説明

ボビン処理装置及び糸巻取システム

【課題】ボビン処理装置において、センサの交換、動作確認などを行い易い構成を提供する。
【解決手段】ボビン処理装置は、電子機器32を制御する制御基板(メイン基板及びスレーブ基板31)と、電子機器32を接続するための基板側コネクタ36と、制御基板と基板側コネクタ36との間を接続する基板側ケーブル39aと、ベース体21と、を備えている。ベース体21は、基板側コネクタ36が固定されるコネクタ固定板38を有している。電子機器32は、コネクタ固定板38の一側から基板側コネクタ36に接続される。一方、基板側ケーブル39aは、コネクタ固定板38の他側に配線されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ボビン処理装置が備える電子機器を接続するためのコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示すようなボビン処理部が知られている。このボビン処理部は、給糸ボビンに対して所定の処理(例えば糸の口出し処理)を行うように構成されている。この種の処理を適切に行うために、ボビン処理部には、給糸ボビンの存在を検知するボビンセンサや、ボビン搬送トレイの存在を検知するトレイセンサなど、各種の電子機器を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−247517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記電子機器は、当該電子機器を制御するための制御基板に接続される。この種のボビン処理部は多数の電子機器を有しているので、制御基板から電子機器までの接続ケーブルの本数が膨大になり、当該ケーブルの取り扱いが煩雑になるという問題があった。また、このようにケーブルの配線が煩雑になるため、配線の取り外して電子機器を交換する等の作業が行いにくかった。特に、従来のボビン処理装置では、配線の取り外し等のために装置下方にもぐり込んで作業を行わなければならない場合があり、作業性が悪かった。そこで、電子機器と制御基板との間の接続方法を改良して、電子機器の取り付け、取り外しを容易化したいという要望があった。
【0005】
この点、特許文献1には、センサの位置に関しては記載されているもの、センサの接続構造については何ら記載されていない。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、ボビン処理装置において、電子機器の交換などの作業を行い易い構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、供給された給糸ボビンに所定の処理を行って糸巻取装置に順次供給するボビン処理装置の以下の構成が提供される。即ち、このボビン処理装置は、電子機器を制御する制御基板と、前記電子機器を接続するための基板側コネクタと、前記制御基板と前記基板側コネクタとの間を接続する基板側ケーブルと、ベース体と、を備えている。前記ベース体は、前記基板側コネクタが固定されるコネクタ固定板を有している。前記電子機器は、前記コネクタ固定板の一側から前記基板側コネクタに接続される。一方、前記基板側ケーブルの少なくとも一部は、前記コネクタ固定板の他側に配線されている。
【0009】
このように、基板側コネクタをベース体に固定したので、当該基板側コネクタに対する電子機器の取り付け、及び取り外しを容易に行うことができる。また、基板側ケーブルを、コネクタ固定板を挟んで電子機器とは反対側に配線することにより、この基板側ケーブルが電子機器側に露出しない。これにより、余計な配線が露出しないので、メンテナンス時のわずらわしさを低減することができる。
【0010】
上記のボビン処理装置は、以下のように構成することが好ましい。即ち、前記コネクタ固定板は略水平に配置される。前記電子機器は、前記コネクタ固定板よりも上方に配置されている。前記基板側コネクタの接続側先端部は、コネクタ固定板の上面に露出している。そして前記基板側ケーブルの少なくとも一部は、前記コネクタ固定板よりも下方に配線される。
【0011】
これにより、基板側コネクタに対して電子機器を上側から接続できるので、当該基板側コネクタに対する電子機器の取り付け、及び取り外し等が更に容易になる。
【0012】
上記のボビン処理装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、ボビン処理装置は、前記基板側コネクタに接続される機器側コネクタと、前記電子機器と前記機器側コネクタとを接続する機器側ケーブルと、を有する。そして、同じ種類の電子機器同士で、機器側ケーブルの長さが統一されている。
【0013】
このように、電子機器側の配線の長さを統一したので、故障時などに電子機器を交換して動作確認することができる。
