説明

ホース口金具及びその製造方法

【課題】接続体とニップルを備えるソケットが一体的に形成されたホース口金具を静止めっきにより防錆めっきする際、ソケット内の空気溜まりに起因する非めっき箇所をなくし、防錆能力の高いめっき層を形成し得るホース口金具及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】接続体3とニップル2を備えるソケット1が一体的に形成された後、先ず銅めっきが施され、次いで銅よりも高融点の高融点金属めっきが施された後に、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理されて、前記銅めっき層が再溶融され、その後全体的に防錆めっきが施されてなるホース口金具及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌用ブレーキホースやクラッチホースのホース口金具及びその製造方法に係り、より詳しくは、前記口金具を静止めっきにより防錆めっきする際の空気溜まりに起因する非めっき箇所をなくし、耐食性の向上し得るホース口金具及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一端側にパイプ等の接続体を備えると共に、他端側に円筒状のソケットを備え、このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルが形成されてなるホース口金具としては、例えば後述する構成になるブレーキホース用口金具が公知である。
【0003】
従来この様なホース口金具は、前記ソケットに、ニップル及びパイプを銅ろう付した後、亜鉛めっき等の防錆めっきを全体に施すが、この際にソケットのニップル側端部にキャップを装着して、前記ソケットとニップルとの間に画成された環状空間にめっき液が浸入しない様にし、更にめっき処理後防錆剤を塗布することにより錆の発生防止を図っていた。しかしながら、車輌に実装するまでの保管期間が長いと錆発生する場合が多く、長期間の保管は困難であった。
【0004】
また、めっき処理前にパイプ等を曲げ加工することにより、静止めっき時に前記ソケット内部の空気溜まりが発生しにくい様に吊り方を工夫するようにしていたが、形状によっては空気溜まりの発生は防止不可能である。更に、パイプの曲げによって静止めっきハンガー(治具)に一度に吊下げ可能な数量が減少するため、少量しかめっき槽に投入できず、生産性が低下するという問題もあった。
【0005】
次に、従来技術に係るブレーキホース用口金具の製造方法やホース金具を、添付図4,5を参照しながら説明する。図4は従来技術1に係るブレーキホース用口金具の製造方法により作られたブレーキホース用口金具を示す部分的断面図、図5(イ)は従来技術2に係るホース金具の一実施例を示した一部断面正面説明図、同図(ロ)は図(イ)のB−B拡大断面図、同図(ハ)は図(イ)のA−A拡大断面図である。
【0006】
図4に示す符号50は、従来例1に係るブレーキホース用金具である。このブレーキホース用金具50は、外筒を形成するソケット58と、内筒を形成するニップル54とから構成されている。より詳しくは、前記ニップル54は前記ソケット58に対して同心状に組合されると共に、このニップル54の嵌合面が銅ろう付されることにより相互に固定されている。
【0007】
液圧ブレーキ用ホース(図示省略)は、前記ソケット58と、前記ニップル54との間に形成される環状溝(本願発明の隙間空間に該当する)56内に挿入された後に、前記ソケット58の外周面が加締め機の複数の爪により加締められることによって接合されるように構成されている。前記ソケット58の加締め工程においては、液圧ブレーキ用ホースを介して前記ニップル54に強い締付け力が加えられるので、このニップル54は容易に押し潰されない程度の強度を有する素材が採用される。
【0008】
しかしながら、ソケット58とニップル54とを組立てた状態のブレーキホース用口金具の全体を連続処理炉により加熱してニップル54をそのまま金具本体52のろう付部に銅ろう付すると、連続処理炉内のガス雰囲気によってニップル54の表面から脱炭が生じる。このような脱炭によってニップル54の強度(硬度)が著しく低下し、液圧ブレーキ用ホースを環状溝56に嵌入してソケット58を加締めるとニップル54が変形してしまうため、液圧ブレーキ用ホースを均等に締付けることができず、オイル漏れという不具合が発生する。
【0009】
脱炭に起因するニップル54の強度(硬度)低下を抑制するために、この従来例に係るブレーキホース用口金具の製造方法では、ニップル54の全外周面を銅めっきした後に銅ろう付することにより、ニップル54の脱炭を抑制するようにしている。因みに、ニップル54の金具本体52への銅ろう付は1100〜1120℃で行われるが、1000℃まで加熱されても脱炭作用が生じることがなく、本来の強度が維持されると説明されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
上記従来技術1に係るブレーキホース用口金具の製造方法によれば、金具本体52への銅ろう付に際してニップル54の脱炭が阻止され、その強度低下を抑制することができるが、亜鉛めっき等により静止めっき処理される場合、前記ソケット58と前記ニップル54との間に形成される環状溝56内に空気溜まりが生じ、この空気溜まり部にはめっき処理が施せないことから、結果的には錆が発生してしまうという問題は解消し得ない。また、ニップルの銅めっきが溶融し、ろう溜まりが発生するので、上記従来技術1を採用することができない。
【0011】
一方、従来技術2に係るホース金具は、図5に示す如く、細径で且つ長尺な中間管部22の一旦側にはホース端末を挿入して締結できるニップル31とソケット32があり、前記中間管部22の他端側には他部材と螺合できる螺合部23があるホース金具において、前記ソケット32の外周面には電解亜鉛めっき層のみが施されており、且つニップル31の内周面と外周面、ソケット32の内周面、螺合部23の内周面と外周面及び中間管部22の外周面には夫々、直上に無電解ニッケルめっき層40、その上層に電解亜鉛めっき層41とからなる複合めっき層が施されており、しかも前記中間管部22の内周面には少なくとも無電解ニッケルめっき層40が施されてなるものである(特許文献2参照。)。
【0012】
