説明

ボルト軸力検出システム及びボルト軸力検出方法

【課題】ボルト軸部に作用するボルト軸力を、ボルト軸部の変形が弾性域であるか塑性域であるかに拘わらず精度良く検出する。
【解決手段】変位検出部33は、ボルト頭部の頂面の所定の検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量を、変位センサ20からの検出信号に基づいて検出する。記憶部は、検出対象位置の変形量とボルト軸力との対応関係を予め記憶し、軸力検出部34は、変位検出部34が検出した変形量と記憶部25が記憶する対応関係とを用いて、ボルト軸部に作用するボルト軸力を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト軸力検出システム及びボルト軸力検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルト締結時のボルト軸部の変形量(伸長量や歪み量)を用いて、ボルト軸部に作用するボルト軸力を検出する方法が知られている。ボルト軸部の変形量は、例えばひずみゲージや超音波によって測定される。
【0003】
また、被試験ボルトとナットとの間に挟んだ荷重測定器(例えばロードセルや圧力計)によって、ボルト軸力を試験的に検出する方法も知られている。
【0004】
また、特開平4−161835号公報には、ボルトの締結完了時にボルト頭部の頂面に脆性塗料を塗布しておき、その塗料に亀裂が生じたときにボルトのゆるみが発生した(ボルト軸力が低下した)と判定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−118637号公報
【特許文献2】特開2006−308342号公報
【特許文献3】特開2004−93377号公報
【特許文献4】特開平4−161835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記ボルト軸部の変形量を用いてボルト軸力を検出する方法では、ボルト軸部が弾性域で変形している間はボルト軸部の変形量がボルト軸力に比例して増大するので、測定された変形量から精度良くボルト軸力を検出することが可能である。しかし、ボルト軸部の変形が弾性域を超えて塑性域に達すると、ボルト軸部の変形量がボルト軸力に比例して増大しないため、弾性域と同様に精度良くボルト軸力を検出することが難しい。
【0007】
また、上記荷重測定器によってボルト軸力を検出する方法は、特定の被試験ボルトのボルト軸力を検出するものであり、実際に使用される任意のボルトのボルト軸力を検出するものではない。
【0008】
また、上記特開平4−161835号公報に記載された方法は、締結作業時にボルト軸力を検出するものではない。
【0009】
そこで、本発明は、任意のボルト又はナットの締結作業時において、ボルト軸部に作用するボルト軸力を、ボルト軸部の変形が弾性域であるか塑性域であるかに拘わらず精度良く検出することが可能なボルト軸力検出システム及びボルト軸力検出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明のボルト軸力検出システムは、ボルト頭部からボルト軸部が一体的に延びるボルトの締結状態又はボルト軸部の一端からそのボルト軸部に螺合するナットの締結状態において、ボルト軸部に作用するボルト軸力を検出する装置であり、変位検出手段と記憶手段とボルト軸力検出手段とを備える。
【0011】
変位検出手段は、ボルト又はナットの締結に伴ってその締結方向へ微小変形するボルト頭部の頂面又はナットの一端側の開放面を検出対象面とし、この検出対象面のうちボルト軸心に対して所定距離となる位置を検出対象位置とし、この検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量を検出する。記憶手段は、検出対象位置の変形量とボルト軸力との対応関係を予め記憶している。ボルト軸力検出手段は、変位検出手段が検出した変形量と記憶手段が記憶する対応関係とを用いて、ボルト軸部に作用するボルト軸力を検出する。
【0012】
また、本発明のボルト軸力検出方法は、ボルト頭部からボルト軸部が一体的に延びるボルトの締結状態又はボルト軸部の一端からそのボルト軸部に螺合するナットの締結状態において、ボルト軸部に作用するボルト軸力を検出する方法である。当該方法では、ボルト又はナットの締結に伴ってその締結方向へ微小変形するボルト頭部の頂面又はナットの一端側の開放面を検出対象面とし、この検出対象面のうちボルト軸心に対して所定距離となる位置を検出対象位置とし、この検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量を検出し、検出対象位置の変形量とボルト軸力との所定の対応関係と上記検出した変形量とを用いて、ボルト軸部に作用するボルト軸力を検出する。
【0013】
なお、上記ボルト軸心とは、ボルト軸部の軸心(ボルト又はナットの回転軸)であり、上記締結方向とは、ボルト軸心に沿った方向である。
【0014】
上記構成及び方法では、任意のボルト又はナットの締結作業時において、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量を検出し、検出対象位置の変形量とボルト軸力との間に成立する所定の対応関係と上記検出した変形量とを用いて、ボルト軸部に作用するボルト軸力が検出される。上記検出対象位置は、ボルト頭部の頂面又はナットの開放面に設定され、ボルト軸部の変形が弾性域であるか塑性域であるかに拘わらず、ボルト頭部又はナットは弾性域で変形し、検出対象位置の上記変形量はボルト軸力にほぼ比例して増大する。従って、ボルト軸部の変形が弾性域であるか塑性域であるかに拘わらず、ボルト軸力を精度良く検出することができる。
【0015】
また、締結完了後のボルト又はナットの緩みによるボルト軸力の低下を判定する場合も、上記締結作業時と同様に、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量を検出し、検出対象位置の変形量とボルト軸力との間に成立する所定の対応関係と上記検出した変形量とを用いて、ボルト軸力を検出すればよい。なお、上述のように、ボルト頭部又はナットは、ボルト軸部の変形が弾性域であるか塑性域であるかに拘わらず弾性域で変形するため、締結作業時(ボルト軸部の伸長時)に使用する所定の対応関係を、緩み判定時(伸長したボルト軸部の短縮時)のための所定の対応関係として使用することができる。
【0016】
また、検出対象位置は、検出対象面のうち検出対象面の外縁よりもボルト軸心に近い所定の内側位置であってもよく、変位検出手段は、検出対象面の外縁位置と検出対象位置との間の締結方向に沿った距離を非締結状態及び締結状態のそれぞれで検出し、検出した距離の差分を変形量として検出してもよい。なお、検出対象位置は、ボルト軸心に近いほど好ましく、ボルト頭部ではボルト軸心上が、ナットでは内縁位置がそれぞれ好適である。
【0017】
上記構成では、ボルト又はナットの締結作業時において、締結前に、検出対象面の外縁位置と検出対象位置との間の締結方向に沿った距離を検出し、締結時(締結作業中又は締結完了時を含む)に、再度上記距離を検出し、締結前に検出した距離と締結時に検出した距離との差分を、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量として検出する。すなわち、ボルトの締結前に検出した距離と締結時に検出した距離との差分を検出対象位置の変形量として検出するので、検出対象面を予め平面などの特別な形状に設定することなく、ボルト軸力を検出することができる。
