説明

ボビンの残糸除去装置

【課題】フランジB1 、B1 付きのボビンB上の残糸Tを除去する。
【解決手段】ボビンBをセットする左右のセットブロック11、11と、ストッパ12、プッシャ13と、シャフト14と、可動刃15とを設け、プッシャ13は、ボビンBをストッパ12に押し付けて軸方向に位置決めし、シャフト14は、ボビンBを支承し、可動刃15を介して残糸Tを切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、両端にフランジを有するボビン上の残糸を安全に確実に除去することができるボビンの残糸除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
筒状の紙管上の残糸を機械的に効率よく除去し、紙管と残糸との双方を有効に再利用する技術が実用されている(特許文献1)。
【0003】
すなわち、紙管の外径に適合する開口部を有するブロック体と、残糸付きの紙管を片支持する可動ホルダと、可動ホルダ上の紙管の表面に沿って軸方向に往復移動するカッタとを設ける。可動ホルダを介して残糸付きの紙管をブロック体の開口部に押し込んで挿通させると、紙管上の残糸をしごくようにして紙管から抜き取ることができ、カッタを介してブロック体の前面の残糸を連続的に切断することにより、紙管上の残糸の張力が過大になったり、それによって紙管が変形したりするおそれがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−63921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、筒状の紙管を処理対象とすることについては何の問題もないが、両端にフランジを有するボビンを処理対象とすることが全くできないという問題があった。フランジ付きのボビンをブロック体の開口部に押し込んでも、ボビン上の残糸を除去することができないからである。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、フランジ付きのボビン上の残糸を適切に除去することができるボビンの残糸除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、ボビンをセットする左右一対のセットブロックと、セットブロックを挟んで対向するストッパ、プッシャと、プッシャの後方からセットブロック上のボビンの軸孔に挿入するシャフトと、ボビン上の残糸を切断する可動刃とを備えてなり、プッシャは、セットブロック上のボビンをストッパに押し付けて軸方向に位置決めし、シャフトは、ボビンの軸孔を貫通すると、プッシャ、ストッパの双方を摺動自在に貫通してボビンを支承することをその要旨とする。
【0008】
なお、各セットブロックの延長方向には、軸方向と直角方向にボビンを位置決めする補助ストッパを配設することができ、ストッパ、プッシャの上端には、それぞれ可動刃の下降限を規定するストッパボルトを設けることができる。
【発明の効果】
【0009】
かかる発明の構成によるときは、残糸付きのボビンは、両端のフランジを左右一対のセットブロック上に置いてセットすることができる。そこで、プッシャの後方からシャフトをプッシャに摺動自在に貫通させてボビンの軸孔に挿通させ、そのままストッパに摺動自在に貫通させてプッシャをストッパに向けて前進させると、ボビンは、ストッパに押し付けられて軸方向に位置決めされる。すなわち、ボビンは、シャフトを介してプッシャ、ストッパの間に支承されるから、つづいて、可動刃をボビンの軸心に向けて駆動すると、ボビン上の残糸を一挙に切断して除去することができる。ただし、可動刃の刃長(刃渡り)は、ボビンのフランジの内面間の筒部の長さに適合させるものとする。また、左右のセットブロックは、それぞれの上面をたとえばボビンの両端のフランジの外周に適合する凹円弧状、V字状などに形成することによって、ボビンの転がりを防止してボビンを安定にセットすることができる。
【0010】
