説明

ホース継手

【課題】 スリーブの適度な縮径でホースとニップルを確実にシールする。
【解決手段】 スリーブ2の縮径部2aの軸方向略中央位置とホースHを挟んで対向するニップル1の外周面に、周方向へ延びる環状凹溝1bを形成し、この環状凹溝1b内に弾性変形可能な環状シール材4を嵌入して軸方向へ移動不能に保持すると共に、該環状シール材4の外周端を上記ニップル1の外周面から突出させて、ホースHの内周面H1に圧接させることにより、スリーブ2を縮径すれば、その縮径部2aの軸方向略中央位置と対向するホース内周面H1が、ニップル1の外周面から突出する環状シール材4に強く押し付けられて、これらホース内周面H1と環状シール材4とが強く密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水・油などの液体や空気などの気体や粉体などの流体が通るホースを、配管接続するために用いるホース継手に関する。
詳しくは、ニップルの外周面に沿ってホースを差し込み、その外周にスリーブを被せ、このスリーブを縮径してホースの内周面をニップルの外周面に密着させるホース継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のホース継手として、合成樹脂管もしくは金属管の内面又は内外両周面を合成樹脂で被覆した複合管からなる接続管に、ニップル(継手本体)の円筒状の案内部が内嵌され、この案内部の外周面に、周方向に凹溝を全周に亙り凹設して、ゴム等の弾性体からなる環状シール材が嵌合されると共に、該凹溝より先端寄りの外周面には、周方向に滑り止めの環状の凸部が軸方向へ複数設けられ、また上記接続管を挟んでスリーブ(割り環)が同心状に外嵌され、該スリーブの全長に亙る軸方向の間隙を有して縮径可能となされ、このスリーブに締め付け具(押え環)を外嵌してボルトを締付けることにより、スリーブが縮径されて、接続管の内周面とニップル外周面の環状シール材とを圧着し液密にシールされるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2549744号公報(第1−3頁、図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来のホース継手では、ボルトによるスリーブの縮径位置とニップルの案内部の外周面に嵌合された環状シール材とが軸方向へずれて配置されるため、環状シール材と対向する接続管の内周面部分の締め付け力が弱くて、十分な縮径が期待できず、特に接続管が可撓性のあるホースでその内周面が弾性変形し易い場合には、環状シール材の先端がホース内周面に圧接してもホース内周面が凹むだけで、これら両者は強く密着せず、シール性に劣るだけでなく、更に合成樹脂製ホースの内周面は、長期に亘る使用により永久ひずみで永久塑性変形して弾性反発力が低下するため、環状シール材と間に隙間が発生して、漏れが発生し易くなると共にホースが抜け易くなり、長期に亘って使用できないという問題があった。
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、スリーブの適度な縮径でホースとニップルを確実にシールすることを目的としたものである。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明の目的に加えて、ホース及びスリーブの抜け強度を向上させることを目的としたものである。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の発明の目的に加えて、スリーブを適正位置で縮径することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、スリーブの縮径部の軸方向略中央位置とホースを挟んで対向するニップルの外周面に、周方向へ延びる環状凹溝を形成し、この環状凹溝内に弾性変形可能な環状シール材を嵌入して軸方向へ移動不能に保持すると共に、該環状シール材の外周端を上記ニップルの外周面から突出させて、ホースの内周面に圧接させたことを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に、前記ニップルの外周面からスリーブに亘って、軸方向へ相互に係合する抜け止め手段を設けた構成を加えたことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