説明

ボロン酸付加物を用いたグルコースの光学測定

【課題】インビトロ及び/又はインビボで水媒体中のポリヒドロキシル置換有機分子レベルを測定する改良光学的測定法及び/又はそれを測定する検出装置に関する。特に、検出装置を哺乳類動物に移植して、糖レベルを測定する。
【解決手段】フルクトース又はグルコースの存在下で、染料を複素環式芳香族窒素含有ボロン酸置換ビス-オニウム化合物と結合させる。前記共役窒素含有複素環式芳香族のボロン酸置換ビス-オニウム化合物としては、ビオロゲンが好ましい。この方法は、人体の糖レベルを測定する際に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の背景)
(関連出願)
本願は、2000年12月5日に出願された米国特許出願第09/731,323号の一部継続出願である。その全体を引用することにより、本願に援用する。
【0002】
(発明の属する技術分野)
本発明は、水媒体又は有機媒体中のポリヒドロキシ置換有機分子の濃度を測定する改良光学的測定法及び/又はそれを測定する改良センサーに関する。一用途において、この測定法及びセンサーは、水溶液中の糖類、すなわちグルコース又はフルクトースの濃度をインビトロ(in vitro)でモニターするが、特に、この測定法及びセンサーは、水溶液中の糖類、すなわちグルコース又はフルクトースの濃度をインビボ(in vivo)でモニターする。液体中のグルコースをインビトロ及びインビボで測定することは重要である。インビボの検出装置は人間に埋め込むことができる。光学的測定法及び装置の新規の要素には、独立した発明と考えられるものもある。
【0003】
(従来技術の説明)
何年もの間、体液中のポリヒドロキシ化合物(例えばグルコース)濃度の測定に蛍光技術を利用する努力が継続的になされてきた。本明細書では以下“グルコース”の用語を用いるが、溶液中の大部分のポリヒドロキシル基含有有機化合物(糖質、1,2ジオール、1,3ジオール等)の濃度を測定できると了解されよう。しかし、懸命な努力にもかかわらず、インビボモニターリングに関する実用的なシステムは未だ開発も商品化もされていない。様々な試みは、ボロン酸基を有する染料を使用した、蛍光によるグルコース検出に関してなされている。ボロン酸は糖と可逆的に結合するとして周知であり、ボロン酸官能性染料が糖と結合すると、その染料の特性が効果的に現れる。従来はこのような変化を利用して糖濃度を測定していた。
【0004】
このようなグルコースセンサーへのアプローチとして、米国特許第5,137,833号(Russel & Zepp、米国特許第5,512,246号も参照)はある使用例を報告しており、グルコースと結合してグルコースの濃度によって信号を発するボロン酸官能性染料の使用について開示している。James et alの米国特許第5,503,770号も同様の原理を用いたものだが、蛍光染料、消光機能を有するアミン及び単一化合物の一部(single complex moiety)中にあるボロン酸を混合すると、それから発光される蛍光はグルコースの程度によって変化する。米国特許第6,002,954号及び同第6,011,984号は、従来の引用文献の特徴を組み合わせて、移植可能と称される装置の製造を教示している。米国特許第6,304,766号は光学的であることをベースとしたセンサー装置、特に人体をその場(in-situ)でセンサーする装置を開示している。
【0005】
当該特許は下記のものを含むが、これらに限定されるものではない。
米国特許第5,137,833号(1992)
米国特許第5,503,770号(1996)
米国特許第5,512,246号(1996)
米国特許第6,002,954号(1999)
米国特許第6,011,984号(2000)
【0006】
当該特許に関連する米国特許は下記のものを含む。
米国特許第4,586,518号(1986)
米国特許第4,659,817号(1989)
米国特許第4,798,738号(1989)
米国特許第4,886,338号(1989)
米国特許第5,039,491号(1991)
米国特許第5,114,676号(1992)
米国特許第5,232,858号(1993)
米国特許第5,517,313号(1996)
米国特許第5,631,364号(1997)
米国特許第5,763,238号(1998)
米国特許第5,711,915号(1998)
米国特許第5,852,126号(1998)
米国特許第5,894,351号(1999)
米国特許第5,922,612号(1999)
米国特許第6,063,637号(2000)
米国特許第6,046,312号(2000)
米国特許第6,139,799号(2000)
米国特許第6,040,194号(2000)
米国特許第6,256,522号(2001)
米国特許第6,285,807号(2001)
米国特許第6,304,266号(2001)
米国特許第6,319,540号(2001)
【0007】
当該特許に関連する記事及び刊行物は、下記のものを含む。
Yoon & Czarnik、J.Amer. Chem. Soc(1992)、114、5874-5875
James、Linnane & Shinkai、Chem. Commun.(1996)、281-288
Suenaga et al、Tetrahedron Letters(1995)、36、 4825-4828
Eggert et al.、J. Org. Chem.(1999)、64、3846-3852
Wolfbeis et al.、Analytica Chimica Acta(1999)、1、1209-1212
Chen et al、Proc. Nat. Acad. Sci.(1999)、96、12287-12292
P. D. Hale et al、Analytica Chimica Acta(1999)、248、155-161
A. E. Colvin、Jr. et al、Johns Hopkins Technical Digest、Vol. 12、#17、p. 378(1996)
【0008】
一般性質に関する参考文献は下記のものを含む:
A. W. Czarnik(ed)、Fluorescent Chemosensors for Ion and Molrcule Recognition、ACS Washington, D. C. 1992.
F. W. Scheller et al.(eds)、Frontiers in Biosensorics I Fundamental Aspects、Birkhduser Verlag、Basel 1997.
J. R. Lakowicz、Principles of Fluorescence Spectroscopy. 2nd ed. Kluwer Academics/Plenum Publishers、New York、New York(1999).
Haugland、R. P. Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals6th ed. Molecular Probes Inc. Eugene、Oregon(1996).
Gunter Wulff、et al. 、“Molecular Imprinting for the Preparation of Enzyme Analogous Polymers” 、pp.10-28 in R. A. Bartsh and M. Maeda(eds)Molecular and Ionic Recognition with Imprinted Polymers. ACS Symposium 703 American Chemical Society 1998. Washington, D. C.
H. Murakami、et al. 、“Glucose Detection by Electrochemical Methods Using a Viologen Boronic Acid Dericative” 、Chem. Letters(Japan)、(2000)(8)p.940-1.
【0009】
本願に引用する全ての特許、記事、参考文献、基準等は、その全てを言及することにより援用する。
【0010】
これら従来のセンサーは全て、例えば生理的条件下における動作可能性、操作上の安定性、設計の簡素さ、信頼度、移植可能性及び感度のような1又はそれ以上の面で欠陥を有する。本発明は、かかる欠陥を改善している。
【0011】
(発明の概要)
本発明は、水媒体中のポリヒドロキシ化合物の濃度を測定する光学的測定法及び光学測定装置に関し、特にインビボで、生理的媒体中の糖類、特にグルコース又はフルクトース等の濃度を測定する光学的測定法及び光学測定装置に関する。これら化合物、すなわち検体を、光源と、センサーと、蛍光剤(fluorophore)D(蛍光染料)、消光剤、及び任意のポリマーマトリクスMを含む活性成分とからなる蛍光センサー装置を備えたシステム中に入れる。構成要素のいくらかは独立した発明である。蛍光剤は、適当な波長で励起されると光を放つ(蛍光を発する)。光強度は消光の程度に依存する。蛍光剤と消光剤Qは、好ましくは独立して存在しているが、任意的に、検出及び定量の対象化合物に浸透可能か又はそれと接触しているポリマーマトリックス中で固定されるか、又はそれと共有結合して存在している。
【0012】
一例において、本発明は、生理的pH又はそれに近いpHの水媒体中で、グルコースのようなポリヒドロキシ化合物の存在に反応を示す蛍光消光化合物の類を含む。すなわち、消光の効果は媒体中のこれら化合物の濃度によって制御される。消光剤は、少なくとも1つのボロン酸基で置換されたビオロゲンからなり、そこで付加物(adduct)は、ポリマー中で固定されるか又はそれと共有結合している。消光剤、染料及びポリマーも相互に共有結合してもよい。
【0013】
本発明の実施例では、ボロン酸とビオロゲンの結合と、それがビオロゲン特性へ与える影響が重要である。
【0014】
他の例において、本発明は、ビオロゲン/ボロン酸付加物によって消光され易いポリマー蛍光染料の分野である。有用な染料は、ピラニン誘導体(例えばヒドロキシピレントリスルホンアミド誘導体等)を含むものである。(図1A、1B及び1Cを参照)
【0015】
一実施例において、染料はポリマーに結合したヒドロキシピレントリスルホンアミドの一部を含む。スルホン酸基をスルホンアミド基に置換するとピラニンのpKaは変動し、生理的pHにおける測定に対してより適切な範囲となる。この置換は染料の吸光度もさらに長波長へと変動させ、それによって青色発光ダイオードの光により効果的に励起されるようになる。青色発光ダイオードは、移植用センサーとして好ましい光源である。これら誘導体は、通常はトリスルホニルクロライドの中間体を1)ポリアミン、2)連続的に重合させると付加物となるアミン官能性のエチレン結合を含む不飽和モノマー、3)又は、アミン官能性ポリマーと反応させることによって作成する。一実施例において、染料はピレン環に遊離スルホン酸基の残基を有さない、完全に置換された誘導体である。
【0016】
他の例において、本発明は合成親水性ポリマーマトリックスであり、好ましくはヒドロゲルであり、染料と消光剤の一部から成るものである。そのマトリックスは水膨潤性コポリマーであり、好ましくは連結基(linking group)Lと共有結合した染料と消光剤の一部と架橋している。一実施例において、マトリックスは、ポリマーネットワークの1つに組み込まれた染料と、他のポリマーネットワークにある消光剤とを有する相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)である。他の実施例においては、マトリックスは半相互貫入ポリマーネットワークであり、そこで染料成分は、消光剤モノマーと適切な親水性を有するコモノマーとからなる架橋ネットワーク中に捕捉された、水溶性又は水分散性の分子量の大きいポリマーである。任意的に、その消光剤は親水性又は分散性の成分に含まれ、染料はネットワーク中にあってもよい。さらに染料及び消光剤の両方は、不活性ポリマーマトリックス中に捕捉されて、水溶性又は水分散性のポリマー中に離れて組み込まれてもよい。任意的に、それらの成分は、その成分には不浸透であるけれども検体には浸透性のある膜によって、検体液から分離されている。任意的に、マトリックスは、染料と消光剤との間でその結合を助けるために、また他のヒドロキシ化合物以上に特定の糖類、例えばグルコース等への選択性を高めるために、分子刷り込みされている。染料と消光剤との間の相互作用を高めるために好ましい方法は、その染料の一部を、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩及びリン酸塩のような負に帯電した群で活性化させる方法である。
【0017】
他の例において、本発明は光学センサーを用いてインビボでグルコース濃度を測定する装置に関する。具体的にその装置は、可視光線源(好ましくは青色発光ダイオード光源)と、光センサーと、光ファイバーアセンブリーのような光導管と、水不溶性ポリマーマトリックスとからなる。そして、そのポリマーマトリックスは、ビオロゲンにより消光され易い蛍光剤、ビオロゲン/ボロン酸消光剤及びグルコース浸透性ポリマーからなるものであり、ここでマトリックスは、前記光導管と検体を含む媒体に接触している。
【0018】
他の実施例では、本発明は約430〜600nmで検出可能な検体(analyte)であるポリヒドロキシル置換有機分子をインビボ(in vivo)で光学的に検出する方法において、
A.前記検体液に適合する蛍光剤(fluorophore)染料Dを得る段階と、
[前記Dは下記の(a)又は(b)から選択される:
(a) 下記I〜VIの性質を有する蛍光剤染料D1
I.蛍光剤である
II.430nm〜600nmの範囲で励起を有する
III.分析条件下で光退色に対して耐久性を有する
IV.約30nmかそれ以上のストークスシフト(stock shift)を有する
V.前記検体液に適合する
VI.メチルビオロゲンにより消光され、実験による見かけ上のシュテルン-フォルマー(Stern-Volmer)消光定数の測定値(Ksv)が50かそれ以上である
(ここで、蛍光剤染料D1は中性又は負に帯電しており、下記の(I)又は(II)の何れか:
(I) 分子量が1000ダルトンか又はそれ以上の分離化合物(但し該染料が負に帯電した基
で置換される場合には、分子量が500ダルトン又はそれ以上である化合物)
(II) 分子量が約10000ダルトン以上の水溶性又は分散性ポリマー中のペンダント基 (pendant group)又は鎖状単位(chain unit)
であり、任意に前記ポリマーは水不溶性ポリマーマトリックスM1と非共有結合し、かつその中で物理的に固定されている。ここで前記ポリマーマトリックスM1は、前記検体液に浸透性を有するか又はそれと接触している。また、任意にD1が負に帯電しているか、ポリマーが陽性の水溶性ポリマーとの錯体として固定される場合には、形成された該錯体は前記検体液に対して浸透性を有するか又はそれに接触している。)
(b) 下記I〜VIの性質を有する蛍光剤染料D2
I.蛍光剤である
II.430nm〜800nmの範囲で励起を有する
III.約30nmかそれ以上のストークスシフトを有する
IV.分析条件下で光退色に対して耐久性を有する
V.前記検体液に適合する
VI.メチルビオロゲンにより消光され、生成される見かけ上のシュテルン-フォルマー(Stern-Volmer)消光定数(Ksv)が50かそれ以上である
(ここで、D2が不溶性ポリマーマトリックスM1と共有結合している場合には、該ポリマーマトリックスM1は前記検体に浸透性を有するか又はそれと接触しており、D2が多官能性でありマトリックスM1に1、2又は3箇所で結合する場合には、前記蛍光剤染料D2はM1-L1-D2の構造の一部である。L1は、直接結合、炭素原子が1〜8の低アルキレン基からなる群から選択された加水分解に対して安定な共有結合基であって、スルホンアミド、アミド、エステル、エーテル、硫化物、スルホン、フェニレン、ウレタン、尿素及びアミンから選択された1又はそれ以上の2価の結合基を任意に端末基とするか又はそれを含む。)]
B.ボロン酸を含む消光剤(quencher)部分Qと結合する段階と、
[ここで、Qは、前記検体液中で適合するという特性を有する共役窒素含有複素環式芳香族ビスオニウム塩を含み、前記検体の存在下で染料の発光時に検出可能な変化を生じさせ、かつ下記の(I)又は(II)から選択される:
(I) 分子量が約400ダルトン又はそれ以上の分離化合物か、又は分子量が10000ダルトン
以上の水溶性又は水分散性ポリマー中のペンダント基又は鎖状単位であり、該ポリ
マーが任意のポリマーマトリックスM1の存在時に該M1と任意に非共有結合して該ポ
リマーマトリックス中で物理的に固定されているか、又は該ポリマーが負に帯電し
た水溶性ポリマーとの錯体として任意に固定されていることを特徴とする消光剤Q1
(II)結合基L2を介してM1と共有結合しているか、又は第二の不溶性ポリマーマトリック
スM2と共有結合してM2-L2-Q2を形成しており、L2は直接結合炭素原子1〜8の低ア
ルキレンから選択されたものであって、スルホンアミド、アミド、第4級アンモニ
ウム、ピリジニウム、エステル、エーテル、硫化物、スルホン、フェニレン、尿素
、チオ尿素及びウレタン又はアミンから選択された1又はそれ以上の2価の結合基
を任意に端末基とすることを特徴とする消光剤Q2
(Q2において多官能性が1又は2箇所でマトリックスM2と結合しているならば、前記消光剤Q1又はQ2は前記蛍光剤染料D1又はD2と分子レベルで混ざり合う)]
C.インビボで検体、染料及び消光剤を含む生理的溶液に、検出器と連結した励
起光源を接触させる段階と、
D.約430〜600nmの範囲で検出可能かつ定量可能な信号を発生する段階と、
E.前記生理的溶液中の前記ポリヒドロキシ置換検体の濃度を求める段階からなることを特徴とする検出方法である。
【0019】
他の実施例において、本発明は検体を測定する際に共に作動する上記部分を組み込んだ装置である。
【0020】
本発明において、D1及びD2と結合する“ポリマー”の用語は、ジヒドロキシ化合物と反応するか又はそれと結合するポリマーを除く。有用なポリマーは、おそらく陰イオンか、陽イオンか、又は中性であり、かつ加水分解に安定でありインビボで体液に適したものである。
【0021】
この方法の他の面において、染料D1は下記一般式〔化1〕で表される構造を有するピラニン誘導体の分離分子か、又はそのポリマーから選択されたものである。
【0022】
【化1】

【0023】
上記式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に-NH-CH2-CH2(-O-CH2-CH2) n-X1である。ここでX1は-CH2-OCH3、-CO2H、-CONH2、-SO3H、又は-NH2から選択される何れかであり、nは約70〜10,000、好ましくは100〜1,000である。
【0024】
この方法の他の面において、染料D1又はD2は下記一般式〔化2〕で表される構造を有するピラニン誘導体か、又は下記一般式〔化3〕からなる群から選択される染料モノマーからつくられたものである。
【0025】
【化2】

【0026】
【化3】

【0027】
上記式中、R4は-Hであり、R5は-R6-NH-(C=O)-(C=CH2)-R7、-R6-O-(C=O)-(C =CH2) -R7、-CH2-C6H4-CH=CH2又は-CH2-CH=CH2である。ここでR6は炭素数2〜6の低アルキレン基であり、R7は-H又は-CH3である。Zは-(C=O)R8-Yから選択され、加水分解により除去される保護基である。ここでR8は炭素数1〜4の低アルキレン基、Yは-H、-OH、-CO2H、SO3H、-(C=O)-NH-R9又は-CO2-R9から選択される何れかであり、R9は炭素数1〜4の低アルキレン基である。
【0028】
好ましくは、分離化合物又はペンダント基として存在する染料の部分D1は、下記一般式〔化4〕から選択されたものである。
【0029】
【化4】

