説明

ボルトテンショナー

【課題】ボルトにピストンを連結してからボルトにナットを締結するまでの作業時間を短縮するボルトテンショナーを提供する。
【解決手段】環状で周方向に沿って開閉自在な治具1と、周方向に沿って配列された複数のシリンダ室2と、シリンダ室2に同時に流体圧を供給自在な共通流路3と、複数のピストン4と、複数のボルト6に接続される複数の対ボルト接続部5と、複数の対ピストン接続部7と、フランジF1から反力Rを受ける複数の反力受け部材8とを有し、対ボルト接続部5と対ピストン接続部7の間には、両者間の相対的な位置移動に応じて、ピストン4とボルト6を軸方向に沿って解除可能に係合させる結合構造5a,7aが形成され、反力受け部材8は、周方向に沿って複数のボルト6の間にボルト6から離間して配列され、治具1の径方向に沿ってピストン4の径方向幅よりも長く延在してフランジF1と当接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトテンショナーに関し、特に、複数のボルトを同時に引っ張ることが可能なボルトテンショナーに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の被締結物、例えば、対向する二枚のフランジをボルト及びナットを用いて互いに固定する場合、その原理は以下のようなものである:
(1)二枚のフランジに挿通されたボルトにナットを締めていくと、ボルトは軸方向に引っ張られ、わずかに伸びる;
(2)このとき、ボルトには元に戻ろうとする反発力、すなわち、軸力が発生する;
(3)この軸力が、ナットを介して、ボルト頭部とナットの間に挟まれている二枚のフランジに作用することにより、二枚のフランジが互いに固定される。
【0003】
油圧式のボルトテンショナーは、油圧を用いてボルトを機械的に引っ張ることにより前記軸力を発生させる。操作者は、この軸力が発生している状態でナットを締め込んでいって、ナットを被締結物上に着座させ、着座後、油圧を解除する。ナット締め込み時、ボルトは油圧により引っ張られているから、操作者は、小さな操作力でナットを締め込むことができる。
【0004】
特許文献1には、フランジ上に周方向に沿って配列された複数のボルト及びナットと、前記フランジ上に装着されるリング状治具と、前記リング状治具上にリング状に延在する空気圧用配管と、前記リング状治具の外周面を削って形成された外周面油路と、前記リング状治具内に径方向に沿って形成され前記外周面油路と連通する径方向油路と、前記リング状治具上にリング状に配列された複数の駆動装置と、を有する、ボルトテンショナーが開示されている。
前記外周面油路は、前記リング状治具の外周面を削った溝を、リング状のカバーで覆い、該カバーを該外周面に溶接することにより形成されている。
前記複数の駆動装置はいずれも、径方向に変位して前記ボルトの先端にそれぞれセレーション結合される係止部材と、前記空気圧用配管に接続され前記係止部材に空気圧を印加して前記セレーション結合を強固にする前記径方向に作動する空気圧シリンダと、前記外周面油路に接続され前記ボルトを引っ張るための軸方向に作動する油圧シリンダと、を備えている。
前記油圧シリンダは、前記係止部材と前記ボルトの軸方向に沿って当接して該軸方向に沿ってストロークするハウジングと、前記ハウジング内に装填され、前記径方向油路と連通する軸内油路を備えた中空ピストンと、前記中空ピストンと前記ハウジングの軸方向間に形成され前記軸内油路と連通する油圧室と、を備えている。
前記リング状治具の下面には、前記ボルトが貫通する外筒が固定されている。前記外筒の下端面は、前記フランジ上面に当接し、前記中空ピストンに印加される反力を受け止める。
【0005】
特許文献2には、スタッドボルト先端にねじ込まれるプラーバーと、前記プラーバー及び前記プラーバーが挿通する円筒ハウジングと、前記プラーバーの前記円筒ハウジングよりも上方に突出する先端にセレーション嵌合される分割ナットと、前記円筒ハウジング上端面と前記分割ナット下端面の間に装填されるピストンと、前記円筒ハウジングの下部周面に形成されてスタッドボルトに締め付けられるナットにスパナをアクセスさせるためのナット弛緩用穴と、を有する、ボルトテンショナーが開示されている。
【0006】
特許文献3には、ボルトの軸方向に沿ってシリンダ装置を直列に複数段積み重ね上げ、前記シリンダ装置の下方であって前記ボルトの外周には、該シリンダ装置と上フランジの間に介在して該シリンダ装置の反力を受け止める円筒状ベースが配置されている、ボルトテンショナーが開示されている。
このボルトテンショナーは、ボルトの伸びを計測し、ボルトの伸びに応じてシリンダ装置に供給する油圧を調節している。
【0007】
特許文献4には、段付きフランジの外周側段部にボルトが挿通され、該フランジの内周側段部を反力受け面とする第1のボルトテンショナーと、フランジの外周部に同心円上に配置された複数のボルトのうち、数本の該ボルトを引っ張ると同時に、他の数本の該ボルトの端面を反力受け面とする第2のボルトテンショナーと、がそれぞれ開示されている。
【0008】
特許文献5には、フランジの外周部に同心円上に配置された複数のボルトに対して、該ボルトの数だけ設けられた複数のシリンダ装置と、複数のシリンダ装置の数だけ設けられ、一つの該シリンダ装置と油圧ポンプとを接続する耐圧ホースと、を有する、ボルトテンショナーが開示されている。このボルトテンショナーは、ボルトテンショナーの支持板と、上部フランジとの軸方向間に支柱となるスペーサを配置している。スペーサの径は、ボルトやナットの径と比較して小さく設定されている。
