説明

ボイラ

【課題】 灯油やA重油等の液体燃料を用いて、燃焼室負荷が高い状態においても燃焼を完結させ、低O、低煤塵、低CO、および高いターンダウン化を実現可能なボイラを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、複数の水管を用いて構成された缶体10と、缶体10内の燃焼室16に対して液体燃料を噴霧するバーナ20とを備えたボイラ1であって、バーナ20が、缶体10における燃焼室負荷を5.4MW/m〜8.6MW/mの範囲内とすべく、燃焼室16内に液体燃料を噴霧するノズル部70を有し、ノズル部70が、液体燃料以外の流体を混入させて、混入された液体燃料以外の流体と液体燃料との混合流体を噴霧可能に構成されており、噴霧される液体燃料の粒子径を40μm以下とすべく、液体燃料以外の流体として圧縮空気が用いられることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、環境汚染問題は社会的に大きく取り上げられており、ボイラにおいても、有害物質(CO、煤塵等)の低減が求められている。
【0003】
ガス燃料を用いた燃焼装置を備えたボイラについては、燃焼性向上技術および有害物質(CO、煤塵等)の低減化技術に関して多くの提案がなされており(例えば、特許文献1参照)、その中には実際に効果を得て実用化されているものも少なくない。
【0004】
しかしながら、灯油やA重油等の液体燃料を用いた燃焼装置を備えたボイラについては、種々の提案がなされてはいるものの、ガス燃料を用いた燃焼装置ほど、燃焼性向上技術および有害物質(CO、煤塵等)の低減化技術は進んでいない。
【0005】
特に、高いターンダウンを実施しようとすれば、最小燃焼状態(最小燃料を供給したときの燃焼状態)あるいは最大燃焼状態(最大燃料を供給したときの燃焼状態)のいずれかにおいて燃焼状態が不安定になりやすく、この不安定な燃焼状態に起因して、有害物質の低減化も達成されにくい。
【0006】
例えば、最小燃焼状態と最大燃焼状態とのターンダウン比を大きく設定し、ボイラの燃焼室(燃焼室負荷)を最小燃焼状態のときに適切な状態であるように構成すると、最大燃焼状態のときに、燃焼室負荷が大きくなりすぎて、燃焼室内で燃焼が完結し難くなる。つまり、燃焼が完結しないことによって、煤塵やCO等の有害物質の低減化を実現できないこととなる。
【0007】
さらに、近年においては、環境汚染問題に加えて省エネルギ等の要請もあって、より一層の有害物質の低減が求められている。つまり、環境汚染問題の解決と省エネルギ化とを実現するために、より高いレベルでの有害物質低減化技術が求められている。
【0008】
具体的には、省エネルギ化のために、低O、すなわち排気ガス中の残存酸素量低減(例えば、排気ガス中の残存酸素量3%)、低煤塵、低COを実現可能なボイラが求められている。しかしながら、従来技術においては、かかるボイラの実現は困難である。
【0009】
【特許文献1】特開平8−61614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであって、灯油やA重油等の液体燃料を用いて、燃焼室負荷が高い状態においても燃焼を完結させ、低O、低煤塵、低CO、および高いターンダウン化を実現可能なボイラを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、複数の水管を用いて構成された缶体と、前記缶体内の燃焼室に対して液体燃料を噴霧するバーナとを備えたボイラであって、前記缶体における燃焼室負荷を5.4MW/m〜8.6MW/mの範囲内とし、前記バーナが前記燃焼室内に前記液体燃料を噴霧するノズル部を有し(前記ノズル部は、前記缶体における燃焼室負荷を5.4MW/m〜8.6MW/mの範囲内とすべく、前記燃焼室内に前記液体燃料を噴霧する能力を有し)、前記ノズル部が、前記液体燃料以外の流体を混入させて、混入された前記液体燃料以外の流体と前記液体燃料との混合流体を噴霧可能に構成されており、噴霧される前記液体燃料の粒子径を40μm以下とすべく、前記液体燃料以外の流体として圧縮空気が用いられることを特徴としている。
【0012】
