説明

ボールペン用油性インキ組成物

【目的】 長距離の筆記や、高筆圧での長距離の筆記によっても、ボール受け座の摩耗を抑制すると共に、良好な筆記感および均一な筆跡を維持できるボールペン用油性インキ組成物を提供する。
【構成】 溶媒と、着色剤と、下記一般式(化1)で示される化合物及び/又はその塩を少なくとも含有するボールペン用油性インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールの回転によるボール受け座の摩耗を抑制することにより、高い筆記性能を備えたボールペン用油性インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記部材としてのボールをボールホルダーの先端より一部突出して抱持した所謂ボールペンチップにおいては、ボールがその回転に伴いボールホルダーと擦れて、特に、筆圧にてボールが押さえつけられるボール受け座の摩耗が発生することがあった。この摩耗が進むと、ボールが後退しインキ流通路を狭くしたり塞ぐなどしてインキの吐出不良が生じる。また、ボールとボール受け座の金属表面の摩擦は、運筆時の負荷となり、摩擦が大きい場合には書き味が低下し、ボールが円滑に回らずに瞬間的に停止するなどの回転不良による筆跡が点線状となる等の筆跡不良などを生じることがあった。
【0003】
そこで、前記問題を解決するために、インキ組成物中にリン酸エステルを添加し、インキの潤滑性を向上させてボール受け座の摩耗の低減や書き味の向上、筆跡不良を防止する試みが成されてきた(特許文献1、2参照)。
特許文献1では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸モノエステル又はジエステル又はそれらの塩から成るリン酸誘導体、特許文献2では、ノニルフェノール系リン酸エステルを添加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−194783号公報
【特許文献2】特開平11−293174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献に記載されているようなリン酸エステル系の潤滑剤は、ある程度の潤滑効果を奏するものであるが、長距離を筆記した場合や、特に高筆圧下での長距離の筆記では潤滑性が維持できず、ボール受座の摩耗が生じてしまい、筆感が重くなったり、ボールの回転不良による点線筆跡等の筆記不良を起こしてしまうことがあった。
【0006】
本発明の目的は、長距離の筆記や、高筆圧での長距離の筆記によっても、ボール受け座の摩耗を抑制すると共に、良好な筆記感および均一な筆跡を維持できるボールペン用油性インキ組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、有機溶剤と、着色剤と、下記一般式(化1)で示される化合物及び/又はその塩を少なくとも含有するボールペン用インキ組成物を第1の要旨とし、また、下記一般式(化1)のR及び/又はRがエステル結合及び/又はアミド結合を有する炭化水素基であるボールペン用インキ組成物を第2の要旨とするものである。
【0008】
【化1】

【発明の効果】
【0009】
上記一般式(化1)で示される化合物及び/又はその塩は、RとRの二つの疎水鎖と、リン酸基とX(リン酸基、水酸基、カルボキシル基又はスルホ基のいずれか)の二つの親水基を有する二鎖二親水基型の潤滑剤であるため、二親水基間の距離が近く、ボールとボール受け座表面に吸着する際に緻密に配列することができる。一般的な界面活性剤である一鎖一親水基型は、親水基間における反発が強く、祖な状態での配列になってしまうため、潤滑効果が不十分である。
一鎖一親水基型に比べて二鎖二親水基型は界面活性能が優れており、ボールとボール受け座表面で複層を形成することができると考えられるが、親油性の高い有機溶剤を主媒体とする油性インキを使用することにより、形成される複層の疎水基層と疎水基層との間にインク膜が形成され、ボールとボール受け座表面に存在する潤滑剤により厚みを持たせることができ、長距離筆記にも耐え得る潤滑性能を付与することができると推察される。
また、ボールとボール受け座表面に形成される複層の厚い潤滑膜により、ボールとボール受座の摩擦を低減することから、筆記時のボールの回転が良好になり、書き味が軽くなると共に、ボールの回転不良による点線筆跡を防ぐことができる。
さらに、上記一般式(化1)のR及び/又はRがエステル結合及び/又はアミド結合を有する炭化水素基である場合、R及び/又はRの疎水基の親水性が上がり、溶媒として使用される水や水酸基を持つ有機溶剤への溶解性、分散性は上がるものと推察される。
尚、上述の従来技術で使用されているリン酸エステルは、リン酸基を一つ有する一親水基型の潤滑剤であり、親水基同士の極性による反発が強いため、ボールとボール受け座表面への吸着が粗な状態となってしまうことから、ボールとボール受座が接触する可能性が大きくなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に発明を詳細に説明する。
上記(化1)で示される化合物の炭化水素基は、直鎖・分岐鎖、飽和・不飽和、環状・非環状、脂肪族・芳香族のいずれであってもよいが、ボールとボール受け座表面に緻密に配列しやすい直鎖型であることが好ましい。また、上記一般式(化1)で示される化合物の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が用いられる。
そして、その含有量は、インキ全量に対し、0.01〜10重量%となるように配合することが好ましい。0.01%未満だとボール受座摩耗を抑制するほどの十分な効果が得られず、また10重量%以上添加しても、ボール受け座摩耗の抑制効果の更なる向上は認められない。
【0011】