【0014】
本発明の別の観点によれば、上記のボビン処理装置と、前記ボビン処理装置に給糸ボビンを供給するボビン供給部と、前記ボビン処理装置によって所定の処理が施された給糸ボビンから糸を巻き取る糸巻取装置と、を備える糸巻取システムが提供される。
【0015】
即ち、上記ボビン処理装置は、電子機器の取り付け、取り外しを容易に行うことができるので、ボビン処理装置の保守整備作業の効率も向上する。従って糸巻取システム全体の生産性も向上させることができる。
【0016】
上記の糸巻取システムは、前記ボビン供給部がリング精紡機であり、前記糸巻取装置が自動ワインダであることが好ましい。
【0017】
即ち、リング精紡機と自動ワインダの間の狭いスペースでは、メンテナンス等の際に、電子機器の取り付け、取り外し等の作業を行うことが困難である。この点、本発明に係るボビン処理装置は、電子機器取り付け、及び取り外しを容易に行うことができるように構成されているので、メンテナンス作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動ワインダシステムの全体的な構成を示す概略平面図。
【図2】ボビン処理装置の斜視図。
【図3】制御基板と電子機器の接続方法を説明する図。
【図4】電子機器とコネクタの様子を示す正面断面図。
【図5】第2実施形態に係るボビン処理装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。図1に示すのは、本実施形態に係るボビン処理装置3を備えた自動ワインダシステム(糸巻取システム)1の概略的な平面図である。
【0020】
この自動ワインダシステム1は、自動ワインダ(糸巻取装置)2と、ボビン処理装置3と、ボビン供給装置(ボビン供給部)4と、を備えている。
【0021】
自動ワインダ2は、複数の巻取ユニット5を多数並べて備えている。各巻取ユニット5は、紡績糸が巻かれた給糸ボビンから紡績糸を解舒し、巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成する公知の構成である。自動ワインダ2には、各巻取ユニット5まで給糸ボビンを自動的に搬送するための供給路6が形成されている。また、自動ワインダ2には、各巻取ユニット5から排出される空ボビンを搬送するための回収路7が形成されている。
【0022】
前記供給路6及び回収路7はベルトコンベア等から構成されており、搬送トレイを搬送することができるように構成されている。この搬送トレイは、給糸ボビンを略直立状態で載置することができるように構成されている。
【0023】
給糸ボビンは、前工程の精紡機において生成された紡績糸を、ボビン管の周囲に巻き付けたものである。精紡機で生成された給糸ボビンは、ボビン供給装置4まで運搬され、当該ボビン供給装置4に投入される。ボビン供給装置4は、投入された給糸ボビンを、搬送トレイの上に一本ずつ略直立状態で載置していくように構成されている。このボビン供給装置4は、搬送トレイの上に給糸ボビンを載置するためのボビンシュート9を備えている。
【0024】
ボビン処理装置3は、ボビン供給装置4と自動ワインダ2との間に配置されている。ボビン供給装置4から供給された給糸ボビンは、そのままでは自動ワインダ2において糸を適切に解舒できない状態である。そこで、ボビン処理装置3において、ボビン供給装置4から供給された給糸ボビンに対して予め適切な処置を行うように構成されている。ボビン処理装置3で行われる処置としては、例えば、バンチ巻き解舒、糸端処理、口出し処理などである。なお、バンチ巻き解舒、糸端処理、及び口出し処理については、例えば特許文献1に記載されている。ボビン処理装置3は、バンチ巻き解舒を行うためのバンチ解舒装置10、糸端処理を行うための糸端処理装置11、及び口出し処理を行うための口出し装置12を備えている。
【0025】
また、ボビン処理装置3は、当該ボビン処理装置3が備える各構成を制御するための制御部を備えている。この制御部は、オペレータが操作するための操作パネル14を有している。自動ワインダシステム1のオペレータは、操作パネル14を操作することにより、ボビン処理装置3の起動、停止、又は非常停止などの各種の操作を行うことができる。
【0026】
ボビン処理装置3は、地面(ボビン処理装置3の設置面)に対して略水平になるように設置されたベース体21を備えている。ボビン処理装置3が備える各構成は、このベース体21に対して直接又は間接的に取り付けられている。このベース体21には、搬送トレイを搬送する搬送路8が形成されている。この搬送路8は、ベルトコンベア等から構成されている。図1に示すように、搬送路8は、自動ワインダ2の供給路6と回収路7とを接続するように構成されている。
【0027】
この自動ワインダシステムにおける搬送トレイの流れについて説明すると、以下の通りである。