明の構成に、前記スリーブを縮径する締め付け手段と、この締め付け手段がスリーブに対して軸方向へ移動不能に嵌め合う位置決め用係合部とを備え、この位置決め用係合部を環状凹溝及び環状シール材と径方向へ重なり合うように配置した構成を加えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、スリーブの縮径部の軸方向略中央位置とホースを挟んで対向するニップルの外周面に、周方向へ延びる環状凹溝を形成し、この環状凹溝内に弾性変形可能な環状シール材を嵌入して軸方向へ移動不能に保持すると共に、該環状シール材の外周端を上記ニップルの外周面から突出させて、ホースの内周面に圧接させることにより、スリーブを縮径すれば、その縮径部の軸方向略中央位置と対向するホース内周面が、ニップルの外周面から突出する環状シール材に強く押し付けられて、これらホース内周面と環状シール材とが強く密着する。
従って、スリーブの適度な縮径でホースとニップルを確実にシールすることができる。
その結果、スリーブの縮径位置とニップルの環状シール材とが軸方向へずれて配置される従来のものに比べ、スリーブを適度に縮径するだけでホースとの漏れを防止でき、特に合成樹脂製ホースのように長期に亘る使用によりホース内周面が永久ひずみで弾性反発力が低下しても、それに環状シール材が強く圧着し続けるため、隙間が発生することがなく、長期に亘って漏れやホース抜けがない配管接続を維持できる。
それにより、合成樹脂製ホースのように可撓性のあるホースであっても、例えば住宅の屋内配管など、長期に亘り配管接続したまま放置される箇所に配管材料として使用することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明の効果に加えて、ニップルの外周面からスリーブに亘って、軸方向へ相互に係合する抜け止め手段を設けることにより、ニップルに対してホースがスリーブと一緒に抜けることがない。
従って、ホース及びスリーブの抜け強度を向上させることができる。
その結果、ホースの抜け強度を高めるため、スリーブを極めて強く縮径する必要がなくなり、作業者の技量に関係なく誰が接続作業を行っても長期間に亘りホース抜けと水漏れ防止が保証できる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明の効果に加えて、スリーブを縮径する締め付け手段と、この締め付け手段がスリーブに対して軸方向へ移動不能に嵌め合う位置決め用係合部とを備え、この位置決め用係合部を環状凹溝及び環状シール材と径方向へ重なり合うように配置することにより、スリーブに対して締め付け手段が軸方向へ移動不能に位置決めされるため、この締め付け手段の内側に配置された環状凹溝及び環状シール材が最も縮径される。
従って、スリーブを適正位置で縮径することができる。
その結果、位置決め用係合部により締め付け手段の配置を管理できるから、作業者の技量に関係なく誰でも適正位置で締め付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のホース継手Aは、図1〜図10に示す如く、ホースHの接続端部が差し込まれるニップル1と、この差し込まれたホースHの外周に被せられるスリーブ2と、このスリーブ2を縮径させる締め付け手段3とから構成され、この締め付け手段3で上記スリーブ2を縮径させることにより、該ホースHの接続端部内周面H1を、上記ニップル1の案内部1aの外周面に密着させるものである。
【0011】
上記ニップル1は、例えば真鍮やステンレスなどの錆難い金属材料で略円筒状に形成され、その軸方向先端側にホースHの接続端部が差し込まれる案内部1aを形成し、この案内部1aの外周面には、周方向へ延びる環状凹溝1bを、後述するスリーブ2の縮径部2aの軸方向略中央位置とホースHの接続端部を挟んで対向する位置に形成している。
【0012】
この環状凹溝1bの内部には、例えばゴムなどの弾性体からなる弾性変形可能な環状シール材4を嵌入すると共に、この環状シール材4の外周端を上記ニップル1の外周面から突出させ、これら環状凹溝1b及び環状シール材4の配設位置を、後述する締め付け手段3によるスリーブ2の縮径部2aの軸方向略中央位置と径方向へ重なり合うように位置合わせている。
【0013】
