ホーンスピーカ
【課題】 効率が高いホーンスピーカを容易に運搬可能に構成する。
【解決手段】 ヒンジ12によって結合された部材4a、4を組み立てることによってホーン部2が形成される。ホーン部2は組み立て状態において、スロート18を一端に、スロート18よりも面積が大きいマウス20を他端に有している。スロート18に着脱自在にドライバ部22が設けられている。
【解決手段】 ヒンジ12によって結合された部材4a、4を組み立てることによってホーン部2が形成される。ホーン部2は組み立て状態において、スロート18を一端に、スロート18よりも面積が大きいマウス20を他端に有している。スロート18に着脱自在にドライバ部22が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーンスピーカに関し、特に運搬が容易なものに関する。
【背景技術】
【0002】
エレキギター等の電気楽器や電子キーボード等の電子楽器を演奏する場合、楽器から出力された楽音信号を増幅する増幅器と、増幅された楽音信号を楽音として放射するスピーカとが用いられる。そのため、増幅器とスピーカ装置とをセットにしたギターアンプ、キーボードアンプ等と称される増幅機器が販売されている。コンサートを行う場合、演奏者は、楽器の他に、増幅機器をコンサート会場まで運搬する必要がある。
【0003】
ギターアンプやキーボードアンプで大きな楽音を放射するには、増幅器の出力を大きくすると共に、スピーカ装置に使用しているスピーカを大型のものにしたり、スピーカの数を増加させたりする必要がある。増幅器の出力を大きくすると、増幅器の消費電力が増加し、そのため増幅器の電源回路を大型化する必要があり、増幅器の重量が増加する。大きなスピーカを使用したりスピーカの数を増加させたりするには、スピーカにコーンスピーカを使用している場合、スピーカ装置のスピーカキャビネットを大型化する必要があり、スピーカ装置の重量も増加する。このため、大きな楽音を放射できる増幅機器を運搬する際に大きな苦労を伴う。
【0004】
例えば特許文献1には、コーンスピーカを用いたスピーカ装置において、スピーカキャビネットを折り畳み可能とする技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】実開昭56−43982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術を使用すれば、コーンスピーカを備えたスピーカ装置の運搬を容易にすることが可能となる。しかし、コーンスピーカは効率が低く、増幅器の消費電力及び重量の増加の問題を解消できない。スピーカには、コーンスピーカの他に、ホーンスピーカがあり、これはコーンスピーカと比較して効率が高く、ホーンスピーカの使用によって増幅器の消費電力及び重量の増加の問題を解消できる。しかし、ホーンスピーカでは、ホーンのサイズが低周波数域の周波数特性に影響を与えるので、充分な低音を出力するためには、大きなサイズのものとしなければならず、運搬が困難である。
【0007】
本発明は、効率が高いホーンスピーカを容易に運搬可能に構成し、このホーンスピーカと共に使用される増幅器も容易に運搬可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のホーンスピーカは、ホーン部を有している。このホーン部は、複数の部材を組み立てることによって形成され、組み立て状態において、第1の開口を一端に、第1の開口よりも面積が大きい第2の開口を他端に有している。部材は、ほぼ平板状のものを使用することが望ましい。各部材の組み立ては、例えば隣接する部材の第1及び第2の開口を繋ぐ互いに接する辺に沿う軸の回りに回動可能に結合することが可能である。具体的にはヒンジによって各部材を結合しておき、各部材のうち隣接するものがそれぞれ所定の角度をなすようにする。或いは、ビス止め、嵌合、ワイヤによる固定等の種々の固定法を使用して各部材の隣接するものがそれぞれ所定の角度をなすようにしてもよい。第1の開口と第2の開口とは相似形とすることが望ましく、第1及び第2の開口が多角形の場合、第1または第2の開口側からホーン部を見たとき、両多角形の対応する1つの辺が重なるように第1及び第2の開口を配置することが望ましい。第1の開口にドライバ部が設けられている。
【0009】
このように構成されたホーンスピーカでは、ホーン部が組み立て可能であるので、ホーン部を嵩張らない非組み立て状態として運搬することができ、運搬が容易である。しかも、ホーンスピーカであるので、効率が高く、共に使用する増幅器の出力を大きくする必要が無く、増幅器の電源回路も小型のものを使用でき、増幅器を容易に運搬可能に小型化することができる。また、運搬が容易であるので、組み立てた状態で大きなホーン部となるようにすることもでき、充分な低音を出力することも可能となる。なお、ドライバ部は第1の開口に着脱自在に設けることもできる。この場合、ホーン部からドライバ部を分離して運搬できるので、運搬が更に容易になる。
【0010】
前記ホーン部は、前記組み立て状態において、第1及び第2の開口は相似な多角形をなし、それぞれの対応する一辺を繋ぐ面をほぼ平坦な面、例えば床面等に配置することにより、このホーンスピーカから放射された音が前記繋ぐ面で反射され、音の鏡像が形成される。このため、聴取者には、前記繋ぐ面の下方にもう1つのスピーカがあるのと同様に音が聞こえる。これによって、本来必要とする大きさの1/2の大きさにホーンスピーカをすることができ、更に運搬が容易になる。また、前記繋ぐ面を開放面としてすることができる。この場合にも、開口面をほぼ平坦な面に配置することにより、音の鏡像が形成され、ホーンスピーカを小型にすることができる上に、運搬が益々容易になる。
【0011】
或いは、隣接する部材の第1及び第2の開口を繋ぐ互いに接する辺に沿う軸の回りに回動可能に結合することもできる。このように構成すると、各部材によってホーン部を形成するのが容易に行えるし、第1及び第2の開口の形状を、それぞれ同じ多角形であるが、その形状の異なるものとすることができる。例えば第1及び第2の開口が三角形とすると、頂角の大きさが異なる様々な三角形とすることができる。これによって、第1及び第2の開口の面積を所望の大きさとすることができ、ホーンスピーカの設置場所付近に適した形状を選択することができ、また使用者が好ましく感じるホーンスピーカのデザインを選択できる。
【0012】
更に、これら部材を3個以上設けることもできる。この場合、第1及び第2の開口の形状を異なる多角形とすることができる。例えば三角形状から五角形状とすることができる。これによっても、第1及び第2の開口の形状や面積を所望のものとすることができ、ホーンスピーカの形状のさらなる多様化を図ることが可能となる。
【0013】
前記複数の部材を、第1及び第2の開口を繋ぐ仮想線に沿って分割形成することもできる。このように構成すれば、分割された部材ごとに運搬が可能となるので、組み立てた状態で長さの長いホーンスピーカでも容易に運搬することができる。
【0014】
前記組み立て状態における前記ホーン内に第1の開口から第2の開口に向かう折り返し音道を形成する音道形成部材を前記ホーン内に着脱自在に設けることができる。このようにホーン部内に折り返し音道を形成すると、ホーン部の長さを短くすることができる。
【0015】
組み立て状態におけるホーン内部の第1及び第2の開口間の内面形状、例えば内面の縦断面形状が指数関数状または双曲線関数状に変化するように、前記ホーンの内面となる前記複数の部材の面に突部を形成することもできる。このように構成すると、低周波数域での周波数特性の落ち込みを減少させることができる。
【0016】
周波数特性を補正する補正回路を設け、この補正回路の出力をドライバ部に供給することもできる。この場合、補正回路の出力を増幅器によって増幅してドライバ部に供給することが望ましい。また、補正回路及び増幅器の一方または双方をドライバ部に組み込むこともできる。補正回路を使用することによって、望ましくない周波数特性がホーンスピーカに生じたとしても、その望ましくない周波数特性を補正回路で補正することができ、ホーン設計の制約を減らすことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、効率が高いホーンスピーカを容易に運搬できるようにできる上に、このホーンスピーカと共に使用される増幅器も運搬が容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態のホーンスピーカは、図1(a)乃至(c)に示すように、ホーン部2を有している。ホーン部2は、複数、例えば2つの部材、具体的には板部材4a、4bからなる。これら板部材4a、4bは、同じ形状で、側面形状が台形状である。即ち、板部材4a、4bは、直線状の辺6a、6bを有し、これと平行でかつ離れて、辺6a、6bよりも短く、一端部が辺6a、6bの一端部と同じ位置にある直線状の辺8a、8bと、辺6a、6bと辺8a、8bとの一端部間を繋ぐ直線状の辺7a、7bと、辺6a、6bの他端部と辺8a、8bの他端部とを繋ぐ斜辺10a、10bとを、有する平板状のものである。これら板部材4a、4bは、それらの斜辺10a、10bを合わせた状態で、複数の結合具、例えば3個のヒンジ12によって結合されている。これらヒンジ12は、斜辺10a、10bの長さ方向に沿って間隔を隔てて配置されている。ヒンジ12によって結合されているので、板部材4a、4bは、斜辺10a、10bの長さ方向に、図2に示すように互いに重なり合った状態から、両者が互いに平面をなすまで180度自由に回転できる。
