説明

ホンシメジの人工栽培方法

【課題】安価な培地原料を用いてホンシメジを高収量でかつ、発生室移動後の所要日数を短縮して発生させることを可能にする、ホンシメジの商業的人工栽培方法を提供すること。
【解決手段】トウモロコシの実類をその他の培地基材と混合する工程を包含するホンシメジの人工栽培用培養基の調製方法。前記方法において、トウモロコシの実類をその他の培地基材に対して乾燥重量比で3分の2以上混合することが好ましい。上記実類とは、未加工の実、又は実の加工物を意味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホンシメジ( Lyophyllum shimeji )の人工栽培用培養基及びこれを用いたホンシメジの人工栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホンシメジは10月中ごろにコナラ林又はコナラ・アカマツ混生林の地上に発生するきのこであり、「香りマツタケ味シメジ」と称されているように、マツタケと並んで我国の食用きのこの中で最高級きのことされている。
【0003】
近年、エノキタケ、ヒラタケ、ナメコ、ブナシメジ、マイタケ等の食用きのこは主としてオガクズと米糠・フスマなどの栄養源を混合した培養基を用いて栽培を行う人工栽培方法が確立され、1年を通じて季節に関わり無く安定してきのこが収穫できるようになっている。
【0004】
ホンシメジも極めて美味なきのこであるため人工栽培方法の確立が望まれているが、前述のエノキタケ等が木材腐朽菌であるのに対し、ホンシメジは菌根菌であるため人工栽培は困難であるとされていた。
【0005】
このホンシメジの人工栽培についても一部で検討されており、例えば特許文献1では麦類を用いたホンシメジの人工栽培方法が開示されており、同発明者らは非特許文献1で麦類を用いた培地でのホンシメジ子実体の発生実験について報告している。
【0006】
また特許文献2ではピートモスを基材とし、デンプン等を添加した培養基による菌根菌の菌糸培養方法が開示されており、同発明者らは非特許文献2でピートモスを基材とし、デンプン等を添加した培養基でのホンシメジの子実体発生実験を報告している。
【0007】
しかし特許文献1の発明者らの方法では培地に使用する麦類が高価なため培地コストが高くなる。また特許文献2の発明者らの方法では発生した子実体の収量が低く、いまだ商業生産レベルには至っていない。
【特許文献1】特公平8−4427号公報
【特許文献2】特開平6−153695号公報
【非特許文献1】日本菌学会報、第39巻、第13〜20頁(1998)
【非特許文献2】日本菌学会報、第35巻、第192〜195頁(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の現状にかんがみ、安価な培地原料を用いてホンシメジを高収量かつ、発生室移動後の所要日数を短縮して発生させることを可能にする、ホンシメジの商業的人工栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ホンシメジの人工栽培について種々の実験を行い、鋭意検討を重ねた結果、キビ亜科植物の実類を含有する培養基を用いることにより高収量でホンシメジを栽培することが可能であることを見出し、更には、麦類を用いた培地を使用した場合よりも、発生室移動後の所要日数を短縮できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明はホンシメジの人工栽培用培養基に関し、ホンシメジの人工栽培用培養基がキビ亜科植物の実類を含有することを特徴とする。
本発明の第2の発明はホンシメジの人工栽培方法に関し、キビ亜科植物の実類を含有する培養基を使用して子実体を発生させ、ホンシメジを人工栽培することを特徴とする。
【0011】
即ち、本発明は
〔1〕 トウモロコシの実類をその他の培地基材と混合する工程を包含するホンシメジの人工栽培用培養基の調製方法、及び
〔2〕 トウモロコシの実類をその他の培地基材に対して乾燥重量比で3分の2以上混合する、前記〔1〕記載の調製方法
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の調製方法により、ホンシメジを高収量かつ、発生室移動後の所要日数を短縮して得ることができ、ホンシメジの商業的人工栽培が可能になる人工栽培用培養基が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を具体的に説明する。