また、本発明にかかるボイラにおいては、前記ノズル部から噴霧される前記液体燃料と前記圧縮空気との混合流体に対して、「45×m×(T+273.15)/273.15」(m/s)以上の流速を有する燃焼用空気が供給される構成であることが好ましい。ここで、「m」は空気比を示し、「T」は温度(℃)を示している。したがって、例えば、空気比1.05で温度50℃の場合、本発明にかかるボイラにおいては、56(=45×1.05×(50+273.15)/273.15)m/s以上の流速を有する燃焼用空気が供給される構成であることが好ましい。
【0013】
また、本発明にかかるボイラにおいては、前記ノズル部に設けられた前記混合流体を噴霧する噴霧孔部の数と、前記ノズル部の周囲に設けられた前記燃焼用空気を供給する空気供給孔部の数とが、対応すべく設けられている構成であることが好ましい。より具体的には、前記噴霧孔部と前記空気供給孔部とが同数設けられており、それぞれの前記空気供給孔部が、各噴霧孔部から噴出される前記混合流体に対して、効果的なミキシング作用を及ぼす位置に設けられている。ただし、本発明は、前記噴霧孔部の数と前記空気供給孔部の数とが同数である場合に限定されるものではない。すなわち、前記混合流体と前記燃焼用空気とが効果的にミキシング可能であるように、前記噴霧孔部と前記空気供給孔部とがそれぞれ対応して設けられておればよく、これらの数が同数でない場合も含む概念である。例えば、六つの前記噴霧孔部に対応させて、三つの前記空気供給孔部を設けてもよい。つまり、適切なミキシング作用を得ることが可能であれば、この例のように、二つの前記噴霧孔部に、一つの前記空気供給孔部を対応させるような構成としてもよい。
【0014】
また、本発明にかかるボイラにおいては、前記混合流体と、前記燃焼用空気との接触角度が、45°以上である構成が好ましい。
【0015】
また、本発明にかかるボイラにおいては、前記噴霧孔部から噴出される前記混合流体の噴霧角度が10°前後であり、前記空気供給孔部の開口角度が32°〜37°である構成が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、灯油やA重油等の液体燃料を用いて、燃焼室負荷が高い状態においても燃焼を完結させ、低O、低煤塵、低CO、および高いターンダウン化を実現可能なボイラを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態を説明する前に、本明細書において使用する用語について説明する。
【0018】
本明細書において、単に「ガス」と称する場合、ガスとは、燃焼反応中のガスおよび燃焼反応が完了したガスの少なくとも一方を含む概念であり、燃焼ガスと称することもできる。つまり、ガスとは、燃焼反応中のガスおよび燃焼反応が完了したガスの両方を有する場合、燃焼反応中のガスのみを有する場合、あるいは燃焼反応が完了したガスのみを有する場合の、いずれをも含む概念である。以下、特に説明しない場合は同様の概念である。
【0019】
また、排ガスとは、燃焼反応が完了または殆ど完了したガスを意味する。さらに、特に説明しない場合は、排ガスとは、ボイラの缶体内を通過して煙突部に達したガス、および缶体内にて循環するガスの両方あるいはいずれかを意味するものとする。
【0020】
また、ガス温度は、特に説明しない限り、燃焼反応中のガスの温度を意味し、燃焼温度あるいは燃焼火炎温度と同義である。さらに、ガス温度の抑制とは、ガス(燃焼火炎)温度の最高値を低く抑えることを意味する。なお、通常、燃焼反応は、上述した「燃焼反応が完了したガス」中においても極微量であるが継続しているので、「燃焼反応の完了」とは、燃焼反応の100%完結を意味するものではない。
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
まず、本実施形態の第一態様にかかるボイラは、複数の水管を用いて構成された缶体と、缶体内の燃焼室に対して液体燃料を噴霧するバーナとを備えたボイラであって、缶体における燃焼室負荷を5.4MW/m〜8.6MW/mの範囲内とし、バーナが燃焼室内に液体燃料を噴霧するノズル部を有し、このノズル部が、液体燃料以外の流体を混入させて、混入された液体燃料以外の流体と液体燃料との混合流体を噴霧可能に構成されており、噴霧される液体燃料の粒子径を40μm以下とすべく、液体燃料以外の流体として圧縮空気が用いられることを特徴としている。
【0023】