【0019】
これら板部材4a、4bは、図2に示す状態から互いに所定の角度をなすように開かれ、図1(b)に示す角度維持部材、例えば棒状部材14によってその所定の角度を維持される。これによってホーン部2が組み立てられる。この組み立てた状態では、辺7a、7b間が開放された開放面となっている。即ち、このホーン部2には、底板が存在せず、底板の分だけ軽量にすることができ、運搬が容易である。
【0020】
棒状部材14は、その上面に板部材4a、4bの外面下部に接触する接触部14a、14bを有し、この接触部14a、14bが、板部材4a、4bの所定角度を維持している。なお、これら棒状部材14の両端を板部材4a、4bの外面側に突出させるために、図1(a)及び図2に示すように板部材4a、4bの辺6a、6bの近傍にある辺7a、7bに切欠16が形成されている。
【0021】
このように組み立てられた状態において、辺8a、8b側に面積が小さい三角形状の開口が形成され、これがスロート18である。辺6a、6b側に面積が大きい三角形状の開口が形成され、これがマウス20である。スロート18とマウス20とは相似形の三角形であり、両者の底辺は同じ位置にある。ホーン部2内では、スロート18からマウス20に進むに従って、その縦断面積が徐々に増加していく。
【0022】
スロート18には、ドライバ部22が、例えばビスによって着脱自在に取り付けられている。従って、図2に示すようにスピーカとして使用しない場合には、ドライバ部22は、板部材4a、4bから取り外されている。ドライバ部22は、ホーン部2内に音を放射する放射ユニットを有し、これがホーン部2内を向くようにスロート18に取り付けられている。放射ユニットには、振動源である振動板に充分な負荷がかかるように絞りが設けられている。ドライバ部22には、この他に、アナログ可聴音信号を供給する入力端子と、アナログ可聴音信号をデジタル可聴音信号に変換するA/D変換器と、デジタル可聴音信号にデジタル処理、例えば周波数特性の調整を行う制御手段、例えばDSPと、DSPで処理されたデジタル可聴音信号をアナログ可聴音信号に再変換するD/A変換器22と、再変換されたアナログ可聴音信号を増幅して、放射ユニットに供給する増幅器とを有している。また、A/D変換器、DSP、D/A変換器及び増幅器に動作電力を供給するための電源、例えば電池が内蔵された電池ボックス、音量などを調整する操作子及び電源スイッチも設けられている。
【0023】
このように構成されたホーンスピーカは、図2に示すように折り畳まれた状態の板部材4a、4b、棒状部材14、ドライバ部22に分解して、運搬する。従って、運搬が容易である。このホーンスピーカの使用場所において、図1(a)乃至(c)に示すように組み立てて、図3に示すように、開放面をほぼ平坦な基準面24、例えば床面または地面に配置する。この状態では、ホーン部2から放射された音には、直接に聴取者26に向かう直接音と、基準面24で反射して聴取者26に向かう反射音とがある。このように音が反射されることによって、図3に破線で示すように、音の鏡像が形成される。このため、聴取者26には、基準面24の下方にもう一つの鏡像スピーカが存在するのと同様な音が聞こえる。この現象は、ホーンスピーカのホーン部2内での音の経路の縦断面積が2倍になったのと同じ効果をもたらす。逆に言えば、基準面24での反射を利用すると、基準面24での反射を利用しない場合の1/2の大きさにホーン部2の縦断面積をでき、ホーン部2を小型化することができる。従って、このホーンスピーカの運搬が更に容易になる。なお、一般に直接音と反射音とは混合されると、両者の音の経路の差によって位相差が生じ、ホーンスピーカの周波数特性に影響を与える。しかし、このホーンスピーカでは、基準面24に直接に、このホーンスピーカが配置されているので、音の経路の差はわずかであり、周波数特性への影響は少ない。
【0024】
このように、このスピーカは、使用しない場合には、ドライバ部22及び棒状部材14を板部材4a、4bから取り外し、両板部材4a、4bを折り畳むことによって、小型になり、容易に運搬することができる。また、ホーン部2は底板を省略しているので、軽量化でき、更に運搬が容易である。また、基準面24による反射を利用しているので、板部材4a、4bを小型にすることができ、更に運搬が容易である。
【0025】
一般に、ホーンスピーカでは、マウスでの音の反射によって図4に示すようにホーンの周波数特性に凹凸が生じる。増幅器と別の機器とされているホーンスピーカでは、平坦な周波数特性であることが要求されるので、周波数特性の凹凸が大きくならないように、ホーンを設計する必要がある。しかし、図1のホーンスピーカのようにドライバ部22内に増幅器が設けられ、増幅器とホーン部2とが一体になった機器では、ホーンスピーカと増幅器とを一体に設計することができる。従って、ホーンスピーカには或る程度の周波数特性の凹凸を許容し、その周波数特性の凹凸をドライバ部22内のDSPによって補正することで、ホーンスピーカの設計に大きな制約を課さずに、総合的な周波数特性を平坦に近づけることができる。なお、増幅器をドライバ部22内に設けない場合でも、DSPによってホーンスピーカの周波数特性の凹凸を平坦にすることも可能である。DSPには、ホーンスピーカの実測された周波数特性に基づいて、その周波数特性の凹凸を平坦に補正する特性のデータが与えられている。
【0026】
本発明の第2の実施形態のホーンスピーカを図5及び図6に示す。第1の実施形態のホーンスピーカでは、スロート18からマウス20に向かう音の経路に沿った縦断面積の変化が直線状であるので、ホーンの低周波域での周波数特性が落ちる。そこで、第2の実施形態のホーンスピーカでは、図5に示すように、ホーン部30を、長さ方向に沿って複数、例えば3つに分割し、スロート32側の分割ホーン部30a、中間の分割ホーン部30b、マウス側の分割ホーン部30cの傾斜を異ならせてある。即ち、スロート側の分割ホーン部30aの傾斜が最も緩く、マウス側の分割ホーン部30cの傾斜が最も急で、中間分割ホーン部30bが中間の傾斜である。従って、音の経路の縦断面積は、マウス側の分割ホーン部30aで緩やかに増加し、マウス側の分割ホーン部30cで急激に増加し、中間の分割ホーン部30bでは、スロート側分割ホーン部30aよりも急であるが、マウス側分割ホーン部30cよりも緩やかに増加する。これによって、ホーン部30の内部の音の経路に沿った縦断面積は、折れ線近似によって指数関数状にスロート32側からマウス34側に変化している。従って、ホーン部30の低周波域での周波数特性の落ち込みを減少させることができる。なお、スロート32には、第1の実施形態のドライバ部22と同一のドライバ部が着脱自在に取り付けられている。
【0027】
各分割ホーン部30a、30b、30cは、第1の実施形態のホーン部2と同様に、いずれもが2つの板部材36a、36b、38a、38b、40a、40b(板部材36b、38b、40bは図示せず)によって構成されている。これら2つの板部材36a、36b、38a、38b、40a、40bは、それぞれに複数、例えば2個ずつ設けられたヒンジ42によって、板部材4a、4bと同様に回転自在に結合され、互いが所定の角度をなすように開かれる。
【0028】
図6に示すように、分割ホーン部30a、30bの接合面のうち分割ホーン部30b側に、分割ホーン部30a側に向かって突出する凸部42を全域に形成してある。この凸部42が隙間無く挿入される凹部44を分割ホーン部30aの接合面に形成してある。突部42を凹部44に挿入することによって、分割ホーン部30a、30bが結合される。なお、凸部42をホーン部30a側に形成し、凹部44を分割ホーン部30b側に設けることも可能である。図示していないが、分割ホーン部30b、30cも同様な凸部と凹部とによって結合されている。このように長さ方向に沿ってホーン部30を分割してあるので、ホーン部30の長さを長くした場合にも、分割ホーン部30a、30b、30cごとに折り畳んで運搬が可能である。