【0028】
ボビン処理装置3は、給糸ボビンの有無を検出するためのボビンセンサを、搬送路8の各所に備えている。また、ボビン処理装置3は、搬送トレイの有無を検出するためのトレイセンサを、搬送路8の各所に備えている。なお、以下の説明では、ボビンセンサとトレイセンサをまとめて、単に「センサ」と呼ぶ場合がある。
【0029】
例えば、空の搬送トレイ(ボビンが載っていない搬送トレイ)がボビンシュート9の直下位置16まで到達すると、当該空の搬送トレイが前記センサによって検知される。この場合、制御部は、ボビンシュート9を作動させ、前記空の搬送トレイの上に給糸ボビンを1つ、略直立状態で載置する。
【0030】
ボビンシュート9によって給糸ボビンが載置された搬送トレイは、下流側のバンチ解舒装置10へ向けて搬送路8を搬送される。給糸ボビン(及び搬送トレイ)がバンチ解舒装置10の正面位置17に到達したことをセンサが感知した場合、制御部は、バンチ解舒装置10を動作させて、給糸ボビンに形成されているボトムバンチを除去する。
【0031】
ボトムバンチを除去された給糸ボビンは、更に下流側の糸端処理装置11へ向けて搬送路8を搬送される。給糸ボビン(及び搬送トレイ)が糸端処理装置11の正面位置18に到達したことをセンサが感知した場合、制御部は、糸端処理装置11を動作させて、給糸ボビンの外周に巻き付いているバックワインド糸を切断し、糸端を形成する。
【0032】
バックワインド糸を切断された給糸ボビンは、更に下流側の口出し装置12へ向けて搬送路8を搬送される。給糸ボビン(及び搬送トレイ)が口出し装置12の正面位置19に到達したことをセンサが感知した場合、制御部は、口出し装置12を動作させて、糸端処理装置11で形成された糸端をボビン管の内側に挿入する(口出し)。
【0033】
口出しされた給糸ボビンは、搬送路8を更に下流へと搬送され、自動ワインダ2の供給路6へと供給される。給糸ボビンは、供給路6を搬送され、巻取ユニット5のうち何れかに供給される。
【0034】
巻取ユニット5においては、給糸ボビンから糸の解舒が行われ、解舒された糸がパッケージに巻き取られる。糸が全て解舒されたボビン(空ボビン)を乗せた搬送トレイは、巻取ユニット5から排出され、回収路7を介して再びボビン処理装置3の搬送路8に戻される。
【0035】
搬送路8において、ボビンシュート9の上流側には、ボビンプロー13が配置されている。ボビンプロー13は、回収路7から搬送路8に戻ってきた搬送トレイに載置されている空ボビンを抜き取るための装置である。空ボビンを乗せた搬送トレイがボビンプロー13の直下位置20に到達したことをセンサが検知した場合、制御部は、ボビンプロー13を動作させて、当該空ボビンを搬送トレイから抜き取る。抜き取られた空ボビンは、図2に示す空ボビンシュート23から放出される。空ボビンシュート23の先には、空ボビンを回収するためのコンテナ(図略)が配置されており、当該コンテナ内に空ボビンが回収される。
【0036】
なお、巻取ユニット5からは搬送路8に戻ってくるボビンには、糸が残ったボビンも含まれている。ボビンに十分な糸が残っている場合には、当該ボビンを再度自動ワインダ2に供給することにより、残りの糸を巻取ユニット5において巻き取ることができる。そこでボビンプロー13は、糸が十分に残ったボビンが乗った搬送トレイが搬送されてきたときには、ボビンの抜き取りを行わないように構成されている。一方、多少の糸は残っているものの、巻取ユニット5で巻き取りを行うことができる程度には残っていないボビン(極小残糸付ボビン)の場合は、空ボビンと同様に、ボビンプロー13によって搬送トレイから抜き取られる。
【0037】
本実施形態のボビンプロー13は、空ボビンと極小残糸付ボビンを分別するために、ボビンに残った極小残糸を検出する極少残糸センサを備えている。搬送トレイから抜き取ったボビンに極少残糸が無い場合(空ボビンの場合)、ボビンプロー13は、前述のように空ボビンシュート23からボビンを放出する。一方、ボビンに極少残糸が残っていることを極少残糸センサで検知した場合、ボビンプロー13は、図2に示す極少残糸付きボビンシュート24からボビンを放出する。極少残糸付きボビンシュート24の先には回収ボックス25が配置されており、この回収ボックス25内に極少残糸付きボビンが回収される。
【0038】
次に、本実施形態のボビン処理装置3の電気的な構成について説明する。
【0039】
前述のように、このボビン処理装置3は、給糸ボビンに対して適切な処置を行うことができるようにするため、各種のセンサ(ボビンセンサ、トレイセンサ、極少残糸センサなど)を複数の所定箇所に備えている。また、各装置を駆動するためのエアシリンダを制御する電磁バルブ、駆動源としての電動モータなどを各所に備えている。このように、ボビン処理装置3の各所に配置されたセンサ、電磁バルブ、電動モータなどを、まとめて「電子機器」と呼ぶことがある。これら電子機器は、制御部によって制御されている。
