説明

ボビン供給装置及び巻取システム

【課題】小さな設置面積を実現しながら、ボビンのバンチ巻きを除去した状態で搬送トレイに供給できる構成を提供する。
【解決手段】ボビン分離供給装置12は、ボビン分離部24と、バンチ除去部72と、トレイ載置部73と、を備える。ボビン分離部24は、ボビン9を個別に供給する。バンチ除去部72は、ボビン分離部24から供給されたボビン9のバンチ巻きを除去する。トレイ載置部73は、バンチ除去部72によりバンチ巻きが除去されたボビンを搬送トレイ21に載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ボビン管に糸を巻いて形成された給糸ボビンを巻取装置に対して供給するボビン供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精紡機で紡績され、給糸ボビン(以下、単に「ボビン」と呼ぶことがある)に巻き取られた紡績糸を自動ワインダ等の巻取装置に供給する装置として、パーツフィーダ型の供給装置が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1の供給装置により分離供給したボビンは、その後、ボビン準備区間において、自動ワインダの巻取ユニットが自動的にボビンの巻取作業を行うことができるようにするために、ボビン準備装置に供給される。このボビン準備装置は、ボビンの事前処理を行っている。具体的には、精紡機によりボビンが形成される際の巻終り部分であるボトムバンチを除去し、ボトムバンチが除去されてフリーとなった巻終り部分の糸端を捕捉して、ボビンのボビン管の中に挿入している。このように糸端をボビンのボビン管の中に挿入することによって、自動ワインダが、ボビンのボビン管内に圧縮空気を作用させ、糸端を吹き上げることができる。
【0004】
吹き上げられた糸端は、自動ワインダのワインダユニットが備える、ボビン側の糸を捕捉する下糸捕捉装置によって捕捉され、糸継装置に導かれる。その後、糸継装置に導かれたボビン側の糸端(下糸)は、パッケージ側の糸端(上糸)と結合され、その後、パッケージに巻き取られる。
【0005】
更に、ボビン準備装置においては、上記のようにボトムバンチを除去すると同時に、給糸ボビンのボビン管に巻き付けられていた給糸ボビンの糸端(精紡機により給糸ボビンが形成される際の巻始めの部分。以下、「種糸」と称することがある)も除去される。これにより、自動ワインダにおいては、給糸ボビンから糸を全て巻き上げたときに糸が絡むことが防止されるので、給糸ボビンに巻かれていた糸の全部を円滑に解舒することができる。
【0006】
仮に、ボビン準備装置において事前処理を良好に行うことができず、種糸やバンチ巻部分が給糸ボビンに残ってしまった場合、給糸ボビンから解舒される糸に、種糸やバンチ巻の糸が絡み付いてしまう。絡み付いた糸は、解舒することができずにテンション切れを起こしてしまい、巻取装置の稼動効率を低下させる原因となる。
【0007】
特許文献2には、ボビンに形成されたバンチ巻きを解舒することで除去するバンチ巻き解舒装置が開示されている。このバンチ巻き解舒装置には、サクションケースと、エアダクトと、ロータリカッタと、トレイ回転ローラと、が備えられている。
【0008】
この構成で、ボビンを支持するトレイにトレイ回転ローラを接触させて回転駆動することにより、ボビンが連動して回転する。そして、負圧とされたサクションケースの内部に、ボビンに形成されたボトムバンチ(バンチ巻き)が吸引される。吸引されたボトムバンチは、サクションケースの内部に配置されるロータリカッタにより切断される。以上のようにして、ボビンに巻かれているボトムバンチのバンチ巻き糸が解舒される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−16226号公報
【特許文献2】特開2008−247517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献2のように専用のバンチ巻き解舒装置を設けるためには、搬送トレイに供給されたボビンを自動ワインダに搬送するための搬送経路において、事前処理のための準備区間を大きくとる必要がある。これは装置の設置面積の増大に繋がるため、小型化の観点から改善の余地が残されていた。
【0011】
また、特許文献2に示すバンチ巻き解舒装置の構成は、ボビンを回転させる機構をはじめとして種々の構成が必要になり、装置の複雑化を招いていた。また、ボビンへの糸の巻き方によっては、ボトムバンチを形成するために糸を多数回巻くことがあり、この場合はバンチ巻き解舒装置においてボトムバンチの糸の周回数だけボビンを回転させる必要があり、作業効率の低下を招いていた。
【0012】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、小さな設置面積を実現しながら、ボビンのバンチ巻きを除去した状態で搬送トレイに供給できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0014】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のボビン供給装置が提供される。即ち、このボビン供給装置は、供給部と、バンチ除去部と、載置部と、を備える。前記供給部は、ボビンを個別に供給する。前記バンチ除去部は、前記供給部から供給されたボビンのバンチ巻きを除去する。前記載置部は、前記バンチ除去部によりバンチ巻きが除去されたボビンを搬送トレイに載置する。
【0015】
これにより、ボビン供給装置がバンチ除去部を備えるので、後の工程にバンチ除去機構を設ける必要がない。また、バンチ巻きや種糸が外れた状態で搬送トレイによって搬送される糸引き状態を回避することができる。
【0016】
前記のボビン供給装置においては、前記バンチ除去部は、ボトムバンチを除去することが好ましい。
【0017】
これにより、糸端をボビン管に巻き付けたボトムバンチを除去するので、ボトムバンチが解舒されてできる糸引き状態を防止することができる。
【0018】
前記のボビン供給装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記バンチ除去部は、ボビン経路と、吸引口部材と、開閉機構と、切断機構と、を備える。前記ボビン経路は、前記ボトムバンチを除去するための作業位置を通過するように形成される。前記吸引口部材には、負圧源に接続されて吸引流を発生させる吸引口が形成される。前記開閉機構は、前記吸引口部材内に配置され、前記吸引口を開閉する。前記切断機構は、前記ボビンから吸引されたボトムバンチを形成していた糸を切断する。
