説明

ボイラ装置

【課題】簡単かつ小規模な改造により、蒸気噴霧と同程度なNOx生成の抑制効果を有するボイラ装置を提供する。
【解決手段】液体燃料11の燃焼により蒸気を発生させるボイラ14と、ボイラ14の入口に注入ノズル12を備えて接続され,この注入ノズル12から液体燃料11を供給する燃料供給管9と、外部より吸気口3を介して燃焼用空気を吸入し、ボイラ14の入口に給気ノズル8を備えて接続され,この給気ノズル8から燃焼用空気を供給する燃焼用空気ダクト2と、噴霧器5を,燃焼用空気ダクト2に接続し,噴霧水7を生成して、燃焼用空気ダクト2へ噴霧水7を供給する噴霧水供給管6と、を備え、燃焼用空気ダクト2において燃焼用空気と噴霧水7との混合体を送給し、給気ノズル8からボイラ14内へ燃焼用空気と噴霧水混合体を噴射して、液体燃料11と混合して燃焼させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気ボイラの燃焼用空気に噴霧水を混合し、この混合物を蒸気ボイラ内へ噴射して燃焼用空気の酸素濃度及び燃焼温度を低下させ、NOx生成を抑制するボイラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重油等の化石燃料を使用するボイラ装置においては、燃焼によって窒素酸化物(以下、NOxという)が発生する。そこで従来よりNOx生成を抑制するために、濃淡燃焼、二段燃焼、炉内脱硝、蒸気噴霧等の技術が開発され、これらの技術を単独あるいは組み合わせることによってその実用化がなされてきた。
しかし、濃淡燃焼、二段燃焼、炉内脱硝等の技術では改造が大規模となるため、既設ボイラにおけるNOx生成を抑制する場合は技術的、経済的に実現させにくいという課題や、蒸気噴霧の場合は改造が小規模であっても発生蒸気を使用することにより実質のボイラ能力が低下するといった課題があった。
このような課題を解決する目的で、ボイラ内に水を噴霧する技術が開発されており、それに関して既にいくつかの発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には、「燃焼装置およびボイラ」という名称で、水又は蒸気を用いて燃焼温度を低下させる燃焼装置およびボイラに関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、燃料供給手段と、NOx低減流体供給手段とを備え、燃料供給手段から供給された燃料にて火炎が形成され、NOx低減流体供給手段から供給されたNOx低減流体がこの火炎の内側に噴射されることを特徴とする。なお、NOx低減流体は、水又は蒸気の少なくともどちらか一方を有する流体である。
このような特徴の燃焼装置およびボイラにおいては、NOx低減流体がこの火炎の内側に噴射されるため、火炎の安定的な燃焼状態を阻害することなく、火炎の温度を低下させてNOxを効果的に低減させることができる。
【0004】
次に、特許文献2には、「燃料二段供給式低NOxバーナー」という名称で、二次燃料と水噴霧または水蒸気噴霧とを混合させるバーナーに関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、一次バーナーと二次バーナーとを有し、この二次バーナーの周囲より水噴霧または水蒸気噴霧を行う構造としたことを特徴とする。
このような特徴の燃料二段供給式低NOxバーナーにおいては、二次バーナーに供給される二次燃料は、水噴霧または水蒸気噴霧と混合されて直ちに冷却され、二次燃料の着火時期が遅れて比較的低温中で緩慢な燃焼をすることになり、NOx生成を抑制しうる。
【0005】
特許文献3には、「バーナとその運転方法」という名称で、噴霧水をバーナの火炎に注入させNOxを抑制するバーナとその運転方法に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明は、バーナに燃焼用空気と水と燃料を供給し、その際水を噴霧する、特にガスタービンにおける少なくとも1つのバーナとその運転方法において、第1段階で噴霧水を燃焼用空気と水―燃焼用空気混合気の形に混合し、第2段階で、水―燃焼用空気混合気を燃料と水―燃焼用空気―燃料混合気の形に混合することを特徴とする。
このような特徴のバーナとその運転方法においては、噴霧水がバーナの火炎中心に直接注入されることを防止できるので、安定した燃焼過程が保障され、ひいてはNOxを減少させることができる。
【0006】
さらに、特許文献4には「ボイラ装置とその運転方法」という名称で、火炉内に水や水蒸気を噴霧して燃焼ガス温度を制御するボイラ装置とその運転方法に関する発明が開示されている。