【0014】
本発明においてキビ亜科植物の実類とは、無加工のキビ亜科植物の実又はキビ亜科植物の実の加工物のことを指す。なお、本文記載のキビ亜科植物の実について説明すると、本発明においてキビ亜科植物の実とは学術的には穎果あるいは穀果と呼ばれる果実を指す。1996年岩波書店発行、岩波生物学辞典第4版の記載によると穎果とは、果皮が成熟後、乾燥して種子に密着する広義の痩果の一種であり、キビ亜科を含むイネ科やタケ科の植物の果実がこれに当る。
【0015】
上記のキビ亜科植物の実の例としては、キビ、ヒエ、サトウキビ、モロコシ、コウリャン、トウモロコシ等の実が挙げられるが、本発明で使用できるキビ亜科植物の実はこれらに限定されることはなく、イネ科キビ亜科に属する植物の実であれば良い。また本発明で使用されるキビ亜科植物の実は、新鮮物であっても乾燥物であっても良い。また2種類以上のキビ亜科植物の実を併用しても良い。更に、本発明においては、キビ亜科植物の実全体を用いても、加工によって分別された実の一部分を使用しても良い。また実全体のものと分別された部分を混合して使用しても良い。
【0016】
キビ亜科植物の実の加工物としては、キビ亜科植物の実を粉砕したものや粉砕した上で篩分けして粒度調整したもの、あるいは顆粒状やペレット状に成型したもの等が挙げられるが、本発明ではキビ亜科植物の実の加工方法や加工物の形状、粒度等は問わず使用でき、また2種類以上の加工物を併用しても良く、実全体のものと加工物を併用してもよい。
【0017】
本発明におけるキビ亜科植物の実類の具体例について、トウモロコシの場合で説明する。トウモロコシの実は尖帽、表皮、胚乳及び胚芽からなり、胚乳は更に角質グルテン質部、角質デンプン質部、粉状質部と呼ばれる部分からなる。本発明ではトウモロコシの実の全体(全粒)でもこれらの一部分だけでも用いることができる。また部分に分けたものを混合して使用しても良い。トウモロコシの実の加工の一例としてドライミリングによる加工について説明するが、本発明で適用される加工方法はこれに限定されるものではない。トウモロコシの実のドライミリングによる加工では、まず精選工程で夾雑物を除去し、次に胚芽を分離しやすくする目的で吸水させる調質を行う。次いで脱胚芽機にかけて胚芽を除去し、ロールミルで粉砕したものを粒度別に篩分けしたのち乾燥することにより、主として角質部からなるコーングリッツと、主として粉状質部からなるコーンフラワーが得られる。これらは篩分けの段階で数段階の粒度に分別される。またドライミリングにおける副産物としては、脱胚芽により除去された胚芽及びこれを乾燥させたドライコーンジャームや表皮の部分からなるコーンファイバー、主として表皮と胚乳の間にあるアリューロン層(糊粉層)と表皮からなるコーンブラン(コーン糠)、更にこれら副産物をすべて合せたホミニーフィードがある。本発明では上記の加工によって得られた産物や副産物のいずれも使用することができ、またこれらを混合して使用しても良い。
【0018】
以上、本発明のキビ亜科植物の実類についてトウモロコシを例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。
【0019】
本発明を実施するための栽培方法としては、ビン栽培、袋栽培、箱栽培などを適用することができる。一例としてビン栽培について述べると、その方法とは培地調製、ビン詰め、殺菌、接種、培養、芽出し、生育、収穫の各工程からなる。次にこれらを具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
培地調製とは人工栽培に用いる各種基材を計量、かくはんし、加水して水分調整する工程をいう。本発明で用いられるホンシメジの人工栽培用培養基は、キビ亜科植物の実類、鋸屑、及びその他栄養剤の組合せからなる。キビ亜科植物の実類とその他の培地基材の混合比率は、例としてトウモロコシの実の場合で説明すると、トウモロコシの実がその他の基材に対して乾燥重量比で1重量部以上が好ましいが、本発明はこの比率に限定されるものではない。本発明における培地調製をトウモロコシの実で説明したが、本発明はこれに限定されるもではない。
【0021】
ビン詰めとは、培養基をビンに詰める工程であり、通常400〜2300ml容の耐熱性広口培養ビンに、調製した培養基を例えば850mlビンの場合は500〜800g、好ましくは600〜750g圧詰し、中央に1〜3cm程度の穴を開け打栓する工程をいう。
【0022】
殺菌とは、蒸気により培養基中のすべての微生物を死滅させる工程であれば良く、通常常圧殺菌では98〜100℃、4〜12時間、高圧殺菌では101〜125℃、好ましくは118℃、30〜90分間行われる。
