説明

ボトム

【課題】
ボトムプラウ作業機において、シェアポイントの摩耗折損性は圃場が大きくなるにつれ、重要な解決すべき問題であった。また狭隘な日本の圃場で使用されるボトムプラウは、コールタやジョインタを集約して軽量・コンパクトに製作することが望まれている。

【解決手段】
本願はボトムプラウのシェアポイント部にくさび形厚肉突起部を設け、牽引抵抗を増加させることなく、耐磨耗、耐折損性を向上させた。と同時に厚肉突起部により溶接性と溶接剥離防止性を向上させ、シェアナイフ固定部を溶接できる構造にした。これにより残渣物に応じて簡便にシェアナイフや前犂を取り付けられるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトムプラウのシェアの改良に関するものであり、特にシェア先端に厚肉の突起部をもうけたボトムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圃場の1区画の面積が広がるにつれ、ボトムプラウのシェアの耐磨耗性、耐折損性の向上が望まれている。自然の土を相手にする以上、シェア先端部(シェアポイント)の摩耗と折損はまぬがれない。そこでできるだけプラウイングの抵抗にならずかつ摩耗・折損しにくいシェアの提供が必要とされている。そこで特許文献1のような起立片を取り付けたシェアが開発された。しかしその後圃場が大規模化すると共にトラクタも大馬力化したために、従来の特許文献1のようなシェアでは簡単に摩耗・折損してしまうことが多くなった。
更に土質、作物、残渣物、緑肥などに応じ多用なシェア形状が必要とされるようになり、現地にてシェア部の改造も多く行われることが多発するようになった。
【0003】
しかし、シェア部は耐磨耗性を向上するために硬く焼入れされていることが多く、溶接性が良くない上に無理に溶接すると割れてしまうことが多く好ましくなかった。又、溶接性を向上させるには余熱をして母材を充分暖めると良い結果になるが、シェアの硬度が下がり耐磨耗性を悪化させるという結果になった。
【0004】
ボトムは土を耕起、反転、放擲、破砕する機能を有する。地表面に浮いた残渣物がある圃場ではボトム真上にカバーボードを取り付けて、浮き上がる残渣物を下向きに放擲させることが必要である。しかし地上部に根の張っている雑草、作物の切り株もしくは背の高い緑肥だったりする場合はジョインタ(前犂)をボトム前方に取り付けて、更に強制的に前述のボトム機能の前作用として反転するようにしなければならない。また、残渣物が稲藁のような長いものや根の張ったものの場合は、コールタを取り付けてあらかじめ切断した上でボトムによって反転させる必要がある。
【0005】
しかし上記のようなパーツを取り付けると、図9上図のように全長が長くなり、小区画の圃場では旋回性を悪くしてしまう。又重心が後方になるため、小型軽量のトラクタでは持ち上がらなくなるという欠点があった。そこで特許文献2にあるように、シェア先端部に起立片を設け、コールタの役割をさせ、起立片上部に前犂を取り付けカバーボードやジョインタの役割をさせることが提案されている。図10下段のようにこれによって効果を損ねる事無く全長を短くすることができた。
【0006】
しかし、これらの装備は前記したように全ての圃場で必要なわけでなく、残渣物などの条件により必要とされる。装備か少なければその分軽くなるし牽引抵抗も少なくて済むので、取り付け取外しができかつ、軽量コンパクトなボトムプラウの開発が望まれていた。
【特許文献1】特公昭58-49202号公報
【特許文献2】特願2004-229190
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圃場の1区画の面積が広がるにつれ、できるだけ牽引抵抗を低減し、反転性能を損なうことなくシェアの先端部の耐磨耗・耐折損性を向上させなくてはならない。なぜならば現場で摩耗したシェアを交換することは容易なことではなく、また摩耗折損したまま使用すれば土壌への刺さりこみが悪くなり既定深さの耕起反転ができなくなる上に、牽引抵抗が大幅に増加する。
【0008】
条件の良い圃場であればボトムだけで耕起できる。しかし段落0004で述べたように残渣物によってはカバーボード、ジョインタ、コールタを追加せねばならない。従来のように付加していくだけでは重くなり牽引抵抗が増加するので高馬力のトラクタが必要とされ、更にプラウの全長が伸び旋回性能が損なわれる。
【0009】
