ボーリング加工方法及びボーリング加工装置
【課題】シリンダボアの円筒度を高めることのできるボーリング加工方法を提供する。
【解決手段】外周面4aより突出させた中仕上げ用切れ刃7と仕上げ用切れ刃8を有した工具3をシリンダブロック1のシリンダボア2内に挿入し、該工具3をシリンダボア2内で回転させながら上下動させて前記切れ刃7、8でボア内壁面2aを切削する。シリンダブロック1のシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かってボア内壁面2aを切削加工するに際して、工具3を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ行くに従って上昇させる。
【解決手段】外周面4aより突出させた中仕上げ用切れ刃7と仕上げ用切れ刃8を有した工具3をシリンダブロック1のシリンダボア2内に挿入し、該工具3をシリンダボア2内で回転させながら上下動させて前記切れ刃7、8でボア内壁面2aを切削する。シリンダブロック1のシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かってボア内壁面2aを切削加工するに際して、工具3を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ行くに従って上昇させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関エンジンのシリンダボア内を切削するボーリング加工方法及びボーリング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関エンジンの燃焼室加工は、ボーリング加工と、その後に行うホーニング加工とからなる(例えば、特許文献1参照)。ボーリング加工は、鋳造後の素材を皮むきするラフボーリング加工工程と、その後の仕上げを目的とするファインボーリング加工工程の2工程からなる。
【0003】
ファインボーリング加工工程は、ラフボーリング加工で加工されたボア内壁面の幾何精度(円筒度、真円度)・面粗度を上げるための加工であり、中仕上げ加工と、仕上げ加工からなる。中仕上げ加工は、外周面から突出させた中仕上げ用切れ刃を備えた工具をシリンダボア内で回転させながらシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かって下降させてボア内壁面を切削する。仕上げ加工は、中仕上げ加工終了後に中仕上げ用切れ刃よりも仕上げ用切れ刃を外周面から突出させた状態とした工具を回転させながらオイルパン取り付け面側からシリンダーヘッド取り付け面側に向かって上昇させてボア内壁面を切削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−114236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ファインボーリング加工工程のうち中仕上げ加工終了時には、切削熱によりシリンダボア内に温度分布が生じる。中仕上げ加工は、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かって加工するため、加工中に発生した熱はシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ熱伝導する。これは、熱は高い方から低い方へ伝導するためである。
【0006】
そのため、中仕上げ加工完了直後、シリンダーヘッド取り付け面側の温度は低く、オイルパン取り付け面側の温度は高くなる。また、シリンダボア周囲の肉厚は、ウオータージャケットがシリンダボア近傍に設けられていることから均一になっていない。そのため、シリンダボア近傍の肉厚のバラツキにより、円周方向で温度分布が均一にならない。
【0007】
このような温度分布を持ったシリンダボアに対して仕上げ加工を行うと、オイルパン取り付け面側ではシリンダーヘッド取り付け面側に比べてボア内径が大きくなることから切削取り代が少なくなり、これに比べてシリンダーヘッド取り付け面側ではボア内径が小さくなることから切削取り代が多くなり、シリンダボアの円筒度が悪化する。また、シリンダボアの円周方向で正味取り代が変化し、真円度が悪化してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、シリンダボアの円筒度及び真円度を高めることのできるボーリング加工方法及びボーリング加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のボーリング加工方法では、シリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工するに際して、工具を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させる。
【0010】
本発明のボーリング加工装置では、工具を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させる工具回転速度制御手段を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のボーリング加工方法によれば、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工すると、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ切削熱が伝導し、オイルパン取り付け面側がシリンダーヘッド取り付け面側よりも温度が高くなる。このような温度分布を持つシリンダボアに対して、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工する際に、工具を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させると、周速が増加するに連れてシリンダブロックへ流入する熱量は徐々に減少するため、オイルパン取り付け面側に行く程、シリンダブロックへ流入する熱量が減少し、シリンダボア内付近の温度分布をシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に亘って均一化することができる。したがって、シリンダボア内付近の温度分布を均一な状態として切削加工すれば、ボア内壁面の切削により取り代も均一になり、シリンダボアの円筒度を高めることができる。
【0012】
本発明のボーリング加工装置によれば、工具を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させる工具回転速度制御手段を備えているので、周速が増加するに連れてシリンダブロックへ流入する熱量は徐々に減少することから、オイルパン取り付け面側での入熱が抑制されることになり、結果としてシリンダボア内付近の温度分布をシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に亘り均一なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1はシリンダブロックの平面図である。
【図2】図2は実施形態1のボーリング加工方法を示し、シリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工するに際して、工具を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させる例を示す図である。
【図3】図3(A)は工具を回転させる周速を一定としてシリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工した後の温度分布を示す図、図3(B)は実施形態1のボーリング加工方法によって工具を回転させる周速をシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させてボア内壁面を切削加工した後の温度分布を示す図である。