【0009】
【特許文献1】特公昭46−2847号公報
【特許文献2】特開平8−257932号公報
【特許文献3】特開平11−216625号公報
【特許文献4】特開2000−263459号公報
【特許文献5】特開平8−11063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のボルトテンショナーには下記の問題点がある:
・ボルトへの係止部材の取り付けが煩雑である;
・フランジを固定するボルトの先端に係止部材を取り付け、係止部材の下に油圧シリンダを配置するため、フランジ固定用の該ボルトを長くする必要がある。また、ボルトテンショナー全体が軸方向に肥大化する;
・リング状部材の外周面に油路を形成しているため、大きな油圧が供給されたとき、油路外周面側のシールが不十分になったり、リング状カバーが脱落するおそれがある;
・フランジを固定するボルトの周囲、すなわち、ボルトの直近に、反力受け用の外筒を配置しているため、ボルトにナットを締め込む際に、ナットにスパナを装着し難い。
【0011】
特許文献2のボルトテンショナーには下記の問題点がある:
・プラーバーへの分割ナット(係止部材)の取り付けが煩雑である;
・プラーバーの円筒ハウジングよりも上方に突出している先端に分割ナット(係止部材)を係止するため、長いプラーバーが必要であり、ボルトテンショナー全体が軸方向に肥大化する;
・フランジを固定するボルトの周囲、すなわち、ボルトの直近に、反力受け用の外筒を配置しているため、ボルトにナットを締め込む際に、ナットにスパナを装着し難い。
・フランジを固定するスタッドボルトの周囲、すなわち、スタッドボルトの直近に、反力受け用の外筒を配置しているため、ボルトにナットを締め込む際に、ナットにスパナを装着し難い。また、円筒ハウジングに、ナット弛緩用穴を形成しているため、大きな反力を受ける円筒ハウジングの強度が低下してしまう。
【0012】
特許文献3のボルトテンショナーには下記の問題点がある:
・シリンダ装置を複数段積み重ね上げているため、ボルトが長くなり、ボルトテンショナー全体が軸方向に肥大化する。
・フランジを固定するボルトの周囲、すなわち、ボルトの直近に、反力受け用の円筒状ベースを配置しているため、ボルトにナットを締め込む際に、ナットにスパナを装着し難い。
・ボルトの伸びを計測する装置は、一般的には、超音波による計測装置が使用されるが、装置の規模が大きく、又その設置には手間が掛かるため、ボルトに油圧を印加しながらのボルトの伸びを計測すること、すなわち、リアルタイムな使用は実際には困難である。
【0013】
特許文献4のボルトテンショナーには下記の問題点がある:
・フランジの内周側に反力受け面を配置する場合には、特に、フランジが小さい場合、反力受け面の面積が十分に確保できず、ボルトテンショナーの支持が安定しないおそれがある。
・複数のボルトのうちの一部を反力受け面とする場合には、逐一、ボルトテンショナーを脱着しなければならず、全部のボルトにナットをそれぞれ締め終わるまでに大変な時間を要する。
【0014】
特許文献5のボルトテンショナーには下記の問題点がある:
・ボルトの数だけ、多数のシリンダ装置があり、多数のシリンダ装置の数だけ油圧供給用のホースがあるため、ホースの接続に手間が掛かり、又ホースの取り回しが入り組むことになり、それがナット締結作業の支障となるという問題がある;
・反力受け面となるスペーサの径が小さいため、ボルトにテンションを印加した際に、ボルトテンショナーの支持が不安定になるおそれがある。
【0015】
ところで、発電所においては、定期点検等に伴い、タービンの運転を停止し、タービン燃焼管のフランジを固定しているボルトを交換する場合がある。このとき、作業時間が長ければタービンの運転停止期間が長くなって、多額の損失を生じる。また、タービン燃焼管のフランジ周辺には、燃焼管及びその他の配管、さらに各種コードが取り回されている。したがって、従来のボルトテンショナーを上記交換作業に使用した場合、それが配管等と干渉したり、その取り付けに手間が掛かったりするため、現状では、該作業にボルトテンショナーは使用されていない。
【0016】
本発明の目的は、簡素な構成によって、狭隘な作業現場においても、ボルトにピストンを連結してからボルトにナットを締結するまでの作業時間を短縮可能なボルトテンショナーを提供することである。
本発明の別の目的は、ボルトにピストンを迅速に連結可能なボルトテンショナーを提供することである。
