説明

ボラン類のエネルギー効率の良い合成

ハロ−硼素化合物(B−X化合物、1つ又はそれ以上の硼素−ハロゲン結合を有する化合物)とシラン類とを反応させると、ボラン類(B−H化合物、1つ又はそれ以上のB−H結合を有する化合物)とハロシラン類とを与える。無機水素化物例えば表面結合した水素化シラン(Si−H)はB−X化合物と反応してB−H化合物と表面結合したハロシラン類とを生成する。表面結合したハロシラン類は電気化学的手法により表面結合したシラン類に逆転化される。ハロ−硼素化合物はスタナン類(Sn−H結合を有する錫化合物)と反応してボラン類とハロスタナン類(Sn−X結合を有する錫化合物)とを生成する。ハロスタナン類は電気化学的手法によりSn−ホルメート化合物の熱分解によりスタナン類に逆転化される。ハロ−硼素化合物がBCl3である時は、B−H化合物はB2H6であり、しかもその場合還元電位が電気化学的手法により又はホルメートの熱分解により提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、ここに組入れた「ボラン類のエネルギー効率の良い合成」なる名称を有し且つ2006年2月8日付提出の共願に係る米国仮特許出願第60/771,739号の利益を請求する。
【0002】
本発明は米国エネルギー省によって授与された契約第DE−AC−51−06NA25396号により政府の支援の下に成された。政府は本発明に或る権利を有する。
【0003】
本発明は一般に水素の貯蔵に関し、より詳しく言えばボラン類(boranes)(少なくとも1つのB−H結合を有するホウ素化合物)のエネルギー効率の良い合成に関する。
【背景技術】
【0004】
水素(H2)は現在国民の輸送車両を動かすのにガソリン/ディーゼル燃料に取って替わる燃料として有力な候補である。この「水素経済性(hydrogen economy)」を実現するためには解決しなければならない多数の支障及び工学的障壁が水素に伴ってある。水素の船内輸送用の不適当な貯蔵システムは主要な工学的障壁と認められている(例えば「水素経済性:機会、経費、障壁及びR&D要件」ナショナル アカデミー オブ エンジニアリング(NAE)、エネルギー及び環境システム部門、ナショナル アカデミー プレス社(2004)参照)。
【0005】
水素を貯蔵する一般的な計画の1つは、反応生成物として水素を発生する化学反応を受ける化学化合物又はシステムを用いることに関する。原則としてこの科学的な貯蔵システムは魅力的であるが、今日まで開発されていたシステムは(a)水素の発生がきわめて発熱性である高エネルギー無機化合物の加水分解〔例えばミレニウム セルのハイドロゲンオンデマンド(Millenium Cell's HYDROGEN ON DEMAND:登録商標)における如きナトリウム ボロハイドライド/水及びセーフ ハイドロゲン(SAFE HYDROGEN;登録商標)における如きリチウム(又はマグネシウム)水素化物〕を伴ない、かくして無機化合物の製造経費を高くさせ且つライフサイクル効率を低下させるか;あるいは(b)加温した時水素を放出するが典型的には不十分な大量貯蔵能力と不十分な追加供給率とを有する無機水素化物(hydride)材料(例えばNa3AlH6/NaAlH4)の脱水素を伴なう。
【0006】
前記(a)に挙げた無機化合物は次の化学反応;
MHx + XH2O → M(OH)x + XH2 (1)
(但しMHxは金属水素化物であり、M(OH)xは金属水酸化物である)により水素を生ずる。この反応は非可逆性反応である。
【0007】
前記(b)に挙げた無機水素化物材料はH2(水素ガス)に対して可逆性である次の化学反応;
MHx = M + x/2 H2 (2)
(但しMHxは金属水素化物であり、Mは金属であり、H2は水素ガスである)により水素を生ずる。H2に対して非可逆性である第1の反応とは対照的に、第2の反応はH2に対して可逆性である。
【0008】
水素を発生するが尚前記の不十分さを受けない実用的な化学システムは水素経済性の計画された輸送部門には重要であるものである。この同じ実用的な化学システムは非輸送H2燃料電池システムにはきわめて価値があり、例えばラップトップ(laptop)コンピューター及び他の携帯電子装置で用いたシステム及び小さな機械装置例えば現在の工学ではかなりの汚染問題を生起する芝刈機で用いたシステムには価値がある。
