説明

ボールねじ装置

【課題】 小型化および低コスト化が図られたボールねじ装置を提供する。
【解決手段】 ボールねじナット3は、ナット本体12およびその下側に突き合わせられたエンドキャップ13からなる。中空軸5の端部に一体に形成されたフランジ部11がナット本体12の上側に突き合わされている。中空軸5のフランジ部11に、主通路14と戻し通路15とを連通させるための方向転換路17が形成されており、フランジ部11とナット本体12とがボルト18で結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールねじ装置に関し、特に、ナットが回転してねじ軸が軸方向に直線移動する形態で使用されるボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ軸およびこれにボールを介してねじ合わされたボールねじナットを備えているボールねじ装置は、アクチュエータ用としてよく使用されており、この場合に、ボールねじナットに中空軸をねじで結合して、この中空軸をモータの回転軸として使用することが一般的である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−372117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のボールねじ装置では、ボールねじナットと中空軸との結合部が大きくなり、また、部品数や組付け工数も増加することになり、小型化および低コスト化が課題となっている。
【0005】
この発明の目的は、小型化および低コスト化が図られたボールねじ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によるボールねじ装置は、軌道溝が設けられたねじ軸と、ねじ軸にボールを介してねじ合わされたボールねじナットと、ねじ軸と同心に配置されてボールねじナットと一体で回転する中空軸とを備えているボールねじ装置において、ボールねじナットは、ねじ軸の軌道溝とによって主通路を形成する軌道溝および周壁を軸方向に貫通する戻し通路が設けられているナット本体と、主通路と戻し通路とを連通させる方向転換路が形成されてナット本体の一側に突き合わせられたエンドキャップとからなり、中空軸の端部に一体に形成されたフランジ部がナット本体の他側に突き合わされており、中空軸のフランジ部に、主通路と戻し通路とを連通させるための方向転換路が形成されるとともに、フランジ部とナット本体とがねじで結合されていることを特徴とするものである。
【0007】
従来、ボールねじナットは、ナット本体およびその両側に突き合わせられてねじでナット本体に結合された1対のエンドキャップからなり、中空軸とボールねじナットのエンドキャップとがさらに別のねじによって結合されていた。これに対し、この発明のボールねじ装置では、ボールねじナットがナット本体およびその一側に突き合わせられてねじでナット本体に結合された1つのエンドキャップからなるものとされ、他方のエンドキャップに相当する構成が中空軸と一体化されることで、従来のものに比べると、エンドキャップ1つ分が結合部から取り除かれることになり、結合部が小さくなるとともに、部品点数およびねじ本数が削減され、組付け工数も削減される。
【0008】
ナット本体および中空軸は、例えば炭素鋼(S45C、SCMなど)などの金属製とされ、エンドキャップは金属製であっても合成樹脂製であってもよい。
【0009】
この発明によるボールねじ装置は、アクチュエータ(モータによって中空軸およびボールねじナットが回転させられ、これにより、ねじ軸が直線移動する形態)として使用されることがあり、緩衝器(ねじ軸が外部からの力によって直線移動させられ、これにより、中空軸およびボールねじナットが回転し、モータが発生する電磁力が減衰力となる形態)として使用されることがある。
【0010】
いずれの場合でも、ねじ軸は、往復直線移動し、通常、その所定方向の所定量以上の移動を防止するためのストッパが設けられる。ストッパは、例えば、ねじ軸が所定量以上移動した際にハウジングに当接するフランジ部をねじ軸に設けることで形成することができ、また、ストッパは、ねじ軸と一体に直線移動する部材に形成してもよく、直線移動しない方の部材(ハウジングや中空軸)に設けることもできる。ストッパによってねじ軸の前進方向の極限位置が規定されていることで、極限位置に達すると、ねじ軸が強制的に停止させられる。この際のねじ軸の移動速度が速い場合、ねじ軸の急停止時におけるナットの回転慣性力が大きいため、ボールねじ軌道に圧痕が生じることがあるが、この発明によるボールねじ装置では、上記のように、結合部を小さくすることでイナーシャの低減も可能であり、ボールねじ軌道溝の圧痕防止の点でも有利なものとなる。
【0011】
ねじ軸の直線移動を案内するスプラインがねじ軸に一体に設けられていることがある。この場合のスプラインは、ボールスプラインであってもよく、例えばインボリュートスプラインのような嵌合式のスプラインであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明のボールねじ装置によると、ボールねじナットは、ナット本体およびその一側に突き合わせられたエンドキャップからなり、中空軸の端部に一体に形成されたフランジ部がナット本体の他側に突き合わされており、中空軸のフランジ部に、エンドキャップと同じ方向転換路が形成されるとともに、フランジ部とナット本体とがねじで結合されているので、従来のものに比べると、エンドキャップ1つ分が結合部から取り除かれることになり、結合部が小さくなるとともに、部品点数およびねじ本数が削減され、組付け工数も削減される。したがって、ボールねじ装置を小型化および低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、この発明のボールねじ装置の1実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、この発明によるボールねじ装置の1実施形態を示している。以下の説明において、上下は、図の上下をいうものとする。