【0019】
これにより、ボビンのボトムバンチを吸引口から吸引するとともに、当該ボトムバンチを形成していた糸を切断機構で切断して除去することができる。特に、搬送トレイにボビンが装着されていない状態で吸引することでボビンからボトムバンチを外して除去する構成であるので、ボビンを回転させつつボトムバンチを除去する従来の構成と比較して、構成を大幅に簡素化することができる。
【0020】
前記のボビン供給装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記開閉機構は、板部材からなるシャッタ部である。前記切断機構は、前記板部材の周辺部に配置されて、糸を切断する。
【0021】
これにより、吸引口の開閉を簡素な構成で行うことができる。また、吸引口の開閉と糸の切断とを容易に連動させることができる。
【0022】
前記のボビン供給装置においては、前記バンチ除去部は、前記作業位置のボビンに対して前記吸引口部材を進退可能に駆動する駆動部を備えることが好ましい。
【0023】
これにより、吸引口を移動させることができるので、ボビンの支持側端部に吸引口を被せた状態で吸引流をボトムバンチに強力に作用させることで、ボトムバンチを吸引して除去することができる。従って、ボトムバンチの確実な除去が実現される。
【0024】
前記のボビン供給装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このボビン供給装置は、保持機構と、エアノズルと、を備える。前記保持機構は、前記作業位置にある前記ボビンの解舒側端部を保持する。前記エアノズルは、前記吸引口部材の内部の吸引口近傍に配置され、前記吸引流の下流側に向けて空気を噴射する。
【0025】
これにより、エアノズルからの空気の吹き付けにより、ボトムバンチを確実に解舒することができる。また、ボトムバンチの除去作業時に保持機構がボビンを保持するので、ボビンを安定させた状態でボトムバンチの除去作業を円滑に行うことができる(ボビン自体が吸引されて吸引口に詰まることがない)。
【0026】
前記のボビン供給装置においては、前記供給部は、投入された複数のボビンを個別に分離するボビン分離装置であることが好ましい。
【0027】
これにより、複数投入されたボビンを分離して、かつボトムバンチを除去しつつ搬送トレイに載置することができる。この結果、後工程での作業を簡素化できる。また、糸引きがないので、搬送トレイに糸が絡むこともない。
【0028】
前記のボビン供給装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ボビン分離装置は、ボビン投入部と、ボビン取出部と、を備える。前記ボビン投入部には、複数のボビンが投入される。前記ボビン取出部は、前記ボビン投入部に投入されたボビン群からボビンを取り出す。前記ボビン取出部は、前記ボビン投入部の設置面に対して略垂直上方にボビンを搬送しつつ分離する。
【0029】
これにより、ボビン取出部において、ボビンは略垂直上方に搬送されながら分離される。従って、ボビンの分離に必要な設置面積を削減することができる。
【0030】
前記のボビン供給装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このボビン供給装置は、上昇経路と、下降経路と、を備える。前記上昇経路は、前記ボビンを上方に搬送する。前記下降経路は、前記ボビンを下方に搬送する。前記上昇経路には、前記ボビン取出部が配置される。前記下降経路には、前記バンチ除去部と、前記載置部と、が配置されている。
【0031】
これにより、ボビンを上方に搬送しながら分離し、下方に搬送しながらバンチ除去と搬送トレイへの載置を行う合理的なレイアウトが実現される。また、下降経路においてはバンチ除去部とトレイ載置部とが上下方向に積層して配置されることになるので、全体の設置面積を大幅に削減することができる。
【0032】
前記のボビン供給装置においては、前記下降経路において、前記バンチ除去部の上流側には、ボビンの方向を検知して一定の方向に揃えた上でボビンを前記バンチ除去部に送る方向揃え供給部が設けられていることが好ましい。
【0033】
これにより、方向揃え供給部においてボビンの方向が検知され、バンチ除去部に対して、常に一定の方向に向けられたボビンが供給される。従って、バンチ除去部での除去処理を簡単にすることができる。具体的には、ボトムバンチを除去できる機構が配置されている側にボトムバンチが必ず供給されるので、バンチ除去部でボビンの方向を調整する必要がない。
【0034】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の巻取システムが提供される。即ち、この巻取システムは、前記のボビン供給装置と、巻取装置と、ボビン準備装置と、を備える。前記巻取装置は、前記ボビンから糸を巻き上げてパッケージを形成する。前記ボビン準備装置は、前記供給部によってボビンが供給された搬送トレイを前記巻取装置に搬送しつつ、前記巻取装置がボビンを処理できる状態となるように準備する。前記ボビン準備装置には、ボビンが供給された搬送トレイを前記ボビン供給装置から前記巻取装置に搬送するためのボビン供給経路が設けられる。前記ボビン供給経路には、給糸ボビンが巻き取られたときの終端側の糸端を処理する口出し装置が備えられている。
【0035】
これにより、ボビン供給装置側にバンチ除去部が設けられているので、ボビン準備装置にボトムバンチ除去部を設ける必要がない。従って、装置の小型化を実現することができる。
【0036】
前記の巻取システムにおいては、前記ボビン準備装置に、ボトムバンチを除去する第2バンチ除去部が設けられる構成とすることもできる。
【0037】
この場合、ボビン供給装置でのバンチ除去部による処理と、第2バンチ除去装置による処理と、の2回のバンチ除去処理により、ボビンが有するボトムバンチを確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係るボビン分離供給装置の全体的な構成を示す正面断面図。
【図2】ボビン分離供給装置の斜視図。
【図3】ボビン取出部の斜視図。
【図4】ボビン取出部の拡大側面断面図。
【図5】ボビンの支持側と解舒側及びバンチ巻きを説明する図。
【図6】ボビン分離供給装置が備えるバンチ除去部の正面図。
