ボールねじ
【課題】ボールねじの軸方向を上下方向に向けて使用した場合に、ナットが下降する際のボール同士の競り合いを防止し、ボールの滑らかな転動を確保する。
【解決手段】直線路11の下側に配置する部分に長円柱状の凹部13を設け、ボール通過穴6を有するボール送り出し部材5を配置する。ボール通過穴6の内径をボール3の直径より小さくする突出部61を、ボール通過穴6の直径方向外側に弾性変形可能に設ける。直線路11から下降してきたボール3は、ボール送り出し部材5の突出部61の上で一旦停止する。次に、突出部61がボール3の重さで弾性変形して、可動片53が外側に開いた後、元に戻ろうとする力で、ボール3が湾曲路41へ送り出される。これにより、複数のボール3が、湾曲路41に一つ一つ隙間を開けて送り出される。ボール送り出し部材5の爪部7の上面に、爪部7を長円柱体の径方向内側に弾性変形させる欠部8を設けた。
【解決手段】直線路11の下側に配置する部分に長円柱状の凹部13を設け、ボール通過穴6を有するボール送り出し部材5を配置する。ボール通過穴6の内径をボール3の直径より小さくする突出部61を、ボール通過穴6の直径方向外側に弾性変形可能に設ける。直線路11から下降してきたボール3は、ボール送り出し部材5の突出部61の上で一旦停止する。次に、突出部61がボール3の重さで弾性変形して、可動片53が外側に開いた後、元に戻ろうとする力で、ボール3が湾曲路41へ送り出される。これにより、複数のボール3が、湾曲路41に一つ一つ隙間を開けて送り出される。ボール送り出し部材5の爪部7の上面に、爪部7を長円柱体の径方向内側に弾性変形させる欠部8を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボール戻し経路に特徴を有するボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動する装置である。
ボールねじのボール戻し経路は、ナットの内部に形成される場合と外部に形成される場合がある。ナットの内部に形成される場合は、例えば、図8および9に示すように、ナット1に、軸方向に延びる貫通穴からなる直線路11を設け、その両端部に凹部12を形成し、この凹部12にエンドデフレクタ4を配置する。エンドデフレクタ4には、直線路11と軌道を接続する湾曲路41が形成されている。直線路11と湾曲路41で構成されるボール戻し経路と、ナット1の螺旋溝1aとねじ軸2の螺旋溝2aとで形成される軌道とにより、ボール3の循環経路が形成されている。ボール3は、軌道内では負荷状態で転動し、ボール戻し経路内では無負荷状態で転動する。
【0003】
ボール3は、軌道内を転動した後に、軌道の終点からボール戻し経路に入って軌道の始点に戻されることで、循環経路内を循環する。循環経路内に配置するボール3の数は、ボール3の直径の合計長さが循環経路の長さより短くなるように設定されている。つまり、循環経路内でボール3間に隙間が生じている。
ボールねじは、多くの場合、図9、10に示すように、軸方向を水平方向に向けて使用される。しかし、図11に示すように、軸方向を鉛直方向に向けて使用されることもある。その場合、ナット1が下降する際には、重力の作用により、下側に配置された部分の循環経路内(図11のAで囲った部分)にボール3が密集しやすくなる。これに伴って、特に、低速回転時や潤滑が不十分である場合などに、軌道(螺旋溝1a,2a間)内でボール3同士の競り合いが生じてボール3の滑らかな転動が阻害される可能性がある。
【0004】
また、軸方向を水平方向に向けて使用される場合でも、図9に示すように、ボール戻し経路(直線路11と湾曲路41)がねじ軸2の上側に配置される場合には、重力の作用により、軌道(螺旋溝1a,2a間)内にボール3が密集しやすくなる。これに伴って、特に、低速回転時や潤滑が不十分である場合などに、軌道内でボール3同士の競り合いが生じて、ボール3の滑らかな転動が阻害される可能性がある。
【0005】
図10に示すように、ボール戻し経路(直線路11と湾曲路41)がねじ軸2の下側に配置される場合は、重力の作用により、ボール3がボール戻し経路内に密集し、軌道(螺旋溝1a,2a間)内ではボール3同士の間に隙間が生じるため、上述のような問題は生じない。
下記の特許文献1には、ボール戻し経路(連通路)の軌道(負荷路)との接続部に、ボール(転動体)の移動を制限する拘束機構を設けることで、上述のボール同士の競り合いを防止する提案がなされている。拘束機構の形成方法としては、連通路の内面に弾性突起や狭窄部を設ける方法、連通路の外側に磁石を設ける方法などが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−175229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された拘束機構の形成方法には、ボールねじの軸方向を上下方向に向けて使用した場合に、ナットが下降する際のボール同士の競り合いを防止するという点で改善の余地がある。また、ボールねじの軸方向を左右方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置して使用した場合に、軌道内でのボール同士の競り合いを防止するという点でも改善の余地がある。
