説明

ボード部材取付構造

【課題】目地の開きを抑制しつつ、支持部材の数を低減することを目的とする。
【解決手段】上張りボード部材170A,170Bは、これらの上張りボード部材170A,170Bを下張りボード部材160A,160Bの外面に重ねたときに、端部170L,170R間に形成される縦目地176と、幅方向に隣接する下張りボード部材160A,160Bの端部160L,160R間に形成される縦目地166とが水平方向にずれるようになっている。また、幅方向に隣接する上張りボード部材170A,170Bの端部170L,170Rは、ビス173で中間スタッド120Mにそれぞれ固定されている。このビス173は、上張りボード部材170の幅方向の端部170L(又は端部170R)と、下張りボード部材160の幅方向の端部160Rを貫通し、中間スタッド120Mに留められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボード部材取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨柱を耐火ボードで被覆する耐火被覆構造としては、例えば、特許文献1が知られている。特許文献1では、重ねられた2枚の下張り面材及び上張り面材によって鉄骨柱が被覆されている。これらの下張り面材及び上張り面材は、鉄骨柱の外周に配置され、当該鉄骨柱に固定された取り付け金物にビスで固定されている。
【0003】
ここで、鉄骨柱の水平断面積が大きい等の理由により、複数の下張り面材を水平方向に並べて配置する場合、水平方向に隣接する下張り面材の間に縦目地が形成される。この場合、縦目地の開きを抑制するために、下張り面材の縦目地の周辺部と、上張り面材の縦目地の周辺部を別々の取り付け金物にビスで固定すると、取り付け金物が増加し、材料コストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−1976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、目地の開きを抑制しつつ、支持部材の数を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のボード部材取付構造は、鉄骨部材の周りを前記鉄骨部材と間隔をあけて囲む複数の下張りボード部材と、前記鉄骨部材と前記下張りボード部材との間に前記鉄骨部材の軸方向を長手方向として配置されると共に、前記下張りボード部材における前記軸方向と直交する幅方向の端部同士が突き当てられた隅部に配置され、該下張りボード部材を支持する複数のコーナー支持部材と、隣接する前記コーナー支持部材の間に前記軸方向を長手方向として配置される中間支持部材と、前記下張りボード部材の外面に重ねられる複数の上張りボード部材と、前記上張りボード部材及び前記下張りボード部材を貫通し、該上張りボード部材及び該下張りボード部材を前記中間支持部材に固定する第1固定手段と、を備え、前記第1固定手段が、前記幅方向に隣接する前記上張りボード部材の端部、及び前記幅方向に隣接する前記下張りボード部材の端部の少なくとも一方を前記中間支持部材に固定する。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、幅方向に隣接する上張りボード部材の端部、及び幅方向に隣接する下張りボード部材の端部の少なくとも一方を同一の中間支持部材に固定することにより、幅方向に隣接する上張りボード部材の端部間に形成される目地、及び幅方向に隣接する下張りボード部材の端部間に形成される目地の少なくとも一方の開きを抑制しつつ、中間支持部材の数を低減することができる。
【0008】
請求項2に記載のボード部材取付構造は、請求項1に記載のボード部材取付構造において、前記鉄骨部材が、上下方向を軸方向として配置された鉄骨柱とされている。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、下張りボード部材及び上張りボード部材で鉄骨柱を囲むことにより、鉄骨柱の耐火性能が向上する。
【0010】
請求項3に記載のボード部材取付構造は、請求項1又は請求項2に記載のボード部材取付構造において、前記第1固定手段が、前記上張りボード部材の前記端部、及び前記下張りボード部材の前記端部を前記中間支持部材に固定する。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、上張り目地を形成する上張りボード部材の端部、及び下張り目地を形成する下張りボード部材の端部を第1固定手段で同一の中間支持部材に固定することにより、上張り目地及び下張り目地の開きを抑制することができる。
【0012】
請求項4に記載のボード部材取付構造は、請求項1又は請求項2に記載のボード部材取付構造において、前記コーナー支持部材と前記中間支持部材との間に渡される被固定部材と、前記上張りボード部材及び前記下張りボード部材を貫通し、該上張りボード部材及び該下張りボード部材を前記被固定部材に固定する第2固定手段と、を備え、前記第1固定手段が、前記下張りボード部材の前記端部、及び前記上張りボード部材の前記端部の何れか一方を前記中間支持部材に固定し、前記第2固定手段が、前記下張りボード部材の前記端部、及び前記上張りボード部材の前記端部の何れか他方を前記被固定部材に固定する。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、下張り目地を形成する下張りボード部材の端部、及び上張り目地を形成する上張りボード部材の端部の何れか一方を第1固定手段で中間支持部材に固定し、下張り目地を形成する下張りボード部材の端部、及び上張り目地を形成する上張りボード部材の端部の何れか他方を第2固定手段で被固定部材に固定することにより、上張り目地及び下張り目地の開きを抑制することができる。
【0014】