【図7】図6のA−A断面矢視図。
【図8】図7のB−B断面矢視図。
【図9】図8の状態から筒体を給糸ボビンの支持側端部に被せ、ボトムバンチを吸引する様子を示す正面断面図。
【図10】ボビン準備装置の概略平面図。
【図11】変形例に係るボビン準備装置の概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るボビン分離供給装置12の全体的な構成を示す正面断面図である。図2は、ボビン分離供給装置12の斜視図である。図3は、ボビン取出部23の斜視図である。図4は、ボビン取出部23の拡大側面断面図である。
【0040】
本発明の一実施形態に係る自動ワインダシステム(巻取システム)10は、複数のワインダユニット(図略)を備える自動ワインダ(巻取装置)と、ボビン搬送装置11と、ボビン分離供給装置12と、を備えている。
【0041】
ワインダユニットは、ボビン9に巻かれた紡績糸を解舒して巻取ボビンに巻き返すことにより、パッケージを形成するように構成されている。
【0042】
ボビン搬送装置11は、コンベア等によって構成されたボビン搬送経路20と、ボビン搬送経路20上を搬送される多数の搬送トレイ21と、を有している。図1に示すように、この搬送トレイ21は、ボビン9を略直立状態で載置することができるように構成されている。ボビン搬送経路20は、ボビン9を乗せた搬送トレイ21を各ワインダユニット(図略)まで搬送することができるように構成されている。これにより、各ワインダユニットに対して自動的にボビン9を供給することができる。
【0043】
ところで前記ボビン9は、精紡機等で紡出された紡績糸が巻かれたものである。精紡機で製造されたボビン9は、コンテナ8等に入れられて自動ワインダまで運ばれる。このコンテナ8内のボビン9を、オペレータが手作業で1本ずつ搬送トレイ21に載置するのでは、オペレータの負担が大きくなる。そこで、本実施形態のボビン分離供給装置12は、ボビン9を自動的に1本ずつ分離して(個別化して)搬送トレイ21に載置するように構成されている。
【0044】
図1及び図2に示すように、本実施形態のボビン分離供給装置12は、ボビン投入部22と、ボビン取出部23と、ボビン方向揃え部(方向揃え供給部)71と、バンチ除去部72と、トレイ載置部(載置部)73と、を有している。
【0045】
コンテナ8に入れられて運ばれてきたボビン9は、ボビン投入部22内に投入される。ボビン投入部22内に投入されたボビン群は、ボビン取出部23によって1本ずつ取り上げられ、個別化される。即ち、ボビン投入部22とボビン取出部23とにより、投入された複数のボビン9を個別に分離するボビン分離部(供給部)24が構成される。
【0046】
ボビン投入部22は、揺動可能に構成された揺動部材31を備えている。この揺動部材31は、所定の角度ストロークで揺動することにより、ボビン投入部22に投入されたボビン群をせき止めたり切り崩したりしながら、ボビン9をボビン取出部23にほぼ一定量ずつ供給することができる。これにより、ボビン取出部23に大量のボビン9が一度に供給されるのを防止できるので、ボビン取出部23でボビン9を確実に1本ずつ取り上げることができる。
【0047】
また、ボビン投入部22はカッタ43を備えている。このカッタ43はハサミ状に構成されており、図略の駆動源によって駆動されることにより、ボビン9から出た糸を切断することができるように構成されている。このカッタ43は、ボビン投入部22からボビン取出部23へとボビン9を搬送する際に、ボビン9から糸がでてしまっている場合(糸引きがある場合)でも、その糸を切断しておくことができる。これにより、ボビン9がボビン取出部23で取り上げられる際にボビン皿26によってかき混ぜられたとしても、糸の絡み付きなどの発生を防止し、個別化を適切に行うことができる。
【0048】
ボビン取出部23は、上下方向に配設されたコンベアとして構成されている。具体的には、図3及び図4に示すように、ボビン取出部23は、無端環状帯体25と、無端環状帯体25の外側面において、当該無端環状帯体25の長手方向で等間隔に取り付けられた複数のボビン皿26と、を備えている。
【0049】
無端環状帯体25は、図3に示すように、回転軸が互いに平行となるように配置された上下2つの回転ローラ37,37の間にループ状に掛け渡された帯状(シート状)の部材として構成されている。上側の回転ローラ37は、駆動源としてのステッピングモータ38が有する出力軸と、駆動伝達ベルト等を介して連結される。この構成で、ステッピングモータ38を動作させると、無端環状帯体25が循環駆動され、当該無端環状帯体25に取り付けられたボビン皿26が垂直方向に駆動される。
【0050】
また、ボビン皿26を無端環状帯体25に取り付ける構成とすることにより、例えば無端チェーンにボビン皿を取り付ける構成に比べて、ボビン皿26を安定して支持することができる。また、ボビン皿26の装置奥側は、シート状の無端環状帯体25によって塞がれた状態となっているので、ボビン皿26に乗ったボビンが装置奥側に落下してしまうことがない。
【0051】
ボビン皿26は、ボビン9を乗せることができるように、全体として長方形に形成された面を有している。この長方形のボビン皿26は、その長手方向が、回転ローラ37の回転軸方向と平行になるように、無端環状帯体25に取り付けられている。これにより、ボビン皿26は、回転ローラ37の回転軸と平行にボビン9を乗せることができる。また、ボビン皿26の奥行き(前記長方形の面のうち、長手方向に直交する方向の長さ)は、ボビン9が2つ並んで乗ることができない程度とされる。この構成で、無端環状帯体25を循環駆動することにより、ボビン投入部22内のボビン9をボビン皿26の上に1本ずつ乗せて、装置設置面に対して垂直方向上向きに搬送するようになっている。このようにして、ボビン投入部22内のボビン群を1本ずつ取り上げる(個別化する)ことができる。
【0052】
ここで、ボビンを個別化する装置としては、例えば特開平8−337317号公報のような構成も知られている。特開平8−337317号公報に記載の管糸供給装置では、フィーダボールによってボビンの個別化を行っていた。このフィーダボールは、その構成上、水平方向に大きなスペースが必要であった。この点、本実施形態のボビン分離供給装置12が備えるボビン取出部23は、ボビン9を垂直方向に搬送することにより個別化するものであるから、水平方向でのスペースをあまり必要としない。従って、従来の構成に比べてボビン分離供給装置12を小型化することができる。
【0053】
