説明

ボールペン用インキ

【課題】強い筆記圧をかけても極めて軽くて滑らかな書き味のボールペン用インキの提供。
【解決手段】着色剤と、水及び/もしくは有機溶剤と、ポリオキシエチレンヒマシ油及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とこれらの誘導体と、モノアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルリン酸、ジアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンジアルキルエーテルリン酸、トリアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレントリアルキルエーテルリン酸、並びに、これらの中和物や溶液から選ばれる一種もしくは二種以上の混合物とを含有するボールペン用インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記部材としてインキを紙面等の被筆記面に転写するボールと、このボールを先端開口部から一部臨出させて回転自在に抱持するボールホルダーとから少なくともなるボールペンチップをペン先としたボールペンに収容されたボールペン用インキに関する。
【背景技術】
【0002】
軽くて滑らかな書き味のボールペン用インキを得るために、従来、インキの粘度を調整したり、潤滑性を付与する材料をインキに添加したりする試みがなされてきた。
増粘剤の添加量を調整してインキの粘度を低くすると、筆記時にボールの回転に対する抵抗力が小さくなるので、軽い書き味で筆記できるという利点がある。しかし、インキが低粘度であるために、ボールとボール受座との間に形成されているインキ膜が、筆圧によって容易に移動してしまい、筆記時にボールとボール受座とが直接当たる事によるゴリゴリとした感触が手に伝わり、滑らかさのない書き味となってしまう。
一方、樹脂などを添加してインキの粘度を高粘度となして、ボールとボール受座との間に形成されるインキ膜厚を厚くすると、滑らかな書き味は得られるものの、流動性の低いインキによってボールの回転は大きな抵抗を受けるため重い書き味であった。
【0003】
また、軽くて滑らかな書き味を両立させるために、剪断減粘性付与剤を用いることでインキの粘度特性を擬塑性として、筆記時にインキに付与されるボールの回転による高剪断力により粘度を下げ、ボールの回転抵抗を小さくする(特許文献1)試みがなされてきた。
更に、リン酸エステル(特許文献2)や、ジポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸やトリポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(特許文献3)などのインキに潤滑性を付与する材料をインキ中に添加すると、筆記時のボールとボール受座との間の摩擦抵抗が低減するので、滑らかな書き味が得られる。このようなインキに潤滑性を付与する材料と増粘剤による粘度調整とを組み合わせる事で、さらに軽くて滑らかな書きを得る試みもなされてきた。(特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−105245公報(2頁右欄上から36行目〜3頁右欄上から23行目)
【特許文献2】特開2002−201398公報(2頁右欄上から32行目〜3頁右欄上から30行目)
【特許文献3】特開平10−279876公報(2頁右欄上から23行目〜3頁右欄上から15行目)
【特許文献4】特開平07−242852公報(2頁左欄上から28行目〜3頁左欄上から26行目)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明では、筆記時にはインキの粘度が低いので、軽い書き味は得られるものの、ボールとボール受座との間のインキ膜厚が薄くなってしまい、ボールとボールホルダーとが直接強く当接する摩擦による抵抗が増加して、ボールがスムーズに回転しなくなり、滑らかさの感じられない書き味となってしまう問題があった。
【0006】
特許文献2や特許文献3に記載のリン酸エステル型活性剤は、リン酸基がボールやボール受座の金属表面に結合し、アルキル基をインキ中に向けた形で存在するが、高い潤滑性を付与する材料ほどアルキル基の疎水性が強いので、リン酸エステル型活性剤で覆われたボールやボール受座などの金属表面とインキ中の主成分である水や有機溶媒とが親和しにくくなる。これにより、ボールやボール受座の金属表面へのインキの付着力が低下し、インキが金属表面へ濡れにくくなるので、筆記時にボールの回転方向や筆記角度や筆記速度が変化して、インキの吐出の流れに何らかの変化を生じたり、強い力がかかったりしたときなど、ボールとボール受座との間にインキ膜が存在しない部分が生じ、瞬間的にボールとボール受座が直接当たる事によるゴリゴリとした感触が手に伝わり、滑らかさのない書き味となってしまう問題があった。特に、粘度の高いインキの場合、重い筆跡となりがちなために大量に潤滑剤を添加する必要が生じ、その結果、インキは金属表面へより濡れにくくなり、問題が顕著となるものであった。また、筆記距離が長くなるに従って、このようなボールとボール受座との接触が繰り返し生じることにより、受座の摩耗が進んでボール沈みが生じ、後退したボールがインキの通路を塞ぎ、インキの流通量が減少してしまう。そうすると、ボールとボール受座との間に介在するインキも少なくなって両者の直接接触が起こりやすくなり滑らかさが損なわれるものであり、ボール沈みが顕著な場合には筆記線のカスレなど筆跡に悪影響がでることも懸念される。更に、ボールが後退することによって、筆記具を斜めに立てて筆記した時に、ボールペンチップのボールを抱持するボールホルダーの先端が紙面に接触し擦れる感触が手に伝わり、書き味が悪化するという問題があった。
【0007】
特許文献4のように、潤滑性を付与する材料を添加すると共にインキの粘度を調整しても、潤滑剤の影響によるインキの金属表面への濡れにくさが改善される訳ではないので、十分に軽くて滑らかな書き味は得られなかった。
このように、極めて軽くて滑らかな書き味が得られ、かつ筆記距離が長くなってもその書き味が維持されるボールペン用インキは、従来技術では得られなかった。
【0008】
本発明は、極めて軽くて滑らかな書き味が得られ、筆記距離に伴いその書き味が劣化しないボールペン用インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、少なくとも、下記一般式(化1)で示される化合物と、下記一般式(化2)、(化3)、(化4)のいずれかで示される化合物から選ばれる1種もしくは2種以上の混合物と液媒体とを含有するボールペン用インキを要旨とするものである。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【発明の効果】
【0014】