このような構成によれば、缶体における燃焼室負荷が高負荷状態(5.4MW/m〜8.6MW/mの範囲内)として、缶体の燃焼室内で燃焼を早期に完結させ、低O、低煤塵、低CO、および高いターンダウン化を実現可能なボイラとすることができる。より具体的には、本実施形態にかかるボイラによれば、バーナを構成するノズル部が、液体燃料以外の流体を混入させて、混入された液体燃料以外の流体と液体燃料との混合流体を噴霧可能に構成されており、この「液体燃料以外の流体」として圧縮空気が用いられるため、噴霧される液体燃料の粒子径を40μm以下とすることができる。つまり、高圧の圧縮空気と液体燃料とをノズル部内でミキシングして、細かい粒子径(40μm以下)にて液体燃料が噴霧されるため、バーナ(を構成するノズル部)から缶体における燃焼室負荷を5.4MW/m〜8.6MW/mの範囲内とすべく液体燃料が噴霧されても、ボイラの燃焼室内における燃焼が早期に完結し、上述したように、低煤塵、低CO等を実現することができる。
【0024】
また、本実施形態の第二態様にかかるボイラは、上述したノズル部から噴霧される液体燃料と圧縮空気との混合流体に対して、「45×m×(T+273.15)/273.15」(m/s)以上の流速を有する燃焼用空気が供給されるべく構成されている。ここで、「m」は空気比、「T」は温度(℃)である。一例をあげれば、56m/s(空気比1.05、温度50℃時)以上の流速を有する燃焼用空気が供給されるべく構成されている。
【0025】
このような構成によれば、高速で供給される燃焼用空気と混合流体とが早期に混合するため、燃焼用空気と混合流体とのミキシングが早い段階で促進され、燃焼室内における早期燃焼完結を効果的に実現することができる。
【0026】
また、本実施形態の第三態様にかかるボイラは、ノズル部に設けられた混合流体を噴霧する噴霧孔部の数と、ノズル部の周囲に設けられた燃焼用空気を供給する空気供給孔部の数とが、対応すべく設けられている。つまり、噴霧孔部と空気供給孔部とが同数設けられており、それぞれの空気供給孔部が、各噴霧孔部から噴出される前記混合流体に対して、効果的なミキシング作用を及ぼす位置に設けられている。
【0027】
このような構成によれば、燃焼用空気と混合流体とのミキシングが無駄なく効率的に行われるため(燃焼用空気が無駄なく使用されるため)、燃焼室内における早期燃焼完結を効果的に実現することができる。
【0028】
また、本実施形態の第四態様にかかるボイラは、混合流体と、燃焼用空気との接触角度が、45°以上となるように構成されている。換言すれば、燃焼用空気が垂直方向に噴出して供給される場合には、混合流体の中心軸を挟んだ噴霧角度は90°以上となるように構成されている。
【0029】
このような構成によれば、燃焼用空気と混合流体との接触角度が大きいため、互いに略垂直方向に噴出される場合と比較すれば、ミキシングがより効率的に行われることとなる。したがって、このような構成によれば、ミキシングが効率的に行われ、燃焼室内における早期燃焼完結を効果的に実現することができる。
【0030】
また、本実施形態の第五態様にかかるボイラは、噴霧孔部から噴出される混合流体の噴霧角度が10°前後であり、空気供給孔部の開口角度が32°〜37°であるべく構成されている。
【0031】
このような構成によれば、燃焼用空気と混合流体とのミキシングが無駄なく効率的に行われるため(燃焼用空気が無駄なく使用されるため)、燃焼室内における早期燃焼完結を効果的に実現することができる。
【0032】
以下、図面に基づき、本発明の実施例にかかるボイラについて説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施例にかかるボイラの概略図を示したものである。ここで、図1は、本実施例にかかるボイラの縦断面の説明図を示している。また、図2は、図1のII−II線に沿う横断面の説明図を示している。さらに、図3および図4は、本実施例にかかるボイラに設けられたバーナの概略図を示したものである。ここで、図3は、本実施例にかかるボイラを構成するバーナの縦断面の説明図を示し、図4は、図3に示したバーナの下面図を示している。また、図5は、本実施例にかかるバーナの部分拡大説明図を示している。より詳細には、この図5は、本実施例にかかるバーナを構成するノズル部の縦断面の説明図を示している。
【0034】