特許文献1にあるような薄い従来のシェアでは改造の為の溶接をすると熱影響で簡単に変形してしまう。熱影響を少なくする為にタップ溶接(断続溶接)で締結しても溶接部が摩耗して直ぐ剥がれてしまう。また、熱影響を軽減する為に肉厚の母材を使用してシェアを製作すると土中への刺さり込みがわるくなり、牽引抵抗も増加し使いにくいものになる。
【0010】
特許文献2にあるような方法も効果的ではあるが、残渣物がなくシェアナイフ(起立片)を必要としない圃場もある。したがって必要に応じ簡便に着脱可能にすることができ、かつ耐磨耗・耐折損性にすぐれたボトムの開発が望まれている。

【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はフロッグにシェア、シェアポイント、モールドボード、ランドサイドなどを取り付けて構成したプラウ作業機用のボトムにおいて前記シェアポイント上面の前記ランドサイド側の側部に該シェアポイントと一体成形されたくさび形厚肉突起部を備え、前記くさび形厚肉突起部には、先端部が鋭突形状で、背面部が前記シェアポイントに対して補助部材取り付け背面部が形成されていることを特徴とするボトムである。
【0012】
また本発明は前記くさび形厚肉突起部の上部はランドサイド側からモールドボード側に向かって傾斜しており、片刃に形成されていることを特徴とするボトムである。
【0013】
また本発明はフロッグにシェア、シェアポイント、モールドボード、ランドサイドなどを取り付けて構成したプラウ作業機用のボトムにおいて前記シェアポイント上面に、厚肉の断面三角形状の突起部を備え、突起部の後部にはシェアナイフ固定部を備えていることを特徴とするボトムである。
【0014】
また本発明は前記シェアナイフ固定部にシェアナイフを着脱可能に取り付け、該シェアナイフの上部には上下方向に調整可能に前犂が取り付けられるようになっていることを特徴とするボトムである。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかなように本件シェアの先端部には肉厚の三角形状に突出した起立片を形成し、耐磨耗と耐折損に強いシェアポイントとした。また、起立片の上部はナイフのようにランドサイド側が刃面になるようにランドサイド側からモールドボード側に傾斜して、片刃状態にし、更に牽引抵抗を軽減する為に、中央部はモールドボード状に土が流れる方向にえぐれており、先端部はくさび状に突出している形状とした。
【0016】
これにより耐磨耗。耐折損性を向上したまま土の流れをスムースにモールドボードに送り込めるようにした。又、起立片後部は肉厚の状態にし、シェアナイフやシェアナイフ固定部を溶接しやすいようにしている。この形状により牽引抵抗や土の反転性を損なうことなく、必要があれば現場に応じて改良できるようになった。

【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態について説明する。図1、図2でトラクタ1によって牽引されるボトムプラウ100について説明する。ボトムプラウ100はトラクタの3点リンクによって牽引される。3点リンクは1本のトップリンク9と2本のロアリンク8によって構成されている。作業時は図2のような状態であるが、枕地旋回や道路走行時はロアリンク8の上昇力によってボトムプラウ100がリフトアップされる。
【0018】
ボトムプラウ100の骨組みは、前方にあるマスト10とフレーム11で構成され、リバーシブルシリンダ12によってフレーム11が180度回転するようになっている。フレーム11にはビーム13が取り付けられ、ビーム13先端にはボトム20が取り付けられており、リバーシブルシリンダ12によって図2の上下のボトムを入れ替え、往路と復路の土の反転方向を同じくし畝をそろえて往復作業できるようにしている。
【0019】
フレーム11には他に地表の残渣物が長ものの場合に切断する役割のコールタ15、そしてボトム20の地中深さを設定するゲージホイル14、更には図9上図にあるように背の高い緑肥などをボトム20によって耕起反転する前に予め伏せておく役目のジョインタ16などが取り付けられている。
【0020】
ボトム20は、図5のように土を水平に切断するシェア22、最初に土に当たるシェアポイント24、土を反転放擲するモールドボード21、モールドボード21の反転放擲の反力を受け止め直進性を保つランドサイド26、またモールドボード21の、特に摩耗の激しい部分の互換性を持たせ交換部品としたシン23、ボトム20全体をビーム13に取り付けるフロッグ25などからなっている。また必要に応じて図9上図にあるように残渣物を効果的にすき込みさせるカバーボード17が取り付けられる。
