ボルト、および、ボルトの製造方法
【課題】おねじの疲労強度を確実に改善すること。
【解決手段】この発明は、ニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトにおいて、少なくともおねじの表面には、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部が設けられていて、表面硬化部は、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒を少なくともおねじの表面に当てる加工処理により設けられている。また、この発明は、ニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトの製造方法において、おねじを形成する切削加工の工程と、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与されるように、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒を少なくともおねじの表面に当てて表面硬化部を設ける加工処理の工程と、からなる。
【解決手段】この発明は、ニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトにおいて、少なくともおねじの表面には、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部が設けられていて、表面硬化部は、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒を少なくともおねじの表面に当てる加工処理により設けられている。また、この発明は、ニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトの製造方法において、おねじを形成する切削加工の工程と、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与されるように、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒を少なくともおねじの表面に当てて表面硬化部を設ける加工処理の工程と、からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、おねじに繰り返し応力が発生するような部位に使用されることに対して有効であるボルト、および、そのボルトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
おねじに繰り返し応力が発生するような部位に使用されるボルトとしては、たとえば、ガスタービンのロータスピンドルボルトやエンジンクランクケースのスタッドボルトなどがある。以下、ガスタービンのロータスピンドルボルトについて図10および図11を参照して説明する。
【0003】
図10において、符号「100」は、ガスタービンの圧縮機のロータである。前記ロータ100は、ロータスピンドルボルト(ガスタービン用締結ボルト)すなわちボルト101およびナット102により締結されている多数枚のディスク103と、前記多数枚のディスク103に固定されている動翼104と、から構成されている。なお、前記多数枚のディスク103は、周方向にほぼ等間隔に配置されている複数本の前記ボルト101および複数個の前記ナット102により、締結されている。
【0004】
前記ロータ100においては、ガスタービンの起動や停止に伴って熱伸び差が発生したり、また、スラストや遠心力や自重たわみ状態での回転などにより変動荷重が加わって伸び縮みが発生したりするので、前記ボルト101および前記ナット102の締付力が変化する。このために、図11に示すように、前記ボルト101のおねじと前記ナット102のめねじとの噛み合い部、すなわち、ねじ噛み合い部105においては、変動応力(引っ張り応力や曲げ応力)が負荷される。そして、前記ねじ噛み合い部105に変動応力が負荷されると、前記ねじ噛み合い部105においては、摩耗や疲労損傷を起こし易くなる。そこで、前記ねじ噛み合い部105、特に、前記ボルト101のおねじの疲労強度(特に、フレッティング(フレッチング)疲労強度)を改善する必要がある。
【0005】
ねじ締結部材(たとえば、ボルトおよびナット、スタッドボルトなど)の疲労強度を改善した技術は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、従来のねじ締結部材のボルトについて説明する。従来のねじ締結部材のボルトは、めねじに嵌合するおねじを、引っ張り方向へ、先細状に整形したもの(特許文献1)である。また、ボルト首下丸み部を製品ボルト首下丸み部局率半径の1.2〜3.0倍の範囲のボルトを成形し、そのボルト首下丸み部に冷間加工を施して所定の曲率半径に整形加工したもの(特許文献2)である。
【0006】
ところが、前者(特許文献1)は、おねじを引っ張り方向に先細状に整形しておねじにかかる引張応力を均一化するものであって、おねじの表面硬度を上昇させかつおねじに圧縮残留応力を付与するものではない。このために、前者は、おねじの疲労強度を改善するには限界がある。また、後者(特許文献2)は、ボルト首下丸み部に冷間加工を施してボルト首下丸み部の表面硬度を上昇させかつボルト首下の丸み部に圧縮残留応力を付与するが、おねじの表面硬度を上昇させかつおねじに圧縮残留応力を付与するものではない。このために、後者も、前者と同様に、おねじの疲労強度を改善するには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭56−53651号公報
【特許文献2】特開平7−180714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする問題点は、従来のねじ締結部材のボルトでは、おねじの疲労強度を改善するには限界があるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、ニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトの少なくともおねじの表面に、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部を、設ける、ことを特徴とする。
【0010】
また、この発明は、表面硬化部が、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒をボルトの少なくともおねじの表面に当てる加工処理により、設けられている、ことを特徴とする。
【0011】
さらに、この発明は、ニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトのおねじを形成する切削加工の工程と、ボルトの少なくともおねじの表面に、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部を、設ける加工処理の工程と、からなる、ことを特徴とする。
【0012】
さらにまた、この発明は、ボルトの少なくともおねじの表面に表面硬化部を設ける加工処理が、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒をボルトの少なくともおねじの表面に当てる加工処理である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明のニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトは、少なくともおねじの表面に設けられている表面硬化部により、おねじの表面の硬度が上昇し、かつ、おねじの表面に圧縮残留応力が付与されることとなる。このために、この発明のボルトは、おねじの疲労強度を改善することができるので、おねじに繰り返し応力が発生するような部位に使用されることに対して有効である。
【0014】