上記スリーブ2は、その一例として例えば耐熱性に優れた合成樹脂や金属などの弾性変形可能な材料で略円筒状に形成され、その軸方向寸法が上記ニップル1の案内部1aと対向する長さ寸法と略同じ締付筒状部を有し、この締付筒状部は、軸方向へ延びるすり割り2bを周方向へ適宜間隔毎に複数形成するか、又は周方向へ一本のみ形成することで、弾性的に縮径可能に構成されている。
この場合の締め付け手段3としては、工具の回転操作などにより径方向へ徐々に緊締するホースバンド3aを使用して、外側からスリーブ2全体を締め付けることにより、内方へ弾性変形させて縮径部2aを形成する。
【0014】
また、上記スリーブ2の他の例としては、例えばステンレスなどの塑性変形可能な剛性材料からなる板材をプレス加工やその他の成形加工することにより、肉厚が薄い略円筒状に形成して、縮径可能なカシメパイプとすることも可能である。
この場合の締め付け手段3としては、例えば駆動式や手動式のカシメ機3bを使用し、該カシメパイプをカシメ加工して締め付けることにより、内方へ塑性変形させて縮径部2aを形成する。
【0015】
更に、主にホースH内を通る流体の内圧上昇によりニップル1に対してホースHがスリーブ2と一緒に抜けないように、上記ニップル1の外周面からスリーブ2に亘って、軸方向へ相互に係合する抜け止め手段5を設けることが好ましい。
【0016】
一方、前記ホースHは、例えば塩化ビニルなどの軟質合成樹脂やゴムなどの軟質材料で弾性変形可能に構成され、その内周面H1と外周面H2が平坦なものを使用することが好ましい。
以下、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
この実施例1は、図1(a)(b)〜図3に示す如く、前記ニップル1の案内部1aが、切削加工でその外周面に周方向へ延びる環状凹部1cと環状凸部1dを夫々軸方向へ交互に複数ずつ形成して竹の子状に形成されており、前記スリーブ2が、周方向へ開口幅が狭いすり割り2bを周方向へ適宜間隔毎に複数形成することで弾性的に縮径可能に構成され、その外側に前記締め付け手段3としてホースバンド3aを配置することにより、該スリーブ2全体が内方へ弾性変形して縮径される場合を示すものである。
【0018】
上記ニップル1の環状凸部1dのどれか一つ又は複数の外周面には、前記締め付け手段3のホースバンド3aで弾性変形されるスリーブ2の縮径部2aの軸方向略中央位置とホースHの接続端部を介して対向する位置に、環状凹溝1bを凹設して環状シール材4が嵌入される。
図示例では、スリーブ2の縮径部2aの軸方向中央位置を挟んで配置される一対の環状凸部1dに環状凹溝1bを夫々凹設し、これら環状凹溝1bに環状シール材4を夫々嵌入している。
【0019】
上記案内部1aの先端外周には、ホースHを挿入し易くするために、その先端へ向けて徐々に小径となるテーパー面1eを形成している。
【0020】
上記ニップル1の軸方向基端側には、他の機器のホース接続口(図示せず)に接続するための接続具1fが設けられ、この接続具1fとして図示例の場合には、内ネジ1gが刻設されたナットを回転自在に取り付け、上記他の機器のホース接続口の外周面に刻設された外ネジと螺合して接続されるようにしている。
その他の構造として、例えばホース接続口の内周面に内ネジが刻設される場合には、これと対応して外ネジが刻設された接続具1fを使用するなど、該接続具1fはその用途に応じて図示例以外の構造とすることも可能である。
【0021】
そして、上記スリーブ2の外周には、前記締め付け手段3のホースバンド3aが配置されてその操作により全体を縮径させるが、これらホースバンド3aの配設位置と、上記環状凹溝1b及び環状シール材4の配設位置とを夫々軸方向へ位置合わせして、これら両者が径方向へ重なり合うようにしている。
【0022】
その具体例として、上記スリーブ2の外周面には、締め付け手段3のホースバンド3aと軸方向へ移動不能に嵌め合う位置決め用係合部2cを、上記環状凹溝1b及び環状シール材4の配設位置と径方向へ重なり合うように形成し、この位置決め用係合部2cで軸方向へ位置決めされた締め付け手段3のホースバンド3aを締め付けることにより、該位置決め用係合部2cが縮径されて縮径部2aとなる。
この位置決め用係合部2cとして図示例の場合には、上記スリーブ2の外周面に周方向へ延びる帯状溝を凹設し、その溝両端にホースバンド3aの幅方向両端と係合する段差を形成しているが、その他の例として、ホースバンド3aの幅方向両端と係合する一対の突起を突設するなど、それ以外の形状にすることも可能である。
