説明

ボイラ

【課題】本発明は、給水ラインにおけるボイラ水の逆流を素早く確実に検知できる機能を備えたボイラを提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係るボイラ1は、ボイラ本体10、給水タンク15、給水タンク15とボイラ本体10との間の給水ラインを構成する配管20、給水ポンプ22、流量計30及び逆止弁23を備えている。流量計30には、羽根車33、サーミスタ40、2つのホールIC41が設置されている。流量計制御回路45は、サーミスタ40の出力に基づいて、温度上昇率により給水ラインにおける逆流検知を行うと共に、ホールIC41の出力に基づいて、羽根車33の逆回転信号数検出により給水ラインにおける逆流検知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させて得た熱を水に伝え、蒸気や温水に変える熱源機器であるボイラに関し、特に、給水ラインにおける逆流を検知する機能を備えたボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ボイラの給水ラインには、ボイラ水(缶水)の逆流を防止するために逆止弁が設置されている。ところが、逆止弁に異物が噛み込む等の不具合が発生し、ボイラ水が逆流してしまった場合には、給水ポンプ内部にボイラ水が流入し、腐食やキャビテーションによって給水ポンプの性能が低下したり、給水ラインのその他の箇所の破損を生じさせたりしてしまう。
【0003】
このため、従来のボイラでは、給水ラインの逆止弁の上流側に、逆流を検知するためのセンサを設けたものが提供されている。例えば、下記特許文献1には、給水ラインにおいて、給水ポンプと逆止弁との間に給水温度を検出する給水温度検出器を設置し、給水温度が所定値以上上昇したときに逆流であると判断する給水逆流検知装置が開示されている。
【0004】
ところで、下記特許文献1では、給水温度が上昇すれば逆流であると判断しているため、流れの方向を検知することができない。よって、順方向に高温の給水が流れた場合にも逆流であると誤検知してしまうおそれがある。
【0005】
これに対して、下記特許文献2では、給水ライン上の給水ポンプと逆止弁との間に設置された羽根車の回転方向を検知することでボイラ水の逆流を検知する方法が開示されている。また、特許文献2には、給水ポンプと逆止弁との間にさらに温度センサを設置し、温度センサによる逆流検知を組み合わせることで、逆流検知の精度を上げることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−341605号公報
【特許文献2】特開2009−139025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような特許文献2に開示されたボイラにおいては、逆流検知の精度を上げることは可能であるが、特許文献2の逆流検知方法では、検知判断するまでにある程度時間がかかってしまう。このため、大流量の逆流が発生した場合には、逆流検知の時間遅れにより、ボイラ水がかなり上流位置まで逆流してしまうケースも発生してしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、給水ラインにおけるボイラ水の逆流を素早く確実に検知することで、大流量の逆流にも対応することのできるボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るボイラは、ボイラ本体と、給水タンクと前記ボイラ本体とを接続する給水ラインと、前記給水ラインに設置された給水ポンプと、前記給水ポンプの下流側において前記給水ラインに設置された逆止弁と、を備えるボイラにおいて、前記給水ラインの前記給水ポンプと前記逆止弁との間に設置された羽根車と、前記羽根車の回転方向を検出する回転検出センサと、前記給水ポンプの停止後、前記回転検出センサの出力に基づいて、所定の時間内に前記羽根車の逆回転信号を所定の数検出したときに、前記ボイラ本体から前記給水ラインにボイラ水が逆流したと判定する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るボイラは、ボイラ本体と、給水タンクと前記ボイラ本体とを接続する給水ラインと、前記給水ラインに設置された給水ポンプと、前記給水ポンプの下流側において前記給水ラインに設置された逆止弁と、を備えるボイラにおいて、前記給水ラインの前記給水ポンプと前記逆止弁との間に設置された温度センサと、前記給水ポンプの停止後、前記温度センサの出力に基づいて、単位時間当たりの温度上昇率が所定値以上であるときに、前記ボイラ本体から前記給水ラインにボイラ水が逆流したと判定する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るボイラによれば、給水ラインにおけるボイラ水の逆流を素早く確実に検知することができ、大流量の逆流にも対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るボイラの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る流量計の正面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る流量計の右側面図である。
【図4】図4は、図3のB−B線による断面図である。
【図5】図5は、図2のA−A線による断面図である。
【図6】図6は、本実施形態に係るサーミスタを用いた温度による逆流検知の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は、本実施形態に係るホールICを用いた羽根車の回転検出による逆流検知の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。まず、図1に基づいて、本実施形態に係るボイラの構成について説明する。図1は、本実施形態に係るボイラの構成を概略的に示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るボイラ1は、ボイラ本体10、給水タンク15とボイラ本体10との間の給水ラインを構成する配管20、給水ポンプ22、流量計30及び逆止弁23を備えている。
【0015】
ボイラ本体10はボイラ制御回路11、流量計30は流量計制御回路45を備えている。図1に点線で示すように、ボイラ制御回路11は、給水ポンプ22及び流量計制御回路45と配線で接続されており、給水ポンプ22の動作を制御すると共に、流量計制御回路45から流量計30を通過する給水の流量・温度や逆流検知を示す信号を受信するように構成されている。また、後述する流量計30に設置された各種センサと流量計制御回路45が、配線46で接続されている。
【0016】
続いて、図2〜図5を参照しながら本実施形態に係る流量計の構成について説明する。本実施形態では、流量計30に逆流を検知するための各種センサを設置している。図2は、本実施形態に係る流量計の正面図、図3は、本実施形態に係る流量計の右側面図、図4は、図3のB−B線による断面図、図5は、図2のA−A線による断面図である。
【0017】
図2〜図5に示すように、流量計30は、ハウジング31、Oリング32、羽根車33、軸受け35、六角ネジ38、サーミスタ40、2つのホールIC41,41及び配線46を備えている。ハウジング31は、ほぼ円筒状のハウジングA31−1とハウジングB31−2とを、Oリング32を挟んで、4つの六角ネジ38で同軸上に固定接続して構成されている。
【0018】
ハウジング31内には、給水が流れる流路が形成されており、図2及び図4において、左側が給水ポンプ22及び給水タンク15へとつながる上流側であり、右側が逆止弁23及びボイラ本体10へとつながる下流側である。ハウジング31の流路内には、羽根車33が設置されており、羽根車33の軸は、ハウジング31のリブ31a,31bに固定された2つの軸受け35によって回転可能に保持されている。そして、流路内を水が流れると、羽根車33が回転する。上流から下流へと流れる正流の場合と、下流から上流へと流れる逆流の場合とでは、羽根車33は逆方向に回転する。
【0019】
リブ31aは、ハウジングA31−1に一体に形成され、リブ31bは、ハウジングB31−2に一体に形成されており、図3〜図5に示すように、120度間隔で3つのリブ板が、ハウジング31の中心軸近傍から外壁まで延在している。このリブ31a,31bは、流路内を流れる流体を整流する作用も奏している。
【0020】