【0029】
なお、第1の実施の形態と同様に、スロートからマウスに向かう音の経路に沿った縦断面積の変化を直線状とした場合にも、その長さ方向に沿って複数に分割することもできる。また、分割せずに第1の実施形態の板部材4a、4bの形態を図5に示すような折れ線近似によって指数関数的に傾斜を変化させたものとすることもできる。
【0030】
第3の実施形態のホーンスピーカを図7に示す。このホーンスピーカでは、第1の実施形態において、ホーン部2の音の経路の縦断面積の変化を指数関数状の変化に近づけるために、板部材4a、4bの内面(ホーン部2の内面となる面)に、凸部46を形成してある。この凸部46は、スロート18側からマウス20側に向かうに従って、その厚みが増加し、その厚みの増加は指数関数状に変化している。
【0031】
第4の実施形態のホーンスピーカを図8に示す。このホーンスピーカでは、第2の実施形態において、ホーン部30の音の経路の縦断面積の変化を更に指数関数状の変化に近づけるために凸部48を設けている。但し、ホーン部30がスロート側分割ホーン部30a、中間分割ホーン部30b、マウス側分割ホーン部30cに分割されているので、凸部48も、分割ホーン部30a、30b、30cをそれぞれ構成する板部材36a、36b、38a、38b、40a、40bの内面に設けられる分割凸部48a、48b、48cからなっている。
【0032】
第5の実施形態のホーンスピーカを図9に示す。一般に、ホーンスピーカにおいてスロートからマウスに向かう音の経路に沿った縦断面積の変化が急激であると、ホーンスピーカの低周波域での周波数特性が落ちる。ホーンの長さを短くすると、音の経路の縦断面積の変化が急になるので、ホーンの長さを余り短くすることができない。そこで、第5の実施形態のホーンスピーカでは、音道、例えばホーン部の音の経路、を折り返し構造として、縦断面積の変化を急激にせずに、ホーン部の長さ寸法を短くしてある。
【0033】
図9のホーン部49では、第1の実施形態のホーンスピーカにおいて、板部材4a、4bの長さ寸法を短くした板部材50a、50bを有している(図9では、板部材50aは図示していない)。両者はヒンジ(図示せず)によって第1の実施形態の板部材4a、4bと同様に結合されている。
【0034】
第1の実施形態のホーン部2のスロートに相当する小開口を閉じる三角形状の板部材52が着脱自在に開口に取り付けられている。例えば、この板部材52は、板部材50a、50bに形成した溝(図示せず)に差し込まれている。この板部材52には、音道形成部材、例えば板部材54の一端が位置し、他端はホーン部2のマウスに相当する大開口側の近傍に位置している。この板部材54の両側縁は板部材50a、50bに形成された溝(図示せず)に差し込まれて、支持されている。板部材54は、板部材50a、50bの接合面との間に板部材52側から大開口側に向かうに従って縦断面積が増大する音の経路55aを構成している。
【0035】
大開口には、その上側部分を閉じる三角形状の板部材56が着脱自在に取り付けられている。例えば板部材56は、板部材50a、50bに形成した溝(図示せず)に差し込まれている。板部材56の下部には、音道形成部材、例えば板部材58の一端部が板部材56と一体に結合され、他端部が板部材52の近傍に位置している。この板部材58の両側縁は、板部材50a、50bに形成した溝(図示せず)に差し込まれ、支持されている。この板部材58は、板部材54との間に板部材56側から板部材52側に向かうに従って縦断面積が増加する音の経路55bを形成すると共に、ホーン部49の開放面との間に板部材52側から、板部材56の下方に形成されたマウス60側に向かって徐々に縦断面積が増加する音の経路55cを形成している。これら音の経路50a、50b、50cは、折り返された音の経路を構成している。
【0036】
音の経路55a、55b、55cの縦断面積が、音の経路55aから55bを経て55cに向かうに従って指数関数状に増大するように、板部材54、56の大きさ及び配置位置が設定されている。第1の実施形態のドライバ部22と同様なドライバ部62が音の経路55aの板部材52側の端部に例えばビスによって着脱自在に取り付けられている。ドライバ部62のスロートに絞りを形成するために凸部63が設けられている。凸部63は、板部材50aまたは50bに設けてもよいし、板部材50a、50bそれぞれに分割して設けることもできる。なお、板部材52は、支え部材64によって自立するように支持されている。また、第1の実施形態の棒状部材14に相当する棒状部材66が板部材50a、50bに形成した切欠67に挿通され、棒状部材66の接触部66aが板部材50a、50bの外面に接触して、これらを支持している。
【0037】
このホーンスピーカは、ヒンジによって結合された板部材50a、50bと、板部材52、54、56、58と、棒状部材66と、ドライバ部62とに、分解した状態で運搬される。組み立てる際には、まずドライバ部62を板部材54にビスによって固定する。次に板部材52を支え部材64によって自立させる。板部材52が板部材50a、50bに嵌るように、板部材52の上に板部材50a、50bを被せ、棒状部材66によって板部材50a、50bを固定する。最後に板部材54と、一体とされた板部材56、58とを板部材50a、50bに嵌め込む。
【0038】
このように折り返された音の経路50a、50b、50cの縦断面積を形成してあるので、ホーン部49の長さ寸法を短くすることができる。しかも、これら音の経路50a、50b、50cは指数関数状に増加しているので、低周波域での周波数特性の落ち込みを減少させることができる。なお、板部材56と58とは一体に形成したが、別個に形成することもできる。
【0039】
第6の実施形態のホーンスピーカを図10に示す。このホーンスピーカは、第5の実施形態のホーンスピーカを変形させたものである。板部材58の下部に凸部68が形成され、音の経路55cの縦断面積が滑らかな指数関数状に変化するようにされている。凸部68は、板部材58を板部材50a、50bの溝に嵌める際に邪魔にならないように、スリットに接触しない場所に設けられている。凸部68を設けたことにより、音の経路55cが滑らかな指数関数状に変化し、低周波域での周波数特性の落ち込みを更に減少させることができる。
【0040】
第7の実施形態のホーンスピーカを図11に示す。この実施形態のホーンスピーカも折り返しの音の経路をホーン部70内に形成するものであるが、ドライバ部72をホーン部72の下部に配置したものである。
【0041】
板部材50a、50bと同様な板部材74a、74b(板部材74aは図示せず)が設けられ、板部材52と同様な板部材76が設けられ、支え部材64と同様な支え部材78が設けられている。ホーン部70内には、ドライバ部72の上部にほぼ水平に位置するように反射板部材80が板部材74a、74の溝(図示せず)に差し込まれて支持されている。この反射部材80の下面に、絞り形成用の凸部81が設けられている。
【0042】
ホーン部70の大開口であるマウス82側に一端が位置し、他端が反射板部材80の上方に位置するように反射板部材84が配置され、板部材74a、74bに形成された溝(図示せず)に差し込まれて、支持されている。この反射板部材84の下面には反射兼支持部材86が取り付けられ、これも板部材74a、74bの溝(図示せず)に嵌め込まれている。
【0043】
反射兼支持部材86とこれよりもドライバ部72側にある反射板部材84の部分とによって音の経路88aが形成され、反射板部材84の上面と板部材74a、74bの接合面との間に音の経路88bが形成されている。音の経路88aから88bに向かうに従って縦断面積は指数関数状に増加するように、反射板部材80、84、反射兼支持部材86の大きさ及び位置は設定されている。
【0044】
ドライバ部72からの音は、反射兼支持板86で反射され、音の経路88a、88bを通ってマウス82から放射される。このホーンスピーカでも、第5の実施形態のホーンスピーカと同様に、ホーン部70の長さ寸法を短くすることができ、音の経路88a、88bの縦断面積は指数関数状に増加しているので、低周波域での周波数特性の落ち込みを減少させることができる。なお、第6の実施形態の凸部68と同様な凸部を設けることもできる。この場合、凸部は音の経路88b側に位置するように反射板部材84の上面に設けられる。
【0045】
第8の実施形態のホーンスピーカを図12及び図13に示す。第1の実施形態のホーンスピーカは、全周波数帯域に対して1つのホーンスピーカを設けたものであったが、第8の実施形態のホーンスピーカは、周波数帯域を複数、例えば2帯域に分けて、帯域ごとに専用のホーンスピーカを設け、各ホーンスピーカのドライバ部やホーンサイズ等を、対応する帯域に対して最適化したものである。