また、この発明のボルトは、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒を少なくともおねじの表面に当てて、おねじの表面に表面硬化部を加工処理するものである。このために、この発明のボルトは、おねじの表面の硬度が上昇し、かつ、おねじの表面に圧縮残留応力が付与される一方、おねじの表面の粗さによりおねじの疲労強度の改善に対して影響を与えるようなことがない。この結果、この発明のボルトは、おねじの疲労強度を確実に改善することができる。
【0015】
さらに、この発明のニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトの製造方法は、切削加工工程で形成したおねじの表面に表面硬化部を加工処理工程で設けるものであるから、この表面硬化部により、おねじの表面の硬度が上昇し、かつ、おねじの表面に圧縮残留応力が付与されることとなる。このために、この発明のボルトの製造方法は、おねじの疲労強度を改善することができるので、おねじに繰り返し応力が発生するような部位に使用されることに対して有効であるボルトを製造することができる。
【0016】
さらにまた、この発明のボルトの製造方法は、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒を少なくともおねじの表面に当てて、おねじの表面に表面硬化部を加工処理するものである。このために、この発明のボルトの製造方法は、おねじの表面の硬度が上昇し、かつ、おねじの表面に圧縮残留応力が付与される一方、おねじの表面の粗さによりおねじの疲労強度の改善に対して影響を与えるようなことがない。この結果、この発明のボルトの製造方法は、おねじの疲労強度を確実に改善することができるボルトを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、この発明にかかるボルトの一実施例を示す一部拡大断面図である。
【図2】図2は、この発明にかかるボルトの製造方法の一実施例を示す説明図である。
【図3】図3は、耐疲労強度検証試験装置を使用した耐疲労強度検証試験の状態を示す説明図である。
【図4】図4は、従来品と本発明品1との耐疲労強度検証試験装置を使用した耐疲労強度検証試験の結果を示す説明図である。
【図5】図5は、粒径の大きさによる疲労強度の影響を示す説明図である。
【図6】図6は、照射回数による疲労強度の影響を示す説明図である。
【図7】図7は、照射距離による疲労強度の影響を示す説明図である。
【図8】図8は、ナットの製造方法の一実施例を示す説明図である。
【図9】図9は、ナットの試験片を使用したフレッティング疲労試験(フレッチング疲労試験)の実施の結果を示す説明図である。
【図10】図10は、ガスタービンのロータスピンドルボルトとして使用されている従来のボルトを示す説明図である。
【図11】図11は、ねじの噛み合い分を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明にかかるボルトの実施例のうちの1例、および、この発明にかかるボルトの製造方法の実施例のうちの1例を図1〜図7に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図1(A)は、ナットのめねじの構造を示す一部拡大断面図、図1(B)は、この実施例にかかるボルトのおねじの構造を示す一部拡大断面図である。図2(A)は、この実施例にかかるボルトの製造方法の表面硬化部の加工処理工程の一例を示す説明図、図2(B)は、表面硬化部の加工処理の一条件を示す説明図である。
【実施例】
【0019】
まずは、この発明にかかるボルトの一実施例について説明する。図1(B)において、符号「1」は、この実施例にかかるボルトである。前記ボルト1は、たとえば、ニッケル系の超合金から構成されている。なお、前記ボルト1としては、ニッケル系の超合金のほかに、たとえば、鉄、低合金鋼、ステンレス、その他の超合金から構成されているものであっても良い。また、前記ボルト1は、頭部と、軸部と、ねじ部と、が切削加工により構成されている。前記ねじ部の外面には、有効径dのおねじ10が切削加工により形成されている。そして、前記ボルト1の少なくともおねじ10の表面には、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部11が、設けられている。
【0020】
前記表面硬化部11は、メッシュサイズ#150、すなわち、目が100μm×100μmのメッシュを通過し得る粒径以下の粒を、前記ボルト1の少なくともおねじ10の表面に当てる加工処理、たとえば、ショットブラストやショットピーニングなどにより、設けられている。
【0021】
以下、この発明にかかるボルトの製造方法の一実施例について図2(A)および(B)を参照して説明する。まず、切削加工の工程において、ボルト1の頭部と軸部とねじ部とを構成し、かつ、ねじ部の外面に有効径dのおねじ10を形成する。つぎに、加工処理の工程において、ボルト1の少なくともおねじ10の表面に、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部11を、設ける。
【0022】
前記の加工処理の工程は、メッシュサイズ#150、すなわち、目が100μm×100μmのメッシュを通過し得る粒径以下の粒を、ボルト1の少なくともおねじ10の表面に当てる加工処理の工程、たとえば、ショットブラストやショットピーニングなどにより、行われる加工処理の工程である。
【0023】
前記の加工処理の工程は、図2(A)および(B)に示すような条件において、表面硬化部11を加工処理する。すなわち、ボルト1のおねじ10をボルト1の軸心回りに回転させる速度であるボルトネジ歯周速(S)が80mm/s、ブラストガン13をボルト1の軸心に対して平行に移動させる速度であるブラストガン移動速度(V)が8mm/s、ブラストガン13からボルト1のおねじ10までの距離である照射距離(L)が500mm、ブラストガン13からブラスト材をボルト1のおねじ10に当てる力であるブラスト材供給圧(P)が0.55MPa、ブラストガン13からボルト1のおねじ10に当てるブラスト材の粒径がメッシュサイズ#150(目が100μm×100μm)のメッシュを通過し得る粒径以下である。
【0024】
この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1は、たとえば、図10に示すようなガスタービンのロータスピンドルボルト、または、エンジンクランクケースのスタッドボルトとして使用することができる。すなわち、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1は、おねじ10に繰り返し応力が発生するような部位に使用されるボルトとして有効である。
【0025】
以下、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1の有効性について、図3に示す耐疲労強度検証試験装置3を使用した耐疲労強度検証試験に基づいて説明する。
【0026】
前記耐疲労強度検証試験装置3の台座30の横孔31中に試験用のボルト1を通す。前記ボルト1の一端もしくは両端にナット2を締め付けて、前記ボルト1を前記台座30に所定の引張荷重で固定する。また、前記台座30の竪孔32に押し棒33を通して前記ボルト1に当てる。さらに、前記ボルト1に応力計測器34を試験部分35の近傍に設ける。前記応力測定器34は、前記試験部分35に亀裂が生じたか否かを判断するための測定器であって、測定値が急激に変化したときには前記試験部分35に亀裂が生じたことを示す。そして、室温大気中の試験環境下において、前記押し棒33で前記ボルト1に所定の繰返し曲げ荷重を与えて前記ボルト1の試験部分35(ボルト1の歯面やねじ底)の疲労試験を行う。なお、前記所定の引張荷重は、前記ボルト1が塑性変形する荷重の約3分の2の荷重であり、また、所定の繰返し曲げ荷重は、前記ボルト1が塑性変形する荷重の約2〜2.5%の荷重である。
【0027】