【図4】図4は実施形態1のボーリング加工方法を示し、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ工具を進入させて行く距離と、工具の周速の関係を示す図である。
【図5】図5は実施形態1のボーリング加工方法を示し、工具の周速とシリンダブロックへの流入熱量の関係を示す図である。
【図6】図6は実施形態2のボーリング加工方法を示し、オイルパン取り付け面側で工具の周速を更に加速させることを示す図である。
【図7】図7は実施形態3のボーリング加工方法で使用するシリンダブロックの要部拡大平面図である。
【図8】図8は実施形態3のボーリング加工方法を示し、シリンダボア周辺の肉厚がばらついているシリンダブロックに対してボーリング加工する時のシリンダボア外周位置とその時の工具の周速との関係を示す図である。
【図9】図9は実施形態3のボーリング加工方法を示し、加工後のシリンダボア周辺の温度分布を示す図である。
【図10】図10は実施形態4のボーリング加工方法を示し、シリンダボアの孔形状をシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってその孔径を次第に広げた末広がり形状とした例を示す図である。
【図11】図11は実施形態5のボーリング加工方法を示し、ウオータージャケットに冷却媒体を供給しながら切削加工する例を示す図である。
【図12】図12は実施形態6のボーリング加工方法を示し、流路内に冷却媒体を循環させた工具でシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ切削加工を進めるのに伴って前記流路内に導入する冷却媒体の導入量を増加させる例を示す図である。
【図13】図13は実施形態6のボーリング加工方法を示し、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ工具を進入させて行く距離と、冷却媒体の供給流量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
「実施形態1」
先ず、ボーリング加工される被対象物とその加工装置を説明する。図1は本発明方法によりボーリング加工されるシリンダブロックの平面図である。図1のシリンダブロック1は、自動車用の4気筒エンジンである。このシリンダブロック1には、シリンダボア2と、そのシリンダボア2の近傍に開口するウオータージャケット9とが形成されている。本実施形態では、シリンダーヘッド1の各シリンダボア2におけるボア内壁面2aを、中仕上げ加工と仕上げ加工を順次行って幾何精度(円筒度、真円度)・面粗度を上げるファインボーリング加工に、本発明方法を適用する。
【0016】
ファインボーリング加工に使用するボーリング加工装置は、切れ刃を備えた工具3と、この工具3を回転させる周速を制御する工具回転速度制御手段である回転制御部10と、を有して構成されている。
【0017】
前記工具3は、図2に示すように、シリンダボア2内に挿入される工具本体4と、この工具本体4を図示を省略するボーリング加工装置の回転機構部にチャッキングさせる装着部5とを有している。この工具3は、ボーリング加工装置により周方向に回転すると共に上下方向に移動自在とされる。
【0018】
工具本体4は、軸方向の略中央部分に凹み6を有した円柱体として形成され、その外周面4aの下端寄りの位置に2つの切れ刃7、8を有している。これら切れ刃7、8のうち、一方が中仕上げ用切れ刃7で他方が仕上げ用切れ刃8とされている。なお、本実施形態では、工具本体4の略中央部分に凹み6を形成しているが、前記凹み6は工具によっては有るものと無いものがあり、特に凹み6に本発明が限定されるものではない。
【0019】
中仕上用切れ刃7と仕上げ用切れ刃8は、何れも工具本体4に対して刃先が外周面4aから突出する位置と没する位置とに出没自在に取り付けられている。中仕上げ加工時には、中仕上げ用切れ刃7が仕上げ用切れ刃8よりも径方法で突出した状態にあり、仕上げ用切れ刃8は中仕上げ用切れ刃7よりも内側の位置にいる。一方、仕上げ加工時には、仕上げ用切れ刃8が中仕上げ用切れ刃7よりも径方向で突出した状態にあり、中仕上げ用切れ刃8は仕上げ用切れ刃8よりも内側の位置にいる。
【0020】
装着部5は、工具本体4よりも大径の高さの低い円柱体として形成されており、該工具本体4と一体化されている。この装着部5は、図示を省略するボーリング加工装置のチャッキング部に装着固定される。
【0021】
次に、本発明を適用したファインボーリング加工方法について説明する。ファインボーリング加工工程前のラフボーリング加工工程で荒削りしたシリンダボア2内に、中仕上げ用切れ刃7を仕上げ用切れ刃8に対して工具本体4の外周面4aから突出させた工具3を回転させながら挿入し、シリンダブロック1のシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ向かって下降させる。この時、工具3を回転させる周速を一定としてボア内壁面2aを切削すると、中仕上げ用切れ刃7がボア内壁面2aを切削する時に生じた熱がシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへと伝導されることになる。この時のシリンダボア2内付近の温度分布を等温線で表すと、図3(A)で示すように、シリンダーヘッド取り付け面側Hで温度が低くオイルパン取り付け面側Kで温度が高くなる。
【0022】
そこで、本実施形態1では、前記した回転制御部10が指令を出して工具3を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ行くに従って上昇させる。この時のシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ工具3を進入させて行く距離と、工具3の周速の関係を図4に示す。図4では、工具3のシリンダボア2内への進入距離と工具3の周速とをほぼ定量(リニア)にて増加させている。
【0023】
工具3の周速を低(小)から高(大)へと増加せて行くと、図5に示すように、周速が増すにつれてシリンダブロック1へ流入する熱量が、高から低へと徐々に減少して行く。したがって、中仕上げ加工時に工具3を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ行くに従って上昇させてボア内壁面2aを切削加工すれば、シリンダーヘッド取り付け面側Hに対してシリンダボア奥側のオイルパン取り付け面側Kほどシリンダブロック1へ流入する熱量が減少す。その結果、シリンダボア2内付近の温度分布は、図3(B)の等温線分布図で示すように、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘ってほぼ均一になる。
【0024】
前記中仕上げ用切れ刃7でボア内壁面2aを切削する中仕上げ加工が終了したら、今度は、仕上げ用切れ刃8を中仕上げ用切れ刃7よりも工具本体4の外周面4aから突出させた状態にする。そして、工具3を回転させながらオイルパン取り付け面側Kからシリンダーヘッド取り付け面側Hに向かって上昇させる。
【0025】
この時、シリンダボア2内付近の温度分布は均一温度にあるため、熱膨張による影響を受けず、シリンダボア2の内径がシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘ってほぼ均一になる。そのため、仕上げ用切れ刃8でボア内壁面2aを切削加工すると、切削時の取り代は、オイルパン取り付け面側Kからシリンダーヘッド取り付け面側Hに亘ってバラツキが無くなる。
【0026】
