説明

ボルトを用いた端子接続構造とそれを備えた電気接続箱

【課題】端子接続用のナットにボルトを仮締めした状態でボルトの緩みや脱落を防止する。
【解決手段】絶縁ブロック15にナット23を設け、ナットにボルト11を螺入して端子1と他の端子部27a,28aとを締付接続するボルトを用いた端子接続構造で、ナットに隣接して絶縁ブロックにボルト仮固定用の部材24を設け、ボルト仮固定用の部材はボルトのねじ山径よりも小径なボルト挿通部24aを有する。ボルト仮固定用の部材24をナット23のボルト貫通面23c側に配置した。ボルト仮固定用の部材24を合成樹脂材で形成した。端子1がボルト挿通用のスロット10と幅広な開口9とを連通して有し、絶縁ブロック15が開口に係合する係止部20を有する。上記ボルトを用いた端子接続構造を備える電気接続箱Jを採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトを仮締めした状態で端子を装着し、ボルトで本締めすることで、端子と他の回路とをねじ締め接続させるボルトを用いた端子接続構造とそれを備えた電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の端子接続用のボルトを備える電気接続箱の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
この電気接続箱61は、主接続箱62と副接続箱63とで構成され、主接続箱側の電源用のヒュージブルリンク64に副接続箱側の電線付きの丸形端子65をボルト66で締付接続させるものである。
【0004】
ヒュージブルリンク64は一対の板端子を有し、各板端子は各バスバー67にボルト66で共締めされ、各バスバー67は主接続箱側の他の複数のヒュージブルリンク68に接続されている。
【0005】
バスバー67は導電金属板を帯状に打ち抜き折り曲げることで形成され、ヒュージブルリンク68に対するタブ端子と、電源用のヒュージブルリンク64の板端子に対する接続用の板部とを有している。
【0006】
ボルト66はヒュージブルリンク64の板端子と接続用の板部との孔部を貫通してナット(図示せず)で締付固定される。ナットはヒュージブルリンク64の一対のタブ端子の内側において合成樹脂製の箱本体69に予め装着されている。ボルト66はインパクトレンチ70でナットに締め付けられる。
【0007】
主接続箱62はヒュージブルリンク装着部71,72の他に複数のリレー装着部73を有し、副接続箱63は複数のリレー装着部74を有している。
【0008】
図6は、従来のボルトを用いた端子接続構造の一形態を示すものである(特許文献2参照)。
【0009】
合成樹脂製のホルダ75の箱部内にヒュージブルリンク76が装着され、ホルダ75の延長部(絶縁ブロック)86においてボルト77がヒュージブルリンク76の一方の板端子78の孔部を貫通して内側のナット79に仮締めされ、ボルト77の頭部が板端子78から浮いた状態となっている。その状態で電線付きの端子80がボルト77に沿って装着され、ボルト77の本締めにより端子80がヒュージブルリンク76の板端子78に接続される。
【0010】
端子80は、スロット81を有する略U字状の板部82と、板部82の前端に立ち上げられた枠状部83と、板部82の後方に続く電線接続部84とで構成され、枠状部83がボルト77の頭部を通過しつつスロット81内にボルト77の軸部が係合する。
【0011】
ホルダ75には、端子80を仮固定させるための挟持用のばね部(図示せず)と係止片85とが設けられている。ばね部と係止片85とで端子80が仮固定された状態で、ボルト77が本締めされる。端子80が水平に仮固定されるから、ボルト77の斜め締めが防止される。ホルダ75は電気接続箱(図示せず)の一部として機能する。
【特許文献1】特開平10−247451号公報(第3〜4頁、図1)
