高圧分散は、約3リットルの乳化物溶液に対して10パス行った。1パスは約9分である。得られた分散物をS−1とした。
【0155】
<ハロゲン化銀乳剤の調製>
KBr 0.28g、平均分子量100000のフタル化ゼラチン33.3gを含む水溶液1660mLを30℃に保ち撹拌した。二酸化チオ尿素0.04gを添加した後、pHを6.0に合わせた。AgNO(96.0g)水溶液800mlとKIを3モル%含むKBr水溶液をダブルジェット法で10分間に渡り添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して+20mVに保った。温度を28℃に降温した後、通常の水洗を行った。平均分子量100000の脱イオン骨ゼラチン21gを添加した後、40℃でPHを6.0に調整した。その後、増感色素I、IIを40:60のモル比率でハロゲン化銀0.01モルに対して1×10−4モル添加した。本実験において増感色素は、特開平11−52507号に記載の方法で作成した固体微分散物として使用した。すなわち、硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43質量部に溶解し、増感色素13質量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバー翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。
60℃に昇温し、ハロゲン化銀0.01モルに対して、塩化金酸(5.5×10−4モル)、チオシアン酸カリウム(5×10−4モル)、チオ硫酸ナトリウム(7.2×10−4モル)およびN,N−ジメチルセレノ尿素(4.8×10−4モル)を添加し最適に化学増感を施した。下記かぶり防止剤I(1.0×10−3モル)を添加して化学増感を終了した。
本乳剤aは数平均円相当径30nm、円相当径の変動係数16%の丸みを帯びた立方体粒子であった。本粒子は3モル%の沃化銀を含有する臭化銀粒子であり、沃化銀含有率の粒子間分布の変動係数は12%の粒子である。
【0156】
【化21】

【0157】
前記乳化分散物と前記乳剤aとを混合し、乳剤Aを作成した。下塗り層を設けてある厚み200μmの三酢酸セルロースフィルム支持体に、下記表−1に示すような塗布条件で上記の化学増感を施した乳剤を塗布し、塗布試料を作成した。
【0158】
【表1】

【0159】
バック層は以下の内容にて、上記塗布試料に塗布した。
【0160】
<導電層塗布液の調製とその塗布>
ゼラチン水溶液に下記化合物を添加し、ゼラチン塗布量が0.06g/mとなるように塗布した。
SnO/Sb(9/1質量比、平均粒径0.25μ) 186mg/m
ゼラチン(Ca++含有量3000ppm) 60mg/m
p−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 13mg/m
ジヘキシル−α−スルホサクシナートナトリウム 12mg/m
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 10mg/m
化合物−A 1mg/m
【0161】
<バック層塗布液の調製とその塗布>
ゼラチン水溶液に下記化合物を添加し、ゼラチン塗布量が1.94g/mとなるように塗布した。
ゼラチン(Ca++含有量30ppm) 1.94mg/m
ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径3.4μ) 15mg/m
p−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 7mg/m
ジヘキシル−α−スルホサクシナートナトリウム 29mg/m
N−パーフルオロオクタンスルホニル−N−プロピル
グリシンポタジウム 5mg/m
硫酸ナトリウム 150mg/m
酢酸ナトリウム 40mg/m
化合物−E(硬膜剤) 105mg/m
化合物−C 15mg/m
【0162】
【化22】