前記耐疲労強度検証試験装置3を使用した耐疲労強度検証試験の結果を図4に示す。なお、図4の縦軸は、前記押し棒33によりボルトに与えた所定の繰返し曲げ荷重の回数を示す。この図4に示すように、従来品(従来のボルト)は、所定の繰返し曲げ荷重の回数が約6.3×10の6乗回のときに、前記試験部分に亀裂が生じた。これに対して、本発明品1(この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1)は、所定の繰返し曲げ荷重の回数が約1.2×10の7乗回を超えても、前記試験部分35に亀裂が発生していない。すなわち、本発明品1は、従来品に比較して約2倍以上の疲労強度が得られることとなる。因みに、試験片を使用したフレッティング疲労試験(フレッチング疲労試験)、すなわち、移動試験片を接触片で一定の面圧となるように挟み、局所の応力振幅を与える試験の実施の結果、本発明品1の試験片が従来品の試験片と比較して約10倍以上の疲労強度が得られた。
【0028】
以上から明らかなように、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1は、従来のボルトと比較して約2倍以上の疲労強度が得られるので、図10に示すようなガスタービンのロータスピンドルボルト、または、エンジンクランクケースのスタッドボルトなど、おねじ10に繰り返し応力が発生するような部位に使用されるボルトとして有効である。
【0029】
ここで、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法において、粒(ブラスト材)を少なくともおねじ10の表面に当てて、その少なくともおねじ10の表面に、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部11を、加工処理により設けているものである。前記表面硬化部11を前記の加工処理により設ける場合において、最も重要な要因となるのは、少なくともおねじ10の表面に当てる粒(ブラスト材)の粒径である。
【0030】
すなわち、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法においては、疲労強度を向上させるために、少なくともおねじ10の表面の「硬度向上」と「圧縮残留応力の付与」とを目的とするものである。ところが、少なくともおねじ10の表面に当てる粒の粒径により、少なくともおねじ10の表面の「粗さ」が変化してねじ底の疲労強度に大きく影響する。
【0031】
以下、粒径の大きさによる疲労強度の影響を図5を参照して説明する。図5に示すように、少なくともおねじ10の表面の「表面硬さ向上」と「圧縮応力付与」とは、粒径の大きさにより影響を受けない。一方、少なくともおねじ10の表面の「表面粗さ」は、粒径の大きさにより影響を受ける。すなわち、メッシュサイズ#46(目が355μm×355μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)、メッシュサイズ#80(目が180μm×180μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)、メッシュサイズ#100(目が150μm×150μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)の粒径の場合、少なくともおねじ10の表面の「表面粗さ」が大きくなり、ねじ底の疲労強度が図4に示す従来品と大差がない。一方、メッシュサイズ#150(目が100μm×100μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)、メッシュサイズ#360(目が70μm×70μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)の粒径の場合、少なくともおねじ10の表面の「表面粗さ」が小さくなり、図4に示す本発明品1とほぼ同様のねじ底の疲労強度が得られる。
【0032】
このように、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法においては、メッシュサイズ#150(目が100μm×100μm)のメッシュを通過し得る粒径以下、好ましくは、メッシュサイズ#150(目が100μm×100μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)、メッシュサイズ#360(目が70μm×70μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)の粒径のブラスト材を少なくともおねじ10に当てるものである。
【0033】
次に、ブラスト材による加工処理の条件として、ブラスト材の粒径に次いで重要な要因として、ブラスト材の照射回数およびブラストガンからおねじまでの照射距離(L)がある。以下、ブラスト材によるボルト1のおねじ10に対する照射回数およびブラストガンからおねじまでの照射距離(L)による疲労強度への影響を、図6および図7を参照して説明する。
【0034】
図6は、ブラスト材の照射回数と残留応力および表面粗さの関係を示すものである。横軸は照射回数を示し、左側縦軸は圧縮残留応力、右側縦軸はおねじ表面の表面粗さ(Rmax)を示している。圧縮残留応力は縦軸上方ほど大きく、縦軸下方ほど小さくなることを表している。
【0035】
図6では、図2(B)に示す条件で、ブラスト材の粒径メッシュサイズ#150で、照射回数を変えて加工処理した結果を示す。この条件下で照射回数4回の条件により得られたボルトは、図4に示す本発明品1と同様の疲労強度が得られた。この場合の圧縮残留応力および表面粗さを基準値として選択している。縦軸の目盛は、基準値を100としてパーセントで表示している。
【0036】
ここで、ブラスト材の照射回数の意味を説明する。図2(A)に示す加工方法では、ボルトを回転させつつブラスト材をボルト1のおねじ10の外表面に照射しながら、同時にブラストガンが軸方向に移動する。ガンはおねじの末端に達したら反転し、引き続きブラスト材を照射しつつ逆方向に移動する。ガンがこの反復運動を繰り返して、おねじ表面の加工処理が行われる。照射回数とは、ブラスト材が同一表面に照射される回数(頻度)を示している。
【0037】
図7は、ブラストガンからおねじまでの照射距離と圧縮残留応力および表面粗さの関係を示している。横軸は照射距離を示し、縦軸は図6と同様である。また、図7は、加工条件として照射回数を4回に固定し、その他の条件は図6と同じ条件を選定して、照射距離を変えて加工処理した結果を表している。基準値および縦軸の考え方は図6と同様である。
【0038】
図6によれば、照射回数が2回では、圧縮残留応力が基準値に対して大幅に不足し、照射回数が4回で基準値に達する。更に、照射回数が6回では若干の圧縮残留応力の増加が認められる。一方、照射回数が2〜4回では表面粗さに大きな変化はないが、照射回数6回では若干表面粗さが増加する。照射回数が6回を上まわると、表面粗さは急激に増加する。
【0039】
図7によれば、照射距離が200mmでは圧縮残留応力が基準値に対して不足し、表面粗さが大幅に上まわっている。照射距離が500mmでは、圧縮残留応力および表面粗さともに、基準値を満足している。照射距離が750mmでは、圧縮残留応力および表面粗さともに基準値に対して若干低下する。しかし、照射距離が750mmを上まわる領域では、圧縮残留応力が著しく低下する。
【0040】
図6および図7によれば、4回〜6回の照射回数であれば圧縮残留応力が基準値を上回る一方、表面粗さの変化は比較的小さく、表面粗さの増加に伴う疲労強度への影響はほとんどない。また、照射距離が500〜750mmでは、圧縮残留応力がほぼ基準値に達し、照射距離を増加させても圧縮残留応力の低下は比較的小さい。すなわち、照射回数を増加させれば圧縮残留応力も増加するが、照射回数が6回を越えると表面粗さが大きくなりすぎて、疲労強度の低下を招く。一方、照射距離は小さい方が圧縮残留応力は大きくなるが、表面粗さも同時に大きくなるため、逆に疲労強度は低下する。また、照射距離が750mmを越える場合には、ブラスト加工処理の効果が薄くなり、疲労強度は上がらない。従って、加工条件としては、照射回数で4〜6回、照射距離で500〜750mmを選定するのが望ましい。なお、この加工条件の下では、表面硬化部の表面硬度はボルトの母材以上の硬度が確保できている。