【特許文献2】特開2002−184299号公報(図1,図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来のボルトを用いた端子接続構造にあっては、端子80をホルダ側に装着する前に、あるいは端子80を係止片85で仮固定させた後に、電気接続箱をボルト77の仮締め状態で移送する等した場合に、ボルト77が緩んで脱落したりする心配があった。
【0013】
ボルトを緩まないようにナットにきつく螺合させておく手段としては、ボルトの雄ねじの山を通常よりも少し外側に突き出して形成し、ナットの雌ねじの谷部にラップさせる寸法としたものが公知であるが、このボルトを使用した場合には、ボルトを本締めした際にナット等の金属の削れカスが発生しやすく、削れカスが電気接続箱内に侵入して接触不良等を招くといった心配があった。
【0014】
本発明は、上記した点に鑑み、ボルトを緩みなく確実に仮固定することができ、しかもナット等の有害な削れカスを生じることのないボルトを用いた端子接続構造とそれを備えた電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るボルトを用いた端子接続構造は、絶縁ブロックにナットが設けられ、ナットにボルトが螺入されて端子と他の端子部とが締付接続されるボルトを用いた端子接続構造において、前記ナットに隣接して前記絶縁ブロックにボルト仮固定用の部材が設けられ、該ボルト仮固定用の部材が該ボルトのねじ山径よりも小径なボルト挿通部を有することを特徴とする。
【0016】
上記構成により、ボルトがナットの雌ねじ部とボルト仮固定用の部材のボルト挿通部とに同時に螺入され、ボルトがボルト仮固定用の部材によって回り止め(緩み止め)された状態に仮固定される。この状態で例えばスロットを有する端子がボルトに直交する方向から装着される。ボルトを本締めすることで、端子と他の端子部とが相互に接続される。端子は例えば予め電線に接続され、他の端子部はバスバーや他の電線等に接続されている。
【0017】
請求項2に係るボルトを用いた端子接続構造は、請求項1記載のボルトを用いた端子接続構造において、前記ボルト仮固定用の部材が前記ナットのボルト貫通面側に配置されたことを特徴とする。
【0018】
上記構成により、ボルトが先ずナットに螺入され、ナットを貫通してボルト仮固定用の部材に螺入され、ナットとボルト仮固定用の部材とに同時に螺入される。ナットに螺入したボルトの回転力でボルト仮固定用の部材のボルト挿通部にボルトがスムーズ且つ確実に螺入される(ねじ込まれる)。作業者はナットにボルトを小さな力で螺入し、ナットを貫通させた後、ボルト仮固定用の部材にやや大きな力でボルトを螺入する。ボルト仮固定用の部材にボルトを螺入したことが作業者の手感で確実に検知される。
【0019】
請求項3に係るボルトを用いた端子接続構造は、請求項2記載のボルトを用いた端子接続構造において、前記ボルト仮固定用の部材が前記ナットのボルト貫通面に固定されたことを特徴とする。
【0020】
上記構成により、ボルト仮固定用の部材がナットと一体化され、取り扱いや絶縁ブロックへの組付等が容易化する。
【0021】
請求項4に係るボルトを用いた端子接続構造は、請求項1又は2記載のボルトを用いた端子接続構造において、前記ボルト仮固定用の部材が前記絶縁ブロックに一体に形成されたことを特徴とする。
【0022】
上記構成により、絶縁ブロックにボルト仮固定用の部材が一体樹脂成形で形成され、ボルト仮固定用の部材の上又は下にナットが配設される。
【0023】
請求項5に係るボルトを用いた端子接続構造は、請求項1〜4の何れかに記載のボルトを用いた端子接続構造において、前記ボルト仮固定用の部材が合成樹脂材で形成されたことを特徴とする。
【0024】
上記構成により、合成樹脂材の潤滑性によってボルトの螺入がスムーズに行われ、しかも可撓性ないし弾性を有する合成樹脂材によってボルトがしっかりと保持される。
【0025】
請求項6に係るボルトを用いた端子接続構造は、請求項1〜5の何れかに記載のボルトを用いた端子接続構造において、前記ボルト仮固定用の部材の前記ボルト挿通部の内径が前記ボルトのねじ谷径に相当することを特徴とする。
【0026】