【0040】
前記制御部は、前記操作パネル14と、制御基板から構成されている。
【0041】
制御基板には、電子機器を制御するための制御回路が形成されている。また、操作パネル14及び前記電子機器は、ケーブルを介して制御基板に接続されている。これにより、制御基板において各電子機器の制御が可能となっている。
【0042】
本実施形態のボビン処理装置3において、制御基板は、メイン基板30と、複数のスレーブ基板31(後述)と、で構成されている。
【0043】
メイン基板30は、金属製の基板ケース15の内部に収容されている。なお本実施形態においては、図2に示すように、操作パネル14の筐体と基板ケース15とは別体として構成されている。従来のボビン処理装置では、操作パネルの筐体に制御基板を内蔵する構成としていたので、操作パネルの筐体が大型化してレイアウトの自由度が低下するという問題があった。一方、本実施形態のように、操作パネル14の筐体と基板ケース15とを分離することにより、操作パネル14の筐体を小さくすることができ、レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0044】
また本実施形態では、基板ケース15内のメイン基板30は縦置きとされている(即ち、メイン基板30の回路形成面が、地面に対して略垂直となるように配置されている)。これにより、基板ケース15の内部に風綿(糸くず)等が侵入したとしても、当該風綿がメイン基板30の回路形成面に蓄積しにくくなる。従って、風綿によるトラブルを未然に防ぐことができるとともに、基板ケース15内の清掃の手間を軽減することができる。なお、本実施形態では基板ケース15を操作パネル14と別体に構成しているので、基板ケース15の配置自由度が向上している。従って、上下方向で広いスペースがある場所を選んで基板ケース15を配置することが可能となり、メイン基板30の縦置きを容易に実現することができる。
【0045】
次に、スレーブ基板31について説明する。図3に示すように、このスレーブ基板31は、メイン基板30と各電子機器32とを結ぶ配線経路の途中に配置されている。電子機器32がモータや電磁バルブなどの場合、スレーブ基板31は、メイン基板30からの制御信号に基づいて、前記電子機器32を制御するように構成されている。また、電子機器32がセンサなどの場合、スレーブ基板31は、当該電子機器32から受信した信号を、メイン基板30に送信するように構成されている。以上の構成により、ボビン処理装置3が備える各電子機器32を、メイン基板30において集中的に制御することができる。
【0046】
なお、従来のボビン処理装置では、制御基板をマスターとスレーブに分割せずに、1つの基板で各電子機器の制御を行っていた。このように1つの制御基板で電子機器を制御する構成の場合、各電子機器と制御基板とを接続するケーブルは、1つの制御基板に集中的に接続されることになる。従って、電子機器の数が増えるに従い、制御基板から引き出されるケーブルの本数が多くなり、配線やメンテナンスが煩雑になるという問題があった。また、制御基板から遠い位置の電子機器に対しては、ケーブルの長さが長くなってしまっていた。
【0047】
この点、本実施形態のボビン処理装置においては、制御基板をメイン基板30とスレーブ基板31とに分割し、かつ、スレーブ基板31を複数設けている。そして、各電子機器32は、何れかのスレーブ基板31に接続されるように構成されている。また図3に示すように、それぞれのスレーブ基板31は、1本の通信ケーブル33によってメイン基板30に接続されている。このように、メイン基板30とスレーブ基板31との間の通信は通信ケーブル33で行うように構成することで、メイン基板30から出るケーブルの本数を少なくすることができる。
【0048】
また、本実施形態ではスレーブ基板31を複数設けたので、1つのスレーブ基板31に接続される電子機器の数が膨大になることがない。従って、1つのスレーブ基板31に接続されるケーブルの本数が少なくなり、この点でも配線やメンテナンスが容易になる。また、スレーブ基板31を複数設けたので、それぞれのスレーブ基板31をボビン処理装置3の各部に分散して配置することが可能となる。これにより、スレーブ基板31を、電子機器32の近傍に配置することができるので、スレーブ基板31と電子機器32とを接続するケーブルの長さを短くすることができる。
【0049】
なお、このスレーブ基板31は透明プラスチック製のスレーブ基板ケース34に収容されている。このようにスレーブ基板31をケースに収容することにより、スレーブ基板31に風綿などが付着することを防止できる。また、スレーブ基板ケース34を透明プラスチック製とすることで、スレーブ基板31の表面に実装されたインジケータ等を外部から視認することができる。