【0018】
また、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量として、検出対象面の外縁位置と検出対象位置との間の締結方向に沿った距離の締結の前後における差分を用いているので、変位検出手段に対するボルト頭部又はナットの設定位置が、締結の前後で締結方向に沿って変動した場合であっても、その影響を受けることなく検出対象位置の変形量を精度良く検出することができ、ボルト軸力の検出精度が向上する。
【0019】
また、検出対象面は、非締結状態でボルト軸心に略直交する平面状であってもよく、検出対象位置は、検出対象面のうち検出対象面の外縁よりもボルト軸心に近い所定の内側位置であってもよく、変位検出手段は、締結状態での検出対象面の外縁位置と検出対象位置との間の締結方向に沿った距離を変形量として検出してもよい。なお、検出対象位置は、ボルト軸心に近いほど好ましく、ボルト頭部ではボルト軸心上が、ナットでは内縁位置がそれぞれ好適である。
【0020】
上記構成では、締結状態での検出対象面の外縁位置と検出対象位置との間の締結方向に沿った距離を検出対象位置の上記変形量として検出するので、締結完了後のボルト又はナットの緩みによるボルト軸力の低下を判定する場合等において、非締結状態における検出対象面の情報を要することなく、ボルト軸力を検出することができる。
【0021】
さらに、ボルト頭部又はナットの厚さを検出する厚さ検出手段を備えてもよい。記憶手段は、検出対象位置の変形量とボルト頭部又はナットの厚さとボルト軸力との対応関係を予め記憶してもよく、ボルト軸力検出手段は、変位検出手段が検出した変形量と厚さ検出手段が検出した厚さと記憶手段が記憶する対応関係とを用いて、ボルト軸部に作用するボルト軸力を検出してもよい。
【0022】
上記構成では、同種のボルト間又はナット間においてボルト頭部又はナットの厚さにバラツキが存在する場合であっても、これに起因して発生するボルト軸力の検出誤差を最小限に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態のボルト軸力検出システムが適用された締め付け工具を示す要部外観図である。
【図2】図1の締め付け工具の要部断面図である。
【図3】ボルト頭部の頂面の形状をボルト軸部を通る直線に沿って測定し、その解析結果を解析形状曲線として示す図であり、(a)はボルトを締め付ける前の状態を、(b)は締め付け開始直後の状態を、(c)は締め付け途中の状態を、(d)は締め付け完了時の状態を、(e)はボルトを(d)の状態まで締め付けた後に完全に緩めた状態をそれぞれ示す。
【図4】ボルト頭部の頂面の所定位置におけるひずみとボルト軸力との関係を示す図である。
【図5】ボルト軸力検出システムのブロック構成図である。
【図6】ボルト軸力検出処理を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態の締め付け工具の要部断面図である。
【図8】第2の実施形態のボルト頭部の頂面とセンサヘッドとの位置関係を示す平面図である。
【図9】第3の実施形態のボルト軸力検出処理を示すフローチャートである。
【図10】第4の実施形態のボルト軸力検出システムのブロック構成図である。
【図11】ボルト軸部に締め付けられたナットを示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は本発明の第1の実施形態のボルト軸力検出システムが適用された締め付け工具を示す要部外観図、図2は図1の締め付け工具の要部断面図である。なお、以下の説明における上下方向は、図1及び図2における上下方向に対応する。
【0026】
図1に示すように、締め付け工具1は、ボルト6の締め付けに使用されるトルクレンチであり、工具本体2とソケット3とを備える。
【0027】
ボルト6は、ボルト頭部7とボルト軸部8と座金部41とを有し、これらボルト頭部7とボルト軸部8と座金部41とは、一体的に形成されている。ボルト軸部8は、ボルト頭部7の頂面7aの反対面から下方へ延び、ボルト軸部8の先端側(下端側)の外周面には、雄ネジ8aが形成されている。座金部41は、ボルト頭部6の頂面8aの反対面側に配置され、ボルト頭部7よりも大きい外径を有する。なお、座金部41をボルト6とは別体に設け、ボルト6の締結時にボルト軸部8に挿通してもよい。
【0028】
ボルト6は、例えば、第1の部材45と第2の部材46との締結固定に使用される。第1の部材45は、ボルト軸部8が挿通される軸部挿通孔45aを有し、第2の部材46は、ネジ穴47を有する。ネジ穴47には、ボルト軸部8の雄ネジ8aと螺合する雌ネジ47aが形成されている。ボルト軸部8が第1の部材45の軸部挿通孔45を挿通し、ボルト軸部8の先端が第2の部材46のネジ穴47に挿入された状態で、ボルト6を、ボルト軸部8の軸心(ボルト軸心15)を中心として第2の部材46に対して所定方向(時計回り方向)へ回転させることにより、雄ネジ8aが雌ネジ47aに螺合し、ボルト6をさらに回転させて締め付けることにより、2つの部材45,46が締結固定される。締結状態では、ボルト6の締め付けに応じてボルト軸部8が伸長し、ボルト軸部8には、締結方向(ボルト軸心15に沿った方向)にボルト軸力が作用する。ボルト軸力が大きいほど、2つの部材45,46が強固に締結される。なお、ネジ穴47に代えて第2の部材46に貫通孔を形成し、第2の部材46の下面側にボルト6と螺合するナット(図示省略)を配置してもよい。
【0029】
図1及び図2に示すように、工具本体2は、駆動部10と、駆動部10から延びる柄状の把持部9と、駆動部10に固定される角ドライブ11とを有する。駆動部10には、把持部9が延びる方向(図中右方向)と略直交して駆動部10の上面10aから下面10bへ貫通するドライブ装着孔40が形成され、このドライブ装着孔40に角ドライブ11の上部12が挿入され固定される。角ドライブ11は、ソケット装着部13と貫通孔14とを有する。ソケット装着部13は、角柱形状であり、上部12が駆動部10に固定された状態で駆動部10の下面10bよりも下方へ突出する。貫通孔14は、上部12及びソケット装着部13の内部を上下方向に貫通する。
【0030】
ソケット3の一端(上端)には、角ドライブ11のソケット装着部13と嵌合する角穴状のドライブ嵌合穴16が形成されている。ソケット装着部13とドライブ嵌合穴16との嵌合によって、ソケット3が締め付け工具2に着脱自在に取り付けられる。
【0031】
ソケット3の他端(下端)には、ボルト6のボルト頭部7が挿入される係合凹部17が形成されている。係合凹部17の内側面は、挿入されたボルト頭部7の外側面と対向し、ソケット3の回転時にボルト頭部7の外側面と係合する。ボルト軸部8がナットと螺合し、ボルト頭部7が係合凹部17内に挿入された状態で、作業者が把持部9を所定方向(時計回り方向)へ回すと、係合凹部17がボルト頭部7と係合し、ソケット3及びボルト6がボルト軸心15を中心に回転し、ボルト6が締め付けられる。
【0032】
係合凹部17に対するボルト頭部7の最大挿入位置は、座金部41がソケット3の他端面(下面)に当接することによって規制され、この当接によってボルト頭部7が係合凹部17内の所定位置に設定される。なお、座金部1を一定的に有さないボルトを使用する場合や、ボルト頭部7の外縁から突出しない座金部を使用する場合には、頂面7aと当接してボルト頭部7の最大挿入位置を規制する位置規制部を係合凹部17内に設ければよい。
【0033】