【0041】
また、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法において、少なくともおねじ10の表面に当てる粒の材質としては、錆びない非鉄材、たとえば、アルミナ(Al2O3)、シリコンカーバイド(SiC)、シリカ(SiO2)を使用する。
【0042】
以下、この発明にかかるボルトとともにねじ締結部材を構成するナットおよびそのナットの製造方法について図1および図8および図9を参照して説明する。図8(A)は、ボルトのおねじの表面粗さおよびナットのめねじの表面粗さを示す一部拡大断面図、図8(B)は、ナットのめねじの構造を示す一部拡大断面図である。
【0043】
図1(A)において、符号「2」は、ナットである。前記ナット2は、たとえば、鋼製から構成されている。また、前記ナット2は、ねじ孔が切削加工により構成されている。前記ねじ孔の内面には、めねじ20が切削加工により形成されている。前記ナット2のめねじ20の表面には、硬度が前記ナット2の母材よりも低い表面軟質皮膜部21が、設けられている。
【0044】
前記表面軟質皮膜部21は、たとえば、Cu−Ni−In溶射コーティング、サーメテルWコーティング、銀メッキ、銅メッキなどにより設けられている。図8(A)および(B)に示すように、前記表面軟質皮膜部21の厚さ(膜厚)Tは、前記ボルト1のおねじ10の表面12の粗さの最大値T1と前記ナット2のめねじ20の表面22の粗さの最大値T2との和よりも大きくする。この結果、前記ボルト1のおねじ10と前記ナット2のめねじ20とをねじ込んだ際に、前記ボルト1のおねじ10の表面12と前記ナット2のめねじ20の表面22とが前記表面軟質皮膜部21から露出して相互に接触することがない。
【0045】
前記表面軟質皮膜部21の厚さTにより、前記ナット2のめねじ20の有効径を変更させる必要がある。すなわち、前記ナット2において、前記表面軟質皮膜部21を設ける場合のめねじ20の有効径D0(すなわち、母材のめねじの有効径D0)を、前記表面軟質皮膜部21を設けない場合のめねじ20の有効径D(すなわち、完成品のめねじの有効径D)に対して、前記表面軟質皮膜部21の厚さTとほぼ同等の寸法分大きくする必要がある。
【0046】
一方、前記表面軟質皮膜部21の厚さTを大きくし過ぎると、完成品のめねじの有効径Dに対して母材のめねじの有効径D0が大きくなり過ぎて、本来あるべきねじ山が小さくなり過ぎるので、強度不足となる虞がある。このために、前記表面軟質皮膜部21の厚さTは、本来あるべきねじ山が小さくなり過ぎて強度不足とならない程度(X)を最大値とする。この結果、前記表面軟質皮膜部21の厚さTは、以下の範囲となる。すなわち、T1+T2<T<(X)となる。前記表面軟質皮膜部21の厚さTは、ねじの公差により異なり、たとえば、ねじ2級公差の場合(2級の嵌めあいの場合)、約25μm程度である。
【0047】
以下、図1(A)に示すナット2の製造方法の一例について図8(A)および(B)を参照して説明する。まず、切削加工の工程において、ナット2のねじ孔を構成し、かつ、このねじ孔の内面にめねじ20を形成する。このめねじ20の有効径D0は、完成品のめねじの有効径Dよりも表面軟質皮膜部21の厚さT分ほど大きい。つぎに、加工処理の工程において、ナット2のめねじ20の表面に、硬度がナット2の母材よりも低い表面軟質皮膜部21を、たとえば、Cu−Ni−In溶射コーティング、サーメテルWコーティング、銀メッキ、銅メッキなどにより設ける。
【0048】
図1(A)に示すナット2、および、図8(A)および(B)に示すナットの製造方法により製造されたナット2は、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1とほぼ同様に、たとえば、図10に示すようなガスタービンのロータスピンドルボルト、または、エンジンクランクケースのスタッドボルトにねじ込まれるナットとして使用することができる。すなわち、図1(A)に示すナット2、および、図8(A)および(B)に示すナットの製造方法により製造されたナット2は、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1とほぼ同様に、ボルト1のおねじ10とナット2のめねじ20との噛み合い部に繰り返し応力が発生するような部位に使用されるナットとして有効である。
【0049】
以下、図1(A)に示すナット2、および、図8(A)および(B)に示すナットの製造方法により製造されたナット2の有効性について、図9に示す試験片を使用したフレッティング疲労試験(フレッチング疲労試験)、すなわち、移動試験片を接触片で一定の面圧となるように挟み、局所の応力振幅を与える試験の実施の結果を示す説明図に基づいて説明する。
【0050】
図9の縦軸は、破損繰返し数を示す。この図9に示すように、従来品(従来のナット)は、破損繰返し数が約1.1×10の6乗回のときに破損が生じた。これに対して、本発明品2(図1(A)に示すナット2、および、図8(A)および(B)に示すナットの製造方法により製造されたナット2であって、表面軟質皮膜部21がメッキの場合)は、破損繰返し数が約1.4×10の6乗回のときに破損が生じた。また、本発明品3(図1(A)に示すナット2、および、図8(A)および(B)に示すナットの製造方法により製造されたナット2であって、表面軟質皮膜部21がCu−Ni−In溶射コーティングの場合)は、破損繰返し数が約1.1×10の7乗回を超えても破損が発生していない。すなわち、本発明品2、3のナットは、従来品のナットに比較して十分な疲労強度が得られることとなる。
【0051】
このように、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1を使用することにより、図10に示すようなガスタービンのロータスピンドルボルトなど、ボルト1のおねじ10に繰り返し応力が発生するような部位に使用されるボルトとして有効である。さらに、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1と、図1(A)に示すナット2、および、図8(A)および(B)に示すナットの製造方法により製造されたナット2とを使用することにより、図10に示すようなガスタービンのロータスピンドルボルトおよびナットなど、ボルト1のおねじ10とナット2のめねじ20との噛み合い部に繰り返し応力が発生するような部位に使用されるボルトおよびナットとしてさらに有効である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明にかかるボルトおよびこの発明にかかるボルトの製造方法は、おねじに繰り返し応力が発生するような部位に使用されるボルトおよびボルトの製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 ボルト
10 おねじ
11 表面硬化部
12 おねじの表面
13 ブラストガン
2 ナット
20 めねじ
21 表面軟質皮膜部
22 めねじの表面
3 耐疲労強度検証試験装置
30 台座
31 横孔
32 縦孔
33 押し棒
34 応力計測器
35 試験部分
d おねじの有効径
D 完成品のめねじの有効径
D0 母材のめねじの有効径
T 表面軟質皮膜部の厚さ
T1 おねじの表面粗さの最大
T2 めねじの表面粗さの最大
S ボルトネジ歯周速
V ブラストガン移動速度
L 照射距離
P ブラスト材供給圧
100 ロータ
101 ボルト
102 ナット
103 ディスク
104 動翼
105 ねじ噛み合い部
【技術分野】
【0001】
この発明は、おねじに繰り返し応力が発生するような部位に使用されることに対して有効であるボルト、および、そのボルトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