【0009】
水素を発生するのに供給しなければならない熱量は使用の時点でエネルギー損失を表わし、水素と共に発生される熱量は化学的な貯蔵媒体を再生するエネルギー損失を表わす。何れの仕方でも、エネルギーは失なわれ、これはライフサイクル効率を低減する。大抵の有機化合物について例えば以下の方程式3〜5に示した化合物において、水素の発生反応はきわめて吸熱性であり、該化合物は周囲温度で水素を発生するには役に立たない(即ち有意な圧力で周囲温度でH2を熱力学的に発生できない)。約250〜400℃以下の温度については、大抵の有機化合物に亘っての水素の平衡圧力はきわめて小さい。結果として、大抵の普通の有機化合物は約250℃以上の加熱を必要とし、且つ有用な圧力で水素を発生するためにこの温度を維持する高度熱量の継続的な供給を必要とする。
【0010】
CH4→C+2H2 ΔH0=+18kcal/mol (3)
ΔG0=+12kcal/mol
6CH4→シクロヘキサン+6H2 ΔH0=+69kcal/mol (4)
ΔG0=+78kcal/mol
シクロヘキサン→ベンゼン+3H2 ΔH0=+49kcal/mol (5)
ΔG0=+23kcal/mol
大抵の有機化合物はエンダーゴニック(endergonic)である水素発生反応を有し(即ち反応変化の正味正の標準フリーエネルギー(a net positive standard free energy)を有する、即ちΔG0>0)、それらの周囲温度での平衡水素圧力はきわめて低く、実際上観察されない。即ち、大抵の有機化合物はライフサイクルのエネルギー効率と供給圧力との問題点の両方に基づいて、水素貯蔵には不適当である。例えばデカリンは触媒の存在下に約250℃に加熱した時水素を発生してナフタレンを形成する(例えばホドシマ等の「燃料電池ビヒクル用の水素供給源として触媒でのデカリン脱水素/ナフタレン水添対」におけるInt. J. 水素エネルギー(Hydrogen Energy)(2003)、28巻、1255〜1262頁、参考のためここに組入れた、を参照)。ホドシマ等は、適当な速度及び圧力でデカリンから水素を製造するのに少なくとも280℃の温度で操作する過熱「薄膜」反応器を用いている。即ち、この吸熱水素発生反応は複雑な装置と高度の過熱との両方を必要とし、これは水素貯蔵用のライフサイクルエネルギー効率を低減させる。
【0011】
ボラン類は高い水素貯蔵能力を有し且つ輸送用の水素貯蔵材料として魅力的な興味を有するが、ボラン化合物を製造する困難性及びそれらの製造に現在用いた化学的プロセスのライフサイクルエネルギーの非効率によってボラン類をあまねく用いることを妨害している。
【0012】
その工業的な入手可能性により、NaBH4(ナトリウムボロハイドライド)はボラン化合物を製造するのに典型的に用いた原料である。例えばジボラン(B2H6)はNaBH4をBF3と反応することにより調製される。ボロハイドライド(borohydride)化合物(即ちBH4アニオン又は別のアニオン性B−H基を含有する化合物)は一般にアルコキシボレートを活性金属水素化物例えばNaH又はNaAlH4と反応させることにより製造される。例えばナトリウムボロハイドライドそれ自体(NaBH4)は水素化ナトリウム(NaH)をトリメトキシホウ素(B(OCH3)3)と反応させることを伴なう既知のシュレシンガー(Schlessinger)法を用いて工業的に製造される。小規模又は中規模の実験室で又は工業的規模で実施するのが都合良いけれども、これらの反応はエネルギーが効率的でなく;NaHとB(OCH3)3との反応は発熱反応であり、NaHはそれ自体Na金属とH2との発熱反応で形成され、こうして全体で約22kcalの熱量が、形成されるB−H結合当りに放出される。
【0013】