【0046】
第1の実施形態のホーンスピーカと同様に構成された低音用のホーンスピーカ90の頂部の両側に2つの高音用のホーンスピーカ92a、92bが着脱自在に取り付けられている。高音用のホーンスピーカ92a、92bは、ホーン部のサイズが小さいので、ホーンスピーカ90のように分解組み立てが可能な構造としなくてもよい。また、ステレオのオーディオ信号を再生する場合には、図12に示すようなスピーカを2組用意してもよいが、低音域の音は、音の到来方向がわかりにくくなるので、高音用ホーンスピーカ92a、92bのみをステレオ再生とし、低音用のホーンスピーカ90は、左右のオーディオ信号を混合したモノラル再生とすることもできる。
【0047】
このように帯域分割してスピーカを設ける場合、各帯域の音が聴取者に届くタイミングにずれが生じないことが望ましい。コーンスピーカを各帯域に応じて使用する場合には、全てのコーンスピーカの振動板の位置を同じになるように各コーンスピーカの位置を決めることが可能であるので、上述したタイミングのずれを修正することは容易である。しかし、この実施形態のように各帯域に応じたホーンスピーカを使用する場合にはドライバ部からマウスまでの距離が長いので、このような位置あわせは困難である。
【0048】
その場合には、図13に示すように、周波数帯域ごとに、例えば高音域と低音域とで周波数特性の補正と遅延時間の調整を補正及び調整手段、例えばDSP94によって行い、調整された高音域のオーディオ信号を高音用増幅器96で増幅して、高音用ホーンスピーカ92a、92bに供給し、調整された低音域のオーディオ信号を低音用の増幅器98で増幅し、低音用のホーンスピーカ90に供給する。
【0049】
DSP94での処理を機能ブロック図として表すと、供給されたオーディオ信号を周波数帯分離処理部100において、高音信号と低音信号とに分離する。高音用ホーンスピーカ92a、92bと低音用ホーンスピーカとにおけるドライバ部とマウスまでの長さのずれによる低音の遅れを調整するために、高音信号は、遅延処理部102において遅延される。遅延された高音信号は、高音用周波数特性処理部104において周波数特性の補正が行われ、高音用増幅器96に供給される。分離された低音信号は、低音用周波数処理部106において周波数特性の補正が行われ、低音用増幅器98に供給される。
【0050】
上記の各実施の形態では、音の経路の縦断面形状を三角形としたが、これに限ったものではなく、例えば図14(a)に示すように、矩形や台形等の他の多角形にすることもできる。また、同図(b)に示すように同じ形状、例えば三角形であっても頂角を変更することによって縦断面積を変更することもできる。この場合、1対の接触部材14aの間隔が異なる複数種類の棒状部材14を予め準備し、使用しようとする頂角に応じた棒状部材14を使用するか、或いは、1つの棒状部材14に異なる間隔で複数対の接触部材を設け、使用しようとする頂角に応じた1対の接触部材を使用する。なお、図14では、板部材を直線で、ヒンジを丸で示している。
【0051】
また、図15(a)、(b)に示すように、音の経路の縦断面形状を或る多角形から別の形状の多角形に変更するように構成することもできる。図15(a)、(b)でも、板部材を直線で、ヒンジを丸で示している。図15(a)は、開放面を有するホーン部同士において、三角形状の縦断面から台形状の縦断面に変更可能な例である。同図(b)は、開放面を有するホーン部から、開放面を有していない閉じたホーン部に変更可能な例である。閉じたホーン部とした場合には、スピーカスタンドなどによって基準面から離した状態でホーンスピーカを設置する。いずれの場合でも、板部材は、複数準備され、それら板部材の数よりも1つ少ないヒンジによって各板部材が結合され、これらヒンジのうち中央に位置するものの両側にそれぞれ複数枚の板部材が配置されていれば、どちらの場合にも対応できる。
【0052】
なお、図14及び図15のように音の経路の縦断面形状を変更可能とする場合には、各形状に対応して各ホーンの周波数特性の補正データを予め記憶手段に記憶させておき、設定された形状に対応する補正データを選択して、DSPに設定することで、設定された形状に対応した最適な補正を行うようにすることが望ましい。
【0053】
上記の各実施形態では、板部材をヒンジによって結合したが、これに限ったものではなく、例えば各板部材をバラバラにして、使用する際に、ビス等によって結合することも可能である。また、板部材の結合具としては、ヒンジやビスの他に、板部材の嵌合や、板部材間に引っかけるワイヤまたはばねを使用することもできる。上記の各実施形態では、ドライバ部を板部材に着脱自在としたが、ドライバ部が余り大きく無い場合には、板部材に固定することもできる。また、第2乃至第7の実施形態では、ホーン部の縦断面積を指数関数状に変化させたが、縦断面積を双曲線関数状に変化させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態のホーンスピーカの側面図、正面図及び平面図である。
【図2】図1のホーンスピーカを分解した状態の斜視図である。
【図3】図1のホーンスピーカの使用状態の説明図である。
【図4】ホーンスピーカの周波数特性図である。
【図5】本発明の第2の実施形態のホーンスピーカの側面図である。
【図6】図6のホーンスピーカの板部材の結合状態の説明用の斜視図である。
【図7】第3の実施形態のホーンスピーカの板部材を示す図である。
【図8】第4の実施形態のホーンスピーカの板部材を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施形態のホーンスピーカの縦断側面図である。
【図10】本発明の第6の実施形態のホーンスピーカの縦断側面図である。
【図11】本発明の第7の実施形態のホーンスピーカの縦断側面図である。
【図12】本発明の第8の実施形態のホーンスピーカの正面図である。
【図13】図12のホーンスピーカと共に使用される信号処理回路のブロック図である。
【図14】本発明の変形例を示す図である。
【図15】本発明の他の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
2 ホーン部
4a、4b 板部材(部材)
18 スロート(第1の開口)
20 マウス(第2の開口)
22 ドライバ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーンスピーカに関し、特に運搬が容易なものに関する。
【背景技術】
【0002】
エレキギター等の電気楽器や電子キーボード等の電子楽器を演奏する場合、楽器から出力された楽音信号を増幅する増幅器と、増幅された楽音信号を楽音として放射するスピーカとが用いられる。そのため、増幅器とスピーカ装置とをセットにしたギターアンプ、キーボードアンプ等と称される増幅機器が販売されている。コンサートを行う場合、演奏者は、楽器の他に、増幅機器をコンサート会場まで運搬する必要がある。
【0003】
ギターアンプやキーボードアンプで大きな楽音を放射するには、増幅器の出力を大きくすると共に、スピーカ装置に使用しているスピーカを大型のものにしたり、スピーカの数を増加させたりする必要がある。増幅器の出力を大きくすると、増幅器の消費電力が増加し、そのため増幅器の電源回路を大型化する必要があり、増幅器の重量が増加する。大きなスピーカを使用したりスピーカの数を増加させたりするには、スピーカにコーンスピーカを使用している場合、スピーカ装置のスピーカキャビネットを大型化する必要があり、スピーカ装置の重量も増加する。このため、大きな楽音を放射できる増幅機器を運搬する際に大きな苦労を伴う。
【0004】
例えば特許文献1には、コーンスピーカを用いたスピーカ装置において、スピーカキャビネットを折り畳み可能とする技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】実開昭56−43982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術を使用すれば、コーンスピーカを備えたスピーカ装置の運搬を容易にすることが可能となる。しかし、コーンスピーカは効率が低く、増幅器の消費電力及び重量の増加の問題を解消できない。スピーカには、コーンスピーカの他に、ホーンスピーカがあり、これはコーンスピーカと比較して効率が高く、ホーンスピーカの使用によって増幅器の消費電力及び重量の増加の問題を解消できる。しかし、ホーンスピーカでは、ホーンのサイズが低周波数域の周波数特性に影響を与えるので、充分な低音を出力するためには、大きなサイズのものとしなければならず、運搬が困難である。