本発明で使用する溶媒としては水及び/又は有機溶剤が挙げられる。有機溶剤は、初筆かすれ性能や経時減量速度のコントロールや、インキ洩れ性能、書き味、ボテ等を両立させるため、または配合成分の溶解助剤として補助的な溶剤として用いるものであり、使用する着色剤の溶解性、分散安定性を考慮し、適宜選択する事ができる。特に好ましい有機溶剤は、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブチルアセテート等のグリコールエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、3−メチル−1,3ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等のグリコール類、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシペンタノール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコール等のアルコール類、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル等のエーテル類、酢酸−2−エチルヘキシル、イソ酪酸イソブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルモノグリコール、ベンジルジグリコール、プロピレングリコールモノフェニルエーテルベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−メチルベンジルアルコールなどの芳香環を含む溶剤などがある。
これらの一種若しくは二種以上を混合して使用することができる。
【0012】
着色剤は、従来公知の染料及び/又は顔料が単独若しくは混合して使用できる。
染料としては、ニグロシンベ−スEE、同EEL、同EX、同EXBP、同EB、オイルイエロー101、同107、オイルピンク312、オイルブラウンBB、同GR、オイルグリーンBG、オイルブルー613、同BOS オイルブラックHBB、同860、同BS、バリファストイエロー1101、同1105、同3108、同4120、バリファストオレンジ2210、同3209、同3210、バリファストレッド1306、同1308、同1355、同1360、同2303、同2320、同3304、同3306、同3320、バリファストピンク2310N、バリファストブラウン2402、同3405、バリファストグリーン1501、バリファストブルー1603、同1605、同1607、同1631、同2606、同2610、同2620、バリファストバイオレット1701、同1702、バリファストブラック1802、同1807、同3804、同3806,同3808、同3810、同3820、同3830、スピリットレッド102、オスピーイエローRY、ROB−B、MVB3、SPブルー105(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンイエロー3RH、同GRLHスペシャル、同C−2GH、同C−GNH、アイゼンスピロンオレンジ2RH、同GRHコンクスペシャル、アイゼンスピロンレッドGEH、同BEH、同GRLHスペシャル、同C−GH、同C−BH、アイゼンスピロンバイオレットRH、同C−RH、アイゼンスピロンブラウンBHコンク、同RH、アイゼンスピロンマホガニーRH、アイゼンスピロンブルーGNH、同2BNH、同C−RH、同BPNH、アイゼンスピロングリーンC−GH、同3GNHスペシャル、アイゼンスピロンブラックBNH、同MH、同RLH、同GMHスペシャル、同BHスペシャル、S.B.N.オレンジ703、S.B.N.バイオレット510、同521、S.P.T.オレンジ6、S.P.T.ブルー111、SOTピンク1、SOTブルー4、SOTブラック1、同6、同10、同12、13リキッド、アイゼンローダミンBベース、アイゼンメチルバイオレットベース、アイゼンビクトリアブルーBベース(以上、保土谷化学工業(株)製)、オイルイエローCH、オイルピンク330、オイルブルー8B、オイルブラックS、同FSスペシャルA、同2020、同109、同215、ALイエロー1106D、同3101、ALレッド2308、ネオスーパーイエローC−131、同C−132、同C−134、ネオスーパーオレンジC−233、ネオスーパーレッドC−431、ネオスーパーブルーC−555、ネオスーパーブラウンC−732、同C−733(以上、中央合成化学(株)製)、オレオゾールファストイエロー2G、同GCN、オレオゾールファストオレンジGL、オレオゾールファストレッドBL、同RL(以上、田岡化学工業(株)製)、サビニールイエロー2GLS、同RLS、同2RLS、サビニールオレンジRLS、サビニールファイアレッドGLS、サビニールレッド3BLS、サビニールピンク6BLS、サビニールブルーRN、同GLS、サビニールグリーン2GLS、サビニールブラウンGLS(以上、サンド社製、スイス国)、マゼンタSP247%、クリスタルバイオレット10B250%、マラカイトグリーンクリスタルコンク、ブリリアントグリーンクリスタルH90%、スピリットソルブルレッド64843(以上、ホリディ社製、英国)、ネプチューンレッドベース543、ネプチューンブルーベース634、ネプチューンバイオレットベース604、バソニールレッド540、バソニールバイオレット600(以上、BASF社製、独国)などの油溶性染料が挙げられる。
【0013】
顔料としては、SpecialBlack6、同S170、同S610、同5、同4、同4A、同550、同35、同250、同100、Printex150T、同U、同V、同140U、同140V、同95、同90、同85、同80、同75、同55、同45、同P、同XE2、同L6、同L、同300、同30、同3、同35、同25、同200、同A、同G(以上、エボニックデグサ・ジャパン(株)製)、#2400B、#2350、#2300、#2200B、#1000、#950、#900、#850、#MCF88、MA600、MA100、MA7、MA11、#50、#52、#45、#44、#40、#33、#32、#30、CF9、#20B、#4000B、(以上、三菱化成工業(株)製)、MONARCH1300、同100、同1000、同900、同880、同800、同700、MOGUL L、REGAL400R、同660R、同500R、同330R、同300R、同99R、ELFTEX8、同12、BLACK PEARLS2000(以上、米国、キャボットCorp.