【0050】
また、スレーブ基板31には、当該スレーブ基板31に接続されている電磁バルブ等の電子機器をマニュアルで動作させるためのスイッチ類(図略)が設けられている。この構成によれば、スレーブ基板31の前記スイッチを操作することにより、電磁バルブ等をテスト動作させることができるので、装置の定期点検、調整作業等を行い易くなる。
【0051】
なお、このようにスレーブ基板31で電磁バルブ等を操作する構成に代えて、例えば操作パネル14によって電磁バルブ等をマニュアル操作する構成も考えられる。しかし、仮に個々の電磁バルブ等を個別に操作するためのスイッチ類を操作パネル14に設けたとすると、当該スイッチ類の数が多くなり操作パネル14が分かりにくくなるという問題がある。定期点検や調整作業等は頻繁に行うものではないので、このような定期点検や調整作業時にのみ操作するスイッチ類は、操作パネル14ではなくスレーブ基板31に設けておく方が好適である。また前述のように、スレーブ基板31は電子機器の近傍に配置されているので、当該スレーブ基板31の前記スイッチ類を操作したときに電磁バルブ等の動作確認を行いやすく、定期点検、調整作業等の作業をスムーズに行うことができる。
【0052】
次に、スレーブ基板31と各電子機器との間の接続構造について、より詳しく説明する。
【0053】
図4に示すように、本実施形態のボビン処理装置3は、スレーブ基板31と各電子機器32とを接続するためのコネクタ35を備えている。このコネクタ35は、基板側コネクタ36と、機器側コネクタ37と、から構成されている。
【0054】
基板側コネクタ36とスレーブ基板31との間は、多芯ケーブル39によって接続されている。
【0055】
多芯ケーブル39は、複数本の基板側ケーブル39aを束ねた構成とされている。各基板側ケーブル39aは、各基板側コネクタ36と、スレーブ基板31とを接続している。複数本の基板側ケーブル39aは、両端部を除く途中部分同士が結束部39bによってまとめられて(結束されて)いる。結束部39bは、例えば可撓性を有するゴムチューブ等であり、当該ゴムチューブ内に複数本の基板側ケーブル39aが挿通されることで、当該複数本の基板側ケーブル39a同士が結束されている。これにより、1本の多芯ケーブル39が構成されている。
【0056】
以上のように、スレーブ基板31と基板側コネクタ36との間を多芯ケーブル39で接続することにより、基板側ケーブル39aがバラけたり、絡み合ったりすることを防止でき、ケーブルの取り扱いが容易になる。
【0057】
なお、制御基板と、複数の基板側コネクタとの位置関係が不適切である場合には、両者を繋ぐケーブルを多芯ケーブル39によって1本にまとめることが困難である。この点、本実施形態のボビン処理装置3ではスレーブ基板31を複数設けているので、当該スレーブ基板31をボビン処理装置3の各部に分散させて配置することができる。即ち、スレーブ基板31の配置自由度を高めることができる。これにより、1本の多芯ケーブル39によってまとめて配線を行い易い位置に、スレーブ基板31を配置することができる。
【0058】
一方、機器側コネクタ37と電子機器32との間は、機器側ケーブル40によって接続されている。そして、基板側コネクタ36と機器側コネクタ37とを嵌合させることにより、スレーブ基板31に対して電子機器32が接続されるように構成されている。また、基板側コネクタ36と機器側コネクタ37は嵌合を解除することが可能である。これにより、電子機器32を取り外すことができる。
【0059】
図4に示すように、ボビン処理装置3のベース体21は、略水平に配置されたコネクタ固定板38を有している。このコネクタ固定板38には、基板側コネクタ36が固定されている。このように基板側コネクタ36をベース体21に固定したので、当該基板側コネクタ36に対して機器側コネクタ37を抜き差しする作業が行い易くなっており、電子機器32の取り外し、交換などを容易に行うことができる。
【0060】
また本実施形態のボビン処理装置3では、基板側コネクタ36に対して、機器側コネクタ37を上方から嵌合させることができるように構成されている。即ち、基板側コネクタ36は、その接続側端部を上方に向け、かつ前記接続側端部をコネクタ固定板38の上面に露出させるようにして、コネクタ固定板38に固定されている。このように基板側コネクタ36が上を向いているので、オペレータがメンテナンスや電子機器の交換等を行う際などに、機器側コネクタ37の抜き差しを行い易くなっている。即ち、コネクタ固定板38の上側からコネクタの抜き差しを行うことができるので、例えばボビン処理装置3のメンテナンスを行う際、電子機器の取り付け及び取り外しなどのために装置下方にもぐり込んで作業を行う必要がない。
【0061】