【0007】
本発明は、効率が高いホーンスピーカを容易に運搬可能に構成し、このホーンスピーカと共に使用される増幅器も容易に運搬可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のホーンスピーカは、ホーン部を有している。このホーン部は、複数の部材を組み立てることによって形成され、組み立て状態において、第1の開口を一端に、第1の開口よりも面積が大きい第2の開口を他端に有している。部材は、ほぼ平板状のものを使用することが望ましい。各部材の組み立ては、例えば隣接する部材の第1及び第2の開口を繋ぐ互いに接する辺に沿う軸の回りに回動可能に結合することが可能である。具体的にはヒンジによって各部材を結合しておき、各部材のうち隣接するものがそれぞれ所定の角度をなすようにする。或いは、ビス止め、嵌合、ワイヤによる固定等の種々の固定法を使用して各部材の隣接するものがそれぞれ所定の角度をなすようにしてもよい。第1の開口と第2の開口とは相似形とすることが望ましく、第1及び第2の開口が多角形の場合、第1または第2の開口側からホーン部を見たとき、両多角形の対応する1つの辺が重なるように第1及び第2の開口を配置することが望ましい。第1の開口にドライバ部が設けられている。
【0009】
このように構成されたホーンスピーカでは、ホーン部が組み立て可能であるので、ホーン部を嵩張らない非組み立て状態として運搬することができ、運搬が容易である。しかも、ホーンスピーカであるので、効率が高く、共に使用する増幅器の出力を大きくする必要が無く、増幅器の電源回路も小型のものを使用でき、増幅器を容易に運搬可能に小型化することができる。また、運搬が容易であるので、組み立てた状態で大きなホーン部となるようにすることもでき、充分な低音を出力することも可能となる。なお、ドライバ部は第1の開口に着脱自在に設けることもできる。この場合、ホーン部からドライバ部を分離して運搬できるので、運搬が更に容易になる。
【0010】
前記ホーン部は、前記組み立て状態において、第1及び第2の開口は相似な多角形をなし、それぞれの対応する一辺を繋ぐ面をほぼ平坦な面、例えば床面等に配置することにより、このホーンスピーカから放射された音が前記繋ぐ面で反射され、音の鏡像が形成される。このため、聴取者には、前記繋ぐ面の下方にもう1つのスピーカがあるのと同様に音が聞こえる。これによって、本来必要とする大きさの1/2の大きさにホーンスピーカをすることができ、更に運搬が容易になる。また、前記繋ぐ面を開放面としてすることができる。この場合にも、開口面をほぼ平坦な面に配置することにより、音の鏡像が形成され、ホーンスピーカを小型にすることができる上に、運搬が益々容易になる。
【0011】
或いは、隣接する部材の第1及び第2の開口を繋ぐ互いに接する辺に沿う軸の回りに回動可能に結合することもできる。このように構成すると、各部材によってホーン部を形成するのが容易に行えるし、第1及び第2の開口の形状を、それぞれ同じ多角形であるが、その形状の異なるものとすることができる。例えば第1及び第2の開口が三角形とすると、頂角の大きさが異なる様々な三角形とすることができる。これによって、第1及び第2の開口の面積を所望の大きさとすることができ、ホーンスピーカの設置場所付近に適した形状を選択することができ、また使用者が好ましく感じるホーンスピーカのデザインを選択できる。
【0012】
更に、これら部材を3個以上設けることもできる。この場合、第1及び第2の開口の形状を異なる多角形とすることができる。例えば三角形状から五角形状とすることができる。これによっても、第1及び第2の開口の形状や面積を所望のものとすることができ、ホーンスピーカの形状のさらなる多様化を図ることが可能となる。
【0013】
前記複数の部材を、第1及び第2の開口を繋ぐ仮想線に沿って分割形成することもできる。このように構成すれば、分割された部材ごとに運搬が可能となるので、組み立てた状態で長さの長いホーンスピーカでも容易に運搬することができる。
【0014】
前記組み立て状態における前記ホーン内に第1の開口から第2の開口に向かう折り返し音道を形成する音道形成部材を前記ホーン内に着脱自在に設けることができる。このようにホーン部内に折り返し音道を形成すると、ホーン部の長さを短くすることができる。
【0015】
組み立て状態におけるホーン内部の第1及び第2の開口間の内面形状、例えば内面の縦断面形状が指数関数状または双曲線関数状に変化するように、前記ホーンの内面となる前記複数の部材の面に突部を形成することもできる。このように構成すると、低周波数域での周波数特性の落ち込みを減少させることができる。
【0016】
周波数特性を補正する補正回路を設け、この補正回路の出力をドライバ部に供給することもできる。この場合、補正回路の出力を増幅器によって増幅してドライバ部に供給することが望ましい。また、補正回路及び増幅器の一方または双方をドライバ部に組み込むこともできる。補正回路を使用することによって、望ましくない周波数特性がホーンスピーカに生じたとしても、その望ましくない周波数特性を補正回路で補正することができ、ホーン設計の制約を減らすことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、効率が高いホーンスピーカを容易に運搬できるようにできる上に、このホーンスピーカと共に使用される増幅器も運搬が容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態のホーンスピーカは、図1(a)乃至(c)に示すように、ホーン部2を有している。ホーン部2は、複数、例えば2つの部材、具体的には板部材4a、4bからなる。これら板部材4a、4bは、同じ形状で、側面形状が台形状である。即ち、板部材4a、4bは、直線状の辺6a、6bを有し、これと平行でかつ離れて、辺6a、6bよりも短く、一端部が辺6a、6bの一端部と同じ位置にある直線状の辺8a、8bと、辺6a、6bと辺8a、8bとの一端部間を繋ぐ直線状の辺7a、7bと、辺6a、6bの他端部と辺8a、8bの他端部とを繋ぐ斜辺10a、10bとを、有する平板状のものである。これら板部材4a、4bは、それらの斜辺10a、10bを合わせた状態で、複数の結合具、例えば3個のヒンジ12によって結合されている。これらヒンジ12は、斜辺10a、10bの長さ方向に沿って間隔を隔てて配置されている。ヒンジ12によって結合されているので、板部材4a、4bは、斜辺10a、10bの長さ方向に、図2に示すように互いに重なり合った状態から、両者が互いに平面をなすまで180度自由に回転できる。
【0019】
これら板部材4a、4bは、図2に示す状態から互いに所定の角度をなすように開かれ、図1(b)に示す角度維持部材、例えば棒状部材14によってその所定の角度を維持される。これによってホーン部2が組み立てられる。この組み立てた状態では、辺7a、7b間が開放された開放面となっている。即ち、このホーン部2には、底板が存在せず、底板の分だけ軽量にすることができ、運搬が容易である。
【0020】
棒状部材14は、その上面に板部材4a、4bの外面下部に接触する接触部14a、14bを有し、この接触部14a、14bが、板部材4a、4bの所定角度を維持している。なお、これら棒状部材14の両端を板部材4a、4bの外面側に突出させるために、図1(a)及び図2に示すように板部材4a、4bの辺6a、6bの近傍にある辺7a、7bに切欠16が形成されている。
【0021】
このように組み立てられた状態において、辺8a、8b側に面積が小さい三角形状の開口が形成され、これがスロート18である。辺6a、6b側に面積が大きい三角形状の開口が形成され、これがマウス20である。スロート18とマウス20とは相似形の三角形であり、両者の底辺は同じ位置にある。ホーン部2内では、スロート18からマウス20に進むに従って、その縦断面積が徐々に増加していく。
【0022】
スロート18には、ドライバ部22が、例えばビスによって着脱自在に取り付けられている。従って、図2に示すようにスピーカとして使用しない場合には、ドライバ部22は、板部材4a、4bから取り外されている。ドライバ部22は、ホーン部2内に音を放射する放射ユニットを有し、これがホーン部2内を向くようにスロート18に取り付けられている。放射ユニットには、振動源である振動板に充分な負荷がかかるように絞りが設けられている。ドライバ部22には、この他に、アナログ可聴音信号を供給する入力端子と、アナログ可聴音信号をデジタル可聴音信号に変換するA/D変換器と、デジタル可聴音信号にデジタル処理、例えば周波数特性の調整を行う制御手段、例えばDSPと、DSPで処理されたデジタル可聴音信号をアナログ可聴音信号に再変換するD/A変換器22と、再変換されたアナログ可聴音信号を増幅して、放射ユニットに供給する増幅器とを有している。また、A/D変換器、DSP、D/A変換器及び増幅器に動作電力を供給するための電源、例えば電池が内蔵された電池ボックス、音量などを調整する操作子及び電源スイッチも設けられている。