前記従来技術2によれば、細径で長尺な管の内周面や複雑な形状の内外周面にもめっき層を形成することが可能な無電解ニッケルめっきを用いることによって、内径2.5mm程度の細径で長尺な中間管部22の内周面にもめっきを施すことが可能となり、ホース金具としての耐食性の向上を図り得るが、ニップル31、ソケット32及び中間管部22の各内外周面に異なるめっき層を形成するため、一部の部材には予めマスキングしなくてはならないという煩わしさがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公平1−43196号公報
【特許文献2】特公平4−8680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、一端側に接続体が、他端側に円筒状のソケットが形成されると共に、このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルが形成され、前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースが嵌合され、前記ソケットを加締めて接合されるホース口金具を静止めっきにより防錆めっきする際、ソケットの空気溜まりに起因する非めっき箇所をなくし、防錆能力の高いめっき層を形成し得るホース口金具及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るホース口金具が採用した手段は、一端側に接続体が、他端側に円筒状のソケットが形成されると共に、このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルが形成され、前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースが嵌合され、前記ソケットを加締めて接合されるホース口金具において、前記接続体とニップルを備えるソケットが一体的に形成された後、先ず銅めっきが施され、次いで銅よりも高融点の高融点金属めっきが施された後に、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理されて、前記銅めっき層が再溶融され、その後全体的に防錆めっきが施されてなることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項2に係るホース口金具が採用した手段は、請求項1に記載のホース口金具において、一端側に接続体が、他端側に円筒状のソケットが形成されると共に、このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルが形成され、前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースが嵌合され、前記ソケットを加締めて接合されるホース口金具において、前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態、または一体的に形成された状態で銅めっきが施され、次いで前記単体の状態または一体的に形成された状態で、前記ソケット及びニップルに銅よりも高融点の高融点金属めっきが施された後に、前記単体の状態のソケット及びニップルと前記接続体とが銅ろう付、または一体的に形成された状態の前記ソケット及びニップルと前記接続体とが銅ろう付して一体化されると共に、前記銅めっき層が再溶融され、その後一体化された全体に防錆めっきが施されてなることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項3に係るホース口金具が採用した手段は、一端側に接続体が、他端側に円筒状のソケットが形成されると共に、このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルが形成され、前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースが嵌合され、前記ソケットを加締めて接合されるホース口金具において、前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態、または一体的に形成された状態で銅めっきが施され、次いで前記単体の状態または一体的に形成された状態で、前記ソケット及びニップルに銅よりも高融点の高融点金属めっきが施された後に、前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態の場合は、銅ろう付して一体化されると共に、前記銅めっき層が再溶融される一方、
前記ソケット及びニップルが一体的に形成されている場合は、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理されると共に、前記銅めっき層が再溶融され、次いで前記接続体が前記ソケットにトーチろう付して一体化され、その後一体化された全体に防錆めっきが施されてなることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項4に係るホース口金具の製造方法が採用した手段は、一端側に接続体を、他端側に円筒状のソケットを形成すると共に、このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルを形成し、前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースを嵌合し、前記ソケットを加締めて接合するホース口金具の製造方法において、前記接続体とニップルを備えるソケットを一体的に形成した後、先ず銅めっきを施し、次いで銅よりも高融点の高融点金属めっきを施した後に、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理して、前記銅めっき層を再溶融し、その後全体的に防錆めっきを施すことを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項5に係るホース口金具の製造方法が採用した手段は、一端側に接続体を、他端側に円筒状のソケットを形成すると共に、このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルを形成し、前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースを嵌合し、前記ソケットを加締めて接合するホース口金具の製造方法において、前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態、または一体的に形成した状態で銅めっきを施し、次いで前記単体の状態または一体的に形成した状態で、前記ソケット及びニップルに銅よりも高融点の高融点金属めっきを施した後に、前記単体の状態のソケット及びニップルと前記接続体とを銅ろう付、または一体的に形成された状態の前記ソケット及びニップルと前記接続体とを銅ろう付して一体化すると共に、前記銅めっき層を再溶融し、その後一体化した全体に防錆めっきを施すことを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項6に係るホース口金具の製造方法が採用した手段は、一端側に接続体を、他端側に円筒状のソケットを形成すると共に、このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルを形成し、前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースを嵌合し、前記ソケットを加締めて接合するホース口金具の製造方法において、前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態、または一体的に形成した状態で銅めっきを施し、次いで前記単体の状態または一体的に形成された状態で、前記ソケット及びニップルに銅よりも高融点の高融点金属めっきを施した後に、前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態の場合は、銅ろう付して一体化すると共に、前記銅めっき層を再溶融する一方、前記ソケット及びニップルを一体的に形成した場合は、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理すると共に、前記銅めっき層を再溶融し、次いで前記接続体を前記ソケットにトーチろう付して一体化し、その後一体化した全体に防錆めっきを施すことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に係るホース口金具、及び本発明の請求項4に係るブレーキホース用口金具の製造方法によれば、前記接続体とニップルを備えるソケットが一体的に形成された後、先ず銅めっきが施され、次いで銅よりも高融点の高融点金属めっきが施された後に、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理されて、前記銅めっき層が再溶融され、その後全体的に防錆めっきが施される。
【0022】
従って、前記銅めっき及び銅よりも高融点の前記高融点金属めっきは、静止めっきでなくバレルめっき処理が可能なため、前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間に空気溜まりを形成させることなく、防錆能力の高いめっき層を形成できる。また、銅めっきの上層に前記高融点金属めっきが施されると共に、熱処理されて前記銅めっき層が再溶融されているので、銅めっき中のピンホールが解消されて耐食性が更に向上する。
【0023】
また、本発明の請求項2に係るホース口金具、及び本発明の請求項5に係るブレーキホース用口金具の製造方法によれば、前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態、または一体的に形成された状態で銅めっきが施され、次いで前記単体の状態または一体的に形成された状態で、前記ソケット及びニップルに銅よりも高融点の高融点金属めっきが施された後に、前記単体の状態のソケット及びニップルと前記接続体とが銅ろう付、または一体的に形成された状態の前記ソケット及びニップルと前記接続体とが銅ろう付して一体化されると共に、前記銅めっき層が再溶融され、その後一体化された全体に防錆めっきが施される。
【0024】
その結果、請求項1,4と同様、前記銅めっき及び高融点金属めっきは、静止めっきでなくバレルめっき処理が可能なため、前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間に空気溜まりを形成させることなく、防錆能力の高いめっき層を形成できる。また、銅めっきの上層に前記高融点金属めっきが施された後に、銅ろう付されて前記銅めっき層が再溶融されているので、銅めっき中のピンホールが解消されて耐食性が更に向上する。
【0025】
更に、本発明の請求項3に係るホース口金具、及び本発明の請求項6に係るブレーキホース用口金具の製造方法によれば、前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態、または一体的に形成された状態で銅めっきが施され、次いで前記単体の状態または一体的に形成された状態で、前記ソケット及びニップルに銅よりも高融点の高融点金属めっきが施された後に、前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態の場合は、銅ろう付して一体化されると共に、前記銅めっき層が再溶融される一方、前記ソケット及びニップルが一体的に形成されている場合は、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理されると共に、前記銅めっき層が再溶融され、次いで前記接続体が前記ソケットにトーチろう付して一体化され、その後一体化された全体に防錆めっきが施される。
【0026】
従って、前記銅めっき及び高融点金属めっきは、静止めっきでなくバレルめっき処理が可能なため、前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間に空気溜まりを形成させることなく、防錆能力の高いめっき層を形成できる。また、銅めっきの上層に前記高融点金属めっきが施された後に、銅ろう付または熱処理されて前記銅めっき層が再溶融されているので、銅めっき中のピンホールが解消されて耐食性が更に向上する。更に、前記接続体の焼鈍効果による強度低下を生じることがないので、接続体の強度低下が許容されないホース口金の製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1に係るブレーキホース口金具の適用例を示す部分断面図であって、図(a)は接続体として先端にアイジョイントを有するパイプの場合、図(b)は接続体として先端に雄ネジを有する六角棒の場合、図(c)は先端に雄ネジを有するブロックの場合を夫々示す。