【0030】
上記式中、R18は-H又は-L3-Aである。ここでL3は上記のL2から選択され、Aは-COOH及び-SO3Hから選択されたものである。R19は-Hか、又は染料D2のR18又はR19の少なくとも1つが重合可能な基であり、各スルホンアミド基が1つの-Hで置換されているならば、R19は上記のR5から選択されたものである。
【0031】
他の面において、Q1は、検体の少なくとも2倍の分子量(MW)を有し、少なくとも1つのボロン酸置換基を有する、水溶性又は分散性の分離化合物である。ここで、この分離化合物は、半透膜によりその主部から分離されている。好ましくは、分離化合物Q1はボロン酸置換基2つを含む。
【0032】
他の面において、消光剤Q1は下記一般式〔化5〕〜〔化7〕から選択されたものである。
【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
上記式中、ボロン酸基はメタ位又はパラ位にある。
【0037】
この方法の他の面において、消光剤Q1及びQ2は、下記一般式〔化8〕又は〔化9〕からなる群から選択される消光剤前駆体からつくられたものである。
【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
上記式中、(V)2+はジピリジル、ジピリジル エチレン、ジピリジル フェニレン、フェナントロリン又はジアザフルオレンの異性体から選択される窒素含有の共役複素環芳香族基である。ここで2つの窒素原子はそれぞれ別の芳香環にあり、その窒素はオニウム塩を形成できるすべての位置にある。また、Z1又はZ2は窒素上の置換基であり、(I)-R10-CO2-C(R11)=CH2、-R10-NH-(C=O)-C(R2)=CH2又は-CH2-C6H4-CH=CH2(ここでR10は炭素数2〜6の低アルキレン基又はヒドロキシアルキレン基であり、R11は-H又は-CH3である)から選択される重合可能なエチレン結合を含む不飽和基か、又は(II)-R12-Z3(ここでR12は-CH2C6H4-又は炭素数2〜6のアルキレン基であり、Z3は-OH、-SH、-CO2H又は-NH2である)から選択される連結基である。
【0041】
Q1は、水溶性又は分散性のポリマーの分離化合物又はペンダント基又は鎖状単位体(直鎖又は分岐鎖)である。不溶性のポリマーマトリックスM1-L2-Q2は、好ましくは架橋したネットワークポリマーである。
【0042】
他の面において、Q1及びQ2は下記一般式〔化10〕又は〔化11〕から選択される前駆体からつくられるものである。
【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
前記式中、V3及びZ4又はZ5は2、3又は4-(CH=CH2)-ピリジニウム、-N-(CH2)W-O(C=O)C(CH3)=CH2、-O-(CH2)W、-O-CH2-(CH=CH2)、-O-(CH2)W-O-(C=O)CH(=CH2)及び-O-(CH2)W-O-(C=O)C(CH3)=CH2(ここでWは2〜6の整数である)、又はZ4とZ5はZ1とZ2に関して上記に定義した通りである。
【0046】
染料Dに関し、D1及びD2は、染料D1及びD2がジアゾ結合-N=N-を含まないことを条件として定義する。
【0047】
消光剤Qに関し、Q1及びQ2は、消光剤Q1及びQ2がジアゾ結合-N=N-を含まないことを条件として定義する。
【0048】
本明細書に記載のインビボの用途では、ポリマーの存在下におけるオルト-ベンジルボロン酸誘導体は除く。
【0049】
(発明の詳細な説明及び実施の形態)
(定義)
本明細書中に使用される“ボロン酸”の用語は、B(OH)2の構造を意味する。本発明の消光剤合成の各段階で、ボロン酸はボロン酸エステルとして存在すると当業者には認識されているが、ボロン酸はかかるエステル類を含む。
【0050】
本明細書中に使用される“検出器”の用語は、光ダイオードのような光強度をモニターする装置を意味する。
【0051】
本明細書中に使用される“蛍光剤”又は “蛍光剤染料”又は “染料”の各用語は、適当な波長の光をあてると発光する、すなわち蛍光を発する芳香族又は複素芳香族化合物を意味する。蛍光剤 Dは、分離化合物か、又は反応中間体から選択されたものである。ここで前記反応中間体は、第2の分離化合物又は重合可能な化合物へと変化することができる。あるいは、Dは、前記反応中間体又は重合可能な化合物から作成されたポリマー中の、ペンダント基又は鎖状単位体である。そして、前記ポリマーは水に溶解するか又は分解することができるか、あるいは水に不溶なポリマーであり、そのポリマーは任意に架橋している。
【0052】
本明細書中に使用される“HEMA”の用語は、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを意味する。
【0053】
本明細書中に使用される“光源”又は“励起光源”の用語は、市販で入手可能なキセノンランプ、中圧水銀ランプ、発光ダイオード(LED)のような電磁放射線を放つ装置を意味する。
【0054】
本明細書中に使用される“連結基”の用語は、L、L1又はL2であり、ポリマー又はマトリックスに検出部を共有結合させる2価の基を意味する。例えばL、L1又はL2は、スルホンアミド(-SO2NH-)、アミド-(C=O)N-、エステル-(C=O)-O-、エーテル-O-、硫化物-S-、スルホン(-SO2-)、フェニレン-C6H4-、ウレタン-NH(C=O)-O-、尿素NH(C=O)NH-、チオ尿素-NH(C=S)-NH-、アミド-(C=O)NH-、アミン-NR-(ここでRは炭素数1〜6のアルキル基である)等から選択された1又はそれ以上の2価の結合基を任意に末端基とするか、又はそれを基中に含む、直接結合又は炭素数が1~8の低アルキレンからそれぞれ独立して選択されたものを含む。
【0055】
本明細書中に使用される“消光剤”の用語は、蛍光剤の存在下でその蛍光剤の発光を軽減させる化合物を意味する。消光剤Qは分離化合物か、又は反応中間体から選択される。ここで、前記反応中間体は、第2の分離化合物か又は重合可能な化合物に変化することができる。又は、Qは前記の反応中間体又は重合可能な化合物から作成されたポリマー中の、ペンダント基か又は鎖状単位である。そのポリマーは、水に溶解するか又は分解することができるか、あるいは水に不溶なポリマーであり、そのポリマーは任意に架橋している。
【0056】
本明細書中に使用される“インビボ”の用語は、哺乳動物、好ましくは人間の生体内における分析を意味する。インビボ測定は、温度、圧力、溶剤、検体濃度及びpHの状態を人体内のようにした生理的条件下で行う。
【0057】
本明細書中に使用される“IPN”又は“相互貫入ポリマーネットワーク”の用語は、並列して合成された2またはそれ以上のネットワークポリマーの連合体を意味する(L.H. Sperling, Interpenetrating Polymer Networks, ACS Advances in Chemistry Series 239, 1994, from August 25-30, 1991, New York ACS Meeting参照)。
【0058】
本明細書中に使用される“ピリジニウム”の用語は、窒素上と、任意に同環内の他位置の炭素上で置換された単位体、すなわちピリジン環からなる構造(結合基又はペンダント基)を意味する。炭素上の置換基にはビニル基があり、窒素上の置換基にはベンジルボロン酸のメチレン基がある。
【0059】
本明細書中に使用される“半-IPN”又は“半相互貫入ポリマーネットワーク”の用語は、1成分が水溶性で、他のポリマーがネットワークであるポリマーの連合体を意味する。(上記のSperling参照)。
【0060】
本明細書中に使用される“オニウム”の用語は、ヘテロ原子にみかけの陽性荷電を有する複素芳香族イオン化合物を意味する。ビオロゲンにおいては、前記へテロ原子は窒素である。
【0061】
本明細書中に使用される“PEG”又は“ポリエチレングリコール”の用語は、オキシエチレン(-OCH2-CH2-)の反復単位を含むポリマー又は鎖部分を意味する。
【0062】
本明細書中に使用される“PEGDMA”の用語は、末端基2つがメタクリル酸基であるポリエチレングリコールを意味する。
【0063】
本明細書中に使用される“PEGMA”の用語は、末端基1つがメタクリル酸基であるポリエチレングリコールを意味する。
【0064】
本明細書中に使用される“生理的pH”の用語は、通常生存する人体血中にある7.3〜7.5の範囲のpHを意味する。
【0065】
本明細書中に使用される“可視光線範囲”の用語は、400〜800nmのスペクトル光を意味する。
【0066】
本明細書中に使用される“ビオロゲン”の用語は、一般的に、4,4’-N,N’ビス-(ベンジル)ビピリジウム ジハロゲン化合物(すなわちジクロライド、ブロミド クロライド)等のような窒素を含む共役N置換複素環芳香族ビスオニウム塩の基本構造を有する化合物を意味する。ビオロゲンには、フェナントロニン化合物も含まれる。
【0067】
本発明は、数々の重要な進歩に影響を与えるものである。しかし、これらには、水溶液、有機溶液、又はそれらの混合液から選択された液体か、又は生理的溶液の各溶液中で、炭水化物、1,2-ジオール又は1,3-ジオールのレベルを測定する方法及びインビボ装置が含まれるが、それらに制限されるものではない。ある一連の蛍光剤染料、ある一連のボロン酸置換の消光剤、そして互いに作用している、水及び有機溶媒に適合し、かつ水及び有機溶媒に溶性である有機ポリマーの組み合わせを使用することができる。これらの例に関しては、下記に詳細に示す。まず各成分について述べ、続いてそれら成分の組み合わせによる方法及び装置について述べる。
【0068】
(消光剤)
本発明において、グルコース認識部分は芳香族ボロン酸である。より詳細には、本発明のボロン酸は、例えばビオロゲンのような共役窒素含有複素環芳香族ビスオニウム骨格と共有結合しており(例えば図3A〜Iを参照)、そこでボロン酸は約7以下のpKaを有し、水性媒体中のグルコースと可逆的に反応してボロン酸エステルを形成する。反応の程度は、媒体中のグルコース濃度に関連する。
【0069】
本発明のビスオニウム塩は、共役複素環芳香族二窒素化合物から作成する。その共役複素環芳香族二窒素化合物は、ジピリジル、ジピリジルエチレン、ジピリジルフェニレン、フェナントロリン及びジアザフルオレンから選択するが、ここで各窒素原子は別の芳香環にあり、オニウム塩を形成することができる。前記の共役複素環芳香族二窒素化合物の異性体全てにおいて、両方の窒素が置換可能であるものが、本発明において有用であると認められる。好ましいビスオニウム塩は、4,4’-ジピリジル及び4,7’-フェナントロリン由来のものである。ビオロゲンボロン酸付加物は、分離化合物であるか、あるいは分子量が10000以上の水に溶解又は分散するポリマー鎖中の親水性ペンダント基又は単位体であるか、あるいは不溶性のポリマーマトリックスに結合したものである。1又はそれ以上のボロン酸基がビオロゲンの各部に結合する。
【0070】
ポリマー消光剤の前駆体として、複素環芳香族化合物の中心部にある2つの異なる窒素原子に結合するボロン酸の部位には、3つの選択肢がある。それらは:
a) 第1の芳香族部分上にある重合可能な基が窒素原子の1つと結合し、少なくとも1つの-B(OH)2基を有する第2の芳香族基が第2の窒素と結合したもの、
b) 1又はそれ以上のボロン酸が窒素原子1つとボロン酸1つを有する第1の芳香族部分に結合し、かつ重合可能な基が第2の窒素原子を有する第2の芳香族基に結合したもの、及び
c) 1つのボロン酸基と重合可能な基が窒素原子と結合した第1の芳香族の部分と結合し、ボロン酸基1つと重合可能な基1つが第2の窒素原子と結合した第2の芳香族部分と結合したものである。
【0071】
ボロン酸基1つを有する代表的なビオロゲンは、1.下記一般式〔化12〕で表される構造を有するボロン酸置換ビオロゲン、又は2.複素環上の置換基としてビオロゲンを含むものである。
【0072】
【化12】

