説明

ホワイトソース

【課題】本発明の目的は、高温加熱処理後や冷凍処理後においても、なめらかさが保持されたホワイトソースを提供すること。
【解決手段】グリセリンコハク酸脂肪酸エステルおよびHLBが7より大きいショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とするホワイトソース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホワイトソースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホワイトソースは、小麦粉をバターやマーガリンなどの油脂で加熱調理してホワイトルーを調製し、これに牛乳などの乳製品を加えてルーを溶きのばしながら加熱することにより作られる。そして前記ホワイトソースに各種の調味料、具材、香辛料などを加えて各種料理、例えばクリームコロッケ、グラタン、ドリア、クリームシチュー、パスタソースなどの料理に加工されている。ホワイトソースやホワイトソースを用いて加工された料理は、レトルト殺菌のような高温加熱殺菌処理や、冷凍処理して長期保存を可能にして流通しているが、これらの処理を行うと従来ホワイトソースが持っていたなめらかな食感が損なわれるという問題点があった。
【0003】
ホワイトソースのなめらかさを保つ為の方法として、例えば、ホエータンパク質、未変性乳タンパク質、修飾したカゼインタンパク質からなる群から選ばれる1種又は2種以上のタンパク質を1〜15重量%含有し、かつレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、HLB7以下の蔗糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を0.05〜1重量%含有することを特徴とする水中油型油脂乳化組成物(特許文献1)、ι−カラギーナン及び/またはλ−カラギーナン、並びにショ糖脂肪酸エステルを含有するレトルト処理ホワイトソース(特許文献2)、ホワイトソース を製造するに際し、油脂含量を0.5〜10質量%に調整し、かつジアセチル酒石酸モノステアリン酸モノグリセリドおよび/またはコハク酸モノステアリン酸モノグリセリドを0.05〜1質量%含有することを特徴とする、ホワイトソース 類の製造法(特許文献3)、が提案されている。
しかし、上記方法では充分な効果が得られず、高温加熱処理後や冷凍処理後でもなめらかな食感を有するホワイトソースが求められていた。
【0004】
【特許文献1】特開平8−332025号公報
【特許文献2】特開2000−157228号公報
【特許文献3】特開2002−272428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高温加熱処理後や冷凍処理後においても、なめらかさが保持されるホワイトソースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ホワイトソースを調理する際、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルを添加することにより、ホワイトソースやホワイトソースを用いた加工食品を高温加熱処理または冷凍処理した後も、なめらかさを保持したホワイトソースを得ることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルおよびHLBが7より大きいショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とするホワイトソース、からなっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のホワイトソースは、高温加熱処理後や冷凍処理後でもなめらかな物性が保持される。本発明のホワイトソースは各種料理に用いられ、例えば、クリームコロッケ、グラタン、ドリア、ラザニア、シチュー、クリームソース、コーンスープ、ポタージュスープ、クラムチャウダーおよびパスタソースなどを例示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で言うところのホワイトソースとは、穀粉類や澱粉と油脂とを加熱してルーを調製し、これに乳製品を添加してルーを溶きのばしたものである。
【0009】
上記穀粉類としては、一般にホワイトソースの原料となり得る穀粉類であれば特に制限されず、例えば、小麦粉(例えば、強力粉、薄力粉、準強力粉、中力粉等)、大麦粉、ライ麦粉などが挙げられ、好ましくは小麦粉が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0010】
上記澱粉としては、一般にホワイトソースの原料となり得る澱粉類であれば特に制限されず、例えば、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉または、これらを原料とする加工澱粉などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0011】
上記油脂としては、食用可能な油脂であれば特に制限はなく、例えば大豆油、なたね油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、落花生油、オリーブ油などの植物油脂とその硬化油脂などや、乳脂(バター、バターオイルなど)、牛脂、ラードなどの動物油脂とその硬化油脂などが挙げられる。
【0012】
上記乳製品としては、一般にホワイトソースの原料となり得る乳製品であれば特に制限されず、例えば、牛乳、全脂練乳、脱脂練乳、生クリーム、全脂粉乳、脱脂粉乳又はこれらの加工品などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0013】
本発明に用いられるグリセリンコハク酸脂肪酸エステルは、通常グリセリンモノ脂肪酸エステルと無水コハク酸(またはコハク酸)との反応、若しくはグリセリンとコハク酸と脂肪酸との反応など自体公知の方法により得ることができる。
【0014】
グリセリンコハク酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など)または不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸など)などが挙げられ、好ましくは炭素数16〜18の飽和または不飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数16〜18の飽和脂肪酸であり、さらに好ましくはパルミチン酸および/またはステアリン酸を約70質量%以上含有する脂肪酸の混合物である。