以上のようにしてボーリング加工すれば、中仕上げ加工後もシリンダボア2内付近の温度分布をシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘って均一な温度分布として仕上げ加工を行うことができるため、シリンダボア2の円筒度及び真円度を高めることができる。
【0027】
実施形態1のボーリング加工方法によれば、シリンダブロック1のシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かってボア内壁面2aを切削加工するに際して、工具3を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに行くに従って上昇させているので、シリンダボア奥のオイルパン取り付け面側Kほど周速が高くなり、周速が増すことでシリンダブロック1への流入熱量を下げることができる。その結果、中仕上げ加工後のシリンダボア内付近の温度分布を、高さ方向(シリンダボア孔深さ方向)で均一にすることができる。
【0028】
実施形態1のボーリング加工装置によれば、工具3を回転させる周速をシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ行くに従って上昇させる工具回転速度制御手段(回転制御部10)を備えているので、周速が増加するに連れてシリンダブロック1へ流入する熱量は徐々に減少することから、オイルパン取り付け面側Kでの入熱が抑制されることになり、結果としてシリンダボア内付近の温度分布をシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘り均一なものとすることができる。
【0029】
「実施形態2」
実施形態2は、工具3を回転させる周速を、オイルパン取り付け面側Kで更に加速させて中仕上げ加工する例である。
【0030】
例えば、シリンダブロック1の形状や、中仕上げ加工時にシリンダブロック1に流入する熱量等が要因で、オイルパン取り付け面側Kへ熱伝導する熱が増加する場合は、図6に示すように、工具3の周速をオイルパン取り付け面側Kで更に増加させるようにする。つまり、中仕上げ加工時の切削熱がオイルパン取り付け面側Kにより多く入熱する場合は、オイルパン取り付け面側Kを切削する時に工具3の周速をリニアに増加させるのではなく、急激に増加させる。このように、シリンダブロック1への入熱量増加に対応して工具3の周速もこれに追従させて増加させれば、シリンダボア内付近の温度分布を均一なものにできる。
【0031】
実施形態2のボーリング加工方法によれば、中仕上げ加工時にオイルパン取り付け面側Kへ熱伝導する熱が増加した場合は、工具3を回転させる周速をオイルパン取り付け面側Kで更に加速させることによって、増加する入熱量に対応してシリンダブロック1への流入熱量を下げることができる。
【0032】
「実施形態3」
実施形態3は、ボア内壁面のうちシリンダボア2周辺の肉厚が厚い部位は工具3を回転させる周速を低くして加工し、シリンダボア2周辺の肉厚が薄い部位は厚い部位に対して工具3を回転させる周速を高くして加工する例である。
【0033】
例えば、図1とは異なるタイプのシリンダブロック1をシリンダーヘッド取り付け面側から見たときの要部拡大平面を示す図7において、あるシリンダボア2のボア内壁面2aのうちシリンダボア周辺の肉厚にバラツキがあるとする。図7において、斜線で示すA領域とC領域が肉厚が薄く、B領域とD領域が、A領域とC領域に対して肉厚が厚いとする。
【0034】
このように、ボア内壁面2aのうちシリンダボア2周辺の肉厚にバラツキがある場合には、図8に示すように、シリンダボア2周辺の肉厚が厚い部位(B領域及びD領域)では工具3を回転させる周速を低く(遅く)し、肉厚が薄い部位(A領域及びC領域)では工具3を回転させる周速を高く(早く)する。この図8に示す工具3の回転制御は、前記した回転制御部10が行い、前記工具3が一回転する間に周速を高く(大きく)したり低く(小さく)したりする。
【0035】
シリンダボア2周辺の肉厚が厚い部位(B領域及びD領域)では、熱が拡散しその周辺温度が低くなるが、工具3の周速を低くすることで、シリンダブロック1へ流入する熱量は大きくなり、結果としてその周辺温度が増加する。この一方、シリンダボア2周辺の肉厚が薄い部位(A領域及びC領域)では、熱容量は小さくその周辺温度が高くなるが、工具3の周速を高くすることで、シリンダブロック1へ流入する熱量は小さくなり、結果として肉厚が厚い部位の温度とほぼ均一になる。したがって、実施形態3の加工方法によれば、図9に示すように、シリンダボア2周辺の温度分布が均一になる。
【0036】
実施形態3のボーリング加工方法によれば、ボア内壁面2aのうちシリンダボア2周辺の肉厚が厚い部位は工具3を回転させる周速を低くして加工し、シリンダボア2周辺の肉厚が薄い部位は、前記厚い部位に対して前記工具3を回転させる周速を高くして加工するので、シリンダボア近傍の肉厚大小に関係無くシリンダボア内温度を均一なものにできる。したがって、実施形態3によれば、シリンダボアの円筒度及び真円度を高めることができる。
【0037】
なお、実施形態3の発明方法は、実施形態1、2、3の何れか1つと或いは全部と組み合わせて使用することができる。
【0038】
「実施形態4」
実施形態4は、シリンダボア2の孔形状を、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かってその孔径を次第に広げた末広がり形状として中仕上げ加工する例である。
【0039】
この実施形態4では、シリンダボア2の孔形状を、図10に示すように、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かってその孔径を次第に広げた末広がり形状とする。シリンダボア2の孔形状をストレート形状として中仕上げ加工すると、図3(A)で示したようにシリンダボア内付近の温度分布がオイルパン取り付け面側Kで高温になってしまう。
【0040】
そこで、末広がり形状としたシリンダボア2のボア内壁面2aを回転する工具3にて中仕上げ加工すると、シリンダーヘッド取り付け面側Hではシリンダボア2の孔径が狭いため、工具3の切削による取り代が多くなり、切削により発生する熱量が増加する。工具3がシリンダーヘッド取り付け面側Hから次第にオイルパン取り付け面側Kに近づいて行くと、ボア内壁面2aを切削する取り代が次第に少なくなって行き、切削により発生する熱量も減少して行く。
【0041】
このように加工すると、シリンダボア2のオイルパン取り付け面側Kに対してシリンダーヘッド取り付け面側Hのシリンダブロック1への入熱が高くなることで、図3(A)で示す温度分布を持つシリンダブロック1に伝熱した熱量と足し合わせると、シリンダボア2内付近の温度分布をシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘って均一化することができる。
【0042】
実施形態4のボーリング加工方法によれば、シリンダボア2の孔形状を、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かってその孔径を次第に広げた末広がり形状としたので、中仕上げ加工後のシリンダボア内温度を均一なものにできる。したがって、実施形態4によれば、中仕上げ加工後に行う仕上げ加工で、シリンダボアの円筒度を高めることができる。
【0043】
なお、実施形態4の発明方法は、実施形態1、2、3の何れか1つと或いは全部と組み合わせて使用することができる。
【0044】
「実施形態5」
実施形態5は、シリンダブロック1のシリンダーヘッド取り付け面側Hであってシリンダボア2近傍に開口するウオータージャケット9に冷却媒体を供給しながら切削加工する例である。
【0045】