なお、可動刃によってボビン上の高強度の残糸を切断するとき、ボビンは、可動刃を介して約1トンにも及ぶ押圧力を径方向に受けることがあり、このような大きな押圧力をボビンのフランジだけで支持すると、フランジ自体が座屈したり、フランジが筒部に対して斜めに傾いてクラックを生じたりしてボビンが破壊してしまうことも少なくない。しかし、この発明は、フランジの両外側のプッシャ、ストッパによってボビンを挟持しながら、ボビンの軸孔に挿通するシャフトを介してボビンを支承するため、フランジに対して過大な応力が負荷されることがなく、ボビンの破損や破壊のおそれがない。なお、このような高強度の残糸は、たとえばラケット用のガットや釣糸などに使用される線径約0.5mm〜数mm程度の高弾性のモノフィラメント糸が広く該当する。
【0011】
各セットブロックの延長方向に配設する補助ストッパは、ボビンをセットブロック上に搬入してセットする際に、フランジの外周に接することによってボビンを軸方向と直角方向に位置決めし、ボビンの搬入精度をラフにして搬入を容易にすることができる。また、可動刃は、ストッパ、プッシャの上端のストッパボルトを介して下降限を適切に規定することにより、残糸の切断時にボビンの筒部を損傷するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】全体構成正面説明図
【図2】図1のA−A線矢視相当断面図
【図3】ボビンの構成説明図
【図4】要部拡大説明図(1)
【図5】図2の要部拡大図
【図6】要部拡大説明図(2)
【図7】動作フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0014】
ボビンの残糸除去装置は、ボビンBをセットする左右一対のセットブロック11、11と、セットブロック11、11を挟んで対向するストッパ12、プッシャ13と、シャフト14と、可動刃15とをフレーム20上に組み立ててなる(図1、図2)。
【0015】
ボビンBは、筒部B2 の両端にフランジB1 、B1 を有する(図3)。ボビンBは、たとえば十分な強度の硬質プラスチック材料により一体成形されている。ボビンBは、軸心B4 上に軸孔B3 を有し、フランジB1 、B1 の間の筒部B2 上に残糸Tが多層に巻き付けられている。ただし、図3(A)、(B)は、それぞれボビンBの模式的な一部破断正面相当図、中央縦断面相当図である。
【0016】
フレーム20は、直方体の箱型の下部フレーム21と、下部フレーム21上の定盤22と、定盤22上に立設する柱23、23…と、柱23、23…を介して支持する天板24とを備えている(図1、図2)。下部フレーム21は、一体に連結する補助フレーム21bとともに、高さ調節可能な脚21a、21a…を介して床面に設置されており、定盤22は、スペーサ22a、22a…を介して下部フレーム21の上面にねじ止めされている。なお、下部フレーム21には、定盤22の手前側に突出する作業用のテーブル21cが付設されている。柱23、23…は、定盤22の四隅部に立設され、天板24は、柱23、23…の上端にねじ止めされている。
【0017】
セットブロック11、11は、定盤22の中央部の角孔22bの両側に互いに平行にねじ止めして設置されている(図4(A)、(B))。ただし、図4(A)は、図1の要部拡大図であり、図4(B)は、同図(A)の上面図である。また、図4(C)は、同図(A)のB−B線矢視断面相当図であり、図4(D)は、同図(A)の要部拡大説明図である。
【0018】
セットブロック11、11は、ボビンBの両端のフランジB1 、B1 の間隔に合わせて配置されている(図1)。また、各セットブロック11の上面は、フランジB1 の外周に適合する凹円弧状に形成されている(図2)。各セットブロック11のテーブル21cと反対側の延長方向には、セットブロック11、11上のボビンBのフランジB1 、B1 の外周にほぼ接するようにして、ボビンBを軸方向と直角方向に位置決めする補助ストッパ16、16が定盤22上に立設されている(図2、図4(A)、(B))。
【0019】
ストッパ12は、補助フレーム21bと反対側の一方のセットブロック11の外側に接するようにして、定盤22上にねじ止めされている(図1、図4(A)、(B))。ストッパ12に対向するプッシャ13は、他方のセットブロック11の外側において、スライドテーブル13a上に搭載されている。スライドテーブル13aは、スライダ13b、スライドレール13cを介して定盤22上に移動自在に設置され(図4(A)〜(C))、補助フレーム21b上の短ストロークのシリンダ13dに連結されている。そこで、プッシャ13は、シリンダ13dを伸縮させることにより、ストッパ12に向けて前後に駆動することができる。ただし、図1、図4(A)、(B)において、プッシャ13は、後退限に図示されている。