B2H6を形成する別の手段も知られている。BHCl2とHClとを形成するのに高温でBCl3とH2とを反応させることが最も良く知られている。温度が約600℃又はそれ以上の程度であるならば有意な平衡転化が可能であるに過ぎず、生成物の混合物は急速に、典型的には数秒以内に約100℃以下の温度に急冷してBHCl2をB2H6とBCl3とに不均化反応させねばならない。急冷した混合物は、B2H6がHCl共生成物と戻り反応する前に迅速に分離しなければならない。BCl3及びHClは両方共高度に腐食性である。熱管理の困難さと組合せてこれらの腐食特性によってこの方法は実施するのが高価とされる。
【0014】
現在、ボラン類を製造するのに利用できるエネルギー効率手段はない。
【0015】
最低限の熱供給で周囲温度で水素を貯蔵し且つ発生するための化学化合物を用いる方法及びシステムが高度に望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書で具体化されしかも広範に記載される如く、本発明の目的によると、本発明はBH3含有化合物を合成する方法を包含する。本法はホウ素含有前駆体から少なくとも1つのハロ−ホウ素化合物を合成し;少なくとも1つのハロ−ホウ素化合物を無機水素化物材料と反応させ、これによって少なくとも1つのB−H化合物を生成し;少なくとも1つのB−H化合物を少なくとも1つのBH3含有化合物に不均化反応させることを伴なう。
【0017】
本発明はまた反応性金属ホルメートを熱分解することからなる、金属水素化物の形成方法を包含する。反応性の金属水素化物は次式:
(R')n(R'')m(X) 3-n-mSn(H)
〔式中R'はアルキル基であり;R''はアリール又はポリマー主鎖に結合したアリール基であり;XはF、Cl、Br又はIであり;nは0、1、2又は3であり、mは0、1、2又は3であり;n+m≦である〕の化合物であり得る。
【0018】
本発明はまたBH3NH3及びBH3とアミン化合物とを含有する関連材料を形成する方法を包含する。本法は、モノヒドリドホウ素化合物を選択した配位子と反応させ、これによってモノヒドリドホウ素化合物はBH3含有化合物に不均化するものとし;その後にBH3含有化合物をアンモニアと反応させることを包含する。
【0019】
本発明はまたボラン類に還元するのに適当なハロ−ホウ素化合物を形成する方法を包含する。本法は、アルコラート−ホウ素化合物、カテコラトホウ素化合物、アミノ−ホウ素化合物及びアニリノ−ホウ素化合物よりなる群から選んだホウ素化合物を次式HX(但しXはハロゲンよりなる群から選ばれる)の化合物と反応させ;しかる後に生成物のハロ−ホウ素化合物を分離することを包含する。
【0020】
本発明はまたボラン類に還元するのに適当なハロ−ホウ素化合物を形成する方法を包含する。本法はアルコラート−ホウ素化合物、カテコラト−ホウ素化合物、アミノ−ホウ素化合物及びアニリノ−ホウ素化合物よりなる群から選んだホウ素化合物を酸化剤と反応させ、該酸化剤は対応のハロ−ホウ素化合物又はホウ素化合物のハライド塩よりなるものとし;しかる後に生成物のハロ−ホウ素化合物を分離することを包含する。
【0021】
本発明はまたBH含有化合物の合成方法を包含する。本法は、ホウ素含有前駆体から少なくとも1つのハロ−ホウ素化合物を合成し;少なくとも1つのハロ−ホウ素化合物を無機水素化物材料と反応させ、これによって少なくとも1つのB−H化合物を生成することを包含する。
【0022】
本明細書に組入れた添附の図面は本発明の具体例を例示するものであり、本明細書の記載と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0023】
本発明は、水素を貯蔵するのに用いられるボラン類(即ち少なくとも1つのB−H結合を有する化合物)を合成するエネルギー効率的方法を提供する。これらのボラン類は現在の方法よりもかなり少ない反応熱で製造される。関連する利点はボラン類が、熱の急冷及び迅速な分離の必要なしに且つ活性金属水素化物を生成するエネルギー経費なしに周囲温度近くで製造し得ることである。消費したボラン基質の水素貯蔵材料は近隣の設備で再生でき、しかも再生した材料は輸送燃料として用いるのに再分散できる。本発明を用いて、再生は唯一の消費した資源として電力を必要とし得る。本発明は輸送のため水素貯蔵用のボラン類をあまねく使用できる。
【0024】