【0073】
上記式中、nは0〜3、好ましくは1である。ここでLは結合基、すなわち本明細書で定義するL1又はL2であり、Mは本明細書で定義するポリマーマトリックスである。またY2はフェニルボロン酸(メタ位又はパラ位の異性体)又はナフチルボロン酸、好ましくはフェニルボロン酸である。
【0074】
ビオロゲンは上記の組み合わせを含むと考えられる。ビオロゲン/ボロン酸の前駆体となるものは、一端にボロン酸官能基を有し、他の一端にビニル基のような重合可能な基を有するような非対称置換ビオロゲンである(図3A〜3I参照)。ビオロゲン/ボロン酸部分は、水に溶解又は分散するポリマー中のペンダント基又は鎖状単位体であるか、あるいは、グルコースの浸透性が平衡化できる程十分な、架橋した親水性のポリマー又はヒドロゲル中の単位体である。
【0075】
(蛍光染料)
本発明において有用な染料(図1A、1B及び1Cを参照)は、約430nm又はそれ以上の波長の光で励起し、励起波長及び発光波長が分離可能な程十分な長さ、すなわち少なくとも10nm、好ましくは約30nm又はそれ以上のストークスシフトを有するものである。そのような染料は、ビオロゲンのような電子受容体分子によって消光され易く、光退色に対して耐性があり、かつ光酸化、加水分解及び微生物分解に対して安定である。本発明の有用な染料は、メチルビオロゲンを用いて試験した場合に、約50かそれ以上、好ましくは100以上の見かけ上のスタン・ボルマー消光定数を有する。このスタン・ボルマー試験の概要は、下記の手順Aに示す。好ましい染料には、ヒドロキシピレントリスルホン酸のポリマー誘導体が含まれる。一部の例において、染料はスルホンアミド官能基を介してポリマーに結合している。そのポリマー染料は、水溶性であるか、あるいは不溶性であるけれども水中で膨潤又は分散するか、あるいは架橋しているかもしれない。ポリマーとして好ましい染料は、例えば8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス(メトキシポリエトキシルエチル(n〜125)スルホンアミド) の水溶性PEG付加物であり、アセトキシピレン トリスルホニル クロライドをアミノエチルPEGモノメチルエーテルと反応させて形成する。結果として生じる染料ポリマーは、少なくとも約10,000の分子量を有するため、ヒドロゲル又はネットワークポリマーマトリックス中で捕捉されると、そのマトリックスから周囲の水媒体へ拡散できない。
【0076】
分離化合物として代表的な染料はトリス付加物であり、8-アセトキシピレン-1,3,6-トリスルホニルクロライド(HPTS-Cl)をアミノ酪酸のようなアミノ酸と反応させて形成する。最も好ましいものは、ポリマーに結合し、1又はそれ以上のアニオン基を有するヒドロキシピレントリスルホンアミド染料であり、例えば8-ヒドロキシピレン-1-N-(メタクリルアミドプロピルスルホンアミド)-N’,N’’-3,6-ビス (カルボキシプロピルスルホンアミド)HPTS-CO2-MAとHEMA、PEGMA等とのコポリマーである。
【0077】
他の例には、8-アセトキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス(メタクリルアミドプロピルスルホンアミド)とHEMA、PEGMA又は他の親水性コモノマーとの水溶性コポリマーがある。染料のフェノール置換基は、重合中には保護基により保護されており、その保護基は重合の完了後に加水分解で除去することができる。適当な保護基としては、例えばアセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基等が周知である。
【0078】
検出を可能とするために、検出部(検体、染料、消光剤)は相互作用できるように接近していなければならない。すなわち、分子レベルで混ざり合っており、検出対象と平衡化していなければならない。理論や仕組みよる制約はないが、たいていの場合には、消光を可能とするためには分子の衝突が必要であるか、又は分子中心間の距離が10オングストローム以下でないとならない。一方で、分子間距離がさらに大きくなると、距離に従って消光度合いは急速に低下する。ビオロゲン/ボロン酸付加物と染料が極めて近接する場合には、染料からビオロゲンへの光誘起による分子間の電子移動によって、染料による蛍光強度は弱められるように見える。グルコースがボロン酸に結合すると、ボロン酸エステルがビオロゲンと相互作用し、その結果グルコースとの結合の度合いに従って消光効率が変化する。この相互作用に特有の性質は未だ証明されていないけれども、ボロン酸からビオロゲンへの電子移動に関連しているかもしれない。又は、ボロン酸の形成により、ビオロゲンの還元電位が変わるのかもしれない。還元電位は、消光剤の電子受容能の指標となる。
【0079】
センサー用ポリマーマトリックス
インビボの用途で、センサーは、1か又はそれ以上のポリヒドロキシル有機化合物を含む生理的溶液の流れの中で用いられるか、又はその化合物を含む筋肉のような組織中に移植される。従って、そのセンサーの集合体から検出部が漏れることがないことが必要であり、インビボで使用する場合の検出成分は、有機ポリマーの検出集合体の一部である。水溶性の染料及び消光剤は、検体は通すけれども検出部を通さない半浸透性膜で隔離することができる。これは、検体分子よりも実質的に大きな水溶性分子(分子量が検体の分子量の少なくとも2倍か、又は1000より大きく、好ましくは5000より大きい分子)を検出部として用いること、そして透析膜や限外濾過膜のような選択的半浸透膜を用いて特定の分子量で2部に分けることによって実現することができ、それによって検出部を定量的に保持することができる。
【0080】
好ましくは、検出部は、グルコースに自由に浸透する不溶性ポリマーマトリックス中で固定されたものである。図8を参照。そのポリマーマトリックスは、有機ポリマー、無機ポリマー、又はそれらを組み合わせたものから成る。そのマトリックスは、生体適合性のある物質から成るかもしれない。あるいは、そのマトリックスは、検出対象である検体が浸透できるような第2の生体適合性のある物質で被覆されたものである。
【0081】
ポリマーマトリックスは、発光剤と消光剤部分を合わせて保持し、かつ固定して、その時検体と同時に接触させて、その検体をボロン酸に結合させるという機能を有する。これを効果的に成功させるためには、マトリックスが溶媒に不溶であり、かつマトリックスと検体溶液との界面に大きな表面積を設けることにより、溶媒に近接した状態になければならない。例えば、超薄膜又は微小孔性の支持マトリックスを用いる。あるいは、マトリックスは検体溶液中で膨張することができ、例えば水性システムではヒドロゲルマトリックスを用いる。ある場合には、検出ポリマーを光管路の表面のような表面と結合させるか、又は微小孔性膜中に含浸させる。全ての場合において、マトリックスは検体が結合部位へ輸送される際に妨げとなってはならず、それにより2相間は平衡化するこができる。超薄膜、微小孔性ポリマー、微小孔性ゾル-ゲル、及びヒドロゲルの作成方法は、既知の通りである。
【0082】
本発明においては、ヒドロゲルポリマーが好ましい。本明細書で用いる“ヒドロゲル”の用語は、水中で十分に膨張するけれども溶解はしないポリマーを意味する。そのようなヒドロゲルは、直鎖ポリマーか、分岐ポリマーか、又はネットワークポリマーか、あるいは多価電解質の錯体であるかもしれないが、但しそれらは可溶性又は溶出可能な画分を含むことはない。一般にヒドロゲルネットワークは、水溶性ポリマー上で架橋する段階を経て作成されるため、水媒体中で膨潤するけれども溶解はしない。あるいは、ヒドロゲルポリマーは、親水性で架橋したモノマーの混合物を共重合させて、水に膨潤するネットワークポリマーを得ることで作成される。このようなポリマーは、付加重合か、又は縮合重合か、あるいは結合工程のいずれかにより形成する。これらの場合、検出部は、モノマー誘導体を用いてネットワーク形成モノマーと組み合わさって共重合させることにより、ポリマー中に組み込まれる。あるいは、重合後の反応を利用して既に作成したマトリックスと、反応部分を結合させる。前記検出部は、ポリマー鎖中の単位体か、又はその鎖に結合したペンダント基である。
【0083】
本発明において有用なヒドロゲルも、染料と消光剤を共に共有結合させる単一ネットワークのような巨大ポリマーか、又は複数成分からなるヒドロゲルである。複数成分からなるヒドロゲルには、相互貫入ネットワーク、多価電解質の錯体、及びヒドロゲルマトリックス中の第2ポリマーの分散物を含み微小層の集合体の代わりとなるような、水に膨潤する複合材料を得るための2又はそれ以上のポリマーの様々な他の混合物が含まれる。
【0084】
巨大(monolithic)ヒドロゲルは、一般的に親水性モノマーの混合物をフリーラジカル重合させて形成する。親水性モノマーには、HEMA、PEGMA、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、N-ビニルピロリドン、N,N’-ジメチルアクリルアミド等が含まれるが、これらに限定されない。イオン性モノマーには、メタクリロイルアミノプロピル トリメチルアンモニウム クロライド、ジアリル ジメチル アンモニウム クロライド、ビニルベンジル トリメチル アンモニウム クロライド、ナトリウム スルホプロピル メタクリレート等が含まれ、架橋剤には、エチレン ジメタクリレート、PEGDMA、トリメチルプロパン トリアクリレート等が含まれる。モノマーの割合は、浸透性、膨潤指数、ゲル強度を含むネットワークの性質を最大限利用できるように、既知の原則を用いて選択する。一実施例において、染料部分は、8-アセトキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス(メタクリルアミドプロピルスルホンアミド)のような染料分子のエチレン結合を有する不飽和誘導体由来であり、消光剤の部分は、4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4エテニル)-ジピリジニウム ジハロゲン化合物(m-SBBV)のようなビオロゲンのエチレン結合を有する不飽和化合物由来であり、マトリックスは、HEMA及びPEGDMAから作成されたものである。染料の濃度は、発光強度を最適にするように選択する。染料に対する消光剤の割合は、所望の測定可能な信号を発生させるのに十分な消光剤が得られるように、調整する。
【0085】
あるいは、巨大ヒドロゲルは、縮合重合させることで形成する。例えば、アセトキシピレン トリスルホニル クロライドを過剰なPEGジアミンと反応させると、反応していないジアミン中に溶解したトリス(アミノPEG)付加物が得られる。過剰なトリメソイルクロライドと酸受容体を4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(2ヒドロキシエチル)ビピリジニウム ジハロゲン化合物と反応させると、ビオロゲンの酸クロライド官能性エステルが得られる。その2種の反応混合物を、例えば一方の混合物の薄膜を採り他方に浸すことにより、互いに接触させて反応させると、ヒドロゲルが形成される。
【0086】
この方法の状況下でボロン酸と反応してボロン酸エステルを形成するポリマーは、マトリックスポリマーとして有用ではない。そのようなポリマーは1,2-又は1,3-ジハロゲン置換体であり、セルロースポリマー、ポリサッカリド、ポリビニルアルコール及びそのコポリマー等を含むが、それらに限定されない。
【0087】
複数成分からなるヒドロゲルにおいては、染料が1成分に、消光剤が他方の成分に組み込まれたものが、本発明のセンサーを作成するには好ましい。さらに、これらのシステムを任意的に分子刷り込みすると、成分間の相互作用が強まり、他のポリヒドロキシ検体以上のグルコースへの選択性が得られる。好ましくは、複数成分からなるヒドロゲルは、相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)か、又は半相互貫入ポリマーネットワーク(半-IPN)である。
【0088】
IPNポリマーは、一般的に連続的に重合させて作成する。最初に、消光剤を含むネットワークを形成させる。その後、染料モノマーを含むモノマーの混合物でそのネットワークを膨潤させると、2番目の重合が起こり、IPNヒドロゲルが得られる。
【0089】
半-IPNヒドロゲルは、消光剤モノマーを含むモノマーの混合体に染料の部分を含む水溶性ポリマーを溶かして、重合させることにより形成する。あるいは、染料モノマーを含むモノマー混合物に水溶性の消光剤ポリマーを溶かすと、その混合物は重合する。どちらの場合も、その水溶性成分の分子量は、ポリマーネットワークから拡散できない程、すなわちマトリックス中で物理的に結合するか、又はそれに捕捉されるようなる程大きい(約10000かそれ以上)。
【0090】
図4Aで、ポリマー鎖41、42、43及び44から成る第1の群には、例えば消光剤Q2のような消光剤が含まれ、例えばD2のような染料を含むポリマー鎖45、46及び47から成る第2の群は、ほぼ同時か又は連続的に形成される。ポリマーの架橋部分は48及び49に図示するとおりである。図4Bにおいて、ポリマー鎖51、52、53及び54から成る第1の群には、例えば消光剤Q2のような消光剤が含まれる。染料D1は、第2ポリマー56のペンダント基である。架橋部分57は図示するとおりである。
【0091】
分子刷り込み機構
任意的に、本発明のポリマーは分子刷り込みされたものである。一実施例において、測定用消光剤の陽イオンと測定用染料の陰イオンから有機塩を形成する。その後その有機塩を、イオン対が少なくとも部分的に結合しているような状況下で共重合させると、巨大ヒドロゲルマトリックスが形成する。あるいは、消光剤モノマーを重合させると第1のポリマーが形成し、後にそのポリマーをイオン交換すると、陰イオン染料に対応する多価電解質が得られる。後者をその後適当なモノマーで共重合させると、消光剤ポリマーとのイオン結合で結合した相互貫入染料ポリマーが形成する。その組み合わせは、IPNポリマーか又は半-IPNポリマーのいずれかである。他の実施例において、まず重合可能なビオロゲンボロン酸を用いてグルコースのビスボロン酸エステルを形成させることにより、本発明のポリマーを分子刷り込みすると、フルクトースのような他のポリヒドロキシ化合物以上にグルコースに対する選択性が高まる。このエステルを、その後共重合及び加水分解すると、グルコースを刷り込んだポリマーが得られる。このポリマーを後に用いて、染料ポリマーを含むIPNを形成させる。
【0092】
一例において、例えば水/ジオキサンのような水性有機溶媒中で、m-SBBV及びグルコースを約2:1のモル比で混合する。減圧下で溶媒を蒸留して、生成物であるビス-ボロン酸エステルを回収する。実施例14に記載の処理を施した後、その生成物を次にHEMA及びPEGDMAで共重合させると、第1のヒドロゲルが得られる。その後、希塩酸中で処理してそのヒドロゲルからグルコースを浸出させる。純水中で処理後、そのヒドロゲルを実施例28の染料モノマーと接触させると、陰イオン染料と陽イオン消光剤のポリマーとの複合体が得られる。さらにHEMA及びPEGDMAで第2段階の重合が起こると、分子刷り込みされたIPNヒドロゲルが得られる。
【0093】
多成分ヒドロゲル中の個々の成分は、同様の又は異なる重合方法を用いて作成する。例えば、IPNポリマーでは、フリーラジカル重合により第1のネットワークを形成させ、縮合重合により第2のネットワークを形成さる。同様に、半-IPNポリマーでは、縮合重合により水溶性成分を形成させ、フリーラジカル重合によりネットワークを形成させる。例えば、4,4’-ジピリジルと3,5-ビス-ブロモメチルフェニルボロン酸とを縮合させて、ポリ4,4’-N,N’-ビス(1,3-キシリレン-5-ボロン酸)ビピリジニウム ジハロゲン化合物のような消光剤ポリマーを形成させた。上記のように、8-アセトキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス(メタクリルアミドプロピルスルホンアミド)を含む反応混合体中に消光剤ポリマーを溶かし、その溶液を重合させると半-IPNヒドロゲルが得られる。
【0094】
本明細書に記載の成分の組み合わせにより、生理的溶液中のポリヒドロキシ置換有機分子の測定装置を作成できる。
【0095】
具体例としては、アセトキシピレン トリスルホニルクロライドとアミノエチルPEGモノメチルエーテルとを縮合させることにより、分子量が大きな水溶性染料を作成し、8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス-(メトキシポリエトキシエチル(n〜125)スルホンアミド)を得る。PEG染料ポリマーを、HEMA、PEGDMA、4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム ジハロゲン化合物(m-SBBV)、水性アルコール、及びフリーラジカル開始剤から成る混合物中に溶かして重合させると、半-IPNヒドロゲルが得られる。希塩基で加水分解して純水で濾過した後、そのヒドロゲルを2つに分岐した光ファイバー管に入れて、体液に触れさせてそれと平衡化できるようにする。適当なフィルタを有するその光管を、電子的制御装置を有する青色発光ダイオード(LED)の光源とシリコン光検出器に接続し、測定装置に連結させる。そのセンサーをカテーテルの先端に配設し、そのカテーテルを体内の所望の位置に挿入する。センサーを約475nmの光で励起させ、蛍光強度を約520nmでモニーターする。体液中のグルコースレベルを発光強度から求める。
【0096】
一成分ビオロゲンセンサー
他の実施例において、本発明は蛍光剤に共有結合したボロン酸置換ビオロゲンである。分離化合物としての一成分ビオロゲンセンサーの一例は、実施例39に示すとおりである。好ましくは、付加物は重合可能な化合物か、又はポリマー中の単位体である。かかる付加物は、まず窒素の1つにベンジル-3-ボロン酸基を結合させ、他の窒素にはアミノエチル基を結合させて、4,4’-ジピリジルから非対称ビオロゲンを形成させることにより作成する。まず1:1のモル比で8-アセトキシ-ピレン-1,3,6-トリスルホニル クロライドと連続的にビオロゲンを縮合させ、その後に過剰のPEGジアミンと反応させると、プレポリマー混合体が得られる。副産物の酸を除去するために、両段階で酸受容体を入れておく。そのプレポリマー混合体を、ポリイソシアネートと共に反応させ架橋させると、ヒドロゲルが得られる。その生成物を塩基で処理して保護基を除去する。さらに使用する前に、不完全反応による生成物及び未反応の出発材料を純水で完全に抽出することにより、そのヒドロゲルから浸出させる。本明細書に記載のように検出成分として使用すると、その生成物はグルコースに反応性を示す。
【0097】
あるいは、前記付加物質はエチレン結合を含む不飽和モノマーであり、例えばジメチルビス-ブロモメチルベンゼンボロネートと過剰の4,4-ジピリジルとを反応させることにより、半分がビオロゲンの付加物を形成させる。過剰のジピリジルの除去後、その付加物をさらに過剰のブロモエチルアミンヒドロクロライドと反応させると、ビス-ビオロゲン付加物が形成される。酸受容体の存在下において8-アセトキシピレン トリスルホニル クロライドと1:1のモル比で反応させ、その後に過剰のアミノプロピルメタクリルアミドと反応させることにより、この付加物をピラニン染料と結合させる。最後に、残余のアミノ基があればそれをメタクリロルクロライド(methacrylol)と反応させる。精製後に、その染料/ビオロゲンモノマーをHEMA及びPEGDMAで共重合させると、ヒドロゲルが得られる。
【0098】
このビオロゲン群は、染料及び消光剤が共有結合により近接しているという利点を有し、それにより、感度が増大しているのかもしれない。不利点は、これら付加物を合成することは大変難しく、組成物を変化させることも難しいということである。この生成物を特徴付けることも、精製することも同様に難しい。よって、染料及び消光剤が分離した存在である実施例が好ましい。
【0099】
グルコースの光学的バッチ分析法
測定は、従来の発光分光計で行う。本発明の染料及び消光剤を含むpH7.4の緩衝溶液を作成し、キュベットに入れる。使用している染料に適した波長の光によりその試料を励起させ、その蛍光強度を測定する。溶液に含まれる未知のグルコースを一定量その溶液に添加し、測定を繰り返し行う。一連の標準グルコース溶液を測定してその結果を濃度の関数である強度変化としてプロットすることで別に定めた校正曲線を参照して、強度の変化からグルコース濃度を算出する。この方法においては、検出成分が試験中に不変であることが必要なだけで、グルコースとの反応が可逆的である必要はない。
【0100】
光学的プロセスストリーム分析法
蛍光分光計用のフローセルを作成する。検出ポリマーをそのセルに入れ、一面で励起光にあたり、他の一面でプロセスストリームにあたるようにする。グルコースを含まないセルにプロセスストリームを通して、定常状態の蛍光を測定することにより、ベースラインを設定する。その後、セルにプロセスストリームを通して、時間の関数として蛍光強度をモニーターする。グルコース濃度は、上記の校正曲線を参照して求める。この方法において、センサーは作動時を通して不変でなければならず、グルコースとの反応は可逆的でなければならない。さらに、検出部はプロセスストリームに固定されていなければならず、その中に浸出してはならない。
【0101】
装置構成
図8は、糖、すなわちグルコースを1回又は連続的にモニーターする際に用いる装置の略図である。染料及び消光剤を含む検出ポリマー81を、任意の支持材82に結合させることもできる。いくらかの実施例においては、任意の半浸透ポリマー膜83Aを使用する。他の用途においては、生体適合性が最適な被覆材83Bを使用して、その集合体を被覆すると実用的である。光源84を光フィルター85、光ファイバー86、検出ポリマー81へとつなげる。検出器87を光フィルター88、光ファイバー89へとつなぎ、それを検出ポリマー81へとつなぐ。光源84及び検出器87は、共に電子制御器90につなぐ。従って、このシステムにより、生理的溶液中のグルコース含量に基づく検出ポリマー中の変化を検出することができる。インビボでの移植及びモニーターに有用なプロセスストリーム中の装置を、図9及び10に示す。図9は、光学的装置を示しており、図10は、測定用電極の断面図を示している。図9において、光源11は(可視)光ファイバー12を介して活動セル13につながれている。半浸透膜14により、検体をセル13から出し入れし易くなる。光ファイバー15によりフィルター16と任意の光電子増倍管17に変化した光が伝達されると、分析に必要な検体スペクトルがつくられる。
【0102】
図9及び10に示すように、セル13には選択的浸透膜が含まれるため、ポリマー21、染料22、及び消光剤23の混合物は分析の条件下でセル13内に保持される。光は光ファイバー12を介してセル14に入る。セル14の活動部分14A内で、ポリマー21、染料22、及び消光剤33を検体24に接触させると、それは選択的にセルに入り、スペクトルに定量可能かつ再現可能な変化をもたらす。光ファイバー15を介して光電子増倍管17に伝達され変化した光の信号を分析する。当業者であれば、他の周知の移植可能な蛍光検出装置においても、本発明の作動部分を用いることができると理解されよう。
【0103】
(実験例)
試薬及び溶媒は、特に断りがない限り、市販で業者から入手したものを使用した。(年刊のChem Sources USAを参照。)
【0104】
下記実施例は、説明用に典型例として記載したものに過ぎず、いかなる方法においても制限されない。
【0105】
〔方法A〕
蛍光染料を用いてメチルビオロゲンのみかけ上のスタン・ボルマー消光定数(THE APPARENT STERN-VOLMER QUENCHING CONSTANT)を求める蛍光分光分析方法
みかけのスタン・ボルマー消光定数は、消光剤濃度(M)に対する相対蛍光強度(F。/F)のスタン・ボルマープロットの傾斜から算出する。ジェイ・アール・ラコヴィクス(J.R.Lakowicz)の(1999)蛍光分光の原理第2版(Principle of Fluorescence Spectroscopy Second Edition),クルワーアカデミック/プレナム出版社(Kluwer Academic/Plenum Publishers),ニューヨーク,pp.237-289を参照。当業者であれば大概は、特に対象とする溶剤中で任意の蛍光染料/消光剤の組合わせについてこの分析を行うことができる。この通常のスタン・ボルマー分析を用いて、イオン強度0.1、H7.4のリン酸緩衝液中で、スタン・ボルマー消光定数を測定する。
【0106】
濃度によって消光能力に影響を与えないようにするためには、一般的に染料の濃度を調整して、その染料の光学密度が励起状態で最大吸収波長λmaxが0.5以下の吸光度単位となるようにする。所望の染料の濃度を測定してすぐに、染料保存溶液の濃度を最終測定段階で望まれる濃度の5倍以上となるように調整する。例えば、望ましい最終濃度が1×10-5であって、その濃度において最大吸収波長λmaxが0.5以下の吸光度単位となる光学密度を与えるような染料には、濃度が5×10-5である保存溶液が必要である。
【0107】
上記のように測定してすぐに、適量の染料を量ってその固体物を10mL容量フラスコに入れ、適当な濃度の染料保存溶液10mLを作成する。その後そのフラスコは、イオン強度0.1、pH7.4のリン酸緩衝液を加えて10mLにする。
【0108】
メチルビオロゲンの保存溶液(25mL、0.0025M)を、pH7.4のリン酸緩衝液(イオン強度0.1)の入った10mL容量フラスコ中で作成した。その後、下記の表1に示すように、pH7.4のリン酸緩衝液中でメチルビオロゲンを含んだ7種の異なる溶液を作成した。
【0109】
【表1】