特許文献4に開示された発明は、ボイラ火炉の炉壁に設けられ、理論空気比以下で固体燃料を燃焼させるバーナと、バーナの後流側の炉壁に設けられ、バーナでの不足分の燃焼用空気を火炉内に噴出するエアポートを備えたボイラ装置において、エアポート内に水又は水蒸気を噴霧する噴霧ノズルを設けたことを特徴とする。
このような特徴のボイラ装置においては、バーナ設置部でのガス温度を低下させることなくエアポート後流側の火炉内でのガス温度を低下させるため、フューエルNOx及びサーマルNOxの濃度を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−207890号公報
【特許文献2】特開平9−101006号公報
【特許文献3】特表2005−526205号公報
【特許文献4】特開2007−139266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された発明においては、火炎の安定的な燃焼状態を阻害することなく、火炎の温度を低下させてNOxを効果的に低減させることができる。
しかし、NOx低減流体が蒸気の場合、その供給源についての具体的記載はないが、発生蒸気を使用するものであれば前述のボイラ能力の低下が懸念される。
【0009】
次に、特許文献2に開示された発明においては、二次燃料の着火時期が遅れて比較的低温中で緩慢な燃焼をすることになり、NOx生成を抑制しうる。
しかしながら、既設のボイラを改造する場合には少なくとも水噴霧又は水蒸気噴霧ノズルを炉壁に貫通させ、さらに二次バーナーからの火炎と適切に混合されるよう水量等の調整を行うことが必要であり、稼働するまでの作業が煩雑となる可能性がある。新設のボイラであっても特殊なバーナを別途製作して備えなければならず、設備費が高額となるおそれがある。
【0010】
特許文献3に開示された発明においては、安定した燃焼過程が保障され、NOxを減少させることができる。
しかし、水−燃焼用空気−燃料混合気は、油性燃料中に水を分散させていることからエマルジョンに該当する。エマルジョンでは乳化剤を添加して油性燃料と水との混合物を安定化させることが一般的であり、この発明には乳化剤の記載がないことから、燃焼が部分的及び時間的に不均一となるおそれがある。したがって、安定した燃焼過程とならず、NOxを減少させるとは限らない場合も考えられる。
【0011】
また、特許文献4に開示された発明においては、フューエルNOx及びサーマルNOxの濃度を低減させることができる。
しかし、既設のボイラを改造する場合は少なくとも噴霧ノズルを火炉壁に貫通させる必要があり、工事が大規模となる可能性があり、その場合工期や費用がかさむ。
また、水蒸気を噴霧する場合は、ボイラで発生させた水蒸気の一部を使っているが、一般的に水蒸気の供給源は高度な水処理を施したボイラ水である。水蒸気を噴霧することは、このボイラ水を排ガスとして排出することになるので、原材料の利用効率及び経済的効率という点で損失となる。
【0012】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、蒸気噴霧よりも簡単かつ小規模な改造により、蒸気噴霧と同程度なNOx生成の抑制効果を有するボイラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、液体燃料の燃焼により蒸気を発生させるボイラと、ボイラの入口に注入ノズルを備えて接続され,この注入ノズルから液体燃料を供給する燃料供給手段と、外部より吸気口を介して燃焼用空気を吸入し、ボイラの入口に給気ノズルを備えて接続され,この給気ノズルから燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給手段と、噴霧器を,ダクトを介して燃焼用空気供給手段に接続し,噴霧水を生成して、燃焼用空気供給手段へ噴霧水を供給する水噴霧手段と、を備え、燃焼用空気供給手段において燃焼用空気と噴霧水との混合体(以下、空気・噴霧水混合体という)を送給し、給気ノズルからボイラ内へ空気・噴霧水混合体を噴射して、液体燃料と混合して燃焼させることを特徴とする。
上記構成のボイラ装置においては、ボイラの入口に備えられた注入ノズルから液体燃料を供給する燃料供給手段を備えることから、液体燃料がボイラ内に噴射される。