【実施例1】
【0021】
以上のように作られたボトムプラウ100において、本願は図3、図4のようにシェアポイント24の先端部に肉厚の三角形状に突出した起立片30を形成した。図3と図4のシェアポイント24はリバーシブルプラウの為の右反転用と左反転用のためシンメトリー化したものである。シェアポイント24の先端部に肉厚の三角形状に突出した起立片30は、図10の従来品の起立片50よりは、磨耗性も折損性も良好になっていることは明らかである。起立片50は厚み8〜12mm程度の板材がシェアに直接溶接されて作られている。起立片30は厚み15〜25mmのものが一体成形で作られている。
【0022】
起立片30の先端部30cはくさび形状をしており土壌内に刺さりこみやすい状態になっている。中央部30aの上部はナイフのようにランドサイド側が刃面になるように片刃状態にし、中央部30a下部はモールドボード21方向に凹状態にえぐれた形になっており、牽引抵抗少なくモールドボード21に土が流れるよう配慮されている。また起立片30の背面30bは平面になっており図6のようにシェアナイフ固定部31を溶接できるようにしている。
【0023】
このような形状になっているためシェアナイフ固定部31は強固に起立片30に溶接できる。起立片30は肉厚になっているので熱影響により変形しにくく、しかも起立片30の背面30bに溶接するので起立片の先端が熱影響で軟らかくなって耐磨耗性や耐折損性を損なうことがない。
【0024】
シェアナイフ固定部31は起立片30にしっかり締結されるので他のシェアポイント溶接部24aにはタップ溶接(断続溶接)されてもじゅうぶんな強度があるのでシェアポイント24の歪みが発生しにくい。更にシェアナイフ固定部31の前方に起立片30があり、土や石は最初に起立片30に衝突することになるので、シェアナイフ固定部31が摩耗折損並びに溶接部が剥離することを防止できる。
【0025】
本発明のシェアポイント24であれば牽引抵抗は低いままでシェアポイントの摩耗折損性を向上することができる。更に残渣物があり、コールタやジョインタを必要としても簡単に同様の機能を持ったシェアナイフ33や前犂34を取り付ける為のシェアナイフ固定部31を溶接できる。
【0026】
なおシェアナイフ固定部31を溶接した後に、シェアナイフ33を取外して使用する場合は、カバー32をシェアナイフ固定部31に取り付けて、土が入るのを防止することができるようになっている。
【0027】
図7のようにシェアナイフ33は、シェアナイフ固定部31に差し込まれボルトによって固定される。これによって残渣物を切断すると共に地表面を整った切断面にすることができる。従来は図9上図にあるようにコールタ15を取り付ける為ボトムプラウ全体の全長が長くなり、枕地旋回性能が損なわれたが本願では良好になった。
また。図9下図にあるように起立片一体式シェアナイフ51では圃場によって必要ない場合でも簡単に取外すことができなかったが本願ではこの点でも良好になった。
【0028】
図8のようにシェアナイフ33には前犂34がボルトで取り付けられている。図9上図にあるように従来のジョインタ16はシェアポイント24とに間隔があり、耕起貫入時に残渣物があるとこの間隔に残渣物が挟まり作業できなくなることがあったが、本願では図8のとおりシェアポイント24とシェアナイフ33と前犂34が山刀(なた)状に連続された一体式なので、残渣物が間に挟まる事無く作業続行することができる。
【0029】
また、従来ジョインタ16はフレーム11に取り付ける為、取り付け部材16a残渣物が絡みつき塊となって作業続行不能にさせる事があった。本願では山刀状に連続された一体式なので残渣物の絡むことがなく、高速作業を可能にしボトム本体の耕深範囲を広げることができるようになった。
【0030】
シェアナイフ33には前犂34がボルト33aによって取り付けられる。また、前犂34は数個のボルト穴もしくは上下方向に長穴になったボルト穴があけられており、前犂34はシェアナイフ33に対して上下方向に調整できるようになっている。
【0031】
上下方向の調整ができることにより、残渣物の高さにあわせて前犂34の高さ位置を調整することができる。
【0032】
また、前犂34の表面には疎水性能の高い樹脂版34aがボルトによって取り付けられており、日本の圃場に多い火山灰性の土壌が付着するのを防止している。むろんこの樹脂版は耐磨耗性の高い鋼板と交換することができる。