請求項5に記載のボード部材取付構造は、請求項1〜4の何れか1項に記載のボード部材取付構造において、前記コーナー支持部材及び前記中間支持部材の少なくとも一方に断熱部材が設けられている。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、コーナー支持部材及び中間支持部材の少なくも一方に断熱部材を設けたことにより、火災熱等によるコーナー支持部材及び中間支持部材の少なくも一方が高い断熱効果を発揮する。従って、耐火性能が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記の構成としたので、目地の開きを抑制しつつ、支持部材の数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るボード部材取付構造が適用された柱を部分的に切り欠いて示す、斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るボード部材取付構造が適用された柱を示す、立面図(側面図)である。
【図3】図2の3−3線拡大断面図である。
【図4】(A)は図3の要部拡大断面図、(B)は図2の4B−4B線拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るボード部材取付構造の変形例が適用された柱を示す図であり、(A)は図6(A)の5A−5A線断面図、(B)は図6(B)の5B−5B線断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るボード部材取付構造の変形例が適用された柱を示す図であり、(A)は下張りボード部材を示す立面図、(B)は上張りボード部材を示す立面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るボード部材取付構造の変形例が適用された柱を示す図であり、(A)は図4(A)に相当する拡大断面図、(B)は図4(B)に相当する拡大断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るボード部材取付構造の変形例が適用された柱を示す図であり、(A)は図4(B)に相当する拡大断面図、(B)は図2に相当する要部立面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る被固定部材が適用された柱を示す図であり、(A)は要部立面図、(B)は図9(A)の9B−9B線断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る被固定部材が適用された柱を示す図であり、(A)は要部立面図、(B)は図10(A)の10B−10B線断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る被固定部材の変形例が適用された柱を示す図であり、(A)は要部立面図、(B)は被固定部材を示す斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るボード部材取付構造の変形例が適用された柱を示す、図3に相当する要部拡大断面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るボード部材取付構造の変形例が適用された柱を示す、図3に相当する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るボード部材取付構造について説明する。なお、各図において、適宜示される矢印Xは水平方向を示し、矢印Yは矢印Xで示される方向と直交する水平方向を示し、矢印Zは、矢印X及び矢印Yで示される方向と直交する鉛直方向(上下方向)を示している。
【0019】
図1〜図3には、鉄骨やコンクリート等で構成された構造物10の柱108が示されている。柱108は、鉄骨部材としての鉄骨柱112が複数のボード部材150(図1参照)で耐火被覆された構成とされている。これらのボード部材150は、当該ボード部材150と鉄骨柱112の間に配置された複数のスタッド120によって支持されている。
【0020】
なお、柱108(柱108の壁面を構成するボード部材150で囲まれた部位)の水平断面は略正方形状とされ、この柱108の断面における鉄骨柱112に向かう方向を内側方向とし、鉄骨柱112から離れる方向を外側方向として以下説明する。また、後述する柱108の4つの隅部102(図3参照)に配置されたスタッド(支持部材)120をコーナースタッド(コーナー支持部材)120Cとし、隣接するコーナースタッド120Cの間に配置されたスタッド120を中間スタッド(中間支持部材)120Mとして、両者を区別して説明する場合があるが、両者の構成は同じである。更に、隣接するコーナースタッド120Cのうち、一方(図2において、右側)をコーナースタッド120CAとし、他方(図2において、左側)をコーナースタッド120CBとして説明する場合がある。
【0021】
鉄骨柱112は、水平断面が略正方形の角形鋼管とされ、上下方向(矢印Z方向)を軸方向として配置されている。この鉄骨柱112の周囲には、複数のスタッド120が配置されている。各スタッド120は、鉄骨柱112と間隔を空け、鉄骨柱112の軸方向、即ち、上下方向(矢印Z方向)を長手方向として配置されている。隣接するスタッド120は、鉄骨柱112の軸方向と直交する幅方向(矢印X方向又は矢印Y方向)に間隔を空けて複数配置されている。言い換えると、スタッド120は、鉄骨柱112の周囲に、矢印X方向と矢印Y方向とに沿って間隔を空けて複数配置されている。なお、本実施形態では、スタッド120は軽鉄製のC形鋼とされており、その水平断面の形状は略長方形とされている。
【0022】
各スタッド120の長手方向(上下方向)の下端部は、構造物10の躯体を構成するスラブ12に設けられたランナー130に支持されている。ランナー130は、軽鉄製とされ、垂直断面が溝状(断面C形)のレールとされている。ランナー130は、鉄骨柱112の周囲に矢印X方向と矢印Y方向とに沿って配置され、図示しないビスやタップネジ等でスラブ12に固定されている。このランナー130のフランジ132に、スタッド120の下端部が図示しないビスやタップネジ等で固定されている。これと同様に、各スタッド120の長手方向(上下方向)の上端部(図示省略)は、構造物10の躯体を構成する図示しない上階のスラブや梁等の躯体に設けられたランナーに支持されている。なお、スタッド120の上端部を支持するランナーは、スタッド120の下端部を支持するランナー130と同様の構成であるため、説明を省略する。これらのランナー130等によって、各スタッド120が鉄骨柱112に対して独立して支持されている。また、隣接するスタッド120は、これらのスタッド120の間に幅方向(水平方向)を長手方向として配置された振れ止め用の横棒140によって連結されている。なお、図3では、ランナー130の図示が省略されている。