図1および図2に示すように、本実施例にかかるボイラ1は、環状に配列された水管群を有する缶体10と、これらの水管群の中央部に配設されたバーナ20とを用いて構成されており、バーナ20上方位置には、燃焼用空気をバーナ20に供給する、ウインドボックス40が設けられている。
【0035】
缶体10は、上部ヘッダ11と下部ヘッダ12との間に複数の水管群(内側水管群13、外側水管群14)を立設して構成されている。それぞれの水管群13,14は、略同心円上の環状に配列されており、内側水管群13から所定間隔を隔てて外側水管群14が設けられ、内側水管群13と外側水管群14との間に環状ガス流路18が形成される。また、本実施例においては、これらの環状に配設された水管群13,14の内側が、燃焼室16として機能し、この燃焼室16の上方位置に、先述したバーナ20が設けられている。
【0036】
また、本実施例においては、内側水管群13は、各内側水管13a同士を密接させた状態、あるいは隣接する内側水管13a間を内側フィン部13bで連接した状態で環状に構成されており、その一部にガス排出口17が設けられている。このガス排出口17は、水管の長軸方向に沿って開口されており、内側水管群13内部の燃焼室16で生成されたガスを環状ガス流路18に導くべく機能する。
【0037】
さらに、外側水管群14は、各外側水管14a間に略均等の所定間隔を有した状態で環状に構成されており、各外側水管14a間には、隣接する外側水管14a間の隙間をなくすべく連接された外側フィン部14bが設けられている。この外側水管群14の一部には、外側開口部19が設けられており、この外側開口部19は、燃焼反応のほぼ完了したガスを缶体外部に排出するための排出部として機能する。つまり、バーナ20によって生成されたガスは、外側開口部19に集められた後、缶体の下方位置に設けられた排気筒(図示省略)を介して缶体10外部に排出される。
【0038】
図3および図4に示すように、本実施例にかかるボイラ1を構成するバーナ20は、このバーナ20に対して燃焼用空気を供給する空気供給手段たるウインドボックス40内の隔壁41に設置されている。具体的には、バーナ20を構成する載置板21を隔壁41に上方から載置して、ボルト等の締結手段(図示省略)にて載置板21を隔壁41に締結することによって、バーナ20をウインドボックス40内の隔壁41に設置している。なお、本実施例においては、ウインドボックス40内に空気を供給する送風機の構成は、周知の技術であるため省略している。
【0039】
本実施例にかかるバーナ20は、図3および図4に示すように、液体燃料と圧縮空気とを混合させて噴霧させるノズル部70と、ウインドボックス40から供給される空気をノズル部70から噴霧される液体燃料(を含む混合流体)に混合させるために設けられた空気供給経路(一次空気供給用の第一空気供給経路24,二次空気供給用の第二空気供給経路25)と、第一空気供給経路24から供給された空気を燃焼室16側に噴出させる中央空気噴出部26と、第二空気供給経路25から供給された空気を燃焼室16側に噴出させる複数の周囲空気供給孔部27(本発明の「空気供給孔部」に相当)(第一周囲空気供給孔部27a〜第六周囲空気供給孔部27f)とを用いて構成されている。なお、本実施例においては、ノズル部70から噴霧される混合流体に着火を行うための着火手段(例えば、着火碍子等)の記載は、図面の煩雑化を避けるために省略している。
【0040】
本実施例にかかるノズル部70は、図5等に示すように、ノズル部本体70Aと、このノズル部本体70A先端部に設けられたノズルヘッド71等とを用いて構成されている。また、本実施例においては、このノズル部本体70Aに対して、圧縮空気供給配管51と、燃料供給配管61とが接続されている。なお、本実施例にかかる図5等においては、図面の煩雑化を避けるために、圧縮空気供給配管51および燃料供給配管61の一方側端部(ノズル部本体70Aに接続されていない方の端部)の構成(例えば、エアコンプレッサ等)については省略している。
【0041】
ノズル部本体70Aには、圧縮空気供給配管51から供給される圧縮空気を流通させる圧縮空気流通経路52、および燃料供給配管61から供給される液体燃料を流通させる燃料流通経路62が設けられており、これらの流通経路52,62は、ノズル部本体70Aとノズルヘッド71とで形成されるミキシング部73に連通すべく設けられている。また、ノズルヘッド71内部には、ミキシング部73の下流側に設けられた絞り部74、およびこの絞り部74のさらに下流側に設けられた拡散部75が設けられており、ノズルヘッド71の先端部には、液体燃料と圧縮空気との混合流体Mを噴霧すべく複数の噴霧孔部72(第一噴霧孔部72a〜第六噴霧孔部72f)が設けられている。