おねじに繰り返し応力が発生するような部位に使用されるボルトとしては、たとえば、ガスタービンのロータスピンドルボルトやエンジンクランクケースのスタッドボルトなどがある。以下、ガスタービンのロータスピンドルボルトについて図10および図11を参照して説明する。
【0003】
図10において、符号「100」は、ガスタービンの圧縮機のロータである。前記ロータ100は、ロータスピンドルボルト(ガスタービン用締結ボルト)すなわちボルト101およびナット102により締結されている多数枚のディスク103と、前記多数枚のディスク103に固定されている動翼104と、から構成されている。なお、前記多数枚のディスク103は、周方向にほぼ等間隔に配置されている複数本の前記ボルト101および複数個の前記ナット102により、締結されている。
【0004】
前記ロータ100においては、ガスタービンの起動や停止に伴って熱伸び差が発生したり、また、スラストや遠心力や自重たわみ状態での回転などにより変動荷重が加わって伸び縮みが発生したりするので、前記ボルト101および前記ナット102の締付力が変化する。このために、図11に示すように、前記ボルト101のおねじと前記ナット102のめねじとの噛み合い部、すなわち、ねじ噛み合い部105においては、変動応力(引っ張り応力や曲げ応力)が負荷される。そして、前記ねじ噛み合い部105に変動応力が負荷されると、前記ねじ噛み合い部105においては、摩耗や疲労損傷を起こし易くなる。そこで、前記ねじ噛み合い部105、特に、前記ボルト101のおねじの疲労強度(特に、フレッティング(フレッチング)疲労強度)を改善する必要がある。
【0005】
ねじ締結部材(たとえば、ボルトおよびナット、スタッドボルトなど)の疲労強度を改善した技術は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、従来のねじ締結部材のボルトについて説明する。従来のねじ締結部材のボルトは、めねじに嵌合するおねじを、引っ張り方向へ、先細状に整形したもの(特許文献1)である。また、ボルト首下丸み部を製品ボルト首下丸み部局率半径の1.2〜3.0倍の範囲のボルトを成形し、そのボルト首下丸み部に冷間加工を施して所定の曲率半径に整形加工したもの(特許文献2)である。
【0006】
ところが、前者(特許文献1)は、おねじを引っ張り方向に先細状に整形しておねじにかかる引張応力を均一化するものであって、おねじの表面硬度を上昇させかつおねじに圧縮残留応力を付与するものではない。このために、前者は、おねじの疲労強度を改善するには限界がある。また、後者(特許文献2)は、ボルト首下丸み部に冷間加工を施してボルト首下丸み部の表面硬度を上昇させかつボルト首下の丸み部に圧縮残留応力を付与するが、おねじの表面硬度を上昇させかつおねじに圧縮残留応力を付与するものではない。このために、後者も、前者と同様に、おねじの疲労強度を改善するには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭56−53651号公報
【特許文献2】特開平7−180714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする問題点は、従来のねじ締結部材のボルトでは、おねじの疲労強度を改善するには限界があるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、ニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトの少なくともおねじの表面に、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部を、設ける、ことを特徴とする。
【0010】
また、この発明は、表面硬化部が、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒をボルトの少なくともおねじの表面に当てる加工処理により、設けられている、ことを特徴とする。
【0011】
さらに、この発明は、ニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトのおねじを形成する切削加工の工程と、ボルトの少なくともおねじの表面に、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部を、設ける加工処理の工程と、からなる、ことを特徴とする。
【0012】
さらにまた、この発明は、ボルトの少なくともおねじの表面に表面硬化部を設ける加工処理が、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒をボルトの少なくともおねじの表面に当てる加工処理である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明のニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトは、少なくともおねじの表面に設けられている表面硬化部により、おねじの表面の硬度が上昇し、かつ、おねじの表面に圧縮残留応力が付与されることとなる。このために、この発明のボルトは、おねじの疲労強度を改善することができるので、おねじに繰り返し応力が発生するような部位に使用されることに対して有効である。
【0014】
また、この発明のボルトは、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒を少なくともおねじの表面に当てて、おねじの表面に表面硬化部を加工処理するものである。このために、この発明のボルトは、おねじの表面の硬度が上昇し、かつ、おねじの表面に圧縮残留応力が付与される一方、おねじの表面の粗さによりおねじの疲労強度の改善に対して影響を与えるようなことがない。この結果、この発明のボルトは、おねじの疲労強度を確実に改善することができる。
【0015】
さらに、この発明のニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトの製造方法は、切削加工工程で形成したおねじの表面に表面硬化部を加工処理工程で設けるものであるから、この表面硬化部により、おねじの表面の硬度が上昇し、かつ、おねじの表面に圧縮残留応力が付与されることとなる。このために、この発明のボルトの製造方法は、おねじの疲労強度を改善することができるので、おねじに繰り返し応力が発生するような部位に使用されることに対して有効であるボルトを製造することができる。
【0016】
さらにまた、この発明のボルトの製造方法は、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒を少なくともおねじの表面に当てて、おねじの表面に表面硬化部を加工処理するものである。このために、この発明のボルトの製造方法は、おねじの表面の硬度が上昇し、かつ、おねじの表面に圧縮残留応力が付与される一方、おねじの表面の粗さによりおねじの疲労強度の改善に対して影響を与えるようなことがない。この結果、この発明のボルトの製造方法は、おねじの疲労強度を確実に改善することができるボルトを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、この発明にかかるボルトの一実施例を示す一部拡大断面図である。
【図2】図2は、この発明にかかるボルトの製造方法の一実施例を示す説明図である。
【図3】図3は、耐疲労強度検証試験装置を使用した耐疲労強度検証試験の状態を示す説明図である。
【図4】図4は、従来品と本発明品1との耐疲労強度検証試験装置を使用した耐疲労強度検証試験の結果を示す説明図である。
【図5】図5は、粒径の大きさによる疲労強度の影響を示す説明図である。
【図6】図6は、照射回数による疲労強度の影響を示す説明図である。
【図7】図7は、照射距離による疲労強度の影響を示す説明図である。
【図8】図8は、ナットの製造方法の一実施例を示す説明図である。
【図9】図9は、ナットの試験片を使用したフレッティング疲労試験(フレッチング疲労試験)の実施の結果を示す説明図である。