また、ボイラの入口に備えられた給気ノズルから燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給手段を備え、さらに、噴霧器を,ダクトを介して燃焼用空気供給手段に接続し,噴霧水を生成して、燃焼用空気供給手段へ噴霧水を供給する水噴霧手段と、を備えることから、噴霧器が接続されたダクトより下流の燃焼用空気供給手段での燃焼用空気に噴霧水が混合し、空気・噴霧水混合体がボイラ内に噴射される。なお、噴霧水は蒸気発生用のボイラ水ではなく、工業用水でよい。
そして、空気・噴霧水混合体と液体燃料とを混合して燃焼させるため、燃焼熱が必要とされ燃焼の温度が低下する。さらに、燃焼用空気に噴霧水が混合することから空気・噴霧水混合体中の酸素濃度も低下する。したがって、液体燃料中に含有される窒素の酸化が抑制されてNOxの生成量が減少する。
【0014】
次に、請求項2記載の発明は、請求項1に記載のボイラ装置において、噴霧器は、ダクトを介して燃焼用空気供給手段に接続されることに代えて、吸気口に直接接続されて噴霧水を燃焼用空気供給手段に供給することを特徴とする。
上記構成のボイラ装置においては、噴霧器は吸気口に直接接続されることから、吸気口より下流の燃焼用空気供給手段において燃焼用空気に噴霧水が混合し、空気・噴霧水混合体がボイラ内に噴射される。
この他、請求項1に記載のボイラ装置と同様の作用を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1記載のボイラ装置においては、噴霧水を供給する水噴霧手段を燃焼用空気供給手段のダクトに接続することから、直接ボイラに水噴霧手段を貫通させる必要がなく、既設のボイラ装置を容易に取り付け可能である。したがって、改造が小規模で済むため改造費用が高額とならない上に、工期も短期で完了する。また、改造に伴って、ボイラ装置を停止させる必要がないので、稼働効率的にも良好である。
また、空気・噴霧水混合体と液体燃料とを混合して燃焼させると、液体燃料中に含有される窒素の酸化が抑制されてNOxの生成量が減少することから、小規模の改造でありながら、NOx生成の抑制効果を有する。
他にも、噴霧器に供給される水は高価なボイラ水ではなく、安価な工業用水であるため経済的であり、ボイラ水を材料として発生させた水蒸気の一部をボイラ内部に再び注入して利用しないことから、実質的なボイラ効率の低下がない。
【0016】
本発明の請求項2記載のボイラ装置においては、噴霧器は吸気口に直接接続されるため、請求項1においてダクトを介して燃焼用空気供給手段に接続されるよりも簡便に噴霧器を設置することができる。また、このように、噴霧器の接続位置が一ヶ所に制限されないので、既設のボイラ装置の配管構造に最も適した位置に噴霧器を設置することができる。
この他、請求項1記載のボイラ装置と同様の有利な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1に係るボイラ装置の構成図である。
【図2】本発明の実施例1に係るボイラ装置の、ボイラ入口付近の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
本発明に係る実施例1のボイラ装置について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。図1は、実施例1に係るボイラ装置の構成図である。図2は、実施例1に係るボイラ装置の、ボイラ入口付近の縦断面図である。なお、図1で示した構成要素については図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図1に示すように、ボイラ装置1は、燃焼用空気ダクト2及び燃料供給管9がボイラ入口13においてボイラ14に接続され、ボイラ入口13と反対側のボイラ壁15に煙道20が設けられ、煙道20は煙突21へ接続される。
燃焼用空気ダクト2の上流端は吸気口3が開口し、燃焼用空気の取入口となっている。吸気口3の下流側にはファン4が取り付けられ、吸気口3から外部の空気を吸入して燃焼用空気ダクト2内へ送出する。燃焼用空気ダクト2の下流端は、給気ノズル8を備えてボイラ入口13に挿入される。なお、ファン4は吸気口3の下流側のみならず、吸気口3に直接接続してもよい。ファン4を吸気口3に接続することで、吸い込み圧の低下を考慮する必要もなく、また、メンテナンスが容易であるという効果を発揮することができる。