中仕上げ加工後のシリンダボア2内付近の温度分布は、図3(A)で示したように、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘り温度が高くなっている。そこで、この不均一な温度分布に対して、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘って均一な温度分布となるように、ウオータージャケット9に向けてノズル11から冷却媒体12を供給しながら中仕上げ加工(切削加工)する。冷却媒体12には、例えばクーラントやエアーなどを使用する。冷却媒体12の供給は、中仕上げ加工スタート時から仕上げ加工完了時まで供給し続ける。
【0046】
供給された冷却媒体12は、ウオータージャケット9内に溜まる。そのため、シリンダーヘッド取り付け面側Hで発生した熱は、ウオータージャケット9内に溜まる冷却媒体12により吸熱される。その結果、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ熱伝導する熱量が減少し、シリンダボア2内付近の温度分布がシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘って均一になる。
【0047】
実施形態5のボーリング加工方法によれば、シリンダボア近傍に開口するウオータージャケット9に冷却媒体12を供給しながら切削加工するので、中仕上げ加工後のシリンダボア内温度を均一なものにできる。したがって、実施形態5によれば、中仕上げ加工後に行う仕上げ加工で、シリンダボアの円筒度を高めることができる。
【0048】
なお、実施形態5の発明方法は、実施形態1、2、3の何れか1つと或いは全部と組み合わせて使用することができる。
【0049】
「実施形態6」
実施形態6は、工具3に形成した流路内に冷却媒体を循環させた前記工具3でボア内壁面2aを切削加工し、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ切削加工が進むに伴って前記流路内に導入する冷却媒体の導入量を増加させる例である。
【0050】
工具3には、図12に示すように、装着部5に形成された冷却媒体入口13から供給され、工具本体4の先端へと流れた後、再び装着部5へと戻り、該装着部5に形成された冷却媒体出口14から冷却媒体が排出されるように工具内を循環する流路15が形成されている。
【0051】
前記流路15に導入する冷却媒体の供給量は、図13に示すように、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ切削加工が進むに従って増加させる。この実施形態6では、工具3のシリンダボア2内への進入距離と冷却媒体の供給量とをほぼ定量(リニア)にて増加させている。
【0052】
このように、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ切削加工が進むに伴って工具3に形成した流路15内に導入する冷却媒体の導入量を増加すると、工具3自体が冷却されそれ自身の温度が下がる。この工具3の温度が下がることで、切削熱のうち工具3へ流入する熱量が増加することになり、シリンダブロック1へ流入する熱量が減少する。その結果、中仕上げ加工後のシリンダボア内付近の温度をシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘って均一なものにできる。
【0053】
実施形態6のボーリング加工方法によれば、流路15内に冷却媒体を循環させた工具3で切削加工する際に、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ切削加工が進むに伴って前記流路15内に導入する冷却媒体の導入量を増加させているので、シリンダボア2の奥へと加工が進むにつれて工具3自体の温度が低下することにより、シリンダブロック1への入熱量を減少させることができ、結果としてシリンダボア内付近の温度を均一化することができる。したがって、実施形態6によれば、中仕上げ加工後に行う仕上げ加工で、シリンダボアの円筒度を高めることができる。
【0054】
なお、実施形態6の発明方法は、実施形態1、2、3の何れか1つと或いは全部と組み合わせて使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、内燃機関エンジンのシリンダボア内を切削加工するボーリング加工工程に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…シリンダブロック
2…シリンダボア
2a…ボア内壁面
3…工具
4…工具本体(工具)
5…装着部(工具)
7…中仕上げ用切れ刃(切れ刃)
8…仕上げ用切れ刃(切れ刃)
9…ウオータージャケット
12…冷却媒体
15…流路(工具に形成された流路)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関エンジンのシリンダボア内を切削するボーリング加工方法及びボーリング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関エンジンの燃焼室加工は、ボーリング加工と、その後に行うホーニング加工とからなる(例えば、特許文献1参照)。ボーリング加工は、鋳造後の素材を皮むきするラフボーリング加工工程と、その後の仕上げを目的とするファインボーリング加工工程の2工程からなる。
【0003】
ファインボーリング加工工程は、ラフボーリング加工で加工されたボア内壁面の幾何精度(円筒度、真円度)・面粗度を上げるための加工であり、中仕上げ加工と、仕上げ加工からなる。中仕上げ加工は、外周面から突出させた中仕上げ用切れ刃を備えた工具をシリンダボア内で回転させながらシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かって下降させてボア内壁面を切削する。仕上げ加工は、中仕上げ加工終了後に中仕上げ用切れ刃よりも仕上げ用切れ刃を外周面から突出させた状態とした工具を回転させながらオイルパン取り付け面側からシリンダーヘッド取り付け面側に向かって上昇させてボア内壁面を切削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−114236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ファインボーリング加工工程のうち中仕上げ加工終了時には、切削熱によりシリンダボア内に温度分布が生じる。中仕上げ加工は、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かって加工するため、加工中に発生した熱はシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ熱伝導する。これは、熱は高い方から低い方へ伝導するためである。
【0006】
そのため、中仕上げ加工完了直後、シリンダーヘッド取り付け面側の温度は低く、オイルパン取り付け面側の温度は高くなる。また、シリンダボア周囲の肉厚は、ウオータージャケットがシリンダボア近傍に設けられていることから均一になっていない。そのため、シリンダボア近傍の肉厚のバラツキにより、円周方向で温度分布が均一にならない。
【0007】
このような温度分布を持ったシリンダボアに対して仕上げ加工を行うと、オイルパン取り付け面側ではシリンダーヘッド取り付け面側に比べてボア内径が大きくなることから切削取り代が少なくなり、これに比べてシリンダーヘッド取り付け面側ではボア内径が小さくなることから切削取り代が多くなり、シリンダボアの円筒度が悪化する。また、シリンダボアの円周方向で正味取り代が変化し、真円度が悪化してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、シリンダボアの円筒度及び真円度を高めることのできるボーリング加工方法及びボーリング加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のボーリング加工方法では、シリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工するに際して、工具を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させる。