本発明の手段により合成したボラン類は、化学的な還元剤として又は化学的な水素貯蔵媒体として次後に用いるためのボロハイドライド化合物に転化するための原料としても使用できる。
【0025】
図1a〜dはジボラン(B2H6)の製造に関する本発明の具体例の図解図を示す。図1aはシラン(Si−H材料即ちケイ素−水素結合を有する材料)をハロ−ホウ素化合物、三塩化ホウ素(BCl3)に暴露する製造の一部を示す。図1bはジボランの形成及びSi−H材料のハロシラン(Si−X材料但しXはハロゲンである)への転化を示す。図1bに示したハロシランはクロロシラン(Si−Cl材料即ちSi−Cl結合を有する材料)である。図1c〜dはハロシラン材料をシランに戻す電気化学的な転化を示す。この具体例では、電気化学的エネルギーは還元電位を提供してボラン(この場合にはジボラン)を形成し、ケイ素含有電極は本質的に本法の電気触媒(electrocatalyst)となる。原則として、消費したエネルギーはボラン類を形成するのに必要とされる熱力学的最低量に近く、本発明を用いて、既知方法で用いるよりも少ないエネルギーが消費される。この具体的方法はボラン化合物を輸送用の大規模水素貯蔵に実用とさせ得る効率に近づく。
【0026】
図1a〜dに示した具体例で用いたシランは、例えば電気活性の水素(H)原子を含有する液体媒質(例えば水)中にしかもケイ素含有電極上の表面キャップした基を水素で置換するに十分な陰極電位下で高表面積のケイ素含有電極を浸漬することにより形成できる。次いでSi−H結合が表面上に残るような条件下で電極を乾燥させ、これは酸素の除外を必要とし得る。次いで乾燥した電極を、蒸気として又は不活性溶剤に溶かしたBCl3に暴露する。ジボラン(B2H6)が形成され且つこれを分離し、ケイ素含有電極を再水素化物とする(re−hydrided)。
【0027】
別の電気化学的反応又はプロセスを、ハロシランをシランに戻して転化させるのに用い得ることは理解すべきである。
【0028】
亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、カドミウム、水銀及びこれらの組合せを包含するがこれらに限定されない別の材料もケイ素の代りに用い得ることも理解すべきである。
【0029】
他のハロ−ホウ素化合物(即ち少なくとも1つのホウ素−ハロゲン結合を含有するホウ素の化合物)もBCl3に加えて用い得ることも理解すべきである。(カテコラト)(catecholato)BClはボラン廃燃料から製造するのがより容易であり得るハロ−ホウ素化合物の1例である。水素化物としたケイ素電極(BCl3具体例について前記した通り)上に(カテコラト)BClを通過させると、(カテコラト)BClの(カテコラト)BHへの転化が得られる。次いで(カテコラト)BHは不均化され(トリフェニルホスフィン、ジエチルアニリン又は不均化反応を促進し得る或る別の反応剤を用いる)、BH3含有化合物及びB2(カテコラト)3が形成される。本法を続行するのに、B2(カテコラト)3を(カテコラト)BClに戻して転化する。B2(カテコラト)3を(カテコラト)BClに戻す転化は例えば、B2(カテコラト)3を上昇した温度でHClと反応させ、生成物のカテコール(catechol)を生成物の(カテコラト)BClから分離することにより行ない得る。この転化はまたB2(カテコラト)3を塩素(又は別の適当な酸化剤)と反応させて(カテコラト)BClとキノン(カテコールの酸化生成物)とを形成することにより実施し得る。
【0030】
用い得る別のハロ−ホウ素化合物には、(アミノ)2BCl及び(アミノ)BCl2(但し「アミノ」はホウ素に結合した第1級又は第2級アミン官能価を含有する有機基である)がある。かかる(アミノ)2BCl化合物の例には(Me2N)2BCl、ピペリジノ)2BCl、(NHCH2CH2NH)BCl、(o−NHC6H4NH)BClがあるが、これらに限定されない。これらのハロ−ホウ素化合物は水素化物としたケイ素電極と反応して又はより一般的にはSi−H結合(又はSn−H結合又は亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、カドミウム又は水銀に結合したH原子)を有する化合物と反応して(アミノ)2BH化合物を形成できる。(アミノ)2BH化合物は次いで不均化反応してBH3含有化合物及び (アミノ)3B化合物を形成できる。本法を持続するのに、(アミノ)3B化合物は、これをHCl又は別の酸と又は塩素又は別の酸化剤と反応させ次いで生成物の(アミノ)2BCl化合物を、対応の第1級又は第2級アミンのハイドロクロリド塩を包含し得る別の反応生成物から分離することにより(アミノ)2BCl化合物に戻して転化し得る。
