説明

ボールペン用油性インキ組成物

【課題】ボテが少なく、書き味が滑らかなボールペン用油性インキ組成物を提供する。
【解決手段】着色剤と、カルボニル基を有する曳糸性樹脂、具体的にはポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物、ポリビニルブチラールなどの該曳糸性樹脂をインキ組成物全量に対して0.1重量%以上3重量%以下含み、少なくとも溶剤として5〜60%のプロピレンカーボネートを含むボールペン用油性インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールペンに用いる油性インキ組成物に関する。具体的には、筆記の際にペン先部分から発生する余分なインキの紙面へのボタ落ちや、チップ先端の外部分にインキ滴が溜まったりインキの這い上がりなどのボテ現象がなく、更に筆記感が滑らかなボールペン用油性インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールペン用油性インキ組成物は、染料や顔料などの着色材と、グリコール類や、グリコールエーテル類、高沸点のアルコール等の溶剤と、ケトン樹脂、キシレン樹脂、ロジン樹脂などの紙面への定着を主な目的とした樹脂と、必要に応じてポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール等の粘度調整、流動特性調整、ボテを防止することを主な目的としたカルボニル基を有する曳糸性樹脂とからなっている。ボテを防止することは古くから様々研究がなされている。その具体的手段としては、特定のポリビニルピロリドンを使用したもの(特許文献1、2、3、4参照)、ポリビニルピロリドンの誘導体を使用したもの(特許文献5参照)、特定のポリビニルピロリドンを使用し、粘度や剪断減粘性に関する数値や曳糸長を限定したもの(特許文献6、7参照)、ポリビニルピロリドンと他の添加剤を併用したもの(特許文献8、9、10)、粘度や剪断減粘性に関する数値を限定したもの(特許文献11、12参照)などが開示されている。なお、使用する溶剤はエチレングリコールモノフェニルエーテルやベンジルアルコールなどのグリコール系溶剤が一般的ではあるが、植物油を使用したもの(特許文献13参照)や、3−メトキシ−3−メチルブタノールを代表とする特定のグリコールエーテル(特許文献14)などが安全性や裏抜けの改善の点から提案されている。
【特許文献1】特開平8−239616号公報
【特許文献2】特開2001−139866号公報
【特許文献3】特開2002−3771号公報
【特許文献4】特開2002−3772号公報
【特許文献5】特開平7−188601号公報
【特許文献6】特開2001−139867号公報
【特許文献7】特開平8−157765号公報
【特許文献8】特開平10−219173号公報
【特許文献9】特開平10−219174号公報
【特許文献10】特開平11−246812号公報
【特許文献11】特開平6−313143号公報
【特許文献12】特開平10−297158号公報
【特許文献13】特開2004−224853号公報
【特許文献14】国際公開WO01/74956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、書き味を最優先に考慮して設計された低粘度インキにおいてはインキの流動方向とは垂直方向に働く力であるノーマルフォースが大きくなり、書き味とボテの両立をする事が非常に困難であった。本発明は、ボテが少なく、更に書き味の滑らかな油性ボールペン用インキ組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
着色剤と、カルボニル基を有する曳糸性樹脂を少なくとも含むボールペン用油性インキ組成物において、溶剤としてプロピレンカーボネートを含むことを特徴とするボールペン用油性インキ組成物を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0005】
溶剤として使用するプロピレンカーボネートは環状ラクトンの一種であり、カルボニル基を含む低粘性の溶剤であるが、同じカルボニル基を有する曳糸性樹脂との相溶性が高い事から、糸を曳いた時にインキに発現される弾性が小さくなり、インキの流動方向とは垂直方向に働く力であるノーマルフォースが小さいまま曳糸性を有する事が、ボテの性能はそのままに書き味を軽く保つ事ができるものと推察される。また、プロピオンカーボネートのもつインキ用樹脂や染料、添加剤などの溶解安定性の高さもインキの流動性を良くして書き味を良好にする要因の一つになっているものと推察される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のインキ組成物に用いるプロピレンカーボネートは主溶剤として用いても良いし、他の溶剤と混合して使用しても良い。その使用量はインキ組成物中で5〜60重量%程度が好ましい。
【0007】
プロピレンカーボネートと併用する有機溶剤は、初筆かすれ性能や経時減量速度のコントロールや、インキ洩れ性能、書き味、ボテ等を両立させるために主溶剤または補助溶剤として用いるものであり、使用する着色剤の溶解性、分散安定性を考慮し、適宜選択する事ができる。特に好ましい有機溶剤は、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノヘキシルヘーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、であり、その使用量は5〜80重量%が好ましい。なお、芳香族環を有する有機溶剤は書き味とボテの両立に対する効果が薄れてしまうので、なるべく非芳香族系の有機溶剤と併用するのが好ましい。