【0110】
その後、発光分光装置で染料に適する範囲の励起波長と発光波長で、各試料を順番に分析した。その装置の設定は(スリット幅、スキャン速度、光学フィルター、励起波長、発光波長の範囲)は、一連の試料分析を通して一定に保った。その後、台形公式概算法を用いて発光波長の範囲以上の蛍光強度を算出し、その積算値を発光蛍光強度とした。その積算値をY座標で、消光剤の濃度をX座標で表して、結果として生じた直線の傾斜を線形回帰から算出してスタン・ボルマー消光定数とした。当業者であれば大概、消光メカニズムに基づいて、そのスタン・ボルマープロットが直線関係を生まない可能性もあるということに気付くであろう。しかし、周知で当業者にも認められているような適切な数学的関係を用いて見かけ上のスタン・ボルマー消光定数を算出し、それを対照用に用いた。
【0111】
〔準備A〕
ジメチル-(4-ブロモメチル)-ベンゼンボロナートの合成
乾燥器で乾燥させた100mL丸底フラスコをアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、(4-ブロモメチル)-ベンゼンボロン酸(12.49mmols、2.684g)を加えた。そのフラスコにペンタン(55mL)を入れてセプタムで密栓した。その懸濁液を室温で攪拌し、新たに蒸留したCH3OH(3.16g、4mL、97mmls)を加えたところ、その溶液は即座に透明になった。20分間攪拌した後に、その溶液を(過剰なCH3OHを除去するために)MgSO4で、その後にはCaCl2で乾燥させた。アルゴン下、上清をカニューレでガラス製漏斗に(溶剤)入れて濾過し、その後減圧下でペンタンを除去した。残余の黄色油を減圧下(0.1トール、1時間)でさらに乾燥させた。収率は1.6g、6.59mmols(56%)であった。1H-NMR(CD3OD、ppm)測定の結果は、4.5(s、2H)、7.4(d、2H)、7.55(d、2H)であり、11B-NMR(CH3OH、ppm)測定の結果は、29(s)であった。これに対応する2位置及び3位置の異性体も同様の処理方法を用いて作成した。この生成物は、実施例1〜3、5及び6でボロン酸-ビオロゲン化合物を作成する際に用いた。
【0112】
〔準備B〕
8-アセトキシ-ピレン-1,3,6-トリスルホニルクロライドの合成
塩化チオニル30mLにジメチルホルムアミド5滴を加え、その中に8-アセトキシ-ピレン-1,3,6-トリスルホン酸3ナトリウム(アセトキシ-HPTS、11.33g、20mmol)を懸濁させた。この懸濁液を3時間還流すると、その間に懸濁液は茶色溶液へと変化した。その後、その溶液をアルゴンガス下で25℃まで冷却した。その後、塩化チオニルを減圧下(2トール)で蒸留すると、黄色残留物が残った。その黄色残留物にジクロロメタン60mLを加えて、それと共に異なる3本の遠心分離管に移した。その後、その懸濁液を遠心分離し、上清を乾燥した丸底フラスコに移した。遠心分離管に残った残留物を、各回10mLのジクロロメタンでさらに4回洗浄した。上清を混ぜ合わせてアルゴンガス下で1晩放置すると、いくらかの沈殿が認められた。そのジクロロメタン溶液をペンタン250mLに加えると、大量の黄色固体の沈殿物が生じた。上清を両頭針で除去し、その黄色固体を高真空(0.2トール)で乾燥させた。収率は8.62g、15.5mmols(78%)であった。1H-NMR(500MHz、CDCl3、ppm)測定の結果は、2.682(s、3H)、8.833(d、J=10Hz、1H)、8.915(s、1H)、9.458(d、J=10Hz、1H)、9.509(d、J=10Hz、1H)、9.630(s、1H)、9.685(d、J=10Hz、1H)であった。この生成物は、実施例7、9、13、14及び15で用いた。
【0113】
〔準備C〕
4-(4-ピリジル)-N-(ベンジル-4-エテニル)-ピリジニウムクロライドの合成
乾燥器で乾燥させた100mL丸底フラスコをアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、4-4’-ジピリジル(12.50g、 80mmols)を加えた。そのフラスコにCH3OH(20mL)を入れてセプタムで密栓した。その均質溶液を室温で攪拌しながら、シリンジで4-(クロロメチル)スチレン(2.82mL、20mmols)を滴下した。その溶液を室温で48時間攪拌後、減圧して溶媒を除去した。カニューレを用いて乾燥テトラヒドロフラン(50mL)を反応フラスコに入れ、その混合物を3日間放置した。その時には攪拌は止め、固体を沈降させて、カニューレで溶媒を可能な限り除去した。この処理はさらに2回繰り返し行ったが、その時の混合時間はそれぞれ24時間に減らした。3回目の微粒子化後、その混合物を窒素下で濾過し、乾燥ジエチルエーテル(200mL)をカニューレで加えて洗浄した。その固まりに、加圧下で1時間乾燥窒素を流して、最後に減圧(0.1トール、1時間)することにより乾燥させた。収率は5.56g、18mmols(90%)であった。1H-NMR(D2O、ppm)測定の結果は、9.12(d、2H)、8.86(d、2H)、8.48(d、2H)、7.98(d、2H)、7.67(d、2H)、7.57(d、2H)、6.87(dd、1H)、5.92(s、2H)、5.45(d、1H)であった。この化合物は、実施例5及び6で用いた。
【0114】
〔準備D〕
N-ベンジル-4-エテニル-4,7-フェナントロリニウム クロライド(4,7-PHEN SV)の合成
炎光中で乾燥させた100mL枝付丸底フラスコにマグネットスターラーを入れてアルゴン下で冷却し、4,7-フェナントロリン(2.14g、11.86mmols)を加えた。そのフラスコを、アルゴン(ガス)管を備えた還流冷却器に設置して、枝を介して4-(クロロメチル)スチレン(0.905g、0.836mL、5.93mmols)及び無水CH3CN(20mL)を入れた。その溶液を加熱して、アルゴン(ガス)下で17時間還流し、その後室温まで冷却してジエチルエーテル(30mL)で沈殿させた。懸濁液を静置し、上清をカニューレで除去した。残留物に溶媒15mLを加えて、それと共にカニューレで遠心分離管に入れ、アセトン(20mL)で微粒子化してから遠心分離を行った(この処理は4回繰り返した)。茶/ピンク色固体をジメチルエーテルで微粒子化(3×20mL)し、減圧下で乾燥させた。収率は0.376g、1.13mmols(19%)であった。1H-NMR(250MHz、CD3OD、ppm)測定の結果は、5.226(d、1H、11Hz)、5.80(d、1H、J=17.75Hz)、6.482(s、2H)、6.708(dd、1H、J1=11Hz、J2=17.75Hz)、7.374(d、1H、J=8Hz)、7.496(d、1H、J=8Hz)、8.00(dd、1H、J1=4Hz、J2=8.5Hz)、8.453(dd、1H、J1=6Hz、J2=8.5Hz)、8.60(d、1H、J=10Hz)、8.697(d、1H、J=10Hz)、9.20(d、1H、J=4Hz)、9.50(d、1H、J=8.25Hz)、9.65(d、1H、J=5.75Hz)、10.188(d、1H、J=8.5Hz)であり、13C NMR(62.5MHz、CD3OD)測定の結果は、62.40、121.344、124.899、126.023、128.454、129.031、130.778、132.161、133.893、134.242、137.205、139.848、140.410、140.699、144.041、147.976、149.541、154.661であった。この化合物は、実施例25で使用した。
【0115】
〔実験例1〕
4-4’-N,N’-ビス-(ベンジル-3-ボロン酸)ジピリジニウム ジブロミドの合成
乾燥器で乾燥させた50mLの遠心分離管をアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、4,4’-ビピリジル(0.469g、3mmols)を入れた。その管にCH3OH(7mL)を入れ、セプタムで密栓した。その均質溶液を室温で攪拌しながら、新たに作成したジメチル-(3-ブロモメチル)-ベンゼンボロナート(1.82g、7.5mmols)をシリンジで加えた。その溶液を15時間攪拌した後、反応容器を遠心分離機にかけ(3200RPMで4分間)、別のフラスコにはCH3OHをカニューレで入れた。残存する黄色固体をアセトン:水の混液(24:1、V/V、25mL)で微粒子化し、ボルテックス・ミキサーで強力に攪拌して、遠心分離を行った。カニューレでアセトン溶液を除去し、微粒子化処理をさらに2回繰り返し行った。その後同処理を行って、その固体をジエチルエーテルで微粒子化した。その後、遠心分離管内の黄白色の固体を高真空(0.6トール、2時間)で乾燥させた。収率は0.956g、1.63mmols(54%)であった。融点(分解点)は230℃より高温であった。1H-NMR(D2O、ppm)測定の結果は、6.093(s、4H)、7.715(dd、2H、J1=7.5Hz、J2=7.5Hz)、7.788(d、1H、J=7.5Hz)、7.984(s、1H)、8.002(d、1H、J=7.5Hz)、8.662(d、4H、J=7Hz)、9.293(d、4H、J=7Hz)であり、11B-NMR(CH3OH、ppm)測定の結果は、29(s)であった。この化合物は、下記の実施例16〜18及び図6で使用した。
【0116】
〔実施例2〕
4,4’-N,N’-ビス-(ベンジル-4-ボロン酸)ジピリジニウム ジブロミドの合成
乾燥器で乾燥させた50mLの遠心分離管をアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、4,4’-ジピリジル(0.234g、1.5mmols)を加えた。その管に無水CH3OH(7mL)を入れ、セプタムで密栓した。その均質溶液を室温で攪拌しながら、新たに作成したジメチル-(4-ブロモメチル)-ベンゼンボロナート(1.09g、4.5mmols)をシリンジで加えた。その溶液を15時間攪拌した後、反応容器を遠心分離機にかけ(3200RPMで4分間)、別のフラスコにはCH3OHをカニューレで入れた。残存する黄色固体をアセトン:水の混液(24:1、V/V、25mL)で微粒子化し、ボルテックス・ミキサーで激しく攪拌してから遠心分離を行った。アセトン溶液をカニューレで除去し、その微粒子化処理をさらに2回繰り返し行った。その後同処理により、その固体をジエチルエーテルで微粒子化した。その後、遠心分離管内の黄白色の固体を減圧下(0.6トール、2時間)で乾燥させた。収率は0.723g、1.63mmols(82%)であった。融点(分解点)は230℃より高温であった。1H-NMR(D2O、ppm)測定の結果は、6.116(s、4H)、7.670(d、4H、J=8.25Hz)、8.017(d、4H、J=8.25Hz)、8.698(d、4H、J=6.5Hz)、9.325(d、4H、J=6.5Hz)であり、11B-NMR(CH3OH、ppm)測定の結果は、29(s)であった。実施例17及び18、並びに図6を参照。
【0117】
〔実施例3〕
4,4’-N,N’-ビス-(ベンジル-2-ボロン酸)ジピリジニウム ジブロミドの合成
乾燥器で乾燥させた50mLの遠心分離管をアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れた。4,4’-ビピリジル(1.5mmol、0.234g)を管に量り入れ、その後その管にCH3OH(7mL)を入れ、セプタムで密栓した。その均質溶液の混合は、室温で攪拌しながら行った。新たに作成したジメチル-(2-ブロモメチル)ベンゼンボロナート(4.5mmols、1.2mL、1.09g)をシリンジで反応管に加え、その結果生じた茶/オレンジ色の溶液を室温(周囲温度)で15時間攪拌した。その後、その反応容器を遠心分離し(3200RPMで4分間)、別のフラスコにはカニューレでCH3OHを入れた。残余の黄色固体をジエチルエーテル(25mL)で微粒子化し、ボルテックス・ミキサーで激しく攪拌してから、遠心分離を行った。そのエーテル溶液をカニューレで除去し、その微粒子化処理をさらに3回繰り返し行った。その後、遠心分離管内の黄白色の固体を減圧下(0.6トール、2時間)で乾燥させた。収率は70%であった。1H-NMR(D2O、ppm)測定の結果は、6.21(s、2H)、7.72(m、3H)、7.91(d、1H)、8.60(d、2H)、9.18(d、2H)であり、11B-NMR(CH3OH、ppm)測定の結果は、30.2(broads、s)であった。この化合物は、実施例8の染料の蛍光を消光し、かつグルコースに反応性を有すると認められた。実施例17を参照。
【0118】
〔実施例4〕
1,7-N,N’-ビス(ベンジル-3-ボロン酸)-フェナントロリニウム ジブロミドの合成
乾燥器で乾燥させた50mLの遠心分離管をアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、1,7-フェナントロリン(0.288g、1.6mmols)を加えた。その後その管にCH3OH(4mL)を入れ、セプタムで密栓し、新たに作成したジメチル-(3-ブロモメチル)-ベンゼンボロナート(0.972g、4mmols)をシリンジで加えた。その均質溶液を室温で15時間攪拌し、その後2時間還流した。その反応混合物をアルゴン下で室温まで冷却し、減圧してCH3OHを除去した。その黄/オレンジ色の固体をアセトン:水の混液(40mL、24:1、V/V)で、その後にジエチルエーテル(2×40mL)で一晩微粒子化した。その懸濁液をガラス製漏斗で濾過し(溶媒を)、固体をアルゴン下で分離した。収率は0.495g、0.812mmols(51%)であった。融点は230℃より高温であった。1H-NMR(D2O、ppm)測定の結果は、6.504(1H)、7.638(1H)、8.025(m、2H)、8.2505(d、1H、8.5Hz)、8.483(in、6H)、8.738(d、1H、J=8.5Hz)、9.315(d、1H、J=5.75Hz)、9.605(d、1H、J=5.75Hz)、10.098(d、1H、J=8.5Hz)、10.269(d、111、J=8.5Hz)であり、11B-NMR(CH3OH、ppm)測定の結果は、28(s)であった。この化合物は、実施例8の染料の蛍光を消光し、かつグルコースに反応性を有すると認められた。
【0119】
〔実施例5〕
4-N-(ベンジル-4-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)ジピリジニウム ブロミド クロライド(p-SBBV)の合成
乾燥器で乾燥させた50mLの遠心分離管をアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、4-(4-ピリジル)-N-(ベンジル-4-エテニル)-ピリジニウム クロライド(0.463g、1.5mmols)を加えた。その管にアセトニトリル(6mL)を入れて、セプタムで密栓した。その結果生じたピンク/オレンジ色の懸濁液を室温で攪拌しながら、新たに作成したジメチル-(4-ブロモメチル)-ベンゼンボロナート(0.486g、2mmols)をシリンジで加えた。その懸濁液を23時間攪拌した後、その反応容器を遠心分離機にかけ(3200RPMで4分間)、別のフラスコにはアセトニトリルをカニューレで入れた。残余の黄色固体をアセトン:水の混液(25mL、24:1、V/V)で微粒子化し、ボルテックス・ミキサーで激しく攪拌してから、遠心分離を行った。アセトン溶液をカニューレで除去し、その微粒子化処理をさらに2回繰り返し行った。その後同処理により、その固体をジエチルエーテルで微粒子化した。その後、遠心分離管内の鮮黄色の固体を減圧下(0.5トール、1時間)で乾燥させた。収率は0.431g、0.824mmols(55%)であった。融点は200℃より高温であった。1H-NMR(D2O、ppm)測定の結果は、5.405(d、1H、J=11.5Hz)、5.929(d、2H、J=17.5Hz)、5.934(s、2H)、5.981(s、2H)、6.832(dd、2H、J1=17.5Hz、J2=11Hz)、7.523(d、2H、J=9Hz)、7.562(d、2H、J=8Hz)、7.626(d、2H、J=8Hz)、7.8815(d、2H、J=8.5Hz)、8.566(dd、4H、J1=3.6Hz、J2=1.5Hz)、9.1855(dd、4H、J1=6.5Hz、J2=6Hz)であり、11B-NMR(CH3OH、ppm)測定の結果は、28(s)であった。この化合物は、実施例8の染料の蛍光を消光し、かつグルコースに反応性を有すると認められた。
【0120】
〔実施例6〕
4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジ二ウム ブロミド クロライド(m-SBBV)の合成
乾燥器で乾燥させた50mLの遠心分離管をアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、4-(4-ピリジル)-N-(ベンジル-4-エテニル)-ピリジニウム クロライド(0.463g、1.5mmols)を加えた。その管にアセトニトリル(6mL)を入れ、セプタムで密栓した。その結果生じたピンク/オレンジ色の懸濁液を室温で攪拌しながら、新たに作成したジメチル-(3-ブロモメチル)-ベンゼンボロナート(0.486g、2mmols)をシリンジで加えた。その懸濁液を23時間攪拌した後、反応容器を遠心分離機にかけ(3200RPMで4分間)、別のフラスコにはアセトニトリルをカニューレで入れた。残余の黄色固体をアセトン:水の混液(25mL、24:1、V/V)で微粒子化し、ボルテックス・ミキサーで激しく攪拌し、一晩放置した。アセトン溶液をカニューレで除去し、固体をジエチルエーテル(3×25mL)で微粒子化し、微粒子が生じる毎にそれをカニューレで取り除いた。その後、遠心分離管内に残った鮮黄色の固体を減圧下(0.015トール、3時間)で乾燥させた。収率は0.584g、1.12mmols(74%)であった。融点(分解点)は150℃より高温であった。1H-NMR(D2O、ppm)測定の結果は、5.5165(d、1H、J=10.75Hz)、6.0435ppm(d、1H、J=17.8Hz)、6.095(s、2H)、6.049(s、2H)、6.9433(dd、1H、J1=11.5Hz、J2=17.9Hz)、7.626(m、4H)、7.724(m、2H)、7.979(s、1H)、7.994(d、1H、J=7.5Hz)、8.648(d、4H)、9.280(d、4H)であり、11B-NMR(CH3OH、ppm)測定の結果は、28(s)であった。この化合物は、実施例10、11、12及び14のポリマー作成の際に用いた。
【0121】
〔実施例7〕
8-アセトキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス-(メトキシポリエトキシエチル(n〜125)スルホンアミドの合成
250mLの丸底フラスコにマグネットスターラーを入れて、乾燥テトラヒドロフラン(THF)170mLを加えた。メトキシ-ポリエチレングリコール(PEG)-アミン(5.65g、5630g/mol、1mmol)を粒状CaH20.5gと合わせて、そのフラスコに入れた。その混合物を攪拌しながら、24時間加熱して30℃にした。ジイソプロピルエチルアミン(0.6mL、129.24MW、0.742g/mL、3.4mmol)をそのフラスコに加えて、その混合物をさらに1時間攪拌した。フラスコを室温まで冷却し、空気に敏感なガラス製濾過装置で濾過して、過剰なCaH2及びCa(OH)2を除去した。そのTHF溶液をマグネティックスターラーと共に250mL丸底フラスコに戻して、攪拌しながら30℃まで加熱した。この温THF溶液に8-アセトキシ-ピレン-1,3,6-トリスルホニル クロライド(0.185g、624.8g/mol、0.3mmol)を添加したところ、その溶液は直ぐに藍色に変わり、15分間以上経過すると、その色は赤ワイン色まで薄くなった。この反応溶液を30℃で24時間攪拌した。ロータリー・エバポレータで溶媒を取り除き、1MHCl100mL中で残留物を溶解させた。その水溶液をメチレンクロライドで抽出した(3×100mL)。メチレンクロライドの各分画を混合して、エバポレータで減圧して溶媒を除去すると、赤色固体である化合物が得られた。収率は約5.5g(〜97%)であった。FTIR(KBrペレット、cm-1)測定の結果は、842、963、1060、1114、1150、1242、1280、1343、1360、1468、1732、2525、2665、2891.1であった。この生成物は、実施例8及び11、16及び17で使用した。
【0122】
〔実施例8〕
8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス-メトキシポリエトキシエチル(n〜125)スルホンアミド
8-アセトキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス-(メトキシポリエトキシエチル(n〜125)スルホンアミド(5.5g、0.32mmols)を1MのNaOH100mLに溶かし、2時間攪拌した。水溶液を中和してpH7にし、メチレンクロライドで抽出した(3×100mL)。メチレンクロライドの各分画を混合して、ロータリー・エバポレータで約10mLになるまで濃縮した。その後、三角フラスコにジエチルエーテル400mLを入れて激しく攪拌しながら、そこに濃縮したメチレンクロライド溶液を滴下した。ブフナー漏斗でそのジエチルエーテルを濾過した。オレンジ色粉末である生成物を分離した。収率は5.425g、0.31mmol(94%)であった。フーリエ変換赤外分光(FTIR)(KBrペレット、cm-1)測定の結果は、842、963、1060、1110、1150、1242、1281、1343、1360、1468、2888であった。このFTIRから、この化合物が三置換体のスルホンアミド誘導体であると同定した。スルホン酸のIRピークは1195.7cm-1で生じるが、この化合物のFTIRピークは1195.7cm-1では生じない。その代わり、スルホンアミドを表す1110cm-1のピークが認められる。pH7.4の緩衝液中に溶かすと、この化合物の蛍光は、みかけのスタン・ボルマー消光定数が319M-1であるメチルビオロゲンにより消光される。この化合物は実施例1、2及び3の生成物に消光されるものだが、実施例11、16、17、18及び19ではこれを用いた。
【0123】
〔実施例9〕
8-アセトキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス(メタクリルアミドプロピルスルホンアミド)(アセトキシ-HPTS-MA)
100mLの丸底フラスコにアミノプロピル-3-メタクリルアミド-HCl塩(2.68g、15mmol)及びアセト二トリル50mLを入れると、白色の懸濁液が生じた。その白色懸濁液の色が全て消え2層に分かれるまで、攪拌しながら水を滴下した。炭酸カリウムを添加し、その懸濁液を15分間攪拌した。上清を500mL丸底フラスコに移し、炭酸カリウムの洗浄に用いたアセト二トリル50mLを、500mLの丸底フラスコ内で混合した。アルゴン下で、遊離アミン含有アセトニトリルの入った500mLの丸底フラスコに、アセトキシ-HPTS-Cl(1.03g、1.8mmol)、アセトニトリル200mL、及びジクロロメタン20mLの黄色溶液を添加すると、その溶液は沈殿を形成して濃紅色に変わった。その溶液を1時間攪拌して、上清を移し減圧下で濃縮すると、黒っぽい残留物が生じた。その残留物を水(1000mL)及び50:50アセトニトリル/エチルアセテート溶液(700mL)で抽出した。その有機抽出物をさらに1000mLの水で洗浄した。その有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ロータリー・エバポレータで濃縮して得られた赤色の残留物をメタノールに溶かした。そのメタノール溶液を濃縮し、その結果生じた赤色の残留物を高真空下で乾燥させると、赤色の固体が生じたが、それは保護基を有さないHPTS-MAであった。収率は420mg、0.5mmol(28%)であった。1H-NMR(500MHz、D4-メタノール、ppm)測定の結果は、1.617(p、J=6.5Hz、8H)、1.781(s、3H)、1.767(s、6H)、2.934(p、J=6.5Hz、9H)、3.158(mult、8H)、5.211(t、J=1.5Hz)、5.229(t、J=1.5Hz)、5.488(s、1H)、5.510(s、2H)、8.290(s、1H)、8.837(d、J=9.5Hz、1H)、8.913(d、J=9.5Hz、1H)、8.988(d、J=1.5Hz、1H)、9.201(d、J=9.5Hz、111)、9.222(s、1H)であった。その後、保護基を有さないHPTS-MA(100mg、0.1mmol)を無水酢酸10mLに懸濁させて、触媒量の酢酸ナトリウムを添加し、その懸濁液を2時間還流した。減圧下で無水酢酸及び酢酸を除去し、その結果生じた茶色の残留物をアセトニトリル20mLで抽出した。その抽出物を150mLのジエチルエーテルに滴下すると、茶色固体の沈殿物が生じた。収率は、75mg、0.09mmol(86%)であった。このモノマーは、実施例13、14及び15で使用した。
【0124】
〔実施例10〕
水溶性ポリマー中における4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム ブロミド クロライドの共重合
50mLの円錐形丸底フラスコに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(1.5g、11.5mmol)、4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム ブロミド クロライド(0.1g、0.191mmols)、及び3-((メタクリロイルアミノ)プロピル))トリメチルアンモニウム クロライド(0.5g、2.27mmols)を入れた。そのフラスコをセプタムで密栓した後に、溶液をボルテックス・ミキサーで激しく攪拌した。その後、その容器にイソプロピルアルコール:水の混液(8mL、1:1、V/V)を入れ、1時間アルゴンで脱酸素した。平行して、別の100mL枝付丸底フラスコ内で、2.2’-アゾビスイソブチロ二トリル(AIBN、100mg、0.609mmols)のイソプロピルアルコール:水(5mL)の混合溶液を作成した。そのフラスコにマグネットスターラーを入れて濃縮器を備えつけ、1時間アルゴンで脱酸素した。その測定溶液の全てをシリンジで採り、1mLを枝からAIBN溶液に添加した。その後、そのAIBNの反応容器を70℃の油浴に入れ、6時間以上(1.5mL/hr)かけて残りの測定混合物をシリンジポンプで添加した。その結果生じたオレンジ色溶液をアルゴン下で室温まで冷却し、減圧下で溶媒を慎重に除去した。その無定形固体をCH3OH(20mL)に溶かし、適量をカニューレで遠心分離管に移した。ジエチルエーテル(20mL)を添加して白色の沈殿物が形成した後、その生成物を遠心分離(3200RPMで4分間)で分離した。それをジエチルエーテル(30mL)で洗浄し、減圧下(0.5トール、3時間)で乾燥させ、アルゴンの不活性雰囲気下で分離した。収率は1.345g(67Wt%)であった。UV吸光度を用いて、ポリマーに取りこまれたビオロゲン部分の量を求めたところ、予測値の99%以上であった。この生成物は、実施例19で使用した。
【0125】
〔実施例11〕
半相互貫入ポリマーネットワーク:
HPTS-PEGを用いた4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム ブロミド クロライドの共重合体薄膜
10mLの容量フラスコに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(3.525g、27.08mmols)、4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム ブロミド クロライド(0.039g、0.075mmols)、3-((メタクリロイルアミノ)プロピル)トリエチルアンモニウム クロライド(0.3g、1.36mmols)、ポリエチレングリコール ジメタクリレート(1.11g、1.11mmols)、2,2’-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロライド(0.025g、0.077mmols)、及び8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N-N’,N’’-トリス(メトキシポリエトキシエチル(n〜125)スルホンアミド)(0.013g、7.5×10-4mmols)を入れ、それにイソプロピルアルコール:水の混液(1:1、V/V)を10mL線まで加えた。その溶液をボルテックス・ミキサーで激しく攪拌した後に、ピペットで50mLの円錐形丸底フラスコに移して、1時間アルゴンで脱酸素した。そのモノマー溶液をシリンジで採り、そのシリンジを重合槽に設置した。その後、アルゴン下でその溶液をセルに注入し、全てのセル穴を満たした。その槽にテフロン栓で封をし、ZIPLOC(登録商標)冷凍用バッグ2枚で包装した。そのバッグ全体を40℃の水槽に沈め、17時間加熱した。その重合槽を水槽及びバッグから取り出し、次に分解して緑色のポリマー薄膜を得た。そのポリマー膜を濾過して、pH7.4のリン酸緩衝液中で保存した。この生成物は、実施例12で使用した。
【0126】
上記の重合槽は、(1) IRセルホルダー:セル及びJUERLOC(登録商標)ポートを入れるために形作られたステンレス鋼板2枚、(2)セル: 0.02’インチ間隔のTEFLON(登録商標)を含み、上板と隔板を通る穴を有するガラス板2枚、及び(3)ガスケット:セルホルダーのセルを塞ぐ精密切りゴム製隔板からなる。
【0127】
〔実施例12〕
HPTS-PEGを用いた4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム ブロミド クロライド(m-SBBV)を含む半相互貫入ポリマーネットワーク共重合体の蛍光分光分析
光路長10mmの5mLガラスキュベットの開口した両端に、使い捨てポリエチレン製キュベットキャップ2個で栓をした。10/32標準糸、1/8インチ円径ホース端アダプターの細糸をはめ込めるように、そのキャップに穴を開けた。その後、プラスティックの薄板を35×9mmの長方形となるように切り、その中央部から6×15mmの窓を切り取った。小さなセプタムから結合部2つをつくり、キュベット内でポリマーを保持できるように、それを用いてプラスティック製マスクに圧力をかけた。セプタムの高さは9mmとした。その後、そのポリマー膜をキュベットとその真上のプラスティック製マスクの中央部に置き、実質的にポリマー膜が窓に囲まれるようにして、フローセルを設置した。その後、ピンセットを用いて圧力結合部を1つはセルの底部に、そしてもう1つは上部に設置した。キュベットの内側にあるキュベットキャップの外壁に真空グリースを塗り、それをキュベットに挿入してセルに栓をした。そのセルを、前面部にアダプターを有するパーキンエルマー社製分光光度計LS50Bに入れた。ポリマーと接触しているセルの側面部が光度計の励起ビームに面するように、そのセルの方向を合わせた(face-first in the front surface adapter)。1/8インチTYGON(登録商標)PTFEチュービングをフローセルのホースアダプターに接続した。前面のアダプターを最適な向きにして、発光検出器がポリマーの表面のみを検出するようにした。ぺリスタリックポンプを使用して、pH7.4(イオン強度0.1)のリン酸緩衝液を、1分間に30mLの速さでセルに循環させた。パーキンエルマー社製LS50Bソフトウエアの時間駆動機能を用いて、2秒の積分時間に対して10秒毎の読み取り値として蛍光強度を得た。励起周波数は475nmのところに設定し、発光スリット幅は536nmに設定した。この励起と発光のスリット幅は、2.5mnに設定した。緩衝溶液を用いてベースライン値である358(蛍光強度)を設定した。ぺリスタリックポンプを止め、ポンピング溶液をグルコース1800mg/dlのpH7.4リン酸緩衝液に変えた。
【0128】
蛍光強度は、35%の信号増加(信号対雑音比=72)に対応する127単位増加して、485となった。再び緩衝液に入れ替えると、その信号は予想通りベースライン値の358となった。
【0129】
〔実施例13〕
8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス(メタクリルアミドプロピルスルホンアミド) ヒドロゲルポリマー
14/20粉末ガラス製の雌結合部を有する16mmのNMR試料管に、イソプロピルアルコール/水の混液(1:1、1.5mL)、HEMA(750mg)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA、n〜25)(200mg)、3-(メタクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウム クロライド(TMAC)(50mg)、8-アセトキシピレン-1,3,6-N-N’-N’’-トリス(メタクリルアミドプロピルスルホンアミド)(アセトキシ-HPTS-MA)(1mg、1.2×10-6mols)、及び(2,2’-アゾビス-2(イミダゾリン-2-イル)プロパン)ヒドロクロライド(VA-044フリーラジカル開始剤)(5mg)の混合物を入れた。固体のものは全て、ボルテックスミキサーを用いて溶かした。その後、14/20粉末ガラス製の雄結合部であるTEFLON(登録商標)止水栓を用いて、そのNMR試料管を真空アダプターに取りつけた。その後、その混合物を冷凍/ポンプ/解凍サイクル4回(-78℃、1トール、5分間)で脱酸素し、窒素下で解凍した。その後、そのNMR試料管を40℃の水槽で加熱した(±0.5℃、12時間)。ガラス製NMR試料管を慎重に砕いてポリマー栓を取出した。そのポリマーを、トリエチルアミン(5滴)を含む(7日間、純粋とアミンの溶液は24時間ごとに替えた)200mLの純水中で透析し、アセトキシ-HPTS-MAのアセトキシ保護基を取り除いた。その結果生じたポリマープラグを1枚約5mmで薄切りにし、蛍光分光法を用いて分析した。
【0130】
ゲルの励起スペクトル及び発光スペクトルは、PEG付加物(実施例12)に関して得られたスペクトルとほぼ同一である。pH7.4の緩衝液中に懸濁するポリマーゲルの試料は、日光の下で試験を行うと明らかに蛍光を発する。その蛍光は、水相にm-SBBV、o-SBBV又はp-SBBVを添加すると顕著に減少し、溶液にグルコースを添加すると回復する。類似するゲルは、0.05〜5mg/g(乾燥重量)の染料濃度のポリマーを用いて作成する。日光(自然)の下で試験を行った場合には、全て黄-緑〜オレンジの色の蛍光を明らかに発する。
【0131】
その蛍光は、ヒドロゲルを水性のo-、m-及びp-BBV(ベンジルボロン酸ビオロゲン)に触れさせると消光される。
【0132】
〔実施例14〕
相互貫入ポリマーネットワーク:
HPTS-MAポリマーを用いた4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム ブロミド クロライド(m-SBBV)の共重合
測定用消光剤溶液(Manometric quenched solution):10mLの容量フラスコに2-ヒドロキシエチルメタクリレート(27.08mmols、3.525g)、4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム・ブロミド・クロライド(0.197mmols、0.103g)、3-((メタクリロイルアミノ)プロピル)トリメチルアンモニウムクロライド(1.36mmols、0.30g)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(1.11mmols、1.11g)、及び2-2’-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロライド(0.077mmols、0.025g)を入れ、イソプロピルアルコール:水の混液(1:1、V/V)を10mL線まで加えた。その溶液を均質になるまでボルテックス・ミキサーで激しく攪拌した。
【0133】
ポリマー染料粉剤(Polymeric Dye Powder):10mLの容量フラスコに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(27.08mmols、3.525g)、3-((メタクリロイルアミノ)プロピル)トリメチルアンモニウムクロライド(1.36mmols、0.3g)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(1.11mmols、1.11g)、2-2’-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロライド(0.077mmols、0.025g)、及び8-アセトキシピレン-1,3,6-N-N’-N’’-トリス(メタクリルアミドプロピルスルホンアミド)(7.5×10-4mmols、6.6×10-4g)を入れ、イソプロピルアルコール:水の混液(1:1、V/V)を10mL線まで加えた。その溶液をボルテックス・ミキサーで激しく攪拌した後、ピペットを用いて50mLの丸底フラスコに移し、そのフラスコをゴム製のセプタムで密栓した。アルゴンを用いてそれを30分間脱酸素した。前記測定溶液をシリンジで採り、その針にゴム栓をかぶせた。その後、それを重合槽と共にアルゴンの充満したグラブ・ボックスに移した。その重合槽にシリンジを取りつけて、アルゴン下でその溶液をセルに注ぎ、全てのセル穴を満たした。その槽をTEFLON(登録商標)栓で塞ぎ、ZIPLOC(登録商標)冷凍用バッグに包んだ。そのバッグ全体をオーブンに移し、40℃まで14時間加熱した。その重合槽をオーブン及びバッグから取り出し、続いて分解して薄い緑色の重合膜を得た。その膜を500mLの蒸留水(pH5)に、2時間ごとに新しい水に取り替えながら、6時間浸した。その薄膜を、その後減圧(40℃、20 in Hg、3時間)下で乾燥させ、-196℃にして乳鉢と乳棒を用いてすりつぶし微粉末にした。
【0134】
相互貫入ネットワークの共重合:50mLの丸底フラスコに測定用消光剤溶液(5.2mL)とポリマー染料粉剤(0.169g)を入れた。その混合物をボルテックス・ミキサーで10分間激しく攪拌し、その染料粉剤に液体を染み込ませた後、アルゴンで15分間脱酸素した。その不均質な溶液をシリンジで吸い取り、その針をゴム栓で塞いだ。その後、それをアルゴンを充填したグローブ・ボックスに重合槽(実施例11参照)と共に移した。シリンジをその重合槽に取りつけ、アルゴン下でその溶液をセルに注ぎ、全てのセル穴を満たした。その槽をTEFLON(登録商標)栓で塞ぎ、ZIPLOC(登録商標)冷凍用バッグで包んだ。そのバッグ全体をオーブンに移して、14時間、40℃まで加熱した。その重合槽をオーブン及びバッグから取り出し、続いて分解して薄いオレンジ色のゲルを溶けこませた重合膜を得た。その膜をpH8のNaOH溶液に12時間浸し、その後濾過して、pH7.4のリン酸緩衝液中で保存した。この生成物は、実施例20で使用した。
【0135】
〔実施例15〕
ニ成分システム:
HPTS−MAを用いた4-N(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム・ブロミド・クロライド(m-SBBV)の共重合体薄膜
10mLの容量フラスコに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(3.525g、27.08mmols)、4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム ブロミド クロライド(0.039g、0.075mmols)、3-((メタクリロイルアミノ)プロピル)トリメチルアンモニウムクロライド(0.3g、1.36mmols)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(1.11g、1.11mmols)、2-2’-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロライド(0.025g、0.077mmols)及び8-アセトキシピレン-1,3,6-N-N’-N’’-トリス(メタクリルアミドプロピルスルホンアミド)(6.6×10-4g 、7.5×10-4nmols)を入れ、イソプロピルアルコール:水の混液(1:1、V/V)を10mL線まで加えた。その溶液をボルテックス・ミキサーで激しく攪拌した後、ピペットで50mL円錐形丸底フラスコに移し、そのフラスコをゴム製のセプタムで密栓した。アルゴンでそれを30分間脱酸素した。測定溶液をシリンジで吸い上げ、その針にゴム栓をかぶせた。その後、それを重合槽(実施例11参照)と共にアルゴンを充填したグラブ・ボックスに移した。シリンジを重合槽に取りつけて、アルゴン下で溶液をセルに注ぎ、全てのセル穴を満たした。その槽をTEFLON(登録商標)栓で塞ぎ、ZIPLOC(登録商標)冷凍用バッグに包んだ。そのバッグ全体を40℃の水槽に入れ、12時間加熱した。その重合槽を水槽及びバッグから取り出し、続いて分解して薄い緑色の重合膜を得た。そのポリマー膜をpH8のNaOH溶液中に12時間浸し、その後濾過してpH7.4のリン酸緩衝液中で保存した。この生成物は、実施例21で使用した。
【0136】
〔実施例16〕
8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス(メトキシポリエトキシエチル(N〜125)スルホンアミド) HPTS-PEGを用いた4,4’-N,N’-ビス(ベンジル-2/3/4-ボロン酸)-ビピリジニウム ブロミド クロライドの蛍光分光分析
10mLの容量フラスコに、pH7.4のリン酸緩衝液(0.1イオン強度)を用いてHPTS-PEGの保存溶液(10mL、5×10-5M)を作成した。同様に、m-BBV溶液(25mL、0.0025M)を作成した。その後、pH7.4のリン酸緩衝液中にHPTS-PEG及びm-BBVを含む7種の異なる溶液を、下記の表2に示すように作成した。
【0137】
【表2】