【0023】
このように構成されたホーンスピーカは、図2に示すように折り畳まれた状態の板部材4a、4b、棒状部材14、ドライバ部22に分解して、運搬する。従って、運搬が容易である。このホーンスピーカの使用場所において、図1(a)乃至(c)に示すように組み立てて、図3に示すように、開放面をほぼ平坦な基準面24、例えば床面または地面に配置する。この状態では、ホーン部2から放射された音には、直接に聴取者26に向かう直接音と、基準面24で反射して聴取者26に向かう反射音とがある。このように音が反射されることによって、図3に破線で示すように、音の鏡像が形成される。このため、聴取者26には、基準面24の下方にもう一つの鏡像スピーカが存在するのと同様な音が聞こえる。この現象は、ホーンスピーカのホーン部2内での音の経路の縦断面積が2倍になったのと同じ効果をもたらす。逆に言えば、基準面24での反射を利用すると、基準面24での反射を利用しない場合の1/2の大きさにホーン部2の縦断面積をでき、ホーン部2を小型化することができる。従って、このホーンスピーカの運搬が更に容易になる。なお、一般に直接音と反射音とは混合されると、両者の音の経路の差によって位相差が生じ、ホーンスピーカの周波数特性に影響を与える。しかし、このホーンスピーカでは、基準面24に直接に、このホーンスピーカが配置されているので、音の経路の差はわずかであり、周波数特性への影響は少ない。
【0024】
このように、このスピーカは、使用しない場合には、ドライバ部22及び棒状部材14を板部材4a、4bから取り外し、両板部材4a、4bを折り畳むことによって、小型になり、容易に運搬することができる。また、ホーン部2は底板を省略しているので、軽量化でき、更に運搬が容易である。また、基準面24による反射を利用しているので、板部材4a、4bを小型にすることができ、更に運搬が容易である。
【0025】
一般に、ホーンスピーカでは、マウスでの音の反射によって図4に示すようにホーンの周波数特性に凹凸が生じる。増幅器と別の機器とされているホーンスピーカでは、平坦な周波数特性であることが要求されるので、周波数特性の凹凸が大きくならないように、ホーンを設計する必要がある。しかし、図1のホーンスピーカのようにドライバ部22内に増幅器が設けられ、増幅器とホーン部2とが一体になった機器では、ホーンスピーカと増幅器とを一体に設計することができる。従って、ホーンスピーカには或る程度の周波数特性の凹凸を許容し、その周波数特性の凹凸をドライバ部22内のDSPによって補正することで、ホーンスピーカの設計に大きな制約を課さずに、総合的な周波数特性を平坦に近づけることができる。なお、増幅器をドライバ部22内に設けない場合でも、DSPによってホーンスピーカの周波数特性の凹凸を平坦にすることも可能である。DSPには、ホーンスピーカの実測された周波数特性に基づいて、その周波数特性の凹凸を平坦に補正する特性のデータが与えられている。
【0026】
本発明の第2の実施形態のホーンスピーカを図5及び図6に示す。第1の実施形態のホーンスピーカでは、スロート18からマウス20に向かう音の経路に沿った縦断面積の変化が直線状であるので、ホーンの低周波域での周波数特性が落ちる。そこで、第2の実施形態のホーンスピーカでは、図5に示すように、ホーン部30を、長さ方向に沿って複数、例えば3つに分割し、スロート32側の分割ホーン部30a、中間の分割ホーン部30b、マウス側の分割ホーン部30cの傾斜を異ならせてある。即ち、スロート側の分割ホーン部30aの傾斜が最も緩く、マウス側の分割ホーン部30cの傾斜が最も急で、中間分割ホーン部30bが中間の傾斜である。従って、音の経路の縦断面積は、マウス側の分割ホーン部30aで緩やかに増加し、マウス側の分割ホーン部30cで急激に増加し、中間の分割ホーン部30bでは、スロート側分割ホーン部30aよりも急であるが、マウス側分割ホーン部30cよりも緩やかに増加する。これによって、ホーン部30の内部の音の経路に沿った縦断面積は、折れ線近似によって指数関数状にスロート32側からマウス34側に変化している。従って、ホーン部30の低周波域での周波数特性の落ち込みを減少させることができる。なお、スロート32には、第1の実施形態のドライバ部22と同一のドライバ部が着脱自在に取り付けられている。
【0027】
各分割ホーン部30a、30b、30cは、第1の実施形態のホーン部2と同様に、いずれもが2つの板部材36a、36b、38a、38b、40a、40b(板部材36b、38b、40bは図示せず)によって構成されている。これら2つの板部材36a、36b、38a、38b、40a、40bは、それぞれに複数、例えば2個ずつ設けられたヒンジ42によって、板部材4a、4bと同様に回転自在に結合され、互いが所定の角度をなすように開かれる。
【0028】
図6に示すように、分割ホーン部30a、30bの接合面のうち分割ホーン部30b側に、分割ホーン部30a側に向かって突出する凸部42を全域に形成してある。この凸部42が隙間無く挿入される凹部44を分割ホーン部30aの接合面に形成してある。突部42を凹部44に挿入することによって、分割ホーン部30a、30bが結合される。なお、凸部42をホーン部30a側に形成し、凹部44を分割ホーン部30b側に設けることも可能である。図示していないが、分割ホーン部30b、30cも同様な凸部と凹部とによって結合されている。このように長さ方向に沿ってホーン部30を分割してあるので、ホーン部30の長さを長くした場合にも、分割ホーン部30a、30b、30cごとに折り畳んで運搬が可能である。
【0029】
なお、第1の実施の形態と同様に、スロートからマウスに向かう音の経路に沿った縦断面積の変化を直線状とした場合にも、その長さ方向に沿って複数に分割することもできる。また、分割せずに第1の実施形態の板部材4a、4bの形態を図5に示すような折れ線近似によって指数関数的に傾斜を変化させたものとすることもできる。
【0030】
第3の実施形態のホーンスピーカを図7に示す。このホーンスピーカでは、第1の実施形態において、ホーン部2の音の経路の縦断面積の変化を指数関数状の変化に近づけるために、板部材4a、4bの内面(ホーン部2の内面となる面)に、凸部46を形成してある。この凸部46は、スロート18側からマウス20側に向かうに従って、その厚みが増加し、その厚みの増加は指数関数状に変化している。
【0031】
第4の実施形態のホーンスピーカを図8に示す。このホーンスピーカでは、第2の実施形態において、ホーン部30の音の経路の縦断面積の変化を更に指数関数状の変化に近づけるために凸部48を設けている。但し、ホーン部30がスロート側分割ホーン部30a、中間分割ホーン部30b、マウス側分割ホーン部30cに分割されているので、凸部48も、分割ホーン部30a、30b、30cをそれぞれ構成する板部材36a、36b、38a、38b、40a、40bの内面に設けられる分割凸部48a、48b、48cからなっている。
【0032】
第5の実施形態のホーンスピーカを図9に示す。一般に、ホーンスピーカにおいてスロートからマウスに向かう音の経路に沿った縦断面積の変化が急激であると、ホーンスピーカの低周波域での周波数特性が落ちる。ホーンの長さを短くすると、音の経路の縦断面積の変化が急になるので、ホーンの長さを余り短くすることができない。そこで、第5の実施形態のホーンスピーカでは、音道、例えばホーン部の音の経路、を折り返し構造として、縦断面積の変化を急激にせずに、ホーン部の長さ寸法を短くしてある。
【0033】
図9のホーン部49では、第1の実施形態のホーンスピーカにおいて、板部材4a、4bの長さ寸法を短くした板部材50a、50bを有している(図9では、板部材50aは図示していない)。両者はヒンジ(図示せず)によって第1の実施形態の板部材4a、4bと同様に結合されている。
【0034】
第1の実施形態のホーン部2のスロートに相当する小開口を閉じる三角形状の板部材52が着脱自在に開口に取り付けられている。例えば、この板部材52は、板部材50a、50bに形成した溝(図示せず)に差し込まれている。この板部材52には、音道形成部材、例えば板部材54の一端が位置し、他端はホーン部2のマウスに相当する大開口側の近傍に位置している。この板部材54の両側縁は板部材50a、50bに形成された溝(図示せず)に差し込まれて、支持されている。板部材54は、板部材50a、50bの接合面との間に板部材52側から大開口側に向かうに従って縦断面積が増大する音の経路55aを構成している。
【0035】