またボビン処理装置3が備える装置(例えば、バンチ解舒装置10、糸端処理装置11、口出し装置12、ボビンプロー13など)はベース体21の上方に配置されている。従って、電子機器32の多くは、コネクタ固定板38よりも上方に配置されている。一方、コネクタ固定板38の下方には、配線ダクト41が配設されている。この配線ダクト41の内部には、結束部39bによって結束された基板側ケーブル39a(多芯ケーブル39)が配線されている。即ち、基板側ケーブル39aは、コネクタ固定板38を挟んで、大部分の電子機器32の反対側に配置されている。
【0062】
この点、従来のボビン処理装置では、全てのケーブルをベース体の上部に配線していたので、当該配線が煩雑になりケーブルの取り扱いが難しくなるだけでなく、メンテナンス時などに不必要に配線に触れてトラブルの原因となる可能性があった。本実施形態では上記のように、電子機器32の反対側に基板側ケーブル39aを配線しているので、ケーブルの取り扱いが容易になり、電子機器32のメンテナンスなどの際に、基板側ケーブル39aに不必要に配線に触れることがなくなり、トラブルを未然に防ぐことができる。なお、各電子機器が取り外し可能になっているので、下方に配線された基板側ケーブル39aのメンテナンスも自由に行うことができる。
【0063】
なお、ケーブルの本数が多い場合には、コネクタ固定板38下方の配線ダクト41内にケーブルを配線する作業が困難になることが予想される。この点、本実施形態では、複数本の基板側ケーブル39aを多芯ケーブル39として1本にまとめているので、当該ケーブルの取り扱いが容易になっており、配線ダクト41内への配線作業等をスムーズに行うことができる。
【0064】
なお、図4に示すソレノイド32aのように、コネクタ固定板38よりも下方に配置された電子機器があっても良い。この場合であっても、ソレノイド32aの機器側ケーブル40をコネクタ固定板38から上方に引き出せば、上向きの基板側コネクタ36に機器側コネクタ37を接続することができる。
【0065】
次に、機器側ケーブル40の長さについて説明する。
【0066】
本実施形態のボビン処理装置においては、電子機器の種類ごとに、機器側ケーブル40の長さを統一している。例えば、ボビン処理装置3が備える複数のボビンセンサの機器側ケーブル40は、全て同じ長さとなっている。また例えば、ボビン処理装置3が備える複数の電磁バルブの機器側ケーブル40は、全て同じ長さとなっている。
【0067】
このように、同じ種類の電子機器で機器側ケーブル40の長さを統一したので、同じ種類の電子機器の1つが不具合を発生している場合に、別の位置の電子機器と取り換えて動作確認をすることができる。また、複数箇所配置された電子機器の1つが故障したときに、それが重要な役割の電子機器である場合は、重要でない位置の電子機器と取り換えて使用することができる。なお、従来のボビン処理装置では、電子機器のケーブルの長さを統一していなかったので、電子機器を交換して動作確認等を行おうとしても、ケーブル長が短いために接続できない場合があったのである。本実施形態では、上記のように機器側ケーブル40の長さを統一しているので、電子機器を交換しての動作確認等を行うことができる。
【0068】
以上で説明したように、本実施形態のボビン処理装置3は、供給された給糸ボビンに所定の処理を行って自動ワインダ2に順次供給するものであり、電子機器32を制御する制御基板(メイン基板30及びスレーブ基板31)と、電子機器32を接続するための基板側コネクタ36と、制御基板と基板側コネクタ36との間を接続する基板側ケーブル39aと、ベース体21と、を備えている。ベース体21は、基板側コネクタ36が固定されるコネクタ固定板38を有している。電子機器32は、コネクタ固定板38の一側から基板側コネクタ36に接続される。一方、基板側ケーブル39aは、コネクタ固定板38の他側に配線されている。
【0069】
このように、基板側コネクタ36をベース体21に固定したので、当該基板側コネクタ36に対する電子機器32の取り付け、及び取り外しを容易に行うことができる。また、基板側ケーブル39aを、コネクタ固定板38を挟んで電子機器32とは反対側に配線することにより、この基板側ケーブル39aが電子機器32側に露出しない。これにより、余計な配線が露出しないので、メンテナンス時のわずらわしさを低減することができる。
【0070】
また本実施形態のボビン処理装置3において、コネクタ固定板38は略水平に配置される。電子機器32は、コネクタ固定板38よりも上方に配置されている。基板側コネクタ36の接続側先端部は、コネクタ固定板38の上面に露出している。そして基板側ケーブル39aは、コネクタ固定板38よりも下方に配線される。
【0071】
これにより、基板側コネクタ36に対して電子機器32を上側から接続できるので、当該基板側コネクタ36に対する電子機器32の取り付け、及び取り外し等が更に容易になる。
【0072】
また本実施形態のボビン処理装置3は、基板側コネクタ36に接続される機器側コネクタ37と、電子機器32と機器側コネクタ37とを接続する機器側ケーブル40と、を有する。そして、同じ種類の電子機器32同士で、機器側ケーブル40の長さが統一されている。
【0073】
このように、電子機器32側の配線の長さを統一したので、故障時などに電子機器を交換して動作確認することができる。
【0074】
また本実施形態の自動ワインダシステム1は、上記のボビン処理装置3と、ボビン処理装置3に給糸ボビンを供給するボビン供給装置4と、ボビン処理装置3によって所定の処理が施された給糸ボビンから糸を巻き取る自動ワインダ2と、を備えている。
【0075】
即ち、上記ボビン処理装置3は、電子機器32の取り付け、取り外しを容易に行うことができるので、ボビン処理装置3の保守整備作業の効率も向上する。従って自動ワインダシステム1全体の生産性も向上させることができる。
【0076】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。
【0077】
上記実施形態では、精紡機で生成された給糸ボビンをボビン供給装置まで運搬し、当該給糸ボビンをボビン供給装置に投入する構成として説明した。これに代えて、ボビン処理装置とリング精紡機との間を搬送路で繋ぎ、リング精紡機で生成された給糸ボビンが前記搬送路を通ってボビン供給装置まで送られてくるように構成することもできる。この構成によれば、リング精紡機で生成された給糸ボビンが、ボビン処理装置3を介して、自動ワインダに連続的に供給される。このように、リング精紡機から給糸ボビンが連続的に供給されるように構成しても良い。この場合、リング精紡機がボビン供給部に相当する。
【0078】
以上のように、この変形例に係る糸巻取システムにおいては、ボビン供給部はリング精紡機であり、糸巻取装置は自動ワインダである。
【0079】
即ち、リング精紡機と自動ワインダの間の狭いスペースでは、メンテナンス等の際に、電子機器の取り付け、取り外し等の作業を行うことが困難である。特に、このようにスペースが狭い場合は、装置の下にもぐり込んで作業を行うことが難しい。この点、本発明に係るボビン処理装置は、電子機器取り付け、及び取り外しを容易に行うことができるように構成されているので、メンテナンス作業が容易になる。特に、上記ボビン処理装置では、コネクタ固定板38の上側からコネクタの抜き差しを行うことができるので、装置下方にもぐり込んで作業を行う必要がなく、作業性が向上する。
【0080】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同一又は類似の構成については、上記第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
この実施形態に係る自動ワインダシステムは、2品種の給糸ボビンを同時に扱うように構成されたものである。この第2実施形態におけるボビン処理装置103を、図5に示す。このボビン処理装置103は、2品種の給糸ボビンが混合しないようにするため、搬送路8を2つ有している。従って、この第2実施形態のボビン処理装置103が備える電子機器32の数は、第1実施形態のボビン処理装置3が備える電子機器32の数の約2倍となる。従って、当該電子機器32が接続されるスレーブ基板31も、第1実施形態の約2倍の数が配置される。
【0082】
このように2品種の給糸ボビンを取り扱う本実施形態のボビン処理装置103の場合であっても、メイン基板30及び操作パネル14は、第1実施形態と同様に1つとする。即ち、取り扱う給糸ボビンの品種の数にかかわらず、電子機器の制御は1箇所で集中的に行うように構成されている。
【0083】
なお、本実施形態では、2つの搬送路それぞれにボビンプロー13,113が配置されている。奥のボビンプロー113で回収された極少残糸付きボビンは、手前の回収ボックス25に回収されるようになっている。これにより、例えばオペレータが奥のボビンプロー113の近くまで極少残糸付きボビンを取りに行く必要がない。なお、本実施形態では、奥のボビンプロー113の極少残糸付きボビンシュート124と、回収ボックス25と、の間をベルトコンベア60で繋いでいる。そして、奥のボビンプロー113の極少残糸付きボビンシュート124から排出された極少残糸付きボビンをベルトコンベア60で受けとめるとともに、当該ベルトコンベア60を駆動することで、前記極少残糸付きボビンを回収ボックス25まで搬送する構成となっている。なお、ボビン処理装置103の制御部は、このベルトコンベア60を、奥のボビンプロー113が極少残糸付きボビンの抜き取り作業を行ったときだけ一定時間駆動するように制御している。これにより、ベルトコンベア60を必要なときのみ駆動することができる。