【図2】本発明の実施の形態2に係り、ブレーキホース口金具の接続体が先端にアイジョイントを有するパイプの場合の例を示す平断面図であって、図(a)はソケット、ニップル及び接続体が銅ろう付して一体化される場合、図(b)は一体的に形成されたソケット及びニップルが接続体に銅ろう付して一体化される場合を夫々示す。
【図3】本発明の実施の形態3に係り、ブレーキホース口金具の接続体が先端にアイジョイントを有するパイプの場合の例を示す平断面図であって、図(a)は銅ろう付されたソケット及びニップルに、接続体がトーチろう付して一体化される場合、図(b)は一体的に形成されたソケット及びニップルに、接続体にトーチろう付して一体化される場合を夫々示す。
【図4】従来技術1に係るブレーキホース用口金具の製造方法により作られたブレーキホース用口金具を示す部分的断面図である。
【図5】図(イ)は従来技術2に係るホース金具の一実施例を示した一部断面正面説明図、図(ロ)は図(イ)のB−B拡大断面図、図(ハ)は図(イ)のA−A拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
先ず、本発明の実施の形態1に係るホース口金具及びその製造方法を、ブレーキホース口金具に採用した例として、以下添付図1を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係るブレーキホース口金具の適用例を示す部分断面図であって、図(a)は接続体として先端にアイジョイントを有するパイプの場合、図(b)は接続体として先端に雄ネジを有する六角棒の場合、図(c)は先端に雄ネジを有するブロックの場合を夫々示す。
【0029】
本発明の実施の形態1に係るブレーキホース口金具(以下、ホース口金具とも言う)は、一端側にブレーキ等の機器類の接続部に接続するための接続体3が形成されると共に、他端側に円筒状のソケット1が形成され、このソケット1の内側に、中心部にオイル通路2aを有するニップル2が同心円状に形成されている。そして、このホース口金具は、前記ソケット1とニップル2との間に画成された環状の隙間空間4に図示しないホースを嵌合して、前記ソケット1を外周から加締めて接合するために用いられる。
【0030】
更に前記ホース口金具につき詳細に説明するならば、前記接続体3は、ブレーキ等の機器類の接続部に接続するため、図(a)に示す如くパイプ部5とその先端に形成されたアイジョイント6からなる場合や、図(b)に示す如く六角棒7とその先端に形成された雄ネジ8からなる場合、或いは図(c)に示す如く、ソケット1に直交するブロック部9とその先端に形成された雄ネジ8からなる場合、更には図は省略するが、パイプ部とその先端に図(a)のソケット1及びニップル2とは勝手違いに形成されたソケット及びニップルとからなる場合等がある。
【0031】
そして、前記ソケット1の他端側には円筒状のホース加締部1aが備えられている。また、前記ソケット1のホース加締部1aの内側には、中心部にオイル通路2aを有するニップル2が、前記ソケット1のホース加締部1aと同心円状に一体的に形成されている。前記ニップルの外周部にはホース抜け止め用の複数条の円周溝2bが周設されていても良い。更に、前記ニップル2に形成されたオイル通路2aは、前記接続体3のパイプ部5、六角棒7及びブロック9に夫々形成された連通孔3aと連通され、ソケット1に加締めて接合されるホースと接続体3に接続されるブレーキ等の機器類との間に、オイル圧が伝達される様に形成されている。
【0032】
尚、本実施の形態1に係るホース口金具においては、ソケット1、ニップル2及び接続体3が、機械構造用炭素鋼鋼材(JIS記号:S10C〜S45C)、冷間圧造用炭素鋼線(JIS記号:SWCH12〜SWCH20)等から削り出しや鍛造によって一体的に形成されている。尚、本実施の形態1において、ホース加締部1aの先端部とニップル2の先端部とは、図1に示す通り同一平面状に位置するように構成されている。しかしながら、特に同一平面状に位置する必要がなく、例えばニップル2の先端部がホース加締部1aの先端部から突出していても、凹んでいても構わないものである。
【0033】
発明の実施の形態1に係るホース口金具は、この様にしてソケット1、ニップル2及び接続体3が一体的に形成された後、先ず全体的にバレルめっき法による銅めっきを施して母材表面に銅めっき層が形成される。次いで、この銅めっき層の上から、銅よりも高融点の高融点金属めっきをバレルめっき法により施して高融点金属めっき層が形成された後、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理されて、前記銅めっき層が再溶融される。そして、最後に静止めっき法により全体的に防錆めっきが施され、めっき層が形成される。従って、このホース口金具の母材表面には、下から順に銅めっき層、高融点金属めっき層及び防錆めっき層が形成されることになる。
【0034】
ここで、高融点金属とは、銅(融点:1083℃)より高融点を有するニッケルまたはクロムを言い、また高融点金属めっきとは、銅より高融点を有するニッケルめっきまたはクロムめっきを言う。融点が1455℃のニッケルまたは融点が約1900℃のクロムからなる高融点金属めっき層は、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度による熱処理によって溶けることなくめっき層を保持しているため、前記熱処理後における防錆能力は保持されている。
【0035】
ホースが挿入される隙間空間4については、銅めっき層及び高融点金属めっき層が形成されるため、最終的な防錆めっき層を形成する際の空気溜まりが発生しても錆発生には至らないが、高融点金属めっき層となるニッケル、クロム共に硬度が高く、大変形を与えると割れが発生する可能性が高い。ホースを隙間空間4に嵌合してホース加締部1aを加締める本口金具も、ニッケルめっきやクロムめっきからなる高融点金属めっき層のみでは割れ、剥れが発生する問題がある。
【0036】
このため、銅めっき層を下地にすることで密着性を高めているが、電気銅めっき、電気ニッケルめっき、電気クロムめっき等のめっき層にはピンホールが存在し、母材が露出している状態に近いため耐食性が低く、耐食性試験(中性塩水噴霧試験:JIS Z2371等)を行うと短時間で赤錆発生に至る。