また、特開平8−337317号公報に記載の管糸供給装置は、ボビンを下に落としながら個別化を行う構成であったので、荷あけ装置によってボビンを荷あけする位置は、高い位置とならざるを得なかった。このようにボビンの投入位置が高い位置になるため、特開平8−337317号公報の管糸供給装置は、視認性、作業性が悪かった。この点、本実施形態のボビン分離供給装置12は、ボビン9を上方に向けて搬送することにより個別化する構成であるから、ボビン9の投入位置を低い位置とすることができる。これにより、視認性、作業性が大幅に向上する。
【0054】
また、ボビン分離供給装置12は、ボビン皿26によって搬送されるボビン9に接触可能なボビン分離部材41を備える。このボビン分離部材41は、ボビン皿26によってボビン9が搬送される領域に沿って配置された金属製のワイヤ(線状の部材)として構成される。ボビン皿26には、このボビン分離部材41を通過させるためのスリットが形成されている。また、ボビン分離部材41は適宜曲げられており、ボビン皿26上のボビン9を少し押して揺らすための押出部42が形成されている。
【0055】
ここで上記のように、ボビン皿26の大きさは、ボビン9が2つ並んで乗ることができない程度とされている。しかしながら、ボビン9の上にボビン9が乗るようにして、複数のボビンがボビン皿26に載ってしまうことも考えられる。この点、本実施形態のボビン取出部23ではボビン分離部材41が設けられているので、ボビン9が上下に重なってボビン皿26に載った場合でも、ボビン分離部材41の押出部42がボビン9を押して揺らすことで余計なボビン9を落下させ、確実に1本ずつ個別化することができる。
【0056】
例えば図4のように、1つのボビン皿26に2本のボビン9が重なって乗っている場合、当該ボビン皿26が押出部42の位置にさしかかると、前記2本のボビン9は、ボビン分離部材41によって押されることにより揺さぶり作用が与えられ、上に重なっているボビン9がボビン皿26の取り上げ側端部から下方に落とされる。このように、押出部42を有するボビン分離部材41をボビン9の搬送方向に沿って配置するという簡単な構成で、ボビン皿26に乗っている余分なボビン9を当該ボビン皿26から落とすことができる。
【0057】
ボビン取出部23によって上方に搬送されたボビン9は、ボビン9を一時的にストックしておくことができるボビンバッファ部(保留部)44を経由して、ボビン方向揃え部71に供給される。
【0058】
ボビン方向揃え部71は、ボビン取出部23から受け取ったボビン9の解舒側端部と支持側端部とを判別するとともに、解舒側端部が下になるように回転させた上で、下方のバンチ除去部72に落下させる。
【0059】
以下、ボビン9の解舒側と支持側について、図5を参照して詳細に説明する。図5は、ボビン9の支持側と解舒側及びバンチ巻きを説明する図である。
【0060】
ボビン9は、前工程において精紡機で生成された紡績糸をボビン管9tの周囲に巻き付けたものである。図1等では、作図上の都合によりボビン9のボビン管にはテーパが形成されていないように描かれているが、実際には図5に示すように、このボビン管9tには若干のテーパが形成されている。精紡機においては、ボビン管9tの大径側端部から小径側端部に向かって紡績糸を巻き上げる。
【0061】
図5には、ボビン9の解舒側端部が符号9pで、支持側端部が符号9qで、それぞれ示されている。ボビン管9tにはテーパが形成されているので、解舒側端部9pは支持側端部9qよりも若干細くなっている。そして、ボビン9の解舒側とは、ボビン管9tの直径が縮小する側であり、ボビン9に巻かれた糸がワインダユニットによって解舒される方向を意味する。また、ボビン9の支持側とは、ボビン管9tの直径が拡大する側であり、後述のトレイ載置部73によって搬送トレイ21に当該ボビン9が載置された状態において搬送トレイ21によって支持される側を意味する。
【0062】
なお、ボビン9の解舒側端部と支持側端部とを判別する構成は公知であり、例えば特開平8−169525号公報に開示されているので、詳細な説明は省略する。
【0063】
前記ボビンバッファ部44は、ボビン取出部23とボビン方向揃え部71との間で、例えば数本程度のボビン9をストックし、これを指令に応じて下流へ供給できるように構成されている。これにより、ボビン皿26からボビン9が落下した等の理由で、ボビン取出部23においてボビン9を連続して取り上げることができなかったとしても、その下流側の装置であるボビン方向揃え部71、バンチ除去部72、トレイ載置部73へボビンバッファ部44からボビン9を途切れなく供給し、装置の効率を低下させないようにすることができる。
【0064】
バンチ除去部72は、ボビン9に形成されているバンチ巻き及び種糸を除去するためのものである。以下、図6から図9までを中心に参照して、バンチ除去部72の構成を詳細に説明する。図6は、ボビン分離供給装置12が備えるバンチ除去部72の正面図である。図7は、図6のA−A断面矢視図である。図8は、図7のB−B断面矢視図である。図9は、図8の状態から筒体52をボビン9の支持側端部9qに被せ、ボトムバンチ9aを吸引する様子を示す正面断面図である。
【0065】
バンチ除去部72は、ハウジング81と、回転送り体82と、吸引機構51と、クランプ機構(保持機構)93と、を主要な構成として備えている。
【0066】
ここで、必要に応じて図5等を参照しながら、バンチ巻き及び種糸について簡単に説明する。即ち、ボビン管9tの大径側から小径側に向けて糸を巻き上げただけの状態のボビン9においては、糸端がフリーとなっている。従って、このままの状態のボビン9では、精紡機からボビン分離供給装置12まで運搬するとき等に糸が出てきてしまい、ボビン9同士で糸が絡まり合うといった不具合が発生し得る。
【0067】
そこで、図5に示すように、ボビン9の糸層表面に小径側から大径側に向けて糸を螺旋状に巻き付け、更にボビン管9tの支持側端部9qに糸を棒巻きし、バンチ巻きを形成しておくことが行われる。これにより、糸端がフリーでなくなるので、搬送中のボビン9から糸が出てきてしまうことを防止できる。なお、ボビン9の糸層表面に小径側から大径側に向けて螺旋状に巻き付けられている部分の糸をバックワインド糸9dと呼び、また、ボビン管9tの支持側端部9qに棒巻きされた部分をボトムバンチ9aと呼ぶ。
【0068】