【0031】
図2は(カテコラト)BHを製造することに関する本発明の具体例の図解図を示す。この具体例では、ポリマー主鎖に結合した(アリール)(ジアルキル)(クロロ)錫基をギ酸と反応させて対応のポリマー結合した(アリール)(ジアルキル)(ホルマト)錫材料を製造し、これを熱分解してCO2と対応のスタナン、ポリマー結合した(アリール)(ジアルキル)(ハイドリド)錫材料とを形成する。(カテコラト)B−Clはスタナンと反応して(カテコラト)B−Hを製造し且つポリマー結合した(アリール)(ジアルキル)(クロロ)錫材料を再生する。
【0032】
別の具体例においては、スタナン例えば図2に示したポリマー担持した錫反応剤を用いてBCl3をB2H6に転化させる。用いた工程は同様である;BCl3をB2H6に転化するには、ポリマー結合した錫反応剤を室温でギ酸と反応させて塩酸(HCl)とポリマー結合した(アリール)(ジアルキル)(ホルマト)錫材料とを形成する。形成するHClを用いて廃ボラン燃料をBCl3に転化する。(アリール)(ジアルキル)(ホルマト)錫材料を約120℃〜約180℃の範囲の温度に加熱して脱カルボキシル化を駆動させ、CO2を放出し且つポリマー結合した(アリール)(ジアルキル)(ヒドリド)錫材料とCO2とを形成する。
【0033】
放出したCO2をH2と反応させてギ酸を得る。ポリマー結合した(アリール)(ジアルキル)(ヒドリド)錫材料をBCl3と反応させてジボランを形成し且つポリマー結合した(アリール)(ジアルキル)(クロロ)錫材料を再生する。CO2及びHClは全体のプロセスで再循環できるので、正味の転化は;
廃ボラン燃料+H2=新鮮なB−H燃料
であり、しかもポリマー担持した錫材料は再循環可能なプロセス中間体として役立つ。全体の正味の転化は吸熱反応であり、エネルギーを必要とし、これは120〜180℃で(アリール)(ジアルキル)(ホルマト)錫材料の吸熱性脱カルボキシル化によって提供される。この具体例は、約600℃への加熱を必要とするBCl3の直接水添よりも有意義な程に良いプロセスを提供する。
【0034】
図2はポリスチレン主鎖に基づいた単一の具体例を示すけれども、別のポリアルケン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリエーテル、シクロアルケンモノマーのROMP(開環複分解重合)ポリマー生成物、ポリスルフィド、ポリホスファゼン、ポリボラゼン、ポリアニリン、ポリシラン及びこれらの材料の分枝した架橋した及びアルキル−及びアリール置換したポリマー及びコポリマー(例えば架橋したポリエチレン)を含めて但しこれらに限定されないが別のポリマー主鎖を本発明で用い得ることは理解すべきである。
【0035】
より一般的な具体例では、ハロ−ホウ素化合物(好ましくはB−Cl化合物)をスタナン(例えばトリブチル錫ハイドライド)と反応させてハロ−ホウ素化合物をボランに転化する。スタナンをハロ−スタナン(錫−ハロゲン結合好ましくはSn−Cl結合を有する錫化合物)に転化させる。スタナンはハロ−スタナンを無機金属水素化物と反応させることにより再生する。スタナンはまた、ケイ素基質の経路(上記参照)と同様な電気化学的手段により、あるいはハロ−スタナンをホルメートと反応させてSn−ホルメート化合物を形成し、次いで次後にSn−ホルメートと反応させてSn−ホルメート化合物を形成し、次いで次後にSn−ホルメート化合物を熱分解することにより再生できる。
【0036】
別のスタナン(例えば水素化物として錫含有電極)は1つ又はそれ以上のハロ−ホウ素化合物と反応して、ハロ−ホウ素化合物をボラン及びハロスタナンに転化させ得る。ハロスタナンはホルメート交換及び前述の熱分解によりあるいはスタナンを形成する電気化学手段(前記のケイ素基質経路と同様)により再−水素化物とさせ得る。