上記構成により、ボルト固定用の部材のボルト挿通部にボルトが手作業で容易にねじ込まれ、且つ最適な締め代でボルトがボルト挿通部内に確実に保持されて回り止めされる。ボルト固定用の部材の厚さはナットよりも十分に薄く、例えば金属製のワッシャ程度の厚さで板状(薄板状)に形成されることが好ましい。ボルト挿通部の内径を各種外径のボルトのねじ谷径に合わせることで、ボルト挿通部の内径の設定及び加工(ドリル加工や樹脂成形加工)が容易化される。
【0027】
請求項7に係るボルトを用いた端子接続構造は、請求項1〜6の何れかに記載のボルトを用いた端子接続構造において、前記端子がボルト挿通用のスロットと幅広な開口とを連通して有し、前記絶縁ブロックが該開口に係合する係止部を有することを特徴とする。
【0028】
上記構成により、ボルトがボルト仮固定用の部材に仮固定された状態で、端子がボルトに沿って径方向に装着され、絶縁ブロック側の係止部で係止される。ボルトの頭部は端子の幅広の開口を通過し、ボルトの軸部は端子のスロット内に係合する。この状態でボルトがインパクトレンチ等の工具で本締めされ、端子と他の端子部とが締付接続される。
【0029】
請求項8に係る電気接続箱は、請求項1〜7の何れかに記載のボルトを用いた端子接続構造を備えることを特徴とする。
【0030】
上記構成により、端子が他の端子部に接続され、他の端子部は例えば電気接続箱内のバスバー等の回路に続き、バスバー等の回路は電気接続箱内のヒュージブルリンク等の電気部品に接続され、電気部品は電気接続箱内の他の回路に接続される。このように電気接続箱において上記請求項1〜7の何れかに記載のボルトを用いた端子接続構造の作用効果が奏せられる。
【発明の効果】
【0031】
請求項1記載の発明によれば、ナットに仮締めされたボルトがボルト仮固定用の部材で回り止めされるから、ボルトをセットした状態で絶縁ブロックやそれを含む電気接続箱等を移送した際に、移送中の振動等によるボルトの脱落が確実に防止され、ボルトの再セット作業が不要で、端子と他の端子部との接続を効率良く確実に行うことができる。
【0032】
請求項2記載の発明によれば、ボルトをナットを経てボルト仮固定用の部材にスムーズ且つ確実に螺入することができ、ボルトの仮固定作業性と仮固定の確実性が向上する。ボルト仮固定用の部材にボルトを螺入したことが作業者の手感で確実に検知されることによっても、仮固定の確実性が向上する。
【0033】
請求項3記載の発明によれば、ボルト仮固定用の部材をナットと一体化することで、取り扱いや絶縁ブロックへの組付等を容易化することができると共に、ボルト仮固定用の部材を安価な材料で形成することができる。
【0034】
請求項4記載の発明によれば、ボルト仮固定用の部材を絶縁ブロックに一体に形成することで、部品点数・コストが削減されると共に、ボルト仮固定用の部材の紛失等が確実に防止され、ボルトの仮固定の信頼性が高まる。
【0035】
請求項5記載の発明によれば、ボルト仮固定用の部材の潤滑性によってボルトの螺入をスムーズ且つ確実に行うことができ、しかもボルト仮固定用の部材の可撓性ないし弾性によってボルトをしっかりと仮固定することができ、ボルト仮固定の作業性及び信頼性が向上する。
【0036】
請求項6記載の発明によれば、ボルトを手作業でボルト仮固定用の部材のボルト挿通部にねじ込むことができ、しかも適当な締め代でボルトを確実に仮固定することができて、ボルト仮固定の作業性及び信頼性が向上する。
【0037】
請求項7記載の発明によれば、ボルトを所定の突出長さで仮固定させることで、端子をボルトと干渉することなくスムーズに装着させることができ、端子の装着作業性が向上する。
【0038】
請求項8記載の発明によれば、電気接続箱内のヒュージブルリンク等の電気部品に、端子をボルトとの干渉なくスムーズに装着して確実に接続することができ、電気接続箱における端子の装着作業性が向上すると共に、電気接続箱内へのボルトの脱落が確実に防止されて、ボルトによるショート等の危険が確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1〜図3は、本発明に係るボルトを用いた端子接続構造とそれを備えた電気接続箱の要部の一実施形態を示すものである。