上記のボトムバンチ9aは精紡機による糸の巻終り時に形成されるが、ボビン管9tに対する糸の巻始めの部分を種糸9cと呼ぶことがある。この種糸9cは、ボビン9への糸の巻き方によっては相当に長くなることがあり、特に、自動玉揚装置でなくボビンを作業者が人手で玉揚げするタイプの精紡機(手揚げ精紡機)に、この傾向が多く見られる。また、上記の手揚げ精紡機においては、上記のボトムバンチ9aにおいて棒巻きを形成する際の糸の周回数が多くなることがある。これらの場合、種糸9c及びボトムバンチ9aの除去には多くの手間が掛かり、生産効率を低下させてしまう。そこで、本実施形態のボビン分離供給装置12は、ボトムバンチ9a及び種糸9cを確実に素早く除去することが可能なバンチ除去部72を備えている。
【0069】
ハウジング81は、回転送り体82を回転可能に支持するとともに、方向変更板91を備えている。方向変更板91は、斜めに向けられた平板状の部材として構成されている。この方向変更板91は、解舒側を下に向けてボビン方向揃え部71から落下するボビン9の向きを略90°変更して、解舒側が方向変更板91から遠い側を向くようにボビン9の向きを案内する。
【0070】
回転送り体82は板状の仕切りを組み合わせた構成とされており、この仕切りによって、図7に示すように回転送り体82の内部が6つの空間に区画されている。それぞれの空間(以下、ボビン収容空間94と呼ぶことがある)は細長く形成されており、その長手方向が回転送り体82の軸線に平行となるように配置される。また、6つのボビン収容空間94は周方向に60°の等間隔で配置されるとともに、径方向外側を開放させるように構成されている。従って、このボビン収容空間94のそれぞれには、1本のボビン9を回転送り体82の径方向外側から入れて収容することができる。
【0071】
回転送り体82は、その中心軸を水平から若干傾けるようにして、ハウジング81に支持されている。具体的には、回転送り体82の中心軸は、上記の方向変更板91より遠い側の端部(図1において左側の端部)がやや下となるように傾斜している。従って、上記のボビン収容空間94も、同じ向きに若干傾斜するように配置されることになる。
【0072】
ハウジング81には、回転送り体82の中心軸の周囲に配置されたほぼ円弧状の部分を含むボビン経路95が形成されている。また、ハウジング81には、このボビン経路に沿って配置された略L字状の規制部材85が固定されている。この規制部材85は、自重でボビン収容空間94から出ようとするボビン9の端部に接触することで、ボビン9がボビン収容空間94から抜けないように規制することができる。
【0073】
上記のボビン経路95には、当該ボビン経路95の上流から下流へ向かって順に、ボビン方向揃え部71からのボビン9を受け取る受取位置P1と、ボビン9についてバンチ除去作業を行う作業位置P2と、バンチが除去されたボビン9をトレイ載置部73へ送る排出位置P3と、が設定されている。
【0074】
受取位置P1は、ハウジング81の上部であって、回転送り体82の中心軸の上方に配置されている。この受取位置P1においては、ハウジング81の上方が開放されている。従って、ボビン方向揃え部71から供給されたボビン9は、この受取位置P1において、回転送り体82のボビン収容空間94に投入される。また、上記のボビン方向揃え部71及び方向変更板91の作用により、ボビン9は、その解舒側が方向変更板91からみて遠い側を向くようにして、ボビン収容空間94に入ることになる。
【0075】
作業位置P2は、ハウジング81の下部であって、回転送り体82の中心軸の下方に配置されている。この作業位置においては、ボビン9は、後述のクランプ機構93により解舒側端部9pがクランプされることで、その位置が動かないように保持される。この状態で、ボビン9の支持側端部9qに形成されているバンチ巻き(ボトムバンチ)と、種糸と、の除去作業が行われる。なお、このバンチ除去作業のための詳細な構成は後述する。
【0076】
排出位置P3は、ハウジング81の下部であって、作業位置P2の隣に配置されている。この排出位置P3においては規制部材85が途切れるので、回転送り体82のボビン収容空間94に入っていたボビン9は、自重で斜め下へ排出される。排出されたボビン9は、ボビンシュート27を経由してトレイ載置部73に送られる。
【0077】
ハウジング81には駆動モータ92が取り付けられており、この駆動モータ92は、回転送り体82を60°ずつ一方向に回転させることができる。これにより、回転送り体82は、受取位置P1で受け取ったボビン9を、ボビン経路95に沿って、作業位置P2、排出位置P3の順に1本ずつ順次送ることができる。
【0078】
次に、前記の作業位置P2においてボトムバンチ及び種糸を除去するための構成について、図8等を参照して詳細に説明する。
【0079】
図8に示すように、前記作業位置P2においてボビン9の支持側が位置する側には、ボビン9のボトムバンチを吸引して除去するための吸引機構51が設けられる。また、ボビン9の解舒側が位置する側には、ボビン9を固定するためのクランプ機構93が配置されている。
【0080】
クランプ機構93は、V字状の凹部を有するベース部材96と、このベース部材96と対向する押さえ部材97と、この押さえ部材97を駆動するアクチュエータとしてのエアシリンダ98と、を備える。
【0081】
図7に示すように、ベース部材96に形成されているV字状の凹部は、規制部材85の縁部と滑らかに接続している。また、図6等に示すように、回転送り体82が有する6つのボビン収容空間94は、何れも、ボビン9の解舒側が低くなるように傾けられている。従って、受取位置P1においてボビン収容空間94に投入された時点では、ボビン9がボビン収容空間94内で中央寄りの位置や方向変更板91に近い位置にあったとしても、当該ボビン9が回転送り体82の回転により送られるに従って、ボビン9は自重で移動し、低い側に徐々に寄せられることになる。従って、ボビン9が作業位置P2へ送られる時点では、当該ボビン9の解舒側端部9pを、クランプ機構93のベース部材96と押さえ部材97との間に差し込んでクランプ可能な状態とすることができる。
【0082】
吸引機構51は、ボビン収容空間94の長手方向に沿う向きに移動可能な筒体52を備える。この筒体52は、前記作業位置P2においてボビン9がクランプ機構93で保持された場合に、そのボビン9の軸線の延長線上に配置された開口を有している。また、当該筒体52は、可撓性の配管53を介して適宜の負圧源(例えば、ブロア)に接続される。これにより、筒体52の開口及び筒体52内部に吸引流を発生させることができる。
【0083】