【0008】
着色剤は、従来公知の染料や顔料が単独若しくは混合して使用できる。
染料としては、ニグロシンベ−スEE、同EEL、同EX、同EXBP、同EB、オイルイエロー101、同107、オイルピンク312、オイルブラウンBB、同GR、オイルグリーンBG、オイルブルー613、同BOS オイルブラックHBB、同860、同BS、バリファストイエロー1101、同1105、同3108、同4120、バリファストオレンジ2210、同3209、同3210、バリファストレッド1306、同1308、同1355、同1360、同2303、同2320、同3304、同3306、同3320、バリファストピンク2310N、バリファストブラウン2402、同3405、バリファストグリーン1501、バリファストブルー1603、同1605、同1607、同1631、同2606、同2610、同2620、バリファストバイオレット1701、同1702、バリファストブラック1802、同1807、同3804、同3806,同3808、同3810、同3820、同3830、スピリットレッド102、オスピーイエローRY、ROB−B、MVB3、SPブルー105(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンイエロー3RH、同GRLHスペシャル、同C−2GH、同C−GNH、アイゼンスピロンオレンジ2RH、同GRHコンクスペシャル、アイゼンスピロンレッドGEH、同BEH、同GRLHスペシャル、同C−GH、同C−BH、アイゼンスピロンバイオレットRH、同C−RH、アイゼンスピロンブラウンBHコンク、同RH、アイゼンスピロンマホガニーRH、アイゼンスピロンブルーGNH、同2BNH、同C−RH、同BPNH、アイゼンスピロングリーンC−GH、同3GNHスペシャル、アイゼンスピロンブラックBNH、同MH、同RLH、同GMHスペシャル、同BHスペシャル、S.B.N.オレンジ703、S.B.N.バイオレット510、同521、S.P.T.オレンジ6、S.P.T.ブルー111、SOTピンク1、SOTブルー4、SOTブラック1、同6、同10、同12、13リキッド、アイゼンローダミンBベース、アイゼンメチルバイオレットベース、アイゼンビクトリアブルーBベース(以上、保土谷化学工業(株)製)、オイルイエローCH、オイルピンク330、オイルブルー8B、オイルブラックS、同FSスペシャルA、同2020、同109、同215、ALイエロー1106D、同3101、ALレッド2308、ネオスーパーイエローC−131、同C−132、同C−134、ネオスーパーオレンジC−233、ネオスーパーレッドC−431、ネオスーパーブルーC−555、ネオスーパーブラウンC−732、同C−733(以上、中央合成化学(株)製)、オレオゾールファストイエロー2G、同GCN、オレオゾールファストオレンジGL、オレオゾールファストレッドBL、同RL(以上、田岡化学工業(株)製)、サビニールイエロー2GLS、同RLS、同2RLS、サビニールオレンジRLS、サビニールファイアレッドGLS、サビニールレッド3BLS、サビニールピンク6BLS、サビニールブルーRN、同GLS、サビニールグリーン2GLS、サビニールブラウンGLS(以上、サンド社製、スイス国)、マゼンタSP247%、クリスタルバイオレット10B250%、マラカイトグリーンクリスタルコンク、ブリリアントグリーンクリスタルH90%、スピリットソルブルレッド64843(以上、ホリディ社製、英国)、ネプチューンレッドベース543、ネプチューンブルーベース634、ネプチューンバイオレットベース604、バソニールレッド540、バソニールバイオレット600(以上、BASF社製、独国)などの油溶性染料が挙げられる。
【0009】
顔料としては、SpecialBlack6、同S170、同S610、同5、同4、同4A、同550、同35、同250、同100、Printex150T、同U、同V、同140U、同140V、同95、同90、同85、同80、同75、同55、同45、同P、同XE2、同L6、同L、同300、同30、同3、同35、同25、同200、同A、同G(以上、デグサ・ジャパン(株)製)、#2400B、#2350、#2300、#2200B、#1000、#950、#900、#850、#MCF88、MA600、MA100、MA7、MA11、#50、#52、#45、#44、#40、#33、#32、#30、CF9、#20B、#4000B、(以上、三菱化成工業(株)製)、MONARCH1300、同100、同1000、同900、同880、同800、同700、MOGUL L、REGAL400R、同660R、同500R、同330R、同300R、同99R、ELFTEX8、同12、BLACK PEARLS2000(以上、米国、キャボットCorp.