【0042】
また、本実施例においては、圧縮空気供給配管51に供給される圧縮空気の供給圧力および燃料供給配管61に供給される液体燃料の供給圧力の少なくとも一方を制御することによって、ノズルヘッド71の噴霧孔部72から噴霧される液体燃料の供給量が調整される。つまり、必要とされるボイラの燃焼室負荷に応じて、それぞれの供給圧力を適宜調整し、ボイラの燃焼量を制御している。本実施例は、このような構成を有するため、単なる二段階の制御(低燃焼状態と高燃焼状態との切り換え制御)のみならず、それぞれの供給圧力を適宜調整することによって、三段階以上の多段階制御(燃焼量の多段階制御)を実施することができる。
【0043】
バーナ20を構成する第一空気供給経路24は、ノズル部70の外側に設けられた第一筒部材34を用いて構成されており、第二空気供給経路25は、第一筒部材34の外側に設けられた第二筒部材35を用いて構成されている。つまり、第一筒部材34の内側領域が第一空気供給経路24として機能し、第一筒部材34と第二筒部材35との間に形成される領域が第二空気供給経路25として機能する。
【0044】
第一筒部材34の先端開口部(ボイラ1の燃焼室16側の開口部)は、中央空気噴出部26として機能し、ウインドボックス40から供給された空気は、この中央空気噴出部26を介して、燃焼室16側に噴出される。また、第二筒部材35の先端部(ボイラ1の燃焼室16側端部)には、略台形状である複数の周囲空気供給孔部27(第一周囲空気供給孔部27a〜第六周囲空気供給孔部27f)が穿孔された空気供給制御板37が設けられており、ウインドボックス40から供給された空気Aは、中央空気噴出部26のみならず、これら複数の周囲空気供給孔部27を介しても燃焼室16側に噴出される。
【0045】
周囲空気供給孔部27(本発明の「空気供給孔部」に相当)は、図3および図4に示すように、ノズル部70の周囲に設けられている。より具体的には、本実施例にかかるそれぞれの周囲空気供給孔部27a〜27fは、上述したノズル部70のノズルヘッド71に設けられた複数の噴霧孔部72a〜72fに対応して設けられている(図4参照)。
【0046】
本実施例においては、ノズルヘッド71の先端部に六つの噴霧孔部72a〜72fが設けられているため、これに対応すべく、各噴霧孔部72a〜72fから噴霧される混合流体Mの上方位置に、空気供給制御版37に開口された六つの周囲空気供給孔部27a〜27fが設けられている。つまり、各噴霧孔部72a〜72fの直下にて、燃焼用空気Aa〜Afと混合流体Ma〜Mfとが接触して混合すべく、周囲空気供給孔部27a〜27fが設けられている。
【0047】
また、本実施例においては、それぞれの噴霧孔部72から混合流体が円錐状に噴霧角度10°前後で噴霧され、空気供給制御板37に開口された扇状の周囲空気供給孔部27の開口角度θ(図4参照)が、32°〜37°に設定されている。このような構成によれば、燃焼用空気と混合流体とのミキシングが無駄なく効率的に行われるため(燃焼用空気が無駄なく使用されるため)、燃焼室内における早期燃焼完結を効果的に実現することができる。
【0048】
本実施例にかかるボイラ1は、以上のように構成されており、その構成に基づき、次のような作用効果を有する。
【0049】
本実施例にかかるボイラ1を構成するバーナ20を作動させる場合には、まずは、送風機(図示省略)を駆動させ、ウインドボックス40を介して第一空気供給経路24および第二空気供給経路25に空気が供給される。次いで、ノズルヘッド71の各噴霧孔部72a〜72fから混合流体Ma〜Mfが噴霧されるタイミングに合わせて、着火手段(例えば、着火碍子)にて着火処理が行われる。
【0050】
つまり、本実施例においては、第一空気供給経路24および第二空気供給経路25を介して、中央空気噴出部26および周囲空気供給孔部27から空気Aa〜Afが噴出され、この空気と各噴霧孔部72a〜72fから噴霧される混合流体Ma〜Mfとのミキシングが行われる。そして、ノズル部70の近傍に設けられた、通電されることによって電気火花を形成する着火碍子等(図示省略)を用いて、空気Aとミキシングされた混合流体Mに対して着火が行われる。この着火によって、ノズル部70から噴霧された混合流体Mが燃焼し、ボイラにおいて必要とされる燃焼状態が維持されることとなる。