また、筒体52の内部にはシャッタカッタ(シャッタ部、開閉機構)84が配置されており、このシャッタカッタ84は、筒体52の内部を閉鎖した状態と、開放した状態と、を切り換えることができる。このシャッタカッタ84は板部材で構成されており、シャッタカッタ84の周辺部に配置された図示しないアクチュエータ(切断機構)と連結されている。この切断機構を駆動して糸を挟むようにシャッタカッタ84を閉じることで、当該糸を切断することができるようになっている。ただし、例えば切断刃を有する部材をシャッタカッタ84とは別に配置し、これを切断機構で駆動することで糸を切断するように構成しても良い。
【0084】
バンチ除去部72は、筒体52を軸方向に進退駆動するためのエアシリンダ(アクチュエータ、駆動部)54を備える。従って、筒体52は、エアシリンダ54の駆動により、ボビン9の支持側端部9qに被さる位置(図9)と、ボビン9の支持側端部9qから抜ける位置(図8)と、の間で、ボビン9の長手方向に沿って移動することができる。
【0085】
また、筒体52には、エアブラストノズル(エアノズル)55が形成されている。このエアブラストノズルは、筒体52の内部(前記吸引流の下流側)に向けてエアブラストを噴射することができる。このエアブラストノズル55は、筒体52の内壁に開口するようにして、周方向に並べて6箇所配置されている。
【0086】
以上の構成で、作業位置においてボビン9のバンチ巻きを除去するには、最初に当該ボビン9の解舒側の端部をクランプ機構93でクランプし、動かないように固定する。次に、閉じていたシャッタカッタ84を開いて筒体52の内部及び開口付近に吸引流を発生させ、更にエアブラストノズル55から空気流を噴射させつつ、エアシリンダ54により筒体52を移動させ、ボビン9の支持側の端部に被せる。この筒体52を被せる長さはボビン9のボビン管の長さ等を考慮して適宜設定できるが、例えば数十ミリメートル程度とすることが考えられる。
【0087】
すると、ボビン9の支持側に巻かれているボトムバンチ9aが輪抜けして、筒体52内に吸引される。ただし、ボトムバンチ9aが一度に輪抜けせずに、糸端から徐々にボトムバンチが解舒されるようにしてボトムバンチ9aが除去されることも考えられる。この状態で所定時間が経過した後、シャッタカッタ84を閉じることにより、筒体52内に吸引されたボトムバンチ9aを形成していた糸9bが切断される。
【0088】
次に、筒体52をいったん図8の位置に戻した上で、上記のサイクルを適宜の回数繰り返す。このように動作サイクルを複数回繰り返すように制御することで、ボトムバンチ9aをより確実に除去することができる。動作サイクルの回数は、バンチ除去部72を制御する制御部に対して適宜の操作を行うことで設定することができる。具体的な動作例としては、1回のサイクルを例えば1秒前後で完了させるとともに、1本のボビン9につき上記のサイクルを計2回行うことが考えられる。
【0089】
なお、図8及び図9の例では、作業位置P2のボビンの種糸9cは当初から短いため、シャッタカッタ84で切断されることはない。種糸9cがある程度長く出ているボビンが供給された場合は、ボトムバンチ9aを形成していた糸9bと同時に、種糸9cもシャッタカッタ84で短く切断される。
【0090】
上記のようにして、ボビン9のボトムバンチ9a及び種糸9cが除去される。その後、バンチ除去部72は、クランプ機構93によるクランプを解除させるとともに、回転送り体82を駆動してボビン9を排出位置に送り、ボビンシュート27を経由して落下させる。ボビンシュート27の下には搬送トレイ21が待機しており、ボビンシュート27からのボビン9が搬送トレイ21に載置される。
【0091】
このようにして構成されたボビン分離供給装置12は、ボビン投入部22に投入されたボビン群から、ボビン9をボビン皿26の取り上げ側端部(無端環状帯体25に取り付けられた端部とは反対側の端部)ですくい上げることにより取り上げる。そして、当該ボビン9を搬送しつつ個別化して、ボトムバンチ9a及び種糸9cを除去した上で搬送トレイ21に載置していくことができる。
【0092】
次に、ボビン分離供給装置12から自動ワインダの各ワインダユニットに搬送するためのボビン搬送経路20に設けられたボビン準備装置について説明する。図10は、ボビン準備装置17の概略平面図である。
【0093】
ボビン準備装置17は、ボビン搬送経路20上であって、ワインダユニットよりも上流側、かつボビン分離供給装置12より下流側の区間(いわゆる準備区間)に配置されている。このボビン準備装置17は、ワインダユニットでボビン9の糸を捕捉し易くするために当該ボビン9の口出しを行う口出し装置18を備えている。
【0094】
口出し装置18の構成は公知であるが、以下で簡単に説明する。口出し装置18は、搬送トレイ21に乗ってボビン搬送経路20を搬送されてきたボビン9に吸引流を作用させることにより、ボビン9の表面から糸を解舒する。解舒された糸端は、筒状のボビン9の内部に挿入しておく。この準備作業により、口出し装置18の下流側のワインダユニットにおいて、ボビン9の糸端を簡単に捕捉して糸の巻取りをスムーズに開始することができる。
【0095】
以上に説明したように、本実施形態のボビン分離供給装置12は、ボビン分離部24と、バンチ除去部72と、トレイ載置部73と、を備える。ボビン分離部24は、ボビン9を個別に供給する。バンチ除去部72は、ボビン分離部24から供給されたボビン9のバンチ巻き(ボトムバンチ9a)を除去する。トレイ載置部73は、バンチ除去部72によりバンチ巻きが除去されたボビン9を搬送トレイ21に載置する。
【0096】
これにより、ボビン分離供給装置12がバンチ除去部72を備えるので、後の工程にバンチ除去機構を設ける必要がない。また、バンチ巻きや種糸が外れた状態で搬送トレイによって搬送される糸引き状態を回避することができる。
【0097】
また、本実施形態のボビン分離供給装置12においては、バンチ除去部72は、ボトムバンチ9aを除去するように構成されている。
【0098】
これにより、糸端をボビン管9tに巻き付けたボトムバンチ9aを除去するので、ボトムバンチ9aが解舒されてできる糸引き状態を防止することができる。
【0099】
また、本実施形態のボビン分離供給装置12において、バンチ除去部72は、ボビン経路95と、筒体(吸引口部材)52と、シャッタカッタ84と、切断機構と、を備える。ボビン経路95は、ボトムバンチ9aを除去するための作業位置P2を通過するように形成される。筒体52には、負圧源に接続されて吸引流を発生させる吸引口が形成される。シャッタカッタ84は、筒体52内に配置され、前記吸引口を開閉する。切断機構は、ボビン9から吸引されたボトムバンチ9aを形成していた糸9bを切断する。