本発明の別の目的は、安定した状態でボルトにテンションを印加して、ボルトにナットを締結することができるボルトテンショナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、第1の視点において、複数の被締結部材に挿通された複数のボルトを軸方向に沿って引っ張ることにより、該ボルトに対するナットのねじ込み操作を補助するボルトテンショナーであって、環状であって周方向に沿って開閉ないし分割自在な治具と、前記治具内部に形成され前記周方向に沿って配列された複数のシリンダ室と、前記治具内部に形成され、前記複数のシリンダ室を互いに連通させて全ての該シリンダ室に同時に流体圧を供給自在な共通流路と、前記複数のシリンダ室にそれぞれ装填され前記共通流路を通じて該複数のシリンダ室に同時に供給される流体圧によって前記治具の軸方向に沿って同時にストローク自在な複数のピストンと、前記複数のピストンにそれぞれ設けられ、前記複数のボルトに対してそれぞれ接続自在な複数の対ボルト接続部(ピストン取付部ないしピストン一体部)と、前記複数のボルトの端部にそれぞれ設けられた複数の対ピストン接続部(ボルト取付部ないしボルト一体部)と、前記対ボルト接続部と前記対ピストン接続部の間に形成され、両者間の相対的な位置移動に応じて、前記ピストンと前記ボルトを少なくとも前記軸方向に沿って解除可能に係合させる結合構造と、前記軸方向に沿って前記治具と前記被締結部材の間に介在し、前記流体圧によって該ピストンのストローク方向と反対側に同時に付勢されると共に該被締結部材から反力を受ける複数の反力受け部材と、を有する、複数のボルトを同時に引張自在なボルトテンショナーを提供する。
【0018】
本発明は、第2の視点において、複数の被締結部材に挿通された複数のボルトを軸方向に沿って引っ張ることにより、該ボルトに対するナットのねじ込み操作を補助するボルトテンショナーであって、環状であって周方向に沿って開閉ないし分割自在な治具と、前記治具内部に形成され前記周方向に沿って配列された複数のシリンダ室と、前記治具内部に形成され、前記複数のシリンダ室を互いに連通させて全ての該シリンダ室に同時に流体圧を供給自在な共通流路と、前記複数のシリンダ室にそれぞれ装填され前記共通流路を通じて該複数のシリンダ室に同時に供給される流体圧によって前記治具の軸方向に沿って同時にストローク自在な複数のピストンと、前記ピストン及び前記ボルトに直接又は間接的に合体状態で結合し、分割状態で該結合が解除される分割スリーブと、前記合体状態の前記分割スリーブを前記ピストン及び前記ボルトに向かって付勢自在な弾性部材と、前記軸方向に沿って前記治具と前記被締結部材の間に介在し、前記流体圧によって該ピストンのストローク方向と反対側に同時に付勢されると共に該被締結部材から反力を受ける複数の反力受け部材と、を有する、複数のボルトを同時に引張自在なボルトテンショナーを提供する。
【0019】
本発明は、第3の視点において、複数の被締結部材に挿通された複数のボルトを軸方向に沿って引っ張ることにより、該ボルトに対するナットのねじ込み操作を補助するボルトテンショナーであって、環状であって周方向に沿って開閉ないし分割自在な治具と、前記治具内部に形成され前記周方向に沿って配列された複数のシリンダ室と、前記治具内部に形成され前記複数のシリンダ室を連通する全ての該シリンダ室に同時に流体圧を供給自在な共通流路と、前記複数のシリンダ室にそれぞれ装填され前記共通流路を通じて該複数のシリンダ室に同時に供給される流体圧によって前記治具の軸方向に沿って同時にストローク自在な複数のピストンと、前記複数のピストンにそれぞれ設けられ、前記複数のボルトに対してそれぞれ接続自在な複数の対ボルト接続部と、前記複数のボルトの端部にそれぞれ設けられた複数の対ピストン接続部と、前記対ボルト接続部と前記対ピストン接続部の間に形成され、両者間の相対的な位置移動に応じて、前記ピストンと前記ボルトを少なくとも前記軸方向に沿って解除可能に係合させる結合構造と、前記軸方向に沿って前記治具と前記被締結部材の間に介在し、前記流体圧によって該ピストンのストローク方向と反対側に同時に付勢されると共に該被締結部材から反力を受ける複数の反力受け部材と、を有し、前記反力受け部材は、前記周方向に沿って前記複数のボルトの間に該ボルトから離間して配列され、前記治具の径方向に沿って前記ピストンの径方向幅よりも長く延在して前記被締結部材と当接する、ボルトテンショナーを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のボルトテンショナーの効果を下記に例示する:
・複数のピストンに流体圧を供給する共通流路が治具の内部に形成されていることにより、ボルトテンショナーの構造が簡素化され、又ボルトとピストンの接続作業やナット締結作業の支障となるホースやコード等の本数が減少して作業がし易くなるため、狭隘な作業現場においても、ボルトにピストンを連結してからボルトにナットを締結するまでの作業時間が短縮される;
・共通流路を通じて、全部のボルトに同時に均等なテンション(軸力)を印加することができる。
・治具が開閉自在であることにより、本発明のボルトテンショナーは、特に、中央に配管が取り付けられたフランジの締結作業に好適に適用できる。
【0021】
特に、本発明の第1の視点に係るボルトテンショナーの効果を下記に例示する:
・対ボルト接続部と対ピストン接続部の間の相対的な位置移動に応じて、好ましくは、両者の一方の回転操作に応じて、両者を軸方向に沿って解除可能に係合する結合構造により、ボルトにピストンをワンタッチで迅速に接続できる。
・治具の一側、特に、治具と被締結物の間に、対ボルト接続部及び対ピストン接続部を配置して、ボルト長ないしボルトテンショナーの軸方向高さを短縮することができる。
【0022】
特に、本発明の第2の視点に係るボルトテンショナーの効果を下記に例示する:
・ピストンとボルトの接続構造がきわめて簡素化されている;
・分割スリーブがピストンとボルトの両者に結合自在であるため、両者を接続するために要する部品数が減少する。