【0023】
接種とは、殺菌後放冷された培地に種菌を植え付ける工程であり、通常種菌としてはホンシメジ菌糸をPGY液体培地、1/2PGY液体培地などで25℃、10〜15日間培養したものを用い、1ビン当り約10〜50ml無菌的に植え付ける。また、ここまで説明した工程で得られる液体種菌接種済みの培養基を25℃で60〜150日間培養し、菌廻りしたものも固体種菌として用いることができ、1ビン当り15gほど無菌的に植え付ける。
【0024】
培養とは、菌糸を生育、熟成させる工程で、通常接種済みの培養基を温度20〜25℃、湿度40〜70%において菌糸をまん延させ、更に熟成をさせる。熟成は省くこともできる。培養工程は、850mlビンの場合は通常60〜150日間、好ましくは100日間前後行われる。
【0025】
芽出しとは、培養工程を終了した後に栓を外し、子実体原基を形成させる工程で、通常10〜20℃、好ましくは15℃前後、湿度80%以上、照度1000ルクス以下で10〜20日間行う。この際、菌床面に適当な素材で覆土を施しても良い。覆土素材の例としては、赤玉土、鹿沼土、バーミキュライト、石英、パーライト、ガラスビーズ等の無機鉱物質や畑土、森林土壌、山土等の土壌類が挙げられ、これらは微細粒子であることがより好ましいが、本発明は覆土材の粒径に限定されることはない。あるいは日向土、熱処理して硬質化した赤玉土などの多孔性無機鉱物質や腐葉土、バーク堆肥、ピートモス等の腐植性素材、あるいは針葉樹鋸屑、広葉樹鋸屑、コーンコブ、セルロースパルプ、セルローススポンジ、籾殻、稲ワラ、ミズゴケ等の植物性素材、寒天製造時に副生する寒天残渣等も覆土材の例として挙げられる。これらの覆土材は単独で使用しても良く、また2種類以上を混合して使用しても良い。更に、覆土材をあらかじめ適当な含水率になるように吸水させておいてから使用しても良い。
【0026】
また栓を外した後、種菌部分と培養基表面をかき取る菌かき操作を行っても良い。更に、栓を外した後又は菌かき後、直ちにビン口まで水を入れて培養基に給水し、3〜5時間後余剰の水を排水する加水操作を加えても良い。また、芽出し工程中は加湿で結露水が発生しやすいため、濡れを防ぐ目的で菌床面を有孔ポリシートや波板等で覆っても良い。
【0027】
生育とは、子実体原基から成熟子実体を形成させる工程で、通常芽出し工程とほぼ同じ条件で5〜15日間行う。生育工程では結露水による濡れの影響を受けにくいので、有孔ポリシートや波板等の被覆は施さないほうが好ましい。
【0028】
以上の工程により成熟子実体を得ることができ、収穫を行って栽培の全工程を終了する。
【0029】
以上、本発明をビン栽培方法により説明したが、本発明は上記ビン栽培に限定されるものではない。
【0030】
次に、本発明による人工栽培方法に好適なホンシメジの菌株の例としては、ホンシメジLa 01−20株が挙げられるが、本発明で使用できる菌株はこれに限定されるものではないく、野生子実体よりの分離株、市販の菌株、公的機関の保存菌株等が挙げられ、またこれら菌株の変異株、交配株、細胞融合株等、子実体形成能を有しているホンシメジの菌株が挙げられる。なお、ホンシメジLa 01−20株は、Lyophyllum shimeji La 01−20と表示され、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−16841として寄託されている。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。
【0032】
実施例1
1/2PGY液体培地(組成:グルコース1.0%、ペプトン0.1%、酵母エキス0.1%、KH2PO4 0.025%、MgSO4・7H2O 0.025%)200mlにホンシメジLa 01−20株(FERM P−16841)の菌糸を接種し、25℃で10日間培養し、液体種菌とした。
【0033】
一方、ポリプロピレン製の広口培養ビン(850ml)に、トウモロコシの実〔(株)イトウ精麦製の飼料用粉砕物より、通常混合される魚粉を省いたもの〕と広葉樹鋸屑〔(有)トモエ物産製〕を乾物重量比で2:1に混合し培養基の水分が最終的に60%になるように水を加えて十分にかくはん・混合したものを圧詰し、中央に直径3cm程度の穴を開けたのち打栓し、118℃で60分間高圧蒸気殺菌を行い、放冷したものを固形培養基として調製した。
【0034】