【0037】
めっき層のピンホールは次の理由により発生する。即ち、電気めっきは、被めっき処理品であるホース口金具を陰極としてめっき処理するため陰極より水素ガスが発生するが、この水素ガスが被めっき処理品表面に対する金属の析出を疎外することから、めっき層表面から被めっき処理品の金属母材表面まで貫通するピンホールが形成されるのである。
【0038】
本発明の実施の形態1に係るホース口金具の製造方法によれば、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度による熱処理によって、下地層の前記銅めっき層のみを再溶融し、銅めっき層内に形成された前記ピンホールを解消することができる。
【0039】
銅めっき層及び高融点金属めっき層の膜厚としては、下記に述べる厚さが好ましい。
・銅めっき層の膜厚 :0.2〜0.5μm程度
(母材と高融点金属とのバインダーとして機能する
ため、厚過ぎない方が望ましい)
・高融点金属めっき層の膜厚:3〜6μm程度
(薄いと銅が溶融しているときに変形しやすく、
厚いと加締め時に割れ、剥れに繋がる)
【0040】
更に、前記防錆めっきとは、亜鉛めっき、電気亜鉛合金めっき(亜鉛鉄合金めっき、亜鉛ニッケル合金めっき、錫亜鉛合金めっき等)または電気亜鉛めっきと電気亜鉛合金めっきを複数層設けた複合めっき(錫亜鉛合金めっき上に亜鉛めっきを施したもの、亜鉛めっき上に錫亜鉛合金めっきを施し、更に亜鉛めっきを施したもの等)を言い、適宜選定される。
【0041】
以上、本発明の実施の形態1に係る二輪車用ブレーキホース口金具及びその製造方法によれば、接続体3とニップル2を備えるソケット1が一体的に形成された後、先ず銅めっき層が形成され、次いで銅よりも高融点の高融点金属めっき層が形成された後に、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理されて、前記銅めっき層が再溶融され、その後全体的に防錆めっき層が形成される。
【0042】
従って、前記銅めっき層及び高融点金属めっき層の形成は、静止めっき法でなくバレルめっき法により処理したため、前記ソケット1とニップル2との間に画成された隙間空間4に空気溜まりを形成させることなく、防錆能力の高いめっき層を形成できる。また、銅めっき層の上層に前記高融点金属めっき層が形成されると共に、熱処理されて前記銅めっき層が再溶融されているので、銅めっき層中のピンホールが解消されて耐食性が更に向上する。
【0043】
次に、本発明の実施の形態2に係るホース口金具及びこのホース口金具の製造方法を、ブレーキホース口金具の接続体が先端にアイジョイントを有するパイプの場合を例として、以下添付図2を参照しながら説明する。
図2は本発明の実施の形態2に係り、ブレーキホース口金具の接続体が先端にアイジョイントを有するパイプの場合の例を示す平断面図であって、図(a)はソケット、ニップル及び接続体が銅ろう付して一体化される場合、図(b)は一体的に形成されたソケット及びニップルが接続体に銅ろう付して一体化される場合を夫々示す。
【0044】
但し、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、ブレーキホース口金具各部位の接続構成と材質構成、銅ろう付及び熱処理夫々の有無とめっき層構成、並びにこれらに伴う製造方法に相違があり、これらの相違以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、以下その相違する点について説明する。
【0045】
即ち、上記実施の形態1に係るブレーキホース口金においては、接続体3とニップル2を備えるソケット1が、S10C〜S45C、SWCH12〜SWCH20等から削り出しや鍛造によって一体的に形成された後、先ず下地の銅めっき層が形成され、次いで高融点金属めっき層が形成される。その後、熱処理することによって銅めっき層のみが再溶融され、次いで全体的に防錆めっき層が形成されていた。その結果、このホース口金具の母材表面には、下から順に銅めっき層、高融点金属めっき層及び防錆めっき層が形成されていた。
【0046】
これに対し、本発明の実施の形態2において、当初ソケット1、ニップル2及び接続体3が夫々単体に形成される場合を、図2(a)を参照しながら説明する。
先ず、前記ソケット1が、S10C〜S45C、SWCH12〜SWCH20等から削り出しや鍛造によって形成される一方、ニップル2が、クロムモリブテン鋼鋼材(JIS記号:SCM415〜SCM440)から削り出し、鍛造、パイプ材の切断等によって、接続体3が、SWCH12〜SWCH20、S10C〜S45C、機械構造炭素鋼鋼管(JIS記号:STKM材)等から削り出し、鍛造、パイプ切断、溶接等、適宜選択された工法によって形成される。
【0047】
そして、前記ソケット1、ニップル2は夫々単体の状態でバレルめっき法により銅めっき層が形成され、次いで前記ソケット1及びニップル2に、夫々単体の状態で銅よりも高融点の高融点金属めっき層がバレルメッキ法により形成される。その後、単体の状態のソケット1の第1接続孔1bに、銅ろう材10aが付加されたニップル2が嵌入されると共に、ソケット1の第2接続孔1cに、銅ろう材10bが付加された前記接続体3のパイプ部5が嵌入される。
【0048】
次いで、そのまま銅ろう材10a,10bが夫々ニップル2及び接続体3に付加された状態で熱処理炉に投入され、銅の融点が1083℃であるので、温度1120℃程度に加熱される。その際、前記ニップル2に付加された銅ろう材10aと、接続体3に付加された銅ろう材10bが溶融して、夫々前記第1接続孔1bと第2接続孔1cとの間の隙間に浸入し、前記ソケット1がニップル2及び接続体3と銅ろう付により一体化されると共に、前記銅めっき層が再溶融される。そして最後に、一体化されたホース金具全体に静止めっき法による防錆めっき層が形成される。
【0049】
一方、当初ソケット1及びニップル2が一体的に形成された状態の場合を、図2(b)を参照しながら説明する。
この場合は、先ず、前記ソケット1及びニップル2が、S10C〜S45C、SWCH12〜SWCH20等から削り出しや鍛造によって一体的に形成される一方、接続体3が、SWCH12〜SWCH20、S10C〜S45C、STKM等から削り出し、鍛造、パイプ切断、溶接等、適宜選択された工法によって形成される。