【0023】
特に、本発明の第3の視点に係るボルトテンショナーの効果を下記に例示する:
・反力受け部材が、治具の径方向に沿ってピストンの径方向幅よりも長く延在して被締結部材と当接することにより、反力受け部材8がフランジF1に当接する有効な反力受け面積が大きくされ、又反力受け面が径方向にも延在するため、治具ないしボルトテンショナーの被締結部材に対する取付状態が安定し、安定した状態でボルトにテンションを印加して、ボルトにナットを締結することができる;
・ボルトテンショナーが被締結部材に対して安定した状態で支持されるため、例えば、二枚のフランジを締結する場合、二枚のフランジ間の隙間の精度を高めることができる。
・ボルトと反力受け部材が離間しているため、狭隘な作業現場においても、ナットにスパナ等の締付工具を装着し易い。
【0024】
なお、請求の範囲の記載において、各請求項中の構成要素に付与した図面参照符号は、専ら発明の理解を容易にするためのものであって、各請求項に係る発明を実施例又は図面の内容に限定することを意図するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の好ましい実施の形態において、前記結合構造は、半回転以下の回転操作により、前記対ボルト接続部と前記対ピストン接続部を前記軸方向に沿って解除可能に係合させる。回転操作を経て、ボルトとピストンが軸方向に係合することにより、該係合がより確実になる。好ましくは、この結合構造には、セレーション結合、又は凹部と凸部の結合、或いは、ボールとボール溝の嵌合を利用した結合が採用される。別に、好ましくは、スリーブ、特に、分割スリーブを介して、ボルトとピストンを簡単な操作により結合させる。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態において、ピストンに設けられる対ボルト接続部は、ピストンと一体又は別体に設けられる。一体の場合、例えば、ピストン及び対ボルト接続部が、回転自在に治具に支承され、対ボルト接続部の回転操作によって、対ボルト接続部がボルトに設けられた対ピストン接続部と軸方向に係合する。別体の場合、例えば、対ボルト接続部が回転自在にピストンに支承され、対ボルト接続部の回転操作によって、対ボルト接続部がボルトに設けられた対ピストン接続部と軸方向に係合する。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態において、ボルトに設けられた対ピストン接続部は、ボルトと一体又は別体に設けられる。一体の場合、例えば、ボルトの先端部に、ボルト接続部が形成される。別体の場合、例えば、対ボルト接続部がボルトに螺合される。
【0028】
本発明の好ましい実施の形態においては、ボルトとピストンの接続箇所が治具と被締結部材の間にあることにより、ボルトを長くする必要がなくなり、ボルトテンショナーの軸方向高さを小さく構成することができる。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数のボルトと前記複数の反力受け部材の間の空間を利用して前記ナットが前記ねじ込み操作自在である。
【0030】
本発明の好ましい実施の形態に係るボルトテンショナーは、前記周方向に沿って所定間隔離間して配置され、前記複数の被締結部材間の隙間をそれぞれ測定する複数の隙間測定手段と、前記複数の隙間測定手段の測定結果に基づいて前記共通流路を介して前記複数のシリンダ室に同時に供給される流体圧をリアルタイムで制御自在な制御手段と、を有する。このボルトテンショナーは、ボルトに印加するテンションの制御を、被締結部材間の隙間を測定しその測定結果に基づいて実行するため、ボルトの長さを測定してその測定結果に基づいて前記制御を実行する場合に比べて、測定装置の構成が簡素化される。この結果、本発明のこの実施の形態に係るボルトテンショナーによれば、作業時間がさらに短縮され、又小径であってボルトが密集しているフランジの接続にも好適に適用される。また、隙間と、印加する流体圧との関係を予め計測しておき、実際の作業においては、流体圧の制御により、隙間、さらには、ボルトテンショナーに印加される軸力を適正に管理することができる。
【実施例1】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。図1は、本発明の一実施例に係るボルトテンショナーをフランジに接続した様子を模式的に示す平面展開図である。図2は、本発明の一実施例に係るボルトテンショナーの外観図である。
【0032】
図1を参照すると、本発明の一実施例に係るボルトテンショナーは、複数のフランジ(被締結部材)F1,F2に挿通された複数のボルト6を軸方向に沿って引っ張ることにより、ボルト6に対するナットNのねじ込み操作を補助するボルトテンショナーである。複数のフランジ(被締結部材)F1,F2の中央部には、配管Pがそれぞれ接続されている。複数のフランジF1,F2の周辺部には、同心円上に複数のボルト6が挿通されている。複数のフランジ(被締結部材)F1,F2の軸方向間には、ガスケットGが設けられている。複数のボルト6にナットNがそれぞれ締め込まれることにより、複数のフランジ(被締結部材)F1,F2及び配管P,Pが接続される。
【0033】