製)、Raven7000、同5750、同5250、同5000、同3500、同2000、同1500、同1255、同1250、同1200、同1170、同1060、同1040、同1035、同1020、同1000、同890H、同890、同850、同790、同780、同760、同500、同450、同430、同420、同410、同22、同16、同14、同H20、同C、Conductex975、同900、同SC(以上、コロンビヤン・カーボン日本(株)製)などのカーボンブラック、KA−10、同10P、同15、同20、同30、同35、同60、同80、同90、KR−310、同380、同460、同480(以上、チタン工業(株)製)、タイピュアR−900、同902、同960(以上、デュポン(株)製)、タイペークCR−50、同58、同60、同67、同80、同90、R−580、同670、同680、同780、同820、同930(以上、石原産業(株)製)、JR−300、同403、同600A、同800、同805(以上、テイカ(株)製)、P25(日本アエロジル(株)製)などの酸化チタン、BS−605、同607(以上、東洋アルミ(株)製)、ブロンズパウダーP−555、同P−777(以上、中島金属箔工業(株)製)、ブロンズパウダー3L5、同3L7(以上、福田金属箔工業(株)製)などの金属粉顔料、また、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロムなどの無機顔料、ハンザエロー−10G、同5G、同3G、同4、同GR、同A、ベンジジンエロー、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキ、キノリンエロー、スダーン1、パーマネントオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGN、パーマネントブラウンFG、パラブラウン、パーマネントレッド4R、ファイヤーレッド、ブリリアントカーミンBS、ピラゾロンレッド、レーキレッドC、キナクリドンレッド、ブリリアントカーミン6B、ボルドー5B、チオインジゴレッド、ファストバイオレットB、ジオキサジンバイオレット、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、インジゴ、アシッドグリーンレーキ、フタロシアニングリーンなどの有機顔料などが挙げられる。また、この他に硫化亜鉛、珪酸亜鉛、硫酸亜鉛カドミウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウムなどの無機蛍光顔料が挙げられる。
【0014】
上記した着色剤は単独或いは複数混合して使用することが出来、使用量はインキ組成物全量に対して2.0重量%以上20.0重量%以下が好ましい。2.0重量%未満では濃度が低すぎて筆跡が確認し難いこともあり、20.0重量%を超えるとインキ組成物粘度が高くなり筆記具ペン先からのインキ吐出が不十分になることがある。
【0015】
以上の成分の他に更に必要に応じて、従来インキ組成物に使用されている樹脂等の各種添加剤を適宜使用できる。
【0016】
樹脂は、インキの筆跡の筆記面への定着性を付与するために添加することができる。例えば、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ロジン樹脂などのインキ組成物用樹脂が挙げられる。
具体例としては、フェノール樹脂として、タマノル100S、同510(以上、荒川化学工業(株)製)、ヒタノール1501、同2501(以上、日立化成工業(株)製)、YP−90、YP−90L、YSポリスターS145、同#2100、同#2115、同#2130、同T80、同T100、同T115、同T130、同T145、マイティエースG125、同150(以上、ヤスハラケミカル(株)製)などが、ケトン樹脂として、ケトンレジンK−90(荒川化学工業(株)製)、ハロン80、同110H(以上、本州化学(株)製)、ハイラック110H、同901(以上、日立化成工業(株)製)、シンセティックレジンAP、同SK、同1201(以上、ヒュルス社製、独国)などが、ロジン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂として、ハーコリンD、ペンタリン255、同261、同269、同830(以上、理化ハーキュレス(株)製)、ハリエスターNL、同L、同MT、同MSR−4、ハリマック135G、同T−80、同FX−25、同AS−5、同AS−9、ネオトールC、ガムロジンX(以上、ハリマ化成(株)製)、ガムロジンWW(中国産)、エステルガムH、マルキード#30A、同#31、同#32、同#33、同#34(荒川化学工業(株)製)などが挙げられる。
これらの樹脂は、単独あるいは複数混合して使用でき、筆記面への定着性を付与するために添加する場合、その使用量はインキ組成物全量に対し0.5〜20.0重量%以下が好ましい。0.5重量%未満では筆記面に対する筆跡の定着性が不十分となる場合があり、20.0重量%を超えるとインキの粘度が高くなりペン先からのインキ吐出が悪くなる不具合が発生する可能性がある。
【0017】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸などが挙げられる。
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、シクロヘキシルアンモニウムクロライド、2−メルカプトベンゾトリアゾール、ベンゾイルアミノカプロン酸、硝酸カルシウムなどが挙げられる。
【0018】
本願発明のインキ組成物は、溶媒、着色剤、上記一般式(化1)、その他上記成分を必要に応じて添加し、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ヘンシェルミキサー、プロペラ撹拌機、ホモジナイザー、ニーダー等の混合機を使用し、撹拌混合することにより得られる。尚、顔料を使用する場合は、上記混合機で顔料を他の成分と共に分散させて用いることができる。なお、濾過や遠心処理でインキ組成物中の粗大顔料を取り除いても良い。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
プリンテックス35(カーボンブラック、エボニックデグサ・ジャパン(株)製)
7.0重量部
スピロンイエローC−GNH(油溶性黄色染料、保土谷化学工業(株)製)
2.0重量部