【0050】
そして、一体的に形成された状態のソケット1及びニップル2に、バレルめっき法による銅めっき層が形成され、次いで前記ソケット1及びニップル2に銅よりも高融点の高融点金属めっき層がバレルめっき法によって形成される。その後、前記ソケット1の第2接続孔1cに、銅ろう材10bが付加された接続体3のパイプ部5が嵌入される。
【0051】
次いで、そのまま銅ろう材10bが接続体3に付加された状態で熱処理炉に投入され、温度1120℃程度に加熱される。その際、前記接続体3とに付加された銅ろう材10bが溶融して前記第2接続孔1cの隙間に浸入し、前記ソケット1と接続部3が銅ろう付により一体化されると共に、前記銅めっき層が再溶融される。そして最後に、一体化されたホース金具全体に静止めっき法によって防錆めっき層が形成される。
【0052】
従って、本発明の実施の形態2に係るホース口金具は、ソケット1及びニップル2の母材表面には、下から順に銅めっき層、高融点金属めっき層及び防錆めっき層が形成される一方、接続部3の母材表面には防錆めっき層のみが形成されることになる。
【0053】
その結果、実施の形態1と同様、前記銅めっき及び高融点金属めっきは、静止めっきでなくバレルめっき法により処理されるため、前記ソケット1とニップル2との間に画成された隙間空間4に空気溜まりを形成させることなく、防錆能力の高いめっき層を形成できる。また、銅めっきの上層に前記高融点金属めっきが施された後に、銅ろう付されて前記銅めっき層が再溶融されているので、銅めっき中のピンホールが解消されて耐食性が更に向上する。
【0054】
次に、本発明の実施の形態3に係るホース口金具及びこのホース口金具の製造方法を、ブレーキホース口金具の接続体が先端にアイジョイントを有するパイプの場合を例として、以下添付図3を参照しながら説明する。
図3は本発明の実施の形態3に係り、ブレーキホース口金具の接続体が先端にアイジョイントを有するパイプの場合の例を示す平断面図であって、図(a)は銅ろう付されたソケット及びニップルに、接続体がトーチろう付して一体化される場合、図(b)は一体的に形成されたソケット及びニップルに、接続体がトーチろう付して一体化される場合を夫々示す。
【0055】
但し、本発明の実施の形態3が上記実施の形態1と相違するところは、ブレーキホース口金具各部位の接続構成と材質構成、銅ろう付及び熱処理夫々の有無とめっき層構成、並びにこれらに伴う製造方法に相違があり、これらの相違以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、以下その相違する点について説明する。
【0056】
即ち、上記実施の形態1に係るブレーキホース口金具においては、接続体3とニップル2を備えるソケット1が、S10C〜S45C、SWCH12〜SWCH20等から削り出しや鍛造によって一体的に形成された後、先ず下地の銅めっき層が形成され、次いで高融点金属めっき層が形成される。その後、熱処理することによって銅めっき層のみが再溶融され、次いで全体的に防錆めっき層が形成されていた。その結果、このホース口金具の母材表面には、下から順に銅めっき層、高融点金属めっき層及び防錆めっき層が形成されていた。
【0057】
これに対し、本発明の実施の形態3において、当初ソケット1、ニップル2及び接続体3が夫々単体に形成されている場合を、図3(a)を参照しながら説明する。
先ず、前記ソケット1が、S10C〜S45C、SWCH12〜SWCH20等から削り出しや鍛造によって形成される一方、ニップル2が、SCM415〜SCM440から削り出し、鍛造、パイプ材の切断等によって、接続体3が、SWCH12〜SWCH20、S10C〜S45C、STKM等から削り出し、鍛造、パイプ切断、溶接等、適宜選択された工法によって形成される。
【0058】
そして、ソケット1及びニップル2が夫々単体の状態でバレル法による銅めっき層が形成され、次いで前記単体の状態で、前記ソケット1及びニップル2に銅よりも高融点の高融点金属めっき層がバレル法により形成される。その後、前記実施の形態2において図2(a)を用いて説明した様に、前記ソケット1及びニップル2が銅ろう付10して一体化されると共に、この銅ろう付の加熱に伴って前記銅めっき層が再溶融される。その後、前記ソケット1の接続孔1cに、トーチろう材11を付加された接続体3のパイプ部5が嵌入されトーチろう付して一体化され、最後に一体化された全体に静止めっき法による防錆めっき層が形成される。
【0059】
一方、当初前記ソケット1及びニップル2が一体的に形成された状態の場合を、図3(b)を参照しながら説明する。
この場合は、先ず、前記ソケット1及びニップル2が、S10C〜S45C、SWCH12〜SWCH20等から削り出しや鍛造によって一体的に形成される一方、接続体3が、SWCH12〜SWCH20、S10C〜S45C、STKM等から削り出し、鍛造、パイプ切断、溶接等、適宜選択された工法によって形成される。
【0060】
そして、前記ソケット1及びニップル2が一体的に形成された状態でバレル法による銅めっき層が形成され、次いで、銅よりも高融点の高融点金属めっきがバレル法により形成された後に、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理されると共に、前記銅めっき層が再溶融される。その後、前記ソケット1の接続孔1cに、トーチろう材11を付加された接続体3のパイプ部5が嵌入されトーチろう付して一体化され、最後に一体化された全体に静止めっき法による防錆めっき層が形成される。
【0061】
従って、前記銅めっき層及び高融点金属めっき層は、静止めっきでなくバレルめっき処理されるため、前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間に空気溜まりを形成させることなく、防錆能力の高いめっき層を形成できる。また、銅めっき層の上層に前記高融点金属めっき層が形成された後に、銅ろう付または熱処理されて前記銅めっき層が再溶融されているので、銅めっき層中のピンホールが解消されて耐食性が更に向上する。
【0062】
一般的に、銅の融点は1083℃のため、銅ろう付は1120℃程度で実施する。そのため、銅ろう付前に防錆めっきを行った場合、融点の低い亜鉛を含有するめっき層は溶けてしまう問題がある。当然ながら、銅めっきのみを行った場合、銅めっき層はろう付時、または前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理する時に溶け、ろう溜まりが生じるため使用出来ない。