【0008】
この発明の課題は、軸方向を上下方向に向けて使用した場合には、ナットが下降する際のボール同士の競り合いが防止され、軸方向を左右方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置して使用した場合には、軌道内でのボール同士の競り合いが抑制されることで、ボールの滑らかな転動が確保できるボールねじを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明のボールねじは、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじであって、前記ボール戻し経路は、ナットの内部に形成され、ナットの軸方向に延びる直線路と、その両端に接続された湾曲路とからなり、前記直線路の前記湾曲路側の部分に、前記ナットの外周面を長円形の開口とする長円柱状の凹部が形成され、前記凹部に、下記の構成(1) 〜(6) を満たすボール送り出し部材が配置され、構成(4) の爪部が前記凹部の内周面に設けた窪みに入っていることを特徴とする。
【0010】
(1) 前記凹部に嵌まる長円柱体からなる。
(2) 前記長円柱体の径方向に貫通し、前記直線路を構成するボール通過穴を有する。
(3) 前記ボール通過穴の内面に、前記ボール通過穴の内側の直径を前記ボールの直径より小さくする突出部が、前記ボール通過穴の直径方向外側に弾性変形可能に形成されている。
(4) 前記長円柱体の外周面より外側に突出する爪部が、長円柱体の径方向に弾性変形可能に形成されている。
(5) 前記爪部のナットの前記開口に露出する面に、前記爪部を長円柱体の径方向内側に弾性変形させる係合部が形成されている。
(6) 前記突出部の弾性変形により、ボールを湾曲路側へ送り出すものである。
【0011】
この発明のボールねじによれば、ナットの前記凹部に前記ボール送り出し部材が配置されていることにより、軸方向を上下方向に向けて使用する際には、前記直線路の下側に配置されている部分において、前記直線路を下降してきたボールは、前記ボール送り出し部材のボール通過穴に入り、前記突出部の上で一旦停止した後、前記突出部がボールの重さで弾性変形して外側に開いた後に元に戻ろうとする力で、前記湾曲路側へ送り出される。これにより、前記直線路を下降してきた複数のボールが、前記湾曲路に一つ一つ隙間を開けて送り出されるため、ナットが下降している際に、循環経路の下側に配置されている部分(湾曲路と軌道の湾曲路に続く部分)にボールが密集することが抑制される。
【0012】
また、軸方向を左右方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置して使用する際には、ナットの進行方向と反対側に配置されているボール送り出し部材で、前記直線路から移動してきたボールは、前記ボール送り出し部材のボール通過穴に入り、前記突出部に接触して一旦停止した後、前記突出部がボールに押されて弾性変形して外側に開いた後に元に戻ろうとする力で、前記湾曲路側へ送り出される。これにより、前記直線路から移動してきた複数のボールが、前記湾曲路に一つ一つ隙間を開けて送り出されるため、軌道内にボールが密集することが抑制される。
【0013】
さらに、この発明のボールねじにおいて、ボール送り出し部材は、前記爪部を長円柱体の直径方向内側に弾性変形させてナットの前記窪みに入れることで、ナットの前記凹部に取り付けられる。そして、ボール送り出し部材が長円柱体であることからナットの凹部内で回転しないため、ナットの直線路とボール通過穴がずれない。また、前記係合部を使用して前記爪部を長円柱体の径方向内側に弾性変形させることで、ボール送り出し部材を容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明のボールねじによれば、軸方向を上下方向に向けて使用した場合には、ナットが下降する際のボール同士の競り合いが防止され、軸方向を左右方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置して使用した場合には、軌道内でのボール同士の競り合いが抑制されることで、ボールの滑らかな転動が確保される。
また、ボール送り出し部材のボール通過穴とナットの直線路がずれないため、ボールが直線路からボール通過穴に確実に移動する。さらに、ボール送り出し部材が容易に取り外せるため、ボールねじの分解作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施形態に相当するボールねじ(軸方向を上下方向に向けて使用した例)を示す断面図である。
【図2】図1のボールねじのナットにおけるボール送り出し部材の取付凹部を示す断面図であって、(a)はボール戻し経路の下方に配置される部分の軸方向に沿った断面図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は(b)のB矢視図である。