大開口には、その上側部分を閉じる三角形状の板部材56が着脱自在に取り付けられている。例えば板部材56は、板部材50a、50bに形成した溝(図示せず)に差し込まれている。板部材56の下部には、音道形成部材、例えば板部材58の一端部が板部材56と一体に結合され、他端部が板部材52の近傍に位置している。この板部材58の両側縁は、板部材50a、50bに形成した溝(図示せず)に差し込まれ、支持されている。この板部材58は、板部材54との間に板部材56側から板部材52側に向かうに従って縦断面積が増加する音の経路55bを形成すると共に、ホーン部49の開放面との間に板部材52側から、板部材56の下方に形成されたマウス60側に向かって徐々に縦断面積が増加する音の経路55cを形成している。これら音の経路50a、50b、50cは、折り返された音の経路を構成している。
【0036】
音の経路55a、55b、55cの縦断面積が、音の経路55aから55bを経て55cに向かうに従って指数関数状に増大するように、板部材54、56の大きさ及び配置位置が設定されている。第1の実施形態のドライバ部22と同様なドライバ部62が音の経路55aの板部材52側の端部に例えばビスによって着脱自在に取り付けられている。ドライバ部62のスロートに絞りを形成するために凸部63が設けられている。凸部63は、板部材50aまたは50bに設けてもよいし、板部材50a、50bそれぞれに分割して設けることもできる。なお、板部材52は、支え部材64によって自立するように支持されている。また、第1の実施形態の棒状部材14に相当する棒状部材66が板部材50a、50bに形成した切欠67に挿通され、棒状部材66の接触部66aが板部材50a、50bの外面に接触して、これらを支持している。
【0037】
このホーンスピーカは、ヒンジによって結合された板部材50a、50bと、板部材52、54、56、58と、棒状部材66と、ドライバ部62とに、分解した状態で運搬される。組み立てる際には、まずドライバ部62を板部材54にビスによって固定する。次に板部材52を支え部材64によって自立させる。板部材52が板部材50a、50bに嵌るように、板部材52の上に板部材50a、50bを被せ、棒状部材66によって板部材50a、50bを固定する。最後に板部材54と、一体とされた板部材56、58とを板部材50a、50bに嵌め込む。
【0038】
このように折り返された音の経路50a、50b、50cの縦断面積を形成してあるので、ホーン部49の長さ寸法を短くすることができる。しかも、これら音の経路50a、50b、50cは指数関数状に増加しているので、低周波域での周波数特性の落ち込みを減少させることができる。なお、板部材56と58とは一体に形成したが、別個に形成することもできる。
【0039】
第6の実施形態のホーンスピーカを図10に示す。このホーンスピーカは、第5の実施形態のホーンスピーカを変形させたものである。板部材58の下部に凸部68が形成され、音の経路55cの縦断面積が滑らかな指数関数状に変化するようにされている。凸部68は、板部材58を板部材50a、50bの溝に嵌める際に邪魔にならないように、スリットに接触しない場所に設けられている。凸部68を設けたことにより、音の経路55cが滑らかな指数関数状に変化し、低周波域での周波数特性の落ち込みを更に減少させることができる。
【0040】
第7の実施形態のホーンスピーカを図11に示す。この実施形態のホーンスピーカも折り返しの音の経路をホーン部70内に形成するものであるが、ドライバ部72をホーン部72の下部に配置したものである。
【0041】
板部材50a、50bと同様な板部材74a、74b(板部材74aは図示せず)が設けられ、板部材52と同様な板部材76が設けられ、支え部材64と同様な支え部材78が設けられている。ホーン部70内には、ドライバ部72の上部にほぼ水平に位置するように反射板部材80が板部材74a、74の溝(図示せず)に差し込まれて支持されている。この反射部材80の下面に、絞り形成用の凸部81が設けられている。
【0042】
ホーン部70の大開口であるマウス82側に一端が位置し、他端が反射板部材80の上方に位置するように反射板部材84が配置され、板部材74a、74bに形成された溝(図示せず)に差し込まれて、支持されている。この反射板部材84の下面には反射兼支持部材86が取り付けられ、これも板部材74a、74bの溝(図示せず)に嵌め込まれている。
【0043】
反射兼支持部材86とこれよりもドライバ部72側にある反射板部材84の部分とによって音の経路88aが形成され、反射板部材84の上面と板部材74a、74bの接合面との間に音の経路88bが形成されている。音の経路88aから88bに向かうに従って縦断面積は指数関数状に増加するように、反射板部材80、84、反射兼支持部材86の大きさ及び位置は設定されている。
【0044】
ドライバ部72からの音は、反射兼支持板86で反射され、音の経路88a、88bを通ってマウス82から放射される。このホーンスピーカでも、第5の実施形態のホーンスピーカと同様に、ホーン部70の長さ寸法を短くすることができ、音の経路88a、88bの縦断面積は指数関数状に増加しているので、低周波域での周波数特性の落ち込みを減少させることができる。なお、第6の実施形態の凸部68と同様な凸部を設けることもできる。この場合、凸部は音の経路88b側に位置するように反射板部材84の上面に設けられる。
【0045】
第8の実施形態のホーンスピーカを図12及び図13に示す。第1の実施形態のホーンスピーカは、全周波数帯域に対して1つのホーンスピーカを設けたものであったが、第8の実施形態のホーンスピーカは、周波数帯域を複数、例えば2帯域に分けて、帯域ごとに専用のホーンスピーカを設け、各ホーンスピーカのドライバ部やホーンサイズ等を、対応する帯域に対して最適化したものである。
【0046】
第1の実施形態のホーンスピーカと同様に構成された低音用のホーンスピーカ90の頂部の両側に2つの高音用のホーンスピーカ92a、92bが着脱自在に取り付けられている。高音用のホーンスピーカ92a、92bは、ホーン部のサイズが小さいので、ホーンスピーカ90のように分解組み立てが可能な構造としなくてもよい。また、ステレオのオーディオ信号を再生する場合には、図12に示すようなスピーカを2組用意してもよいが、低音域の音は、音の到来方向がわかりにくくなるので、高音用ホーンスピーカ92a、92bのみをステレオ再生とし、低音用のホーンスピーカ90は、左右のオーディオ信号を混合したモノラル再生とすることもできる。
【0047】
このように帯域分割してスピーカを設ける場合、各帯域の音が聴取者に届くタイミングにずれが生じないことが望ましい。コーンスピーカを各帯域に応じて使用する場合には、全てのコーンスピーカの振動板の位置を同じになるように各コーンスピーカの位置を決めることが可能であるので、上述したタイミングのずれを修正することは容易である。しかし、この実施形態のように各帯域に応じたホーンスピーカを使用する場合にはドライバ部からマウスまでの距離が長いので、このような位置あわせは困難である。
【0048】
その場合には、図13に示すように、周波数帯域ごとに、例えば高音域と低音域とで周波数特性の補正と遅延時間の調整を補正及び調整手段、例えばDSP94によって行い、調整された高音域のオーディオ信号を高音用増幅器96で増幅して、高音用ホーンスピーカ92a、92bに供給し、調整された低音域のオーディオ信号を低音用の増幅器98で増幅し、低音用のホーンスピーカ90に供給する。
【0049】
DSP94での処理を機能ブロック図として表すと、供給されたオーディオ信号を周波数帯分離処理部100において、高音信号と低音信号とに分離する。高音用ホーンスピーカ92a、92bと低音用ホーンスピーカとにおけるドライバ部とマウスまでの長さのずれによる低音の遅れを調整するために、高音信号は、遅延処理部102において遅延される。遅延された高音信号は、高音用周波数特性処理部104において周波数特性の補正が行われ、高音用増幅器96に供給される。分離された低音信号は、低音用周波数処理部106において周波数特性の補正が行われ、低音用増幅器98に供給される。
【0050】
上記の各実施の形態では、音の経路の縦断面形状を三角形としたが、これに限ったものではなく、例えば図14(a)に示すように、矩形や台形等の他の多角形にすることもできる。また、同図(b)に示すように同じ形状、例えば三角形であっても頂角を変更することによって縦断面積を変更することもできる。この場合、1対の接触部材14aの間隔が異なる複数種類の棒状部材14を予め準備し、使用しようとする頂角に応じた棒状部材14を使用するか、或いは、1つの棒状部材14に異なる間隔で複数対の接触部材を設け、使用しようとする頂角に応じた1対の接触部材を使用する。なお、図14では、板部材を直線で、ヒンジを丸で示している。