この固形培養基に上記の液体種菌を約15ml接種し、暗所にて温度23℃、湿度60〜70%の条件下で108日間菌糸を培養し、培地全体に菌糸をまん延させた。次いで栓を外しビン口をオートクレーブ滅菌した赤玉土で覆土した後、温度15℃、加湿をヒューミアイ100〔(株)鷺宮製作所製〕の表示値で115〜120%となるように制御した発生室に移動し、50〜500ルクスの照明下、子実体原基が生じるまでは水濡れを防ぐためビン口を波板で被覆し、子実体原基形成後は波板を取去り、更に培養を続け、成熟子実体を得た。得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は123.0g、発生室移動後収穫までに要した平均日数は25.5日であった。
【0035】
比較例1
固形培養基の組成を、押麦〔豊橋糧食工業(株)製〕と広葉樹鋸屑〔(有)トモエ物産製〕が乾物重量比で2:1とした以外は実施例1と同様にしてホンシメジLa 01−20株の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は83.8g、発生室移動後収穫までに要した平均日数は26.8日であった。
【0036】
実施例2
固形培養基の組成を、トウモロコシの実と広葉樹鋸屑が乾物重量比で1:1とした以外は実施例1と同様にしてホンシメジLa 01−20株の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は79.0g、発生室移動後収穫までに要した平均日数は28.6日であった。
【0037】
比較例2
固形培養基の組成を、押麦と広葉樹鋸屑が乾物重量比で1:1とした以外は実施例2と同様にしてホンシメジLa 01−20株の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は69.0g、発生室移動後収穫までに要した平均日数は29.4日であった。
【0038】
実施例3
ポリプロピレン製の広口培養ビン(850ml)に、トウモロコシの実〔(株)イトウ精麦製の飼料用粉砕物より、通常混合される魚粉を省いたもの〕と広葉樹鋸屑〔(有)トモエ物産製〕を乾物重量比で2:3に混合し培養基の水分が最終的に60%になるように水を加えて十分にかくはん・混合したものを圧詰し、中央に直径3cm程度の穴を開けたのち打栓し、118℃で60分間高圧蒸気殺菌を行い、放冷したものを固形培養基として調製した。
【0039】
この固形培養基に実施例1に記載の液体種菌を約15ml接種し、暗所にて温度23℃、湿度60〜70%の条件下で105日間菌糸を培養し、培地全体に菌糸をまん延させた。次いで栓を外しビン口をオートクレーブ滅菌した赤玉土で覆土した後、温度15℃、加湿をヒューミアイ100〔(株)鷺宮製作所製〕の表示値で115〜120%となるように制御した発生室に移動し、50〜500ルクスの照明下、子実体原基が生じるまでは水濡れを防ぐためビン口を波板で被覆し、子実体原基形成後は波板を取去り、更に培養を続け、成熟子実体を得た。得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は73.8g、発生室移動後収穫までに要した平均日数は31.0日であった。
【0040】
比較例3
固形培養基の組成を、押麦〔豊橋糧食工業(株)製〕と広葉樹鋸屑〔(有)トモエ物産製〕が乾物重量比で2:3とした以外は実施例3と同様にしてホンシメジLa 01−20株の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は54.6g、発生室移動後収穫までに要した平均日数は38.6日であった。
【0041】
実施例4
固形培養基の組成を、トウモロコシの実と広葉樹鋸屑が乾物重量比で1:2とした以外は実施例3と同様にしてホンシメジLa 01−20株の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は69.4g、発生室移動後収穫までに要した平均日数は30.1日であった。
【0042】
比較例4
固形培養基の組成を、押麦と広葉樹鋸屑が乾物重量比で1:2とした以外は実施例3と同様にしてホンシメジLa 01−20株の栽培を行ったが、成熟子実体は得られなかった。
【0043】
実施例5
ポリプロピレン製の広口培養ビン(850ml)に、加熱圧片とうもろこし〔(株)イトウ精麦製〕と広葉樹鋸屑〔(有)トモエ物産製〕を乾物重量比で2:1に混合し培養基の水分が最終的に60%になるように水を加えて十分にかくはん・混合したものを圧詰し、中央に直径3cm程度の穴を開けたのち打栓し、118℃で60分間高圧蒸気殺菌を行い、放冷したものを固形培養基として調製した。