【0138】
その後、パーキンエルマー社製発光分光計LS50-Bで各試料を分析した。装置の設定は、励起波長473nm、発光波長の範囲480〜630nm、励起スリット幅0nm(装置における最小値)、発光スリット幅0nm(装置における最小値)、光学フィルターなし、かつスキャン速度100nm/secとして行った。
【0139】
この装置の設定(スリット幅、スキャン速度、光学フィルター、励起波長、発光波長の範囲)は、一連の分析を通して一定に保った。その後、発光蛍光強度を480〜630nmの蛍光強度曲線を積分(台形法則による概算法)することにより算出した。みかけのスタン・ボルマー消光定数を測定すると520M-1であった(図7参照)。
【0140】
〔実施例17〕
蛍光分光法の分析による8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス(メトキシポリエトキシエチル(N〜125)スルホンアミド)(HPTS-PEG)を用いた場合の4,4’-N,N’-ビス(ベンジル-2/3/4-ボロン酸)-ビピリジニウム ジブロミドのグルコース感光能
(a) 10mLの容量フラスコに、pH7.4のリン酸緩衝液(0.1イオン強度)でHPTS-PEGの保存溶液(10mL、5×10-5M)を作成した。同様に、m-BBV溶液(25mL、0.0025M)及びα-D-グルコース溶液(10mL、0.250M)を作成した。その後、下記の表3に示すようなHPTS-PEG、m-BBV及びα-D-グルコースをpH7.4リン酸緩衝液に含む、異なる7種の溶液を作成した。
【0141】
【表3】