ソケット3の内部には、センサ装着孔42が形成されている。センサ装着孔42の一端側(上端側)は、空洞部28を介してドライブ嵌合穴16と連通し、他端側(下端側)は、係合凹部17と連通する。センサ装着孔42には、渦電流式の変位センサ20が挿入されて固定され、変位センサ20のセンサヘッド21は、係合凹部17内の所定位置に突出する。変位センサ20は、高周波発信回路(図示省略)が発信する高周波電流をセンサヘッド21内のセンサコイル(図示省略)に流して高周波磁界を発生させ、センサコイルのインピーダンスを検出信号(距離情報)として出力する。センサヘッド21から対象物までの距離は、変位センサ20が出力するインピーダンスの変化(発信状態の変化)によって測定される。ボルト6の非締結状態において、係合凹部17内の所定位置に挿入されたボルト頂部7の頂面7aとセンサヘッド21との間には、所定の間隙が形成され、センサヘッド21は、係合凹部17内の上記所定位置に挿入されたボルト頭部7の頂面7aと対向する。ボルト頭部7の頂面7aが変位センサ20の検出対象面であり、変位センサ20からの検出信号は、変位センサ20に結線された内部出力線30を介して外部へ送信される。なお、変位センサ20を、工具本体2側(例えば角ドライブ11や駆動部10)に固定してもよい。
【0034】
変位センサ20は、渦電流式に限定されるものではなく、静電容量式や光学式(例えばレーザ方式の測長機)など非接触タイプあるいは電気マイクロメータなどの接触タイプの様々なセンサを用いることが可能である。但し、ボルト頭部7の変形量は10μm程度であるため、センサの性能として、分解能が0.1μ程度であり、1μmの差を確実に検出可能であることが要求される。渦電流式や静電容量式の場合、検出範囲が比較的広く、検出範囲内で平均化された距離が検出されるため、安定した検出結果を得ることができる。
【0035】
センサヘッド21は、係合凹部17内の上記所定位置に挿入されたボルト軸心15と同軸上に配置され、ボルト頭部7の頂面7aのうちボルト軸心15と交叉する位置が変位センサ20の検出対象位置となり、変位センサ20からの検出信号によって、センサヘッド21と検出対象位置との間の距離が測定される。なお、変位センサ20の検出対象位置は、ボルト軸心15に対して所定距離となる位置であれば何れでも構わないが、後述するようにボルト軸力が作用したときの頂面7bの凹み量はボルト軸心15と交叉する中央で最大となることから、頂面7aの外縁よりもボルト軸心15に近い内側位置(ボルト軸心15からの距離がボルト軸心15と頂面7aの外縁との距離の1/2未満となる位置)が好ましく、ボルト軸心15に近いほどさらに好適である。また、センサヘッド21とボルト頭部7の頂面7aとは、非接触で且つできるだけ近接していることが好ましい。
【0036】
駆動部10の上面10aには、スリップリング29が取り付けられている。スリップリング29は、固定部43と可動部44とを有し、固定部43と可動部44とは、電気的接続が常時維持された状態で相対回転自在に連結される。固定部43は、駆動部10の上面10aに固定され、内部出力線30は、センサ装着孔42、空洞部28、ドライブ嵌合穴16、及び貫通孔14を挿通し、スリップスプリング29の固定部43に接続される。固定部43と可動部44の間では、内部出力線30を介して入力する検出信号が送受信され、可動部44が受信した検出信号は、外部出力線31を介して後述する情報処理装置5(図5に示す)に送信される。すなわち、スリップスプリング29は、ボルト6の締め付け時において、内部出力線30と外部出力線31との間の電気的な接続状態(検出信号の送受信)を維持しつつ、内部出力線30と外部出力線31との相対回転を許容する。なお、内部出力線30及び外部出力線31を省略し、変位センサ20から情報処理装置5へ無線通信によって距離情報を送信してもよい。
【0037】
次に、ボルト頭部の頂面の形状とボルト軸部に作用するボルト軸力との関係について、図3及び図4を参照して説明する。図3は予め平面状に加工したボルト頭部の頂面の形状をボルト軸心を通る直線に沿って測定した解析結果を解析形状曲線として示す図であり、(a)はボルトを締め付ける前の状態を、(b)は締め付け開始直後の状態を、(c)は締め付け途中の状態を、(d)は締め付け完了時の状態を、(e)はボルトを(d)の状態まで締め付けた後に完全に緩めた状態をそれぞれ示している。(b)〜(d)では、作用するボルト軸力が順に増大し、(d)ではボルト軸部8に塑性変形が生じている。また、図4はボルト頭部の頂面の所定位置におけるひずみとボルト軸力との関係を示す図である。図4中のひずみは、例えば上記解析形状曲線から得られる測定値であり、ボルト軸力は、例えば荷重測定器を用いて得られる測定値である。
【0038】
図3(a)から明らかなように、ボルト軸力が作用していない状態(非締結状態)の解析形状曲線(初期形状曲線)は、ほぼ直線状である。なお、図中の仮想基準線とは、初期形状曲線に沿って設定された直線である。
【0039】
図3(b)〜(d)から明らかなように、ボルト軸部8にボルト軸力が作用した締結状態では、ボルト頭部7の頂面7aの中央(ボルト軸心と交叉する位置)は、仮想基準線に対してボルト軸部8側へ微小変形し、頂面7bの外縁は、仮想基準線に対してボルト軸部8の反対側へ微小変形する。すなわち、頂面8bは、全体として内側が凹んだ状態となり、中央の凹み量が最大となる。また、仮想基準線に対する変位は、ボルト軸力の増大に伴って増加する。
【0040】
図3(d)及び(e)から明らかなように、ボルト軸部8の変形が塑性域に達するまでボルト6を締め付けた後に完全に緩めた場合であっても、解析形状曲線は、仮想基準線に沿った状態に戻る。
【0041】
また、図4に示すように、ボルト軸部に作用するボルト軸力とボルト頭部の頂面のひずみとは、ボルト軸部が弾性域で変形している間は、ボルトの締め付け量(ボルトの回転角度)の増加にほぼ比例してそれぞれ増大し、ボルト軸部の変形が塑性域に達した後は、それぞれ最大値に達してほぼ一定となる。
【0042】
図3及び図4に示された測定結果から、ボルト軸部8の変形が弾性域であるか塑性域であるかに拘わらず、ボルト頭部7は弾性域で変形し、ボルト頭部7の頂面7aの変形量はボルト軸力にほぼ比例して増大することが判る。従って、ボルト6の締結状態において、ボルト頭部7の頂面7aの所定位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量とボルト軸部8に作用するボルト軸力との間には、ボルト軸部8の変形が弾性域内で生じているか塑性域に達しているかに拘わらず、一定の対応関係が成立し、上記対応関係を測定や解析などにより予め求めておくことによって、締結時に検出した検出対象位置の変形量からボルト軸力を検出することが可能となる。また、検出対象位置の変形量とボルト軸力との対応関係は、ボルト6の材質及び形状よって一意的に決まるため、同種のボルト6については同一の対応関係を用いることが可能である。
【0043】
次に、本実施形態のボルト軸力検出システム装置について、図5に基づいて説明する。図5は、ボルト軸力検出システムのブロック構成図である。
【0044】
図5に示すように、ボルト軸力検出システム4は、上記変位センサ20と情報処理装置5と入力部22と表示装置23とを備える。情報処理装置5は、CPU(Central Processing Unit)24と記憶部25とを有する。情報処理装置5は、汎用のパーソナルコンピュータであってもよく、専用の装置であってもよい。
【0045】