製)、Raven7000、同5750、同5250、同5000、同3500、同2000、同1500、同1255、同1250、同1200、同1170、同1060、同1040、同1035、同1020、同1000、同890H、同890、同850、同790、同780、同760、同500、同450、同430、同420、同410、同22、同16、同14、同H20、同C、Conductex975、同900、同SC(以上、コロンビヤン・カーボン日本(株)製)などのカーボンブラック、KA−10、同10P、同15、同20、同30、同35、同60、同80、同90、KR−310、同380、同460、同480(以上、チタン工業(株)製)、タイピュアR−900、同902、同960(以上、デュポン(株)製)、タイペークCR−50、同58、同60、同67、同80、同90、R−580、同670、同680、同780、同820、同930(以上、石原産業(株)製)、JR−300、同403、同600A、同800、同805(以上、テイカ(株)製)、P25(日本アエロジル(株)製)などの酸化チタン、BS−605、同607(以上、東洋アルミ(株)製)、ブロンズパウダーP−555、同P−777(以上、中島金属箔工業(株)製)、ブロンズパウダー3L5、同3L7(以上、福田金属箔工業(株)製)などの金属粉顔料、また、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロムなどの無機顔料、ハンザエロー−10G、同5G、同3G、同4、同GR、同A、ベンジジンエロー、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキ、キノリンエロー、スダーン1、パーマネントオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGN、パーマネントブラウンFG、パラブラウン、パーマネントレッド4R、ファイヤーレッド、ブリリアントカーミンBS、ピラゾロンレッド、レーキレッドC、キナクリドンレッド、ブリリアントカーミン6B、ボルドー5B、チオインジゴレッド、ファストバイオレットB、ジオキサジンバイオレット、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、インジゴ、アシッドグリーンレーキ、フタロシアニングリーンなどの有機顔料などが挙げられる。また、この他に硫化亜鉛、珪酸亜鉛、硫酸亜鉛カドミウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウムなどの無機蛍光顔料が挙げられる。
【0010】
上記した着色剤は単独或いは複数混合して使用することが出来、使用量はインキ組成物全量に対して2.0重量%以上20.0重量%以下が好ましい。2.0重量%未満では濃度が低すぎて筆跡が確認し難いこともあり、20.0重量%を超えるとインキ組成物粘度が高くなり筆記具ペン先からのインキ吐出が不十分になることがある。
【0011】
カルボニル基を有する曳糸性樹脂はボテを防止するために添加される。具体的にはポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物、ポリビニルブチラールなどが挙げられる。使用量はインキ組成物全量に対して0.1重量%以上3重量%以下が好ましい。0.1重量%未満ではボテを防止する効果が得られず、3重量%以上では書き味の軽さが十分でなくなる。
【0012】
筆跡の筆記面への定着性を付与するために樹脂がインキ組成物中に添加される。具体例としては、例えば、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ロジン樹脂などのインキ組成物用樹脂が挙げられる。
インキ組成物用樹脂の具体例としては、フェノール樹脂として、タマノル100S、同510(以上、荒川化学工業(株)製)、ヒタノール1501、同2501(以上、日立化成工業(株)製)、YP−90、YP−90L、YSポリスターS145、同#2100、同#2115、同#2130、同T80、同T100、同T115、同T130、同T145、マイティエースG125、同150(以上、ヤスハラケミカル(株)製)などが、ケトン樹脂として、ケトンレジンK−90(荒川化学工業(株)製)、ハロン80、同110H(以上、本州化学(株)製)、シンセティックレジンAP、同SK、同1201(以上、ヒュルス社製、独国)などが、ロジン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂として、ハーコリンD、ペンタリン255、同261、同269、同830(以上、理化ハーキュレス(株)製)、ハリエスターNL、同L、同MT、同MSR−4、ハリマック135G、同T−80、同FX−25、同AS−5、同AS−9、ネオトールC、ガムロジンX(以上、ハリマ化成(株)製)、ガムロジンWW(中国産)、エステルガムH、マルキード#30A、同#31、同#32、同#33、同#34(荒川化学工業(株)製)などが挙げられる。
これらの樹脂は、単独あるいは複数混合して使用でき、筆記面への定着性を付与するために添加する場合、その使用量はインキ組成物全量に対し0.5〜20.0重量%以下が好ましい。0.5重量%未満では筆記面に対する筆跡の定着性が不十分となる場合があり、20.0重量%を超えるとインキの粘度が高くなりペン先からのインキ吐出が悪くなる不具合が発生する可能性がある。
【0013】
以上の成分の他に更に必要に応じて、従来インキ組成物に使用されている界面活性剤、防錆剤などの各種添加剤を適宜使用できる。界面活性剤の一例を挙げると、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸などが挙げられる。防錆剤の一例を挙げると、ベンゾトリアゾール、シクロヘキシルアンモニウムクロライド、2−メルカプトベンゾトリアゾール、ベンゾイルアミノカプロン酸、硝酸カルシウムなどが挙げられる。