サーミスタ40は、図3及び図4に示すように、そのセンサ部分が流路内のリブ31bの下流側に隣接して位置するように、ハウジングB31−2に固定されている。このように、流量計30の下流側の端部付近にサーミスタ40を設置することで、逆流発生時に素早くその検知を行うことができる。もちろん、サーミスタ40の設置位置は上記位置に限られることなく、自由に変更可能である。例えば、リブ31bの内部に設置しても良い。但し、羽根車33の回転特性を劣化させたり、圧損を大きく増加させたりするような位置には設置しないことが望ましい。
【0021】
サーミスタ40は、配線46によって流量計制御回路45に接続されている。流量計制御回路45は、サーミスタ40の出力信号から流路内の温度を算出し、後述する処理によりボイラ水(缶水)の逆流を検知する。流量計制御回路45は、サーミスタ40の出力からボイラ水が逆流するのを検知すると、逆流検知信号をボイラ制御回路11へと出力するように構成されている。
【0022】
2つのホールIC41,41は、図5に示すように、羽根車33の外周部分に対向する位置において、樹脂製のホルダ37に保持され、同一円周上に45度間隔で設置されている。羽根車33は、プラスチックと磁性粉を混合して形成された4つの羽根を有し、この4つの羽根は軸周りに90度間隔で設置されると共に、各羽根は交互にS極又はN極に磁化されている。
【0023】
よって、羽根車33が回転すると、ホールIC41,41近傍の磁界が変化し、ホールIC41,41から磁界の変化を示すデジタル信号が出力される。2つのホールIC41,41は、配線46によって流量計制御回路45に接続されている。流量計制御回路45は、2つのホールIC41,41からの出力信号に基づいて、羽根車33の回転方向及び回転速度を算出するように演算処理を行う。この回転方向から流量計30内の流路を流れる流体の方向を検知し、回転速度から流量を検知することができる。
【0024】
そして、流量計制御回路45は、ホールIC41,41の出力から下流側から上流側へとボイラ水が逆流するのを検知すると、逆流検知信号をボイラ制御回路11へと出力するように構成されている。
【0025】
ここで、ホールIC41,41の設置位置は、45度間隔に限定されるものでなく、同様の波形出力が得られる135度間隔でも良いし、流体が順方向と逆方向に流れた場合とで出力波形が異なり、流体の流れる方向を検知できるのであれば、任意の位置に設置することができる。
【0026】
以上、本実施形態に係るボイラの構成ついて説明したが、続いて、本実施形態における逆流検知の処理の流れについて図面を参照しながら説明する。本実施形態では、サーミスタ40を用いた温度測定による逆流検知と、ホールIC41,41を用いた羽根車の回転検出による逆流検知とを並行して行っている。まず、サーミスタ40による温度測定により逆流を検知する場合について説明する。図6は、本実施形態に係るサーミスタを用いた温度による逆流検知の処理の流れを示すフローチャートである。
【0027】
まず、S11において、給水ポンプ22がOFFとなると、逆流の監視が始まり、S12〜S15において、流量制御回路45が逆流判定の条件を満たすか否かを監視する。具体的には、S12では、まず、T1<90℃であるか否かを判定し、T1が90℃未満である場合には、S13へ進んで逆流の監視が行われる。ここで、T1[℃]は、S11の給水ポンプ22の停止から所定の時間(例えば、6秒)後のサーミスタ40による測定温度であり、流量計制御回路45内のメモリに記憶されている。
【0028】
一方、S12において、T1<90℃でない場合には、S14に進み、T1<100℃であるか否かを判定し、T1が100℃未満(すなわち、90℃≦T1<100℃)である場合には、S15に進んで逆流の監視が行われる。S14でT1≧100℃の場合には、S12に戻り、T1が100℃以上の間は温度測定による逆流検知は行わない。
【0029】
続いて、S13における逆流監視では、流量計制御回路45が、T2≧T1+10℃又は(T2-T1)/Δt≧5℃/secであるか否かを監視する。ここで、T2[℃]は、現在のサーミスタ40による測定温度であり、Δt[sec]は、サーミスタ40による温度測定のサンプリング周期である。T2≧T1+10℃を満たせば、ボイラ本体10内の高温のボイラ水がサーミスタ40の位置まで逆流してきたために測定温度が10℃以上上昇したと判断できる。
【0030】