【0023】
このホースバンド3aとして図示例の場合には、例えば実公平7−28471号公報に開示されるようなホース締付具を使用しているが、それ以外に平バンドなどの他の構造のものを使用することも可能である。
【0024】
また、上記スリーブ2には、前記ニップル1の先端テーパー面1eと対向する部分に、この先端テーパー面1eへ向けてホース内周面H1を押圧する押圧筒状部2dを形成することが好ましく、この押圧筒状部2dにより、該先端テーパー面1eと対向するホース内周面H1が膨らんでこれらの隙間に、ホースHの内部を通る流体が浸入するのを防止している。
【0025】
この押圧筒状部2dとして図示例の場合には、前記案内部1aの先端テーパー面1eと対向するスリーブ2の部分を、前記すり割り2bを形成しないで筒状に形成すると共に、この筒状部分を案内部1aの先端縁よりも突出させることで、該先端テーパー面1eと対向するホース内周面H1が膨らむのを防止している。
【0026】
上記スリーブ2の開口縁には、ホースHを挿入し易くするために、テーパー状又は略円弧状に傾斜するガイド面2eを形成することが望ましい。
【0027】
更に、上記ニップル1の外周面からスリーブ2に亘り設けられる抜け止め手段5として、ニップル1の案内部1aの基端側外周面に係止凹部5aを形成し、この係止凹部5aに例えばC型止め輪やE型止め輪などの係止リング5bを嵌め込むと共に、スリーブ2の基端縁には、ホースHの切断面H3と対向するフランジ部5cを内方へ一体形成し、これらニップル1の係止リング5bとスリーブ2のフランジ部5cとを軸方向へ相互に係合させることで、主にホースH内を通る流体の内圧上昇によりニップル1に対してホースHがスリーブ2と一緒に抜けないようにしている。
【0028】
図示例では、ニップル1の係止リング5bとスリーブ2のフランジ部5cとの間に、例えば金属製の座金などからなる補助係止リング5dを介装することで、フランジ部5cと確実に引っ掛かるようにしているが、係止リング5bの突出幅がフランジ部5cを引っ掛けるために十分であれば、補助係止リング5dは介装しなくても良い。
【0029】
一方、本実施例では前記ホースHとして、その外周を何も覆わず露出したまま使用し、このホースHの一端を例えば水道などの給水源(図示せず)に配管接続する給水配管の場合を示している。
【0030】
次に、斯かるホース継手Aの使用方法及び作用効果について説明する。
先ず、適正長さに切断されたホースHの接続端部をスリーブ2の内部に挿入して、好ましくはその切断面H3をニップル1の係止リング5bに突き当ててから、締め付け手段3のホースバンド3aを締め付け操作して徐々に緊締すると、スリーブ2の締付筒状部が縮径される。
【0031】
それにより、各すり割り2bの端面同士が互いに接近して、その内側に挿入されたホースHの接続端部が、ニップル1の案内部1aへ向け押圧され、その内周面H1を案内部1aの環状凹部1cと環状凸部1dに圧着させる。
これら圧着に伴い、ホース内周面H1でも環状凸部1dと対向する部分は、環状凹部1cと対向する部分よりも強く圧縮するため、より多く圧縮変形して、シール強度が高くなる。
【0032】
その際、このホースバンド3aは、位置決め用係合部2cによりスリーブ2に対して軸方向へ移動不能に位置決めされるため、該ホースバンド3aの内側に配置されたホース部分が最も縮径されると共に、この縮径部2の軸方向略中央位置が、上記環状凹溝1b及び環状シール材4の配設位置と夫々径方向へ重なり合うように位置決めされて、ホース内周面H1の中でも、環状凹溝1b及び環状シール材4と対向する部分が更に圧縮変形し、この最も圧縮変形したホース部分と環状シール材4とが更に強く圧着する。
【0033】
それにより、締め付け手段3のホースバンド3aでスリーブ2を適度に縮径すれば、長期に亘る使用によりホース内周面H1が永久ひずみで弾性反発力が低下しても、それに環状シール材4が強く圧着するため、ホース内周面H1とニップル1の案内部1aとを確実にシールできると共に、環状シール材4との摩擦抵抗によってホース抜けを防止できる。
それに加えて、位置決め用係合部2cにより締め付け手段3の取り付け位置を管理できるから、作業者の技量に関係なく誰でも適正位置で締め付けることができる。
【0034】