【0037】
追加の具体例は次の実施例で提供される。
【0038】
実施例1
トリエチルシラン(0.2ml)をBCl3の溶液(2mlのCD2Cl2中の0.2gのBCl3)に添加する。得られる溶液は核磁気共鳴(NMR)分光法により監視する。3分後に全てのBCl3は反応した。存在する唯一のホウ素含有生成物はB2H6である。
【0039】
実施例2
トリブチル錫水素化物(0.3g)をBCl3の溶液(2mlのCD2Cl2中の0.2gのBCl3)に添加する。得られる溶液はNMRにより監視する。30分後に全てのBCl3は消費され、存在する唯一のホウ素含有生成物はB2H6である。
【0040】
実施例3
調整したての水素化物としたケイ素表面を、ヘキサン中のBCl3の溶液に暴露する。該溶液を30分間ケイ素表面と接触させておく。ケイ素表面を赤外分析するとケイ素水素化物は塩化ケイ素に転化されたことを示す。推論により、塩化ホウ素は水素化ホウ素に転化される。
【0041】
実施例4
調製したての水素化物としたケイ素表面を、ヘキサン中のBBr3の溶液に暴露する。該溶液を30分間ケイ素表面と接触させておく。ケイ素表面を赤外分析すると水素化ケイ素が臭化ケイ素に転化されたことを示す。推論により、臭化ホウ素は水素化ホウ素に転化される。
【0042】
実施例5
仮説の実施例においては、アミノボランを脱水素化しカテコールリガンドと結合させて生成物を形成する。この生成物を溶剤に溶解させて溶液を形成する。トリブチル錫水素化物を該溶液に添加する。トリブチル錫水素化物とこの溶解した生成物との間で複分解反応が生起して水素化ホウ素を形成する。
【0043】
実施例6
仮説の実施例において、アミノボランを脱水素化しカテコールリガンドと結合させて生成物を形成する。この生成物を溶剤に溶解させて溶液を形成する。トリエチルシランを該溶液に添加する。トリエチルシランとこの溶解した生成物との間で複分解反応が生起して水素化ホウ素を形成する。
【0044】
実施例7
仮説の実施例において、アミノボランを脱水素化しカテコールリガンドと結合させて生成物を形成する。この生成物を溶剤に溶解して溶液を形成する。新たに水素化物としたケイ素片を該溶液に添加する。
【0045】
表面上の水素化ケイ素とこの溶解した生成物との間で複分解反応が生起して水素化ホウ素を形成する。
【0046】
実施例8
仮説の実施例において、アミノボランを脱水素化しカテコールリガンドと結合させて生成物を形成する。この生成物を溶剤に溶解して溶液を形成する。水素化物表面を有するチタン片を該溶液に添加する。水素化チタンとこの溶解した生成物との間で複分解反応が生起して水素かホウ素を形成する。
【0047】
本発明の前記の記載は説明および描写の目的で提示されているものであり、徹底的に論じたり又は開示した正確な形に本発明を限定すると意図するものでなく、明らかに多数の改良及び変更が前記の教示から可能である。
【0048】
本発明の原理及びその実際の応用を最良に説明するために、これによって想定される特定の使用に適合する如く種々の具体例で且つ種々に変更しながら当業者が本発明を最良に利用し得るように、具体例は選択され且つ記載される。本発明の範囲は特許請求の範囲に特定されると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1a〜dはジボラン(B2H6)のエネルギー効率的な製造の具体例の図解図を示す。図1aはシラン(Si−H結合を有する材料)を三塩化ホウ素(BCl3)に暴露させた製造の一部を示す。図1bはジボランの形成及びシランのクロロシラン(Si−Cl結合を有する材料)への転化を示し、図1c〜dはクロロシランをシランに戻す電気化学的な転化を示す。
【図2】図2はポリマー担持した錫反応剤を用いて(カテコラト)BHのエネルギー効率的製造の具体例の図解図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程;ホウ素含有前駆体から少なくとも1つのハロ−ホウ素化合物を合成し;
少なくとも1つのハロ−ホウ素化合物を無機水素化物材料と反応させ、これによって少なくとも1つのB−H化合物を生成し;且つ