【図10】図10は、ガスタービンのロータスピンドルボルトとして使用されている従来のボルトを示す説明図である。
【図11】図11は、ねじの噛み合い分を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明にかかるボルトの実施例のうちの1例、および、この発明にかかるボルトの製造方法の実施例のうちの1例を図1〜図7に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図1(A)は、ナットのめねじの構造を示す一部拡大断面図、図1(B)は、この実施例にかかるボルトのおねじの構造を示す一部拡大断面図である。図2(A)は、この実施例にかかるボルトの製造方法の表面硬化部の加工処理工程の一例を示す説明図、図2(B)は、表面硬化部の加工処理の一条件を示す説明図である。
【実施例】
【0019】
まずは、この発明にかかるボルトの一実施例について説明する。図1(B)において、符号「1」は、この実施例にかかるボルトである。前記ボルト1は、たとえば、ニッケル系の超合金から構成されている。なお、前記ボルト1としては、ニッケル系の超合金のほかに、たとえば、鉄、低合金鋼、ステンレス、その他の超合金から構成されているものであっても良い。また、前記ボルト1は、頭部と、軸部と、ねじ部と、が切削加工により構成されている。前記ねじ部の外面には、有効径dのおねじ10が切削加工により形成されている。そして、前記ボルト1の少なくともおねじ10の表面には、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部11が、設けられている。
【0020】
前記表面硬化部11は、メッシュサイズ#150、すなわち、目が100μm×100μmのメッシュを通過し得る粒径以下の粒を、前記ボルト1の少なくともおねじ10の表面に当てる加工処理、たとえば、ショットブラストやショットピーニングなどにより、設けられている。
【0021】
以下、この発明にかかるボルトの製造方法の一実施例について図2(A)および(B)を参照して説明する。まず、切削加工の工程において、ボルト1の頭部と軸部とねじ部とを構成し、かつ、ねじ部の外面に有効径dのおねじ10を形成する。つぎに、加工処理の工程において、ボルト1の少なくともおねじ10の表面に、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部11を、設ける。
【0022】
前記の加工処理の工程は、メッシュサイズ#150、すなわち、目が100μm×100μmのメッシュを通過し得る粒径以下の粒を、ボルト1の少なくともおねじ10の表面に当てる加工処理の工程、たとえば、ショットブラストやショットピーニングなどにより、行われる加工処理の工程である。
【0023】
前記の加工処理の工程は、図2(A)および(B)に示すような条件において、表面硬化部11を加工処理する。すなわち、ボルト1のおねじ10をボルト1の軸心回りに回転させる速度であるボルトネジ歯周速(S)が80mm/s、ブラストガン13をボルト1の軸心に対して平行に移動させる速度であるブラストガン移動速度(V)が8mm/s、ブラストガン13からボルト1のおねじ10までの距離である照射距離(L)が500mm、ブラストガン13からブラスト材をボルト1のおねじ10に当てる力であるブラスト材供給圧(P)が0.55MPa、ブラストガン13からボルト1のおねじ10に当てるブラスト材の粒径がメッシュサイズ#150(目が100μm×100μm)のメッシュを通過し得る粒径以下である。
【0024】
この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1は、たとえば、図10に示すようなガスタービンのロータスピンドルボルト、または、エンジンクランクケースのスタッドボルトとして使用することができる。すなわち、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1は、おねじ10に繰り返し応力が発生するような部位に使用されるボルトとして有効である。
【0025】
以下、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1の有効性について、図3に示す耐疲労強度検証試験装置3を使用した耐疲労強度検証試験に基づいて説明する。
【0026】
前記耐疲労強度検証試験装置3の台座30の横孔31中に試験用のボルト1を通す。前記ボルト1の一端もしくは両端にナット2を締め付けて、前記ボルト1を前記台座30に所定の引張荷重で固定する。また、前記台座30の竪孔32に押し棒33を通して前記ボルト1に当てる。さらに、前記ボルト1に応力計測器34を試験部分35の近傍に設ける。前記応力測定器34は、前記試験部分35に亀裂が生じたか否かを判断するための測定器であって、測定値が急激に変化したときには前記試験部分35に亀裂が生じたことを示す。そして、室温大気中の試験環境下において、前記押し棒33で前記ボルト1に所定の繰返し曲げ荷重を与えて前記ボルト1の試験部分35(ボルト1の歯面やねじ底)の疲労試験を行う。なお、前記所定の引張荷重は、前記ボルト1が塑性変形する荷重の約3分の2の荷重であり、また、所定の繰返し曲げ荷重は、前記ボルト1が塑性変形する荷重の約2〜2.5%の荷重である。
【0027】
前記耐疲労強度検証試験装置3を使用した耐疲労強度検証試験の結果を図4に示す。なお、図4の縦軸は、前記押し棒33によりボルトに与えた所定の繰返し曲げ荷重の回数を示す。この図4に示すように、従来品(従来のボルト)は、所定の繰返し曲げ荷重の回数が約6.3×10の6乗回のときに、前記試験部分に亀裂が生じた。これに対して、本発明品1(この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1)は、所定の繰返し曲げ荷重の回数が約1.2×10の7乗回を超えても、前記試験部分35に亀裂が発生していない。すなわち、本発明品1は、従来品に比較して約2倍以上の疲労強度が得られることとなる。因みに、試験片を使用したフレッティング疲労試験(フレッチング疲労試験)、すなわち、移動試験片を接触片で一定の面圧となるように挟み、局所の応力振幅を与える試験の実施の結果、本発明品1の試験片が従来品の試験片と比較して約10倍以上の疲労強度が得られた。
【0028】
以上から明らかなように、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1は、従来のボルトと比較して約2倍以上の疲労強度が得られるので、図10に示すようなガスタービンのロータスピンドルボルト、または、エンジンクランクケースのスタッドボルトなど、おねじ10に繰り返し応力が発生するような部位に使用されるボルトとして有効である。
【0029】
ここで、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法において、粒(ブラスト材)を少なくともおねじ10の表面に当てて、その少なくともおねじ10の表面に、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部11を、加工処理により設けているものである。前記表面硬化部11を前記の加工処理により設ける場合において、最も重要な要因となるのは、少なくともおねじ10の表面に当てる粒(ブラスト材)の粒径である。
【0030】
すなわち、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法においては、疲労強度を向上させるために、少なくともおねじ10の表面の「硬度向上」と「圧縮残留応力の付与」とを目的とするものである。ところが、少なくともおねじ10の表面に当てる粒の粒径により、少なくともおねじ10の表面の「粗さ」が変化してねじ底の疲労強度に大きく影響する。
【0031】