また、(T2-T1)/Δt≧5℃/secを満たせば、高温のボイラ水がサーミスタ40の位置まで逆流してきたために、測定温度が1秒間に5℃以上の温度上昇率で急激に上昇したと判断できる。よって、S13では、T2≧T1+10℃又は(T2-T1)/Δt≧5℃/secであるか否かを監視することで、給水ラインにおけるボイラ水の逆流を検知することができる。
【0031】
S13において、T2≧T1+10℃又は(T2-T1)/Δt≧5℃/secと判定された場合には、S16に進み、給水ポンプ22を所定の時間t1(例えば、3秒間)駆動させて、逆流の回避動作を行う。具体的には、S16において、流量計制御回路45が逆流検知信号をボイラ制御回路11へと出力し、逆流検知信号を受信したボイラ制御回路11が、給水ポンプ22をt1秒間駆動させる。
【0032】
ボイラ水が逆流するのは、逆止弁23内に異物が詰まってしまうことで弁が閉まらなくなっていることが原因の場合が多い。よってS16では、逆止弁23に噛み込んでいる異物を除去すべく、給水ポンプ22をt1秒間駆動させて逆止弁23内に順方向に給水を流している。
【0033】
S16の回避動作後、S18へと進み、逆流が回避されているか否かをチェックする。すなわち、S18において、T4≧T3+10℃又は(T4-T3)/Δt≧5℃/secであるか否かを再度監視する。ここで、T3[℃]は、S16でt1秒間作動した給水ポンプ22が停止してから所定の時間(例えば、6秒)後のサーミスタ40による測定温度であり、流量計制御回路45内のメモリに記憶されている。また、T4[℃]は、現在のサーミスタ40による測定温度である。
【0034】
S18において、T4≧T3+10℃又は(T4-T3)/Δt≧5℃/secであると判断された場合には、逆流状態が回避されていないことを意味するため、S22へと進み、ボイラ制御回路11が、給水ポンプ22を低回転にて駆動させて逆流を回避する動作を行わせると共に、逆流発生のアラームを鳴らす。
【0035】
具体的には、S18において、流量計制御回路45が、T4≧T3+10℃又は(T4-T3)/Δt≧5℃/secであると検知したときに、2回目の逆流検知信号をボイラ制御回路11へと出力し、2回目の逆流検知信号を受診したボイラ制御回路11が、給水ポンプ22を低回転にて継続して駆動させる低回転運転を行うと共に、アラームを鳴らすように制御する。S22へと進んだ後は、給水ポンプ22を除いてボイラ1は停止し、ボイラの保守点検員等によって修理が行われることになる。
【0036】
S18による逆流が回避されたか否かの監視は、所定の時間t2(例えば、20秒間)行われ(S19)、t2秒間「T4≧T3+10℃又は(T4-T3)/Δt≧5℃/sec」の条件を満たさなければ、逆流が回避されたとして、S12へと進み、次に給水ポンプ22がONされるまで、S12〜S15の監視を続ける。
【0037】
一方、S14からS15に進んだ場合には、S15における逆流監視により、流量計制御回路45が、T2>100℃又は(T2-T1)/Δt≧2.5℃/secであるか否かを監視する。S15に進んだのであれば、90℃≦T1<100℃であるから、T2>100℃を満たせば、ボイラ本体10内の高温のボイラ水がサーミスタ40の位置まで逆流してきたために測定温度が100℃を超える温度に上昇したと判断できる。
【0038】
また、(T2-T1)/Δt≧2.5℃/secを満たせば、高温のボイラ水がサーミスタ40の位置まで逆流してきたために、測定温度が1秒間に2.5℃以上の上昇率で急激に上昇したと判断できる。なお、逆流と判定する温度の上昇率をS13では5℃/secであるのに対して、S15では2.5℃/secとしたのは、90〜100℃の給水であれば、例えば100℃以上のボイラ水が逆流してきたとしても温度上昇率が小さくなってしまうが、このような場合でも確実に逆流を検知するためである。
【0039】
このように、S15では、T2>100℃又は(T2-T1)/Δt≧2.5℃/secであるか否かを監視することで、給水ラインにおける逆流を検知することができる。S15において上記条件を満たすと判定された場合には、S17に進み、上述したS16と同様に逆流回避動作が行われる。
【0040】
