説明

ホース継手の締結方法及びホース継手

【課題】ニップルにソケットを加締めて締結する際、ソケットの加締部が軸心方向に傾いたりすることなく加締時の安定化を図り、高圧のシール性に優れたホース継手が得られるホース継手の締結方法を提供する。
【解決手段】ソケット2の加締部3に形成された開孔部5を、ニップル1の締結部1a,1bに加締め込んで締結するホース継手の締結方法において、前記ニップル1の締結部1a,1bに前記ソケット2の加締部肉厚tより狭い溝幅wの周溝6を形成すると共に、軸心C方向の周溝幅w前後にラップ代a,bを有する状態で、前記ソケット2の加締部3を加締めて締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソケットの加締部に形成された開孔部を、ニップルの締結部に加締め込んで締結するホース継手の締結方法及びホース継手に関し、更に詳しくは、前記ソケットの開口部をニップルの締結部に加締め込む際、両者間に生じる加締面圧が不均一となる結果シール性が不良となることを防止したホース継手の加締方法及びホース継手に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプとホース、あるいはホースとホースとを接続するホース継手において、特に、自動車のパワステアリング用作動液回路やエアコン用冷媒回路等の中高圧ホースに用いられるホース継手では、漏れ圧力を向上させることが求められる。この様なホース継手は、ニップルとこのニップルに加締めて締結されたソケットからなるものが多用されている。
【0003】
しかしながら、前記締結部は金属接触(メタルタッチ)によるシール構造であるため、加締時の不均一な加締面圧に起因して、金属接触部に極小の隙間を生じ易い。その結果、中高圧用のホース継手として用いた場合、前記締結部から漏れを生じるという問題があった。
【0004】
この様な問題を解決するため、従来より提案されている管継手付きホースについて、以下添付図6を参照しながら説明する。図6は従来例に係る管継手にホース端部を接続した管継手付きホースの一具体例を示す要部断面図である。
【0005】
この従来例に係る管継手は、継手本体10の外周面に形成された周溝10a内を一周するように突条部10bを設け、前記継手本体10にホース端部を挿入して、スリーブ20の環状係合部20aを加締るものである(特許文献1参照)。また、この様に継手本体の外周面に形成された周溝に突起を形成したホース継手が、他にも提案されている(特許文献2,3,4参照)。更に、ニップルからソケットの抜けやずれ防止のため、前記突起部や周溝の外周面がローレット目を有するものも提案されている(特許文献5参照)。
【0006】
そこで先ず、本発明者等は、上記特許文献1に基づいて、継手本体(以下、ニップルとも言う)10の外周面に形成された周溝10a内を一周する様に突条部10aを設け、前記継手本体10にホース端部を挿入して、前記周溝10aに嵌合する環状係合部20aを加締加工する実験を実施してみたが、前記スリーブ(以下、ソケットとも言う)20の環状係合部20aが、軸心方向前後に傾いて安定的な加締加工が困難なことが判明した。
【0007】
この理由は、前記突条部10aの軸心方向前後に加締時の面圧が低い部分(突条部10a以外の周溝部分)が存在するため、スリーブ20の環状係合部20aを加締める際、加締爪の軸心方向位置が不適切であると、前記環状係合部20aが面圧の低い側に倒れ込むことによる。従って、安定的な加締加工をなし得るには、前記周溝10aに設けられた突条部10b、スリーブ20の環状係合部20a及び加締爪における軸心方向相対位置の厳格な管理が要求される。
【0008】
次に、前記ニップル10に形成された周溝10aに複数の突条部を設け、前記周溝10aに嵌合する環状係合部20aを加締加工する実験を行った。この場合も、環状係合部20aの肉厚がニップル10に形成された周溝10aに嵌合する様に形成すると、両者の軸心方向相対位置がばらつくと、軸心方向前後に傾いて安定的な加締加工が困難であった。一方、ニップル10に形成される周溝10aの溝幅を環状係合部20a幅より多少大きくすると、両者の軸心方向相対位置における微小なばらつき範囲内では、比較的安定した加締加工が可能であった。
【0009】