【0142】
pHメーターを用いて各試料のpHをそれぞれ測定し、一連の試験を通してpHが±0.02pH以内で一定であるようにした。
【0143】
その後、パーキンエルマー社製分光光度計LS50Bで各試料を分析した。装置の設定は、実施例16と同様にした。
【0144】
その後、対応する積分値を用いてグルコース濃度(mg/dL)に対するF/F0をプロットして校正曲線を作図した。ここで、F0は0mg/dLのグルコースを含む表3の第一試料についての蛍光強度の積算値である。
【0145】
(a)HPTS-PEGを用いた場合のグルコース感度の評価。HPTS-PEG染料の存在下におけるベンジルビオロゲンのグルコース感度を4,4’-N,N’-ビス(ベンジル-3-ボロン酸)-ビピリジニウム ジブロミドのグルコース感度と比較した。方法Aに記載のように、HPTS-PEGを用いた場合のベンジルビオロゲンのみかけのスタン・ボルマー消光定数を測定したところ、559M-1であった。HPTS-PEGの存在下におけるベンジルビオロゲンのグルコース感度を、同様の方法で測定した。ベンジルビオロゲン/HPTS-PEG溶液からの信号は、グルコース濃度の変化に対して反応を示さなかった。4,4’-N,N’-ビス(ベンジル-3-ボロン酸)-ビピリジニウム ジブロミドのグルコース感度と、ベンジルビオロゲンのグルコース感度は、共に図5に示すとおりである。
【0146】
(b)4,4’-N,N’-ビス(ベンジル-3-ボロン酸)-ビピリジニウム ジブロミドを4,4’-N,N’-ビス-(ベンジル-4-ボロン酸)-ビピリジニウム ジブロミドに置きかえる以外は同様にして、(a)を繰り返し行った。オルト位とパラ位の異性体を、同様の方法により分析したところ、グルコース感度について得られた結果は同等であった。その結果は、図6にプロットした通りである。
【0147】
〔実施例18〕
HPTS-PEGを用いたベンジルビオロゲンと4,4’-N,N’-ビス(ベンジル-3-ボロン酸)-ビピリジニウム ジブロミドのグルコース感度の比較
HPTS-PEG染料の存在下で、ベンジルビオロゲンのグルコース感度を4,4’-N,N’-ビス(ベンジル-3-ボロン酸)-ビピリジニウム ジブロミドのグルコース感度と比較した。方法Aに記載のように、HPTS-PEGを用いた場合のベンジルビオロゲンのみかけのスタン・ボルマー消光定数を測定したところ、559M-1であった。HPTS-PEGの存在下におけるベンジルビオロゲンのグルコース感度を、実施例17に記載の方法で測定した。ベンジルビオロゲン/HPTS-PEG溶液からの信号は、グルコース濃度の変化に反応を示さなかった。実施例17と同様に、4,4’-N,N’-ビス(ベンジル-3-ボロン酸)-ビピリジニウム ジブロミドのグルコース感度とベンジルビオロゲンのグルコース感度を共に図5に示す。
【0148】
〔実施例19〕
4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4エテニル)-ジピリジニウム ブロミド クロライド(m-SBBV)の水溶性コポリマーの蛍光分光分析
実施例10のm-SBBV(50mL、2.5mM)のコポリマーをpH7.4リン酸緩衝液中で作成し、NaOH溶液でpHの調整(±0.02pH)を行った。その後、HPTS-PEG(染料、1×10-5)を含む異なる6種のポリm-SBBV(検体、0、0.10、0.15、0.25、0.50、0.75、1.0mM)溶液を作成し、分光計で分析を行った。その検体/染料の溶液を標準光路長10mmの石英キュベットに入れ、励起周波数及び発光周波数をそれぞれ473と533となるようにその分光計を設定した。励起スリット幅及び発光スリット幅は、0nmに設定した。上記溶液の蛍光スペクトルを得た後、グルコース及びフルクトースの存在下と非存在下において、さらに検体/染料のスペクトルを得た。スペクトルの相違が曲線下の面積として明らかに現れた。その後、面積の相違をグルコース又はフルクトースに対するポリマー反応の相当値とした。例えば、グルコース又はフルクトースの不存在下における曲線の下領域の相当値は、26479.45であった。異なる濃度のグルコースを添加するに従い、表4に示すように領域は変化した。
【0149】
【表4】

【0150】
上記のように、1800mg/dlのグルコース添加により蛍光強度は11%増加し、1800mg/dlのフルクトースの添加により蛍光強度は14.6%増加した。
【0151】
〔実施例20〕
IPNの蛍光分光分析:
分散HPTS-MAヒドロゲルを用いた4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム・ブロミド クロライド(m-SBBV)のコポリマーの蛍光分光分析
手順は実施例12を参照。ぺリスタリックポンプを使用して、pH7.4(イオン強度0.1)のリン酸緩衝液を、1分間に30mLの速さでセルに循環させた。
【0152】
パーキンエルマー社製LS50Bソフトウエアの時間駆動機能を用いて、2秒の積分時間に対して10秒毎の読み取り値として蛍光強度を得た。励起周波数は475nmのところに設定し、発光スリット幅は536nmに設定した。この励起と発光のスリット幅は、それぞれ15nm及び20mnに設定した。緩衝溶液を用いてベースライン値である249(蛍光強度)を設定した。ぺリスタリックポンプを止め、ポンピング溶液をグルコース1800mg/dlの pH7.4リン酸緩衝液に入れた。
【0153】
蛍光強度は、10%の信号増加(信号対雑音比=43)に対応する25増加して、274となった。再び緩衝液に入れ替えると、その信号は予想通りベースライン値の249となった。
【0154】
〔実施例21〕
二成分システムの蛍光分光分析:
アセトキシ-HPTS-MAを用いた4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム・ブロミド・クロライド(m-SBBV)の薄膜コポリマーヒドロゲルの蛍光分光分析
分析手順は、実施例12を参照。ぺリスタリックポンプを使用して、pH7.4(イオン強度0.1)のリン酸緩衝液を、1分間に30mLの速さでセルに循環させた。パーキンエルマー社製LS50Bソフトウエアの時間駆動機能を用いて、2秒の積分時間に対して10秒毎の読み取り値として蛍光強度を得た。励起周波数は475nmのところに設定し、発光スリット幅は536nmに設定した。この励起と発光のスリット幅は、7mnに設定した。緩衝溶液を用いてベースライン値である490(蛍光強度)を設定した。ぺリスタリックポンプを止め、ポンピング溶液をグルコース400mg/dlの pH7.4リン酸緩衝液に入れた。
【0155】
蛍光強度は、1.5%の信号増加(信号対雑音比=6.5)に対応する9単位増加して、499となった。緩衝液を入れ替える処理を繰り返すと、その緩衝液は予想通りベースライン値の490となった。グルコース1800mg/dlの pH7.4リン酸緩衝液へと変換すると、その後に蛍光強度は35単位上がり、7.6%の信号増加(信号対雑音比=15.0)に対応しする525となった。最終的に、システムを通して緩衝液を汲み上げると、予想通りベースライン値の490に下がった。
【0156】
〔実施例22〕
4,4’-N,N’-ビス(ベンジル-3-ボロン酸)-ビピリジニウム・ジブロミド(m-BBV)及び8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス-(メトキシポリエトキシエチル(N〜125)スルホンアミド)(HPTS-PEG)を用いた水性試料中のグルコース濃度の蛍光分光計測
10mLの容量フラスコに、pH7.4のリン酸緩衝液(0.1イオン強度)でHPTS-PEGの保存溶液(10mL、5×10-5M)を作成した。同様に、m-BBV溶液(25mL、0.0025M)及びα-D-グルコース(10mL、0.250M)溶液を作成した。その後、下記の表5に示すように、HPTS-PEG、m-BBV及びα-D-グルコースを含む異なる7種の溶液をpH7.4リン酸緩衝液中で作成した。
【0157】
【表5】

【0158】
pHメーターを用いて各試料のpHをそれぞれ測定し、一連の試験を通してpHが±0.02以内で一定であるようにした。分析手順については実施例17を参照。
【0159】
5mLの容量フラスコに濃度不明の水性グルコース溶液2mLを入れ、それにHPTS-PEG保存溶液1mL及びm-BBV保存溶液2mLを添加した。その試料を混合し、適当なキュベットに入れ、前記のように試料の蛍光発光強度を分析した。その後、480〜630nmの蛍光発光強度曲線を(台形法則概算法を用いて)積分することにより、試料の蛍光分光強度を求めた。グルコース濃度が不明な場合でも、その濃度不明なグルコースの試料の蛍光発光強度に関してY軸上の校正曲線に対する算出値と、X軸上のそれと同等なグルコース濃度の読み取り値を比較することにより、その濃度を算出することができる。補正図で読み取ったグルコース濃度は、その後5/2希釈係数で修正して、未知試料のグルコース濃度を求めた。
【0160】
〔実施例23〕
HPTS-PEGを用いた4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)ジピリジニウム ブロミド クロライドの薄膜コポリマー(半-IPN薄膜)の水溶性試料中におけるグルコース濃度の蛍光分光測定
実施例11に記載したように薄膜コポリマーを作成し、実施例12に記載したようにそれを蛍光分光器にのせた。その後、pH7.4リン酸緩衝液で、7種のα-グルコース保存溶液(0、18、36、180、360、900、及び1800mL/dL)100mLを作成した。その溶液をフローセルに順次循環させ、実施例13に記載のように蛍光発光強度を分析した。各ケースにおいて、溶液を替える前に蛍光発光強度を安定化させた。安定化した蛍光強度に対してそれに相当するグルコース濃度をプロットして校正曲線を作図した。濃度不明の水性グルコース試料のpH値をpHメーターで測定し、濃縮酸又は塩基でpH7.4±0.02に調整した。未知の試料をセルに循環させ、蛍光発光強度が安定するまでそれを測定する。濃度不明のグルコース試料をセルに循環させ、蛍光発光強度が安定する前にそれを測定した。未知のグルコース濃度は、Y軸上の校正曲線に対して安定化した蛍光発光強度に関する算出値と、それに相当するX軸上のグルコース濃度の読み取り値を比較することにより測定することができる。未知の試料に対するグルコース濃度の最終測定値を、その試料をpH調整したことにより生じた希釈係数に関して修正した。
【0161】
〔実施例24〕
4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4,7-フェナントロリ二ウム ブロミド(4,7-Phen-m-BV)の合成
乾燥機で乾燥させた250mL丸底フラスコにマグネットスターラーを入れて、アルゴン下で冷却し、4,7-フェナントロリン(6.16g、34.2mmols)を加えた。そのフラスコをアルゴン管に接続した還流冷却器に備えつけ、N,N-ジメチルホルムアミド(80mL)を入れた。その懸濁液を加熱して溶解させ、90℃に保ったままで、新たに調整したジメチル-(3-ブロモメチル)-ベンゼンボロナート(5.562g、22.8mmols)をシリンジで添加した。その反応をTLCで調べたところ、3時間後に、ボロン酸エステルが消失したことが明らかになった。その反応混合物をアルゴン(ガス)下で室温まで冷却し、カニューレを用いてオレンジ色の懸濁液を水分に感度が高いガラス製漏斗に移した。鮭肉色の固体を回収し、アセトン(4×50mL)で洗浄して、減圧下で一晩乾燥させた。収率は3.652g、17.7mmols(78%)であった。1H-NMR(500MHz、CD3OD、ppm)測定の結果は、3.31(s、6H)、6.487(s、2H)、7.427(mult.、2H)、8.002(dd、1H、J=10Hz)、8.451(dd、1H、J1=6Hz、J2=8.5Hz)であり、13C-NMR(125MHz、CD3OD)は61.48、119.825、123.258、124.429、124.493、128.279、128.472、129.194、132.161、132.707、133.990、138.161、139.107、142.428、146.358、147.947、153.080、163.379であり、11B-NMR(80MHz、MeOH、ppm)測定の結果は、27.4(s、broad)であった。この化合物は、実施例31で用いた。
【0162】
【化13】

【0163】
〔実施例25〕
4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-N-7-(ベンジル-4-エテニル)-4,7-フェナントロリニウム ブロミド クロライド(4,7-Phen-m-SBBV)の合成
炎光中で乾燥させた25mLの枝付丸底フラスコにCH3CN(2mL)を入れ、それにN-ベンジル-4-エテニル-4,7-フェナントロリニウム・クロライド(0.243g、0.730mmols)を懸濁させ、そのフラスコにマグネティックスターラーを入れて還流冷却器に取り付けた。シリンジでジメチル-(3-ブロモメチル)-ベンゼンボロナート(2.8g、11.5mmols)を側部から添加し、アルゴン(ガス)下で64時間その懸濁液を加熱して還流した。その溶液を室温まで冷却し、ジエチルエーテル(10mL)で沈殿させた。その懸濁液を沈降させて、カニューレで上清を除去した。残余の残留物を溶媒3mLと共にカニューレで遠心分離管に入れ、アセトン水(50/50、V/V、20mL)で微粒子化し、遠心分離した(この工程を4回繰り返した)。ベージュ/黄色の固体をジエチルエーテル(3×20mL)で微粒子化し、減圧下で乾燥させた。収率は0.354g、0.615mmols(84%)であった。1H-NMR(250MHz、D2O、ppm)測定の結果は、5.223(d、1H、11.25Hz)、5.715(d、1H、J=17.75Hz)、6.434(d、4H)、6.605(dd、1H、J1=11.25Hz、J2=17.75Hz)、7.446(mult.、8H)、8.604(mult.、1H)、8.92(d、2H、J=3.5Hz)、9.698(d、2H、J=5.75Hz)、10.214(d、2H、J=9Hz)であり、11B-NMR(80MHz、CH3OH、ppm)は29.5(s、broad)であった。この化合物は、実施例26で用いた。
【0164】
【化14】

【0165】
〔実施例26〕
二成分システム:
4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-7-N’-(ベンジル-4-エテニル)-4,7-フェナントロリニウム ブロミド クロライド(4,7-PHEN-m-SBBV)とセトキシ-HPTS-MAの薄膜共重合
10mLの容量フラスコに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(3.525g、27.08mmols)、4,7-フェナントロリニウム-(ベンジル-3-ボロン酸)-N’-(ベンジル-4-エテニル)ブロミド クロライド(m-SBBV)(0.086g、0.15mmols)、3-((メタクリロイルアミノ)プロピル)トリメチルアンモニウムクロライド(0.3g、1.36mmols)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(1.11g、1.11mmols)、2-2’-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロライド(0.025g、0.077mmols)及び8-アセトキシピレン-1,3,6-N-N’-N’’-トリス(メタクリルアミドプロピルスルホンアミド)(6.6×10-4g 、7.5×10-4mmols)を入れ、それにイソプロピルアルコール:水の混液(1:1、V/V)を10mL線まで加えた。その溶液をボルテックス・ミキサーで激しく攪拌した後、重合槽(実施例11参照)と共にアルゴンの充填したグラブ・ボックスに移した。その重合槽にシリンジを取りつけて、その溶液をアルゴン下でセル中に入れ、全てのセル穴を満たした。その槽をLUER-LOC(登録商標)栓で塞ぎ、ZIPLOC(登録商標)冷凍用バッグ2枚に包んだ。そのバッグ全体を40℃のオーブンに入れ、18時間加熱した。その重合槽をオーブンから取り出し、室温まで放熱させた。それを分解して、オレンジ色膜をpH8のNaOH溶液中に7時間浸し、効果的にそれを緑色に変えた。その緑色膜をpH7.4のリン酸緩衝液中で14時間保存した。このポリマーの性質は、実施例32で示す。
【0166】
【化15】