【0015】
グリセリンコハク酸脂肪酸エステルの製法の概略は以下の通りである。例えば、グリセリンモノ脂肪酸エステルを溶融し、これに無水コハク酸を加え、温度120℃前後(約110〜130℃)で約90分間反応する。グリセリンモノ脂肪酸エステルと無水コハク酸との比率は質量比で約1/1〜1/2が好ましい。さらに、反応中は生成物の着色、臭気を防止するために、反応器内を不活性ガスで置換するのが好ましい。得られたグリセリンモノ脂肪酸エステルと無水コハク酸との反応物は、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルの他に、コハク酸、未反応のグリセリンモノ脂肪酸エステル、その他を含む混合物である。グリセリンコハク酸脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムB−10(製品名;理研ビタミン社製)、サンソフトNo.681SPV(製品名;太陽化学社製)およびステップSS(製品名;花王社製)などが商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
本発明のホワイトソース100質量%中のグリセリンコハク酸脂肪酸エステルの含有量は、通常約0.04〜2.0質量%、好ましくは0.04〜1.0質量%である。
【0016】
本発明で用いられるショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖と脂肪酸とのエステル化生成物であり、その構成脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など)および不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸など)が挙げられ、好ましくは炭素数16〜18の飽和脂肪酸であり、より好ましくはパルミチン酸および/またはステアリン酸を約70質量%以上含有する脂肪酸の混合物である。
【0017】
本発明で用いられるショ糖脂肪酸エステルとしては、HLBが約7より大きいものが好ましく、HLBが約11以上のものが更に好ましい。上記HLBを有するショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、リョートーシュガーエステルS−970(HLB9;三菱化学フーズ社製)、リョートーシュガーエステルS−1170(HLB11;三菱化学フーズ社製)、DKエステルF−110(HLB11;第一工業製薬社製)、DKエステルF−140(HLB13;第一工業製薬社製)、リョートーシュガーエステルP−1570(HLB15;三菱化学フーズ社製)、DKエステルF−160(HLB15;第一工業製薬社製)、リョートーシュガーエステルS−1670(HLB16;三菱化学フーズ社製)などが商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
ここでHLBは、製造メーカーが公表している数値を採用することができる。
【0018】
本発明のホワイトソース100質量%中のショ糖脂肪酸エステルの含有量は、通常約0.01〜1.0質量%、好ましくは約0.01〜0.5質量%である。
【0019】
本発明のホワイトソースの製造方法に特に制限はないが、好ましい態様の製品は、例えば以下の工程(1)〜(2)を実施することにより製造できる。
工程(1):
加熱した油脂に、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルとHLBが7より大きいショ糖脂肪酸エステルとを混合した穀粉類および/又は澱粉を加え約4〜10分間焦さないように加熱混合してルーを作製する。
工程(2):
(1)のルーに温めた牛乳および水、調味料、香辛料などを加え、ルーを伸ばし終えた後、90℃になるまで加熱混合しホワイトソースを得る。
【0020】
本発明のホワイトソースは、高温加熱耐性のある包材(レトルトパウチなど)に詰め、高温加熱を行って高温加熱処理することができる。高温加熱処理条件は、包装形態やホワイトソース内容量や粘度によって異なるが、例えば、約120℃で約20〜50分間が例示される。
本発明のホワイトソースは、冷凍耐性のある包材に詰め、冷凍することにより冷凍処理することができる。冷凍処理条件は包装形態やホワイトソース内容量や粘度によって異なるが、約−10〜−40℃などの各温度帯が例示される。
【0021】
上記工程(1)のルーや(2)のホワイトソースの工業的製造には、例えば攪拌機、加熱用のジャケットを備えた通常の平釜を用いることができる。
【0022】
本発明のホワイトソースには、本発明の目的を阻害しない範囲で他の任意の成分を含んでも良い。例えば増粘剤、酸化防止剤、pH調整剤、香料、カゼイン、ホエーたん白、食塩、糖類などが挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下に本発明を製造例および試験例に基づいて、より具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
≪ホワイトソースの試作≫
[製造例1]
バター(商品名:無塩バター;筑波乳業社製)59.5gを溶解し、小麦粉(商品名:バイオレット;日清製粉社製)58.8g、小麦でん粉(商品名:鶴;新進社製)26.6g、表1に記載の乳化剤A2.8gと乳化剤B0.7gを加え5分間かけて加熱混合してホワイトルーを作製した。その後にカゼインナトリウム(商品名:EMLV;DMVインターナショナル社製)9.1g、食塩4.2g、約40℃にあたためた牛乳366.8g及び水175.0gを加えて10分間混合しながら約90℃まで加熱し、ホワイトソース(実施例品1)700gを得た。
[製造例2]
製造例1に記載の乳化剤A2.8gとB0.7gに替え、表1に記載の乳化剤A3.5gを使用したこと以外は、製造例1と同様に実施し、ホワイトソース(比較例品1)700gを得た。
[製造例3]
製造例1に記載の乳化剤A2.8gとB0.7gに替え、表1に記載の乳化剤B3.5gを使用したこと以外は、製造例1と同様に実施し、ホワイトソース(比較例品2)700gを得た。
[製造例4]
製造例1に記載の乳化剤B0.7gに替え、表1に記載の乳化剤C0.7gを使用したこと以外は、製造例1と同様に実施し、ホワイトソース(比較例品3)700gを得た。
[製造例5]
製造例1に記載の乳化剤A2.8gとB0.7gを加えない以外は、製造例1と同様に実施し、ホワイトソース(対象品1)700gを得た。
【0025】
製造例1〜5をまとめて表1に示した。
【0026】
【表1】