【0020】
シャフト14は、補助フレーム21b上の長ストロークのシリンダ14aを介してプッシャ13の後方に水平に配置されている(図1)。ただし、プッシャ13には、シャフト14に適合するブッシュ14b、14b付きの貫通孔が形成されている(図4(D))。プッシャ13の後面には、ブッシュ14b、14b用の補助ブラケット14cが付設されており、ブッシュ14b、14bは、前後の孔明きの押え板14b1 、14b1 、中間のスペーサリング14b2 を介してプッシャ13、補助ブラケット14cの貫通孔の前後に装着されている。また、シャフト14の先端は、先細のテーパ状に形成されている。
【0021】
ストッパ12には、プッシャ13側のブッシュ14b、14bに対応するブッシュ14d付きの貫通孔が形成されている(図4(A))。そこで、シャフト14は、シリンダ14aを伸長させることにより、ブッシュ14b、14bを介してプッシャ13を摺動自在に貫通し、さらに、ブッシュ14dを介してストッパ12を摺動自在に貫通する。また、シャフト14は、シリンダ14aを短縮させることにより、先端がプッシャ13内にまで後退する。
【0022】
可動刃15は、柱23、23…に沿って昇降する昇降テーブル25の下面に下向きに取り付けらている(図1、図2)。昇降テーブル25の四隅部には、柱23を摺動自在に貫通させるスライドガイド25a、25a…が付設されている。また、天板24上には、シリンダ25bが下向きに搭載されており、シリンダ25bのロッドは、天板24を貫通して昇降テーブル25に連結されている。
【0023】
可動刃15は、昇降テーブル25の下面にねじ止めするブラケット15aに対し、押え金15bを介して刃体15cを下向きに固定して構成されている(図5)。可動刃15は、ボビンBのフランジB1 、B1 の内面間の間隔相当の刃長を有し(図1)、シリンダ25bを伸縮して昇降テーブル25を昇降させることにより、セットブロック11、11上にセットするボビンBの軸心B4 を含む鉛直面に沿って昇降させることができる(図2)。なお、昇降テーブル25には、下向きのストッパボルト15d、15dが付設され(図1)、ストッパ12、プッシャ13の上端には、それぞれストッパボルト15dに対応するストッパボルト15eが付設されている。そこで、可動刃15の下降限は、ストッパボルト15d、15d、15e、15eによって調節可能に規定されている。
【0024】
可動刃15の下側には、断面溝形の刃カバー17が配設されている(図1、図5)。天板24の下面には、ガイド付きのシリンダ17aが装着されており、刃カバー17の一端は、板ブラケット17bを介してシリンダ17aのロッドに連結されている(図6)。そこで、刃カバー17は、シリンダ17aを短縮することにより、上昇限にある可動刃15の下側に進入して可動刃15を下からカバーすることができ(図1の実線、図5)、シリンダ17aを伸長させることにより、可動刃15の下方から補助フレーム21bの上方に退避して(図1の二点鎖線、図6(B))、可動刃15を露出させ、可動刃15の下降を許容する。ただし、図6(A)、(B)は、それぞれ図1のC1 矢視相当、図2のC2 矢視相当の各要部説明図である。
【0025】
かかるボビンの残糸除去装置の作動は、たとえば図7のフローチャートのとおりである。
【0026】
まず、ストッパボルト15d、15d、15e、15eを介して可動刃15の下降限を適切に設定する。また、シリンダ25bを短縮させて可動刃15を上昇限に上昇させるとともに、シリンダ17aを短縮させて刃カバー17を可動刃15の下に進入させる。さらに、シリンダ13d、14aの双方を短縮させてプッシャ13、シャフト14を後退させ、全体の準備動作を完了させる(図7のステップ(1)、以下、単に(1)のように記す)。
【0027】
つづいて、残糸T付きのボビンBをテーブル21c側からセットブロック11、11上に投入してセットし(2)、シリンダ14aを伸長させてシャフト14をプッシャ13に摺動自在に貫通させ、セットブロック11、11上のボビンBの軸孔B3 に軸方向に挿通させるとともに、ストッパ12に摺動自在に貫通させる(3)。これにより、セットブロック11、11上のボビンBは、シャフト14を介してプッシャ13、ストッパ12の間に支承され、ボビンBのフランジB1 、B1 は、セットブロック11、11の上面から僅かに浮上する。そこで、シリンダ13dを伸長してプッシャ13を前進させると、プッシャ13は、セットブロック11、11上のボビンBをストッパ12に押し付けて軸方向に位置決めし、ボビンBをプッシャ13、ストッパ12の間に挟持する(4)。