【0040】
端子1は略L字状に屈曲されて水平な板状の前半部と垂直な後半部とで構成され、前半部は平坦で真直な板部2と、板部2の前端から立ち上げられた枠状部3とを有し、後半部は、屈曲部4に続く部分に、電線7の芯線を接続する圧着部5と絶縁被覆を固定する圧着部6とで成る電線接続部を有している。
【0041】
前端の枠状部3は湾曲状の屈曲部8(図3)を介して水平な板部2に続き、枠状部3の内側に幅広な開口(孔部)9が設けられ、幅広な開口9は板部2の幅方向中央の幅狭なスロット10に続いている。幅広な開口9にボルト11の頭部11aが挿通され、スロット10にボルト11の軸部(雄ねじ部)11b(図3)が挿通される。
【0042】
電気接続箱Jの合成樹脂製の接続箱本体12の内側には、電源供給用のヒュージブルリンク13(図2)に対する収容部14が設けられ、収容部14に隣接して端子接続用の端子台(絶縁ブロック)15が一体的に設けられている。
【0043】
端子台15は合成樹脂製の三方の垂直な壁部を有し、そのうちの一つの壁部16は他の壁部17,18よりも高く突出形成され、他の二つの壁部17,18の上端側に水平な壁部19(図3)が続き、突出した垂直な壁部16の内面に、端子1の枠状部3に対する係止爪(係止部)20と停止リブ21,22がそれぞれ設けられ、水平な壁部19のほぼ中央にナット23(図3)が設けられ、ナット23の下側にボルト11を仮固定するための部材24(図3)が設けられている。
【0044】
係止爪20は先端の爪部と、爪部に続く水平な可撓性の支柱部とで構成され、左右一対設けられて、端子1の枠状部3の左右の垂直な辺部の内側に係合する。停止リブ21,22は係止爪20の上側に位置し、枠状部3の上側の水平な辺部の上端面に当接する。本例で停止リブ21,22は枠状部3の左右端と中央とに対応して配置されている。
【0045】
係止爪20で端子1の水平方向の抜け出しが阻止され、停止リブ21,22で端子1の上方向への移動が阻止される。端子1がボルト11に直交して水平に配置され、インパクトレンチ(図示せず)の先端が端子1の水平な板部2に当接して垂直に位置決めされるから、インパクトレンチによるボルト11の斜め締めが確実に防止される。
【0046】
端子台15においてナット23(図3)の上端面は水平な壁部19よりも若干突出して位置し、ナット23の下部側の鍔部23aの下端面(ボルト貫通面)23cに接してないしは近接して板状のボルト仮固定用の部材24が配設され、ボルト仮固定用の部材24はナット23の鍔部23aと同程度の外径(外幅寸法)に形成され、ボルト仮固定用の部材24はナット23の鍔部23aと共に水平な溝部25内に嵌合され、溝部25の下側にボルト挿通用の孔部26が貫通して設けられている。
【0047】
ナット23とボルト仮固定用の部材24とは例えば側方からスライド式に溝部25内に装着され、溝部25内で回り止めされる。ナット23やボルト仮固定用の部材24を例えば矩形状とすることで溝部25内での回り止めが容易に行われる。
【0048】
溝部25はボルト挿通孔26の左右両側の壁部26aに真直(水平)に形成されたものであってもよく、あるいはボルト挿通孔26の周囲に略コの字状に形成されたものであってもよい。溝部25の上側に続くナット係合溝50も例えば略コの字状に形成される。
【0049】
ナット23(図3)の上面には、ヒュージブルリンク収容部14内の一方のバスバー27の水平な延長板部である端子部27aと他方のバスバー28の水平な延長板部である端子部28aとが重なって配置され、両端子部27a,28aはボルト挿通孔を有し、他方の端子部28aの上に端子1の水平な板部2が配置され、板部2の上に少しの隙間を存してボルト11の頭部11aが位置している。バスバー28は係止片28bで端子台15の凹部29に係止されている。
【0050】