【0027】
≪高温加熱処理と冷凍処理≫
製造例1〜5で得られたホワイトソース(実施例品1、比較例品1〜3、対象品1)は、以下の方法で高温加熱処理、および冷凍処理を行った。
【0028】
[高温加熱処理方法]
各ホワイトソース130gを包材に封入し、120℃30分間の条件で高温加熱した後常温で7日間保存して高温加熱処理したホワイトソースを得た。
【0029】
[冷凍処理方法]
各ホワイトソース130gを包材に封入し、−30℃の冷凍庫で7日間保存して冷凍処理したホワイトソースを得た。
【0030】
≪高温加熱処理および冷凍処理したホワイトソースの評価方法≫
[測定方法]
得られた高温加熱処理したホワイトソース、および冷凍処理したホワイトソースを熱湯中で5分間加熱した後、直径6.0cm、高さ5cm、容量100mlのプラスチック製カップ型容器にホワイトソースを移し、5℃に設定された恒温槽内で30分間保持した。その容器内のホワイトソースをテクスチャーアナライザー(型式:TA・XT・pius;英弘精機社製)で応力緩和測定用アダプター(注入速度6.0cm/min、2.0cm注入)を用いて最大荷重の測定を行った。その後、ホワイトソースの一部を口にして物性を確認した。
【0031】
ここで、最大負荷とはホワイトソースを押したときにホワイトソースから受ける反発力の最大値であり、最大負荷が高いほどホワイトソースは硬く、最大負荷が低いとホワイトソースはやわらかいことを示す。
【0032】
[結果]
高温加熱処理したホワイトソースの最大荷重測定結果と、ホワイトソースの物性の確認を表2に示す。また、冷凍処理したホワイトソースの最大荷重測定結果と、ホワイトソースの物性の確認を表3に示す。
【0033】
【表2】


実施例品1の最大負荷の数値は、対象品1、比較例品1〜3よりも低く、なめらかであることを示した。
ホワイトソースの物性確認でも実施例品1はなめらかであるが、比較例品1〜3はやや硬くなめらかでなかった。
【0034】
【表3】


実施例品1の最大負荷の数値は、対象品1、比較例品1〜3よりも低く、なめらかであることを示した。
ホワイトソースの物性確認でも実施例品1はなめらかであるが、比較例品1〜3はやや硬くなめらかでなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンコハク酸脂肪酸エステルおよびHLBが7より大きいショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とするホワイトソース。