上記(化1)で示される化合物の脂肪酸基は、ボールやボール受座などの金属表面を覆っている(化2)、(化3)、(化4)のいずれかで示される化合物のアルキル基と、互いに疎水結合する。そして、(化1)で示される化合物のエチレンオキサイド基が、インキ中に存在する水や有機溶媒と相互作用し、ボールやボール受座などの金属表面にインキの層を形成する。(化1)で示される化合物の脂肪酸基はそれぞれが2個以上のエチレンオキサイド基に挟まれた構造であるため、疎水性の強い脂肪酸基を有しながら、親水性のエチレンオキサイド基をインキ中に広げることで、インキ中で分子鎖が伸びやすく、水や有機溶媒との相互作用が強いため、前述の金属表面に形成されるインキの層は、筆圧などの強い力がかかったときにも維持され、高い潤滑性を維持すると共に、ボール受座の摩耗も抑制され、インキの吐出量(流通量)も大きく変わらず、軽くて滑らかな書き味が維持され、カスレなどの問題のない筆跡が持続するものである。
【0015】
上記一般式(化1)と上記一般式(化2)、(化3)、(化4)のいずれかで示される化合物から選ばれる1種もしくは2種以上の混合物とのインキ中の重量比率が(化1)/(化2)+(化3)+(化4)=0.1以上100以下であることにより、(化2)+(化3)+(化4)に対する(化1)の添加量が最適となり、ボール受座へのインキの濡れ性が保たれるので、極めて軽くて滑らかな書き味が維持される。インキの液媒体としては、水を使用する場合と有機溶剤を使用する場合があるが、全液媒体中の50重量%以上が有機溶剤の場合(以下、油性インキと表記する)、(化1)で示される化合物のα+β+γ+δ+ε+ζが80未満であることによって、(化1)で示される化合物と有機溶剤との親和性が高くなるので、より効果が発揮される。また、ブチラール樹脂やスチレンアクリル酸樹脂やケトン樹脂は有機溶剤への溶解力に優れているため、インキの流動性が良好となり、インキの吐出量が確保されやすいので、より高い効果が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に発明を詳細に説明する。
着色剤としては、従来、ボールペン用インキに用いられている染料、顔料の全てが使用でき、染料、顔料は単独で用いても、併用しても良い。
油溶性の染料としては、具体的には、ローダミンBベース(C.I.45170B、田岡染料製造(株)製)、ソルダンレッド3R(C.I.21260、中外化成(株)製)、メチルバイオレット2Bベース(C.I.42535B、米国、National Aniline Div.製)、ビクトリアブルーF4R(C.I.42563B)、ニグロシンベースLK(C.I.50415)(以上、BASF社製、独国)、バリファーストイエロー#3104(C.I.13900A)、バリファーストイエロー#3105(C.I.18690)、オリエントスピリットブラックAB(C.I.50415)、バリファーストブラック#3804(C.I.12195)、バリファーストイエロー#1109、バリファーストオレンジ#2210、バリファーストレッド#1320、バリファーストブルー#1605、バリファーストバイオレット#1701(以上、オリエント化学工業(株)製)、スピロンブラックGMHスペシャル、スピロンイエローC−2GH、スピロンイエローC−GNH、スピロンレッドC−GH、スピロンレッドC−BH、スピロンブルーBPNH、スピロンブルーC−RH、ああスピロンバイオレットC−RH、S.P.T.オレンジ6、S.P.T.ブルー111(以上、保土ヶ谷化学工業(株)製)や、ネオスーパーブルーC−555(以上、中央合成化学(株)製)等の従来公知の一般的なものが使用できる。
【0017】
水溶性の染料としては、酸性染料、直接染料、塩基性染料等のいずれも用いることができる。その一例を挙げれば、ジャパノールファストブラックDコンク(C.I.ダイレクトブラック17)、ウォーターブラック100L(同19)、ウォーターブラックL−200(同19)、ダイレクトファストブラックB(同22)、ダイレクトファストブラックAB(同32)、 ダイレクトディープブラックEX(同38)、ダイレクトファストブラックコンク(同51)、カヤラススプラグレイVGN(同71)、カヤラスダイレクトブリリアントエローG(C.I.ダイレクトエロー4)、ダイレクトファストエロー5GL(同26)、アイゼンプリムラエローGCLH(同44)、ダイレクトファストエローR(同50)、アイゼンダイレクトファストレッドFH(C.I.ダイレクトレッド1)、ニッポンファストスカーレットGSX(同4)、ダイレクトファストスカーレット4BS(同23)、アイゼンダイレクトローデュリンBH(同31)、ダイレクトスカーレットB(同37)、カヤクダイレクトスカーレット3B(同39)、アイゼンプリムラピンク2BLH(同75)、スミライトレッドF3B(同80)、アイゼンプリムラレッド4BH(同81)、カヤラススプラルビンBL(同83)、カヤラスライトレッドF5G(同225)、カヤラスライトレッドF5B(同226)、カヤラスライトローズFR(同227)、ダイレクトスカイブルー6B(C.I.ダイレクトブルー1)、ダイレクトスカイブルー5B(同15)、スミライトスプラブルーBRRコンク(同71)、ダイボーゲンターコイズブルーS(同86)、ウォーターブルー#3(同86)、カヤラスターコイズブルーGL(同86)、カヤラススプラブルーFF2GL(同106)、カヤラススプラターコイズブルーFBL(同199)等の直接染料や、アシッドブルーブラック10B(C.I.アシッドブラック1)、ニグロシン(同2)、スミノールミリングブラック8BX(同24)、カヤノールミリングブラックVLG(同26)、スミノールファストブラックBRコンク(同31)、ミツイナイロンブラックGL(同52)、アイゼンオパールブラックWHエクストラコンク(同52)、スミランブラックWA(同52)、ラニルブラックBGエクストラコンク(同107)、カヤノールミリングブラックTLB(同109)、スミノールミリングブラックB(同109)、カヤノールミリングブラックTLR(同110)、アイゼンオパールブラックニューコンク(同119)、ウォーターブラック187−L(同154)、カヤクアシッドブリリアントフラビンFF(C.I.アシッドエロー7:1)、カヤシルエローGG(同17)、キシレンライトエロー2G140%(同17)、スミノールレベリングエローNR(同19)、ダイワタートラジン(同23)、カヤクタートラジン(同23)、スミノールファストエローR(同25)、ダイアシッドライトエロー2GP(同29)、スミノールミリングエローO(同38)、スミノールミリングエローMR(同42)、ウォーターエロー#6(同42)、カヤノールエローNFG(同49)、スミノールミリングエロー3G(同72)、スミノールファストエローG(同61)、スミノールミリングエローG(同78)、カヤノールエローN5G(同110)、スミノールミリングエロー4G200%(同141)、カヤノールエローNG(同135)、カヤノールミリングエロー5GW(同127)、カヤノールミリングエロー6GW(同142)、スミトモファストスカーレットA(C.I.