図1及び図2を参照すると、このボルトテンショナーは、環状であって周方向に沿って開閉ないし分割自在な治具1と、治具1内部に形成され前記周方向に沿って配列された複数のシリンダ室2と、治具1内部に形成され、複数のシリンダ室2を互いに連通させて全てのシリンダ室2に同時に油圧、水圧又は空気圧等の流体圧を供給自在な共通流路3と、複数のシリンダ室2にそれぞれ装填され共通流路3を通じて複数のシリンダ室2に同時に供給される流体圧によって治具1の軸方向に沿って同時にストローク自在な複数のピストン4と、複数のピストン4にそれぞれ設けられ、複数のボルト6に対してそれぞれ接続自在な複数の対ボルト接続部5と、複数のボルト6の端部にそれぞれ設けられた複数の対ピストン接続部7と、前記軸方向に沿って治具1とフランジF1の間に介在し、前記流体圧によってピストン4のストローク方向と反対側に同時に付勢されると共にフランジF1から反力Rを受ける複数の反力受け部材8と、を有している。
【0034】
特に、図2及び後述する図5を参照すると、反力受け部材8は、前記周方向に沿って複数のボルト6の間にボルト6から離間して配列され、治具1の径方向に沿ってピストン4の径方向幅よりも長く延在してフランジF1と当接している。反力受け部材8は、取付ボルト8aによって、治具1に固定される。
【0035】
このボルトテンショナーは、対ボルト接続部5と対ピストン接続部7の間に形成され、両者間の相対的な位置移動に応じて、ピストン4とボルト6を少なくとも前記軸方向に沿って解除可能に係合させる結合構造(5a,7a)を有している。
【0036】
図3(A)及び(B)は、図2に示したボルトとピストンの結合構造の詳細を説明する図であり、図3(A)は対ピストン接続部、図3(B)は対ボルト接続部を示している。
【0037】
特に、図1及び図3(A)を参照すると、ボルト6に取り付けられる対ピストン接続部7は、環状であって、その内周面に形成されたメネジ7bでボルト6のオネジ6aに螺合し、その外周面には、外角ネジ7aが形成されている。外角ネジ7aは、60度の周方向長さを有し、60度間隔で三個形成されている。
【0038】
特に、図1、図2及び図3(B)を参照すると、ピストン4と一体の対ボルト接続部5は、カップ状であって、その内周面には、内角ネジ5aが形成されている。内角ネジ5aは、60度の周方向長さを有し、60度間隔で複数個形成されている。
【0039】
角ネジ5a,7a同士は、ピストン4の頭部に設けられたつまみ4a又は対ボルト接続部5の1/6回転の回転操作により、セレーション結合して、対ボルト接続部5と対ピストン接続部7を軸方向に沿って解除可能に係合自在であって、上述した結合構造(5a,7a)を構成する。
【0040】
対ボルト接続部5及び対ピストン接続部7は、すなわち、結合構造(5a,7a)は、治具1とフランジF1の間にあるため、ボルト6が短くなり、又ボルトテンショナーの軸方向高さがコンパクトになっている。
【0041】
また、このボルトテンショナーには、前記周方向に沿って所定間隔離間して配置され、複数のフランジF1,F2間の隙間をそれぞれ測定する複数の隙間測定手段となるポテンショメータ9と、複数のポテンショメータ9の測定結果に基づいて共通流路3を介して複数のシリンダ室2に同時に供給される流体圧をリアルタイムで制御自在な制御手段であるコンピュータ10と、が付設されている。コンピュータ10は、共通油路3の入口3aに接続されたポンプ11の吐出圧や流量を、複数のポテンショメータ9の測定結果に基づいて制御する。
【0042】
図4は、図1及び図2に示した治具のシリンダ室を説明するための一部破断断面図である。図4を参照すると、治具1において、ピストン4が挿入された内部空間には、ピストンの径大部(スプール)と治具1の内フランジとの間に、シリンダ室2が形成されている。同心円状に配列された複数のピストン4にそれぞれ設けられた複数のシリンダ室2は、次に詳細に説明する共通流路3によって互いに連通している。また、治具1とピストン4の間には、リターンスプリング17が装填されている。
【0043】
図5は、図2に示した治具の底面図であって、治具内部に形成された共通流路を示している。図5を参照すると、環状の治具1の外周面上から内部に向かって、直線上に七本の流路3,・,3が延在している。七本の流路3,・,3はいずれも、切削加工により直線上に形成され、七本の流路3,・,3は正八角形の辺を構成している。七本の流路3,・,3は、シリンダ室2にそれぞれ連通し、又シリンダ室2を介して互いに連通して、共通流路3を構成している。七本の流路3,・,3の一端は、治具1の外周面に位置している。一本の流路3の一端が開口して共通流路3の入口3aとなる以外、その他の流路3の一端は栓がされる。
【0044】
次に、治具1のヒンジ部12及び開閉部13、さらにヒンジ部12における共通流路3の経路について詳細に説明する。
【0045】
図6は、図2に示した治具のヒンジ部の側面図である。図6を参照すると、環状の治具1には、図1に示したように、配管Pが接続されたフランジF1,F2に対して接続が容易となるよう開閉自在に構成されている。治具1は、半円状の第1及び第2の治具1a,1bから構成されている。第1及び第2の治具1a,1bは、ヒンジ部12で接続され、開閉部13で開放及び接続自在である。
【0046】