【図3】図1のボールねじで使用するボール送り出し部材を示す斜視図である。
【図4】図1のボールねじで使用するボール送り出し部材を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は(a)のA矢視図、(e)は(a)のB−B断面図、(f)は(b)のC−C断面図である。
【図5】ナットにボール送り出し部材が取り付けられた状態を示す図であって、(a)はボール戻し経路におけるボールの動きを説明する軸方向に沿った断面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【図6】ボール送り出し部材の動きを説明する図である。
【図7】この発明の別の実施形態に相当するボールねじ(軸方向を左右方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置して使用した例)を示す断面図である。
【図8】ボール戻し経路がナットの内部に形成されている従来のボールねじのナットを示す斜視図である。
【図9】ボール戻し経路がナットの内部に形成されている従来のボールねじを、軸方向を水平方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置した状態を示す断面図である。
【図10】ボール戻し経路がナットの内部に形成されている従来のボールねじを、軸方向を水平方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の下側に配置した状態を示す断面図である。
【図11】ボール戻し経路がナットの内部に形成されている従来のボールねじを、軸方向を鉛直方向に向けて配置した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態のボールねじを示す断面図である。
このボールねじは、ナット1と、ねじ軸2と、ボール3と、エンドデフレクタ4と、ボール送り出し部材5で構成されている。ナット1の内周面に螺旋溝1aが形成され、ねじ軸2の外周面に螺旋溝2aが形成されている。ナット1の螺旋溝1aとねじ軸2の螺旋溝2aにより、ボール3が負荷状態で転動する軌道が形成される。エンドデフレクタ4には、直線路11と軌道を接続する湾曲路41が形成されている。
【0017】
ナット1には、また、軸方向に延びる貫通穴からなる直線路11が形成され、その両端部に、エンドデフレクタ4を配置する凹部12が形成されている。ナット1の直線路11の使用時に下側に配置される側では、図2(a)に示すように、直線路11の凹部12に近い側に、ボール送り出し部材5を配置する凹部13が形成されている。
図2(b)および(c)に示すように、凹部13はナット1の外周面を長円形の開口とする長円柱状に形成されている。また、凹部13には、ボール送り出し部材5の抜け止め用窪み13aが形成されている。
【0018】
ボール送り出し部材5は、図3および4に示すように、長円柱状の凹部13に嵌まる長円柱体からなる。ボール送り出し部材5をなす長円柱体の軸方向一端面(上面)51は、ナット1の外周円と同心で径が少し小さい円弧面に形成されている。軸方向他端面(下面)52は平面状である。ボール送り出し部材5には、長円柱体の長径方向に貫通するボール通過穴6が形成されている。
【0019】
ボール通過穴6の内面に突出部61が形成されている。ボール通過穴6の直径d6 は、突出部61が形成されている部分を除いて、直線路11の直径d11と同じである。突出部61が形成されている部分の直径d61はボール3の直径d3 より小さい。
ボール送り出し部材5をなす長円柱体の下端部に、所定幅(直径d6 より小さい)の可動片53が形成されている。突出部61は、この可動片53の上面に形成されている。この可動片53により、突出部61がボール通過穴6の直径方向外側に弾性変形可能になっている。
【0020】
可動片53は、長円柱体の軸方向で下面52からボール通過穴6に達する切り込み52aにより、ボール通過穴6の長さ方向一端から中心位置までの範囲で、長円柱体から分離されている。また、長円柱体の下面52側の切り込み52bにより、可動片53の下面53aが長円柱体の下面52より高くなっている。
ボール送り出し部材5には、さらに、長円柱体の外周面より外側に突出する一対の爪部7が、長円柱体の短径に沿った配置(ボール通過穴6の長さ方向と直交する配置)で、長円柱体の上面51より少し下の位置に形成されている。各爪部7とこれに連続する長円柱体の外周部71は、長円柱体の上面51側から軸方向に沿って入る切り込み51aにより、ボール通過穴6の中心より少し下の位置まで、長円柱体の中央部分72から分離されている。
【0021】
切り込み51aによる中央部分72と爪部7との隙間W1は、爪部7の長円柱体からの突出寸法W2より少し大きい。よって、両爪部7を中央部分72側に弾性変形させることで、両爪部7による外径を長円柱体の外径より小さくできる。ナット1の凹部13に設けた窪み13aは、この爪部7が嵌まる形状になっている。両爪部7の上面に、長円柱体の短径方向外側に下がる斜面状の欠部(係合部)8が形成されている。