図1〜図3でボルト11は仮締めされた状態であり、端子1は、仮締めされたボルト11に対して側方からスライド式に装着され、端子1の枠状部3の内側9にボルト11の頭部11aが挿通されつつ、ボルト11の軸部11bがスロット10内に係合し、枠状部3が係止爪20と停止リブ21,22とで位置ずれなく係止され、この状態でボルト11の本締めが行われる。ボルト11の本締めはインパクトレンチで行われる。図2の円内はインパクトレンチの回転スペース30を示す。
【0051】
ボルト仮固定用の部材24(図3)は好ましくはナイロン等の合成樹脂を材料として板状に形成され、その中央にボルト11のねじ山径(外径)よりも小径な内径の円形の孔部(ボルト挿通部)24aを有している。孔部24aはナット23の雌ねじ孔23bと同心(同軸)に配置されている。
【0052】
ボルト仮固定用の部材24の材料となるナイロンはポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドとも呼ばれ、他の樹脂材に較べて摩擦係数が小さく、耐摩耗性、自己潤滑性があるので、ボルト11の回り止め部材として好適である。
【0053】
ナイロン以外でも軟質な樹脂等で、例えばボルト11を作業者が手作業又はレンチで容易に締め込み(仮締め)することができ、且つボルト11との摩擦力を発揮してボルト11の回り止めを行える材料であれば何でも使用可能である。ボルト仮固定用の部材24としてプッシュナットを用いることも可能である。これらボルト仮固定用の部材24は可撓性ないし弾性を有したものと言える。
【0054】
ボルト仮固定用の部材24の円形の孔部24aの内径は、作業者がボルト11を手作業等で容易に締め込み(仮締め)することができ、且つ確実に回り止めを行える寸法に設定されることが好ましい。例えば部材24の孔部24aの内径をボルト11の雄ねじの谷径と同じ位の寸法に設定することが好ましい。孔部24aの形状は円形に限らず楕円形や矩形状とすることも可能である。孔部24aの内周の一部を径方向に切欠させることも可能である。
【0055】
ボルト仮固定用の部材24の孔部24a内には何ら雌ねじは切られておらず、滑らかな円周面となっている。ボルト11をナット23に螺合し、ナット23を貫通したボルト11がボルト仮固定用の部材24にタッピングねじの要領でねじ込まれ、ボルト仮固定用の部材24を貫通した状態でボルト11が仮固定される。ボルト11はナット23に螺入された勢い(回転力)でボルト仮固定用の部材24の孔部24aに確実に螺入(係入)される。
【0056】
ボルト仮固定用の部材24の孔部24aの入口にはテーパ状の面取りを施し、このガイド傾斜面24bによってボルト11の先端をボルト仮固定用の部材24の孔部24aに食い込みやすくしている。一例としてボルト仮固定用の部材24の板厚はナット23の鍔部23aの厚みと同程度であり、例えば通常のボルトを回り止めする金属製のワッシャ程度の厚みを有している。
【0057】
ボルト11を本締めすることで、端子1と二枚のバスバー27,28とが接続される。端子1は電線7に圧着接続されており、電線7と両バスバー27,28とが電気的に接続される。
【0058】
二枚のバスバー27,28はヒュージブルリンク収容部14の両側に配置され、収容部14内の二列の各ヒュージブルリンク13(図2)の各一方の端子に接続される。バスバー27,28とヒュージブルリンク13の端子との接続は電線付きの端子(LA端子すなわち丸形板端子)31(図1)と水平なボルト(図示せず)で共締めされて行われる。
【0059】
各ヒュージブルリンク13(図2)は上カバー32で覆われて保護され、上カバー32は係止突起33と係合枠部34といった係止手段でヒュージブルリンク収容部14の垂直な壁部35に固定される。LA端子31は垂直な壁部35の下部側に隔壁36(図1)で区画されて位置する。仮固定されたボルト11で締付接続される本形態の端子1はLA端子31よりも大きく、電線7もLA端子側の電線37よりも太い絶縁被覆電線を使用している。本形態の端子1もLA端子の一種である。
【0060】