しかしながら、この様な従来例に係るホース継手では、ニップル10に形成された周溝10a幅とスリーブ20の環状係合部20a幅の軸心方向相対位置における、微小なばらつきを管理しながら加締加工する必要があり非常に煩わしい。その上、前記ニップル10の周溝10aとスリーブ20の環状係合部20aとの間に微小な隙間が生じるため、この隙間にこのホース継手に通液される作動液等の液体が残留して腐食等の原因となる恐れがある。
【0010】
【特許文献1】特開平10−252967号公報
【特許文献2】実開平3−23284号公報
【特許文献3】特許第3601235号公報
【特許文献4】実公平1−35111号公報
【特許文献5】特開平61−65989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上の様な状況に鑑み鋭意検討した結果、締結部における加締時の反力が軸心方向に適正であれば、高いシール性を有するホース継手が得られるという知見を得てなしたものである。従って、本発明の目的は、ソケットの加締部に形成された開孔部を、ニップルの締結部に加締め込んで締結するホース継手の締結方法において、ソケットの加締部が軸心方向に傾いたりすることなく加締時の安定化を図り、高圧のシール性に優れたホース継手が得られるホース継手の締結方法及びホース継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係るホース継手の締結方法が採用した手段は、ソケットの加締部に形成された開孔部を、ニップルの締結部に加締め込んで締結するホース継手の締結方法において、前記ニップルの締結部に前記ソケットの加締部肉厚より狭い溝幅の周溝を形成すると共に、軸心方向の周溝幅前後にラップ代を有する状態で、前記ソケットの加締部を加締めて締結することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項2に係るホース継手の締結方法が採用した手段は、請求項1に記載のホース継手の締結方法において、前記周溝幅前後のラップ代を0.15mm以上とした状態で、前記ソケットの加締部を加締めて締結することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項3に係るホース継手の加締方法が採用した手段は、請求項1または2に記載のホース継手の加締方法において、前記ニップルに形成された周溝幅を1.4mm以上とすることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項4に係るホース継手が採用した手段は、ソケットの加締部に形成された開孔部を、ニップルの締結部に加締め込んで締結されたホース継手において、前記ニップルの締結部に前記ソケットの加締部肉厚より狭い溝幅の周溝が形成され、軸心方向の周溝幅前後にラップ代を有する状態で前記ソケットの加締部を加締めて、このソケットの加締部に塑性流動を生じさせ、前記ニップルの周溝に食い込んだ食込部を形成して締結されなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に係るホース継手の加締方法によれば、ソケットの加締部に形成された開孔部を、ニップルの締結部に加締め込んで締結するホース継手の締結方法において、前記ニップルの締結部に前記ソケットの加締部肉厚より狭い溝幅の周溝を形成すると共に、軸心方向の周溝幅前後にラップ代を有する状態で、前記ソケットの加締部を加締めて締結するので、前記周溝幅前後のニップルの締結部に加締時の面圧に対する反力が均等に形成され、前記ニップルの締結部に対するソケットの加締部の軸心方向相対位置が多少ばらついたとしても、前記ソケットの加締部が傾くことなく、安定した加締加工が可能である。
【0017】
また、本発明の請求項2に係るホース継手の締結方法によれば、前記周溝幅前後のラップ代を0.15mm以上とした状態で、前記ソケットの加締部を加締めて締結するので、前記ソケットの開孔部には、当接するニップルの締結部の周溝幅前後から加締圧に対する反力が確実に生じる結果、安定した加締加工が可能である。
【0018】
更に、本発明の請求項3に係るホース継手の加締方法によれば、前記ニップルに形成された周溝幅を1.4mm以上とするので、前記周溝によってこの周溝幅前後に離間したラップ代が夫々形成される。その結果、ソケットの加締部をこの周溝上に加締めた際、前記ソケットの開孔部には、当接するニップルの周溝幅前後から1.4mm以上離間した反力が均等に生じるので、更に安定した加締加工が可能となる。