【0022】
ボール送り出し部材5は、例えば、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレンを用いた射出成形により作製できる。
このボール送り出し部材5を、図2に示すように、ボール通過穴6の長さ方向の突出部61が形成されている側をエンドデフレクタ4側に向け、両爪部7を中央部分72側に弾性変形させながら、ナット1の外周側から凹部13内に挿入する。その結果、図5に示すように、爪部7の外周部が凹部13の窪み13aに入り、ボール通過穴6が直線路11と連通する。すなわち、ボール通過穴6が、ナット1に形成されている直線路11とともにボール戻し経路の直線路を構成する。
【0023】
これにより、このボールねじのボール戻し経路の、使用時に下側に配置される部分は、ナット1に形成されている直線路11と、ナット1の凹部13に配置されたボール送り出し部材5のボール通過穴6と、ナット1の凹部12に配置されたエンドデフレクタ4の湾曲路41とで形成される。図5のラインLは、ねじ軸2の外周面の位置を示す。
このボールねじを、ねじ軸2を鉛直方向に向けて使用する際には、直線路11内から下降してきたボール3が、図6(a)に示すように、先ず、ボール送り出し部材5のボール通過穴6の突出部61の上で一旦停止する。次に、図6(b)に示すように、突出部61がボール3の重さで弾性変形して、可動片53が外側に開く。
【0024】
これに伴って、ボール3がボール通過穴6の突出部61の位置を通過する際に、可動片53が元の位置に戻ろうとする。この可動片53が元に戻ろうとする力で、図6(c)に示すように、ボール3がボール通過穴6から湾曲路41側へ送り出される。また、次のボール3が突出部61の上で一旦停止する。
これにより、直線路11から下降してきた複数のボール3が、湾曲路41に一つ一つ隙間を開けて送り出されるため、ナット1が下降している際に、下側に配置されている湾曲路41と軌道(螺旋溝2a)の湾曲路41に続く部分に、ボール3が密集することが抑制される。図5の二点鎖線は、ボール3とナット1の螺旋溝との接触予想線である。
【0025】
また、ボール送り出し部材5が長円柱体であることから、ナット1の凹部13内で回転しないため、ナット1の直線路11とボール通過穴6がずれない。これにより、ボール3が直線路11からボール通過穴6に確実に移動する。さらに、ボール送り出し部材5を取り外す際には、欠部8を使用して両爪部7を内側に弾性変形させることで、ボール送り出し部材5を容易に取り外すことができるため、ボールねじの分解作業を容易に行うことができる。
なお、この実施形態のボールねじでは、ナット1に形成された直線路11の両端に対する湾曲路の接続を、湾曲路41を有するエンドデフレクタ4をナット1の凹部14に配置することで行っているが、これに代えて、湾曲路41を有するエンドキャップをナット1の軸方向両端部に取り付けることで行ってもよい。
【0026】
また、図7に示すように、この発明のボールねじを、軸方向を左右方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置して使用する場合は、直線路11の両端の凹部12に近い側に、ボール送り出し部材5を配置する凹部13を形成し、この二カ所の凹部13にボール送り出し部材5を配置する。これにより、ナットの進行方向と反対側に配置されているボール送り出し部材5の作用で、直線路11から移動してきた複数のボール3が、湾曲路41に一つ一つ隙間を開けて送り出されるため、軌道内にボール3が密集することが抑制される。
【符号の説明】
【0027】
1 ナット
1a ナットの螺旋溝
11 直線路
12 エンドデフレクタを配置する凹部
13 ボール送り出し部材を配置する凹部
2 ねじ軸
2a ねじ軸の螺旋溝
3 ボール
4 エンドデフレクタ
41 湾曲路
5 ボール送り出し部材
51 ボール送り出し部材の上面
51a 切り込み
52 ボール送り出し部材の下面
52a 切り込み
52b 切り込み
53 可動片
53a 可動片の下面
6 ボール通過穴
61 突出部
7 爪部
71 長円柱体の外周部
72 長円柱体の中央部分
8 欠部(係合部)
d11 直線路の断面円の直径
d3 ボールの直径
d6 ボール通過穴の直径
d61 突出部の直径
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボール戻し経路に特徴を有するボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動する装置である。