【0023】
このように鉄骨柱112の周囲に独立して立てられたスタッド120に、複数のボード部材150(図1参照)が支持されている。各ボード部材150はスタッド120の外側に配置されており、鉄骨柱112を囲んでいる。別の言い方をすると、鉄骨柱112とボード部材150との間に複数のスタッド120が配置されている。
【0024】
各ボード部材150は、内側(鉄骨柱112側)に配置された下張りボード部材160と、下張りボード部材160の外面(外側)に重ねられた仕上げ兼用の上張りボード部材170を備え、鉄骨柱112の4つの側壁にそれぞれ対向して配置されている。つまり、ボード部材150は、仕上げ兼用の耐火被覆材とされている。これらの下張りボード部材160及び上張りボード部材170に、本実施形態に係るボード部材取付構造が適用されている。
【0025】
なお、本実施形態では、下張りボード部材160は強化石膏ボードで構成され、上張りボード部材170は石膏ボードで構成されており、ボード部材150の面外方向(板厚方向)に重ねられている。ここで、石膏ボードは、石膏を主成分とした素材を板状にして特殊な用紙で包んで構成された耐火ボードであり、強化石膏ボードは石膏の芯にガラス繊維などを加えて耐火性能を強化した耐火ボードである。なお、通常、石膏は多量の結晶水を含んでおり、炎や熱に晒されると、この結晶水が蒸気として空気中に放出される。この結晶水の蒸発により熱が吸収されることによって、断熱効果が発揮される。
【0026】
また、説明の便宜上、幅方向に隣接する下張りボード部材160のうち、一方(図2において、右側)を下張りボード部材160A、他方(図2において、左側)を下張りボード部材160Bとして説明する場合がある。これと同様に、幅方向に隣接する上張りボード部材170のうち、一方(図2において、右側)を上張りボード部材170A、他方(図2において、左側)を上張りボード部材170Bとして説明する場合がある。
【0027】
図2及び図3に示されるように、下張りボード部材160A,160Bは、鉄骨柱112の各側壁に対し、幅方向(矢印X方向又は矢印Y方向)に複数(本実施形態では、2枚)並べられて配置されている。そのため、幅方向に隣接する下張りボード部材160Aの端部160L(図3参照)と下張りボード部材160Bの端部160R(図3参照)の間に、上下方向に延びる縦目地166(下張り目地)が形成されている。これと同様に、下張りボード部材160A,160Bの外面に重ねられた上張りボード部材170A,170Bは、鉄骨柱112の各側壁に対し、幅方向に複数(本実施形態では、2枚)並べられて配置されている。そのため、幅方向に隣接する上張りボード部材170Aの端部170L(図3参照)と上張りボード部材170Bの端部170R(図3参照)の間に、上下方向に延びる縦目地176(上張り目地)が形成されている。なお、上張りボード部材170A,170B及び下張りボード部材160A,160Bは、各々の縦目地166,176が水平方向にずれるように配置されている。
【0028】
図3及び図4(A)に示されるように、幅方向に隣接する下張りボード部材160A,160Bは幅が同じ又は略同じで、コーナースタッド120CAと中間スタッド120M、又はコーナースタッド120CBと中間スタッド120Mに渡って(またがって)それぞれ配置され、各々の幅方向の端部160L,160Rの端面同士が中間スタッド120Mの上で突き合わされている。そして、各下張りボード部材160A,160Bの幅方向の端部160L,160Rが、ビス164でコーナースタッド120CA(又はコーナースタッド120CB)と中間スタッド120Mに固定されている。なお、ビス164は、上下方向に間隔を空けて複数設けられており、各下張りボード部材160A,160Bの幅方向の端部160L,160Rを貫通し、コーナースタッド120CA,120CB又は中間スタッド120Mに留められている。
【0029】
また、下張りボード部材160は、鉄骨柱112の各側壁に対し、鉄骨柱112の高さに応じて上下方向に複数(本実施形態では、3枚)並べられて配置されている。そのため、上下方向に隣接する下張りボード部材160の端部160T,160Uの間に、水平方向に延びる横目地162(図2参照)が形成されている。
【0030】
また、矢印Y方向に沿って配置された下張りボード部材160Bと、矢印X方向に沿って配置された下張りボード部材160Aとは、幅方向の端部160L、160R同士が突き当てられており、鉄骨柱112を囲んでいる。具体的には、隣接する一方の下張りボード部材160Bの幅方向の端部160Lにおける側面(内面)に、隣接する他方の下張りボード部材160Aの幅方向の端部160Rにおける端面が突き当てられており、これらの端部160L,160Rによって角部104が形成されている。このように、下張りボード部材160B,160Aの幅方向の端部160L、160R同士が突き当てられて形成された柱108の4つの隅部102にコーナースタッド120CA又はコーナースタッド120CBが配置されている。
【0031】
なお、本実施形態では、向きが異なる2つのスタッド120が各隅部102に立てられており、これら2つのスタッド120によって1つのコーナースタッド120Cが構成されている。これにより、コーナースタッド120Cの剛性が増加され、下張りボード部材160及び上張りボード部材170の面外変形に対する拘束力が大きくなっている。
【0032】