S17の回避動作後は、S20へと進み、逆流が回避されているか否かがチェック、すなわち、T4>100℃又は(T4-T3)/Δt≧2.5℃/secであるか否かが再度監視される。S20において、この条件を満たすと判断された場合には、逆流状態が回避されていないことを意味するため、上述したS22へと進み、給水ポンプ22を低回転運転させたうえでアラームが鳴らされる。
【0041】
S20による逆流が回避されたか否かの監視は、S18と同様にt2秒間行われ(S21)、t2秒間経過して逆流が回避されたと判定されれば、S12へと戻り、上述したS12〜S15の監視が続行される。
【0042】
以上、温度測定による逆流検知の処理の流れについて説明したが、本実施形態では、サーミスタ40によるT2、T4の温度測定のサンプリング周期は、100msecに設定されている。そして、S13、S15、S18及びS20における判定は、100msec毎に測定される測定温度T2,T4が5回連続して各条件を満たした場合にのみ各ステップにおける条件を満たすものとして扱っている。
【0043】
このように、各判定において連続した複数回の条件合致を要求することで、突発的な異常値による誤判定を防止できる。もちろん、サンプリング周期と、各条件を満たすと判定するための回数は、それぞれ適宜所定の値に設定できる。
【0044】
本実施形態に係る温度測定による逆流検知によれば、T2≧T1+10℃やT2>100℃といった温度上昇値条件と、(T2-T1)/Δt≧5℃/secや(T2-T1)/Δt≧2.5℃/secといった温度上昇率条件とのOR条件により逆流検知を行うことで、確実に逆流の検知を行うことができる。
【0045】
また、本逆流検知によれば、上述した従来の温度測定による逆流検知と比較して、給水の温度によらず、広い温度領域で検知時間を短縮することができる。例えば、サンプリング周期が100msecであって、連続して5回温度上昇率の条件を満たすか否かを判定するのであれば、最短0.6秒で逆流検知を行うことができる。
【0046】
また、本逆流検知では、温度上昇率により逆流を検知することで、従来の温度測定による逆流検知では時間がかかり対応することが困難であった大流量の逆流発生に対しても、短時間で検知して対応することができる。
【0047】
また、従来の逆流判定方法では、給水温度が高温になるドレン回収ボイラでボイラ水の逆流が発生したとしても、温度の上昇幅が小さいために逆流検知が困難であったが、本実施形態では、T1が90℃以上の場合に90℃未満の場合と判定条件を変えることで、給水温度が90℃以上となるようなボイラであっても確実に逆流検知を行うことができる。なお、S14に示すように、本実施形態においては、給水温度が100℃以上になる場合(クローズド型のドレン回収ボイラ)は、温度測定による逆流検知の対象外としている。
【0048】
続いて、ホールIC41,41による羽根車33の回転検出により逆流を検知する場合について説明する。図7は、本実施形態に係るホールICを用いた羽根車の回転検出による逆流検知の処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
まず、S31において、給水ポンプ22がOFFとなると、逆流の監視が始まり、S32において、流量計制御回路45が、ホールIC41,41の出力に基づいて、所定の時間t3(例えば、6秒)内に羽根車33の逆回転時のパルスを所定の数x(例えば3つ)検出するか否かを監視する。ボイラ水が逆流した場合には、ボイラ水が流量計30内を下流側から上流側へと流れることになるので、羽根車33の逆回転を監視すれば、逆流を検知することができる。
【0050】
なお、本実施形態に係る羽根車33は交互にS極又はN極に磁化された4つの羽根を有しているので、流量制御回路45は、羽根車33が1回転する毎に2つのパルスを受信する。よって、流量制御回路45が逆回転時のパルスを3つ検出することは、羽根車33が一回転半逆回転したことを示す。
【0051】
S32において、t3秒以内にxパルスを検出した場合には、S33に進み、給水ポンプ22を所定の時間t1(例えば、3秒間)駆動させて、上述した逆流の回避動作を行う。具体的には、流量計制御回路45は、S33において、逆流検知信号をボイラ制御回路11へ出力し、逆流検知信号を受信したボイラ制御回路11が、給水ポンプ22を制御してt1秒間駆動させる。
【0052】