バリファストレッド1308(油溶性赤色染料、オリエント化学工業(株)製)
3.0重量部
ネオスーパーブルーC−555(油溶性青色染料、中央合成化学(株)製)
8.0重量部
上記(化1)で示される化合物(R1;−C14−COO−C1021
R2;−C17、X;−OH) 1.0重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 47.0重量部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 24.0重量部
ハイラック110H(ケトン樹脂、日立化成(株)製) 4.0重量部
エスレックBL−1(ポリビニルブチラール、分散剤、積水化学工業(株)製)
3.0重量部
エスレックBH−3(ポリビニルブチラール、曳糸性付与剤、積水化学工業(株)製) 1.0重量部
上記成分のうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからプリンテックス35の全量を加えダイノミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い黒色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後放冷し黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0020】
(実施例2)
FUJI RED 8800(C.I.Pigment Red 254、冨士色素(株)製) 5.0重量部
スピロンイエローC−GNH(油溶性黄色染料、保土谷化学工業(株)製)
3.0重量部
スピロンレッド C−GH(油溶性赤色染料、保土谷化学工業(株)製)
12.0重量部
上記(化1)で示される化合物(R1;−C14−CONH−C17
R2;−C17、X;−OH) 0.01重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 71.59重量部
ハイラック110H 5.0重量部
エスレックBL−1 3.0重量部
PVP K−90(ポリビニルピロリドン、曳糸性付与剤、アイエスピージャパン
(株)) 0.4重量部
上記成分のうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからFUJI RED 8800の全量を加えダイノミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い赤色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後室温まで放冷し、赤色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0021】
(実施例3)
Cromophtal Blue A3R(C.I.Pigment Blue 60、チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製) 6.0重量部
スピロンレッド C−BH(油溶性赤色染料、保土谷化学工業(株)製)
2.0重量部
ネオスーパーブルーC−555(油溶性青色染料、中央合成化学(株)製)
11.0重量部
上記(化1)で示される化合物(R1;−C14−CONH−C13
R2;−C17、X;−OH) 10.0重量部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 61.5重量部
エスレックBL−1 2.0重量部
ハリマックT−80(ロジン変性マレイン酸樹脂、ハリマ化成(株)製)
5.0重量部
エスレックBH−3 2.5重量部
上記成分のうち、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからCromophtal Blue A3Rの全量を加えダイノミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い青色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後室温まで放冷し、青色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0022】
(実施例4)
スピロンイエローC−GNH 5.0重量部
ネオスーパーブルーC−555 10.0重量部
上記(化1)で示される化合物(R1;−C14−CONH−C1021
R2;−C17、X;−OH) 0.005重量部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 25.49重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 50.0重量部
ハイラック901 9.0重量部
PVP K−90 0.5重量部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解した後室温まで放冷し、室温で30分間攪拌し緑色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0023】
(実施例5)
スピロンイエローC−GNH 10.0重量部
スピロンレッドC−GH 3.0重量部
上記(化1)で示される化合物(R1;−C14−COO−C1021
R2;−C17、X;−OH) 15.0重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 52.5重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 5.0重量部
ハイラック110H 13.7重量部
PVP K−90 0.8重量部
上記成分を70℃で溶解し、均一に溶解した後室温まで冷却し、室温で30分間攪拌し橙色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0024】
(実施例6)
FUJI RED 8800(C.I.Pigment Red 254、冨士色素(株)製) 5.0重量部
スピロンイエローC−GNH(油溶性黄色染料、保土谷化学工業(株)製)
3.0重量部
スピロンレッド C−GH(油溶性赤色染料、保土谷化学工業(株)製)