また、隅部102とは、2枚の下張りボード部材160B,160Aが角度(本実施形態では、略90度)を持って配置され、突き当てられた幅方向の端部160L,160R同士によって囲まれた内側(鉄骨柱112側)の領域であり、この領域にスタッド120を立てた場合に、当該スタッド120によって下張りボード部材160B,160Aの幅方向の端部160L,160Rが支持可能となる領域を意味する。言い換えると、下張りボード部材160B,160Aの幅方向の端部160L,160R同士が突き当てられて形成された角部104によって囲まれた内側(鉄骨柱112側)の領域を意味する。なお、ここで言う下張りボード部材160B,160Aの幅方向の端部160L,160Rとは、下張りボード部材160B,160Aの幅方向の端部160L,160Rにおける端面に限らず、当該端面の周辺部(例えば、側面(内面))を含む概念である。
【0033】
図3に示されるように、鉄骨柱112を囲む複数の下張りボード部材160A,160Bの外面には、上張りボード部材170A,170Bが重ねられている。具体的には、幅方向に隣接する上張りボード部材170A,170Bは、コーナースタッド120CAと中間スタッド120M、又はコーナースタッド120CBと中間スタッド120Mに渡って(またがって)それぞれ配置され、各々の幅方向の端部170L,170Rの端面同士が中間スタッド120Mの上で突き合わされている。なお、上張りボード部材170A,170Bは幅が僅かに異なっており、上張りボード部材170A,170Bを下張りボード部材160A,160Bの外面に重ねたときに、上張りボード部材170A,170B間の縦目地176と下張りボード部材160A,160B間の縦目地166とが水平方向に僅かにずれるようになっている。別の言い方をすると、上張りボード部材170A,170B間の縦目地176と下張りボード部材160A,160B間の縦目地166とが近接するようになっている。
【0034】
ここで、図4(B)に示されるように、幅方向に隣接する上張りボード部材170A,170Bの端部170L,170R、即ち、縦目地176(上張り目地)を形成する端部170L,170Rは、第1固定手段としてのビス173で中間スタッド120Mに固定されている。このビス173は、上張りボード部材170の幅方向の端部170L(又は端部170R)と、下張りボード部材160の幅方向の端部160Rを貫通し、中間スタッド120Mに留められている。即ち、縦目地176を形成する上張りボード部材170Aの幅方向の端部170R(又は上張りボード部材170Bの幅方向の端部170L)と、縦目地166を形成する下張りボード部材160Bの幅方向の端部160Rとが、ビス173で同一の中間スタッド120Mに固定されている。これにより、縦目地176,166の開きが抑制されている。
【0035】
また、図4(B)に示されるように、上張りボード部材170Aの幅方向の端部170R、及び上張りボード部材170Bの幅方向の端部170Lは、ビス174でコーナースタッド120CA,120CBにそれぞれ固定されている。なお、ビス174は、上張りボード部材170Aの幅方向の端部170R及び下張りボード部材160Aの幅方向の端部160Rを貫通し、コーナースタッド120CAに留められ、若しくは上張りボード部材170Bの幅方向の端部160L及び下張りボード部材160Bの幅方向の端部160Lを貫通し、コーナースタッド120CBに留められている。
【0036】
なお、本実施形態では、上張りボード部材170Aの幅方向の端部170Lを中間スタッド120Mに固定するビス173が、下張りボード部材160Bの幅方向の端部160Rを貫通しているが、下張りボード部材160Aの幅方向の端部160Lを貫通しても良い。また、上張りボード部材170A,170Bは、下張りボード部材160A,160Bの外面に塗布された接着剤等で下張りボード部材160A,160Bに接着しても良いし、ドリリングタッピンねじやステープル等で下張りボード部材160A,160Bに固定しても良い。
【0037】
また、上張りボード部材170A,170Bは、鉄骨柱112の各側壁に対し、上下方向に複数(本実施形態では、3枚)並べられて配置されており、上下方向に隣接する上張りボード部材170A,170Bの端部170T,170U間に水平方向に延びる横目地172が形成されている。なお、下張りボード部材160A,160B及び上張りボード部材170A,170Bは、各々の横目地162、172(図2参照)が上下方向(鉛直方向)にずれるように配置されている。
【0038】
また、矢印Y方向に沿って配置された上張りボード部材170Bと、矢印X方向に沿って配置された上張りボード部材170Aとは、幅方向の端部170L、170R同士が突き当てられており、鉄骨柱112を囲んでいる。具体的には、隣接する一方の上張りボード部材170Aの幅方向の端部170Rにおける側面に、隣接する他方の上張りボード部材170Bの幅方向の端部170Lおける端面が突き当てられ、角部106が形成されている。
【0039】
なお、隣接する一方の上張りボード部材170Aの端部170Rにおける側面には、隣接する他方の上張りボード部材170Bの端部170Lにおける端面だけでなく、下張りボード部材160Bの幅方向の端部160Lにおける端面も突き当てられている。また、前述した下張りボード部材160A,160Bの幅方向の端部160L,160R、及び上張りボード部材170A,170Bの幅方向の端部170L,170R同士の突き当て方は、あくまでも一例であってこれに限定されるものではない。
【0040】
また、図示を省略するが、下張りボード部材160A,160B及び上張りボード部材170A,170Bと、スラブ12及び上階のスラブ(図示省略)との間には、隙間ができないようにロックウールや耐火シール材等の耐火性能を有する目地材を挟むことで、耐火性や遮音性をさらに高めることが可能である。
【0041】
次に、本実施形態に係るボード部材取付構造の作用について説明する。
【0042】
構造物10の柱108を構成する鉄骨柱112の周囲をボード部材150(図1参照)で囲んで耐火被覆を施すことにより、火災時における鉄骨柱112の温度上昇が抑えられる。その結果、火災時における鉄骨柱112の耐力低下や熱膨張の影響が抑えられる。また、下張りボード部材160A,160Bの外面に仕上げ兼用の上張りボード部材170A,170Bを重ねたことにより、耐火性能を向上しつつ、柱108の仕上げ材等を省略することができる。
【0043】