S33の回避動作後、S34へと進み、逆流が回避されているか否かをチェックする。すなわち、S34において、再度、t3秒以内に羽根車33の逆回転時のパルスをx検出するか否かを監視する。S34において、逆回転時のパルスをx検出したと判定された場合には、逆流状態が回避されていないことを意味するため、S36へと進み、ボイラ制御回路11が、給水ポンプ22を低回転にて駆動させて逆流を回避する動作を行わせると共に、逆流発生のアラームを鳴らす。S36へと進んだ後は、ボイラの保守点検員等によって修理が行われることになる。
【0053】
S34による逆流が回避されたか否かの監視は、所定の時間t2(例えば、20秒間)行われ(S35)、t2秒間「t3秒以内に羽根車33の逆回転時のパルスをx検出する」の条件を満たさなければ、逆流が回避されたとして、S32へと進み、次に給水ポンプ22がONされるまで、S32の監視を続ける。
【0054】
以上、羽根車の回転検出による逆流検知の処理の流れについて説明したが、本実施形態では、xパルス検出した時点で逆流を検知することができるので、短時間での逆流検知が可能である。特に、大流量の逆流が発生した場合、逆流検知が遅れると、高温のボイラ水がかなり上流側まで逆流してしまい、機器の破損範囲が拡大してしまうおそれがあるが、本実施形態のように短時間で逆流検知できれば、逆流量を最小限に抑えることができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、所定時間(t3秒)以内にxパルス検出することを逆流検知の条件とすること、すなわち時間を制限することで、ホールIC41,41による出力波形が不安定となる小流量時の逆流の誤検知を防止し、正確な逆流検知が可能となる。もちろん、所定時間t3の値や、逆流と判定するパルスの数x(上記では3パルス)は適宜変更可能である。
【0056】
以上、詳細に説明した図6及び図7に示す処理は、制御手段としてのボイラ制御回路11及び流量計制御回路45内のメモリに格納されているプログラムを各制御回路11,45内の演算回路が実行することで実現される。
【0057】
なお、本実施形態においては、上述したサーミスタ40による逆流検知とホールIC41,41による逆流検知とを並行して行っており、給水ポンプOFF(S11、S31)後の逆流監視状態において、先にS12〜S15又はS32によって逆流を検知した方の処理に基づいて、引き続き後続の回避処理を行う。
【0058】
本実施形態によれば、温度測定による逆流検知と、羽根車の逆回転検出による逆流検知を並行して行っており、様々な逆流のケースに対応して、素早く確実に逆流を検知することができる。例えば、温度測定による逆流検知だけでは、流れの方向を検知できないので、順方向(正流方向)に給水が流れた場合に誤検知するのを防ぐために、給水ポンプがOFFした後に所定期間を置いて温度測定をする必要があり、逆流検知の開始に時間がかかってしまう。これに対して、羽根車の逆回転検出によれば、逆流により羽根車が逆回転するのを検知するだけで、逆流を検知できるので、給水ポンプのOFF後も即座に逆流監視を開始することができる。
【0059】
また、羽根車の逆回転検出だけでは、羽根車が逆回転しないほど逆流流量が微量である場合に、逆流を検知することができないが、温度による逆流検知であれば、このような場合にも検知が可能である。
【0060】
さらに、一般的なボイラに設置されている流量計には、もともと給水ラインを流れる給水の流量を測定するために、磁化された羽根車やホールICが設置されている。本実施形態では、このようにもともと設置されている流量計の羽根車やホールICを、逆流検知に流用しており、低コストで羽根車を利用した逆流検知を実現できる。
【0061】
また、給水ラインには、給水温度測定のためのサーミスタがもともと設置されており、この給水温度測定のためのサーミスタを、本実施形態に係る逆流検知用のセンサとして兼用することができるので、低コストで温度による逆流検知を実現できる。
【0062】
また、上記実施形態では、温度測定による逆流検知において、温度の上昇率に基づいて判定しており、温度測定による逆流検知の場合でも従来と比較して短時間での検知が可能となっている。さらに、羽根車の逆回転検出による逆流検知において、所定時間内に羽根車の逆回転信号を所定数検出することを逆流検知の条件としており、短時間で確実な逆流検知を実現している。