以下、粒径の大きさによる疲労強度の影響を図5を参照して説明する。図5に示すように、少なくともおねじ10の表面の「表面硬さ向上」と「圧縮応力付与」とは、粒径の大きさにより影響を受けない。一方、少なくともおねじ10の表面の「表面粗さ」は、粒径の大きさにより影響を受ける。すなわち、メッシュサイズ#46(目が355μm×355μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)、メッシュサイズ#80(目が180μm×180μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)、メッシュサイズ#100(目が150μm×150μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)の粒径の場合、少なくともおねじ10の表面の「表面粗さ」が大きくなり、ねじ底の疲労強度が図4に示す従来品と大差がない。一方、メッシュサイズ#150(目が100μm×100μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)、メッシュサイズ#360(目が70μm×70μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)の粒径の場合、少なくともおねじ10の表面の「表面粗さ」が小さくなり、図4に示す本発明品1とほぼ同様のねじ底の疲労強度が得られる。
【0032】
このように、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法においては、メッシュサイズ#150(目が100μm×100μm)のメッシュを通過し得る粒径以下、好ましくは、メッシュサイズ#150(目が100μm×100μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)、メッシュサイズ#360(目が70μm×70μm、すなわち、ブラスト材粒径の目安)の粒径のブラスト材を少なくともおねじ10に当てるものである。
【0033】
次に、ブラスト材による加工処理の条件として、ブラスト材の粒径に次いで重要な要因として、ブラスト材の照射回数およびブラストガンからおねじまでの照射距離(L)がある。以下、ブラスト材によるボルト1のおねじ10に対する照射回数およびブラストガンからおねじまでの照射距離(L)による疲労強度への影響を、図6および図7を参照して説明する。
【0034】
図6は、ブラスト材の照射回数と残留応力および表面粗さの関係を示すものである。横軸は照射回数を示し、左側縦軸は圧縮残留応力、右側縦軸はおねじ表面の表面粗さ(Rmax)を示している。圧縮残留応力は縦軸上方ほど大きく、縦軸下方ほど小さくなることを表している。
【0035】
図6では、図2(B)に示す条件で、ブラスト材の粒径メッシュサイズ#150で、照射回数を変えて加工処理した結果を示す。この条件下で照射回数4回の条件により得られたボルトは、図4に示す本発明品1と同様の疲労強度が得られた。この場合の圧縮残留応力および表面粗さを基準値として選択している。縦軸の目盛は、基準値を100としてパーセントで表示している。
【0036】
ここで、ブラスト材の照射回数の意味を説明する。図2(A)に示す加工方法では、ボルトを回転させつつブラスト材をボルト1のおねじ10の外表面に照射しながら、同時にブラストガンが軸方向に移動する。ガンはおねじの末端に達したら反転し、引き続きブラスト材を照射しつつ逆方向に移動する。ガンがこの反復運動を繰り返して、おねじ表面の加工処理が行われる。照射回数とは、ブラスト材が同一表面に照射される回数(頻度)を示している。
【0037】
図7は、ブラストガンからおねじまでの照射距離と圧縮残留応力および表面粗さの関係を示している。横軸は照射距離を示し、縦軸は図6と同様である。また、図7は、加工条件として照射回数を4回に固定し、その他の条件は図6と同じ条件を選定して、照射距離を変えて加工処理した結果を表している。基準値および縦軸の考え方は図6と同様である。
【0038】
図6によれば、照射回数が2回では、圧縮残留応力が基準値に対して大幅に不足し、照射回数が4回で基準値に達する。更に、照射回数が6回では若干の圧縮残留応力の増加が認められる。一方、照射回数が2〜4回では表面粗さに大きな変化はないが、照射回数6回では若干表面粗さが増加する。照射回数が6回を上まわると、表面粗さは急激に増加する。
【0039】
図7によれば、照射距離が200mmでは圧縮残留応力が基準値に対して不足し、表面粗さが大幅に上まわっている。照射距離が500mmでは、圧縮残留応力および表面粗さともに、基準値を満足している。照射距離が750mmでは、圧縮残留応力および表面粗さともに基準値に対して若干低下する。しかし、照射距離が750mmを上まわる領域では、圧縮残留応力が著しく低下する。
【0040】
図6および図7によれば、4回〜6回の照射回数であれば圧縮残留応力が基準値を上回る一方、表面粗さの変化は比較的小さく、表面粗さの増加に伴う疲労強度への影響はほとんどない。また、照射距離が500〜750mmでは、圧縮残留応力がほぼ基準値に達し、照射距離を増加させても圧縮残留応力の低下は比較的小さい。すなわち、照射回数を増加させれば圧縮残留応力も増加するが、照射回数が6回を越えると表面粗さが大きくなりすぎて、疲労強度の低下を招く。一方、照射距離は小さい方が圧縮残留応力は大きくなるが、表面粗さも同時に大きくなるため、逆に疲労強度は低下する。また、照射距離が750mmを越える場合には、ブラスト加工処理の効果が薄くなり、疲労強度は上がらない。従って、加工条件としては、照射回数で4〜6回、照射距離で500〜750mmを選定するのが望ましい。なお、この加工条件の下では、表面硬化部の表面硬度はボルトの母材以上の硬度が確保できている。
【0041】
また、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法において、少なくともおねじ10の表面に当てる粒の材質としては、錆びない非鉄材、たとえば、アルミナ(Al2O3)、シリコンカーバイド(SiC)、シリカ(SiO2)を使用する。
【0042】
以下、この発明にかかるボルトとともにねじ締結部材を構成するナットおよびそのナットの製造方法について図1および図8および図9を参照して説明する。図8(A)は、ボルトのおねじの表面粗さおよびナットのめねじの表面粗さを示す一部拡大断面図、図8(B)は、ナットのめねじの構造を示す一部拡大断面図である。
【0043】
図1(A)において、符号「2」は、ナットである。前記ナット2は、たとえば、鋼製から構成されている。また、前記ナット2は、ねじ孔が切削加工により構成されている。前記ねじ孔の内面には、めねじ20が切削加工により形成されている。前記ナット2のめねじ20の表面には、硬度が前記ナット2の母材よりも低い表面軟質皮膜部21が、設けられている。
【0044】
前記表面軟質皮膜部21は、たとえば、Cu−Ni−In溶射コーティング、サーメテルWコーティング、銀メッキ、銅メッキなどにより設けられている。図8(A)および(B)に示すように、前記表面軟質皮膜部21の厚さ(膜厚)Tは、前記ボルト1のおねじ10の表面12の粗さの最大値T1と前記ナット2のめねじ20の表面22の粗さの最大値T2との和よりも大きくする。この結果、前記ボルト1のおねじ10と前記ナット2のめねじ20とをねじ込んだ際に、前記ボルト1のおねじ10の表面12と前記ナット2のめねじ20の表面22とが前記表面軟質皮膜部21から露出して相互に接触することがない。
【0045】
前記表面軟質皮膜部21の厚さTにより、前記ナット2のめねじ20の有効径を変更させる必要がある。すなわち、前記ナット2において、前記表面軟質皮膜部21を設ける場合のめねじ20の有効径D0(すなわち、母材のめねじの有効径D0)を、前記表面軟質皮膜部21を設けない場合のめねじ20の有効径D(すなわち、完成品のめねじの有効径D)に対して、前記表面軟質皮膜部21の厚さTとほぼ同等の寸法分大きくする必要がある。
【0046】