更に、スリーブ2のすり割り2bの端面同士が当接する縮径時における締付筒状部の内径を、適正値で縮径されたホースHの外径と一致するように設定すれば、締め付け手段3のホースバンド3aでホースHが必要以上に縮径されることがなく、該ホースHがその反発弾性を生かした疲労し難い最適な状態で締め付けられるから、作業者の技量に関係なく誰でも理想的なホースHの締め付け強さを管理できるという利点がある。
【0035】
また、スリーブ2の押圧筒状部2dでホース内周面H1をニップル1の先端テーパー面1eへ向けて押圧するようにすれば、ニップル1の先端テーパー面1eと対向するホース部分が膨らんで、先端テーパー面1eとの間に隙間が発生しないから、ニップル1の先端テーパー面1eからホース内周面H1との間に流体が浸入ことで発生する漏れを防止できるという利点がある。
【実施例2】
【0036】
この実施例2は、図4(a)(b)〜図6に示す如く、前記抜け止め手段5として、ニップル1の案内部1aの基端側外周面に形成された抜け止め手段5の係止凹部5aに、スリーブ2の基端縁に形成されたフランジ部5cを嵌め込んで、これら係止凹部5aとフランジ部5cを軸方向へ相互に係合させることにより、ホースH内を通る流体の内圧上昇でニップル1に対してホースHがスリーブ2と一緒に抜けないようにした構成が、前記図1〜図3に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1〜図3に示した実施例1と同じものである。
【0037】
更に必要に応じて、スリーブ2のフランジ部5cに、例えば金属などの剛体からなる補強爪部5eをインサート成形などで一体的に設けることにより、該フランジ部5cの曲げ強度を高めてスリーブ2の抜け強度を向上させることも可能である。
【0038】
従って、図4(a)(b)〜図6に示す実施例2も、上述した実施例1と同様な作用効果が得られ、更に実施例1の抜け止め手段5のように、係止リング5bや補助係止リング5dを組み付ける必要がないため、それよりも部品点数が減ると共に組み付け作業が容易になってコストの低減化が図れるという利点がある。
【0039】
また、本実施例では前記ホースHとして、その外周が全長に亘り管状の断熱材H4により一体的に被覆された被覆ホースを使用し、この被覆ホースの一端が例えばヒートポンプ給湯機やボイラーなどの給湯源(図示せず)に配管接続される給湯配管の場合を示している。
【0040】
この場合、前記スリーブ2には、ホースHの外周に被覆された管状断熱材H4の先端部と嵌合するカバー部2fを一体又は一体的に形成して、これらホースH及び管状断熱材H4の接続端部を一つのスリーブ2で一緒に覆うことが望ましい。
【0041】
図示例の場合には、前記スリーブ2の先端側に、上記管状断熱材H4の外周面と略同径か又は若干小さい内径のカバー部2fを連設し、これらスリーブ2とカバー部2fとの間に、上記管状断熱材H4の切断面H5と対向する突き当て段部2gを形成し、この突き当て段部2gの内側には、ホースHを挿入し易くするために、テーパー状又は略円弧状に傾斜するガイド面2eが形成されている。
【0042】
このようなスリーブ2及びカバー部2fを使って被覆ホースを接続する場合には、そのホースH及び管状断熱材H4の接続端部を、ホースHの切断面H3から管状断熱材H4の切断面H5まで突出長さL1が、スリーブ2のフランジ部5cから突き当て段部2gまでの内のり寸法と一致するように切断する必要がある。
【0043】
そこで、本実施例では、スリーブ2のフランジ部5cから突き当て段部2gまでの外のり寸法L2と、突き当て段部2gからカバー部2fの先端縁までの外のり寸法L3とを、スリーブ2のフランジ部5cから突き当て段部2gまでの内のり寸法L1と一致するように設定している。
【0044】
従って、作業者はホースHの切断面H3を、スリーブ2の基端縁(フランジ部5c)に位置合わせして、突き当て段部2gの位置で管状断熱材H4のみを切断するか、又はホースHの切断面H3を突き当て段部2gに位置合わせして、カバー部2fの先端縁の位置で管状断熱材H4のみを切断すれば、ホースH及び管状断熱材H4の接続端部を、夫々の適正長さに簡単に切断できる。
【0045】
それにより、この切断された被覆ホースの接続端部をそのままスリーブ2に挿入すれば、ホースHの切断面H3がスリーブ2のフランジ部5cに突き当てながら、管状断熱材H4の切断面H5をスリーブ2の突き当て段部2gに当接されることができて、これらの間に隙間ができることなく夫々密着させることができる。