アシッドレッド8)、カヤクシルクスカーレット(同9)、ソーラールビンエクストラ(同14)、ダイワニューコクシン(同18)、アイゼンボンソーRH(同26)、ダイワ赤色2号(同27)、スミノールレベリングブリリアントレッドS3B(同35)、カヤシルルビノール3GS(同37)、アイゼンエリスロシン(同51)、カヤクアシッドローダミンFB(同52)、スミノールレベリングルビノール3GP(同57)、ダイアシッドアリザリンルビノールF3G200%(同82)、アイゼンエオシンGH(同87)、ウォーターピンク#2(同92)、アイゼンアシッドフロキシンPB(同92)、ローズベンガル(同94)、カヤノールミリングスカーレットFGW(同111)、カヤノールミリングルビン3BW(同129)、スミノオールミリングブリリアントレッド3BNコンク(同131)、スミノールミリングブリリアントレッドBS(同138)、アイゼンオパールピンクBH(同186)、スミノールミリングブリリアントレッドBコンク(同249)、カヤクアシッドブリリアントレッド3BL(同254)、カヤクアシッドブリリドブリリアントレッドBL(同265)、カヤノールミリングレッドGW(同276)、ミツイアシッドバイオレット6BN(C.I.アシッドバイオレット15)、ミツイアシッドバイオレットBN(同17)、スミトモパテントピュアブルーVX(C.I.アシッドブルー1)、ウォーターブルー#106(同1)、パテントブルーAF(同7)、ウォーターブルー#9(同9)、ダイワ青色1号(同9)、スプラノールブルーB(同15)、オリエントソルブルブルーOBC(同22)、スミノールレベリングブルー4GL(同23)、ミツイナイロンファストブルーG(同25)、カヤシルブルーAGG(同40)、カヤシルブルーBR(同41)、ミツイアリザリンサフィロールSE(同43)、スミノールレベリングスカイブルーRエクストラコンク(同62)、ミツイナイロンファストスカイブルーB(同78)、スミトモブリリアントインドシアニン6Bh/c(同83)、サンドランシアニンN−6B350%(同90)、ウォーターブルー#115(同90)、オリエントソルブルブルーOBB(同93)、スミトモブリリアントブルー5G(同103)、カヤノールミリングウルトラスカイSE(同112)、カヤノールミリングシアニン5R(同113)、アイゼンオパールブルー2GLH(同158)、ダイワギニアグリーンB(C.I.アシッドグリーン3)、アシッドブリリアントミリンググリーンB(同9)、ダイワグリーン#70(同16)、カヤノールシアニングリーンG(同25)、スミノールミリンググリーンG(同27)等の酸性染料、アイゼンカチロンイエロー3GLH(C.I.ベーシックイエロー11)、アイゼンカチロンブリリアントイエロー5GLH(同13)、スミアクリルイエローE−3RD(同15)、マキシロンイエロー2RL(同19)、アストラゾンイエロー7GLL(同21)、カヤクリルゴールデンイエローGL−ED(同28)、アストラゾンイエロー5GL(同51)、アイゼンカチロンオレンジGLH(C.I.ベーシックオレンジ21)、アイゼンカチロンブラウン3GLH(同30)、ローダミン6GCP(C.I.ベーシックレッド1)、アイゼンアストラフロキシン(同12)、スミアクリルブリリアントレッドE−2B(同15)、アストラゾンレッドGTL(同18)、アイゼンカチロンブリリアントピンクBGH(同27)、マキシロンレッドGRL(同46)、アイゼンメチルバイオレット(C.I.ベーシックバイオレット1)、アイゼンクリスタルバイオレット(同3)、アイゼンローダミンB(同10)、アストラゾンブルーG(C.I.ベーシックブルー1)、アストラゾンブルーBG(同3)、メチレンブルー(同9)、マキシロンブルーGRL(同41)、アイゼンカチロンブルーBRLH(同54)、アイゼンダイヤモンドグリーンGH(C.I.ベーシックグリーン1)、アイゼンマラカイトグリーン(同4)、ビスマルクブラウンG(C.I.ベーシックブラウン1)等の塩基性染料が挙げられる。
これらはインキ中の水もしくは有機溶剤のうち少なくとも一つに可溶でなければならない。
【0018】
顔料は筆跡堅牢性の向上やインキの流動特性の改良を目的に添加され、一例としては、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサン系顔料、ベリノン、ベリレン系顔料、ジケトピロロピロール顔料、アニリンブラック、ニトロソ系顔料、ニトロ系顔料、等の有機顔料や、酸化鉄、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、鉄黒、酸化チタン、硫酸バリウム、カドミウムレッド、弁柄、クロムイエロー、黄土、カドミウムイエロー、バリウム黄、群青、紺青等の無機系顔料及び蛍光顔料、樹脂粒子を染料で着色した顔料で使用樹脂がインキ溶剤に溶解しないものが挙げられ、これらは単独あるいは混合して使用することが出来る。
黒色顔料としては例えば、プリンテックス3、同25、同30、同35、同40、同45、同55、同60、同75、同80、同85、同90、同95、同300、スペシャルブラック4、同5、同100、同250、同550(以上デグサヒュルスジャパン(株)製)。三菱カーボンブラック#2700、同#2650、同#2600、同#2400、同#2350、同#2300、同#2200、同#1000、同#990、同#980、同#970、同#960、同#950、同#900、同#850、同#750、同#650、同#52、同#50、同#47、同#45、同#45L、同#44、同#40、同#33、同#32、同#30、同#25、同#20、同#10、同#5、同#95、同#260、同CF9、同MCF88、同MA600、同MA77、同MA7、同MA11、同MA100、同MA100R、同MA100S、同MA220、同MA230(以上、三菱化学(株)製)、トーカブラック#8500/F、同#8300/F、同#7550SB/F、同#7400、同#7360SB/F、同#7350/F、同#7270SB、同#7100/F、同#7050(以上、東海カーボン(株)製)等のカーボンブラックや、ダイヤモンドブラックN(玉億色材(株)製)などのアニリンブラックや、ボーンブラック(三重カラーテクノ(株)製)や、鉄化ブラックKN−320(日本鉄化(株)製)などの鉄黒が挙げられる。
青色顔料としては例えばC.I.Pigment Blue 2、同9、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、同16、同17、同28、同29、同36、同60、同68、同76、同80等が使用できる。
赤色の顔料としてはC.I.Pigment Red 2、同3、同5、同8、同14、同17、同22、同23、同31、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同53:1、同53:2、同57:1、同112、同122、同144、同146、同149、同166、同170、同175、同176、同177、同179、同184、同185、同187、同188、同202、同207、同208、同209、同210、同211、同213、同214、同242、同253、同254、同255、同256、同257、同264、同266、同268、同270、同272等が使用できる。
黄色の顔料としてはC.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同16、同17、同55、同73、同74、同79、同81、同83、同93、同94、同95、同97、同109、同110、同111、同120、同128、同133、同136、同138、同139、同147、同151、同154、同155、同167、同173、同174、同175、同176、同180、同185、同191、同194、同213等が使用できる。