ヒンジ部12において、第1の治具1aの一端部は、軸方向両側に一対の凸部14,14を備え、第2の治具1bの一端部は、軸方向中央に凸部15を備えている。凸部15は、一対の凸部14,14間の凹部に挿入されている。一対の凸部14,14及び凸部15には、軸方向に沿って、ヒンジピン16に挿入されることにより、第1及び第2の治具1a,1bは互いに揺動可能になっている。このように、第1及び第2の治具1a,1bの接続部12は、凹部と凸部の嵌合構造から形成されている。この凹凸嵌合構造によれば、凸部同士の形状結合構造に比べて、図1に示したボルト6に大きなテンションが印加されたとき、ガタの発生が高度に防止される。
【0047】
開閉部13は、ヒンジ部12と基本的に同様の構成を有している。但し、ヒンジピン16が挿入及び固定自在、すなわち、開閉部13は開閉ロック自在とされ、又後述する共通流路3が形成されていない。
【0048】
引き続き図6を参照して、ヒンジ部12における共通流路3の経路について説明する。図6中右側から左側に向かって、共通流路3は、第1の治具1aの軸方向中央内を面方向に延在した後、軸方向上方に向かって延在し、続いて、凸部14内を面方向に延在してヒンジピン16を越えた後、軸方向下方に向かって延在し、第2の治具1b内に軸方向に沿って延在し、第2の治具1bの軸方向中央内に面方向に沿って延在している。共通流路3の軸方向に沿って延在する部分も、切削加工により、治具1の内部に直線上に形成され、その開口には栓がされている。このように、共通流路3を、ヒンジ部12において、面方向に延在する部分と軸方向に延在する部分から構成することにより、治具1を開閉自在としながら、全てのピストン4に同時に流体圧を供給することができる。
【0049】
本実施例に係る共通油路3は、治具1の内部に形成されていることにより、シールが容易であり、操作の邪魔にもならいないという利点を有している。また、共通流路3は、直線状に形成された流路の組み合わせから構成されているため、直線的な切削加工によって容易に形成することができる。
【0050】
以上説明した本発明の一実施例に係るボルトテンショナーの操作方法を説明する。図1及び図3(A)を参照すると、操作者は、複数のフランジF1,F2に挿通され、ナットNが螺合されているボルト6の端部に、対ピストン接続部7を螺合する。
【0051】
図1、図2及び図5を参照すると、操作者は、治具1の開閉部13を開いて、治具1の中央部に配管Pを挿入した後、開閉部13を閉止しロックする。
【0052】
図1、図3(A)及び図3(B)を参照すると、操作者は、治具1を、複数のフランジF1,F2に向かって下降させ、対ボルト接続部5と対ピストン接続部7の回転方向位置を合わせて、ピストン4及び対ボルト接続部5をさらに下降させ、さらに、ピストン4ないし対ボルト接続部5を1/6回転分、回転操作して、角ネジ5a,7a同士をセレーション結合させ、ボルト6とピストン4を軸方向に係合させる。このように、対ピストン接続部6と、対ボルト接続部5の接続操作、すなわち、ボルト6とピストン4の接続操作は、ワンタッチで簡単に実行することができる。
【0053】
以上の操作は、全てのボルト6及びピストン4に対して実行される。このとき、図1に示したように、複数の反力受け部材8の下面は、フランジF1の上面に当接する。反力受け部材8はいずれも、治具1の径方向に沿ってピストン4の径方向幅よりも長く延在してフランジF1と当接することにより、反力受け部材8がフランジF1に当接する有効な反力受け面積が大きくされ、又反力受け面が径方向にも長大に延在するため、治具1ないし本実施例に係るボルトテンショナーの複数のフランジF1,F2に対する取付状態が安定し、安定した状態でボルト6にテンションを印加することができる。
【0054】
図1を参照して、操作者は、共通流路3の入口3aにポンプを接続する。
【0055】
続いて、コンピュータ10或いは操作者は、複数のフランジ間F1,F2の隙間を測定するポテンショメータ9の測定結果に基づいて、共通流路3を介して複数のシリンダ室2に同時に供給される流体圧を制御する。これによって、同心円状に配列された全部のボルト6には、均等のテンションが同時に印加され、複数のフランジF1,F2の平行度が維持された状態で、全部のシリンダ室2内の圧力は、前記隙間が所定値に到達するまで、迅速に昇圧される。前記隙間が所定値に到達すると、操作者は、ナットNにスパナを嵌合させ、ボルト6に対して締め込んでいく。このとき、反力受け部材8が、前記スパナのナットNに対する嵌合を邪魔しない位置にあるため、ナットNの締め込み操作は迅速かつ容易に実行される。全てのナットNの締め込み操作終了後、複数のシリンダ室2に供給された流体圧は同時に迅速に解除され、以降は、以上説明した工程と逆の順番で、このボルトテンショナーが取り外される。
【実施例2】
【0056】
本発明のボルトテンショナーに適用される、他の実施例に係るボルトとピストンの結合構造を説明する。図7(A)〜図7(D)は、図1及び図2に示したボルトテンショナーに適用可能な、他の実施例に係るボルトとピストンの結合構造を説明するための図であって、ボルトとピストンの接続操作を説明する工程図である
【0057】
図7(A)を参照すると、環状の対ピストン接続部7の内周面には、ボルト6のオネジ6aと螺合するメネジ7aが形成され、外周面には、凸部7aが120度間隔で形成されている。一方、ピストン4と一体回転するカップ状の対ボルト接続部5の環状壁には、軸方向に延在する部分と径方向に延在する部分を備える溝5aが120度間隔で形成されている。