記憶部25は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などによって構成され、CPU24が各種処理を実行するための各種プログラムや各種データが記憶されている。各種プログラムには、CPU24が判定条件設定処理を実行するための判定条件設定プログラム及びボルト軸力検出処理を実行するためのボルト軸力検出プログラムが含まれる。判定条件設定プログラムには、ボルト軸力検出処理で用いられる判定情報記憶テーブルが含まれ、ボルト軸力検出プログラムには、検出対象位置の変形量とボルト軸力との対応関係が含まれる。すなわち、記憶部25は、検出対象位置の変形量とボルト軸力との対応関係を予め記憶する記憶手段として機能する。判定条件設定プログラムやボルト軸力検出プログラムは、各種CDメディア(Compact Disc Media)などの外部の記憶媒体から読み出されて記憶部25に記憶されてもよく、インターネットなどのネットワークを介して取得されて記憶部25に記憶されてもよい。また、判定情報記憶テーブルや検出対象位置の変形量とボルト軸力との対応関係は、上記各プログラムとは別に記憶部25に記憶されてもよい。また、検出対象位置の変形量とボルト軸力との対応関係は、変形量を変数としてボルト軸力を算出する所定の演算式の他、変形量とボルト軸力との対応関係を示すテーブルやマップなどであってもよい。なお、以下では、所定の演算式が上記対応関係として記憶されている場合について説明する。
【0046】
判定条件設定処理及びボルト軸力検出処理を実行するCPU24は、判定条件設定部32、変位検出部33、軸力検出部34、判定部35及び画像制御部36として機能する。なお、CPU24の機能の一部を抽出して他の情報処理装置に設けてもよい。
【0047】
変位センサ20からの検出信号は、受信部(図示省略)を介して情報処理装置5へ入力する。本実施形態の検出信号は、上述のようにセンサコイルのインピーダンスであり、変位センサ20から連続的に出力されて情報処理装置5へ入力する。変位検出部33は、変位センサ20から受信した検出信号に基づいて、センサヘッド21からボルト頭部7の頂面7aの検出対象位置までの距離を検出する。
【0048】
入力部22は、例えば操作ボタンやキーボードなどであり、作業者からの入力操作を受ける。作業者が入力部22に対して入力操作を行うと、これに対応した操作信号が入力部22から情報処理装置5へ入力する。判定条件設定処理及びボルト軸力検出処理は、作業者が入力部22に対して所定の入力操作を行うことによりそれぞれ実行される。なお、判定条件設定処理は、ボルト軸力検出処理の開始直後の作業者からの所定の入力操作によって開始されてもよい。
【0049】
判定条件設定処理において、画像制御部36は、目標軸力の上限値及び下限値の設定入力を求める要求画面を表示装置23に表示させる。作業者は、所望の目標軸力の上限値及び下限値を入力部22から入力することによって目標軸力の上限値及び下限値の設定を行う。判定条件設定部32は、入力された目標軸力の上限値及び下限値を記憶部25の判定情報記憶テーブルに記憶する。
【0050】
ボルト軸力検出処理において、変位検出部33は、ボルト頭部7が係合凹部17内の所定位置に設定された後であってボルト6の締め付け前の変位センサ20からの検出信号に基づいて、センサヘッド21から検出対象位置までの距離を検出し、検出した距離を初期設定距離として記憶部25に記憶する。初期設定距離の検出及び記憶は、作業者からの所定の入力操作に応じて実行される。なお、ボルト頭部7が係合凹部17内の所定位置に設定されたことを検出するセンサを締め付け工具1に設け、このセンサからの検出信号の受信を契機として変位検出部33が初期設定距離の検出及び記憶を実行してもよい。
【0051】
さらに、変位検出部33は、変位センサ20からの検出信号に基づいて、センサヘッド21から検出対象位置までの距離を測定距離として検出するとともに、記憶部25から初期設定距離を読み出し、測定距離から初期設定距離を減算した距離の差分を、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量として検出する。測定距離及び変形量の検出は、繰り返して実行され、検出される測定距離及び変形量は、ボルト6の締め付け量の増加に応じて増大する。すなわち、変位センサ20と変位検出部33とは、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量を検出する変位検出手段として機能する。
【0052】
軸力検出部34は、変位検出部33が検出した変形量を予め設定された所定の演算式に代入することによって、ボルト軸部8(図1参照)に作用するボルト軸力を算出する。すなわち、軸力検出部34は、変位検出部33が検出した変形量と記憶部25に記憶された対応関係とを用いてボルト軸力を検出するボルト軸力検出手段として機能する。なお、画像制御部36は、軸力検出部34がボルト軸力を算出する毎に、そのボルト軸力を表示画面に表示させる。
【0053】
判定部35は、軸力検出部34が算出したボルト軸力が予め設定された目標軸力の下限値に達しているか否かを判定する。さらに、判定部35は、軸力検出部34が算出したボルト軸力が予め設定された目標軸力の上限値を超えているか否かを判定する。画像制御部36は、ボルト軸力が目標軸力の下限値以上で且つ上限値以下であると判定部35が判定したとき、これを報知する画像を表示画面に表示させる。なお、ブザーやスピーカなどの音声出力部を設け、ボルト軸力が目標軸力の下限値以上で且つ上限値以下であると判定部35が判定したとき、これを報知する音声が音声出力部から出力されるように構成してもよい。また、画像制御部36は、ボルト軸力が目標軸力の上限値を超えていると判定部35が判定したとき、これを報知する画像を表示画面に表示させる。
【0054】
次に、情報処理装置5のCPU24が実行するボルト軸力検出処理について、図6を参照して説明する。図6はボルト軸力検出処理を示すフローチャートである。ボルト軸力検出処理は、作業者からの所定の入力操作に応じて開始され、所定時間毎に繰り返して実行される。なお、ボルト軸力検出処理の実行前又は実行中に、作業者は必要に応じて目標軸力を設定する。
【0055】
ボルト軸力検出処理が開始されると、作業者は、ボルト頭部7を係合凹部17内の所定位置へ挿入し、初期設定距離を記憶させるための所定の入力操作を行う。CPU24は、作業者からの初期設定距離の設定要求があるか否かを判定し(ステップS10)、初期設定距離の設定要求がある場合、すなわち、情報処理装置5が入力部22から所定の操作信号を受信した場合(ステップS10:YES)、変位検出部33は、変位センサ20からの検出信号に基づいて、センサヘッド21から検出対象位置までの距離を検出し、検出した距離を初期設定距離として記憶部25に記憶する(ステップS1)。一方、初期設定距離の設定要求がなく、情報処理装置5が入力部22から所定の操作信号を受信しない場合(ステップS10:NO)、CPU24は、ステップS1の処理を実行せずに次の処理へ進む。
【0056】
次に、作業者は、締め付け工具1を回してボルト6の締め付けを行う。このとき、変位検出部33は、変位センサ20からの検出信号に基づいて、センサヘッド21から検出対象位置までの距離を測定距離として検出する(ステップS2)。続いて、変位検出部33は、記憶部25から初期設定距離を読み出し、測定距離から初期設定距離を減算した距離の差分を、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量として検出する(ステップS3)。
【0057】