【0014】
本願発明のインキ組成物は、上記成分を従来知られている方法により得られる。なお、濾過や遠心処理でインキ組成物中の粗大顔料を取り除いても良い。
【実施例】
【0015】
(実施例1)
プリンテックス35(カーボンブラック、デグサヒュルスジャパン(株)製)
7.0重量部
スピロンイエローC−GNH(油溶性黄色染料、保土谷化学工業(株)製)
2.0重量部
バリファストレッド1308(油溶性赤色染料、オリエント化学工業(株)製)
4.0重量部
ネオスーパーブルーC−555(油溶性青色染料、中央合成化学(株)製)
10.0重量部
プロピレンカーボネート(丸善石油化学(株)製) 40.0重量
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 25.0重量部
ハイラック110H(ケトン樹脂、日立化成(株)製) 4.0重量部
エスレックBL−1(ポリビニルブチラール、分散剤、積水化学工業(株)製)
3.0重量部
エスレックBH−3(ポリビニルブチラール、曳糸性付与剤、積水化学工業(株)製)
1.0重量部
プライサーフA208B(リン酸エステル、潤滑剤、第一工業製薬(株)製)
2.0重量部
ナイミーンL−201(オキシエチレンドデシルアミン、潤滑剤、日油(株)製)
2.0重量部
上記成分のうち、プロピレンカーボネートの全量と、ジエチレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからプリンテックス35の全量を加えダイノミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い黒色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後室温まで放冷し黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。このものの粘度は25℃、剪断速度1[1/sec]の条件で700mPa・sであった。
【0016】
(実施例2)
FUJI RED 8800(C.I.Pigment Red 254、冨士色素(株)製) 5.0重量部
スピロンレッド C−GH 13.0重量部
スピロンイエロー C−GNH 5.0重量部
プロピレンカーボネート 50.0重量部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 15.0重量部
エスレックBL−1 3.0重量部
ハイラック110H 5.0重量部
PVP K−90(ポリビニルピロリドン、曳糸性付与剤、アイエスピージャパン(株))
0.4重量部
サルコシネートOH(オレオイルサルコシン、日光ケミカルズ(株)製)
3.6重量部
上記成分のうち、プロピレンカーボネートの全量と、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからFUJI RED 8800の全量を加えダイノミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い赤色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後室温まで放冷し赤色のボールペン用油性インキ組成物を得た。このものの粘度は25℃、剪断速度1[1/sec]の条件で1,120mPa・sであった。
【0017】
(実施例3)
Cromophtal Blue A3R(C.I.Pigment Blue 60、チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製) 7.0重量部
スピロンレッド C−BH(油溶性赤色染料、オリエント化学工業(株)製)
4.0重量部
ネオスーパーブルーC−555 14.0重量部
プロピレンカーボネート 30.0重量部
エチレングリコールモノイソブチルエーテル 30.0重量部
エスレックBL−1 2.0重量部
ハリマックT−80(ロジン変性マレイン酸樹脂、ハリマ化成(株)製)
6.0重量部
エスレックBH−3 2.5重量部
サルコシネートOH 2.0重量部
デカグリン10−MAC(マカデミアナッツ油デカグリセリル、日光ケミカルズ(株)製)
2.0重量部
上記成分のうち、プロピレンカーボネートの全量と、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからCromophtal Blue A3Rの全量を加えダイノミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い青色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後室温まで放冷し青色のボールペン用油性インキ組成物を得た。このものの粘度は25℃、剪断速度1[1/sec]の条件で1,600mPa・sであった。
【0018】
(実施例4)
スピロンバイオレットC−RH(油溶性染料、保土谷化学工業(株)製)
15.0重量部
スピロンイエローC−GNH(油溶性染料、保土谷化学工業(株)製)
10.0重量部
エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル 50.0重量部
プロピレンカーボネート 10.0重量部