また、吸気口3より下流側でファン4よりも上流側の燃焼用空気ダクト2には、ミスト状の噴霧水7を生成する噴霧器5が接続され、その上流には噴霧水7の原料である水を供給する噴霧水供給管6が接続される。なお、噴霧器5は燃焼用空気ダクト2の他、吸気口3に直接接続されてもよい。さらに、噴霧器5と噴霧水供給管6との接続部に水量調節弁27を設けることもできる。噴霧器5を吸気口3に直接接続する場合には、ファン4と直列あるいは並列に直接接続させることも可能である。噴霧器5とファン4を直列に吸気口3に接続する場合には、いずれが上流側でもよいが、噴霧器5を上流側にする方が、発生する噴霧水7の影響をファン4に及ばせないという観点から望ましいと考えられる。
ここで、噴霧水7は、ボイラ水18のように薬品処理等は特に必要とされないため、噴霧水供給管6は専用の水配管を設置する他、既設の何らかの利用可能な水配管を利用してもよい。また、燃焼用空気ダクト2に直接噴霧器5を接続することなく、噴霧器5を備えた噴霧水供給管6を接続して噴霧器5からの噴霧水7を燃焼用空気ダクト2に供給してもよい。
さらに、燃料供給管9の上流端は燃料タンク10が備えられ、液体燃料11の供給源となっている。燃料供給管9の下流端は、注入ノズル12を備えてボイラ入口13に挿入される。
そして、ボイラ14内部には、ドラム16が設置されて、蒸気用給水管17から供給されたボイラ水18が貯留される。ボイラ水18は液体燃料11の燃焼熱で熱せられ蒸気となって蒸気取出管19から取り出される。
続いて煙道20は、液体燃料11の燃焼による排ガスを煙突21に誘導するが、この途中に、脱硝、脱硫等の排煙処理装置(図示せず)を適宜設置することもできる。
【0019】
次に、図2に示すように、ボイラ装置1におけるボイラ壁15の一部は、ボイラ入口13を形成する。ボイラ入口13にはボイラ14外部から給気ノズル8及び注入ノズル12がそれぞれ1本ずつ貫通して備えられ、これらはわずかに離隔しつつ並走して設置される。ここで、給気ノズル8及び注入ノズル12は必ずしも1本ずつである必要はなく、例えば1本あるいは複数の注入ノズル12の周囲を複数の給気ノズル8が取り巻く構造であってもよいし、逆に1本あるいは複数の給気ノズル8の周囲を複数の注入ノズル12が取り巻く構造であってもよい。
給気ノズル8は、その先端に空気・噴霧水噴射口23を備え、後述の空気・噴霧水混合体22を噴射する。空気・噴霧水噴射口23では、単位時間当たりの気体の噴射容量、すなわち流量は一定である。
注入ノズル12は、その先端に燃料噴射口24を備え、液体燃料11を噴射する。さらに、液体燃料11はイグナイター(図示せず)により点火されて火炎25を形成し、燃焼ガス26を発生させる。
【0020】
次に、実施例1に係るボイラ装置1の作用について説明する。
ボイラ装置1の燃焼用空気ダクト2の上流端は吸気口3が開口し、下流端はボイラ入口13に挿入され、さらに吸気口3の下流側にはファン4が取り付けられることから、吸気口3周辺の空気は燃焼用空気ダクト2へ強制的に押し込まれ、流速や圧力が増加されてボイラ14方向へ送給される。
また、吸気口3より下流側でファン4よりも上流側の燃焼用空気ダクト2または吸気口3に、噴霧水7を生成する噴霧器5が接続されることから、ファン4の吸引によって噴霧器5の接続位置で吸気口3から取り込まれた燃焼用空気に噴霧水7が添加される。さらに噴霧水7は燃焼用空気と混合され空気・噴霧水混合体22が形成される。噴霧水7はミスト状であることと、燃焼用空気は燃焼用空気ダクト2へ強制的に押し込まれて流速を増加させていることから、噴霧水7と燃焼用空気の各分子は充分均一に混合される。そして、ファン4により空気・噴霧水混合体22は、燃焼用空気ダクト2内をボイラ14内部へと送給される。
さらに、燃料供給管9の上流端は液体燃料11の供給源である燃料タンク10が備えられ、下流端はボイラ入口13に挿入されるため、液体燃料11は燃料供給管9を通じボイラ14内部へ送給される。
そして、燃焼用空気ダクト2の下流端は、先端が空気・噴霧水噴射口23である給気ノズル8がボイラ入口13に挿入されるとともに、燃料供給管9の下流端は、先端が燃料噴射口24である注入ノズル12を備えてボイラ入口13に挿入され、給気ノズル8及び注入ノズル12はわずかに離隔しつつ並走して設置されるため、それぞれの噴射口23,24は互いに隣接する。
続いて、空気・噴霧水噴射口23から空気・噴霧水混合体22が噴射され、燃料噴射口24から火炎25が形成され、これら噴射口23,24は互いに隣接することから、空気・噴霧水混合体22は、その一部が火炎25の側面の一部に接触しながらボイラ14へと噴射される。