橙色の顔料としてはC.I.Pigment Orange5、同13、同16、同34、同36、同38、同43、同62、同68、同72、同74等がある。
緑色の顔料としてはC.I.Pigment Green7、同36、同37等が使用できる。
紫色の顔料としてはC.I.Pigment Violet19、同23等が使用出来る。
これらの着色剤の使用量は全インキに対し1重量%以上40重量%以下が好適に使用できる。使用量が1重量%より少ないと筆跡が薄すぎて耐光性試験や耐溶剤性試験を行ったときに紙面上に残る着色剤の量が少なくなり筆跡の判読がし難くなる。40重量%より多いと配合時の溶解不足や経時的な沈降による目詰まりによる筆記不能が生じやすくなる。また、これらの着色剤は単独で使用しても2種類以上を併用して使用しても良い。
【0019】
また、これらの顔料の他に加工顔料も使用可能である。それらの一例を挙げると、Renol Yellow GG−HW30、同HR−HW30、同Orange RL−HW30、同Red HF2B−HW30、同FGR−HW30、同F5RK−HW30、同Carmine FBB−HW30、同Violet RL−HW30、同Blue B2G−HW30、同CF−HW30、同Green GG−HW30、同Brown HFR−HW30、Black R−HW30(以上、クラリアントジャパン(株)製)、UTCO−001エロー、同012エロー、同021オレンジ、同031レッド、同032レッド、同042バイオレット、同051ブルー、同052ブルー、同061グリーン、同591ブラック、同592ブラック(以上、大日精化工業(株)製)、MICROLITH Yellow 4G−A、同MX−A、同2R−A、Brown 5R−A、Scarlet R−A、Red 2C−A、同3R−A、Magenta 2B−A、Violet B−A、Blue 4G−A、Green G−A(以上、チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製)等がある。
【0020】
更に、水性媒体に分散した水性インキベースを用いることもでき、具体的には、Fuji SP Black8031、同8119、同8167、同8276、同8381、同8406、Fuji SP Red 5096、同5111、同5193、同5220、Fuji SP Bordeaux 5500、Fuji SP Blue 6062、同6133、同6134、同6401、Fuji SP Green 7051、Fuji SP Yellow 4060、同4178、Fuji SP Violet 9011、Fuji SP Pink 9524、同9527、Fuji SP Orange 534、FUji SP Brown 3074、FUJI SP RED 5543、同5544(以上、富士色素(株)製)、Emacol Black CN、Emacol Blue FBB、同FB、同KR、Emacol Green LXB、Emacol Violet BL、Emacol Brown 3101、Emacol Carmmine FB、Emacol Red BS、Emacol Orange R、Emacol Yellow FD、同IRN、同3601、同FGN、同GN、同GG、同F5G、同F7G、同10GN、同10G、Sandye Super Black K、同C、Sandye Super Grey B、Sandye Super Brown SB、同FRL、同RR、SandyeSuper Green L5G、同GXB、Sandye Super Navy Blue HRL、同GLL、同HB、同FBL−H、同FBL−160、同FBB、Sandye Super Violet BL H/C、同BL、Sandye Super Bordeaux FR、Sandye Super Pink FBL、同F5B、Sandye Super Rubine FR、Sandye super Carmmine FB、SandyeSuper Red FFG、同RR、同BS、Sandye Super Orange FL、同R、同BO、Sandye Gold Yellow 5GR、同R、同3R、Sandye Ywllow GG、同F3R、同IRC、同FGN、同GN、同GRS、同GSR−130、同GSN−130、同GSN、同10GN(以上、山陽色素(株)製)、Rio Fast BlackFx 8012、同8313、同8169、Rio Fast Red Fx8209、同8172、Rio Fast Red S Fx 8315、同8316、Rio Fast Blue Fx 8170、Rio Fast Blue FX 8170、Rio Fast Blue S Fx 8312、Rio Fast Green S Fx 8314(以上、東洋インキ(株)製)、NKW−2101、同2102、同2103、同2104、同2105、同2106、同2107、同2108、同2117、同2127、同2137、同2167、同2101P、同2102P、同2103P、同2104P、同2105P、同2106P、同2107P、同2108P、同2117P、同2127P、同2137P、同2167P、NKW−3002、同3003、同3004、同3005、同3007、同3077、同3008、同3402、同3404、同3405、同3407、同3408、同3477、同3602、同3603、同3604、同3605、同3607、同3677、同3608、同3702、同3703、同3704、同3705、同3777、同3708、同6013、同6038、同6559(以上、日本蛍光(株)製)、コスモカラーS1000Fシリーズ(東洋ソーダ(株)製)、ビクトリアエロー G−11、同G−20、ビクトリアオレンジ G−16、同G−21、ビクトリアレッド G−19、同G−22、ビクトリアピンク G−17、同G−23、ビクトリアグリーン G−18、同G−24、ビクトリアブルー G−15、同G−25(以上、御国色素(株)製)、ポルックスPC5T1020、ポルックスブラックPC8T135、ポルックスレッドIT1030等のポルックスシリーズ(以上、住化カラー(株)製)などが挙げられるものであり、これらは1種又は2種以上選択して併用できるものである。
【0021】
油性インキの主媒体となる有機溶剤は、従来油性インキに使用されるものなら特に限定なく使用でき、グリコールエーテル類、グリコール類、アルコール類が特に好ましい。
例えば、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルモノグリコール、ベンジルジグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブチルアセテート等のグリコールエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、3−メチル−1,3ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等のグリコール類、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシペンタノール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコール等のアルコール類、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル等のエーテル類、酢酸−2−エチルヘキシル、イソ酪酸イソブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類を挙げることができる。