【0163】
このように作成したホログラム記録材料について、図1に示す透過型ホログラム記録用の2光束光学系により、光源としてYAGレーザー2倍波(532nm)を用いて露光した。物体光と参照光のなす角は30度である。ビームは0.6cmの直径と1μW/cmの強度とを有しており、露光時間を5〜100秒の範囲で5秒おきに(照射エネルギーにして5〜100μJ/cmの範囲)変化させて露光した。露光したホログラム記録材料を下記処理工程に従って処理したホログラムを試料S−1とし、YAG532nmのうち参照光のみを照射して回折効率(相対回折効率、回折光/透過光)を測定した。
【0164】
〔処理工程〕
処理工程 温度 時間
現像 38.5℃ 45秒
漂白定着 38.0℃ 45秒
水洗 38.0℃ 10秒
乾燥 80℃
【0165】
各処理液の組成は以下の通りである。
[発色現像液]
水 800ml
トリイソプロパノールアミン 8.8g
エチレンジアミン4酢酸 4.0g
亜硫酸ナトリウム 0.10g
4,5−ジヒドロキシベンゼン−
1,3−ジスルホン酸ナトリウム 0.50g
ジナトリウム−N,N−ビス(スルホナート
エチル)ヒドロキシルアミン 8.5g
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−
(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン
・3/2硫酸塩・モノハイドレード 4.8g
炭酸カリウム 26.3g
水を加えて全量 1000ml
pH(25℃、硫酸とKOHで調整) 10.15g
【0166】
[漂白定着液]
水 400mL
チオ硫酸アンモニウム(750g/mL) 110mL
エチレンジアミン4酢酸鉄(III)アンモニウム 42g
エチレンジアミン4酢酸 5g
硫酸アンモニウム 12g
イミダゾール 10g
エチレンジアミン4酢酸 9.0g
亜硫酸アンモニウム 45g
m−カルボキシベンゼンスルフィン酸 8g
水を加えて全量 1000mL
pH(25℃で硝酸とアンモニア水で調整) 6.50
【実施例2】
【0167】
実施例1の屈折率変調カプラ−C−3をC−6に代え、界面活性剤I−46を38g使用して乳化分散させて乳化物を調製した。微粒子化工程にて、アルティマイザ−により超高圧分散を行ったものをS−2とした。
【0168】
[比較例]
実施例1塗布液調製では同じ材料を用いて、超高圧乳化を行わないで超音波で粗分散したものを比較用乳化物とした。
【0169】
[評価]
<乳化物の油滴の平均粒径>
作成した乳化物の10%水溶液1mlを、蛋白質分解酵素アクチナーゼE10質量%水溶液10mlに加えた。40℃、5分でゼラチンを分解し、測定溶液を作成した。この測定溶液を堀場製LB−500を用いた動的光散乱(DLS)測定により、乳化物の油滴の平均粒径を計測した。結果を表2に記す。
【0170】
【表2】

【0171】
<感材の透過スペクトルの測定>
実施例乳化物S−1、S−2及び比較用乳化物を含む未露光ホログラム感材の透過スペクトルを測定した。記録波長である532nmにおける各光透過率を表3に記す。
【0172】
【表3】

【0173】
表2から、超高圧分散することで、乳化物の油滴が半分以下に小さくなっていることが分かる。さらに、表3から光透過は、比較例では50%しか透過していないのに対して、本発明のホログラムS−1およびS−2の光透過率は70%以上も透過していることが分かる。即ち、超高圧乳化を行い乳化物の油滴の平均粒径を小さくすることで、光散乱が抑制されていることが分かる。また、各試料について回折効率を測定した結果、試料1および2の方が3(比較例)よりも大きいことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】ホログラム露光用の2光束光学系を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0175】
10 YAGレーザー
12 レーザービーム
14 鏡
20 ビームスプリッター
22 ビームセグメント
24 鏡
26 空間フィルター
28 試料
30 ホログラム記録材料
38 回転ステージ
40 ビームエキスパンダー
42 物体光
44 参照光
46 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が100nm以下である乳化物粒子を含むことを特徴とするハロゲン化銀ホ
ログラム記録材料。
【請求項2】
前記記載の乳化物粒子が、現像処理時に現像主薬酸化体とのカップリング反応により屈折率を変調できる屈折率変調カプラーを含むことを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀ホログラム記録材料。
【請求項3】
前記記載の屈折率変調カプラ−が下記一般式(1−1)または(1−2)で表されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハロゲン化銀ホログラム記録材料。
【化1】

一般式(1−1)中、R、Rはそれぞれ独立に置換基を表し、RとRは互いに連結して環を形成しても良く、Xは水素原子または現像主薬とのカップリング反応時にアニオンとして脱離可能な脱離基を表す。
一般式(1−2)中、Rは置換基を表し、aは0〜4の整数を表す。aが2以上の時、複数のRは同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良い。Xは水素原子または現像主薬とのカップリング反応時にアニオンとして脱離可能な脱離基を表す。
【請求項4】
乳化物調製時に用いられる界面活性剤の質量が、前記記載の屈折率変調カプラ−の質量との比率で、乳化物中に10%以上存在することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀ホログラム記録材料。

【図1】
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【公開番号】特開2008−250230(P2008−250230A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94811(P2007−94811)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】