【0167】
【化16】

【0168】
〔実施例27〕
8-アセトキシ-1,3,6-ピレン-トリスカルボキシプロピル-スルホンアミド(HPTS-CO2)ジナトリウム塩の調整
100mLの丸底フラスコにマグネットスターラーを入れてゴム製セプタムで密栓し、それに1-アセトキシ-3,6,8-ピレントリスルホニルクロライド(0.5mmols、272.91mg)及びTHF40mLを入れた。ナトリウム-4-アミノ-ブチレート(1mmol、125.10mg)をTHF2mL及び純水0.26mLと共に小試験管に入れた。その懸濁液をボルテックスで短時間攪拌し、3mLのプラスティック製シリンジで吸い取った。N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドHClをTHF5mL及び1Mの水性NaOH0.55mLと共に小試験管に入れた。その懸濁液をボルテックスで短時間攪拌し、10mLのプラスティック製シリンジで吸い取った。100mL丸底フラスコに入ったその溶液に、ナトリウム4-アミノ-ブチレート懸濁液を滴下して、鮮赤色の溶液を作成した後に、それを素早く攪拌して純水5.2mLを加えると、10分間の攪拌後には色が消失して黄色となった。その後、そのフラスコにN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドHCl懸濁液を再度滴下して赤色溶液を作成すると、それは色が消失して黄色となった。その溶液を4時間攪拌した。その後、ロータリー・エバポレーションと、その後に高真空で溶媒を除去した。フラスコに残存する固体を少量のメタノール中に入れ、ジエチルエーテルで沈殿させた。その沈殿を遠心分離により回収すると、その沈殿物は繰り返し最終生成物を生成した。1H-NMR(500MHz、CD3ODppm)測定の結果は、1.601(M、J=8Hz)、1.829(Q、J=5Hz)、2.392(T、J=2.5Hz)、2.584(S)、2.890(T、J=7.5Hz)、2.933(T、MHz)、5.519(1、J=176.5Hz)、8.306(S)、8.526(S)、8.616(1、J=9.5Hz)、9.062(13、J=9.5Hz)、9.130(13、J=9.5Hz)、9.225(1、J=10Hz)、9.305(S)、9.317(S)、9.338(S)、9.358(S)、9.440(S)であった。これらは特定の異性体の混合体であった。この生成物は、実施例37で用いた。
【0169】
【化17】

【0170】
〔実施例28〕
8-アセトキシ-1,3,6-ピレントリカルボキシプロピルスルホンアミド(アセトキシ-HPTS-CO2)の調整
丸底フラスコに4-アミノ酪酸(5.156g、50mmols)を入れた。水酸化ナトリウム(2g、50mmols)を添加し、その後メタノール(50mL)を添加した。その溶液を均質化するまで攪拌し、均質化したところでロータリー・エバポレーターでメタノールを除去した。アセトニトリルを加えて同時蒸着により黄褐色の固体をさらに乾燥させ、水を除去した。
【0171】
【化18】

【0172】
HPTS-CO2の調整:
乾燥機で乾燥させた丸底フラスコをアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、8-アセトキシ-1,3,6-ピレントリスルホニルクロライド(460mg、 0.83mmols)を加え、セプタムで密栓した。DMSO(20mL)を添加し、均質化した黄色の溶液を作成した。乾燥機で乾燥させた第2の丸底フラスコをアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、4-アミノナトリウムブチラート(415mg、3.32mmols)を入れ、セプタムで密栓した。両頭針でDMSO(20mL)を添加し、数分間攪拌した後に、8-アセトキシ-1,3,6-ピレントリスルホニルクロライドを含む第1のDMSO溶液をカニューレで滴下して、濃赤色の均質な溶液を作成した。6時間後、その溶液の約3分の1を除去し、DMSOを真空下で蒸留した。その結果生じた茶色の物質を、少量のアセトニトリルで洗浄し、それを綿で濾過してEt2O中に滴下すると、少量(48mg)の茶/赤色の吸湿性固体が沈殿した。1H-NMR(250MHz、D2O、ppm)測定の結果は、2(d、6H)、2.4(t、6H)、2.61(s、3H)、3(t、6H)、8.2(d、1H)、8.4(s、1H)、8.6(d、1H)、9.2(d、1H)、9.4(s、1H)であった。
【0173】
アセトキシ保護基は、水性NaOH処理により除去した。その後、pKa値を約6.8となるように調整した。
【0174】
スタン・ボルマー試験を行った後に、HPTS-CO2/m-BBV化合物を用いてグルコース反応試験を行った。この化合物は、グルコース濃度が多少変化しても、生理的範囲内(0〜400(0〜400mg/dL)でグルコースに対してほぼ直線的に反応した。図14を参照。
【0175】
4,7-Phen-BBVとHPTS-CO2を使用して、オーシャンオプティクス社製のモデル#SF2000、ファイバーオプティクス、380メインストリート、ダニディン、FL34698、コンピューター制御器ADC1000RevBを有する蛍光分光計を用いてグルコース濃度試験を行ったところ、グルコース濃度が増す程、蛍光強度が高くなることが観測された。
【0176】
〔実施例29〕
2-(3,5-ビス-ブロモメチル-フェニル)-(1,3,2)-ジオキサボロナートの調整
ボロン酸エステルの調整:
乾燥機で乾燥させた枝付丸底フラスコを窒素下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、ペンタンを加え、その後に3,5-ジメチルフェニルボロン酸(5g、 33mmols)を加えて、0.5Mの均質な溶液を作成した。その後、そのフラスコに乾燥機で乾燥させた還流冷却器を設置し、セプタムで密栓して、窒素でパージした。その溶液を攪拌しながら、両頭針で1,3-プロパンジオール(14.5mL)を添加し、その後、その溶液を均質化するまで加熱して還流した(約20分)。その溶液を窒素雰囲気下で室温まで冷却した。硫化マグネシウム及び塩化カルシウムを即座に添加して装置を窒素でパージし、その溶液を1時間緩やかに加熱した。その後、その溶液を窒素下で室温まで冷却し、攪拌を止めた。乾燥機で乾燥させた別の丸底フラスコに上清を移し、それを窒素下で冷却してセプタムで密栓した。残余の固体を1時間加熱した。その後、その溶液を窒素下で室温まで冷却し、攪拌を止めた。乾燥機で乾燥させた別の丸底フラスコに上清を移し、それを窒素下で冷却してセプタムで密栓した。残余の固体をペンタンで洗浄し、これを最初のペンタン層に混ぜ合わせた。アルゴンを通気しながらロータリー・エバポレーターで減圧してペンタンを除去すると、黄色の固体が生じた。融点は58〜60℃であった。
【0177】
【化19】

【0178】
二臭素化:
乾燥機で乾燥させた枝付丸底フラスコを窒素下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、N-ブロモスクシニミド(13.4g、73.26mmol)及びAIBN(1.094g、6.66mmol)を入れて、還流冷却器を取りつけて、セプタムで密栓し、窒素で数分間パージした。ボロン酸エステルをクロロホルム(250mL、CaH2で蒸留)に溶かして、N-ブロモスクシニミド及びAIBNの入った丸底フラスコにカニューレで入れた。その装置は、Br弁に設置された窒素気泡管で通気して、その溶液を加熱して、攪拌しながら激しく還流した。3.5時間後、黄白色の溶液の加熱を止め、窒素下で室温まで冷却した。アルゴンを通気しながらロータリー・エバポレーターで減圧してその溶液を濃縮するとオレンジ色の溶液が生じ、アルゴン下で濾過して、その溶液からスクシニミドの副生成物を除去した。アルゴンを通気しながらロータリー・エバポレーターで濾液をさらに濃縮すると、粘性のある濃オレンジ色の液体が生じた。攪拌しながら、この粘性のある液体にペンタン(〜250mL)をゆっくりと添加すると、粗生成物が沈殿した。上清のペンタンを濾過し、アルゴン雰囲気下で中位のガラス製漏斗で固体を回収した。その固体を60ミリトールまで減圧して乾燥させた。収率は71%であり、融点は124〜125℃であった。1H-NMR(500MHz、CDCl3)測定の結果は、2.059〜2.081(quint、2H、J=5.5Hz)、4.163〜4.185(t、4H、J=5.5Hz)、4.5(s、4H)、7.479(t、1H)、7.721〜7.725(d、2H、J=2Hz)であり、13C-NMR(500MHz、CDCl3、ppm)測定の結果は、27.476、33.262、62.162、131.845、134.459、137.694であり、11B-NMR(250MHz、CDCl3、ppm)測定の結果は、25.52であった。この化合物は実施例30及び35で用いた。
【0179】
〔実施例30〕
3-(3-ブロモメチル-5-(1,3,2)ジオキサボリナン-2-イル-ベンジルオキシ)-プロパン-1-オールの合成
乾燥機で乾燥させた250mLの丸底フラスコにマグネットスターラーを入れて還流冷却器に設置し、アルゴン下で冷却して、NaH(60%ミネラルオイル中0.800g、20mmols)を入れた。その粉末をペンタン(3×100mL)で洗浄し、減圧して乾燥させた。アセトニトリル(50mL)をシリンジで添加し、その混合物を室温で攪拌した。1,3-プロパンジオール(10mL)を10分以上滴下したところ、白色の不溶性沈殿物を形成した。その懸濁液を1時間激しく攪拌し、その最中に20mLをシリンジで取り、2-(3,5-ビス-ブロモメチル-フェニル)-(1,3,2)ジオキサボリナン(2.865g、8.2mmols)及びアセトニトリル(50mL)を入れた250mL丸底フラスコに滴下した。その混合物を12時間室温で攪拌した。還流冷却器をバキュームアダプタに接続して、その反応混合物を加熱して、アルゴン下で2時間還流した。減圧してアセトニトリルを除去し、残留物をフラッシュ・クロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン、2:1)で清浄化した。溶媒の除去により、黄色油中に白色固体の懸濁液が得られ、それを薄層クロマトグラフィーで分析した場合に、出発物質は現れなかった。1,3-プロパンジオールを含む粗混合物は、さらに精製せずに用いた。この化合物は実施例31で用いた。
【0180】
【化20】

【0181】
〔実施例31〕
4-N-(ベンジル-3-(ジメチル)ボロナート)-7-N-(ベンジル-3-(1,3,2))ジオキサボリナン-2-イル〕-5-メチレノキシ-プロパノール-4,7-フェナントロリニウム ジブロミド(4,7-PHEN-m-BBVOH)の合成
実施例30で得た物質を100mLの枝付丸底フラスコに入れておき、そのフラスコにマグネットスターラーを入れて、還流冷却器を設置した。そのフラスコに4-N-(ベンジル-3-(ジメチル)ボロナート)-4,7-フェナントロリニウム ブロミド(4,7-Phen-m-BV)(0.797g、1.88mmols)、DMF(4mL)及びCH3OH(3mL)を入れた。その懸濁液を48時間100℃まで加熱して、反応中、アルゴン層下に保った。その反応混合物をアルゴン下で室温まで冷却し、連続的に攪拌した。その懸濁液を氷冷ジエチルエーテル(100mL)にカニューレで入れ、1時間以上おいて沈殿させた。その上清をカニューレで別の容器に分け、ベージュ/赤色の残留物をTHF(50mL)で微粒子化した。その混合物を40℃で120分間超音波処理により分解し、その結果生じた微粉末をジエチルエーテル(3×50mL)で洗浄した。アルゴン下その固体をガラス製漏斗で回収して、減圧下で乾燥させた(0.929g、収率49.4%)。この化合物は実施例34で用いた。
【0182】
【化21】

【0183】
〔実施例32〕
HPTS-MAを用いたニ成分システムの蛍光分光分析:
4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-7-N-(ベンジル-4-エテニル)-4,7-フェナントロリニウム クロライド ブロマイド(4,7-PHEN-m-SBBV)の薄膜コポリマーのヒドロゲルの蛍光分光分析
蛍光は、実施例17の手順に従い測定した。基準値の441(蛍光強度)は緩衝液で一定とした。ぺリスタリックポンプを止めて、ポンプ溶液を400mg/dlのグルコース溶液(pH7.4リン酸緩衝液)に変えた。蛍光強度は12単位増加して453となり、これは2.7%の顕著な増加に相当するものであった。溶液の交換を再び行い、溶液を400mg/dlのフルクトース溶液(pH7.4リン酸緩衝液)に変えた。その緩衝液の基準値は443であった。蛍光強度は14単位増加して457となり、これは3.2%の顕著な増加に相当する値であった。最終的に、ポンプによりpH7.4のリン酸緩衝液をシステムに通すと、基準値は446となった。これらの結果は図11に示すとおりである。
【0184】
【化22】

【0185】
【化23】

【0186】
〔実施例33〕
4,7-N,N-ビス(ベンジル-3-ボロン酸)-4-7-フェナントロリニウム ジブロミド(4,7-PHEN-m-BBV)の合成
乾燥機で乾燥させた100mLの丸底フラスコにマグネットスターラーを入れて還流冷却器を設置し、アルゴン下で冷却して、4,7-phen-m-BV(0.814g、1.92mmols)及び3-ブロモメチルフェニルボロン酸(1.77g、8.24mmols)を入れた。システムをアルゴンでパージし、乾燥したDMF(35mL)を加えた。その懸濁液をアルゴン層下で48時間80℃まで加熱した。その混合物をアルゴン下で室温まで冷却し、1MHClを含む氷冷ジエチルエーテル:アセトン混液(1:1、500mL)に滴下(10滴)した。沈殿物を濾過して、冷アセトンで複数回洗浄し、続いて減圧下で乾燥させた。収率は0.913g、1.50mmols(78%)であった。1H-NMR(250MHz、CD3OD、ppm)測定の結果は、6.526(s、4H)、7.668(m、4H)、7.426(m、4H)、8.660(q、2H、J=4.5Hz)、9.833(d、2H、J1=6Hz)、9.117(s、2H)、10.387(d、2H、J=9Hz)であり、11B-NMR(80MHz、CD3OD、ppm)測定の結果は、30(s、broad)であった。この化合物は実施例28の染料を消光し、グルコースに対して反応性を示した。
【0187】
【化24】

【0188】
この化合物の評価は、実施例17に従って行った。スタン・ボルマー消光定数は2598M-1であった。
【0189】
180mg/dLのグルコースを用いてグルコース反応を測定すると、蛍光強度は257から291に変化した。
【0190】
〔実施例34〕
4-N-(ベンジル-3-(ボロン酸)-7-N-[ベンジル-3-(メチレン-(1-オキシ-3-(オキシベンジルビニル)-プロパン))-5-ボロン酸]-4,7-フェナントロリニウム ジブロミドの合成
乾燥機で乾燥させた100mLの丸底フラスコにマグネットスターラーを入れ、4,7-phen-m-BBVOH(0.491g、0.641mmols)及び4-ビニルベンジルクロライド(0.137g、0.9mmols)を入れた。新たに活性化したNaH(0.048g、2mmols)をDMF(10mL)に懸濁し、カニューレで100mLフラスコに入れた。その混合物を室温で46時間攪拌し、その後アセトン(30mL)及び1MHCl(10滴)で消光して、一晩(〜20時間)攪拌した。その懸濁液を冷ジエチルエーテル(200mL)に滴下すると、沈殿が生じた。遠心分離の後上清を除去し、その後、残留物を少量のメタノールに溶かした。アセトン:ジエチルエーテルの混液(1:1、20mL)を添加し、沈殿を4℃で一晩放置した。その懸濁液を濾過し、複数回ジエチルエーテルで洗浄して、減圧下で乾燥させた。収率は0.201g、0.247mmols(38.5%)であった。1H-NMR(500MHz、D2O、ppm)測定の結果は、1.73(d、2H)、3.581(d、2H)、3.707(d、2H)、4.7(s、4H)、5.565(d、1H)、6.090(s、1H)、6.554(m、8H)、6.980(dd、1H)、7.66(m、7H)、8.150(d、1H)、8.737(d、1H)、8.804(d、1H)、9.261(d、1H)、9.515(d、1H)、9.605(d、1H)、10.024(d、1H)であり、11B-NMR(80MHz、CD3OD、ppm)測定の結果は、30(s、broad)であった。この化合物は実施例28の染料を消光し、グルコースに対して反応性を示した。
【0191】
【化25】

【0192】
〔実施例35〕
4,4’-N,N’-ビス-[ベンジル-(3-ブロモメチル)-5-(ボロン酸)]-ジピリジニウム ジブロミド(m-BBVBBr)の調整
乾燥機で乾燥させた100mLの丸底フラスコにマグネットスターラーを入れ、アルゴン下で冷却して、4,4’-ジピリジル(0.394g、2.52mmols)及び2-(3,5-ビス-ブロモメチル-フェニル)-[1,3,2]ジオキサボリナン(2.63g、7.56mmols)を入れてセプタムで密栓した。そのフラスコをアルゴンでパージし、N,N-ジメチルホルムアミド(10mL)を加えた。その溶液を室温で72時間攪拌し、その結果生じた懸濁液をプラスティック製カニューレでアセトン:ジエチルエーテル混合溶液(1:1、300mL)に入れた。空気に対する感度が高いガラス製漏斗で沈殿を濾過して、アルゴン層下ジエチルエーテルで複数回洗浄した。減圧下で鮮黄色固体を乾燥させて、アルゴン下で分離した。収率は1.632g、1.92mmols(76%)であった。この化合物は実施例36で用いた。
【0193】
【化26】

【0194】
〔実施例36〕
4,4’-N,N’-ビス-[ベンジル-(3-メチレン-4-ビニル-ピリジニウム ブロミド)-5-(ボロン酸)]-ジピリジニウム ジブロミド(m-BBVBP)の合成
乾燥機で乾燥させた50mLの枝付丸底フラスコにマグネットスターラーを入れ、還流冷却器に設置して、アルゴン下で冷却し、m-BBVBBr(500mg、0.587mmols)を入れた。その固体を少量の無水CH3OH(6mL)に溶かして、4-ビニルピリジン(63mg、0.60mmols)を枝から加えた。その溶液を室温で15時間攪拌し、その後加熱して6時間還流した。さらに4-ビニルピリジン(63mg、0.60mmols)を添加して、その混合物を4日間還流した。濃緑色溶液をアルゴン下で室温まで冷却し、減圧してCH3OHを除去した。重油に1MのHCl(5滴)を含むアセトン:水の混液(40:1)(4×30mL)を混ぜて、10分間激しく攪拌し、上清を静かに取り除いた。メタノール:エタノールの混液(1:1、50mL)を沸騰させることでその残留物を再結晶させると、濃緑色の結晶が生じた。その固体をガラス製漏斗で回収し、氷冷エタノール(95%水)及びジエチルエーテルで洗浄した。その後減圧下で乾燥させると、黄緑色の粉末が生じた。収率は0.446g、0.506mmols(86%)であった。1H-NMR(500MHz、D2O、ppm)測定の結果は、5.87(m、2H)、6.055(m、8H)、6.400(m、2H)、7.44(d、2H)、7.899(m、6H)、8.612(d、8H)、9.225(d、8H)であり、11B-NMR(80MHz、CD3OD、ppm)測定の結果は、30ppm(s、broad)であった。この化合物は実施例37及び40で使用した。
【0195】
【化27】