【0019】
一方、本発明の請求項4に係るホース継手によれば、ソケットの加締部に形成された開孔部を、ニップルの締結部に加締め込んで締結されたホース継手において、前記ニップルの締結部に前記ソケットの加締部肉厚より狭い溝幅の周溝が形成され、軸心方向の周溝幅前後にラップ代を有する状態で前記ソケットの加締部を加締めて、このソケットの加締部に塑性流動を生じさせ、前記ニップルの周溝に食い込んだ食込部を形成して締結されてなる。
【0020】
その結果、前記ニップルの締結部に対するソケットの加締部の軸心方向相対位置が多少ばらついて加締加工されたとしても、前記食込部が形成されることによって、シール性の優れたホース継手を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
先ず、本発明の実施の形態1について図1〜3を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1に係るホース継手の締結方法を説明するための加締前の状態を示す断面図、図2は図1のホース継手において加締開始直後の状態を示す要部断面図、図3は図1のホース継手が加締めて締結された後、ホースを接続された状態を一部断面で示す外形図である。
【0022】
本発明に係るホース継手は、ホース先端を差し込んで接続するためのニップル1と、円筒部4及び底部(以下、加締部とも言う)3とからなる有底円筒状のソケット2とにより構成されている。このソケット2の加締部3には、円筒部4と同心状に開口部5が形成されている。そして、本発明の実施の形態1に係るホース継手の締結方法は、前記ソケット2の加締部3に形成された開孔部5を、ニップル1の締結部1a,1bに加締め込んで締結するホース継手の締結方法に関する。
【0023】
前記ニップル1やソケット2には、自動車等のパワステアリング用作動液回路や車両用エアコンの冷媒回路用途では、アルミニウム合金等、軽量で錆び難い材質のものが用いられるが、その他一般の用途ではこれらの材質に限定されるものではなく、例えば、銅、真鍮や鉄等を用いることも出来る。
【0024】
そして先ず、前記ニップル1の先端側には、ホースを差し込んだ際の抜け防止のためタケノコ状の凹凸溝1a等が形成されると共に、このニップル1の締結部1a,1bの外周には、ソケット2の加締部3の肉厚tより狭い溝幅wを有する周溝6が形成される。
【0025】
次いで、前記ソケット2の加締部3に形成された開孔部5に、ニップル1を挿入すると共に、前記開孔部5がニップル1の締結部1a,1b、即ち、下記の如く特定される周溝6の近傍に配置する。その後、前記ソケット2の加締部外周面3cを、8分割された加締爪を有する加締機(図示せず)により求心方向に加締圧を負荷して、前記ニップル1とソケット2とを締結するのである。
【0026】
その際、前記ニップル1の締結部1a,1bは、このニップル1に形成された周溝幅wの軸心C方向前後にラップ代a,b(a,b>0mm)を有する状態とし、前記締結部1a,1bに、ソケット2の加締部3に形成された開孔部5を当接させながら加締めることが必須である。ここで、前記ラップ代とは、図2に示す如く、ソケット2の加締部外周面3cに加締圧が負荷され、前記開孔部5とニップル1の締結部1a,1bとが接触した際、これらソケット2の開孔部5とニップル1の締結部1a,1bとが重なり合う、周溝6の軸心C方向の前後部分a,bを言う。
【0027】
即ち、「ラップ代a>0mm」とは、図2において、前記ソケット2の底部部外表面3aの位置が、ニップル1に形成された周溝6の後部内壁面6aの位置より軸心C方向に左側になることを意味し、また、「ラップ代b>0mm」とは、前記ソケット2の底部内表面3bの位置が、周溝6の前部内壁面6bの位置より軸心C方向に右側にあることを意味する。
【0028】
即ち、前記ソケット2の底部外表面3aと周溝6の後部内壁面6aとが、あるいは、前記ソケット2の底部内表面3bと周溝6の前部内壁面6bとが軸心C方向に隙間を形成させない相対位置状態として、前記ソケット2の加締部外周面3cを加締めて締結することが肝要である。
【0029】