これらの溶剤は単独あるいは組み合わせて使用でき、その使用量は油性インキ全量に対し10重量%以上90重量%以下が好ましい。
【0022】
インキの乾燥防止や低温時での凍結防止などの目的で、有機溶媒を添加する事も可能である。具体的には、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、2−エチル1,3−ヘキサングリコール、グリセリン、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル等のエーテル、チオジグリコール、N−メチルピロリドン、2−フェノキシエタノールなどが使用出来る。
これらは1種又は2種以上選択して併用できるものである。また、その使用量はインキ全量に対して0.5重量%以上40重量%以下の添加が好ましい。0.5重量%未満では塗布部の乾燥防止効果が弱く使用不能になる恐れがあり、40重量%を超えて添加してもその効果の向上は見られず添加することの意味が見い出せない。
【0023】
(化1)で示される化合物は、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とこれらの誘導体であり、市販のものとして、NIKKOL HCO−5、HCO−10、HCO−20、HCO−30、HCO−40、HCO−50、HCO−60、HCO−80、HCO−100(以上、日光ケミカルズ(株)製)、EMALEX HC−5、HC−7、HC−10、HC−20、HC−30、HC−40、HC−50、HC−60、HC−80、HC−100(以上、日本エマルジョン(株)製)、ブラウノン BR−404、BR−407、BR−410、BR−4135、BR−417、BR−420、BR−425、BR−430、BR−450、RCW−20、RCW−40、RCW−60、RCW−80、RCW−100(以上、日進化成(株)製)、UNIOXHC−10、HC−20、HC−40、HC−60、HC−100、HC−20ML、HC−40ML、HC−20MIS、HC−40MIS、HC−60MIS、HC−50MSU、NONION C−2300(日油(株)製)などが挙げられ、これらはインキ全量に対して0.01重量%以上20重量%以下の添加が好ましい。0.01重量%未満では添加効果が十分発揮されず、20重量%以上添加すると、インキ中の水や有機溶媒の含有量が減ってしまい、染料や樹脂などインキ中の固形分の溶解性が不足し、文字掠れが生じやすくなる。これらは単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
また、油性インキにおいては、α+β+γ+δ+ε+ζが80モル以上だと、高湿度下で保管したとき、インキが吸湿しやすくなり、インキ中の水分によって他の材料の溶解性が悪化して析出してくるので、80モル未満のものがより好ましく、特に5モル以上40モル以下のものが好適に使用できる。インキ中の液媒体の50重量%以上が水であるインキ(以下、水性インキとする)においては、他の材料も水溶性のものを使用でき、インキが吸湿したとしても析出を防ぐことができるので、特に使用の制限はない。
【0024】
(化2)、(化3)、(化4)のいずれかで示される化合物は、モノアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルリン酸、ジアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンジアルキルエーテルリン酸、トリアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレントリアルキルエーテルリン酸、並びに、これらの中和物や溶液である。市販のものとしては、(化2)にて示される化合物と(化3)にて示される化合物の混合物として、フォスファノールBH−650、SM−172、ED−200、GF−339、RA−600、GF199、ML−200、ML−220、ML−240、RD−510Y、GF−185、RS−410、RS−610、RS−710、RL−210、RL−310、RB−410、RP−710、AK−25、GF702、RS−610NA、SC−6103、RD−720、LP−700、LS−500、LB400(以上、東邦化学工業(株)製)や、プライサーフA208B、A219B、A208S、A212S、A215C(以上、第一工業製薬(株)製)、(化3)にて示される化合物として、NIKKOL DLP−10、DOP−8N、DDP−2、DDP−4、DDP−6、DDP−8、DDP−10(以上、日光ケミカルズ(株)製)、(化4)にて示される化合物として、TLP−4、TCP−5、TOP−0V、TDP−2、TDP−6、TDP−8、TDP−10(以上、日光ケミカルズ(株)製)などが挙げられる。これら(化2)、(化3)、(化4)のいずれかで示される化合物は、合計で20.0重量%以上添加すると、インキ中の水や有機溶媒の含有量が減ってしまい、染料や樹脂などインキ中の固形分の溶解性が不足し、文字掠れが生じやすくなるので、使用量は油性インキ全量に対し20.0重量%未満の使用が好ましい。
【0025】
更に、上記(化2)、(化3)、(化4)のいずれかで示される化合物が、インキ中の他成分と反応することでインキの状態が経時的に変化するようなことが起こらないようにするために、予め中和剤と混合して、リン酸基を中和してからインキに添加することもできる。中和剤としては、アミン化合物、アミド化合物、アミノ酸化合物やこれらの誘導体、両性界面活性剤などが用いられ、具体的には、アミート102、アミート105、アミート302、アミート308、アミート320などのポリオキシエチレンアルキルアミン類や、ファーミンCS、ファーミン08D、ファーミン20D、ファーミン80、ファーミン86T、ファーミンO、ファーミンT、ファーミンなどの脂肪アミン類(以上、花王(株)製)や、ナイミーンL−201、ナイミーンL−202、ナイミーンL207、ナイミーンF−215、ナイミーンS−202、ナイミーンS−204、ナイミーンS−210、ナイミーンS−215、ナイミーンS−220、ナイミーンT2−206、ナイミーンT2−210、ナイミーンT2−230、ナイミーンT2−260、ナイミーンDT−203、ナイミーンDT−208などのアルキルポリエーテルアミン類(以上、日本油脂(株)製)や、NIKKOL TAMNOS−5、TAMNOS−10,TAMNOS−15、TAMNO−5、TAMNO−15などのポリオキシエチレンアルキルアミン類や、TAMDS−4、TAMDS−15、TAMDO−5などのポリオキシエチレン脂肪酸アミド類や、NIKKOL AM−301、AM3130Nなどの両性界面活性剤(以上、日光ケミカルズ(株)製)や、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ジエチルイソプロパノールアミン、ブチルイソプロピルアミン、ブチルベンジルアミン、ブトキシプロピルアミン(以上、関東化学(株)製)などが挙げられる。