【0010】
本発明のボーリング加工装置では、工具を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させる工具回転速度制御手段を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のボーリング加工方法によれば、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工すると、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ切削熱が伝導し、オイルパン取り付け面側がシリンダーヘッド取り付け面側よりも温度が高くなる。このような温度分布を持つシリンダボアに対して、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工する際に、工具を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させると、周速が増加するに連れてシリンダブロックへ流入する熱量は徐々に減少するため、オイルパン取り付け面側に行く程、シリンダブロックへ流入する熱量が減少し、シリンダボア内付近の温度分布をシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に亘って均一化することができる。したがって、シリンダボア内付近の温度分布を均一な状態として切削加工すれば、ボア内壁面の切削により取り代も均一になり、シリンダボアの円筒度を高めることができる。
【0012】
本発明のボーリング加工装置によれば、工具を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させる工具回転速度制御手段を備えているので、周速が増加するに連れてシリンダブロックへ流入する熱量は徐々に減少することから、オイルパン取り付け面側での入熱が抑制されることになり、結果としてシリンダボア内付近の温度分布をシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に亘り均一なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1はシリンダブロックの平面図である。
【図2】図2は実施形態1のボーリング加工方法を示し、シリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工するに際して、工具を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させる例を示す図である。
【図3】図3(A)は工具を回転させる周速を一定としてシリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工した後の温度分布を示す図、図3(B)は実施形態1のボーリング加工方法によって工具を回転させる周速をシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させてボア内壁面を切削加工した後の温度分布を示す図である。
【図4】図4は実施形態1のボーリング加工方法を示し、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ工具を進入させて行く距離と、工具の周速の関係を示す図である。
【図5】図5は実施形態1のボーリング加工方法を示し、工具の周速とシリンダブロックへの流入熱量の関係を示す図である。
【図6】図6は実施形態2のボーリング加工方法を示し、オイルパン取り付け面側で工具の周速を更に加速させることを示す図である。
【図7】図7は実施形態3のボーリング加工方法で使用するシリンダブロックの要部拡大平面図である。
【図8】図8は実施形態3のボーリング加工方法を示し、シリンダボア周辺の肉厚がばらついているシリンダブロックに対してボーリング加工する時のシリンダボア外周位置とその時の工具の周速との関係を示す図である。
【図9】図9は実施形態3のボーリング加工方法を示し、加工後のシリンダボア周辺の温度分布を示す図である。
【図10】図10は実施形態4のボーリング加工方法を示し、シリンダボアの孔形状をシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってその孔径を次第に広げた末広がり形状とした例を示す図である。
【図11】図11は実施形態5のボーリング加工方法を示し、ウオータージャケットに冷却媒体を供給しながら切削加工する例を示す図である。
【図12】図12は実施形態6のボーリング加工方法を示し、流路内に冷却媒体を循環させた工具でシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ切削加工を進めるのに伴って前記流路内に導入する冷却媒体の導入量を増加させる例を示す図である。
【図13】図13は実施形態6のボーリング加工方法を示し、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ工具を進入させて行く距離と、冷却媒体の供給流量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
「実施形態1」
先ず、ボーリング加工される被対象物とその加工装置を説明する。図1は本発明方法によりボーリング加工されるシリンダブロックの平面図である。図1のシリンダブロック1は、自動車用の4気筒エンジンである。このシリンダブロック1には、シリンダボア2と、そのシリンダボア2の近傍に開口するウオータージャケット9とが形成されている。本実施形態では、シリンダーヘッド1の各シリンダボア2におけるボア内壁面2aを、中仕上げ加工と仕上げ加工を順次行って幾何精度(円筒度、真円度)・面粗度を上げるファインボーリング加工に、本発明方法を適用する。
【0016】
ファインボーリング加工に使用するボーリング加工装置は、切れ刃を備えた工具3と、この工具3を回転させる周速を制御する工具回転速度制御手段である回転制御部10と、を有して構成されている。
【0017】
前記工具3は、図2に示すように、シリンダボア2内に挿入される工具本体4と、この工具本体4を図示を省略するボーリング加工装置の回転機構部にチャッキングさせる装着部5とを有している。この工具3は、ボーリング加工装置により周方向に回転すると共に上下方向に移動自在とされる。
【0018】
工具本体4は、軸方向の略中央部分に凹み6を有した円柱体として形成され、その外周面4aの下端寄りの位置に2つの切れ刃7、8を有している。これら切れ刃7、8のうち、一方が中仕上げ用切れ刃7で他方が仕上げ用切れ刃8とされている。なお、本実施形態では、工具本体4の略中央部分に凹み6を形成しているが、前記凹み6は工具によっては有るものと無いものがあり、特に凹み6に本発明が限定されるものではない。
【0019】
中仕上用切れ刃7と仕上げ用切れ刃8は、何れも工具本体4に対して刃先が外周面4aから突出する位置と没する位置とに出没自在に取り付けられている。中仕上げ加工時には、中仕上げ用切れ刃7が仕上げ用切れ刃8よりも径方法で突出した状態にあり、仕上げ用切れ刃8は中仕上げ用切れ刃7よりも内側の位置にいる。一方、仕上げ加工時には、仕上げ用切れ刃8が中仕上げ用切れ刃7よりも径方向で突出した状態にあり、中仕上げ用切れ刃8は仕上げ用切れ刃8よりも内側の位置にいる。