【0051】
さて、上記のようにして着火処理等が行われる混合流体Mであるが、これは、図5等から明らかなように、ノズル部70内で液体燃料と圧縮空気とをミキシングさせて構成されている。具体的には、圧縮空気供給配管51および圧縮空気流通経路52を経て供給された圧縮空気と、燃料供給配管61および燃料流通経路62を経て供給された液体燃料とが、ミキシング部73内で混合され、この混合された混合流体が絞り部74で一度絞られ、次いで、ノズルヘッド71内の拡散部75に導かれることによって、さらに混合状態が促進され、この混合状態が促進された混合流体が、六つの噴霧孔部72a〜72fのそれぞれから噴霧される。
【0052】
そして、ボイラ1の燃焼量については、先にも述べたように、圧縮空気供給配管51に供給される圧縮空気の供給圧力および燃料供給配管61に供給される液体燃料の供給圧力の少なくとも一方を制御することによって、その制御を行うことが可能である。例えば、圧縮空気の供給圧力のみを制御することによって、ボイラ1の燃焼量を調整することも可能である。この場合には、圧縮空気流通経路52からミキシング部73に供給される圧縮空気によって、燃料供給配管61中の液体燃料が燃料流通経路62を経てミキシング部73に引き込まれることとなるため、圧縮空気の供給圧力によって液体燃料の供給量を制御することが可能となる。但し、これは一例であって、勿論、それぞれの供給配管51,61における供給圧力を適宜制御して、ボイラ1の燃焼量を調整してもよい。
【0053】
本実施例にかかるバーナ20においては、以上のように、それぞれの供給配管51,61における供給圧力を適宜制御することによって、停止状態、低燃焼状態、および高燃焼状態のいずれかへの切り換え、あるいは三段階以上の多段的な燃焼状態の切り換えが可能である。また、当然のことながら、燃焼状態継続時において、低燃焼から高燃焼、あるいは高燃焼から低燃焼への切り換え、さらに燃焼量の多段的な切り換えも可能である。
【0054】
バーナ20に対する空気の供給量は、一般にウインドボックス40と送風機との間のダクト内に設けられたダンパ(図示省略)や、送風機の回転数を制御するインバータ等(図示省略)を用いて調整される。そして、この空気は、液体燃料の供給量に対応して供給される。例えば、低燃焼時に供給される空気量を「1」とすれば、高燃焼時(例えば、低燃焼の二倍の燃焼量)に供給される空気量を「2」とする。このような空気量の調整をダンパやインバータを用いて行っている。
【0055】
以上のように構成され機能するボイラ1においては、ノズル部70内で液体燃料と圧縮空気とをミキシングすることによって、液体燃料の微粒化が行われている。具体的には、噴霧孔部72から燃焼室16に噴霧される液体燃料の粒子径を40μm以下とすべく、液体燃料と圧縮空気との混合処理が行われている。
【0056】
本実施例によれば、以上のように液体燃料の微粒化が行われるため、ボイラの燃焼室内における燃焼が早期に完結する。つまり、本実施例によれば、缶体10における燃焼室負荷が高負荷状態(5.4MW/m〜8.6MW/mの範囲内)となるように、液体燃料が供給された場合であっても、缶体10の燃焼室16内で燃焼を早期に完結させることが可能となるため、低O、低煤塵、低CO、および高いターンダウン化を実現可能なボイラとすることができる。例えば、本実施例によれば、空気比1.05程度の低空気比(低O)にて、良好な燃焼状態を実現可能である。また、本実施例によれば、1:5程度の高いターンダウンを実現可能である。なお、燃焼室負荷を5.4MW/m〜8.6MW/mの範囲内とする場合の一例としては、燃焼室内の容積(炉容積)を0.306mとして、この燃焼室内にて燃焼量を1.65MW〜2.63MWとする場合があげられる。
【0057】
また、本実施例にかかるボイラ1においては、図3および図4に示すように、バーナ20を構成するノズル部70の六つの噴霧孔部72から、中心軸を挟んだ噴霧角度θが90°程度となるように、混合流体Mが噴霧される。これに対し、燃焼用空気Aは、周囲空気供給孔部27から、略垂直方向に噴出される。したがって、本実施例においては、混合流体Mと燃焼用空気Aとの接触角度θは、略45°程度となる(図3参照)。なお、本実施例は、この接触角度θを略45°に設定した場合を示しているが、本発明はこの構成に限定されず、45°以上であることが好ましい。