更に、鉄骨柱112の周囲に配置されたスタッド120でボード部材150を支持したことにより、鉄骨柱112の外面に接着剤等でボード部材150を直接接合する構成と比較して、ボード部材150を精度良く施工することができる。従って、ボード部材150の施工(鉄骨柱112の耐火被覆)と壁等の内装工事とを同一の業者で行うことが可能となる。また、スタッド120は、鉄骨柱112と間隔を空けて配置され、スラブ12等に設けられたランナー130等によって鉄骨柱112から独立して支持されている(図1参照)。従って、鉄骨柱112の外面に沿ってスタッド120を溶接等で接合する構成と比較して、鉄骨柱112の精度に依存することなく、スタッド120を精度良く設置することができる。
【0044】
また、鉄骨柱112にロックウール等の吹付け材(耐火被覆材)を吹付け、その周りを仕上げ用のボードで囲った構造と比較し、本実施形態のように、吹付け材を省略し、鉄骨柱112の周りを耐火被覆材と仕上げ材とを兼用したボード部材150で囲む構造とすることで、ボード部材150で囲まれた軸方向と直交する断面(柱100の水平断面)の仕上げ幅が抑えられ、その結果、居室の有効面積を大きくすることができる。
【0045】
ここで、強化石膏ボード及び石膏ボードを構成する石膏は多量の結晶水を含んでおり、炎や熱に晒されると、結晶水が蒸気として空気中に放出される。この結晶水の蒸発によって、熱が吸収されて断熱効果を発揮する。これと同様に、石膏ボードで構成された上張りボード部材170A,170Bは、その結晶水が蒸発することによって耐熱効果を発揮するが、この場合、炎や熱に晒される外面側から温度が上昇して結晶水が蒸発される。この結果、上張りボード部材170A,170Bの外面側が収縮する。これにより、図4(B)に示される想像線(二点破線)のように、幅方向に隣接する上張りボード部材170A,170Bの端部170L,170Rが外側に向かって湾曲するように変形し(反り)、これらの端部170T,170U間に形成された縦目地176が開いて、弱点となる恐れがある。なお、強化石膏ボードで構成された下張りボード部材160A,160Bについても同様である。
【0046】
この対策として、本実施形態では、図4(A)及び図4(B)に示されるように、幅方向に隣接する上張りボード部材170A,170Bの端部170L,170Rをビス173で中間スタッド120Mに固定したことにより、これらの端部170L,170R間に形成される縦目地176の開きが抑制される。これにより、縦目地176から柱108の内部へ浸入する熱気や炎等が低減される。また、縦目地176付近の下張りボード部材160A,160Bの露出が抑制されるため、下張りボード部材160A,160Bの温度上昇が低減される。更に、ビス173によって、上張りボード部材170A,170Bだけでなく、下張りボード部材160Bも中間スタッド120Mに固定されるため、下張りボード部材160Bの支持性能が向上する。
【0047】
更に、上張りボード部材170A,170B間の縦目地176と、下張りボード部材160A,160B間の縦目地166とを近接させたことにより、新たな中間スタッド120Mを設けずに、縦目地176を形成する上張りボード部材170A,170Bの端部170L,170Rと、縦目地166を形成する下張りボード部材160A,160Bの端部160L,160Rとを同一の中間スタッド120Mに固定することができる。このように本実施形態に係る耐火ボード取付構造によれば、縦目地166,176の開きを抑制しつつ、中間スタッド120Mの数を低減することができる。従って、コスト削減を図ることができる。
【0048】
次に、上記実施形態に係る耐火ボード取付構造の変形例について説明する。
【0049】
上記実施形態では、上張りボード部材170A,170B間の縦目地176と、下張りボード部材160A,160B間の縦目地166とを水平方向にずらしたが、これに限らない。例えば、図5(A)及び図5(B)に示されるように、上張りボード部材170A,170B間の縦目地176と、下張りボード部材160A,160B間の縦目地166を重ねても良い。
【0050】
このように、縦目地176と縦目地166を同じ位置にそろえても、新たな中間スタッド120Mを設けずに、縦目地176を形成する上張りボード部材170A,170Bの端部170L,170Rと、縦目地166を形成する下張りボード部材160A,160Bの端部160L,160Rとを同一の中間スタッド120Mに固定することができる。また、同じサイズ(規格)の上張りボード部材170A,170B及び下張りボード部材160A,160Bを用いることができるため、施工性の向上、コスト削減を図ることができる。
【0051】
なお、図6(A)及び図6(B)に示されるように、下張りボード部材160A,160Bを固定するビス164と上張りボード部材170A,170Bを固定するビス173とは、立面視にて上下方向にずれており、ビス164とビス173とが上下方向に交互に配列されている。これにより、上張りボード部材170A,170Bにビス173を打ち込む際に、下張りボード部材160A,160Bのビス164が干渉しないため、施工性が向上する。
【0052】
一方、前述した図4(A)及び図4(B)に示す構成では、上張りボード部材170A,170B間の縦目地176と、下張りボード部材160A,160B間の縦目地166とが水平方向にずれているため、縦目地176と縦目地166とが重なる本変形例よりも縦目地176から柱108の内部へ侵入する熱気や炎等の侵入経路が長くなる。従って、鉄骨柱112の温度上昇が抑制されるため、耐火性能が向上する。
【0053】
また、上記実施形態では、幅方向に隣接する上張りボード部材170Bの端部170R(又は上張りボード部材170Aの端部170L)と下張りボード部材160Bの端部170Rをビス173で同一の中間スタッド120Mに固定したが、これに限らない。例えば、図7(A)及び図7(B)に示されるように、上張りボード部材170Aの幅方向の端部170L以外の部位(上張りボード部材170Aの幅方向の中間部)と、下張りボード部材160Aの幅方向の端部160Lを第1固定手段としてのビス175で中間スタッド120Mに固定しても良い。なお、図7(A)及び図7(B)は、縦方向(高さ方向)の異なる位置における切断面を示している。
【0054】