【0063】
一方、前記トーチろう付は、黄銅ろうまたは銀ろうをトーチろう材11として、局部的に加熱して前記ろう材11を溶かし、かつ急冷して部材同士を接合するろう付であるため、接続体3の焼鈍効果による強度低下を生じることがない。そのため、接合コストは高くなるが、前記接続体3の強度低下が許容されないホース口金の製造に好適である。
【実施例】
【0064】
<実施例−A>
上述した本発明の実施の形態(1)に係る二輪車用ブレーキホース口金具の製造方法に基づき、亜鉛めっきを省略した以外は下記条件により全く同様に試作したホース口金具(以下、実施例1と称する)と、更に下記の(5)熱処理を省略して試作したホース口金具(以下、比較例1と称する)に、ホースを加締めて締結したものの耐食性試験(中性塩水噴霧試験:JIS Z2371等)を実施した。試作条件は、下記の通りである。
【0065】
(1)ホース口金具の形状‥‥‥図1(a)に示す通りである
(2)各部材質‥‥‥‥‥‥‥‥SWCH12(ソケット、ニップル及び接続体一体)
(3)銅めっき‥‥‥‥‥‥‥‥バレルめっき法による電気銅めっきにより膜厚0.4
μmに形成
(4)高融点金属めっき‥‥‥‥バレルめっき法による電気ニッケルめっきにより膜厚
6μmに形成
(5)熱処理‥‥‥‥‥‥‥‥‥温度1120℃で7分加熱
(6)各試料数‥‥‥‥‥‥‥‥3本
【0066】
その結果、比較例1では、中性塩水噴霧試験を開始後4時間で、3本の試料の内1本のソケットに赤錆発生が確認された。一方、実施例1では、試験開始後4時間では錆発生することなく、錆発生が認められたのは試験開始後24時間であった。即ち、高融点金属めっき後熱処理を施すことによって銅めっき層のみが再溶融され、銅めっき層内に形成されたピンホールが解消されるので、めっき層の耐食性が約6倍向上する効果が認められた。
【0067】
<実施例−B>
次に、本発明の実施の形態1(a)に係る二輪車用ブレーキホース口金具の製造方法に基づき試作したホース口金具(以下、実施例2と称する)と、下記の(3)銅めっき及び(4)高融点金属めっきを省略した以外は、前記実施例と全く同様な製造方法により試作したホース口金具(以下、比較例2と称する)に、ホースを加締めて締結したものの耐食性試験(中性塩水噴霧試験:JIS Z2371等)を実施した。試作条件は、下記の通りである。
【0068】
(1)ホース口金具の形状‥‥‥図1(a)に示す通りである
(2)各部材質‥‥‥‥‥‥‥‥SWCH12(ソケット、ニップル及び接続体一体)
(3)銅めっき‥‥‥‥‥‥‥‥バレルめっき法による電気銅めっきにより膜厚0.4
μmに形成
(4)高融点金属めっき‥‥‥‥バレルめっき法による電気ニッケルめっきにより膜厚
6μmに形成
(5)熱処理‥‥‥‥‥‥‥‥‥温度1120℃で7分加熱
(6)亜鉛めっき‥‥‥‥‥‥‥静止めっき法による電気亜鉛めっきにより膜厚8μm
に形成
(7)各試料数‥‥‥‥‥‥‥‥3本
【0069】
その結果、比較例2では、中性塩水噴霧試験を開始後336時間で、3本の試料の内1本のソケットに赤錆発生が確認された。一方、実施例2では、錆発生が認められたのは試験開始後552時間であった。即ち、銅めっき後高融点金属めっきを施し、次いで熱処理することによって銅めっき層のみが再溶融され、銅めっき層内に形成されたピンホールが解消されるので、ホース口金具製品としての耐食性が約1.5倍向上する効果が認められた。また、下地に銅めっき層を形成したことにより、加締部のめっき剥れも発生しないという付随的な効果も確認された。
【0070】
以上説明した通り、本発明に係るホース口金具及びその製造方法によれば、先ず銅めっきが施され、次いで銅よりも高融点の高融点金属めっきが施された後に、前記銅の融点を超えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理、または銅ろう付されて、前記銅めっきが再溶融され、その後防錆めっきが施される。このため、前記銅めっき、及び銅よりも高融点の前記高融点金属めっきは静止めっきでなくバレルめっき処理が可能となり、前記ソケットとニップルの間に画成された隙間空間に空気溜まりを形成させることなく、防錆能力の高いめっき層を形成できる。また、銅めっきの上層に前記高融点金属めっきが施されると共に、熱処理または銅ろう付されて前記銅めっき層が再溶融されているので、銅めっき中のピンホールが解消されて耐食性が更に向上する。
【0071】
尚、上記実施の形態に係るホース口金具としては、ソケット、ニップル、接続部としてアイジョイント及びパイプを備えたブレーキホース口金具を実施例として説明したが、この様な構成に限定されることなく、2個のソケットとこれらのソケットを連結してろう付接合されたパイプとを備えた口金具、前記2個のソケットのうち1個が別の構成部品、例えば、実施の形態1、実施の形態2で説明した様な螺合部であったり、或いは前記2個のソケットのうち1個がない形状等、用途に応じて適宜選択できる。
【0072】
また、本発明に係るホース口金具は、二輪車用ブレーキホース口金具に限定されることなく、一般的な車両用ブレーキホース口金具やクラッチホース口金具等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1:ソケット, 1a:ホース加締部, 1b:第1接合孔,
1c:第2接合孔,
2:ニップル, 2a:オイル通路, 2b:円周溝,
3:接続体, 3a:連通孔,
4:隙間空間,
5:パイプ部, 6:アイジョイント,
7:六角棒, 8:雄ネジ,
9:ブロック,
10:銅ろう付, 10a,10b:銅ろう材,
11:トーチろう材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に接続体が、他端側に円筒状のソケットが形成されると共に、
このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルが形成され、
前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースが嵌合され、前記ソケットを加締めて接合されるホース口金具において、