次に、軸力検出部34は、変位検出部33が算出した変形量を予め設定された所定の演算式に代入することによって、ボルト軸力を算出する(ステップS4)。このとき、画像制御部36は、軸力検出部34が算出したボルト軸力を表示装置23に表示させる。
【0058】
次に、判定部35は、記憶部25から目標軸力の下限値を読み出し、軸力検出部34が算出したボルト軸力が目標軸力の下限値に達しているか否かを判定する(ステップS5)。
【0059】
作業者によるボルト6の締め付けが不十分であり、ボルト軸力が目標軸力の下限値に達していないと判定部35が判定した場合には(ステップS5:NO)、CPU24は、本処理を終了する。
【0060】
一方、作業者によるボルト6の締め付けが十分であり、ボルト軸力が目標軸力に達していると判定部35が判定した場合には(ステップS5:YES)、判定部35は、記憶部25から目標軸力の上限値を読み出し、軸力検出部34が算出したボルト軸力が目標軸力の上限値を超えているか否かを判定する(ステップS6)。
【0061】
ボルト軸力が目標軸力の上限値を超えていないと判定部35が判定した場合(ステップS6:NO)には、画像制御部36は、ボルト軸力が目標軸力の下限値以上で且つ上限値以下であること(ボルト軸力が適正範囲内であること)を報知する画像を表示装置23に表示させ(ステップS7)、CPU24は、本処理を終了する。
【0062】
一方、ボルト軸力が目標軸力の上限値を超えていると判定部35が判定した場合(ステップS6:YES)には、画像制御部36は、ボルト軸力が目標軸力の上限値を超えていることを報知する画像を表示装置23に表示させ(ステップS8)、CPU24は、本処理を終了する。このとき、作業者は、ボルト6が再利用可能であれば、ボルト6を緩めた後に、再度締め付けを行えばよく、ボルト6が再利用不可能であれば、ボルト6を緩めて交換した後に、再度締め付けを行えばよい。
【0063】
また、作業者が締め付け工具1を十分に回転させているにも拘わらず、ボルト軸力が目標軸力の下限値に達していないと繰り返して判定され(ステップS5:NO)、ボルト軸力が適正範囲であることを報知する画像が表示装置23に表示されない場合、作業者は、ボルト6が不良であるか又はボルト軸力の検出不良であると判断することができる。なお、これらの場合も、作業者は、ボルト6を適宜交換して再度締め付けを行い、さらに必要に応じてシステムを点検すればよい。
【0064】
本実施形態によれば、作業者によるボルト6の締結時において、ボルト軸力検出システム4は、ボルト頭部7の頂面7aの検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量を検出し、ボルト軸部8に作用するボルト軸力を所定の演算式を用いて算出し、算出したボルト軸力を表示装置23に表示させる。従って、作業者は、締結状態のボルト6に作用しているボルト軸力を直ぐに確認することができる。
【0065】
また、変位センサ20がソケット3内に設けられ、ボルト軸力検出システム4は、ボルト6の締め付け中にボルト軸力を逐次算出し、算出したボルト軸力が目標軸力の下限値以上で且つ上限値以下であるときに、これを報知する画像を表示装置23に表示させて作業者に報知する。従って、作業者は、ボルト軸力が所望の目標軸力の下限値以上で且つ上限値以下であること(適正範囲であること)が報知されるまでボルト6の締め付けを行うことにより、ボルト6の締め付け不足を確実に防止することができ、ボルト軸力を所望の適正範囲内に容易に管理することができる。また、ボルト軸力検出システム4は、ボルト6の締め付け中にボルト軸力を逐次算出し、算出したボルト軸力が目標軸力の上限値を超えているときに、これを報知する画像を表示装置23に表示させて作業者に報知する。従って、ボルト軸力が所望の目標軸力の上限値を超えていると報知されることにより、作業者はそれを認識し、再度締め付けを行うことを容易に判断できる。
【0066】
また、ボルト軸力検出システム4は、ボルト軸力を測定するための特別なボルトを用いてボルト軸力を測定するのではなく、部材46,47を締結するために使用されるボルト6のボルト軸力を検出する。従って、実際に使用される個々のボルト6のボルト軸力をそれぞれ直接検出して管理することができる。
【0067】
また、検出対象位置は、ボルト軸部8の変形が弾性域であるか塑性域であるかに拘わらず弾性域で変形するボルト頭部7の頂面7aに設定され、検出対象位置の変形量は、ボルト軸力にほぼ比例して増大する。従って、ボルト軸部8の変形が弾性域であるか塑性域であるかに拘わらず、ボルト軸力を精度良く検出することができる。
【0068】
また、ボルト6の締結作業時において、ボルト軸力検出システム4は、センサヘッド21から検出対象位置までの距離を、締結前には初期設定距離として検出し、締結時は測定距離として検出し、締結前の初期設定距離と締結時の測定距離との差分を、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量として検出する。すなわち、ボルト6の締結前に検出した初期設定距離と締結時に検出した測定距離との差分を検出対象位置の変形量として検出するので、検出対象面を平坦面などの特別な形状に予め設定することなく、ボルト軸力を検出することができる。
【0069】
さらに、ボルト6の締結作業時に検出した初期設定距離を記録して保存しておくことによって、締結完了から時間が経過した後のボルト6の緩みによるボルト軸力の低下を判定することも可能である。ボルト軸力の低下判定に使用する検出装置は、締結作業時に使用したボルト軸力検出システム4であってもよく、ボルト6の締結時のボルト軸力の検出状態を再現可能な他の装置であってもよい。検出装置は、センサヘッドから検出対象位置までの距離を測定距離として検出し、保存しておいた初期設定距離と検出した測定距離との差分を、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量として検出し、算出した変形量を所定の演算式に代入することによってボルト軸力を算出し、算出したボルト軸力を表示装置に表示させる。作業者は、表示されたボルト軸力を視て、ボルト軸力の低下に関する判定を行うことができる。また、上述のように、ボルト頭部7は、ボルト軸部8の変形が弾性域であるか塑性域であるかに拘わらず弾性域で変形するため、締結作業時(ボルト軸部8の伸長時)に使用する所定の演算式を、緩み判定時(伸長したボルト軸部8の短縮時)のための所定の演算式として使用することができる。
【0070】
次に、本発明の第2実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。図7は第2の実施形態のボルト軸力検出システムが適用された締め付け工具を示す要部断面図、図8はボルト頭部の頂面とセンサヘッドとの位置関係を示す平面図である。なお、第1の実施形態と同様の構成及び処理については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0071】
本実施形態は、検出対象面の外縁位置と検出対象位置との間の締結方向に沿った距離を非締結状態及び締結状態のそれぞれで検出し、検出した距離の差分を変形量として検出する点で、第1の実施形態と相違する。
【0072】