具体的には、幅方向に隣接する上張りボード部材170A,170Bは幅が異なっており、隣接する幅方向の端部170L,170Rの端面同士が、コーナースタッド120CBと中間スタッド120Mの間で突き合わせられている。即ち、縦目地176を形成する上張りボード部材170A,170Bの幅方向の端部170L,170Rが、中間スタッド120Mから離れた位置に配置されている。そのため、上張りボード部材170A,170B間の縦目地176と下張りボード部材160A,160B間の縦目地166とが、上記実施形態(図3参照)よりも水平方向に大きくずれている。そして、中間スタッド120M上に配置された上張りボード部材170Aの部位、即ち、上張りボード部材170Aにおける中間スタッド120Mと対向する部位が、ビス175で中間スタッド120Mに固定されている。このビス175は、上張りボード部材170Aにおける中間スタッド120Mと対向する部位を貫通すると共に、下張りボード部材160Aの幅方向の端部160Lを貫通し、中間スタッド120Mに留められている。なお、縦目地176を形成する上張りボード部材170A,170Bの端部170L,170Rは、接着剤、ドリリングタッピンねじ、ステープル等で下張りボード部材160に固定しても良い。
【0055】
このように、上張りボード部材170A,170B間の縦目地176と下張りボード部材160A,160B間の縦目地166とを水平方向に大きくずらしたことにより、縦目地166と縦目地176が重なる構成と比較して、縦目地176から柱108の内部へ浸入する熱気や炎等の浸入経路が更に長くなるため、耐火性能が向上する。
【0056】
また、上張りボード部材170Aにおける中間スタッド120Mと対向する部位をビス175で中間スタッド120Mに固定したことにより、縦目地176の開きが抑制される。詳説すると、縦目地176は、火災熱等によって水平方向に隣接する上張りボード部材170A,170Bに収縮や反りが生じ、突き合わせられた端部170L,170Rが移動する(離れる)ことにより開かれる。この場合、一般に、幅が長い上張りボード部材170Aの端部170Lの移動量が、幅が短い上張りボード部材170Bの端部170Rの移動量よりも大きくなる。これに対して本変形例では、上張りボード部材170Aにおける中間スタッド120Mと対向する部位をビス175で中間スタッド120Mに固定したことにより、上張りボード部材170Aの幅を短くした場合と同様の効果を得ることができる。従って、上張りボード部材170Aの端部170Lの移動量が小さくなるため、縦目地176の開きが抑制される。
【0057】
なお、図8(A)及び図8(B)に示されるように、下張りボード部材160A,160B間の縦目地166の位置と、上張りボード部材170A,170B間の縦目地176の位置を入れ替え、幅方向に隣接する上張りボード部材170A,170Bの端部170L,170Rをビス175で中間スタッド120Mにそれぞれ固定することも可能である。この場合、ビス175は、上張りボード部材170Aの端部170L(又は上張りボード部材170Bの端部170R)と、中間スタッド120M上に配置された下張りボード部材160Aの部位、即ち、下張りボード部材160Aにおける中間スタッド120Mと対向する部位とを貫通し、中間スタッド120Mに留められている。以上のように、ビス175は、上張りボード部材170及び下張りボード部材160を貫通し、且つ、幅方向に隣接する上張りボード部材170A,170Bの端部170L,170R、及び幅方向に隣接する下張りボード部材160A,160Bの端部160L,160Rの少なくとも一方を貫通していれば良い。
【0058】
次に、隣接する中間スタッド120Mとコーナースタッド120CBに被固定部材を渡し、当該被固定部材に縦目地176を形成する上張りボード部材170A,170Bの幅方向の端部170L,170Rを固定しても良い。具体的には、図9(A)及び図9(B)に示されるように、被固定部材121は帯状の板材で、水平方向を長手方向として隣接するコーナースタッド120Cと中間スタッド120Mの間に渡されている。被固定部材121はスチール材若しくは軽鉄材で構成された薄型のフラットプレートとされている。また、被固定部材121の長手方向の端部は、下張りボード部材160とコーナースタッド120Cの間、又は下張りボード部材160と中間スタッド120Mの間に配置され、ビス123でコーナースタッド120C又は中間スタッド120Mに固定されている。
この被固定部材121に、幅方向に隣接する上張りボード部材170A,170Bの端部170L,170Rが、第2固定手段としてのビス180で固定されている。なお、ビス180は、上張りボード部材170Aの端部170L(又は上張りボード部材170Bの端部170R)、及び下張りボード部材160Bを貫通し、被固定部材122に留められている。
【0059】
このように、隣接するコーナースタッド120CBと中間スタッド120Mに被固定部材122を渡すことにより、コーナースタッド120CB及び中間スタッド120Mの剛性が増加するため、上張りボード部材170A,170B及び下張りボード部材160A,160Bの面外変形(例えば、反り等)に対する拘束力が大きくなる。また、幅方向に隣接する上張りボード部材170の端部170L,170Rを被固定部材122に固定したことにより、縦目地176の開きが抑制される。従って、鉄骨柱112の耐火性能が更に向上する。しかも、新たな中間スタッド120M等を設けずに、縦目地176を形成する上張りボード部材170の端部170L,170Rの固定部を増加することができるため、コスト削減を図ることができる。
【0060】
なお、図9(A)及び図9(B)に示す構成では、被固定部材121をフラットプレートで構成したが、これに限らない。例えば、図10(A)及び図10(B)に示されるように、エンボス加工によって表面に複数の凹部122Aが形成された被固定部材122を用いても良い。このように被固定部材122の表面に凹部122A(凹凸)を形成し、面外に対する剛性を増加することにより、下張りボード部材160及び上張りボード部材170の面外変形に対する拘束力を高めることができる。
【0061】