【0063】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、流量計の流路内の温度を測定する温度センサとしてサーミスタを用いたが、熱電対その他の温度センサを使用できることは言うまでもない。また、磁化された羽根車の回転を検出する磁気センサとしても、ホールICだけでなく、MRセンサ、その他の磁気センサを用いても良い。
【0064】
また、ボイラ制御手段としてのボイラ制御回路11と、流量計制御手段としての流量計制御回路45とを別々の制御回路としたが、単一の制御手段(制御回路)で両制御回路の機能を実現しても良い。
【0065】
また、本実施形態では、給水ラインにおける逆流を検知するための各種センサを流量計内に設置したが、給水ポンプと逆止弁との間であれば、給水ライン上のその他の場所に適宜設置しても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 ボイラ
10 ボイラ本体
11 ボイラ制御回路
15 給水タンク
20 配管
22 給水ポンプ
23 逆止弁
30 流量計
31 ハウジング
32 Oリング
33 羽根車
35 軸受け
40 サーミスタ
41 ホールIC
45 流量計制御回路
46 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ本体と、給水タンクと前記ボイラ本体とを接続する給水ラインと、前記給水ラインに設置された給水ポンプと、前記給水ポンプの下流側において前記給水ラインに設置された逆止弁と、を備えるボイラにおいて、
前記給水ラインの前記給水ポンプと前記逆止弁との間に設置された羽根車と、
前記羽根車の回転方向を検出する回転検出センサと、
前記給水ポンプの停止後、前記回転検出センサの出力に基づいて、所定の時間内に前記羽根車の逆回転信号を所定の数検出したときに、前記ボイラ本体から前記給水ラインにボイラ水が逆流したと判定する制御手段と、を備えることを特徴とするボイラ。
【請求項2】
ボイラ本体と、給水タンクと前記ボイラ本体とを接続する給水ラインと、前記給水ラインに設置された給水ポンプと、前記給水ポンプの下流側において前記給水ラインに設置された逆止弁と、を備えるボイラにおいて、
前記給水ラインの前記給水ポンプと前記逆止弁との間に設置された温度センサと、
前記給水ポンプの停止後、前記温度センサの出力に基づいて、単位時間当たりの温度上昇率が所定値以上であるときに、前記ボイラ本体から前記給水ラインにボイラ水が逆流したと判定する制御手段と、を備えることを特徴とするボイラ。
【請求項3】
前記給水ラインの前記給水ポンプと前記逆止弁との間に設置された温度センサをさらに備え、
前記制御手段は、さらに、前記給水ポンプの停止後、前記温度センサの出力に基づいて、単位時間当たりの温度上昇率が所定値以上であるときに、前記ボイラ本体から前記給水ラインにボイラ水が逆流したと判定することを特徴とする請求項1記載のボイラ。
【請求項4】
前記制御手段は、さらに、前記給水ポンプの停止後、前記温度センサの出力に基づいて、測定温度が前記給水ポンプの停止から所定の時間後の測定温度よりも所定値以上上昇したときに、ボイラ本体から前記給水ラインに前記ボイラ水が逆流したと判定することを特徴とする請求項2又は3記載のボイラ。
【請求項5】
前記給水ラインの前記給水ポンプと前記逆止弁との間に設置された温度センサをさらに備え、
前記制御手段は、さらに、前記給水ポンプの停止後、前記温度センサの出力に基づいて、測定温度が前記給水ポンプの停止から所定の時間後の測定温度よりも所定値以上上昇したときに、ボイラ本体から前記給水ラインに前記ボイラ水が逆流したと判定することを特徴とする請求項1記載のボイラ。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ボイラ水の逆流を検知すると、前記給水ポンプを駆動させて逆流を回避するよう制御することを特徴とする請求項1乃至5何れか1項に記載のボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−7748(P2012−7748A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141193(P2010−141193)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】