【0051】
また、図15(a)、(b)に示すように、音の経路の縦断面形状を或る多角形から別の形状の多角形に変更するように構成することもできる。図15(a)、(b)でも、板部材を直線で、ヒンジを丸で示している。図15(a)は、開放面を有するホーン部同士において、三角形状の縦断面から台形状の縦断面に変更可能な例である。同図(b)は、開放面を有するホーン部から、開放面を有していない閉じたホーン部に変更可能な例である。閉じたホーン部とした場合には、スピーカスタンドなどによって基準面から離した状態でホーンスピーカを設置する。いずれの場合でも、板部材は、複数準備され、それら板部材の数よりも1つ少ないヒンジによって各板部材が結合され、これらヒンジのうち中央に位置するものの両側にそれぞれ複数枚の板部材が配置されていれば、どちらの場合にも対応できる。
【0052】
なお、図14及び図15のように音の経路の縦断面形状を変更可能とする場合には、各形状に対応して各ホーンの周波数特性の補正データを予め記憶手段に記憶させておき、設定された形状に対応する補正データを選択して、DSPに設定することで、設定された形状に対応した最適な補正を行うようにすることが望ましい。
【0053】
上記の各実施形態では、板部材をヒンジによって結合したが、これに限ったものではなく、例えば各板部材をバラバラにして、使用する際に、ビス等によって結合することも可能である。また、板部材の結合具としては、ヒンジやビスの他に、板部材の嵌合や、板部材間に引っかけるワイヤまたはばねを使用することもできる。上記の各実施形態では、ドライバ部を板部材に着脱自在としたが、ドライバ部が余り大きく無い場合には、板部材に固定することもできる。また、第2乃至第7の実施形態では、ホーン部の縦断面積を指数関数状に変化させたが、縦断面積を双曲線関数状に変化させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態のホーンスピーカの側面図、正面図及び平面図である。
【図2】図1のホーンスピーカを分解した状態の斜視図である。
【図3】図1のホーンスピーカの使用状態の説明図である。
【図4】ホーンスピーカの周波数特性図である。
【図5】本発明の第2の実施形態のホーンスピーカの側面図である。
【図6】図6のホーンスピーカの板部材の結合状態の説明用の斜視図である。
【図7】第3の実施形態のホーンスピーカの板部材を示す図である。
【図8】第4の実施形態のホーンスピーカの板部材を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施形態のホーンスピーカの縦断側面図である。
【図10】本発明の第6の実施形態のホーンスピーカの縦断側面図である。
【図11】本発明の第7の実施形態のホーンスピーカの縦断側面図である。
【図12】本発明の第8の実施形態のホーンスピーカの正面図である。
【図13】図12のホーンスピーカと共に使用される信号処理回路のブロック図である。
【図14】本発明の変形例を示す図である。
【図15】本発明の他の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
2 ホーン部
4a、4b 板部材(部材)
18 スロート(第1の開口)
20 マウス(第2の開口)
22 ドライバ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材を組み立てることによって形成され、組み立て状態において、第1の開口を一端に、第1の開口よりも面積が大きい第2の開口を他端に有するホーン部と、
第1の開口に設けられたドライバ部とを、
具備するホーンスピーカ。
【請求項2】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、前記ドライバ部は、第1の開口に着脱自在に設けられているホーンスピーカ。
【請求項3】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、前記ホーン部は、前記組み立て状態において、第1及び第2の開口は相似な多角形をなし、それぞれの対応する一辺を繋ぐ面が開放されているホーンスピーカ。
【請求項4】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、前記組み立て状態における前記複数の部材は、隣接する部材の第1及び第2の開口を繋ぐ互いに接する辺に沿う軸の回りに回動可能に結合されているホーンスピーカ。
【請求項5】
請求項4記載のホーンスピーカにおいて、前記部材が3以上設けられているホーンスピーカ。
【請求項6】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、前記複数の部材は、第1及び第2の開口を繋ぐ仮想線に沿って分割形成されているホーンスピーカ。
【請求項7】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、前記組み立て状態における前記ホーン内に第1の開口から第2の開口に向かう折り返し音道を形成する音道形成部材が前記ホーン内に着脱自在に設けられたホーンスピーカ。
【請求項8】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、前記組み立て状態における前記ホーン内部の第1及び第2の開口間の内面形状が指数関数状または双曲線関数状に変化するように、前記ホーンの内面となる前記複数の部材の面に突部を形成したホーンスピーカ。
【請求項9】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、周波数特性を補正する補正回路が設けられ、この補正回路の出力が前記ドライバ部に供給されるホーンスピーカ。
【請求項1】
複数の部材を組み立てることによって形成され、組み立て状態において、第1の開口を一端に、第1の開口よりも面積が大きい第2の開口を他端に有するホーン部と、
第1の開口に設けられたドライバ部とを、
具備するホーンスピーカ。
【請求項2】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、前記ドライバ部は、第1の開口に着脱自在に設けられているホーンスピーカ。
【請求項3】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、前記ホーン部は、前記組み立て状態において、第1及び第2の開口は相似な多角形をなし、それぞれの対応する一辺を繋ぐ面が開放されているホーンスピーカ。
【請求項4】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、前記組み立て状態における前記複数の部材は、隣接する部材の第1及び第2の開口を繋ぐ互いに接する辺に沿う軸の回りに回動可能に結合されているホーンスピーカ。
【請求項5】
請求項4記載のホーンスピーカにおいて、前記部材が3以上設けられているホーンスピーカ。
【請求項6】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、前記複数の部材は、第1及び第2の開口を繋ぐ仮想線に沿って分割形成されているホーンスピーカ。
【請求項7】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、前記組み立て状態における前記ホーン内に第1の開口から第2の開口に向かう折り返し音道を形成する音道形成部材が前記ホーン内に着脱自在に設けられたホーンスピーカ。
【請求項8】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、前記組み立て状態における前記ホーン内部の第1及び第2の開口間の内面形状が指数関数状または双曲線関数状に変化するように、前記ホーンの内面となる前記複数の部材の面に突部を形成したホーンスピーカ。
【請求項9】
請求項1記載のホーンスピーカにおいて、周波数特性を補正する補正回路が設けられ、この補正回路の出力が前記ドライバ部に供給されるホーンスピーカ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−60247(P2009−60247A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224299(P2007−224299)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】
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