更に、被固定部材としては、図11(A)及び図11(B)に示されるように、コーナースタッド120CBと中間スタッド120Mの間にブレース状の被固定部材126を設けても良い。この被固定部材126は断面C形で、コーナースタッド120CBと中間スタッド120Mの間に斜め方向に渡されており、その両端部がコーナースタッド120CB及び中間スタッド120Mにビス128で固定されている。なお、コーナースタッド120CBを構成する一方のスタッド120には、被固定部材126の一端部が配置される切り欠き部134が形成されている。これと同様に、中間スタッド120Mについても被固定部材126の他端部が配置される切り欠き部(図示省略)が形成されている。
【0062】
このようにコーナースタッド120CBと中間スタッド120Mの間に被固定部材126をブレース状に渡すことにより、コーナースタッド120CB及び中間スタッド120Mの剛性を更に向上することができる。
【0063】
なお、被固定部材122、126には、縦目地176を形成する上張りボード部材170の端部170L,170Rの以外の部位を固定しても良い。特に、上下方向に隣接する上張りボード部材170A,170Bの端部170T,170Uを第2固定手段としてのビス175で固定することにより、横目地172の開きも抑制することができる。特に、横目地172を形成する上張りボード部材170の端部170T,170Uをビス175で被固定部材122、126に固定することにより、鉄骨柱112の耐火性能を効率的に向上することができる。詳説すると、鉄骨柱112は、火災熱等によって加熱されると、熱膨張して軸方向(上下方向)に伸張する。この鉄骨柱112の軸方向の伸張に下張りボード部材160及び上張りボード部材170が追従すると、横目地172等の開きが大きくなる。このように弱点となり易い横目地172を形成する上張りボード部材170の端部170T,170Uをビス175で被固定部材122、126に固定したことにより、鉄骨柱112の耐火性能を効率的に向上することができる。
【0064】
また、図8(A)に示されるように、上張りボード部材170A,170B間の縦目地176と下張りボード部材160A,160B間の縦目地166の位置を入れ替えた場合は、縦目地176を形成する上張りボード部材170A,170Bの端部170L,170Rを第1固定手段としてのビス175で中間スタッド120Mに固定し、縦目地166を形成する下張りボード部材160A,160Bの端部160L,160Rを第2固定手段としてのビス180で被固定部材122,126に固定することにより、縦目地166,176の開きを抑制することができる。
【0065】
また、被固定部材122,126の数や配置は上記したものに限らず、必要に応じて適宜変更可能である。例えば、隣接するコーナースタッド120CAと中間スタッド120Mとの間に被固定部材122,126を渡しても良い。また、被固定部材122、126の形状も上記したものに限らず、例えば、板材、リブ付き板材、断面C形、断面ボックス形、断面H形等でも良い。
【0066】
また、上記実施形態において、コーナースタッド120CA,120CB、及び中間スタッド120Mに、ロックウール、モルタル、石膏ボード等の材料等の断熱部材を設けても良い。具体的には、図12に示されるように、コーナースタッド120CAを構成する2つのスタッド120の中には、グラスウール136が充填されている。これにより、スタッド120が高い断熱効果を発揮する。従って、角部104,106に形成された縦目地が開いた際の耐熱性能が向上する。
【0067】
なお、スタッド120の周囲をグラスウールやモルタル等の断熱部材で覆っても同様の効果を得ることができる。要はスタッド120に断熱部材が設けられ、スタッド120の断熱効果が向上されていれば良い。また、断熱部材は、コーナースタッド120CA,120CB、及び中間スタッド120Mの少なくも一方に設けることができる。
【0068】
次に、上記実施形態では、コーナースタッド120Cを構成する2つのスタッド120のうち、一方のスタッド120に下張りボード部材160及び上張りボード部材170をビス174で固定したが、他方のスタッド120にも下張りボード部材160及び上張りボード部材170をビス174で固定しても良い。即ち、コーナースタッド120Cを構成する2つのスタッド120の少なくとも一方に、下張りボード部材160及び上張りボード部材170がビス174で固定されていれば良い。なお、本実施形態における他方のスタッド120は、下張りボード部材160に接触(当接)することにより、下張りボード部材160及び上張りボード部材170を支持している。また、コーナースタッド120Cは、前述したように2つの以上のスタッド120で構成しても良いし、図13に示されるように、1つのスタッド120で構成しても良い。更に、中間スタッド120Mは、鉄骨柱112の水平断面積に応じて設ければ良く、その配置や数は適宜変更可能である。
【0069】
また、上記実施形態では、スタッド120は、鉄骨柱112と間隔を空けて配置されていたが、これに限定されない。スタッド120と鉄骨柱112との間にスペーサが挟まれていても良い。或いは、スタッド120の長手方向の一部又は全部が鉄骨柱112と接触していても良い。ただし、スペーサが挟まれたり接触したりする構造であっても、施工性の観点からスタッド120は鉄骨柱112から独立して支持された構造とすることが望ましい。
【0070】
更に、上記実施形態では、支持部材として断面C字形状のスタッド120を用いたが、これに限定されない。例えば、正方形、円形(楕円を含む)、管状、或いは断面H形状等の支持部材を用いても良い。特に、図3に示されるように、縦目地176と縦目地166を近接させた構成では、幅(矢印X方向又は矢印Y方向の長さ)の大きな中間スタッド120Mを用いても良い。これにより、施工性が向上する。更に、スタッド120は、スラブ12に設けられたランナー130等で支持されているが、これに限定されない。スタッド120の支持構造は、どのような支持構造でも良く、例えば、断面L字状等のアングルをスラブ12や梁に設け、このアングルにスタッド120を固定しても良い。
【0071】