この様に、ニップル1の締結部1a,1bの外周に、ソケット2の加締部肉厚tより狭い溝幅wの周溝6を形成すると共に、軸心C方向の周溝幅wの前後にラップ代a,bを有する状態で、前記ソケットの加締部3を加締めて締結することによって、加締加工の際、前記ソケット2の開孔部5には、当接するニップル1の締結部1a,1bから加締圧に対する反力が軸心C方向に前後2箇所均等に生じるため、前記ソケット1の加締部3が、軸心C方向前後に倒れてシール性を損なうことがない。
【0030】
更に、前記ニップル1の加締部1a,1bは、前記周溝幅w前後の両ラップ代a,bを0.15mm以上とした状態で、前記ソケットの加締部を加締めて締結するのが好ましい。前記ラップ代a,bが0.15mm以上の状態であれば、
前記ソケット2の開孔部5には、当接するニップル1の締結部1a,1bから加締圧に対する反力が、軸心C方向に前後2箇所確実に生じるからである。
【0031】
一方、前記ニップル1に形成された周溝幅wは1.4mm以上とするのが好ましい。前記周溝幅wが1.4mm未満であると、前記周溝6によってこの周溝幅wの軸心C方向前後に形成されるラップ代a,bが近接し過ぎるため、ソケット2の加締部3をニップル1の締結部1a,1bに加締めた際、この締結部1a,1bに生じる反力が前記周溝幅w前後で均等になり難く、ソケット2の加締部3が前記反力の小さい方へ傾いてしまう。
【0032】
一方、この様にして締結されたホース継手は、前記ニップル1の締結部1a,1bに、前記ソケット2の加締部肉厚tより狭い溝幅wの周溝6が形成され、軸心C方向の周溝幅w前後にラップ代a,bを有する状態で前記ソケット2の加締部3を加締めるので、このソケットの加締部3の開口部5に塑性流動を生じさせる。
【0033】
その結果、図3に示す如く、前記ニップル1の周溝6に、前記塑性流動した母材が食い込んで食込部(接合部)5aを形成して締結される。ニップル1の求心方向に凸状に形成された前記食込部(接合部)5aによって、強固でシール性が抜群なホース継手を提供し得る。
【0034】
そして、このホース継手は、図3に示す如く、ホース7をニップル1先端に差し込んだ後、前記ソケット2の加締部4aを加締めて締結され、ホース7と一体化して使用される。前記ホース7としては、例えば、自動車のパワステアリングの作動回路や車両用エアコンの冷媒回路等に用いられるホース、あるいは給水配管等に用いられる一般的なホースを言う。
【0035】
前者に係るホース7としては、ゴム層単層、樹脂層単層または樹脂層の外周にゴム層を設けられものからなる内管と、この内管の外周に設けられた補強層やゴム層とからなる高圧ホースである。また、後者に係るホース7としては、ゴム層単層、樹脂層単層あるいはこれらの複数層からなるものや、これらの内層間や外周に補強層を設けた中圧ホースが良く用いられる。
【0036】
前者の様な高圧ホースと一体化されたホース継手は、例えば、15MPaを超える高圧の作動液圧に対しても漏れなく使用可能なため、自動車のパワステアリング用作動液回路用途としても有効である。
【0037】
(〜[0041]:追加分)
次に、本発明の実施の形態2に係るホース継手の締結方法及びホース継手を、添付図4を参照しながら説明する。図4は、本発明の実施の形態2に係るホース継手の締結方法において加締開始直後の状態を示す要部断面図である。
【0038】
但し、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、ニップルに形成された締結部の構成に相違があり、これらの相違以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、以下その相違する点について説明する。
【0039】
即ち、上記実施の形態1においては、ニップル1の締結部1a,1bがこのニップル1の外周面であり、この外周面の締結部1a,1bに、ソケット2の加締部肉厚tより狭い溝幅wの周溝6を形成すると共に、軸心C方向の周溝幅w前後にラップ代a,bを有する状態で、前記ソケット2の加締部3を加締めて締結する様に構成されていた。
【0040】
これに対し、本発明の実施の形態2に係るホース継手の締結方法おいては、ニップル1の外周に、先ずソケット1の加締部肉厚tより広い溝幅Lを有する外周溝10を形成し、この外周溝10の底面をニップルの締結部1a,1bとする。そして更に、この締結部1a,1b外周に、前記ソケットの加締部肉厚tより狭い溝幅wの周溝6を形成すると共に、軸心C方向の周溝幅w前後にラップ代a,bを有する状態で、前記ソケットの加締部3を加締めて締結するものである。