図7に示すように、ソケット3の内部には、3箇所のセンサ装着孔42が形成されている。各センサ装着孔42には、渦電流式の変位センサ20(第1変位センサ20a、第2変位センサ20b及び第3変位センサ20c)がそれぞれ挿入されて固定され、各変位センサ20a〜20cのセンサヘッド21a〜21cは、係合凹部17内の所定位置に突出する。係合凹部17内の所定位置に挿入されたボルト頂部7の頂面7aから3つの変位センサ20a〜20cの各センサヘッド21a〜21cまでのボルト軸心15に沿った距離は、ほぼ等しく設定されている。各センサヘッド21a〜21cは、係合凹部17内の上記所定位置に挿入されたボルト頭部7の頂面7aと対向し、頂面7aまでの距離をそれぞれ検出する。各変位センサ20a〜20cからの検出信号は、各変位センサ20a〜20cにそれぞれ結線された3本の内部出力線30を介して外部へ送信される。
【0073】
図8に示すように、センサヘッド21bは、ボルト軸心15とほぼ同軸上に配置されている。センサヘッド21aとセンサヘッド21cとは、ボルト軸心15を通る直線50上でボルト軸心15を挟んだ両側の対称位置にそれぞれ配置され、センサヘッド21bは、センサヘッド21aとセンサヘッド21cとのほぼ中心に位置する。第2変位センサ20aは、ボルト頭部7の頂面7aのうちボルト軸心15とほぼ同軸上の検出対象位置までの距離を検出し、第1変位センサ20aと第3変位センサ20cとは、検出対象位置を挟んでほぼ等距離に離間した2箇所の外縁位置までの距離をそれぞれ検出する。なお、ボルト頭部7の外周縁に頂面7aから盛り上がる突条51が形成されている場合、第1及び第3変位センサ20a,20cの検出対象となる2つの外縁位置は、突条51の内側近傍に設定される。
【0074】
また、スリップスプリング29の固定部43と可動部44の間では、3本の内部出力線30からの各検出信号がそれぞれ個別に送受信され、可動部44が受信した各検出信号は、各変位センサ20a〜20cに対応した3本の外部出力線31を介して情報処理装置5に送信される。
【0075】
情報処理装置5の変位検出部33(図5参照)は、ボルト頭部7が係合凹部17内の所定位置に設定された後であってボルト6の締め付け前の状態において、第1変位センサ20a及び第3変位センサ20cからの検出信号に基づいて、第1センサヘッド21aから一方の外縁位置までの距離XAと、第3センサヘッド21cから他方の外縁位置までの距離XCまでの距離とをそれぞれ検出するとともに、第2変位センサ20bからの検出信号に基づいて、第2センサヘッド21bから検出対象位置までの距離XBを検出し、検出した各距離XA,XB,XCを初期設定距離として記憶部25に記憶する。
【0076】
また、ボルト6の締め付け時において、変位検出部33は、第1変位センサ20a及び第3変位センサ20cからの検出信号に基づいて、第1センサヘッド21aから一方の外縁位置までの距離YAと、第3センサヘッド21cから他方の外縁位置までの距離YCまでの距離とをそれぞれ測定距離として検出するとともに、第2変位センサ20bからの検出信号に基づいて、第2センサヘッド21bから検出対象位置までの距離YBを測定距離として検出する。そして、記憶部25から初期設定距離XA,XB,XCを読み出し、2つの外縁位置の平均位置から検出対象位置までの距離の締め付け前後における差分を、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量δとして検出する。変動量δは、次式(1)に従って算出される。
【0077】
δ=(YA+YC)/2−YB−{(XA+XC)/2−XB}・・・式(1)
【0078】
軸力検出部34は、第1の実施形態と同様に、変位検出部33が検出した変形量δを所定の演算式に代入することによって、ボルト軸部8に作用するボルト軸力を算出し、画像制御部36は、軸力検出部34がボルト軸力を算出する毎に、そのボルト軸力を表示画面に表示させる。判定部35は、軸力検出部34が算出したボルト軸力が予め設定された目標軸力の下限値に達しているか否かを判定し、さらに、軸力検出部34が算出したボルト軸力が予め設定された目標軸力の上限値を超えているか否かを判定部35が判定する。画像制御部36は、ボルト軸力が目標軸力の下限値以上で且つ上限値以下であると判定部35が判定したとき、これを報知する画像を表示画面に表示させる。また、画像制御部36は、ボルト軸力が目標軸力の上限値を超えていると判定部35が判定したとき、これを報知する画像を表示画面に表示させる。
【0079】
情報処理装置5のCPU24が実行するボルト軸力検出処理は、初期設定距離の検出及び記憶(ステップS1)と測定距離の検出(ステップS2)と検出対象位置の変形量の検出(ステップS3)とにおける各処理の内容が相違することを除き、図6に示す第1の実施形態と共通する。
【0080】
すなわち、ボルト軸力検出処理が開始され、作業者がボルト頭部7を係合凹部17内の所定位置へ挿入して、初期設定距離を記憶させるための所定の入力操作を行い、CPU24は、作業者からの初期設定距離の設定要求があるか否かを判定し(ステップS10)、初期設定距離の設定要求がある場合、すなわち、情報処理装置5が入力部22から所定の操作信号を受信した場合(ステップS10:YES)、変位検出部33は、各変位センサ20a〜20cからの検出信号に基づいて、第2センサヘッド21bから検出対象位置までの距離Xbと第1及び第3センサヘッド21a,21cから外縁位置までの距離Xa,Xcとを検出し、検出した距離Xa,Xb,Xcを初期設定距離として記憶部25に記憶する(ステップS1)。一方、初期設定距離の設定要求がなく、情報処理装置5が入力部22から所定の操作信号を受信しない場合(ステップS10:NO)、CPU24は、ステップS1の処理を実行せずに次の処理へ進む。
【0081】
次に、作業者は、締め付け工具1を回してボルト6の締め付けを行う。変位検出部33は、各変位センサ20a〜20cからの検出信号に基づいて、第2センサヘッド21bから検出対象位置までの距離Ybと第1及び第3センサヘッド21a,21cから外縁位置までの距離Ya,Ycとをそれぞれ測定距離として検出する(ステップS2)。続いて、変位検出部33は、記憶部25から初期設定距離Xa,Xb,Xcを読み出し、初期設定距離Xa,Xb,Xcと測定距離Ya,Yb,Ycとを式(1)に代入することによって、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量δを算出する(ステップS3)。
【0082】
ステップS3の処理を実行したCPU24は、第1の実施形態と同様に、ステップS4からステップS8の処理を実行する。
【0083】
本実施形態によれば、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量として、2つの外縁位置の平均位置と検出対象位置との間の締結方向に沿った距離の締結の前後における差分を用いているので、各センサヘッド21a〜21cに対するボルト頭部7の設定位置が、締結の前後で締結方向に沿って変動した場合であっても、その影響を受けることなく検出対象位置の変形量を精度良く検出することができ、ボルト軸力の検出精度が向上する。
【0084】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成及び処理については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0085】
本実施形態は、非締結状態と締結状態との間で検出対象位置の変位量を比較せず、締結状態での変位量のみを用いてボルト軸力を検出する点で、第1及び第2の実施形態と相違する。すなわち、本実施形態では、非締結状態での距離の検出を行わず、締結状態における検出対象面の外縁位置と検出対象位置との間の締結方向に沿った距離の差分を検出対象位置の変形量として検出する。また、締結状態における検出対象面の外縁位置と検出対象位置との間の締結方向に沿った距離の差分を変形量として検出するためには、非締結状態の検出対象位置と外縁位置とが、ボルト軸心と直交する直線上又はその近傍に配置されていなければならない。このため、本実施形態のボルト6のボルト頭部7の頂面7aは予め平面状に設定されており、頂面7aが刻印や突起状の浮き文字などの凹凸を有する場合には、頂面7aを平面状に加工した後のボルト6を使用して締結を行う。