換言すれば、本実施例のスリーブ2及びカバー部2fは、被覆ホースを適正長さに切断するためのゲージ機能を有していることになる。
【0046】
更に加えて、この給湯配管と、実施例1で示した給水配管とをペアで使用すれば、可撓性のある弾性変形可能なホースHであっても、例えばヒートポンプ給湯機やボイラーなどの給湯源と水道などの給水源に夫々配管接続する住宅の屋内配管など、長期に亘り配管接続したまま放置される箇所に配管材料として使用することができるという利点がある。
【実施例3】
【0047】
この実施例3は、図7(a)(b)に示す如く、前記ニップル1の案内部1aが肉厚状のパイプで構成され、その外周面に切削加工で環状凹溝1bを形成し、この環状凹溝1bの内部に環状シール材4を突出するように嵌入し、締め付け手段3によるスリーブ2の縮径に伴ってホース内周面H1と強く密着させた構成が、前記実施例1や実施例2とは異なり、それ以外の構成は実施例1や実施例2と同じものである。
【0048】
図示例の場合には、切削加工で環状凹溝1bを、スリーブ2の縮径部2aの軸方向中央位置を挟むように一対形成して、それらに嵌入される環状シール材4とホース内周面H1との間に高いシール性とホース抜け強度が得られるように設定しているが、その他の例として、これら設定値に対応するように環状凹溝1bを一つだけ形成したり、また三つ以上形成することも可能である。
【0049】
従って、図7(a)(b)に示す実施例3も、上述した実施例1や実施例2と同様な作用効果が得られ、更に実施例1や実施例2のニップル1のように、ニップル1の案内部1aを竹の子状に切削加工する必要がないため、それらよりも案内部1aの切削加工が容易になってコストの低減化が図れるという利点がある。
【実施例4】
【0050】
この実施例4は、図8(a)(b)に示す如く、前記ニップル1の案内部1aが肉薄状のパイプで構成され、その外周面にプレス加工で環状凹溝1bを形成し、この環状凹溝1bの内部に環状シール材4を突出するように嵌入し、締め付け手段3によるスリーブ2の縮径に伴ってホース内周面H1と強く密着させた構成が、前記実施例1や実施例2とは異なり、それ以外の構成は実施例1や実施例2と同じものである。
【0051】
図示例の場合には、プレス加工で環状凹溝1bを、スリーブ2の縮径部2aの軸方向中央位置を挟むように一対形成して、それらに嵌入される環状シール材4とホース内周面H1との間に高いシール性とホース抜け強度が得られるように設定しているが、その他の例として、これら設定値に対応するように環状凹溝1bを一つだけ形成したり、また三つ以上形成することも可能である。
【0052】
従って、図8(a)(b)に示す実施例4も、上述した実施例1や実施例2と同様な作用効果が得られ、更に実施例1や実施例2のニップル1のように、ニップル1の案内部1aを竹の子状に切削加工する必要がないため、それらよりも案内部1aの加工が容易になってコストの低減化が図れるという利点がある。
【実施例5】
【0053】
この実施例5は、図9(a)(b)に示す如く、前記スリーブ2の位置決め用係合部2cとして、ホースバンド3aの幅方向両端と係合する帯状溝を凹設するのではなく、これに代えて、少なくともホースバンド3aの幅方向一端と係合する折り返し片2c′を連設した構成が、前記実施例1〜実施例4とは異なり、それ以外の構成は実施例1〜実施例4と同じものである。
【0054】
図示例では、上記スリーブ2の先端部を外方へ断面略コの字形又は略U字形に屈曲形成して折り返し片2c′が形成され、この位置決め用係合部2cとなる該スリーブ2の先端側のみに、前記すり割り2bを周方向へ適宜間隔毎に複数形成するか、又は周方向へ一本のみ形成している。
【0055】
従って、図9(a)(b)に示す実施例5も、上述した実施例1や実施例2と同様な作用効果が得られ、更に実施例1〜実施例4のよりも、スリーブ2の肉厚寸法を薄くすることができるため、コストの低減化が図れると共に、ホースバンド3aの抜け止め機能が向上するという利点がある。
【実施例6】
【0056】
この実施例6は、図10(a)(b)に示す如く、前記スリーブ2を例えばステンレスなどの弾性変形可能な金属により肉厚が薄い略円筒状に形成し、その基端縁に内方へ屈曲形成されたフランジ部5cを、ニップル1の案内部1aの基端側外周面に形成された係止凹部5aに嵌め込んで、これらフランジ部5cと係止凹部5aを軸方向へ相互に係合させると共に、該スリーブ2の外周には、締め付け手段3のホースバンド3aと軸方向へ移動不能に嵌め合う位置決め用係合部2cを一体形成した構成が、前記実施例1〜実施例5とは異なり、それ以外の構成は実施例1〜実施例5と同じものである。