【0028】
その後、シリンダ17aを伸長して刃カバー17を退避させ(5)、シリンダ25bを伸長して可動刃15を下降させることにより(6)、ボビンB上の残糸Tを一挙に切断することができる。なお、このときの可動刃15の下降限は、ボビンB上の残糸Tの殆ど全部を切断し、しかもボビンBの筒部B2 を傷付けないように、ストッパボルト15d、15d、15e、15eを介して適切に設定するものとする。また、切断された残糸Tは、定盤22の角孔22bを介して下部フレーム21内の図示しない容器に回収する。
【0029】
このようにして残糸Tが切断されたら、シリンダ25bを短縮して可動刃15を上昇させ(7)、シリンダ17aを短縮して刃カバー17を可動刃15の下方に前進させて進入させる(8)。その後、シリンダ14aを短縮してシャフト14をボビンBから抜去し(9)、シリンダ13dを短縮してプッシャ13を後退させてボビンBを解放し(10)、セットブロック11、11上からボビンBをテーブル21c側に搬出すればよい(11)。
【0030】
なお、プッシャ13用のシリンダ13d、可動刃15用のシリンダ25bは、いずれもオイルシリンダとし、図示しない油圧ユニットからの加圧油によって作動させるものとする。また、シャフト14用のシリンダ14a、刃カバー17用のシリンダ17aは、いずれもエアシリンダとすることが好ましい。
【0031】
一方、ストッパ12、プッシャ13は、それぞれ少なくともボビンBの筒部B2 の外径以上の幅を有し、セットブロック11、11上のボビンBのフランジB1 、B1 より十分高く伸びているものとする(図1)。ストッパ12、プッシャ13は、フランジB1 、B1 の両外側からボビンBを軸方向に強力に押圧して挟持し、シャフト14を介してボビンBを支承することにより、可動刃15によって残糸Tを切断する際にボビンBを十分安全に保持することができる。
【0032】
以上の説明において、可動刃15は、シャフト14を介してプッシャ13、ストッパ12の間に保持されているボビンBの軸心B4 に向けて駆動し、ボビンB上の残糸Tを切断することができる限り、駆動方向を必ずしも鉛直方向に限定する必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明は、フランジB1 、B1 付きのボビンBから高弾性のモノフィラメント糸などの高強度の残糸Tを除去する用途に広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
T…残糸
B…ボビン
B1 …フランジ
B3 …軸孔
B4 …軸心
11…セットブロック
12…ストッパ
13…プッシャ
14…シャフト
15…可動刃
15d、15e…ストッパボルト
16…補助ストッパ

特許出願人 技研株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンをセットする左右一対のセットブロックと、該セットブロックを挟んで対向するストッパ、プッシャと、該プッシャの後方から前記セットブロック上のボビンの軸孔に挿入するシャフトと、ボビン上の残糸を切断する可動刃とを備えてなり、前記プッシャは、前記セットブロック上のボビンを前記ストッパに押し付けて軸方向に位置決めし、前記シャフトは、ボビンの軸孔を貫通すると、前記プッシャ、ストッパの双方を摺動自在に貫通してボビンを支承することを特徴とするボビンの残糸除去装置。
【請求項2】
前記各セットブロックの延長方向には、軸方向と直角方向にボビンを位置決めする補助ストッパを配設することを特徴とする請求項1記載のボビンの残糸除去装置。
【請求項3】
前記ストッパ、プッシャの上端には、それぞれ前記可動刃の下降限を規定するストッパボルトを設けることを特徴とする請求項1または請求項2記載のボビンの残糸除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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