【0058】
このように、接触角度θを45°以上に設定すれば、燃焼用空気と混合流体のそれぞれが垂直方向に(つまり、それぞれが略平行に)噴出される場合と比較して、燃焼用空気Aと混合流体Mとの接触角度θが大きくなる。したがって、このような構成によれば、ミキシングが効率的に行われ、燃焼室16内における早期燃焼完結を効果的に実現することができる。
【0059】
また、本実施例においては、周囲空気供給孔部27から噴出される燃焼用空気Aが、56m/s以上の流速を有することが好ましい。このような構成によれば、高速で供給される燃焼用空気Aと混合流体Mとが早期に混合するため、燃焼用空気Aと混合流体Mとのミキシングが早い段階で促進され、燃焼室16内における早期燃焼完結を効果的に実現することができる。
【0060】
また、本実施例においては、ノズル部70に設けられた混合流体Mを噴霧する噴霧孔部72の数と、ノズル部70の周囲に設けられた燃焼用空気Aを供給する周囲空気供給孔部27の数とが、対応すべく設けられている。つまり、噴霧孔部72と周囲空気供給孔部27とが同数(本実施例においては六つ)設けられており、それぞれの周囲空気供給孔部27が、各噴霧孔部72から噴出される混合流体Mに対して、効果的なミキシング作用を及ぼす位置に設けられている。より具体的には、図4に示すように、噴霧される混合流体Ma〜Mfのそれぞれの上方位置に、第一周囲空気供給孔部27a〜第六周囲空気供給孔部27fが設けられている。
【0061】
このような構成によれば、各混合流体Ma〜Mfと、対応する各燃焼用空気Aa〜Afとが、最短距離で接触して、これらのミキシング処理が無駄なく効率的に行われるため(燃焼用空気Aが無駄なく使用されるため)、燃焼室内における早期燃焼完結を効果的に実現することができる。
【0062】
さらに、本実施例においては、以下の理由に基づき、燃焼室負荷が高負荷状態(5.4MW/m〜8.6MW/mの範囲内)であっても、缶体10の燃焼室16内における早期燃焼完結を実現可能としている。
すなわち、本実施例によれば、高速空気により液体燃料を微粒化させる二流体噴霧ノズルを用い、液滴粒子径を40μm以下とし、噴霧孔部を六ヶ所以上設け、混合流体の中心軸を挟んだ噴霧角度を90°以上とし、個々の噴霧孔部から噴霧される混合流体の噴霧角度を10°前後とし、燃焼用空気の噴出位置を噴霧孔の位置と合わせ、32°〜37°の開口角度を有する空気供給孔部から56m/s以上(空気比1.05、温度50℃の条件下)の高速で空気を噴出させることによって、燃焼室負荷が高負荷状態(5.4MW/m〜8.6MW/mの範囲内)であっても、缶体10の燃焼室16内における早期燃焼完結を実現可能としている。
【0063】
また、本実施例においては、以下の理由に基づき、低O(低空気比)での早期燃焼完結を実現している。
すなわち、本実施例によれば、高速空気により液体燃料を微粒化させる二流体噴霧ノズルを用い、液滴粒子径を40μm以下とし、噴霧孔部を六ヶ所以上設け、混合流体の中心軸を挟んだ噴霧角度を90°以上とし、個々の噴霧孔部から噴霧される混合流体の噴霧角度を10°前後とし、燃焼用空気の噴出位置を噴霧孔の位置と合わせ、32°〜37°の開口角度を有する空気供給孔部から56m/s以上(空気比1.05、温度50℃の条件下)の高速で空気を噴出させることによって、低O(低空気比)での早期燃焼完結を実現している。
【0064】
以上説明したように、本実施例にかかるボイラ1によれば、液体燃料を用いて、燃焼室負荷が高い状態においても燃焼を完結させ、低O、低煤塵、低CO、および高いターンダウン化を実現可能なボイラを得ることができる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で必要に応じて種々の変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