【0026】
インキの粘度は所望の粘度になるよう増粘剤を適宜調整して使用することで調整できる。これらの具体例を挙げると、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルロース、コラーゲン、HPC−SL、同L、同M、同H(以上、日本曹達(株)製)、アビセルPH−101、同102、同301、同M06、TG−101(以上、旭化成(株)製)等のセルロース類、ケルザン、ケルザンS、ケルザンF、ケルザンAR、ケルザンM、ケルザンD(以上、三晶(株)製)、コージン、コージンF、コージンT、コージンK(以上、(株)興人製)等のキサンタンガム、レオザン(三晶(株)製)等のサクシノグルカン、K1A96(三晶(株)製)等のウエランガム、K1A112、K7C2433(以上、三晶(株)製)等のラムザンガム、ジャガー8111、同8600、同HP−8、同HP−60、CP−13(以上、三晶(株)製)等のグァーガム類、プルラン((株)林原製)等の水溶性多糖類、GX−205、NA−010(昭和電工(株)製)等のN−ビニルアセトアミド重合架橋物等の水溶性合成高分子、スメクトンSA(スメクタイト、クニミネ工業(株)製)、クニピア−F、クニピア−G(モンモリロナイト、クニミネ工業(株)製)、ベンゲルHV、同FW、同15、同23(ベントナイト、(株)豊順洋行製)、エスベン、同C、同W、同N400(4級アンモニウムカチオン変性モンモリロナイト、(株)豊順洋行製)等の無機粘土鉱物が挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0027】
顔料の分散性を良好なものとするために、アニオン、カチオン、ノニオン、両性の界面活性剤や、高分子樹脂を補助的に使用することができる。具体的には、高級脂肪酸、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪酸硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸類、リン酸エステル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等のアニオン、ノニオン、カチオン性の界面活性剤や、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体樹脂などの顔料分散用の樹脂やオリゴマーなどが挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
また、顔料を分散するには汎用されている一般的な方法を用いることが可能である。例えば、顔料と溶剤と分散剤を混合し、プロペラ撹拌機等で均一に撹拌した後、分散機で顔料を分散する。ロールミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ホモジナイザー等の分散機はインキの水や有機溶媒の量、顔料濃度によって適宜選択する。
【0028】
その他必要に応じて、天然樹脂、合成樹脂、アニオン、カチオン、ノニオン、両性界面活性剤などの分散剤や、ベンゾトリアゾール、金属塩系、リン酸エステル系化合物などの防錆剤や、イソチアゾロン、オキサゾリジン系化合物などの防腐剤や、シリコン系、鉱物油、フッ素系化合物などの消泡剤や、グリセリン、ソルビタン系、多糖類、尿素、エチレン尿素またはこれらの誘導体などの湿潤剤や、アセチレングリコール、アセチレンアルコールおよびシリコン系界面活性剤などのレベリング性付与剤や、凍結防止剤などの従来公知のインキ用添加剤を併用することも可能である。
【0029】
インキを製造するには、上記で分散した顔料と他の成分、例えば粘度調整用樹脂や溶剤、潤滑剤、水溶性多糖類等を混合し、ホモミキサー等の撹拌機にて均一になるまで溶解・混合することで得られるが、場合によって混合したインキをさらに分散機にて分散したり、得られたインキを濾過や遠心分離機に掛けて粗大粒子や不溶解成分を除いたりすることは何ら差し支えない。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例に基づき更に詳細に説明する。尚、各実施例中単に「部」とあるのは「重量部」を表す。
(実施例1)
プリンテックス35(カーボンブラック、デグサヒュルスジャパン(株)製) 6.0部
SPILON VIOLET C−RH(油性染料、保土谷化学工業(株)製)
16.3部
VALIFAST YELLOW C−GNH(油性染料、オリエント化学工業(株)
3.1部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 50.9部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 17.2部
エスレックBL−1(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 1.6部
エスレックBH−3(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 0.4部
NIKKOL HCO−10(化1にて示される化合物、日光ケミカルズ(株)製)
1.0部
フォスファノールLB400(化2にて示される化合物と化3にて示される化合物との混合物、東邦化学工業(株)製) 1.5部
NIKKOL TOP−0V(化4にて示される化合物、東邦化学工業(株)製)
1.0部
ナイミーンL201(PEG−1ラウリルアミン、日油(株)製) 1.0部
上記成分のうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテルとエチレングリコールモノイソプロピルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからプリンテックス35の全量を加えダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い黒色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料の全量を加え、70℃で3時間攪して黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0031】
(実施例2)
SPILON VIOLET C−RH(油性染料、保土谷化学工業(株)製)
13.0部
SPILON YELLOW C−GNH(油性染料、保土谷化学工業(株)製)
7.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 27.0部
エチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル 16.5部
ベンジルグリコール 5.0部
ハイラック110H(ケトン樹脂、日立化成(株)製) 6.0部
PEMULEN TR−2(B.F.Goodrich社製、米国) 1.5部
NIKKOL HCO−5(化1にて示される化合物、日光ケミカルズ(株)製)
2.0部
NONION C−2300(化1にて示される化合物、日油(株)製) 1.0部
フォスファノールLP710(化2にて示される化合物と化3にて示される化合物との混合物、東邦化学工業(株)製) 20.0部