端子台15の垂直な壁部17の外面には一対の断面略L字状のスライド係合部38(図1)と、その中間に位置する係止アーム39とが設けられ、電気接続箱Jの接続箱本体12(図2)の内面にはスライド係合部38に対するガイド部40と係止アーム39に対する係合突部が設けられ、ヒュージブルリンク収容部14は端子台15と一体にこれらの固定手段38,39,40で接続箱本体12に固定される。接続箱本体12の外面には車両ボディ等に対する固定用の係止部42(図2)が設けられている。
【0061】
図4は、上記ボルト11を用いた端子接続構造を備える電気接続箱Jの一実施形態を示すものである。
【0062】
この電気接続箱Jはハイブリッド電気自動車に搭載されるものであり、略矩形枠状の接続箱本体12の内側に上記ヒュージブルリンク収容部14やヒューズ収容部43や複数のリレー44やコネクタ45等を有している。ヒュージブルリンク13は大電流用の箱型のものであり、ヒューズは小・中電流用のブレード型のものである。
【0063】
上記端子1はヒュージブルリンク収容部14と直交して端子台15上に位置し、端子1に続く電線7は接続箱本体12の内側の空間46を経て下側に導出されている。電線7は例えばオルタネータ(交流発電機)に接続される大電流用のものである。
【0064】
端子1にボルト締めで接続された二枚のバスバーは27,28(図1)ヒュージブルリンク収容部15の両内側に沿って縦置きに配置され、ヒュージブルリンク収容部内には二列に複数のヒュージブルリンク13が配置され、各バスバー27,28は各ヒュージブルリンク13の一方の端子に接続され、他方の端子は電線付きの端子等(図示せず)で接続され、一方のバスバー27は例えばバッテリに続く他のバスバー回路47に端子付き電線48で接続され、バスバー回路47はヒューズ収容部43内の複数のヒューズの各一方の端子に接続され、他方のバスバー28は例えばオルタネータに続くバスバー回路50に端子付き電線49で接続されている。各リレー44はランプやポンプやイグニション等の各補機等(図示せず)に接続されている。
【0065】
なお、上記実施形態においては、ボルト11で端子1を垂直方向に締め付けているが、端子1をL字状ではなく真直な形状として、ボルト11で水平方向に締め付けるようにすることも可能である。この場合も、端子1に対する係止爪20や停止リブ21,22及びボルト11に対する仮固定用の部材24(図3)を方向を変えて配置することは言うまでもない。
【0066】
また、端子1として枠状部3のないスロット部10だけの板部2を有するものを用いることも可能である。この場合は端子の係止は行わないか、あるいは板部2を係止させる係止爪を係止爪20に代えて端子台15に垂直に設けてもよい。
【0067】
また、係止爪20や停止リブ21,22を用いずに端子1をセットしてボルト11で本締めすることも可能である。この場合も、ボルト仮固定用の部材24を配置することは言うまでもない。
【0068】
また、ボルト仮固定用の部材24の材料として合成樹脂材を挙げたが、それ以外の材料(例えば金属板材)でボルト仮固定用の部材24を形成した場合でも、また、ねじ孔に予めボルト径よりも小さな雌ねじを切っておいても、有害な削りカスが発生せず、且つボルト11を手作業等で容易に締め込むことができ、回り止めとしての十分な摩擦力を発揮し得るものであれば、材料は何であっても構わない。金属板材としては平板材の他に例えば実開平6−68310号に記載されたような孔部の周囲に羽根片を有する板材であってもよい。
【0069】
また、ナット23やボルト仮固定用の部材24は合成樹脂製の端子台本体(15)にインサート成形されたものであってもよく、あるいはナット23やボルト仮固定用の部材24は合成樹脂製の端子台本体(15)に一体に形成されたものであってもよい。ナット23やボルト11は金属ではなく合成樹脂製であってもよい。特に、ボルト仮固定用の部材24を合成樹脂製の端子台本体(15)に一体成形することで、部品点数や組付工数が削減され、且つ一体のボルト仮固定用の部材24でナットが傾き等なく安定に支持される。また、ナット23の下端面(裏面ないしボルト貫通面)23cにボルト仮固定用の部材24を接着や要着等の手段で固定して設けることも可能である。
【0070】