一方、前記表面軟質皮膜部21の厚さTを大きくし過ぎると、完成品のめねじの有効径Dに対して母材のめねじの有効径D0が大きくなり過ぎて、本来あるべきねじ山が小さくなり過ぎるので、強度不足となる虞がある。このために、前記表面軟質皮膜部21の厚さTは、本来あるべきねじ山が小さくなり過ぎて強度不足とならない程度(X)を最大値とする。この結果、前記表面軟質皮膜部21の厚さTは、以下の範囲となる。すなわち、T1+T2<T<(X)となる。前記表面軟質皮膜部21の厚さTは、ねじの公差により異なり、たとえば、ねじ2級公差の場合(2級の嵌めあいの場合)、約25μm程度である。
【0047】
以下、図1(A)に示すナット2の製造方法の一例について図8(A)および(B)を参照して説明する。まず、切削加工の工程において、ナット2のねじ孔を構成し、かつ、このねじ孔の内面にめねじ20を形成する。このめねじ20の有効径D0は、完成品のめねじの有効径Dよりも表面軟質皮膜部21の厚さT分ほど大きい。つぎに、加工処理の工程において、ナット2のめねじ20の表面に、硬度がナット2の母材よりも低い表面軟質皮膜部21を、たとえば、Cu−Ni−In溶射コーティング、サーメテルWコーティング、銀メッキ、銅メッキなどにより設ける。
【0048】
図1(A)に示すナット2、および、図8(A)および(B)に示すナットの製造方法により製造されたナット2は、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1とほぼ同様に、たとえば、図10に示すようなガスタービンのロータスピンドルボルト、または、エンジンクランクケースのスタッドボルトにねじ込まれるナットとして使用することができる。すなわち、図1(A)に示すナット2、および、図8(A)および(B)に示すナットの製造方法により製造されたナット2は、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1とほぼ同様に、ボルト1のおねじ10とナット2のめねじ20との噛み合い部に繰り返し応力が発生するような部位に使用されるナットとして有効である。
【0049】
以下、図1(A)に示すナット2、および、図8(A)および(B)に示すナットの製造方法により製造されたナット2の有効性について、図9に示す試験片を使用したフレッティング疲労試験(フレッチング疲労試験)、すなわち、移動試験片を接触片で一定の面圧となるように挟み、局所の応力振幅を与える試験の実施の結果を示す説明図に基づいて説明する。
【0050】
図9の縦軸は、破損繰返し数を示す。この図9に示すように、従来品(従来のナット)は、破損繰返し数が約1.1×10の6乗回のときに破損が生じた。これに対して、本発明品2(図1(A)に示すナット2、および、図8(A)および(B)に示すナットの製造方法により製造されたナット2であって、表面軟質皮膜部21がメッキの場合)は、破損繰返し数が約1.4×10の6乗回のときに破損が生じた。また、本発明品3(図1(A)に示すナット2、および、図8(A)および(B)に示すナットの製造方法により製造されたナット2であって、表面軟質皮膜部21がCu−Ni−In溶射コーティングの場合)は、破損繰返し数が約1.1×10の7乗回を超えても破損が発生していない。すなわち、本発明品2、3のナットは、従来品のナットに比較して十分な疲労強度が得られることとなる。
【0051】
このように、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1を使用することにより、図10に示すようなガスタービンのロータスピンドルボルトなど、ボルト1のおねじ10に繰り返し応力が発生するような部位に使用されるボルトとして有効である。さらに、この実施例にかかるボルト1、および、この実施例にかかるボルトの製造方法により製造されたボルト1と、図1(A)に示すナット2、および、図8(A)および(B)に示すナットの製造方法により製造されたナット2とを使用することにより、図10に示すようなガスタービンのロータスピンドルボルトおよびナットなど、ボルト1のおねじ10とナット2のめねじ20との噛み合い部に繰り返し応力が発生するような部位に使用されるボルトおよびナットとしてさらに有効である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明にかかるボルトおよびこの発明にかかるボルトの製造方法は、おねじに繰り返し応力が発生するような部位に使用されるボルトおよびボルトの製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 ボルト
10 おねじ
11 表面硬化部
12 おねじの表面
13 ブラストガン
2 ナット
20 めねじ
21 表面軟質皮膜部
22 めねじの表面
3 耐疲労強度検証試験装置
30 台座
31 横孔
32 縦孔
33 押し棒
34 応力計測器
35 試験部分
d おねじの有効径
D 完成品のめねじの有効径
D0 母材のめねじの有効径
T 表面軟質皮膜部の厚さ
T1 おねじの表面粗さの最大
T2 めねじの表面粗さの最大
S ボルトネジ歯周速
V ブラストガン移動速度
L 照射距離
P ブラスト材供給圧
100 ロータ
101 ボルト
102 ナット
103 ディスク
104 動翼
105 ねじ噛み合い部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトにおいて、少なくともおねじの表面には、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部が設けられていて、前記表面硬化部は、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒を少なくともおねじの表面に当てる加工処理により設けられている、ことを特徴とするボルト。
【請求項2】
ニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトの製造方法において、おねじを形成する切削加工の工程と、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与されるように、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒を少なくともおねじの表面に当てて表面硬化部を設ける加工処理の工程と、からなる、ことを特徴とするボルトの製造方法。
【請求項1】
ニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトにおいて、少なくともおねじの表面には、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与された表面硬化部が設けられていて、前記表面硬化部は、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒を少なくともおねじの表面に当てる加工処理により設けられている、ことを特徴とするボルト。
【請求項2】
ニッケル系超合金で構成されるおねじを有するボルトの製造方法において、おねじを形成する切削加工の工程と、表面硬度が上昇しかつ圧縮残留応力が付与されるように、メッシュサイズ#150のメッシュを通過し得る粒径以下のアルミナ粒を少なくともおねじの表面に当てて表面硬化部を設ける加工処理の工程と、からなる、ことを特徴とするボルトの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−176491(P2012−176491A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−101795(P2012−101795)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2007−557782(P2007−557782)の分割
【原出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2007−557782(P2007−557782)の分割
【原出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
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