【0041】
従って、本発明の実施の形態2に係るホース継手は、前記実施の形態1と同様、軸心C方向の周溝幅w前後にラップ代a,bを有する状態で前記ソケット2の加締部3を加締めて、このソケット2の加締部3に塑性流動を生じさせ、前記ニップル1の周溝6に食い込んだ食込部5aを形成して締結されてなる。その結果、
前記ニップル1の締結部1a,1bに対するソケット2の加締部3の軸心C方向相対位置が多少ばらついて加締加工されたとしても、シール性の優れたホース継手を提供し得る。
【実施例】
【0042】
次に、前図1,2において、ニップル1の周溝幅wを1.1〜3.1mm、ソケット2の加締部3の周溝6に対する軸心C方向における相対位置ずれ(以下、単に相対位置ずれと称す)Sを−1.0〜+1.0の範囲で変更した種々の実施の形態1に係るホース継手(表1参照)を試作し、これらのホース継手の漏れ試験を行った実施例につき、以下図5及び表1を参照しながら説明する。ここで、図2における相対位置ずれSはプラス値の状態を示している。また、ニップル1に形成した周溝6の深さdは0.6mm(一定)とした。
【0043】
先ず、下記の構成からなるホース継手部材を用いて、図5に示す漏れ試験用ホース継手を、上述した諸条件に対してN=3個ずつ試作した。この漏れ試験においては、特に、ニップル1とソケット2の接合部(食込部)5aからの漏れ有無を確認するため、ニップル1に貫通孔9を設けると共に、ソケット2の底部内表面3bとホース端面との間には10mmの空間を設けて、パワステアリング用ホース7aをニップル1に差込み、加締部4aを加締めて前記ホース継手とホース7aとを接続した。また、ニップル1の後端側はプラグ8を螺合して閉塞した。
【0044】
<ホース継手部材>
・ニップル:鉄(S12C)、外径10.0mm、内径6.5mm
・ソケット:鉄(S12C)、外径26.0mm、内径22mm、
加締部厚さt=4.1mm
・ホース :パワステアリング用ホース、外径20mm、内径10mm
【0045】
この様にホース継手に接続されたホース7aに、パワステアリング用作動液回路を想定して、その仕様圧力である15MPaの水圧を負荷し、各条件N=3のホース継手につき漏れ試験を実施した。試験結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
周溝幅w=1.1mmの比較例−1の場合、前記相対位置ずれS=−0.6mm,+0.6mmにおいては、ラップ代a,bが2.1mmあるいは0.9mmであるにも拘わらず、加締時においてソケット2の加締部3が軸心C方向の前後に傾き、その結果水漏れ試験では水漏れを生じた。一方、周溝幅w=1.6mmの実施例−1においては、全条件でソケット2の加締部3が傾くこともなく水漏れは生じなかった。
【0048】
これは、前記周溝幅wが1.4mm未満であると、ソケット2の加締部3をニップル1の締結部1a,1bに加締めた際、この周溝6によって前記ラップ代a,bを、軸心C方向の周溝幅w前後に離間させる効果が低減して加締圧が不均等となり、ソケット2の加締部3が傾いてしまうためと推測される。
【0049】
周溝幅wを2.1〜3.1mmとした実施例−2〜4においては、相対位置ずれSに関係なく、全条件でソケット2の加締部3が傾くこともなく水漏れは生じなかった。
【0050】
即ち、軸心C方向の周溝幅w前後にラップ代a,bを有する状態(a,b>0mm)で、前記ソケット2の加締部3を加締めて締結すれば、前記周溝幅w前後のニップル1の締結部1a,1bに加締時の面圧に対する反力が均等に形成され、前記ニップル1の締結部1a,1bに対するソケット2の加締部3の軸心C方向相対位置が多少ばらついたとしても、前記ソケット1の加締部3が傾くことなくく食込部5aが形成され、安定した加締加工が可能であることを示している。
【0051】
一方、比較例−2,3においては、ラップ代a,bの何れか一方がマイナス値、即ち、ニップル1の周溝6の後部内壁面6aもしくは前部内壁面6bとソケット2の開孔部5との間に隙間が形成された状態で加締られたため、加締圧が不均等となって前記ソケット2の加締部3に傾きが生じ、水漏れが発生した。水漏れ試験後軸心C方向に分割してみると、食込部5aの形成が不十分なことが確認された。