【0100】
これにより、ボビン9のボトムバンチ9aを吸引口から吸引するとともに、当該ボトムバンチ9aを形成していた糸9bを切断機構で切断して除去することができる。特に、搬送トレイ21にボビン9が装着されていない状態で吸引することでボビン9からボトムバンチ9aを外して除去する構成であるので、ボビンを回転させつつボトムバンチを除去する従来の構成と比較して、構成を大幅に簡素化することができる。
【0101】
また、本実施形態のボビン分離供給装置12においては、板部材からなるシャッタカッタ84により吸引口を開閉している。また、切断機構は、板部材の周辺部に配置されて、糸9bを切断する。
【0102】
これにより、吸引口の開閉を簡素な構成で行うことができる。また、吸引口の開閉と糸9bの切断とを容易に連動させることができる。
【0103】
また、本実施形態のボビン分離供給装置12において、バンチ除去部72は、作業位置P2のボビン9に対して筒体52を進退可能に駆動するエアシリンダ54を備える。
【0104】
これにより、吸引口を移動させることができるので、ボビン9の支持側端部9qに吸引口を被せた状態で吸引流をボトムバンチ9aに強力に作用させることで、当該ボトムバンチ9aを吸引して除去することができる。従って、ボトムバンチ9aの確実な除去が実現される。
【0105】
また、本実施形態のボビン分離供給装置12は、クランプ機構93と、エアブラストノズル55と、を備える。クランプ機構93は、作業位置P2にあるボビン9の解舒側端部を保持する。エアブラストノズル55は、筒体52の内部の吸引口近傍に配置され、吸引流の下流側に向けて空気を噴射する。
【0106】
これにより、エアブラストノズル55からの空気の吹き付けにより、ボトムバンチ9aを確実に解舒することができる。また、ボトムバンチ9aの除去作業時にクランプ機構93がボビン9の解舒側端部9pを保持するので、ボビン9を安定させた状態でボトムバンチ9aの除去作業を円滑に行うことができる(ボビン9自体が吸引されて吸引口に詰まることがない)。
【0107】
また、本実施形態のボビン分離供給装置12において、投入された複数のボビン9を個別に分離するボビン分離部24が、ボビン9を個別に供給するように構成されている。
【0108】
これにより、複数投入されたボビン9を分離して、ボトムバンチ9aを除去しつつ搬送トレイ21に載置することができる。この結果、後工程での作業を簡素化できる。また、糸引きがないので、搬送トレイ21に糸が絡むこともない。
【0109】
また、本実施形態のボビン分離供給装置12において、ボビン分離部24は、ボビン投入部22と、ボビン取出部23と、を備える。ボビン投入部22には、複数のボビン9が投入される。ボビン取出部23は、ボビン投入部22に投入されたボビン群からボビン9を取り出す。ボビン取出部23は、当該ボビン取出部23の設置面に対して略垂直上方にボビン9を搬送しつつ分離する。
【0110】
これにより、ボビン取出部23において、ボビン9は略垂直上方に搬送されながら分離される。従って、ボビン9の分離に必要な設置面積を削減することができる。
【0111】
また、本実施形態のボビン分離供給装置12は、ボビン9を上方に搬送する上昇経路と、ボビン9を下方に搬送する下降経路と、を備える。上昇経路には、ボビン取出部23が配置される。下降経路には、バンチ除去部72と、トレイ載置部73と、が配置されている。
【0112】
これにより、ボビン9を上方に搬送しながら分離し、下方に搬送しながらバンチ除去と搬送トレイ21への載置を行う合理的なレイアウトが実現される。また、下降経路においてはバンチ除去部72とトレイ載置部73とが上下方向に積層して配置されることになるので、全体の設置面積を大幅に削減することができる。
【0113】
また、本実施形態のボビン分離供給装置12において、バンチ除去部72の上流側には、ボビン9の方向を検知して一定の方向に揃えた上でボビン9をバンチ除去部72に向けて送るボビン方向揃え部71が設けられている。
【0114】
これにより、ボビン方向揃え部71においてボビン9の方向が検知され、バンチ除去部72に対して、常に一定の方向に向けられたボビン9が供給される。従って、バンチ除去部72での除去処理を簡単にすることができる。具体的には、ボトムバンチ9aを除去するための吸引機構51が配置されている側にボトムバンチ9aが必ず供給されるので、バンチ除去部72でボビン9の方向を調整する必要がない。
【0115】
また、本実施形態における自動ワインダシステム10は、上記のボビン分離供給装置12と、自動ワインダと、ボビン準備装置17と、を備える。自動ワインダは、ボビン9から糸を巻き上げてパッケージを形成する。ボビン準備装置17は、ボビン分離供給装置12によってボビン9が供給された搬送トレイ21を自動ワインダに搬送しつつ、自動ワインダがボビンを処理できる状態となるように準備する。ボビン準備装置17には、ボビン9が供給された搬送トレイ21をボビン分離供給装置12から自動ワインダに搬送するためのボビン搬送経路20が設けられる。ボビン搬送経路20には、ボビン9に糸が巻き取られたときの終端側の糸端を処理する口出し装置18が備えられている。
【0116】
これにより、ボビン分離供給装置12側にバンチ除去部が設けられているので、ボビン準備装置にボトムバンチ除去部を設ける必要がない。従って、装置の小型化を実現することができる。
【0117】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。図11は、変形例に係るボビン供給システムにおいて、ボビン準備装置17の構成を示す模式平面図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0118】
本変形例では、ボビン準備装置17において、口出し装置18のほかに、第2バンチ除去部74が備えられている。この第2バンチ除去部74としては、例えば前記の特許文献2に開示されている従来のものを用いることができる。
【0119】
この変形例では、ボビン9は適宜の経路を搬送されながら、バンチ除去部72と、第2バンチ除去部74と、の2箇所でバンチ除去処理が行われる。従って、ボビン準備装置に設けられたバンチ除去装置でだけバンチ除去作業を行う従来の構成と比較して、ボトムバンチ9aの除去の成功率が向上し、ワインダユニットでの巻取作業においてボトムバンチが除去されていないことによる不具合を回避することができる。