【0058】
結合構造(5a,7a)を構成する、溝5aと凸部7aの接続操作について説明する。図7(A)を参照すると、操作者は、ナットNが螺合されているボルト6の端部に、対ピストン接続部7を螺合する。図7(B)を参照すると、操作者は、対ボルト接続部5を対ピストン接続部7に向かって移動させ、図7(C)から図7(D)を参照すると、対ボルト接続部5と対ピストン接続部7の回転方向位置を合わせて、凸部7aを溝5aの軸方向延在部に嵌合させた後、多くとも1/3回転の回転操作により、凸部7aを溝5aの径方向延在部に嵌合させて、ピストン4をボルト6に軸方向に沿って解除可能に係合させる。
【実施例3】
【0059】
本発明のボルトテンショナーに適用される、さらに他の実施例に係るボルトとピストンの結合構造を説明する。図8は、図1及び図2に示したボルトテンショナーに適用可能な、さらに他の実施例に係るボルトとピストンの結合構造を説明するための図である。
【0060】
図8を参照すると、ボルト6とピストン4の結合には、断面半円状の分割スリーブ18,19が採用されている。ピストン4(或いは対ボルト接続部5)の外周面には、第1の外角ネジ20が形成されている。ボルト6(或いは対ピストン接続部7)の外周面には、第2の外角ネジ21が形成されている。分割スリーブ18,19の内周面には、第1の内角ネジ22がそれぞれ形成されている。分割スリーブ18,19の外周面には、環状溝23がそれぞれ形成されている。分割スリーブ18,19の環状溝23同士は、分割スリーブ18,19の合体状態で周方向に連通自在である。環状溝23には、環状の弾性部材24が嵌合自在である。分割スリーブ18,19は、ピストン4及びボルト6に合体状態で結合し、分割状態で該結合が解除される。弾性部材24は、前記合体状態の分割スリーブ18,19をピストン4及びボルト6に向かって付勢自在である。
【0061】
ボルト6とピストン4の結合操作について説明する。操作者は、ピストン4とボルト6を互いに軸方向に近接させ、軸方向に並んだ第1及び第2の外角ネジ20,21に、分割スリーブ18,19の第1の内角ネジ22をそれぞれ嵌合させ、分割スリーブ18,19を環状に合体させた後、環状溝23に弾性部材24を嵌合させる。弾性部材24の付勢力により、分割スリーブ18,19は、ピストン4及びボルト6と軸方向に強固に結合し、ボルト6にピストン4が接続される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のボルトテンショナーは、複数のボルト及びナットによって締結される複数のフランジ、例えば、タービン燃焼管用フランジの接続に好適に利用される。本発明のボルトテンショナーは、複数の被締結物の間に隙間が有るもの及び無いもの、又その間にガスケット等の他部材があるものを問わず、種々の被締結物に適用される。さらに、本発明のボルトテンショナーは、発電所等において、タービン燃焼管のフランジを固定しているボルトの交換作業に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施例に係るボルトテンショナーをフランジに接続した様子を模式的に示す平面展開図である。
【図2】本発明の一実施例に係るボルトテンショナーの外観図である。
【図3】(A)及び(B)は、図2に示したボルトとピストンの結合構造の詳細を説明する図であり、(A)は対ピストン接続部、(B)は対ボルト接続部を示している。
【図4】図1及び図2に示した治具のシリンダ室を説明するための一部破断断面図である。
【図5】図2に示した治具の底面図であって、治具内部に形成された共通流路を示している。
【図6】図2に示した治具のヒンジ部の側面図である。
【図7】(A)〜(D)は、図1及び図2に示したボルトテンショナーに適用可能な、他の実施例に係るボルトとピストンの結合構造を説明するための工程図である。
【図8】図1及び図2に示したボルトテンショナーに適用可能な、さらに他の実施例に係るボルトとピストンの結合構造を説明するための図である。
【符号の説明】
【0064】
1 治具
2 シリンダ室
3 共通流路,流路
3a 入口
4 ピストン
4a つまみ
5 対ボルト接続部(ピストン取付部ないしピストン一体部)
5a 内角ネジ,溝
6 ボルト
7 対ピストン接続部(ボルト取付部ないしボルト一体部)
7a 外角ネジ,凸部
5a,7a 結合構造
8 反力受け部材
8a 取付ボルト
9 ポンテショメータ(隙間測定手段)
10 コンピュータ(制御手段)
11 ポンプ
12 ヒンジ部
13 開閉部
14,14 一対の凸部
15 凸部
16 ヒンジピン
17 リターンスプリング
18,19 分割スリーブ
20 第1の外角ネジ
21 第2の外角ネジ
22 第1の内角ネジ
23 環状溝
24 弾性部材(輪ゴム)
R 反力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被締結部材(F1,F2)に挿通された複数のボルト(6)を軸方向に沿って引っ張ることにより、該ボルトに対するナット(N)のねじ込み操作を補助するボルトテンショナーであって、
環状であって周方向に沿って開閉ないし分割自在な治具(1)と、
前記治具内部に形成され前記周方向に沿って配列された複数のシリンダ室(2)と、
前記治具内部に形成され、前記複数のシリンダ室を互いに連通させて全ての該シリンダ室に同時に流体圧を供給自在な共通流路(3)と、