【0033】
この様な構造により、作業時における牽引抵抗の合力がトラクタから近い位置になり、牽引抵抗を軽減し、軽量シンプル化を図ることができた。特に多連型のボトムプラウの場合は、作業機長さの短縮が可能になり、この作業機をリフトアップした場合には、全体重心がトラクタに近い位置にあることから、転倒などの恐れを払拭し、安定性の向上を図ることができる。
【0034】
また、従来図のディスクコールタ15やジョインタ16の左右の位置合せの必要はなくなり、作業高さの調節のみになり、容易に調整できるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
シェアポイントの耐磨耗性、耐折損性を向上させ、溶接性を向上させたことによって、コールタやジョインタを無くすことができた。本方法はボトムプラウだけでなく様々な土中機械に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】請求項1の発明を備えたボトムプラウをトラクタに取り付けた鳥瞰図である。
【図2】請求項1の発明を備えたボトムプラウをトラクタに取り付けた側面図である
【図3】請求項1の発明を備えた右反転用のシェアポイントの図である。
【図4】請求項1の発明を備えた左反転用のシェアポイントの図である。
【図5】請求項1の発明を備えたシェアポイントを取り付けたボトムの図である。
【図6】請求項2の発明を備えたシェアポイントを取り付けたボトムの図である。
【図7】請求項3の発明を備えたシェアポイントを取り付けたボトムの図である。
【図8】請求項4の発明を備えたシェアポイントを取り付けたボトムの図である。
【図9】従来のコールタ、ジョインタを備えたボトムプラウと、シェア一体式のシェアナイフを持つボトムプラウの側面図による長さ比較の図である。
【図10】従来式のシェア部に一体式の起立片を取り付けた構造の図である。
【符号の説明】
【0037】
1 トラクタ
8 ロアリンク
9 トップリンク
10 マスト
11 フレーム
12 リバーシブルシリンダ
13 ビーム
14 ゲージホイル
15 コールタ
16 ジョインタ
16a 取り付け部材
17 カバーボード
20 ボトム
21 モールドボード
22 シェア
23 シン
24 シェアポイント
24a シェアポイント溶接部
25 フロッグ
26 ランドサイド
30 起立片
30a 起立片の中央部
30b 起立片の背面
30c 起立片の先端部
31 シェアナイフ固定部
32 カバー
33 シェアナイフ
33a ボルト
34 前犂
34a 前犂樹脂版
50 従来の起立片
51 起立片一体式シェアナイフ
100 ボトムプラウ





【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロッグにシェア、シェアポイント、モールドボード、ランドサイドなどを取り付けて構成したプラウ作業機用のボトムにおいて
前記シェアポイント上面の前記ランドサイド側の側部に該シェアポイントと一体成形されたくさび形厚肉突起部を備え、
前記くさび形厚肉突起部には、先端部が鋭突形状で、背面部が前記シェアポイントに対して補助部材取り付け背面部が形成されていること
を特徴とするボトム。
【請求項2】
前記くさび形厚肉突起部の上部はランドサイド側に向いて片刃に形成されていることを特徴とする請求項1記載のボトム。
【請求項3】
フロッグにシェア、シェアポイント、モールドボード、ランドサイドなどを取り付けて構成したプラウ作業機用のボトムにおいて
前記シェアポイント上面に、厚肉の断面三角形状の突起部を備え、突起部の後部にはシェアナイフ固定部を備えていること
を特徴とするボトム。
【請求項4】
前記シェアナイフ固定部にシェアナイフを着脱可能に取り付け、該シェアナイフの上部には上下方向に調整可能に前犂が取り付けられるようになっていること
を特徴とする請求項3記載のボトム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−296227(P2006−296227A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119210(P2005−119210)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(391057937)スガノ農機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】