【0020】
装着部5は、工具本体4よりも大径の高さの低い円柱体として形成されており、該工具本体4と一体化されている。この装着部5は、図示を省略するボーリング加工装置のチャッキング部に装着固定される。
【0021】
次に、本発明を適用したファインボーリング加工方法について説明する。ファインボーリング加工工程前のラフボーリング加工工程で荒削りしたシリンダボア2内に、中仕上げ用切れ刃7を仕上げ用切れ刃8に対して工具本体4の外周面4aから突出させた工具3を回転させながら挿入し、シリンダブロック1のシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ向かって下降させる。この時、工具3を回転させる周速を一定としてボア内壁面2aを切削すると、中仕上げ用切れ刃7がボア内壁面2aを切削する時に生じた熱がシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへと伝導されることになる。この時のシリンダボア2内付近の温度分布を等温線で表すと、図3(A)で示すように、シリンダーヘッド取り付け面側Hで温度が低くオイルパン取り付け面側Kで温度が高くなる。
【0022】
そこで、本実施形態1では、前記した回転制御部10が指令を出して工具3を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ行くに従って上昇させる。この時のシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ工具3を進入させて行く距離と、工具3の周速の関係を図4に示す。図4では、工具3のシリンダボア2内への進入距離と工具3の周速とをほぼ定量(リニア)にて増加させている。
【0023】
工具3の周速を低(小)から高(大)へと増加せて行くと、図5に示すように、周速が増すにつれてシリンダブロック1へ流入する熱量が、高から低へと徐々に減少して行く。したがって、中仕上げ加工時に工具3を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ行くに従って上昇させてボア内壁面2aを切削加工すれば、シリンダーヘッド取り付け面側Hに対してシリンダボア奥側のオイルパン取り付け面側Kほどシリンダブロック1へ流入する熱量が減少す。その結果、シリンダボア2内付近の温度分布は、図3(B)の等温線分布図で示すように、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘ってほぼ均一になる。
【0024】
前記中仕上げ用切れ刃7でボア内壁面2aを切削する中仕上げ加工が終了したら、今度は、仕上げ用切れ刃8を中仕上げ用切れ刃7よりも工具本体4の外周面4aから突出させた状態にする。そして、工具3を回転させながらオイルパン取り付け面側Kからシリンダーヘッド取り付け面側Hに向かって上昇させる。
【0025】
この時、シリンダボア2内付近の温度分布は均一温度にあるため、熱膨張による影響を受けず、シリンダボア2の内径がシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘ってほぼ均一になる。そのため、仕上げ用切れ刃8でボア内壁面2aを切削加工すると、切削時の取り代は、オイルパン取り付け面側Kからシリンダーヘッド取り付け面側Hに亘ってバラツキが無くなる。
【0026】
以上のようにしてボーリング加工すれば、中仕上げ加工後もシリンダボア2内付近の温度分布をシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘って均一な温度分布として仕上げ加工を行うことができるため、シリンダボア2の円筒度及び真円度を高めることができる。
【0027】
実施形態1のボーリング加工方法によれば、シリンダブロック1のシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かってボア内壁面2aを切削加工するに際して、工具3を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに行くに従って上昇させているので、シリンダボア奥のオイルパン取り付け面側Kほど周速が高くなり、周速が増すことでシリンダブロック1への流入熱量を下げることができる。その結果、中仕上げ加工後のシリンダボア内付近の温度分布を、高さ方向(シリンダボア孔深さ方向)で均一にすることができる。
【0028】
実施形態1のボーリング加工装置によれば、工具3を回転させる周速をシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ行くに従って上昇させる工具回転速度制御手段(回転制御部10)を備えているので、周速が増加するに連れてシリンダブロック1へ流入する熱量は徐々に減少することから、オイルパン取り付け面側Kでの入熱が抑制されることになり、結果としてシリンダボア内付近の温度分布をシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘り均一なものとすることができる。
【0029】
「実施形態2」
実施形態2は、工具3を回転させる周速を、オイルパン取り付け面側Kで更に加速させて中仕上げ加工する例である。
【0030】
例えば、シリンダブロック1の形状や、中仕上げ加工時にシリンダブロック1に流入する熱量等が要因で、オイルパン取り付け面側Kへ熱伝導する熱が増加する場合は、図6に示すように、工具3の周速をオイルパン取り付け面側Kで更に増加させるようにする。つまり、中仕上げ加工時の切削熱がオイルパン取り付け面側Kにより多く入熱する場合は、オイルパン取り付け面側Kを切削する時に工具3の周速をリニアに増加させるのではなく、急激に増加させる。このように、シリンダブロック1への入熱量増加に対応して工具3の周速もこれに追従させて増加させれば、シリンダボア内付近の温度分布を均一なものにできる。
【0031】
実施形態2のボーリング加工方法によれば、中仕上げ加工時にオイルパン取り付け面側Kへ熱伝導する熱が増加した場合は、工具3を回転させる周速をオイルパン取り付け面側Kで更に加速させることによって、増加する入熱量に対応してシリンダブロック1への流入熱量を下げることができる。
【0032】
「実施形態3」
実施形態3は、ボア内壁面のうちシリンダボア2周辺の肉厚が厚い部位は工具3を回転させる周速を低くして加工し、シリンダボア2周辺の肉厚が薄い部位は厚い部位に対して工具3を回転させる周速を高くして加工する例である。
【0033】
例えば、図1とは異なるタイプのシリンダブロック1をシリンダーヘッド取り付け面側から見たときの要部拡大平面を示す図7において、あるシリンダボア2のボア内壁面2aのうちシリンダボア周辺の肉厚にバラツキがあるとする。図7において、斜線で示すA領域とC領域が肉厚が薄く、B領域とD領域が、A領域とC領域に対して肉厚が厚いとする。
【0034】
このように、ボア内壁面2aのうちシリンダボア2周辺の肉厚にバラツキがある場合には、図8に示すように、シリンダボア2周辺の肉厚が厚い部位(B領域及びD領域)では工具3を回転させる周速を低く(遅く)し、肉厚が薄い部位(A領域及びC領域)では工具3を回転させる周速を高く(早く)する。この図8に示す工具3の回転制御は、前記した回転制御部10が行い、前記工具3が一回転する間に周速を高く(大きく)したり低く(小さく)したりする。
【0035】
シリンダボア2周辺の肉厚が厚い部位(B領域及びD領域)では、熱が拡散しその周辺温度が低くなるが、工具3の周速を低くすることで、シリンダブロック1へ流入する熱量は大きくなり、結果としてその周辺温度が増加する。この一方、シリンダボア2周辺の肉厚が薄い部位(A領域及びC領域)では、熱容量は小さくその周辺温度が高くなるが、工具3の周速を高くすることで、シリンダブロック1へ流入する熱量は小さくなり、結果として肉厚が厚い部位の温度とほぼ均一になる。したがって、実施形態3の加工方法によれば、図9に示すように、シリンダボア2周辺の温度分布が均一になる。