少なくとも1つのB−H化合物を不均化反応させて少なくとも1つのBH3−含有化合物とすることからなる、BH3−含有化合物の製造方法。
【請求項2】
少なくとも1つのハロ−ホウ素化合物を無機水素化物材料と反応させる工程前に、電気化学的反応により無機水素化物材料の表面上に水素化物種を有する無機水素化物材料を形成する工程を更に含有してなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
無機水素化物材料はケイ素、錫、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、カドミウム、水銀、又はこれらの組合せを含有する重合体状材料よりなり、その際水素化物種の分布は別の金属水素化物との反応により又はホルメートとの交換及び次後の熱分解により形成される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
無機水素化物材料はケイ素、錫、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、カドミウム、水銀又はこれらの組合せを含有する請求項1記載の方法。
【請求項5】
無機水素化物材料は電極よりなる請求項1記載の方法。
【請求項6】
無機水素化物材料は電極よりなる請求項4記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのハロ−ホウ素化合物はクロロ−ホウ素化合物よりなる請求項1記載の方法。
【請求項8】
反応性の金属ホルメートを熱分解することからなる、金属水素化物の製造方法。
【請求項9】
金属水素化物は次式;
(R')n(R'')m(X) 3-n-mSn(H)
(式中R'はアルキル基であり、R''はアリール基又はポリマー主鎖に結合したアリール基であり、XはF、Cl、Br又はIであり;nは0、1、2又は3であり;mは0、1、2又は3であり;n+m≦3である)
の化合物である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
金属水素化物はR3SnH、R2XSnH、RX2SnH及びX3SnH(但しRはアルキル及びアリール基から選ばれ、Xはハロゲンから選ばれる)よりなる群から選んだ式の化合物である請求項8記載の方法。
【請求項11】
モノヒドリドホウ素化合物を選択した配位子と反応させ、これによってモノヒドリドホウ素化合物は不均化反応を生起してBH3−含有化合物となり;その後
BH3−含有化合物をアンモニアと反応させることから成る、BH3NH3及びBH3とアミン化合物とを含有する類縁材料の製造方法。
【請求項12】
アルコラート−ホウ素化合物、カテコラート−ホウ素化合物、アミノ−ホウ素化合物及びアニリノ−ホウ素化合物よりなる群から選んだホウ素化合物を次式HX
(但しXはハロゲンよりなる群から選ばれる)の化合物と反応させ;その後
生成物のハロ−ホウ素化合物を分離することからなる、ボラン類への還元に適当なハロ−ホウ素化合物の製造方法。
【請求項13】
アルコラート−ホウ素化合物、カテコラート−ホウ素化合物、アミノ−ホウ素化合物及びアニリノ−ホウ素化合物よりなる群から選んだホウ素化合物を酸化剤と反応させ、該酸化剤は対応のハロ−ホウ素化合物又はホウ素化合物のハライド塩を含有するものであり;その後
生成物のハロ−ホウ素化合物を分離することからなる、ボラン類への還元に適当なハロ−ホウ素化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−525939(P2009−525939A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554379(P2008−554379)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/003511
【国際公開番号】WO2007/092601
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(507128229)ロス アラモス ナショナル セキュリティ,リミテッド ライアビリテイ カンパニー (9)