ボールねじのボール戻し経路は、ナットの内部に形成される場合と外部に形成される場合がある。ナットの内部に形成される場合は、例えば、図8および9に示すように、ナット1に、軸方向に延びる貫通穴からなる直線路11を設け、その両端部に凹部12を形成し、この凹部12にエンドデフレクタ4を配置する。エンドデフレクタ4には、直線路11と軌道を接続する湾曲路41が形成されている。直線路11と湾曲路41で構成されるボール戻し経路と、ナット1の螺旋溝1aとねじ軸2の螺旋溝2aとで形成される軌道とにより、ボール3の循環経路が形成されている。ボール3は、軌道内では負荷状態で転動し、ボール戻し経路内では無負荷状態で転動する。
【0003】
ボール3は、軌道内を転動した後に、軌道の終点からボール戻し経路に入って軌道の始点に戻されることで、循環経路内を循環する。循環経路内に配置するボール3の数は、ボール3の直径の合計長さが循環経路の長さより短くなるように設定されている。つまり、循環経路内でボール3間に隙間が生じている。
ボールねじは、多くの場合、図9、10に示すように、軸方向を水平方向に向けて使用される。しかし、図11に示すように、軸方向を鉛直方向に向けて使用されることもある。その場合、ナット1が下降する際には、重力の作用により、下側に配置された部分の循環経路内(図11のAで囲った部分)にボール3が密集しやすくなる。これに伴って、特に、低速回転時や潤滑が不十分である場合などに、軌道(螺旋溝1a,2a間)内でボール3同士の競り合いが生じてボール3の滑らかな転動が阻害される可能性がある。
【0004】
また、軸方向を水平方向に向けて使用される場合でも、図9に示すように、ボール戻し経路(直線路11と湾曲路41)がねじ軸2の上側に配置される場合には、重力の作用により、軌道(螺旋溝1a,2a間)内にボール3が密集しやすくなる。これに伴って、特に、低速回転時や潤滑が不十分である場合などに、軌道内でボール3同士の競り合いが生じて、ボール3の滑らかな転動が阻害される可能性がある。
【0005】
図10に示すように、ボール戻し経路(直線路11と湾曲路41)がねじ軸2の下側に配置される場合は、重力の作用により、ボール3がボール戻し経路内に密集し、軌道(螺旋溝1a,2a間)内ではボール3同士の間に隙間が生じるため、上述のような問題は生じない。
下記の特許文献1には、ボール戻し経路(連通路)の軌道(負荷路)との接続部に、ボール(転動体)の移動を制限する拘束機構を設けることで、上述のボール同士の競り合いを防止する提案がなされている。拘束機構の形成方法としては、連通路の内面に弾性突起や狭窄部を設ける方法、連通路の外側に磁石を設ける方法などが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−175229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された拘束機構の形成方法には、ボールねじの軸方向を上下方向に向けて使用した場合に、ナットが下降する際のボール同士の競り合いを防止するという点で改善の余地がある。また、ボールねじの軸方向を左右方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置して使用した場合に、軌道内でのボール同士の競り合いを防止するという点でも改善の余地がある。
【0008】
この発明の課題は、軸方向を上下方向に向けて使用した場合には、ナットが下降する際のボール同士の競り合いが防止され、軸方向を左右方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置して使用した場合には、軌道内でのボール同士の競り合いが抑制されることで、ボールの滑らかな転動が確保できるボールねじを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明のボールねじは、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじであって、前記ボール戻し経路は、ナットの内部に形成され、ナットの軸方向に延びる直線路と、その両端に接続された湾曲路とからなり、前記直線路の前記湾曲路側の部分に、前記ナットの外周面を長円形の開口とする長円柱状の凹部が形成され、前記凹部に、下記の構成(1) 〜(6) を満たすボール送り出し部材が配置され、構成(4) の爪部が前記凹部の内周面に設けた窪みに入っていることを特徴とする。
【0010】
(1) 前記凹部に嵌まる長円柱体からなる。
(2) 前記長円柱体の径方向に貫通し、前記直線路を構成するボール通過穴を有する。
(3) 前記ボール通過穴の内面に、前記ボール通過穴の内側の直径を前記ボールの直径より小さくする突出部が、前記ボール通過穴の直径方向外側に弾性変形可能に形成されている。
(4) 前記長円柱体の外周面より外側に突出する爪部が、長円柱体の径方向に弾性変形可能に形成されている。
(5) 前記爪部のナットの前記開口に露出する面に、前記爪部を長円柱体の径方向内側に弾性変形させる係合部が形成されている。
(6) 前記突出部の弾性変形により、ボールを湾曲路側へ送り出すものである。
【0011】