【0044】
この固形培養基に実施例1に記載の液体種菌を約15ml接種し、暗所にて温度23℃、湿度60〜70%の条件下で116日間菌糸を培養し、培地全体に菌糸をまん延させた。次いで栓を外しビン口をオートクレーブ滅菌した赤玉土で覆土した後、温度15℃、加湿をヒューミアイ100〔(株)鷺宮製作所製〕の表示値で115〜120%となるように制御した発生室に移動し、50〜500ルクスの照明下、子実体原基が生じるまでは水濡れを防ぐためビン口を波板で被覆し、子実体原基形成後は波板を取去り、更に培養を続け、成熟子実体を得た。得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は92.5g、発生室移動後収穫までに要した平均日数は26.4日であった。
【0045】
実施例6
固形培養基の組成を、コーングリッツ No.2〔(株)サニーメイズ製〕と広葉樹鋸屑〔(有)トモエ物産製〕が乾物重量比で2:1とした以外は実施例5と同様にしてホンシメジLa 01−20株の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は83.5g、発生室移動後収穫までに要した平均日数は26.6日であった。
【0046】
実施例7
ポリプロピレン製の広口培養ビン(800mlナメコ用)に、トウモロコシの実〔(株)イトウ精麦製の飼料用粉砕物より、通常混合される魚粉を省いたもの〕と広葉樹鋸屑〔(有)トモエ物産製〕を乾物重量比で2:1に混合し培養基の水分が最終的に60%になるように水を加えて十分にかくはん・混合したものをビン容積の約半量程度詰め、中央に直径1.5cm程度の穴を開けたのち打栓し、118℃で60分間高圧蒸気殺菌を行い、放冷したものを固形培養基として調製した。
【0047】
この固形培養基に実施例1に記載の液体種菌を約15ml接種し、暗所にて温度23℃、湿度60〜70%の条件下で63日間菌糸を培養し、培地全体に菌糸をまん延させた。次いで栓を外しビン口をオートクレーブ滅菌した赤玉土で覆土した後、温度15℃、加湿をヒューミアイ100〔(株)鷺宮製作所製〕の表示値で115〜120%となるように制御した発生室に移動し、50〜500ルクスの照明下、子実体原基が生じるまでは水濡れを防ぐためビン口を波板で被覆し、子実体原基形成後は波板を取去り、更に培養を続け、成熟子実体を得た。得られた成熟子実体の1ビン当りの平均収量は105.3g、発生室移動後収穫までに要した平均日数は28.6日であった。
【0048】
実施例8
固形培養基の組成を、加熱圧片とうもろこし〔(株)イトウ精麦製〕と広葉樹鋸屑〔(有)トモエ物産製〕が乾物重量比で2:1とした以外は実施例7と同様にしてホンシメジLa 01−20株の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は87.5g、発生室移動後収穫までに要した平均日数は28.8日であった。
【0049】
比較例5
固形培養基の組成を、押麦〔豊橋糧食工業(株)製〕と広葉樹鋸屑〔(有)トモエ物産製〕が乾物重量比で2:1とした以外は実施例7と同様にしてホンシメジLa 01−20株の栽培を行い、成熟子実体を得た。得られた子実体の1ビン当り平均収量は82.5g、発生室移動後収穫までに要した平均日数は29.4日であった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の調製方法によれば、ホンシメジを高収量かつ、発生室移動後の所要日数を短縮して得ることができ、ホンシメジの商業的人工栽培が可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウモロコシの実類をその他の培地基材と混合する工程を包含するホンシメジの人工栽培用培養基の調製方法。
【請求項2】
トウモロコシの実類をその他の培地基材に対して乾燥重量比で3分の2以上混合する、請求項1記載の調製方法。


【公開番号】特開2007−143565(P2007−143565A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63590(P2007−63590)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【分割の表示】特願平11−221977の分割
【原出願日】平成11年8月5日(1999.8.5)
【出願人】(302019245)タカラバイオ株式会社 (115)
【Fターム(参考)】