【0052】
以上説明した通り、本発明に係るホース継手の締結方法によれば、ニップルの締結部にソケットの加締部肉厚より狭い溝幅の周溝を形成すると共に、軸心方向の周溝幅前後にラップ代を有する状態で、前記ソケットの加締部を加締めて締結するので、前記周溝幅前後のニップルの締結部に加締時の面圧に対する反力が2箇所均等に形成され、前記ニップルの締結部に対するソケットの加締部の軸心方向相対位置が多少ばらついたとしても、前記ソケットの加締部が傾くことなく、安定した加締加工が可能となった。
【0053】
また、本発明に係るホース継手によれば、ニップルの締結部にソケットの加締部肉厚より狭い溝幅の周溝が形成され、軸心方向の周溝幅前後にラップ代を有する状態で前記ソケットの加締部を加締めて、このソケットの加締部に塑性流動を生じさせ、前記ニップルの周溝に食い込んだ食込部を形成して締結されてなるので、シール性の優れたホース継手を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係るホース継手の締結方法を説明するため加締前の状態を示す断面図である。
【図2】図1のホース継手において加締開始直後の状態を示す要部断面図である。
【図3】図1のホース継手が加締めて締結された後、ホースを接続された状態を一部断面で示す外形図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るホース継手の締結方法において加締開始直後の状態を示す要部断面図である。
【図5】本発明の実施例に係り、漏れ試験用に試作したホース継手を説明するため一部断面で示す外形図である。
【図6】従来例に係る管継手にホース端部を接続した管継手付きホースの一具体例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0055】
a,b:ラップ代, C:(ホース継手の)軸心,
d:(周)溝深さ, S:相対位置ずれ,
t:ソケットの加締部肉厚, w:(周)溝幅, L:外周溝幅,
1:ニップル, 1a,1b:締結部, 1c:凹凸溝,
2:ソケット, 3:加締部(底部),
3a:底部外表面, 3b:底部内表面, 3c:加締部外周面,
4:円筒部, 4a:加締部,
5:開孔部, 5a:食込部(接合部),
6:周溝, 6a:後部内壁面, 6b:前部内壁面,
7:ホース, 7a:パワステアリングホース,
8:プラグ, 9:貫通孔, 10:外周溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケットの加締部に形成された開孔部を、ニップルの締結部に加締め込んで締結するホース継手の締結方法において、前記ニップルの締結部に前記ソケットの加締部肉厚より狭い溝幅の周溝を形成すると共に、軸心方向の周溝幅前後にラップ代を有する状態で、前記ソケットの加締部を加締めて締結することを特徴とするホース継手の締結方法。
【請求項2】
前記周溝幅前後のラップ代を0.15mm以上とした状態で、前記ソケットの加締部を加締めて締結することを特徴とする請求項1に記載のホース継手の締結方法。
【請求項3】
前記ニップルに形成された周溝幅を1.4mm以上とすることを特徴とする請求項1または2に記載のホース継手の締結方法。
【請求項4】
ソケットの加締部に形成された開孔部を、ニップルの締結部に加締め込んで締結されたホース継手において、前記ニップルの締結部に前記ソケットの加締部肉厚より狭い溝幅の周溝が形成され、軸心方向の周溝幅前後にラップ代を有する状態で前記ソケットの加締部を加締めて、このソケットの加締部に塑性流動を生じさせ、前記ニップルの周溝に食い込んだ食込部を形成して締結されなることを特徴とするホース継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−257379(P2009−257379A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104783(P2008−104783)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000233619)株式会社ニチリン (69)
【Fターム(参考)】