【0086】
本実施形態の締め付け工具1は、第2の実施形態(図7参照)と同様に構成され、ボルト頭部7の頂面7aのうちボルト軸心15とほぼ同軸上の検出対象位置までの距離を検出する第2変位センサ20aと、2箇所の外縁位置までの距離をそれぞれ検出する第1及び第3変位センサ20a,20cとを備える。
【0087】
情報処理装置5の変位検出部33(図5参照)は、ボルト6の締め付け前に初期設定距離を検出せず、ボルト6の締め付け時において、第1変位センサ20a及び第3変位センサ20cからの検出信号に基づいて、第1センサヘッド21aから一方の外縁位置までの距離YAと、第3センサヘッド21cから他方の外縁位置までの距離YCまでの距離とをそれぞれ測定距離として検出するとともに、第2変位センサ20bからの検出信号に基づいて、第2センサヘッド21bから検出対象位置までの距離YBを測定距離として検出する。そして、締め付け時における2つの外縁位置の平均位置から検出対象位置までの距離を、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量δとして検出する。上記締め付け前後の変動量δは、次式(2)に従って算出される。
【0088】
δ=(YA+YC)/2−YB・・・式(2)
【0089】
軸力検出部34は、第1及び第2の実施形態と同様に、変位検出部33が算出した変形量δを所定の演算式に代入することによって、ボルト軸部8に作用するボルト軸力を算出し、画像制御部36は、軸力検出部34がボルト軸力を算出する毎に、そのボルト軸力を表示画面に表示させる。また、判定部35は、軸力検出部34が算出したボルト軸力が予め設定された目標軸力の下限値に達しているか否かを判定し、さらに、軸力検出部34が算出したボルト軸力が予め設定された目標軸力の上限値を超えているか否かを判定部35が判定する。画像制御部36は、ボルト軸力が目標軸力の下限値以上で且つ上限値以上であると判定部35が判定したとき、これを報知する画像を表示画面に表示させる。また、画像制御部36は、ボルト軸力が目標軸力の上限値を超えていると判定部35が判定したとき、これを報知する画像を表示画面に表示させる。
【0090】
次に、情報処理装置5のCPU24が実行するボルト軸力検出処理について、図9を参照して説明する。図9はボルト軸力検出処理を示すフローチャートである。第1及び第2の実施形態と同様に、ボルト軸力検出処理は、作業者からの所定の入力操作に応じて開始され、ボルト軸力検出処理の実行前又は実行中に、作業者は必要に応じて目標軸力を設定する。
【0091】
ボルト軸力検出処理が開始されると、作業者は、第1及び第2の実施形態のような初期設定距離を記憶させるための所定の入力操作を行うことなく、締め付け工具1を回してボルト6の締め付けを行う。変位検出部33は、各変位センサ20a〜20cからの検出信号に基づいて、第2センサヘッド21bから検出対象位置までの距離Ybと第1及び第3センサヘッド21a,21cから外縁位置までの距離Ya,Ycとをそれぞれ測定距離として検出する(ステップS2)。続いて、変位検出部33は、測定距離Ya,Yb,Ycとを式(2)に代入することによって、検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量δを算出する(ステップS3)。
【0092】
ステップS3の処理を実行したCPU24は、第1の実施形態と同様に、ステップS4からステップS8の処理を実行する。
【0093】
本実施形態によれば、締結状態での検出対象面の外縁位置と検出対象位置との間の締結方向に沿った距離を検出対象位置の変形量δとして検出するので、ボルト軸力検出処理の簡素化を図ることができる。
【0094】
また、締結完了後のボルト6の緩みによるボルト軸力の低下を判定する場合等において、非締結状態での検出対象面の情報(初期設定距離)を要することなく、ボルト軸力を検出することができる。従って、締結から長期間が経過した場合であっても、容易にボルト軸力の低下を判定することができる。
【0095】
次に、本発明の第4の実施形態について、図10を参照して説明する。図10は第4の実施形態のボルト軸力検出システムのブロック構成図である。なお、第1〜第3の実施形態と同様の構成及び処理については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0096】
鍛造によって形成されるボルトの場合、寸法形状及び材質が同一に設定された同種のボルト間であっても、成形誤差等に起因してボルト頭部同士に微小の厚みの差が生じ、検出対象位置の変形量とボルト軸力との対応関係も完全に同一とはならない。例えば、作用するボルト軸力が同じであっても、ボルト頭部が薄い場合の方が厚い場合よりも大きく変形する。
【0097】
このような製造誤差等によるボルト頭部の厚さのバラツキに起因するボルト軸力の検出精度の低下を抑えるため、本実施形態では、検出対象位置の変形量とボルト頭部の厚さとボルト軸力との対応関係を予め求めておき、締結の前に使用するボルトのボルト頭部の厚さを検出し、検出対象位置の変形量と検出したボルト頭部の厚さとを用いてボルト軸力を検出するものであり、この点において第1〜第3の実施形態と相違する。
【0098】
図10に示すように、ボルト軸力検出システム52は、変位センサ20と情報処理装置5と入力部22と表示装置23と厚さ測定器53とを備える。
【0099】
厚さ測定器53は、締め付け工具1及び情報処理装置5とは別に設けられ、ボルト頭部7の厚さの測定は、ボルト頭部7をソケット3の係合凹部17に挿入する前に行われる。作業者がボルト6を所定の測定位置に設定して所定の入力操作を行うと、厚さ測定器53は、非締結状態のボルト頭部7(図1参照)のボルト軸15に沿った厚さを検出し、検出結果を厚さ情報として情報処理装置5へ送信する。すなわち、厚さ検出器53は、ボルト頭部7の厚さを検出する厚さ検出手段として機能する。なお、ボルト頭部7と座金部41とが一体的に形成されている場合、厚さ測定器53は、ボルト頭部7の頂面7aから座金部41の下面までのボルト軸心15に沿った距離をボルト頭部7の厚さとして検出する。
【0100】
情報処理装置5のCPU24は、厚さ測定器53から受信した厚さ情報を記憶部25に記憶する。また、記憶部25には、検出対象位置の変形量とボルト頭部の厚さとボルト軸力との対応関係が予め記憶されている。この対応関係は、検出対象位置の変形量とボルト頭部7aの厚さとを変数としてボルト軸力を算出する所定の演算式の他、変形量とボルト頭部の厚さとボルト軸力との対応関係を示すテーブルやマップなどであってもよい。
【0101】
軸力検出部34は、変位検出部33が検出した変形量と厚さ測定器53が検出した厚さと記憶部25が記憶する対応関係とを用いて、ボルト軸部8に作用するボルト軸力を検出する。例えば、記憶部25に所定の演算式が記憶されている場合、軸力検出部34は、変位検出部33が検出した変形量と厚さ測定器53が検出した厚さとを上記所定の演算式に代入することによってボルト軸部8を算出する。
【0102】
なお、厚さ検出器53を締め付け工具1のソケット3に設け、係合凹部17内の所定位置に設定されたボルト頭部7の厚さを厚さ検出器53によって検出してもよい。