【0196】
〔実施例37〕
ニ成分システム:
HPTS-CO2MAヒドロゲルを用いたm-BBVBPの重合体薄膜
10mLの容量フラスコに2-ヒドロキシエチル メタクリレート(3.525g、27.08mmols)、m-BBVBP(0.617mg、7.5×10-4mmols)、ポリエチレングリコール ジメタクリレート(1.11g、1.11mmols)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2イル)プロパン]ジヒドロクロライド(0.025g、0.077mmols)及びHPTS-CO2MA(1.26mg、1.5×10-3mmols)を入れ、それにメタノール:水の混液(1:1、V/V)を10mLまで加えた。その溶液をボルテックス・ミキサーで激しく攪拌した後に50mL丸底フラスコに移して、そのフラスコをゴム製セプタムで密栓した。それをアルゴンで20分間脱酸素した。測定溶液をシリンジで採り、その針にゴム栓をかぶせた。その後、それを実施例16に記載の重合槽と共にアルゴンを充填したグローブ・ボックスに移した。緑色膜は、実施例38で使用するまで、pH7.4のリン酸緩衝液中で保存した。
【0197】
【化28】

【0198】
〔実施例38〕
二成分システムの蛍光分光分析:
HPTS-CO2-MAを用いた4,4’-N,N’-ビス-(ベンジル-(3-(メチレン-4-ビニルピリジニウムブロミド)-5-(ボロン酸)))ジピリジニウム ジブロミド共重合ヒドロゲル薄膜の蛍光分光分析
実施例12に従い、蛍光を測定した。パーキンエルマー社製LS50Bソフトウエアの時間駆動機能を用いて、2秒の積分時間に対して10秒毎の読み取り値として蛍光強度を得た。励起周波数は463nmのところに設定し、発光スリット幅は518nmに設定した。励起スリット幅は15nmで設定し、発光スリット幅は4.3nmで設定した。緩衝溶液を用いてベースライン値である451(蛍光強度)を設定した。ぺリスタリックポンプを止め、ポンピング溶液をグルコース360mg/dlのpH7.4リン酸緩衝液に入れた。蛍光強度は、1.6%の顕著な信号増加に相当する29単位増加して、458となった。緩衝液の入れ替えを繰り返し行うと、その信号は予想通りベースライン値の451となった。
【0199】
【化29】

【0200】
〔実施例39〕
一成分ビオロゲンセンサーHPTS-BV
(a) 乾燥機で乾燥させた丸底フラスコをアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、4-クロロメチルベンゾイルクロライド(1.89g、10mmols)を加え、ゴム製セプタムで密栓した。ジクロロメタン(25mL)を添加して、その溶液を攪拌し、氷水槽で冷却した。1,3-プロパンジアミン(0.89g、12mmol)を滴下したところ、即座に白色沈殿が生じた。アルゴン下で中位のガラス製漏斗を用いてその白色固体を回収して、冷ジクロロメタンで洗浄した。その白色固体をバキューム(100mトール、3時間)で乾燥させると、2.61g(収率99%)の4-クロロメチルベンゾイル-(1-アミドプロピル-3-アンモニウムクロライド)が得られた。1H-NMR(500MHz、D2O、ppm)測定の結果は、1.7〜1.8(m)、2.5、2.8(t)、3.3(q)、4.8(s)、7.5(d)、7.8(d)、8.6(t)であった。
【0201】
(b)(m-BV) 乾燥機で乾燥させた丸底フラスコをアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、3-ブロモメチルフェニルボロン酸(0.64g、3mmols)を加え、ゴム製セプタムで密栓した。THF(50mL)を添加して、わずかに濁った黄色の溶液を得た。オーブンで乾燥させた第2の丸底フラスコをアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、4,4’-ビピリジン(1.87g、12mmols)を加えて、ゴム製セプタムで密栓した。THF(5mL)を両頭針で添加して、数分間攪拌した後に、4,4’-ビピリジン含有THF溶液を3-ブロモメチルフェニルボロン酸溶液に滴下した。30分後に黄色沈殿がいくらか形成し始め、その溶液を室温で一晩攪拌すると、大量の沈殿が生じた。その後、その溶液を遠心分離し、上清を両頭針で移した。その黄色固体をTHF(30×10mL)で洗浄し、バキューム(100mトール、3時間)で乾燥させたところ、0.88g(収率79%)のmBVが得られた。1H-NMR(500MHz、D2O、ppm)測定の結果は、5.9(s)、7.46(m)、7.6(m)、8.0(m)、8.5、8.7、9.2であり、11B-NMR(250MHz、CD3OD、ppm)測定の結果は、30.8であった。
【0202】
(c) m-ABBV 乾燥機で乾燥させた丸底フラスコをアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、4-クロロメチルベンゾイル-(1-アミドプロピル-3-アンモニウムクロライド)(263mg、1mmol)を加え、ゴム製セプタムで密栓した。メタノール(30mL)を添加して、その溶液を攪拌した。MBV(371mg、1mmol)をメタノール(10mL)に溶かして、4-クロロメチルベンゾイル-(1-アミドプロピル-3-アンモニウムクロライド)含有溶液を滴下した。その溶液を加熱して還流した。48時間後、その溶液をアルゴン下で室温まで冷却した。その溶液10mLをシリンジで除去し、アセトン(100mL)で沈殿させた。上清を静かに取り除いて、その白色固体を回収してバキュームで乾燥させると、44mgのm-ABBVが得られた。1H-NMR(500MHz、D2O、ppm)測定の結果は、2.1、2.2、3.45、4.9、6.0、7.6、8.6、9.2であり、11B-NMR(250MHz、CD3OD、ppm)測定の結果は、31.7であった。
【0203】
(d) AIO 乾燥機で乾燥させた丸底フラスコをアルゴン下で冷却し、マグネットスターラーを入れて、m-ABBV(44mg、0.075mmol)を加え、ゴム製セプタムで密栓した。水(2mL)の後にメタノール(10mL)を添加した。K2CO3を添加して、その溶液を攪拌した。1-アセトキシ-3,6,8-トリスルホニルクロライド(アセトキシ-HPTS-Cl)(38mg、0.068mg)をメタノール(15mL)に溶解させると黄色の懸濁液が得られ、アセトン(5mL)を添加すると均質化した溶液となった。そのアセトキシ-HPTS-Cl溶液をシリンジでm-ABBVに滴下した。その溶液は即座に赤色に変わり、数分間攪拌した後には沈殿が形成し始めた。その溶液を攪拌しながら室温で一晩置き、その後遠心分離管に移した。遠心分離後、上清を丸底フラスコに移してロータリー・エバポレーターで濃縮した。残余の水をアセトニトリルで同時蒸着することにより除去し、その結果生じた黒色固体を減圧下で乾燥させたところ、55mg(収率は70%)の8-アセトキシ-1-m-ABBV-ピレン-3,6-ビススルホン酸(AIO)が得られた。1H-NMR(500MHz、D2O、ppm)測定の結果は、2.01〜2.08、2.14、2.8、3.1、3.4、5.7、5.88、7.45、7.55、7.7、7.8、7.99、8.07、8.17、8.6、8.7、8.8、8.9、9.05であった。
【0204】
(e) その後、最終的に分離した物質を用いて、実施例17に記載したように、グルコース試験を行った。最初に、25mL容量フラスコに5×10-4MのAIO保存溶液を調整したが、pH7.4(イオン強度0.1)のリン酸緩衝液で完全に希釈する前に、その溶液を塩基性(pH10)にして全てのアセトキシ保護基を確実に除去した。その後、その溶液をまたpH7.4に調整して、25mLに希釈した。次に、5×10-5Mの保存溶液を用いて異なる量のグルコースを含む7種の試料各5mLを作成した。分析は、パーキンエルマー社製ルミネッセンス分光光度計LS50Bを用いて行い、装置の設定は下記の通りにした。
励起波長 463nm
発光波長範囲 450〜650nm
励起スリット幅 15nm
発光スリット幅 15nm
発光フィルター 1% T attenuator
スキャン速度 100nm/sec
【0205】
この化合物は、グルコースに対して高い反応性を示した。18mg/dLを添加すると、信号は827から908まで増加した。実施例14参照。材料が少量のグルコースで飽和されるため、さらに高濃度のグルコース溶液を添加しても、蛍光強度がさらに増加することはなかった。
【0206】
【化30】

【0207】
〔実施例40〕
ニ成分システム:
HPTS-MAを用いたm-BBVBPの共重合薄膜
10mLの容量フラスコに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(3.525g、27.08mmols)、m-BBVBP(12.3mg、0.015mmols)、ポリエチレングリコール・ジメタクリレート(1.11g、1.11mmols)、2,2’-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロライド(0.025g、0.077mmols)、及びHPTS-MA(1.32mg、1.5×10-3mmols)を入れた。それにメタノール:水の混液(1:1、V/V)を加えて10mLにした。その溶液をボルテックス・ミキサーで激しく攪拌した後に、50mLの丸底フラスコに移して、そのフラスコをゴム製のセプタムで密栓した。それを20分間アルゴンで脱酸素した。測定用の溶液をシリンジで採り、針にゴム栓をかぶせた。その後、重合槽に設置されているアルゴンの充満したグローブボックスにそれを移した。(実施例を11参照。)シリンジを重合槽に取り付け、アルゴン下で全てのセル穴がいっぱいとなるようにその溶液をセルに注入した。その槽にLUER-LOCK(登録商標)栓で封をし、2つのZIPLOC(登録商標)冷凍用バッグで包装した。全てのバッグを40℃のオーブンに入れ、10時間加熱した。重合槽をオーブンから取り出し、室温になるまで放置した。それを取出して、膜をpH8のNaOH溶液中に4時間浸した。この膜はpH7.4のリン酸緩衝液中に保存して、実施例41で分析を行った。
【0208】
【化31】

【0209】
〔実施例41〕
二成分システムの蛍光分光分析:
HPTS-MAを用いた4,4’-N,N’-ビス-[ベンジル-(3-メチレン-4-ビニルピリジニウムブロミド)-5-(ボロン酸)]-ジピリジニウム ジブロミド(m-BBVBP)のコポリマーヒドロゲル薄膜の蛍光分光分析
分析は、実施例12と同様の手順で行った。ぺリスタリックポンプを用いて、1分間に30mLの速さでセルにpH7.4のリン酸緩衝液(イオン強度0.1)を循環させた。パーキンエルマー社製LS50Bソフトウエアの時間駆動機能を用いて蛍光強度を得た。試料をパルス機能(2秒毎)を用いて照射し、2秒の積分時間に対する10秒毎の読み取り値を得た。励起周波数は475nmのところに設定し、発光周波数は525nmに設定した。励起スリット幅を15nmに設定し、発光スリット幅を4mnに設定した。緩衝溶液を用いてベースライン値である464(蛍光強度)を設定した。ぺリスタリックポンプを止め、ポンピング溶液をグルコース360mg/dlのpH7.4リン酸緩衝液に入れた。蛍光強度は、6.3%の信号増加に相当する29単位増加して、493となった。緩衝液の入れ替えを繰り返し行うと、その信号は、予想通り緩衝液によるベースライン値の464となった。溶液をグルコース100mg/dlのpH7.4リン酸緩衝液に替えると、蛍光強度は4.3%の信号増加に相当する20単位増加して、484となった。最後に、ポンプでシステムに緩衝液を通すと、予想通りベースライン値は464に下がった。この結果は、図14に示す通りである。
【0210】
【化32】

【0211】
本明細書には、本発明の実施例のいくらかが明示及び記載されいるに過ぎないが、グルコースセンサーや、蛍光染料、消光剤、及び光学ポリマーマトリックスを含む各成分について、ポリヒドロキシル基含有の有機検体をモニーターする際に、主にはインビボでグルコースをモニーターする際に、本発明の精神及び範囲を逸脱しないで、様々な修正及び変更をすることができることは、当業者には明らかであろう。従って、請求項の範囲内に含まれる全ての修正及び変更が為されると理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】図1Aは、8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス(メトキシポリエトキシエチル(n〜125)スルホンアミド)(HPTS-PEG)の構造式である。図1Bは、8-アセトキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス(メタクリルプロピルアミドスルホンアミド)(アセトキシ-HPTS-MA)の構造式である。図1Cは、8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-トリス(カルボキシプロピルスルホンアミド)(HPTS-CO2)の構造式である。
【図2】図2A〜2Gは、ジハロゲン化塩として存在する消光剤Q1の構造の略図である。図2Aはトランス-1,2-ビス(4,4’-N,N’-(ベンジル-4-ボロン酸)-ピリジニウム)エチレン ジブロミドであり、図2Bは1,7-N,N’-ビス(ベンジル-3-ボロン酸)- フェナントロリニウム ジブロミドであり、図2Cは対照消光剤であるベンジル ビオロゲン(BV)、図2Dは4,4’-N,N’-ビス-(ベンジル-2-ボロン酸)-ジピリジニウム ジブロミド(o-BBV)であり、図2Eは4,4’-N,N’-ビス-(ベンジル-3-ボロン酸)-ジピリジニウム ジブロミド(m-BBV)であり、図2Fは4,4’-N,N’-ビス-(ベンジル-4-ボロン酸)-ジピリジニウム ジブロミド(p-BBV)であり、図2GはN,N’-ビス-(ベンジル-(2/3/4)-ボロン酸-4,7-フェナントロリニウム ハロゲン化合物(4,7-phen-o/m/p-BBV)である。
【図3】図3Aは非対称グルコース反応性ビオロゲンであり、図3B〜3Iは消光剤前駆体の構造図である。図3Aは4-N-(ベンジル-2-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル)-ジピリジニウム ブロミド クロライドであり、図3Bは4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム ブロミド クロライド(m-SBBV)であり、図3Cは4-N-(ベンジル-2-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム ブロミド クロライド(o-SBBV)であり、図3Dは4-N-(ベンジル-4-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム ブロミド クロライド(p-SBBV)であり、図3Eはトランス-1,2-ビス-4-N-(ベンジル-4-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-4-エテニル)-ジピリジニウム-4-エチレン ジブロミドであり、図3Fは4-N-(ベンジル-3-ボロン酸)-4’-N’-(ベンジル-3-エテニル)-3フェナントロリニウム ジブロミドであり、図3Gは4,4’-N,N’-ビス-[ベンジル-(3-メチレン-4-ビニル-ピリジニウム ブロミド)-5-(ボロン酸)]-ジピリジニウム ジブロミド)(m-BBVBP)であり、図3Hは4-N-(ベンジル-3-(ボロン酸)-7-n-[ベンジル-3-(メチレン-(1-オキシ-3-(オキシベンジルビニル)-プロパン))-5-ボロン酸]-4,7-フェナントロリニウム ジブロミドであり、図3Iは4,4’-N,N’-ビス-[ベンジル-(3-メチレン-4-ビニルピリジニウム ブロミド)-5-(ボロン酸)]-4,7- フェナントロリニウム ジブロミドである。
【図4】図4A及び4Bは、それぞれ本発明の相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)ポリマーと半-IPNポリマーの構造の略図である。
【図5】図5は、HPTS-PEG(1x10-5mM)に対するm-BBVの消光能率の変化をグルコース濃度の関数として示したベンジルビオロゲン(0.001M)と4,4’-N,N’-ビス-(ベンジル-3-ボロン酸)-ジピリジニウム ジブロミド(m-BBV)との反応を現すグラフである。
【図6】図6は、HPTS-PEG(1x10-5M)に対する消光能率の変化をグルコース濃度の関数として示したオルト、メタ及びパラベンジルボロン酸ビオロゲン(BBV)(0.001M)の反応を現すグラフである。
【図7】図7は、pH7.4リン酸緩衝液中でHPTS-PEGを消光するm-BBVのスタン・ボルマー(Stern-Volmer)のプロットである。
【図8】図8は、プロセスストリーム中で用いるインビトロ測定用電極の一実施例の略図であり、かつポリマーの検出集合体の実施例を示した略図でもある。
【図9】図9は、例えばグルコース又はフルクトースのようなポリヒドロキシル有機化合物をモニターする際にプロセスストリーム中で用いる、インビトロ測定用電極の第2の実施例を示した略図である。
【図10】図10は、図9のインビトロ測定用電極の断面図であり、また図9のインビボにおけるポリマーの検出集合体を示したものでもある。
【図11】図11は、pH7.4の緩衝液中の4,7-phen-m-SBBV及びHPTS-MAのニ成分システムを、秒単位の時間に対する蛍光光度のプロットで示したグラフ図である。
【図12A】図12Aは、m-BBVの量を増加させた場合の、8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-(カルボキシプロピル スルホンアミド)(HPTS-CO2)の蛍光発光スペクトルを示したグラフ図であり、0〜1800mg/dLに関して波長(nm)に対する蛍光強度をプロットしたものである。
【図12B】図12Bは、8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-(カルボキシプロピル スルホンアミド)(HPTS-CO2)/m-BBVのグルコースに対する蛍光発光反応を示したグラフ図であり、0〜1800mg/dLに関して波長(nm)に対する蛍光強度をプロットしたものである。
【図13】図13は、8-ヒドロキシピレン-1,3,6-N,N’,N’’-(カルボキシプロピル スルホンアミド)(HPTS-CO2)をm-BBVと共に用いた場合のグルコース反応性を示したグラフ図であり、グルコース(mg/dL)に対するF/F0をプロットしたものである。
【図14】図14は、m-BBVBP及びHPTS-MAのニ成分系に関して、時間(sec)に対する蛍光強度を示したグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式
【化1】

又は
【化2】

の構造を有する化合物から選択されることを特徴とし、式中、(V)2+がジピリジル、ジピリジル エチレン、ジピリジル フェニレン、フェナントロリン又はジアザフルオレンの異性体から選択された窒素含有の複素環式芳香族基であって、窒素原子2つはそれぞれ異なる芳香環に存在し、環の全ての位置において窒素原子は4級の塩を形成することができ、かつ
Z1又はZ2
(i)-R10-CO2-C(R11)=CH2、-R10-NH-(C=O)-C(R2)=CH2、-CH2-C6H4-CH=CH2から選択された重合可能なエチレン性不飽和基であって、ここでR10は炭素数が2〜6の低アルキレン基又はヒドロキシアルキレン基を表し、R11は-H又は-CH3を表すか、又は
(ii) -R12-Z3から選択された結合基であって、ここでR12は-CH2-C6H4-又は炭素数2〜6のアルキレン基を表し、Z3は-OH、-SH、-CO2H又は-NH2を表すか、の何れかである、
組成物。
【請求項2】
下記一般式の化合物
【化3】

から選択されたことを特徴とし、式中、Xが臭素又は塩素である、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−91357(P2009−91357A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−241613(P2008−241613)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【分割の表示】特願2002−548438(P2002−548438)の分割
【原出願日】平成13年12月5日(2001.12.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】