【0016】
ボールねじ装置(1)は、軌道溝(2a)が設けられた鋼製ねじ軸(2)と、ねじ軸(2)の軌道溝(2a)にボール(4)を介してねじ合わされたボールねじナット(3)と、ボールねじナット(3)に一体化された中空軸(5)と、中空軸(5)外周に固定された磁石(ロータ)(6)と、ボールねじナット(3)を支持する軸受(7)とを備えている。
【0017】
ねじ軸(2)と中空軸(5)とは、同心状に配置されており、ボールねじ装置(1)は、中空軸(5)をモータシャフトとして、中空軸(5)およびボールねじナット(3)を回転させて、ねじ軸(2)を直線移動させる形態で使用される。
【0018】
中空軸(5)は、ねじ軸(2)との間に所要の径方向間隙を有する円筒状とされており、ボールねじナット(3)の上面に突き合わされる下端部には、ボールねじナット(3)との結合に使用されるフランジ部(11)が設けられている。
【0019】
ボールねじナット(3)は、円筒状の金属製ナット本体(12)およびその一側(下側)に突き合わせられた短円筒状の合成樹脂製エンドキャップ(13)からなる。
【0020】
ナット本体(12)の内周面には、ねじ軸(2)の軌道溝(2a)とによって主通路(14)を形成するための軌道溝(12a)が形成されており、ナット本体(12)の周壁には、これを軸方向に貫通する戻し通路(15)が形成されている。エンドキャップ(13)には、主通路(14)と戻し通路(15)とを連通させるみぞ状の方向転換路(16)が形成されている。エンドキャップ(13)は、ナット本体(12)の軸方向下端面に図示しないボルトを用いて固定されている。
【0021】
ナット本体(12)およびエンドキャップ(13)は、公知のものであり、ボールねじナット(3)は、従来のボールねじナットがナット本体および1対のエンドキャップからなるものであったのに対し、ナット本体(12)および1つのエンドキャップ(13)からなるものが1部品として扱われるようになっている。
【0022】
中空軸(5)のフランジ部(11)には、エンドキャップ(13)の方向転換路(16)と同じ形状とされて主通路(14)と戻し通路(15)とを連通させる方向転換路(17)が形成されており、エンドキャップを兼ねるようになっている。フランジ部(11)とボールねじナット(3)のナット本体(12)とは、ボルト(ねじ)(18)で結合されている。
【0023】
このボールねじ装置(1)によると、従来のものに比べると、ナット本体(12)の上側に突き合わせられるエンドキャップが取り除かれており、これにより、結合部が小さくなるとともに、部品点数およびねじ本数が削減され、組付け工数も削減されている。
【0024】
このボールねじ装置(1)は、例えば、電動アクチュエータ用として使用するのに適している。この場合、モータの回転駆動力をボールねじナット(3)を介してねじ軸(2)の軸方向推力に変換し、推力の軸方向反力を軸受(7)で支持してねじ軸(2)を直線運動させ、ねじ軸(2)に作用する軸方向荷重をボールねじナット(3)で負荷するとともに、トルクをボールスプライン外筒(図示略)などで支持した形態での使用となる。また、上記のボールねじ装置(1)は、自動車の電磁サスペンションとして使用することもできる。
【符号の説明】
【0025】
(1) ボールねじ装置
(2) ねじ軸
(2a) 軌道溝
(3) ボールねじナット
(4) ボール
(5) 中空軸
(11) フランジ部
(12) ナット本体
(12a) 軌道溝
(13) エンドキャップ
(14) 主通路
(15) 戻し通路
(16) 方向転換路
(17) 方向転換路
(18) ボルト(ねじ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道溝が設けられたねじ軸と、ねじ軸にボールを介してねじ合わされたボールねじナットと、ねじ軸と同心に配置されてボールねじナットと一体で回転する中空軸とを備えているボールねじ装置において、
ボールねじナットは、ねじ軸の軌道溝とによって主通路を形成する軌道溝および周壁を軸方向に貫通する戻し通路が設けられているナット本体と、主通路と戻し通路とを連通させる方向転換路が形成されてナット本体の一側に突き合わせられたエンドキャップとからなり、中空軸の端部に一体に形成されたフランジ部がナット本体の他側に突き合わされており、中空軸のフランジ部に、主通路と戻し通路とを連通させるための方向転換路が形成されるとともに、フランジ部とナット本体とがねじで結合されていることを特徴とするボールねじ装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−242948(P2010−242948A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95518(P2009−95518)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】