前記複数のシリンダ室にそれぞれ装填され前記共通流路を通じて該複数のシリンダ室に同時に供給される流体圧によって前記治具の軸方向に沿って同時にストローク自在な複数のピストン(4)と、
前記複数のピストンにそれぞれ設けられ、前記複数のボルトに対してそれぞれ接続自在な複数の対ボルト接続部(5)と、
前記複数のボルトの端部にそれぞれ設けられた複数の対ピストン接続部(7)と、
前記対ボルト接続部と前記対ピストン接続部の間に形成され、両者間の相対的な位置移動に応じて、前記ピストンと前記ボルトを少なくとも前記軸方向に沿って解除可能に係合させる結合構造(5a,7a)と、
前記軸方向に沿って前記治具と前記被締結部材の間に介在し、前記流体圧によって該ピストンのストローク方向と反対側に同時に付勢されると共に該被締結部材から反力を受ける複数の反力受け部材(8)と、
を有する、ことを特徴とする、複数のボルトを同時に引張自在なボルトテンショナー。
【請求項2】
前記結合構造は、半回転以下の回転操作により、前記対ボルト接続部と前記対ピストン接続部を前記軸方向に沿って解除可能に係合させる、ことを特徴とする請求項1記載のボルトテンショナー。
【請求項3】
複数の被締結部材(F1,F2)に挿通された複数のボルト(6)を軸方向に沿って引っ張ることにより、該ボルトに対するナット(N)のねじ込み操作を補助するボルトテンショナーであって、
環状であって周方向に沿って開閉ないし分割自在な治具(1)と、
前記治具内部に形成され前記周方向に沿って配列された複数のシリンダ室(2)と、
前記治具内部に形成され、前記複数のシリンダ室を互いに連通させて全ての該シリンダ室に同時に流体圧を供給自在な共通流路(3)と、
前記複数のシリンダ室にそれぞれ装填され前記共通流路を通じて該複数のシリンダ室に同時に供給される流体圧によって前記治具の軸方向に沿って同時にストローク自在な複数のピストン(4)と、
前記ピストン及び前記ボルトに直接又は間接的に合体状態で結合し、分割状態で該結合が解除される分割スリーブ(18,19)と、
前記合体状態の前記分割スリーブ(18,19)を前記ピストン及び前記ボルトに向かって付勢自在な弾性部材(24)と、
前記軸方向に沿って前記治具と前記被締結部材の間に介在し、前記流体圧によって該ピストンのストローク方向と反対側に同時に付勢されると共に該被締結部材から反力を受ける複数の反力受け部材(8)と、
を有する、ことを特徴とする、複数のボルトを同時に引張自在なボルトテンショナー。
【請求項4】
複数の被締結部材(F1,F2)に挿通された複数のボルト(6)を軸方向に沿って引っ張ることにより、該ボルトに対するナット(N)のねじ込み操作を補助するボルトテンショナーであって、
環状であって周方向に沿って開閉ないし分割自在な治具(1)と、
前記治具内部に形成され前記周方向に沿って配列された複数のシリンダ室(2)と、
前記治具内部に形成され前記複数のシリンダ室を連通する全ての該シリンダ室に同時に流体圧を供給自在な共通流路(3)と、
前記複数のシリンダ室にそれぞれ装填され前記共通流路を通じて該複数のシリンダ室に同時に供給される流体圧によって前記治具の軸方向に沿って同時にストローク自在な複数のピストン(4)と、
前記複数のピストンにそれぞれ設けられ、前記複数のボルトに対してそれぞれ接続自在な複数の対ボルト接続部(5)と、
前記複数のボルトの端部にそれぞれ設けられた複数の対ピストン接続部(7)と、
前記対ボルト接続部と前記対ピストン接続部の間に形成され、両者間の相対的な位置移動に応じて、前記ピストンと前記ボルトを少なくとも前記軸方向に沿って解除可能に係合する結合構造(5a,7a)と、
前記軸方向に沿って前記治具と前記被締結部材の間に介在し、前記流体圧によって該ピストンのストローク方向と反対側に同時に付勢されると共に該被締結部材から反力を受ける複数の反力受け部材(8)と、
を有し、
前記反力受け部材(8)は、前記周方向に沿って前記複数のボルトの間に該ボルトから離間して配列され、前記治具の径方向に沿って前記ピストンの径方向幅よりも長く延在して前記被締結部材と当接する、
ことを特徴とする複数のボルトを同時に引張自在なボルトテンショナー。
【請求項5】
前記周方向に沿って所定間隔離間して配置され、少なくとも前記複数のシリンダ室に前記流体圧の供給中、同時に、前記複数の被締結部材間の隙間をそれぞれ測定する複数の隙間測定手段(9)と、
前記複数の隙間測定手段の測定結果に基づいて前記共通流路を介して前記複数のシリンダ室に同時に供給される流体圧をリアルタイムで制御自在な制御手段(10)と、
を有する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一記載のボルトテンショナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−155288(P2010−155288A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333325(P2008−333325)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000221535)東電工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】