アミート105(POEココナットアミン、(株)花王製) 1.0部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解して黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0032】
(実施例3)
NOVOPERM RED F3RK70(C.I.Pigment Red 170、
クラリアントジャパン(株)製) 3.0部
SPILON RED C−GH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 17.6部
SPILON RED C−BH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 0.8部
SPILON YELLOW C−GNH 3.8部
ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル 16.6部
エチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル 43.5部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 3.0部
ジョンクリル678(スチレンアクリ酸樹脂、BASFジャパン(株)製) 1.0部
エスレックBL−1 0.6部
EMALEX HC−20(化1にて示される化合物、日本エマルジョン(株)製)
10.0部
プライサーフA208(化2にて示される化合物と化3にて示される化合物との混合物、
第一工業製薬(株)製) 0.1部
上記成分のうち、エチレングリコールモノイソブチルエーテルとエチレングリコールモノノルマルプロピルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからNOVOPERM RED F3RK70の全量を加えダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い赤色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料の全量を加え、70℃で3時間攪拌して赤色のボールペン用油性インキを得た。
【0033】
(実施例4)
VALIFAST BLUE 1603(C.I.DIRECT BLUE 86とC.I.BASIC BLUE 7との造塩染料、オリエント化学工業(株)製)20.0部SPILON RED C−GH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 3.0部
フェニルセルソルブ 41.4部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 23.3部
ベンジルアルコール 10.2部
エスレックBH−3 1.0部
ユニオックスHC−50MSU(化1にて示される化合物、日油(株)製) 0.1部
NIKKOL TOP−0V(化4にて示される化合物、日光ケミカルズ(株)製)
1.0部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解して青色のボールペン用油性インキを得た。
【0034】
(実施例5)
実施例4において、ユニオックスHC−50MSUを0.008部に減じ、減じた分を
ジエチレングリコールモノメチルエーテルに置き換えた以外は同様になして青色の油性インキを得た。
【0035】
(実施例6)
FUJI SP BLACK 8922(カーボンブラック20%分散液、富士色素(株)製) 25.0部
エチレングリコール 6.0部
グリセリン 6.0部
ブラウノンBR−404(化1にて示される化合物、日進化成(株)製) 2.0部
EMALEX HC−100(化1にて示される化合物、日本エマルジョン(株)製)
0.5部
フォスファノール RD720(化2にて示される化合物と化3にて示される化合物の混合物とのNa塩、東邦化学工業(株)製) 3.0部
ベンゾトリアゾール 0.5部
プロクセル GXL 0.2部
ペミュレンTR−1(架橋型のアクリル酸とアクリル酸エステル共重合体、B.F.Goodrich社製) 0.3部
水酸化ナトリウム 0.7部
イオン交換水 55.8部
上記成分中、ペミュレンTR−1の全量と水10部をラボミキサーにて1時間攪拌してペミュレンTR−1水溶液を調整した。残りの各成分を混合し均一になるまで1時間攪拌した液にペミュレンTR−1水溶液を加えて更に2時間混合攪拌して黒色のボールペン用水性インキを得た。
【0036】
(実施例7)
Water Red #2(C.I.ACID RED87、オリエント化学工業(株)製) 5.0部
Water Yellow #6C(C.I.ACID YELLOW23、オリエント化学工業(株)製) 3.0部
ケルザン AR(キサンタンガム、三晶(株)製) 0.5部
エチレングリコール 12.0部
グリセリン 6.0部
ブラウノン RCW−40(化1にて示される化合物、日進化成(株)製) 5.0部
NIKKOL DDP−10(化3にて示される化合物、日光ケミカルズ(株)製)
0.5部
ハイドロキノンスルホン酸カリウム 0.3部
ベンゾトリアゾール 0.5部
プロクセル GXL 0.2部
AKP−20(アルミナ、粒径0.5μm、住友化学工業(株)製) 0.01部
イオン交換水 66.99部
上記成分中、ケルザンARの全量と水5.0部とをラボミキサーにて30分間攪拌して均一に溶解しケルザン水溶液を調整した。次いでAKP−20とグリセリンの全量を混合し、均一に攪拌した後ホモジナイザーで15分攪拌しアルミナ分散液を調整した。残り各成分を混合し1時間攪拌した後ケルザンAR水溶液とアルミナ分散液を加え更に2時間混合攪拌して赤色のボールペン用水性インキを得た。
【0037】
(実施例8)
Water Blue 105S(C.I.ACID BLUE90、オリエント化学工業(株)製) 4.0部
エチレングリコール 5.0部
グリセリン 3.0部
UNIOX HC−60MIS(化1にて示される化合物、日油(株)製) 3.0部
プライサーフA219(化2にて示される化合物と化3にて示される化合物との混合物、第一工業製薬(株)製) 10.0部
ベンゾトリアゾール 0.5部
アスコルビン酸ナトリウム 0.4部
プロクセル GXL(1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、防腐剤、ICI(株)
製) 0.2部
イオン交換水 73.9部
上記成分混合し、ラボミキサーにて1時間攪拌して均一に溶解して青色のボールペン用水性インキを得た。
【0038】
(実施例9)
実施例5において、イオン交換水18.0部をブラウノンBR−404に置き換えた以外は同様になして黒色の水性インキを得た。
【0039】
(比較例1)
実施例1において、NIKKOL HCO−10を除して、その分をエチレングリコールモノイソプロピルエーテルに置き換えた以外は同様になして黒色の油性インキを得た。
【0040】
(比較例2)
実施例1において、NIKKOL HCO−10を除して、代わりにNIKKOL GO−460V(テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、日光ケミカルズ(株)製)を添加した以外は同様になして黒色の油性インキを得た。