ハイラック110H 12.0重量部
PVP K−90 0.5重量部
サルコシネートOH 2.7重量部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解して黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。このものの粘度は25℃、剪断速度1[1/sec]の条件で5,200mPa・sであった。
【0019】
(実施例5)
スピロンバイオレットC−RH(油溶性染料、保土谷化学工業(株)製)
15.0重量部
スピロンイエローC−GNH(油溶性染料、保土谷化学工業(株)製)
10.0重量部
プロピレンカーボネート 40.0重量部
ベンジルアルコール 15.2重量部
ハイラック110H 15.0重量部
PVP K−90 0.8重量部
サルコシネートOH 4.0重量部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解して黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。このものの粘度は25℃、剪断速度1[1/sec]の条件で8,400mPa・sであった。
【0020】
(比較例1)
実施例1において、プロピレンカーボネートに代えて、同量のエチレングリコールモノフェニルエーテルにした以外は、実施例1と同様になして黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0021】
(比較例2)
実施例2において、プロピレンカーボネートに代えて、同量のベンジルアルコールにした以外は、実施例2と同様になして赤色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0022】
(比較例3)
実施例3において、プロピレンカーボネートに代えて、エチレングリコールモノイソブチルエーテルを増量した以外は、実施例3と同様になして青色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0023】
(比較例4)
実施例4において、PVP K−90に代えて、同量のクルーセルH(ヒドロキシプロピルセルロース、増粘剤、三晶(株)製)を添加した以外は、実施例4と同様になして黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0024】
上記、実施例1〜5、比較例1〜4で得たボールペン用油性インキ組成物を、市販のボールペン(ドットイーボールペンBK127、ぺんてる(株)製、ペン先はステンレス製ボールホルダーにて直径0.7mmの超硬合金の筆記ボールを抱持したボールペンチップを備えるノック出没式ボールペン)と同様の筆記具に0.30g充填し、遠心機にて遠心力を加えてインキ中の気泡を脱気して、試験用ボールペンを作製した。
【0025】
ボテの評価
各試験サンプルを螺旋式筆記試験機HST−10(HUTT社製)にて筆記速度4.5m/分、筆記角度75°、筆記荷重150g、紙送り速度2cm/分にて200m筆記する。紙送り速度を2cm/分に設定するのは、筆跡をきれいに隙間のない面塗り状態にする為であり、筆跡幅が小さくなると筆跡間に隙間ができ、中抜け現象も周辺の正常な筆跡部分との濃度差となり、小さな異常でも濃度ムラを目視で確認し易くする為である。筆記後、紙面に付着したボテの数を数える(単位:個)。なお、数えるボテの大きさはJIS S 6039(ボールペン及び中しん)において解説の図1で規定される大きさ以上のものを数える。
【0026】
書き味の滑らかさ評価(書き味抵抗値の標準偏差)
書き味の滑らかさは、一定速度でペンを動かしたときのペンを持つ手にかかる抵抗値の最大値と最小値のばらつき、すなわち、抵抗値の標準偏差の大きさで表される。
測定条件:実施例1〜5および比較例1〜4のインキを充填した各ボールペンサンプルをn=3本ずつ用意し、静・動摩擦測定機(Tribo−master Type TL201Sa、(株)トリニティーラボ製)を用い、ペン作成後未筆記のボールペンサンプルを、高筆圧条件として筆記荷重を300g、筆記角度70度、筆記速度7cm/secで15cm筆記させたときの筆記抵抗値を測定した。
筆記抵抗値の測定は、測定周波数200Hzにて10秒間測定を行った。測定開始0.5秒から2.0秒までの間で得られた筆記抵抗値のデータから、各ボールペンサンプルの筆記抵抗値の標準偏差を算出し、実施例、比較例の滑らかさの代表値とした。
標準偏差の値が小さいほど、得られた各点の筆記抵抗値にバラツキが少ないこととなり、筆記抵抗値の増減が少なく一定に近い筆記抵抗値と考えられる。よって、急に筆記抵抗値が増加するような点がなく、滑らかな筆記感触と感じられるものである。
【0027】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、カルボニル基を有する曳糸性樹脂を少なくとも含むボールペン用油性インキ組成物において、溶剤としてプロピレンカーボネートを含むことを特徴とするボールペン用油性インキ組成物。

【公開番号】特開2011−213863(P2011−213863A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83325(P2010−83325)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】