【0103】
本実施形態によれば、同種のボルト6間においてボルト頭部7の厚さにバラツキが存在する場合であっても、これに起因して発生するボルト軸力の検出誤差を最小限に抑制することができる。
【0104】
なお、上記実施形態では、ボルトを締め付ける場合について説明したが、図11に示すように、ナット60をボルト軸部61の一端61aから螺合してナットランナー62などによって締め付ける場合にも、本発明を適用してボルト軸部61に作用するボルト軸力を検出することが可能である。この場合、ナット60の一端61a側の開放面60a(締結用のソケット63内に挿入される側の端面)が検出対象面であり、検出対象位置としては、ボルト軸部61と螺合するネジ穴に近接した内縁位置が好適である。
【0105】
また、本発明は、手動によってボルト又はナットを締結する場合に限定されるものではなく、自動締結装置に適用することも可能である。
【0106】
また、目標軸力として下限値のみを設定し、検出したボルト軸力が目標軸力に達したか否かのみを判定してもよい。
【0107】
また、検出対象位置の変位量の検出精度を向上させるため、検出対象位置や外縁位置以外の検出対象面内の位置や範囲に対して変位センサによる距離の検出を行い、検出された距離を検出対象位置の変位量に反映させてもよい。検出対象面内の範囲に対して距離の検出を行う場合、例えばレーザ方式の測長機を使用して検出対象面上にレーザ光を走査させればよい。
【0108】
さらに、変位センサを締め付け工具に設けずに、検出対象面の形状を検出する形状測定器を別に設け、形状測定器を使用して検出対象位置の非締結状態からの締結方向に沿った変形量を検出してもよい。この場合、締め付け工具による締め付け作業の後、また必要な場合には締め付け作業の前に、形状測定器による検出を行う。形状測定器を別に設けることにより、締め付け工具1に設ける場合に比べてスペース上の制限が緩和されるため、ニュートンリングの干渉縞を利用した干渉計(例えばレーザ干渉計)や、レーザ方式の測長機など、さらに多様なタイプの形状測定器(センサ)が適用可能となる。干渉計を使用することによって、検出対象面の全域に対して変位量を検出することができる。なお、締め付け作業の前後で検出を行って両者を比較する場合には、検出対象面上に存在する特徴的な部分(例えば刻印や突起状の浮き文字など)を基準として位相を判断し、両者の回転角度を整合させればよい。また、レーザ方式の測長機を使用し、検出対象面上にレーザ光を走査させることによって、線状の領域に対して変位量を検出することができる。なお、締め付け作業の前後で検出を行って両者を比較する場合には、検出対象面上に存在する特徴的な部分を基準として位相を判断し、締め付けの前後においてレーザ光の走査方向が一致するように締め付け後の走査方向を適宜回転させればよい。
【0109】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、ボルト又はナットの締結状態においてボルト軸部に作用するボルト軸力を検出するボルト軸力検出システム又はボルト軸力検出方法に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 締め付け工具
3 ソケット
4、52 ボルト軸力検出システム
5 情報処理装置
6 ボルト
7 ボルト頭部
7a 頂面(検出対象面)
8 ボルト軸部
15 ボルト軸心
17 係合凹部
20、20a、20b、20c 変位センサ(変位検出手段)
21、21a、21b、21c センサヘッド
24 CPU
25 記憶部(記憶手段)
33 変位検出部(変位検出手段)
34 軸力検出部(軸力検出手段)
41 座金部
42 センサ装着孔
53 厚さ検出器(厚さ検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト頭部からボルト軸部が一体的に延びるボルトの締結状態又はボルト軸部の一端から該ボルト軸部に螺合するナットの締結状態において、前記ボルト軸部に作用するボルト軸力を検出するボルト軸力検出システムであって、
前記ボルト又は前記ナットの締結に伴ってその締結方向へ微小変形する前記ボルト頭部の頂面又は前記ナットの前記一端側の開放面を検出対象面とし、この検出対象面のうちボルト軸心に対して所定距離となる位置を検出対象位置とし、この検出対象位置の非締結状態からの前記締結方向に沿った変形量を検出する変位検出手段と、
前記検出対象位置の変形量とボルト軸力との対応関係を予め記憶する記憶手段と、
前記変位検出手段が検出した変形量と前記記憶手段が記憶する対応関係とを用いて、前記ボルト軸部に作用するボルト軸力を検出するボルト軸力検出手段と、を備えた
ことを特徴とするボルト軸力検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載のボルト軸力検出システムであって、
前記検出対象位置は、前記検出対象面のうち該検出対象面の外縁よりも前記ボルト軸心に近い所定の内側位置であり、
前記変位検出手段は、前記検出対象面の外縁位置と前記検出対象位置との間の前記締結方向に沿った距離を非締結状態及び締結状態のそれぞれで検出し、検出した距離の差分を前記変形量として検出する
ことを特徴とするボルト軸力検出システム。
【請求項3】
請求項1に記載のボルト軸力検出システムであって、
前記検出対象面は、非締結状態で前記ボルト軸心に略直交する平面状であり、
前記検出対象位置は、前記検出対象面のうち該検出対象面の外縁よりも前記ボルト軸心に近い所定の内側位置であり、
前記変位検出手段は、締結状態での前記検出対象面の外縁位置と前記検出対象位置との間の前記締結方向に沿った距離を前記変形量として検出する
ことを特徴とするボルト軸力検出システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のボルト軸力検出システムであって、
前記ボルト頭部又は前記ナットの厚さを検出する厚さ検出手段を備え、
前記記憶手段は、前記検出対象位置の変形量と前記ボルト頭部又は前記ナットの厚さとボルト軸力との対応関係を予め記憶し、
前記ボルト軸力検出手段は、前記変位検出手段が検出した変形量と前記厚さ検出手段が検出した厚さと前記記憶手段が記憶する対応関係とを用いて、前記ボルト軸部に作用するボルト軸力を検出する
ことを特徴とするボルト軸力検出システム。
【請求項5】
ボルト頭部からボルト軸部が一体的に延びるボルトの締結状態又はボルト軸部の一端から該ボルト軸部に螺合するナットの締結状態において、前記ボルト軸部に作用するボルト軸力を検出する方法であって、
前記ボルト又は前記ナットの締結に伴ってその締結方向へ微小変形する前記ボルト頭部の頂面又は前記ナットの前記一端側の開放面を検出対象面とし、この検出対象面のうちボルト軸心に対して所定距離となる位置を検出対象位置とし、この検出対象位置の非締結状態からの前記締結方向に沿った変形量を検出し、
前記検出対象位置の変形量とボルト軸力との所定との対応関係と前記検出した変形量とを用いて、前記ボルト軸部に作用するボルト軸力を検出する
ことを特徴とするボルト軸力検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−179952(P2011−179952A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44175(P2010−44175)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】