【0041】
(比較例3)
実施例3において、EMALEX HC−20を除して、代わりにNIKKOL TMGS−5V(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、日光ケミカルズ(株)製)を添加した以外は同様になして赤色の油性インキを得た。
【0042】
(比較例4)
VALIFAST BLUE 1603(C.I.DIRECT BLUE 86とC.I.BASIC BLUE 7との造塩染料、オリエント化学工業(株)製)20.0部SPILON RED C−GH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 3.0部
フェニルセルソルブ 57.7部
ベンジルアルコール 9.3部
ハイラック110H 7.0部
ノムコートHK−P(ベヘン酸/エイコ酸二酸ポリグリセリル−10、日清オイリオグループ(株)製) 1.0部
EXTRA OLEIN 80 2.0部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解して青色のボールペン用油性インキを得た。
【0043】
(比較例5)
実施例7において、プライサーフA219を除して、その分を水に置き換えた以外は同様になして青色の水性インキを得た。
【0044】
(比較例6)
実施例7において、プライサーフA219を除して、代わりにEXTRA OLEIN 80(オレイン酸、日油(株)製)を添加した以外は同様になして青色の水性インキを得た。
【0045】
以上、実施例、比較例で得たインキについて、下記の試験を行った。結果を表1に示す。
【0046】
(試験用油性ボールペンの作製)
上記実施例1〜5及び比較例1〜4で得たボールペン用油性インキを市販の油性ボールペン(.e−ball、製品符号 BK127、ぺんてる(株)製(ボール径φ0.7))と同構造の筆記具に0.3g充填し、遠心機にて遠心力(1000rpm、5分間)を加えてインキ中の気泡を脱気して、試験用ボールペンを作製した。
【0047】
(試験用水性ボールペンの作製)
上記実施例6〜9及び比較例5、6で得たボールペン用水性インキを市販の水性ボールペン(エナージェル、製品符号 BL17、ぺんてる(株)製(ボール径φ0.7))、と同構造の筆記具に1.8g充填し、遠心機にて遠心力(1000rpm、5分間)を加えてインキ中の気泡を脱気して、試験用ボールペンを作製した。
【0048】
ボール沈み量の測定:上記実施例、比較例のボールペンをn=5本ずつ螺旋筆記試験機(筆記角度70°、荷重150g、筆記速度7cm/sec)にて400m筆記後に、ボールペンチップのボールを抱持するボールホルダーの先端からボール先端までの断面に対する垂直方向の距離を測定し、未筆記の時との差をボール沈み量とした。数値はn=5の平均値を算出した。
【0049】
インキ吐出量:上記実施例、比較例のボールペンをn=5本ずつ螺旋筆記試験機(筆記角度70°、荷重150g、筆記速度7cm/sec)にて400m筆記し、200m毎にボールペン重量を測定し、減量したインキ重量をインキ吐出量とした。
【0050】
筆記抵抗値の測定:上記実施例、比較例のボールペンをn=5本ずつ(株)トリニティーラボ製のTribo−master(Type:TL201Sa)にて、ペン作成後未筆記の状態と、400m螺旋筆記後(螺旋筆記条件:筆記角度70°、荷重150g、筆記速度7cm/sec)とで、それぞれ15cm筆記させた時の筆記抵抗値を測定した。筆記抵抗値を測定した際の筆記角度は、90°と70°との2条件にて筆記させ、その他の条件としては、筆記荷重150g、筆記速度7cm/secとした。筆記抵抗値の測定については、測定周波数200Hzにて2秒間測定を行ったデータを平均して、検体に対するの平均筆記抵抗値を算出し、更に5本の検体に対する各平均筆記抵抗値からn=5本の平均値を算出して各実施例、比較例の筆記抵抗値とした。
【0051】
書き味の官能試験(書き味の軽さ、滑らかさ):モニター20人で手書きによる官能試験をペン作成後未筆記の状態と、400m螺旋筆記後(螺旋筆記条件:筆記角度70°、荷重150g、筆記速度7cm/sec)との2種行い、書き味を評価した。
評価基準は、重いもしくは滑らかでない(1点)、軽いが滑らかでない、もしくは滑らかだが重い(2点)、軽くて滑らか(3点)、非常に軽くて滑らか(4点)、で評価し、20人の平均値を算出した。
【0052】
筆跡のカスレの有無:上記実施例、比較例のボールペンをn=5本ずつ螺旋筆記試験機(筆記角度70°、荷重150g、筆記速度7cm/sec)にて400m筆記したときの、筆跡のカスレの有無を目視で確認した。5本中に一箇所もカスレが生じなかったものをカスレ「無し」、一箇所でもカスレが生じたものをカスレ「有り」とした。
【0053】
ボールホルダーの先端の紙面への接触有無:上記実施例、比較例のボールペンをn=5本ずつ螺旋筆記試験機(筆記角度70°、荷重150g、筆記速度7cm/sec)にて筆記した際に、380mから400m筆記時に、ボールペンチップのボールを抱持するボールホルダーの先端が紙面に接触しているかどうかを確認した。5本中の一本でも、少しでも紙面に接触していることが認められた場合は接触「有り」、全く接触しない場合は接触「無し」とした。
【0054】
【表1】

【0055】
以上、詳細に説明したように、本発明のインキは、強い筆記圧をかけても極めて軽くて滑らかな書き味を得る事ができ、かつ筆記距離に伴いその書き味が劣化しない、ボールペン用インキに関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記一般式(化1)で示される化合物と、下記一般式(化2)、(化3)、(化4)のいずれかで示される化合物から選ばれる1種もしくは2種以上の混合物と液媒体とを含有するボールペン用インキ。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【請求項2】
上記一般式(化1)と上記一般式(化2)、(化3)、(化4)のいずれかで示される化合物から選ばれる1種もしくは2種以上の混合物とのインキ中の重量比率が(化1)/(化2)+(化3)+(化4)=0.1以上100以下である、請求項1記載のボールペン用インキ。
【請求項3】
前記液媒体の50重量%以上がアルコール系及び/またはグリコール系溶剤であり、かつ前記上記一般式(化1)で示される化合物におけるα+β+γ+δ+ε+ζの値が80未満である請求項1又は請求項2記載のボールペン用インキ。
【請求項4】
ブチラール樹脂もしくはスチレンアクリル酸樹脂もしくはケトン樹脂を含有する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のボールペン用インキ。

【公開番号】特開2010−168494(P2010−168494A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13517(P2009−13517)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】