【0057】
上記ニップル1の係止凹部5aに嵌め込む前の時点で、スリーブ2のフランジ部5cを、図10(a)の一点鎖線に示す如く、断面くの字形に屈曲させると共に、その内径よりも大径な段部5fを上記係止凹部5aの基端側に突出形成しておき、このスリーブ2のフランジ部5cをニップル1の案内部1aの外周面沿いに挿入して該段部5fへ突き当てることにより、図10(a)の実線に示す如く、断面L字形に屈曲変形させて係止凹部5aと軸方向へ移動不能に嵌合させている。
【0058】
従って、図10(a)(b)に示す実施例6も、上述した実施例1や実施例2と同様な作用効果が得られ、更に実施例1〜実施例5のように、フランジ部5cの曲げ強度を高めるために、金属などの剛体からなる補強爪部5eをインサート成形などで一体的に設ける必要がないから、簡単な構造でスリーブ2の抜け強度を向上できて、コストの低減化が図れると共に、ホースバンド3aの抜け止め機能が向上するという利点がある。
【0059】
更に図示例では、上記スリーブ2の先端部を外方へ断面略コの字形又は略U字形に屈曲形成して折り返し片2c′が形成されると共に、該スリーブ2の軸方向中間位置を外方へ断面山形状に屈曲形成して、これら折り返し片2c′と山形凸部2c″とでホースバンド3aの幅方向両端を挟み込むことにより、軸方向へ位置決めしている。
【0060】
また、上記スリーブ2のすり割り2bの開口幅を周方向へ広くすれば、ホースバンド3aで締め付けた時に、該ホースバンド3aの内面がホースHの接続端部外周面H2に接触して直接食い込むため、ホースHの抜け強度を向上できるという利点もある。
【実施例7】
【0061】
この実施例7は、図11(a)(b)に示す如く、前記スリーブ2として肉厚が薄いカシメパイプを使用すると共に、前記締め付け手段3としてカシメ機3bを使用し、該カシメパイプ2の締付筒状部をカシメ加工して内方へ塑性変形させて縮径することにより、この縮径部2aで上記環状凹溝1bの内部に嵌入された環状シール材4とホース内周面H1とを強く密着させた構成が、前記実施例1〜実施例6とは異なり、それ以外の構成は実施例1〜実施例6と同じものである。
【0062】
前記ニップル1の案内部1aは、図示例の場合、肉厚状のパイプで構成され、その外周面に切削加工で環状凹溝1bと抜け止め手段5の係止凹部5aを夫々形成しており、この抜け止め手段5の係止凹部5aに、上記カシメパイプ2の基端縁に内方へ屈曲形成されたフランジ部5cを嵌め込んで、これら係止凹部5aとフランジ部5cを軸方向へ相互に係合させている。
その他の例として、肉薄状のパイプの外周面にプレス加工で環状凹溝1bと抜け止め手段5の係止凹部5aを夫々形成することも可能である。
【0063】
従って、図11(a)(b)に示す実施例7も、上述した実施例1や実施例2と同様な作用効果が得られ、更に実施例1〜実施例6のようにホース継手A毎にホースバンド3aが必要とならないため、その分だけ部品点数を減らすことができてコストの低減化が図れるという利点がある。
【0064】
更に図示例の場合には、上記ニップル1の係止凹部5aにフランジ部5cの内周端を嵌入した後、該フランジ部5cの外周端5c′の外側位置と、ニップル1の係止凹部5aの内側位置とから挟み込むようにプレス加工することにより、これら両者を互いに塑性変形させて軸方向へ移動不能に嵌合している。
このプレス加工によって、フランジ部5cの外周端5c′は図示例のように部分的に凹む場合がある。
【0065】
その他の例として、図10(a)に示した実施例6のように、上記ニップル1の係止凹部5aに嵌め込む前の時点で、スリーブ2のフランジ部5cを、断面くの字形に屈曲させると共に、その内径よりも大径な段部を上記係止凹部5aの基端側に突出形成しておき、このスリーブ2のフランジ部5cをニップル1の案内部1aの外周面沿いに挿入して該段部へ突き当てることにより、断面L字形に屈曲変形させて係止凹部5aと軸方向へ移動不能に嵌合させることも可能である。
【0066】
それにより、図示例のようにフランジ部5cの外周端5c′の外側位置と、ニップル1の係止凹部5aの内側位置とから挟み込むようにプレス加工する必要がなくなるから、その分だけ組立性を向上できてコストの低減化が図れるという利点もある。