上記実施例においては、バーナ20を構成するノズル部70に六つの噴霧孔部72が設けられ、この噴霧孔部72に対応して六つの周囲空気供給孔部27が設けられる構成について説明したが、本発明は、この構成に限定されない。したがって、本発明においては、ボイラの燃焼量に応じて、噴霧孔部の数を変更し、この変更した噴霧孔部の数に対応させて周囲空気供給孔部を設けてもよい。例えば、本実施例よりも小さな燃焼量のボイラに対して本発明を適用する場合においては、ノズル部に設けられる噴霧孔部の数を減少させて(例えば、四つとして)、この減少させた噴霧孔部の数に対応した周囲空気供給孔部を設けてもよい。逆に、本実施例よりも大きな燃焼量のボイラに対応させる場合には、必要に応じて、噴霧孔部および周囲空気供給孔部の数を六つ以上設けてもよい。
【0067】
また、上記各実施例においては、液体燃料の種類については特に説明しなかったが、本発明は何等かの液体燃料に限定されず、灯油、A重油、B重油、C重油等の液体燃料について適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例にかかるボイラの縦断面の説明図を示したものである。
【図2】図1のII−II線に沿う横断面の説明図を示したものである。
【図3】本実施例にかかるバーナの縦断面の説明図を示したものである。
【図4】図3に示したバーナの下面図を示したものである。
【図5】本実施例にかかるバーナを構成するノズル部の縦断面の説明図を示したものである。
【符号の説明】
【0069】
1…ボイラ
10…缶体
11…上部ヘッダ
12…下部ヘッダ
13…内側水管群
13a…内側水管
13b…内側フィン部
14…外側水管群
14a…外側水管
14b…外側フィン部
16…燃焼室
17…ガス排出口
18…環状ガス流路
19…外側開口部
20…バーナ
21…載置板
24…第一空気供給経路
25…第二空気供給経路
26…中央空気噴出部
27…周囲空気供給孔部
27a〜27f…第一周囲空気供給孔部〜第六周囲空気供給孔部
34…第一筒部材
35…第二筒部材
37…空気供給制御板
40…ウインドボックス
41…隔壁
51…圧縮空気供給配管
52…圧縮空気流通経路
61…燃料供給配管
62…燃料流通経路
70…ノズル部
70A…ノズル部本体
71…ノズルヘッド
72…噴霧孔部
72a〜72f…第一噴霧孔部〜第六噴霧孔部
73…ミキシング部
74…絞り部
75…拡散部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水管を用いて構成された缶体と、前記缶体内の燃焼室に対して液体燃料を噴霧するバーナとを備えたボイラであって、
前記缶体における燃焼室負荷を5.4MW/m〜8.6MW/mの範囲内とし、前記バーナが前記燃焼室内に前記液体燃料を噴霧するノズル部を有し、
前記ノズル部が、前記液体燃料以外の流体を混入させて、混入された前記液体燃料以外の流体と前記液体燃料との混合流体を噴霧可能に構成されており、
噴霧される前記液体燃料の粒子径を40μm以下とすべく、前記液体燃料以外の流体として圧縮空気が用いられる
ことを特徴とするボイラ。
【請求項2】
前記ノズル部から噴霧される前記液体燃料と前記圧縮空気との混合流体に対して、以下の関係式を満足する流速を有する燃焼用空気が供給される
請求項1に記載のボイラ。
燃焼用空気の流速(m/s)≧45×m×(T+273.15)/273.15
m:空気比
T:温度(℃)
【請求項3】
前記ノズル部に設けられた前記混合流体を噴霧する噴霧孔部の数と、前記ノズル部の周囲に設けられた前記燃焼用空気を供給する空気供給孔部の数とが、対応すべく設けられている
請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記混合流体と、前記燃焼用空気との接触角度が、45°以上である
請求項2または3に記載のボイラ。
【請求項5】
前記噴霧孔部から噴出される前記混合流体の噴霧角度が10°前後であり、前記空気供給孔部の開口角度が32°〜37°である
請求項3または4に記載のボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−57184(P2007−57184A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245323(P2005−245323)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】