なお、空気・噴霧水混合体22は必ずしも火炎25に接触する必要はなく、空気・噴霧水噴射口23と燃料噴射口24間の距離に依存して火炎25との位置関係が決定される。また、前述のように、1本の注入ノズル12の周囲を複数の給気ノズル8が取り巻く構造にあっては、空気・噴霧水混合体22が火炎25の側面のほぼ全周に接触する状態も考えられる。
さらに、本実施例では、燃焼用空気ダクト2上、ファン4よりも上流側に噴霧器5あるいは噴霧器5を備えた噴霧水供給配管6を接続して噴霧水7をファン4によって燃焼用空気ダクト2内に吸引したが、噴霧器5から噴霧水7を吐出させるポンプ等を備える場合には、噴霧水7に吐出圧を加えることができるので、ファン4による吐出圧に抗して燃焼空気ダクト2内に噴霧水7を送出可能であり、ファン4よりも下流側に噴霧器5あるいは噴霧器5が備えられた噴霧水供給管6を接続してもよい。この場合には、噴霧水7がファン4のモータ等にかかることがなく、よって悪影響を及ぼすことがないため、ファン4の寿命期間を延ばす効果があると考えられる。
【0021】
そして、空気・噴霧水混合体22が、その一部が火炎25の側面の一部に接触しながらボイラ14へと噴射されることから、火炎25周辺においては、空気・噴霧水混合体22中に含有される酸素が火炎25の燃焼を持続可能とし、その結果空気・噴霧水混合体22及び液体燃料11は燃焼反応により高温の燃焼ガス26を発生させる。この燃焼ガス26は、空気・噴霧水混合体22中の窒素が酸化されたサーマルNOx及び液体燃料11中の窒素化合物が酸化されたフューエルNOxを含む。
さらに詳細に述べると、空気・噴霧水混合体22中の噴霧水7分子は、火炎25による加熱により瞬時に蒸発する。このとき蒸発熱を必要とすることから、火炎25の燃焼熱の一部が使われて燃焼ガス26の燃焼温度がその分低下する。燃焼温度が低下するとNOx生成の反応速度が低下するため、サーマルNOx及びフューエルNOxはともに生成濃度が減少する。なお、燃焼温度が低下すると、液体燃料11に含まれる未燃焼の窒素が増加するが、その量は無視しうる程度に少ない。
加えて、空気・噴霧水噴射口23における気体の流量は一定であり、空気・噴霧水混合体22は、燃料用空気に噴霧水7が混合されるので、空気・噴霧水噴射口23から噴射される空気・噴霧水混合体22中の酸素濃度は、噴霧水7が混合されていない場合と比較して低下している。したがって、空気・噴霧水混合体22及び液体燃料11中の窒素の酸化が抑制され、サーマルNOxの生成濃度が減少する。
上記より、空気・噴霧水混合体22を火炎25と同時に噴射することで、サーマルNOx及びフューエルNOxの生成濃度が減少する。また、空気・噴霧水混合体22が火炎25の側面のほぼ全周に接触する場合のように、火炎25に対して空気・噴霧水混合体22がより多く噴射されると上記のNOxの生成濃度はより減少するが、水量調節弁27を調節して噴霧水7の注入量に留意することで火炎25が不安定となることは回避される。
【0022】
さらに、ボイラ14内部にはドラム16が設置されているため、高温の燃焼ガス26はその周囲を循環しながら14内部に充満する。ドラム16にはボイラ水18が貯留されることから、燃焼ガス26とボイラ水18との熱交換が行われる。
熱交換後に温度が低下した燃焼ガス26は、排ガスとして煙道20により煙突21に誘導され、ここから排出される。
また、煙道20の途中に、脱硝装置を設置すると、液体燃料11中の未燃焼窒素を起因として発生したNOxが窒素分子に還元されるので、さらなるNOxの減少となる。
【0023】
次に、実施例1に係るボイラ装置1の効果について説明する。
噴霧器5が吸気口3より下流側の燃焼用空気ダクト2に、接続されることから、直接ボイラ14に別途配管を穿通させる必要がないので改造工事が極めて容易であるうえに、これに伴ってボイラ14を停止させる必要がない。よって、経済的及び稼働効率的に優れている。
また、噴霧器5の接続位置は燃焼用空気ダクト2に限られず吸気口3にも直接接続可能であることから、既設のボイラの配管構造に適した任意位置に噴霧器5を設けることができる。さらに、噴霧器5の上流に噴霧水供給管6として専用の水配管を設置する場合でもわずかなスペースで敷設可能である。したがって、噴霧器5及び噴霧水供給管6を新設することに起因する作業空間の狭小化の問題はほぼ発生しない。噴霧器5を吸気口3に直接接続する場合には、空気の取り込みと同時に噴霧水が取り込まれるため、早期に空気・噴霧水混合体22が形成され、撹拌が十分されるという効果がある。
さらに、噴霧水7は、ボイラ水18のように薬品処理等は特に必要とされないので工業用水等の安価な水供給が可能である。