【0067】
尚、前示実施例1では、給水配管の場合を示し、実施例2では給湯配管の場合を示したが、これに限定されず、実施例1を給湯配管用に変更したり、実施例2を給水配管用に変更しても良い。
更に、実施例3〜6では給水配管の場合を図示したが、これらも同様に給湯配管用に変更しても良い。
また、前記抜け止め手段5は、上述した構造に限定されず、図示せぬが例えばスリーブ2側からニップル1の外周面に向け径方向へピンなどの固定具を挿通して、これらスリーブ2及びニップル1の外周面に対し夫々軸方向へ移動不能に係止させることにより、ニップル1に対するスリーブ2の抜け止めを行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例1を示すホース継手の縦断正面図であり、(a)が分解時を示し、(b)は組立完成時を示している。
【図2】図1(a)の(2)−(2)線に沿える拡大縦断側面図である。
【図3】図1(b)の(3)−(3)線に沿える拡大縦断側面図であり、締め付け手段を二点鎖線で示している。
【図4】本発明の実施例2を示すホース継手の縦断正面図であり、(a)が分解時を示し、(b)は組立完成時を示している。
【図5】図4(a)の(5)−(5)線に沿える拡大縦断側面図である。
【図6】図4(b)の(6)−(6)線に沿える拡大縦断側面図であり、締め付け手段を二点鎖線で示している。
【図7】本発明の実施例3を示すホース継手の縦断正面図であり、(a)が分解時を示し、(b)は組立完成時を示している。
【図8】本発明の実施例4を示すホース継手の縦断正面図であり、(a)が分解時を示し、(b)は組立完成時を示している。
【図9】本発明の実施例5を示すホース継手の縦断正面図であり、(a)が分解時を示し、(b)は組立完成時を示している。
【図10】本発明の実施例6を示すホース継手の縦断正面図であり、(a)が分解時を示し、(b)は組立完成時を示している。
【図11】本発明の実施例7を示すホース継手の縦断正面図であり、(a)が分解時を示し、(b)は組立完成時を示している。
【符号の説明】
【0069】
A ホース継手 H ホース
H1 内周面(接続端部内周面) H2 外周面
H3 切断面 H4 管状の断熱材
H5 切断面 1 ニップル
1a 案内部 1b 環状凹溝
1c 環状凹部 1d 環状凸部
1e 先端のテーパー面 1f 接続具
1g 内ネジ 2 スリーブ
2a 縮径部 2b すり割り
2c 位置決め用係合部 2c′ 折り返し片
2c″ 山形凸部 2d 押圧筒状部
2e ガイド面 2f カバー部
2g 突き当て段部 3 締め付け手段
3a ホースバンド 3b カシメ機
4 環状シール材 5 抜け止め手段
5a 係止凹部 5b 係止リング
5c フランジ部 5c′ 外周端
5d 補助係止リング 5e 補強爪部
5f 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニップル(1)の外周面に沿ってホース(H)を差し込み、その外周にスリーブ(2)を被せ、このスリーブ(2)を縮径してホース(H)の内周面(H1)をニップル(1)の外周面に密着させるホース継手において、
前記スリーブ(2)の縮径部(2a)の軸方向略中央位置とホース(H)を挟んで対向するニップル(1)の外周面に、周方向へ延びる環状凹溝(1b)を形成し、この環状凹溝(1b)内に弾性変形可能な環状シール材(4)を嵌入して軸方向へ移動不能に保持すると共に、該環状シール材(4)の外周端を上記ニップル(1)の外周面から突出させて、ホース(H)の内周面(H1)に圧接させたことを特徴とするホース継手。
【請求項2】
前記ニップル(1)の外周面からスリーブ(2)に亘って、軸方向へ相互に係合する抜け止め手段(5)を設けた請求項1記載のホース継手。
【請求項3】
前記スリーブ(2)を縮径する締め付け手段(3)と、この締め付け手段(3)がスリーブ(2)に対して軸方向へ移動不能に嵌め合う位置決め用係合部(2c)とを備え、この位置決め用係合部(2c)を環状凹溝(1b)及び環状シール材(4)と径方向へ重なり合うように配置した請求項1または2記載のホース継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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