【0036】
実施形態3のボーリング加工方法によれば、ボア内壁面2aのうちシリンダボア2周辺の肉厚が厚い部位は工具3を回転させる周速を低くして加工し、シリンダボア2周辺の肉厚が薄い部位は、前記厚い部位に対して前記工具3を回転させる周速を高くして加工するので、シリンダボア近傍の肉厚大小に関係無くシリンダボア内温度を均一なものにできる。したがって、実施形態3によれば、シリンダボアの円筒度及び真円度を高めることができる。
【0037】
なお、実施形態3の発明方法は、実施形態1、2、3の何れか1つと或いは全部と組み合わせて使用することができる。
【0038】
「実施形態4」
実施形態4は、シリンダボア2の孔形状を、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かってその孔径を次第に広げた末広がり形状として中仕上げ加工する例である。
【0039】
この実施形態4では、シリンダボア2の孔形状を、図10に示すように、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かってその孔径を次第に広げた末広がり形状とする。シリンダボア2の孔形状をストレート形状として中仕上げ加工すると、図3(A)で示したようにシリンダボア内付近の温度分布がオイルパン取り付け面側Kで高温になってしまう。
【0040】
そこで、末広がり形状としたシリンダボア2のボア内壁面2aを回転する工具3にて中仕上げ加工すると、シリンダーヘッド取り付け面側Hではシリンダボア2の孔径が狭いため、工具3の切削による取り代が多くなり、切削により発生する熱量が増加する。工具3がシリンダーヘッド取り付け面側Hから次第にオイルパン取り付け面側Kに近づいて行くと、ボア内壁面2aを切削する取り代が次第に少なくなって行き、切削により発生する熱量も減少して行く。
【0041】
このように加工すると、シリンダボア2のオイルパン取り付け面側Kに対してシリンダーヘッド取り付け面側Hのシリンダブロック1への入熱が高くなることで、図3(A)で示す温度分布を持つシリンダブロック1に伝熱した熱量と足し合わせると、シリンダボア2内付近の温度分布をシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘って均一化することができる。
【0042】
実施形態4のボーリング加工方法によれば、シリンダボア2の孔形状を、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かってその孔径を次第に広げた末広がり形状としたので、中仕上げ加工後のシリンダボア内温度を均一なものにできる。したがって、実施形態4によれば、中仕上げ加工後に行う仕上げ加工で、シリンダボアの円筒度を高めることができる。
【0043】
なお、実施形態4の発明方法は、実施形態1、2、3の何れか1つと或いは全部と組み合わせて使用することができる。
【0044】
「実施形態5」
実施形態5は、シリンダブロック1のシリンダーヘッド取り付け面側Hであってシリンダボア2近傍に開口するウオータージャケット9に冷却媒体を供給しながら切削加工する例である。
【0045】
中仕上げ加工後のシリンダボア2内付近の温度分布は、図3(A)で示したように、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘り温度が高くなっている。そこで、この不均一な温度分布に対して、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘って均一な温度分布となるように、ウオータージャケット9に向けてノズル11から冷却媒体12を供給しながら中仕上げ加工(切削加工)する。冷却媒体12には、例えばクーラントやエアーなどを使用する。冷却媒体12の供給は、中仕上げ加工スタート時から仕上げ加工完了時まで供給し続ける。
【0046】
供給された冷却媒体12は、ウオータージャケット9内に溜まる。そのため、シリンダーヘッド取り付け面側Hで発生した熱は、ウオータージャケット9内に溜まる冷却媒体12により吸熱される。その結果、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ熱伝導する熱量が減少し、シリンダボア2内付近の温度分布がシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘って均一になる。
【0047】
実施形態5のボーリング加工方法によれば、シリンダボア近傍に開口するウオータージャケット9に冷却媒体12を供給しながら切削加工するので、中仕上げ加工後のシリンダボア内温度を均一なものにできる。したがって、実施形態5によれば、中仕上げ加工後に行う仕上げ加工で、シリンダボアの円筒度を高めることができる。
【0048】
なお、実施形態5の発明方法は、実施形態1、2、3の何れか1つと或いは全部と組み合わせて使用することができる。
【0049】
「実施形態6」
実施形態6は、工具3に形成した流路内に冷却媒体を循環させた前記工具3でボア内壁面2aを切削加工し、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ切削加工が進むに伴って前記流路内に導入する冷却媒体の導入量を増加させる例である。
【0050】
工具3には、図12に示すように、装着部5に形成された冷却媒体入口13から供給され、工具本体4の先端へと流れた後、再び装着部5へと戻り、該装着部5に形成された冷却媒体出口14から冷却媒体が排出されるように工具内を循環する流路15が形成されている。
【0051】
前記流路15に導入する冷却媒体の供給量は、図13に示すように、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ切削加工が進むに従って増加させる。この実施形態6では、工具3のシリンダボア2内への進入距離と冷却媒体の供給量とをほぼ定量(リニア)にて増加させている。
【0052】
このように、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ切削加工が進むに伴って工具3に形成した流路15内に導入する冷却媒体の導入量を増加すると、工具3自体が冷却されそれ自身の温度が下がる。この工具3の温度が下がることで、切削熱のうち工具3へ流入する熱量が増加することになり、シリンダブロック1へ流入する熱量が減少する。その結果、中仕上げ加工後のシリンダボア内付近の温度をシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘って均一なものにできる。
【0053】
実施形態6のボーリング加工方法によれば、流路15内に冷却媒体を循環させた工具3で切削加工する際に、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ切削加工が進むに伴って前記流路15内に導入する冷却媒体の導入量を増加させているので、シリンダボア2の奥へと加工が進むにつれて工具3自体の温度が低下することにより、シリンダブロック1への入熱量を減少させることができ、結果としてシリンダボア内付近の温度を均一化することができる。したがって、実施形態6によれば、中仕上げ加工後に行う仕上げ加工で、シリンダボアの円筒度を高めることができる。
【0054】
なお、実施形態6の発明方法は、実施形態1、2、3の何れか1つと或いは全部と組み合わせて使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、内燃機関エンジンのシリンダボア内を切削加工するボーリング加工工程に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…シリンダブロック