【0120】
以上に説明したように、本変形例における自動ワインダシステム10において、ボビン準備装置17には、ボトムバンチ9aを除去する第2バンチ除去部74が設けられる。
【0121】
これにより、ボビン分離供給装置12でのバンチ除去部72による処理と、第2バンチ除去部74による処理と、の2回のバンチ除去処理により、ボビン9が有するボトムバンチ9aを確実に除去することができる。
【0122】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0123】
筒体52を駆動するための駆動部としては、上記実施形態のようにエアシリンダ54とすることに代えて、他の駆動源、例えばステッピングモータを採用することができる。ステッピングモータを使用する場合、筒体52の移動距離や移動速度を容易に制御できる点で好ましい。また、例えばボビン収容空間94に詰まったボビン9に筒体52が衝突したような場合でも、ステッピングモータが脱調するので、当該モータの破損や装置の破損を防止できる点で有利である。
【0124】
図6〜図8に示す構成のバンチ除去部72は、垂直搬送コンベアタイプのボビン取出部23に限らず、例えばパーツフィーダタイプのボビン取出部に適用しても良い。
【0125】
また、本発明の構成は、特開昭62−74886号公報に示すような、精紡機から自動ワインダに移動させる際にシュート部が存在する構成の、いわゆるリンク式の自動ワインダに適用することもできる。
【符号の説明】
【0126】
9 ボビン
9a ボトムバンチ(バンチ巻き)
10 自動ワインダシステム(巻取システム)
17 ボビン準備装置
18 口出し装置
20 ボビン搬送経路
22 ボビン投入部
23 ボビン取出部
24 ボビン分離部(供給部)
52 筒体(吸引口部材)
54 エアシリンダ(駆動部)
55 エアブラストノズル(エアノズル)
71 ボビン方向揃え部(方向揃え供給部)
72 バンチ除去部
73 トレイ載置部
74 第2バンチ除去部
84 シャッタカッタ(シャッタ部、開閉機構)
93 クランプ機構(保持機構)
95 ボビン経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンを個別に供給する供給部と、
前記供給部から供給されたボビンのバンチ巻きを除去するバンチ除去部と、
前記バンチ除去部によりバンチ巻きが除去されたボビンを搬送トレイに載置する載置部と、
を備えることを特徴とするボビン供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボビン供給装置であって、
前記バンチ除去部は、ボトムバンチを除去することを特徴とするボビン供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載のボビン供給装置であって、
前記バンチ除去部は、
前記ボトムバンチを除去するための作業位置を通過するように形成されたボビン経路と、
負圧源に接続されて吸引流を発生させる吸引口が形成された吸引口部材と、
前記吸引口部材内に配置され、前記吸引口を開閉する開閉機構と、
前記ボビンから吸引されたボトムバンチを形成していた糸を切断する切断機構と、
を備えることを特徴とするボビン供給装置。
【請求項4】
請求項3に記載のボビン供給装置であって、
前記開閉機構は、板部材からなるシャッタ部であり、
前記切断機構は、前記板部材の周辺部に配置されて、糸を切断することを特徴とするボビン供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載のボビン供給装置であって、
前記バンチ除去部は、前記作業位置のボビンに対して前記吸引口部材を進退可能に駆動する駆動部を備えることを特徴とするボビン供給装置。
【請求項6】
請求項5に記載のボビン供給装置であって、
前記作業位置にある前記ボビンの解舒側端部を保持する保持機構と、
前記吸引口部材の内部の吸引口近傍に配置され、前記吸引流の下流側に向けて空気を噴射するエアノズルと、
を備えることを特徴とするボビン供給装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のボビン供給装置であって、
前記供給部は、投入された複数のボビンを個別に分離するボビン分離装置であることを特徴とするボビン供給装置。
【請求項8】
請求項7に記載のボビン供給装置であって、
前記ボビン分離装置は、
複数のボビンが投入されるボビン投入部と、
前記ボビン投入部に投入されたボビン群からボビンを取り出すボビン取出部と、
を備え、
前記ボビン取出部は、前記ボビン投入部の設置面に対して略垂直上方にボビンを搬送しつつ分離することを特徴とするボビン供給装置。
【請求項9】
請求項8に記載のボビン供給装置であって、
前記ボビンを上方に搬送する上昇経路と、
前記ボビンを下方に搬送する下降経路と、
を備え、
前記上昇経路には、前記ボビン取出部が配置され、
前記下降経路には、前記バンチ除去部と、前記載置部と、が配置されていることを特徴とするボビン供給装置。
【請求項10】
請求項9に記載のボビン供給装置であって、
前記下降経路において、前記バンチ除去部の上流側には、ボビンの方向を検知して一定の方向に揃えた上でボビンを前記バンチ除去部に送る方向揃え供給部が設けられていることを特徴とするボビン供給装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載のボビン供給装置と、
前記ボビンから糸を巻き上げてパッケージを形成する巻取装置と、
前記供給部によってボビンが供給された搬送トレイを前記巻取装置に搬送しつつ、前記巻取装置がボビンを処理できる状態となるように準備するボビン準備装置と、
を備え、
前記ボビン準備装置には、ボビンが供給された搬送トレイを前記ボビン供給装置から前記巻取装置に搬送するためのボビン供給経路が設けられ、
前記ボビン供給経路には、給糸ボビンが巻き取られたときの終端側の糸端を処理する口出し装置が備えられていることを特徴とする巻取システム。
【請求項12】
請求項11に記載の巻取システムであって、
前記ボビン準備装置には、ボトムバンチを除去する第2バンチ除去部が設けられることを特徴とする巻取システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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