次に、燃焼用空気ダクト2においてこの噴霧水7と燃焼用空気の各分子は充分均一に混合される空気・噴霧水混合体22を形成することから、火炎25と接触した際に噴霧水7分子の分布の偏りによって火炎25が部分的・時間的に不安定になることがない。したがってボイラ能力は噴霧水7の混合を原因として低下しない。
続いて、空気・噴霧水混合体22は、その一部が火炎25の側面の一部に接触しながらボイラ14へと噴射されるが、空気・噴霧水噴射口23と燃料噴射口24間の距離に依存して火炎25との位置関係が決定される。すなわち、既設の位置関係をそのまま維持したままで足り、噴射口23,24について新たな改造が不要である。
そして、この空気・噴霧水混合体22中に含有される酸素は火炎25の燃焼を持続可能とし、他方噴霧水7は燃焼ガス26の燃焼温度及び空気・噴霧水混合体22の酸素濃度を低下させるため、火炎25が不安定となってボイラ能力が低下することを回避しつつサーマルNOx及びフューエルNOxの生成を抑制することができる。このボイラ能力低下の回避は、水量調節弁27を調節して噴霧水7注入量の調整をすることによって可能であるから、操作が容易であり火炎25の燃焼度に迅速に対応することができる。
なお、燃焼ガス26の燃焼温度が低下すると液体燃料11に含まれる未燃焼の窒素が増加するが、その量は無視しうる程度に少ないことと、脱硝装置を設置するとこれを起因として発生したNOxが窒素分子に還元されることから、燃焼温度低下による不利益も回避することができる。
次に、ボイラ水18は液体燃料11の燃焼熱で熱せられ蒸気となって蒸気取出管19から取り出されるが、噴霧水7は工業用水等であることから、取り出されたボイラ水18の蒸気を再びボイラ14で再利用する必要はない。したがって、水蒸気を噴霧してNOx生成抑制を行う装置のように実質のボイラ能力が低下することがない。
さらに、ボイラ水18との熱交換後に温度が低下した燃焼ガス26は、排ガスとして煙突21から排出されることと、噴霧水7は工業用水等であることから、高価なボイラ水18ではなく安価な噴霧水7を排出するので、原材料の利用効率及び経済的効率という点で有利である。
以上をまとめると、ボイラ装置1は、従来装置よりも簡単かつ小規模な改造を既設のボイラ装置を加えることで済むにもかかわらず、NOx生成の抑制効果を有し、経済的及び稼働効率的にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0024】
請求項1及び請求項2に記載された発明は、重油等の化石液体燃料を燃焼させるボイラ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1…ボイラ装置 2…燃焼用空気ダクト 3…吸気口 4…ファン 5…噴霧器 6…噴霧水供給管 7…噴霧水 8…給気ノズル 9…燃料供給管 10…燃料タンク 11…液体燃料 12…注入ノズル 13…ボイラ入口 14…ボイラ 15…ボイラ壁 16…ドラム 17…蒸気用給水管 18…ボイラ水 19…蒸気取出管 20…煙道 21…煙突 22…空気・噴霧水混合体 23…空気・噴霧水噴射口 24…燃料噴射口 25…火炎 26…燃焼ガス 27…水量調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料の燃焼により蒸気を発生させるボイラと、
前記ボイラの入口に注入ノズルを備えて接続され,この注入ノズルから前記液体燃料を供給する燃料供給手段と、
外部より吸気口を介して燃焼用空気を吸入し、前記ボイラの入口に給気ノズルを備えて接続され,この給気ノズルから前記燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給手段と、
噴霧器を,ダクトを介して前記燃焼用空気供給手段に接続し,噴霧水を生成して、前記燃焼用空気供給手段へ前記噴霧水を供給する水噴霧手段と、を備え、
前記燃焼用空気供給手段において前記燃焼用空気と前記噴霧水との混合体(以下、空気・噴霧水混合体という)を送給し、前記給気ノズルから前記ボイラ内へ空気・噴霧水混合体を噴射して、前記液体燃料と混合して燃焼させることを特徴とするボイラ装置。
【請求項2】
前記噴霧器は、前記ダクトを介して前記燃焼用空気供給手段に接続されることに代えて、前記吸気口に直接接続されて噴霧水を燃焼用空気供給手段に供給することを特徴とする請求項1記載のボイラ装置。

【図1】
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【図2】
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