また、ボルト仮固定用の部材24をナット23の下側(裏面側ないしボルト挿通方向後側)ではなくナット23の上側(表面側ないしボルト挿通方向前側)に配設することも可能である。この場合は、ボルト11を先ずボルト仮固定用の部材24に螺入又は圧入させ、次いでナット23に螺入させる。但しこの場合は、ボルト11を先にナット23に螺入させつつその勢いでボルト仮固定用の部材24に螺入させる場合に較べて、ボルト仮止め作業性はやや低下する。何れの場合もボルト仮固定用の部材24とナット23は端子台15の内部で回り止めされている。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係るボルトを用いた端子接続構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同じくボルトを用いた端子接続構造を示す平面図である。
【図3】同じくボルトを用いた端子接続構造を示す縦断面図である。
【図4】ボルトを用いた端子接続構造を備える電気接続箱の一実施形態を示す平面図である。
【図5】従来のボルトを用いた端子接続構造を備える電気接続箱の一形態を示す平面図である。
【図6】従来のボルトを用いた端子接続構造の一形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
1 端子
9 開口
10 スロット
11 ボルト
15 端子台(絶縁ブロック)
20 係止爪(係止部)
23 ナット
23c 下端面(ボルト貫通面)
24 ボルト仮固定用の部材
24a 孔部(ボルト挿通部)
27a,28a 端子部
J 電気接続箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ブロックにナットが設けられ、ナットにボルトが螺入されて端子と他の端子部とが締付接続されるボルトを用いた端子接続構造において、前記ナットに隣接して前記絶縁ブロックにボルト仮固定用の部材が設けられ、該ボルト仮固定用の部材が該ボルトのねじ山径よりも小径なボルト挿通部を有することを特徴とするボルトを用いた端子接続構造。
【請求項2】
前記ボルト仮固定用の部材が前記ナットのボルト貫通面側に配置されたことを特徴とする請求項1記載のボルトを用いた端子接続構造。
【請求項3】
前記ボルト仮固定用の部材が前記ナットのボルト貫通面に固定されたことを特徴とする請求項2記載のボルトを用いた端子接続構造。
【請求項4】
前記ボルト仮固定用の部材が前記絶縁ブロックに一体に形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載のボルトを用いた端子接続構造。
【請求項5】
前記ボルト仮固定用の部材が合成樹脂材で形成されたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のボルトを用いた端子接続構造。
【請求項6】
前記ボルト仮固定用の部材の前記ボルト挿通部の内径が前記ボルトのねじ谷径に相当することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のボルトを用いた端子接続構造。
【請求項7】
前記端子がボルト挿通用のスロットと幅広な開口とを連通して有し、前記絶縁ブロックが該開口に係合する係止部を有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のボルトを用いた端子接続構造。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載のボルトを用いた端子接続構造を備えることを特徴とする電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−4733(P2006−4733A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179359(P2004−179359)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】