また、上記実施形態では、ボード部材150(図1参照)は、下張りボード部材160及び上張りボード部材170の2枚のボードを面外方向(板厚方向)に重ねた構成としたが、これに限定されない。ボード部材150は、少なくも2枚のボード部材を重ねた構成であれば良く、例えば、上張りボード部材170の外面に更に1枚以上のボードを重ねても良いし、スタッド120に支持された1枚以上のボードの外面に下張りボード部材160及び上張りボード部材170を重ねて構成しても良い。
【0072】
更に、上記実施形態では、ボード部材150を構成する下張りボード部材160及び上張りボード部材170は、石膏ボード(正確には、下張りボード部材160は繊維補強された強化石膏ボード)で構成されていたが、これに限定されない。石膏ボード以外の耐火ボード、例えば、繊維混入けい酸カルシウム板、モルタルボード、ロックウールボード、セラミックファイバーボード、PC板、ALCパネル、押し出し成形セメント板等で構成されていても良い。これらの耐火ボードには、火災時にそれぞれの特性に応じた伸縮や反り、破損等が生じるが、上記実施形態に係るボード部材取付構造を適用することで、支持性能を向上することができる。また、ボード部材が耐火ボード以外のボード(化粧板など)で構成されていても良い。或いは、ボード部材が複数枚のボードで構成されている場合は、耐火ボードと耐火ボード以外のボードとを組み合わせた構成であっても良い。
【0073】
また、上記実施形態では、鉄骨柱112の水平断面が略矩形状(略長方形又は略正方形)の鋼管であったが、これに限定されない、例えば、円形の鋼管やH形鋼等であっても良い。また、管状の鉄骨柱(鋼管柱)であれば、その中にコンクリートやモルタル等が充填されていても良い。
【0074】
更に、鉄骨柱112とボード部材150との間に、スタッド120以外の他の部材が配置されていても良い。例えば、鉄骨柱112とボード部材150との間にグラスウールなどの断熱材が配置されていても良い。別の言い方をすると、鉄骨柱112の周りにグラスウールなどの断熱材が巻かれ、この断熱材の外側をボード部材150で囲んだ(耐火被覆した)構造としても良い。また、柱108の水平断面は、略矩形状(略長方形又は略正方形)であったが、三角形や五角形以上の多角形状であっても良い。或いは、一部又は全部の辺が湾曲した形状であっても良い。
【0075】
また、上記実施形態では、鉄骨コンクリート構造の構造物を構成する鉄骨柱の耐火構造を例に説明したが、これに限定されない。例えば、鉄骨コンクリート構造等の鉄骨構造や鉄骨鉄筋構造の構造物を構成する鉄骨部材の耐火構造にも適用することができる。また、複合耐火構造(例えば、鉄骨柱を壁と耐火ボードで囲む耐火構造)にも適用可能である。更に、鉄骨梁の耐火構造にも適用することができる。なお、鉄骨梁の構造は、上記実施形態で説明した鉄骨柱112の構造を90°傾けた構造と略同様であり、鉄骨梁の軸方向は、水平方向又は略水平方向となる。この場合、上下方向(幅方向)に隣接する上張りボード部材の端部間に形成された水平方向に延びる横目地が上張り目地となり、上下方向(幅方向)に隣接する下張りボード部材の端部間に形成された水平方向に延びる横目地が下張り目地となる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
102 隅部
112 鉄骨柱(鉄骨部材)
120C コーナースタッド(コーナー支持部材)
120CA コーナースタッド(コーナー支持部材)
120CB コーナースタッド(コーナー支持部材)
120M 中間スタッド(中間支持部材)
121 被固定部材
122 被固定部材
126 被固定部材
136 グラスウール(断熱部材)
153 ビス(第1固定手段)
155 ビス(第1固定手段)
160 下張りボード部材
160A 下張りボード部材
160B 下張りボード部材
170 上張りボード部材
170A 上張りボード部材
170B 上張りボード部材
180 ビス(第2固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨部材の周りを前記鉄骨部材と間隔をあけて囲む複数の下張りボード部材と、
前記鉄骨部材と前記下張りボード部材との間に前記鉄骨部材の軸方向を長手方向として配置されると共に、前記下張りボード部材における前記軸方向と直交する幅方向の端部同士が突き当てられた隅部に配置され、該下張りボード部材を支持する複数のコーナー支持部材と、
隣接する前記コーナー支持部材の間に前記軸方向を長手方向として配置される中間支持部材と、
前記下張りボード部材の外面に重ねられる複数の上張りボード部材と、
前記上張りボード部材及び前記下張りボード部材を貫通し、該上張りボード部材及び該下張りボード部材を前記中間支持部材に固定する第1固定手段と、
を備え、
前記第1固定手段が、前記幅方向に隣接する前記上張りボード部材の端部、及び前記幅方向に隣接する前記下張りボード部材の端部の少なくとも一方を前記中間支持部材に固定するボード部材取付構造。
【請求項2】
前記鉄骨部材が、上下方向を軸方向として配置された鉄骨柱とされている請求項1に記載のボード部材取付構造。
【請求項3】
前記第1固定手段が、前記上張りボード部材の前記端部、及び前記下張りボード部材の前記端部を前記中間支持部材に固定する請求項1又は請求項2に記載のボード部材取付構造。
【請求項4】
前記コーナー支持部材と前記中間支持部材との間に渡される被固定部材と、
前記上張りボード部材及び前記下張りボード部材を貫通し、該上張りボード部材及び該下張りボード部材を前記被固定部材に固定する第2固定手段と、
を備え、
前記第1固定手段が、前記下張りボード部材の前記端部、及び前記上張りボード部材の前記端部の何れか一方を前記中間支持部材に固定し、
前記第2固定手段が、前記下張りボード部材の前記端部、及び前記上張りボード部材の前記端部の何れか他方を前記被固定部材に固定する請求項1又は請求項2に記載のボード部材取付構造。
【請求項5】
前記コーナー支持部材及び前記中間支持部材の少なくとも一方に断熱部材が設けられている請求項1〜4の何れか1項に記載のボード部材取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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