この発明のボールねじによれば、ナットの前記凹部に前記ボール送り出し部材が配置されていることにより、軸方向を上下方向に向けて使用する際には、前記直線路の下側に配置されている部分において、前記直線路を下降してきたボールは、前記ボール送り出し部材のボール通過穴に入り、前記突出部の上で一旦停止した後、前記突出部がボールの重さで弾性変形して外側に開いた後に元に戻ろうとする力で、前記湾曲路側へ送り出される。これにより、前記直線路を下降してきた複数のボールが、前記湾曲路に一つ一つ隙間を開けて送り出されるため、ナットが下降している際に、循環経路の下側に配置されている部分(湾曲路と軌道の湾曲路に続く部分)にボールが密集することが抑制される。
【0012】
また、軸方向を左右方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置して使用する際には、ナットの進行方向と反対側に配置されているボール送り出し部材で、前記直線路から移動してきたボールは、前記ボール送り出し部材のボール通過穴に入り、前記突出部に接触して一旦停止した後、前記突出部がボールに押されて弾性変形して外側に開いた後に元に戻ろうとする力で、前記湾曲路側へ送り出される。これにより、前記直線路から移動してきた複数のボールが、前記湾曲路に一つ一つ隙間を開けて送り出されるため、軌道内にボールが密集することが抑制される。
【0013】
さらに、この発明のボールねじにおいて、ボール送り出し部材は、前記爪部を長円柱体の直径方向内側に弾性変形させてナットの前記窪みに入れることで、ナットの前記凹部に取り付けられる。そして、ボール送り出し部材が長円柱体であることからナットの凹部内で回転しないため、ナットの直線路とボール通過穴がずれない。また、前記係合部を使用して前記爪部を長円柱体の径方向内側に弾性変形させることで、ボール送り出し部材を容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明のボールねじによれば、軸方向を上下方向に向けて使用した場合には、ナットが下降する際のボール同士の競り合いが防止され、軸方向を左右方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置して使用した場合には、軌道内でのボール同士の競り合いが抑制されることで、ボールの滑らかな転動が確保される。
また、ボール送り出し部材のボール通過穴とナットの直線路がずれないため、ボールが直線路からボール通過穴に確実に移動する。さらに、ボール送り出し部材が容易に取り外せるため、ボールねじの分解作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施形態に相当するボールねじ(軸方向を上下方向に向けて使用した例)を示す断面図である。
【図2】図1のボールねじのナットにおけるボール送り出し部材の取付凹部を示す断面図であって、(a)はボール戻し経路の下方に配置される部分の軸方向に沿った断面図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は(b)のB矢視図である。
【図3】図1のボールねじで使用するボール送り出し部材を示す斜視図である。
【図4】図1のボールねじで使用するボール送り出し部材を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は(a)のA矢視図、(e)は(a)のB−B断面図、(f)は(b)のC−C断面図である。
【図5】ナットにボール送り出し部材が取り付けられた状態を示す図であって、(a)はボール戻し経路におけるボールの動きを説明する軸方向に沿った断面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【図6】ボール送り出し部材の動きを説明する図である。
【図7】この発明の別の実施形態に相当するボールねじ(軸方向を左右方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置して使用した例)を示す断面図である。
【図8】ボール戻し経路がナットの内部に形成されている従来のボールねじのナットを示す斜視図である。
【図9】ボール戻し経路がナットの内部に形成されている従来のボールねじを、軸方向を水平方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置した状態を示す断面図である。
【図10】ボール戻し経路がナットの内部に形成されている従来のボールねじを、軸方向を水平方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の下側に配置した状態を示す断面図である。
【図11】ボール戻し経路がナットの内部に形成されている従来のボールねじを、軸方向を鉛直方向に向けて配置した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態のボールねじを示す断面図である。