前記接続体とニップルを備えるソケットが一体的に形成された後、先ず銅めっきが施され、
次いで銅よりも高融点の高融点金属めっきが施された後に、
前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理されて、前記銅めっき層が再溶融され、
その後全体的に防錆めっきが施されてなることを特徴とするホース口金具。
【請求項2】
一端側に接続体が、他端側に円筒状のソケットが形成されると共に、
このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルが形成され、
前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースが嵌合され、前記ソケットを加締めて接合されるホース口金具において、
前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態、または一体的に形成された状態で銅めっきが施され、
次いで前記単体の状態または一体的に形成された状態で、前記ソケット及びニップルに銅よりも高融点の高融点金属めっきが施された後に、
前記単体の状態のソケット及びニップルと前記接続体とが銅ろう付、または一体的に形成された状態の前記ソケット及びニップルと前記接続体とが銅ろう付して一体化されると共に、前記銅めっき層が再溶融され、
その後一体化された全体に防錆めっきが施されてなることを特徴とするホース口金具。
【請求項3】
一端側に接続体が、他端側に円筒状のソケットが形成されると共に、
このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルが形成され、
前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースが嵌合され、前記ソケットを加締めて接合されるホース口金具において、
前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態、または一体的に形成された状態で銅めっきが施され、
次いで前記単体の状態または一体的に形成された状態で、前記ソケット及びニップルに銅よりも高融点の高融点金属めっきが施された後に、
前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態の場合は、銅ろう付して一体化されると共に、前記銅めっき層が再溶融される一方、
前記ソケット及びニップルが一体的に形成されている場合は、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理されると共に、前記銅めっき層が再溶融され、
次いで前記接続体が前記ソケットにトーチろう付して一体化され、
その後一体化された全体に防錆めっきが施されてなることを特徴とするホース口金具。
【請求項4】
一端側に接続体を、他端側に円筒状のソケットを形成すると共に、
このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルを形成し、
前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースを嵌合し、前記ソケットを加締めて接合するホース口金具の製造方法において、
前記接続体とニップルを備えるソケットを一体的に形成した後、先ず銅めっきを施し、
次いで銅よりも高融点の高融点金属めっきを施した後に、
前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理して、前記銅めっき層を再溶融し、
その後全体的に防錆めっきを施すことを特徴とするホース口金具の製造方法。
【請求項5】
一端側に接続体を、他端側に円筒状のソケットを形成すると共に、
このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルを形成し、
前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースを嵌合し、前記ソケットを加締めて接合するホース口金具の製造方法において、
前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態、または一体的に形成した状態で銅めっきを施し、
次いで前記単体の状態または一体的に形成した状態で、前記ソケット及びニップルに銅よりも高融点の高融点金属めっきを施した後に、
前記単体の状態のソケット及びニップルと前記接続体とを銅ろう付、または一体的に形成された状態の前記ソケット及びニップルと前記接続体とを銅ろう付して一体化すると共に、前記銅めっき層を再溶融し、
その後一体化した全体に防錆めっきを施すことを特徴とするホース口金具の製造方法。
【請求項6】
一端側に接続体を、他端側に円筒状のソケットを形成すると共に、
このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルを形成し、
前記ソケットとニップルとの間に画成された隙間空間にホースを嵌合し、前記ソケットを加締めて接合するホース口金具の製造方法において、
前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態、または一体的に形成した状態で銅めっきを施し、
次いで前記単体の状態または一体的に形成された状態で、前記ソケット及びニップルに銅よりも高融点の高融点金属めっきを施した後に、
前記ソケット及びニップルが夫々単体の状態の場合は、銅ろう付して一体化すると共に、前記銅めっき層を再溶融する一方、
前記ソケット及びニップルを一体的に形成した場合は、前記銅の融点を越えかつ前記高融点金属の融点未満の温度にて熱処理すると共に、前記銅めっき層を再溶融し、
次いで前記接続体を前記ソケットにトーチろう付して一体化し、
その後一体化した全体に防錆めっきを施すことを特徴とするホース口金具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−7241(P2011−7241A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150131(P2009−150131)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000233619)株式会社ニチリン (69)
【Fターム(参考)】