【0084】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0085】
上記実施形態では、コネクタ固定板38が略水平であるとしたが、これに限らず、斜めであっても良いし、垂直であっても良い。
【0086】
上記実施形態では、「電子機器」として、センサ、電磁バルブ、及びモータ等を例示した。しかし、本明細書において「電子機器」とは制御基板と電気的に接続される機器ないし部材を含む広い概念であり、センサ、電磁バルブ、モータ等に限定されるものではない。
【0087】
図4においては、スレーブ基板31がコネクタ固定板38の下方に配置された様子が描かれている。この場合、基板側ケーブル39aの全部を、コネクタ固定板38よりも下方に配線することができる。しかしスレーブ基板31の配置位置はこれに限らず、例えばコネクタ固定板38よりも上方に位置していても良い。この場合、基板側コネクタ36から下方に引き出された基板側ケーブル39aは、コネクタ固定板38よりも下方を配線され後、コネクタ固定板38から上方に引き出されて、スレーブ基板31まで配線される。この場合であっても、コネクタ35の近傍においては、基板側ケーブル39aはコネクタ固定板38の下方に配線されるので、コネクタ35まわりで配線が煩雑になることはない。このように、基板側ケーブル39aの一部のみがコネクタ固定板の下方に配線される構成であっても良い。
【0088】
多芯ケーブル39の結束部39bは、複数本の基板側ケーブル39aを結束できる構成であればよく、上記実施形態で例示したゴムチューブに限定されない。もっとも、制御基板と基板側コネクタとの接続は多芯ケーブル39に限るものではなく、結束されていない(バラバラの状態の)複数本の基板側ケーブル39aであっても良いことは勿論である。
【0089】
上記変形例ではリング精紡機で生成された給糸ボビンが連続的に供給される構成としたが、リング精紡機以外にも、例えば空気式の精紡機で生成された給糸ボビンが連続的に供給される構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0090】
1 自動ワインダシステム(糸巻取システム)
2 自動ワインダ(糸巻取装置)
3 ボビン処理装置
4 ボビン供給装置(ボビン供給部)
21 ベース体
30 メイン基板(制御基板)
31 スレーブ基板(制御基板)
32 電子機器
36 基板側コネクタ
37 機器側コネクタ
38 コネクタ固定板
39a 基板側ケーブル
40 機器側ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された給糸ボビンに所定の処理を行って糸巻取装置に順次供給するボビン処理装置であって、
電子機器を制御する制御基板と、
前記電子機器を接続するための基板側コネクタと、
前記制御基板と前記基板側コネクタとの間を接続する基板側ケーブルと、
ベース体と、
を備え、
前記ベース体は、前記基板側コネクタが固定されるコネクタ固定板を有し、
前記電子機器は、前記コネクタ固定板の一側から前記基板側コネクタに接続され、
前記基板側ケーブルの少なくとも一部は、前記コネクタ固定板の他側に配線されていることを特徴とするボビン処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボビン処理装置であって、
前記コネクタ固定板は略水平に配置され、
前記電子機器は、前記コネクタ固定板よりも上方に配置され、
前記基板側コネクタの接続側先端部は、コネクタ固定板の上面に露出しており、
前記基板側ケーブルの少なくとも一部は、前記コネクタ固定板よりも下方に配線されることを特徴とするボビン処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボビン処理装置であって、
前記基板側コネクタに接続される機器側コネクタと、
前記電子機器と前記機器側コネクタとを接続する機器側ケーブルと、を有し、
同じ種類の電子機器同士で、機器側ケーブルの長さが統一されていることを特徴とするボビン処理装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のボビン処理装置と、
前記ボビン処理装置に給糸ボビンを供給するボビン供給部と、
前記ボビン処理装置によって所定の処理が施された給糸ボビンから糸を巻き取る糸巻取装置と、を備えることを特徴とする糸巻取システム。
【請求項5】
請求項4に記載の糸巻取システムであって、
前記ボビン供給部は、リング精紡機であり、
前記糸巻取装置は、自動ワインダであることを特徴とする糸巻取システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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