2…シリンダボア
2a…ボア内壁面
3…工具
4…工具本体(工具)
5…装着部(工具)
7…中仕上げ用切れ刃(切れ刃)
8…仕上げ用切れ刃(切れ刃)
9…ウオータージャケット
12…冷却媒体
15…流路(工具に形成された流路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面より突出させた切れ刃を有した工具をシリンダブロックのシリンダボア内に挿入し、該工具をシリンダボア内で回転させながら上下動させて前記切れ刃でボア内壁面を切削するボーリング加工方法において、
前記シリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かって前記ボア内壁面を切削加工するに際して、前記工具を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させる
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のボーリング加工方法であって、
前記工具を回転させる周速を、オイルパン取り付け面側で更に加速させる
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項3】
外周面より突出させた切れ刃を有した工具をシリンダブロックのシリンダボア内に挿入し、該工具をシリンダボア内で回転させながら上下動させて前記切れ刃でボア内壁面を切削するボーリング加工方法であって、
前記ボア内壁面のうちシリンダボア周辺の肉厚が厚い部位は、前記工具を回転させる周速を低くして加工し、シリンダボア周辺の肉厚が薄い部位は、前記厚い部位に対して前記工具を回転させる周速を高くして加工する
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項4】
少なくとも請求項1から請求項3のうち何れか1項に記載のボーリング加工方法であって、
前記シリンダボアの孔形状を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってその孔径を次第に広げた末広がり形状とした
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項5】
少なくとも請求項1から請求項3のうち何れか1項に記載のボーリング加工方法であって、
前記シリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側であって前記シリンダボア近傍に開口するウオータージャケットに冷却媒体を供給しながら切削加工する
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項6】
少なくとも請求項1から請求項3のうち何れか1項に記載のボーリング加工方法であって、
前記工具に形成した流路内に冷却媒体を循環させた前記工具で、前記ボア内壁面を切削し、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ切削加工が進むに伴って前記流路内に導入する冷却媒体の導入量を増加させる
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項7】
外周面より突出させた切れ刃を有した工具をシリンダブロックのシリンダボア内に挿入し、該工具をシリンダボア内で回転させながら上下動させて前記切れ刃でボア内壁面を切削するボーリング加工装置において、
前記工具を回転させる周速を、前記シリンダーヘッド取り付け面側から前記オイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させる工具回転速度制御手段を備えた
ことを特徴とするボーリング加工装置。
【請求項1】
外周面より突出させた切れ刃を有した工具をシリンダブロックのシリンダボア内に挿入し、該工具をシリンダボア内で回転させながら上下動させて前記切れ刃でボア内壁面を切削するボーリング加工方法において、
前記シリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かって前記ボア内壁面を切削加工するに際して、前記工具を回転させる周速を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させる
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のボーリング加工方法であって、
前記工具を回転させる周速を、オイルパン取り付け面側で更に加速させる
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項3】
外周面より突出させた切れ刃を有した工具をシリンダブロックのシリンダボア内に挿入し、該工具をシリンダボア内で回転させながら上下動させて前記切れ刃でボア内壁面を切削するボーリング加工方法であって、
前記ボア内壁面のうちシリンダボア周辺の肉厚が厚い部位は、前記工具を回転させる周速を低くして加工し、シリンダボア周辺の肉厚が薄い部位は、前記厚い部位に対して前記工具を回転させる周速を高くして加工する
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項4】
少なくとも請求項1から請求項3のうち何れか1項に記載のボーリング加工方法であって、
前記シリンダボアの孔形状を、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってその孔径を次第に広げた末広がり形状とした
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項5】
少なくとも請求項1から請求項3のうち何れか1項に記載のボーリング加工方法であって、
前記シリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側であって前記シリンダボア近傍に開口するウオータージャケットに冷却媒体を供給しながら切削加工する
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項6】
少なくとも請求項1から請求項3のうち何れか1項に記載のボーリング加工方法であって、
前記工具に形成した流路内に冷却媒体を循環させた前記工具で、前記ボア内壁面を切削し、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ切削加工が進むに伴って前記流路内に導入する冷却媒体の導入量を増加させる
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項7】
外周面より突出させた切れ刃を有した工具をシリンダブロックのシリンダボア内に挿入し、該工具をシリンダボア内で回転させながら上下動させて前記切れ刃でボア内壁面を切削するボーリング加工装置において、
前記工具を回転させる周速を、前記シリンダーヘッド取り付け面側から前記オイルパン取り付け面側へ行くに従って上昇させる工具回転速度制御手段を備えた
ことを特徴とするボーリング加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−207976(P2010−207976A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57544(P2009−57544)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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