このボールねじは、ナット1と、ねじ軸2と、ボール3と、エンドデフレクタ4と、ボール送り出し部材5で構成されている。ナット1の内周面に螺旋溝1aが形成され、ねじ軸2の外周面に螺旋溝2aが形成されている。ナット1の螺旋溝1aとねじ軸2の螺旋溝2aにより、ボール3が負荷状態で転動する軌道が形成される。エンドデフレクタ4には、直線路11と軌道を接続する湾曲路41が形成されている。
【0017】
ナット1には、また、軸方向に延びる貫通穴からなる直線路11が形成され、その両端部に、エンドデフレクタ4を配置する凹部12が形成されている。ナット1の直線路11の使用時に下側に配置される側では、図2(a)に示すように、直線路11の凹部12に近い側に、ボール送り出し部材5を配置する凹部13が形成されている。
図2(b)および(c)に示すように、凹部13はナット1の外周面を長円形の開口とする長円柱状に形成されている。また、凹部13には、ボール送り出し部材5の抜け止め用窪み13aが形成されている。
【0018】
ボール送り出し部材5は、図3および4に示すように、長円柱状の凹部13に嵌まる長円柱体からなる。ボール送り出し部材5をなす長円柱体の軸方向一端面(上面)51は、ナット1の外周円と同心で径が少し小さい円弧面に形成されている。軸方向他端面(下面)52は平面状である。ボール送り出し部材5には、長円柱体の長径方向に貫通するボール通過穴6が形成されている。
【0019】
ボール通過穴6の内面に突出部61が形成されている。ボール通過穴6の直径d6 は、突出部61が形成されている部分を除いて、直線路11の直径d11と同じである。突出部61が形成されている部分の直径d61はボール3の直径d3 より小さい。
ボール送り出し部材5をなす長円柱体の下端部に、所定幅(直径d6 より小さい)の可動片53が形成されている。突出部61は、この可動片53の上面に形成されている。この可動片53により、突出部61がボール通過穴6の直径方向外側に弾性変形可能になっている。
【0020】
可動片53は、長円柱体の軸方向で下面52からボール通過穴6に達する切り込み52aにより、ボール通過穴6の長さ方向一端から中心位置までの範囲で、長円柱体から分離されている。また、長円柱体の下面52側の切り込み52bにより、可動片53の下面53aが長円柱体の下面52より高くなっている。
ボール送り出し部材5には、さらに、長円柱体の外周面より外側に突出する一対の爪部7が、長円柱体の短径に沿った配置(ボール通過穴6の長さ方向と直交する配置)で、長円柱体の上面51より少し下の位置に形成されている。各爪部7とこれに連続する長円柱体の外周部71は、長円柱体の上面51側から軸方向に沿って入る切り込み51aにより、ボール通過穴6の中心より少し下の位置まで、長円柱体の中央部分72から分離されている。
【0021】
切り込み51aによる中央部分72と爪部7との隙間W1は、爪部7の長円柱体からの突出寸法W2より少し大きい。よって、両爪部7を中央部分72側に弾性変形させることで、両爪部7による外径を長円柱体の外径より小さくできる。ナット1の凹部13に設けた窪み13aは、この爪部7が嵌まる形状になっている。両爪部7の上面に、長円柱体の短径方向外側に下がる斜面状の欠部(係合部)8が形成されている。
【0022】
ボール送り出し部材5は、例えば、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレンを用いた射出成形により作製できる。
このボール送り出し部材5を、図2に示すように、ボール通過穴6の長さ方向の突出部61が形成されている側をエンドデフレクタ4側に向け、両爪部7を中央部分72側に弾性変形させながら、ナット1の外周側から凹部13内に挿入する。その結果、図5に示すように、爪部7の外周部が凹部13の窪み13aに入り、ボール通過穴6が直線路11と連通する。すなわち、ボール通過穴6が、ナット1に形成されている直線路11とともにボール戻し経路の直線路を構成する。
【0023】
これにより、このボールねじのボール戻し経路の、使用時に下側に配置される部分は、ナット1に形成されている直線路11と、ナット1の凹部13に配置されたボール送り出し部材5のボール通過穴6と、ナット1の凹部12に配置されたエンドデフレクタ4の湾曲路41とで形成される。図5のラインLは、ねじ軸2の外周面の位置を示す。
このボールねじを、ねじ軸2を鉛直方向に向けて使用する際には、直線路11内から下降してきたボール3が、図6(a)に示すように、先ず、ボール送り出し部材5のボール通過穴6の突出部61の上で一旦停止する。次に、図6(b)に示すように、突出部61がボール3の重さで弾性変形して、可動片53が外側に開く。
【0024】
これに伴って、ボール3がボール通過穴6の突出部61の位置を通過する際に、可動片53が元の位置に戻ろうとする。この可動片53が元に戻ろうとする力で、図6(c)に示すように、ボール3がボール通過穴6から湾曲路41側へ送り出される。また、次のボール3が突出部61の上で一旦停止する。
これにより、直線路11から下降してきた複数のボール3が、湾曲路41に一つ一つ隙間を開けて送り出されるため、ナット1が下降している際に、下側に配置されている湾曲路41と軌道(螺旋溝2a)の湾曲路41に続く部分に、ボール3が密集することが抑制される。図5の二点鎖線は、ボール3とナット1の螺旋溝との接触予想線である。
【0025】
また、ボール送り出し部材5が長円柱体であることから、ナット1の凹部13内で回転しないため、ナット1の直線路11とボール通過穴6がずれない。これにより、ボール3が直線路11からボール通過穴6に確実に移動する。さらに、ボール送り出し部材5を取り外す際には、欠部8を使用して両爪部7を内側に弾性変形させることで、ボール送り出し部材5を容易に取り外すことができるため、ボールねじの分解作業を容易に行うことができる。
なお、この実施形態のボールねじでは、ナット1に形成された直線路11の両端に対する湾曲路の接続を、湾曲路41を有するエンドデフレクタ4をナット1の凹部14に配置することで行っているが、これに代えて、湾曲路41を有するエンドキャップをナット1の軸方向両端部に取り付けることで行ってもよい。
【0026】
また、図7に示すように、この発明のボールねじを、軸方向を左右方向に向け、ボール戻し経路をねじ軸の上側に配置して使用する場合は、直線路11の両端の凹部12に近い側に、ボール送り出し部材5を配置する凹部13を形成し、この二カ所の凹部13にボール送り出し部材5を配置する。これにより、ナットの進行方向と反対側に配置されているボール送り出し部材5の作用で、直線路11から移動してきた複数のボール3が、湾曲路41に一つ一つ隙間を開けて送り出されるため、軌道内にボール3が密集することが抑制される。
【符号の説明】
【0027】
1 ナット
1a ナットの螺旋溝
11 直線路
12 エンドデフレクタを配置する凹部
13 ボール送り出し部材を配置する凹部
2 ねじ軸
2a ねじ軸の螺旋溝
3 ボール
4 エンドデフレクタ
41 湾曲路
5 ボール送り出し部材
51 ボール送り出し部材の上面
51a 切り込み
52 ボール送り出し部材の下面
52a 切り込み
52b 切り込み
53 可動片
53a 可動片の下面
6 ボール通過穴
61 突出部
7 爪部
71 長円柱体の外周部
72 長円柱体の中央部分
8 欠部(係合部)
d11 直線路の断面円の直径
d3 ボールの直径
d6 ボール通過穴の直径
d61 突出部の直径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじであって、
前記ボール戻し経路は、ナットの内部に形成され、ナットの軸方向に延びる直線路と、その両端に接続された湾曲路とからなり、
前記直線路の前記湾曲路側の部分に、前記ナットの外周面を円形の開口とする長円柱状の凹部が形成され、
前記凹部に、
前記凹部に嵌まる長円柱体からなり、
前記長円柱体の径方向に貫通し、前記直線路を構成するボール通過穴を有し、
前記ボール通過穴の内面に、前記ボール通過穴の内側の直径を前記ボールの直径より小さくする突出部が、前記ボール通過穴の直径方向外側に弾性変形可能に形成され、
前記長円柱体の外周面より外側に突出する爪部が、長円柱体の径方向に弾性変形可能に形成され、
前記爪部のナットの前記開口に露出する面に、前記爪部を長円柱体の径方向内側に弾性変形させる係合部が形成され、
前記突出部の弾性変形によりボールを湾曲路側へ送り出すボール送り出し部材が、配置され、
前記爪部が前記凹部の内周面に設けた窪みに入っていることを特徴とするボールねじ。
【請求項1】
内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじであって、
前記ボール戻し経路は、ナットの内部に形成され、ナットの軸方向に延びる直線路と、その両端に接続された湾曲路とからなり、
前記直線路の前記湾曲路側の部分に、前記ナットの外周面を円形の開口とする長円柱状の凹部が形成され、
前記凹部に、
前記凹部に嵌まる長円柱体からなり、
前記長円柱体の径方向に貫通し、前記直線路を構成するボール通過穴を有し、
前記ボール通過穴の内面に、前記ボール通過穴の内側の直径を前記ボールの直径より小さくする突出部が、前記ボール通過穴の直径方向外側に弾性変形可能に形成され、
前記長円柱体の外周面より外側に突出する爪部が、長円柱体の径方向に弾性変形可能に形成され、
前記爪部のナットの前記開口に露出する面に、前記爪部を長円柱体の径方向内側に弾性変形させる係合部が形成され、
前記突出部の弾性変形によりボールを湾曲路側へ送り出すボール送り出し部材が、配置され、
前記爪部が前記凹部の内周面に設けた窪みに入っていることを特徴とするボールねじ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−82903(P2012−82903A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229806(P2010−229806)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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