12.0重量部
上記(化1)で示される化合物(R;−C18−CONH−C2551
;−C、X;−OH) 0.01重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 71.59重量部
ハイラック110H 5.0重量部
エスレックBL−1 3.0重量部
PVP K−90(ポリビニルピロリドン、曳糸性付与剤、アイエスピージャパン
(株)) 0.4重量部
上記成分のうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからFUJI RED 8800の全量を加えダイノミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い赤色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後室温まで放冷し、赤色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0025】
(実施例7)
Cromophtal Blue A3R(C.I.Pigment Blue 60、チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製) 6.0重量部
スピロンレッド C−BH(油溶性赤色染料、保土谷化学工業(株)製)
2.0重量部
ネオスーパーブルーC−555(油溶性青色染料、中央合成化学(株)製)
11.0重量部
上記(化1)で示される化合物(R;−C3576、R:−C1021
X;−COOH) 10.0重量部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 61.5重量部
エスレックBL−1 2.0重量部
ハリマックT−80(ロジン変性マレイン酸樹脂、ハリマ化成(株)製)
5.0重量部
エスレックBH−3 2.5重量部
上記成分のうち、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからCromophtal Blue A3Rの全量を加えダイノミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い青色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後室温まで放冷し、青色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0026】
(実施例8)
スピロンイエローC−GNH 5.0重量部
ネオスーパーブルーC−555 10.0重量部
上記(化1)で示される化合物(R;−C−COO−C11
;−C、X;−OH) 0.005重量部
水 1.5重量部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 24.00重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 50.0重量部
ハイラック901 9.0重量部
PVP K−90 0.5重量部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解した後室温まで放冷し、室温で30分間攪拌し緑色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0027】
(実施例9)
スピロンイエローC−GNH 10.0重量部
スピロンレッドC−GH 3.0重量部
上記(化1)で示される化合物(R;−C10−COO−C1021
;−C17、X;−OH) 15.0重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 51.0重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 5.0重量部
水 1.5重量部
ハイラック110H 13.7重量部
PVP K−90 0.8重量部
上記成分を70℃で溶解し、均一に溶解した後室温まで冷却し、室温で30分間攪拌し橙色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0028】
(比較例1)
実施例1において、上記(化1)で示される化合物(R1;−C14−COO−C1021、R2;−C17、X;−OH)を除き、その分をジエチレングリコールモノメチルエーテル添加した以外は実施例1と同様になして、黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0029】
(比較例2)
実施例2において、上記(化1)で示される化合物(R1;−C14−CONH−C17、R2;−C17、X;−OH)を、プライサーフA212E(リン酸誘導体、第一工業製薬(株)製)に置き換えた以外は実施例2と同様になして、黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0030】
(比較例3)
実施例3において、上記(化1)で示される化合物(R1;−C14−CONH−C13、R2;−C17、X;−OH)を、フォスファノールRE−410(ノニルフェノール系リン酸エステル化合物、東邦化学工業(株)製)に置き換えた以外は実施例3と同様になして、黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0031】
(比較例4)
実施例1において、上記(化1)で示される化合物(R1;−C14−COO−C1021、R2;−C17、X;−OH)を、プライサーフA212E(前述)0.5重量部とラウリルアルコール0.5重量部に置き換えた以外は実施例1と同様になして、黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0032】
(比較例5)
実施例1において、上記(化1)で示される化合物(R1;−C14−COO−C1021、R2;−C17、X;−OH)を、ラウリルアルコールに置き換えた以外は実施例1と同様になして、黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0033】
上記、実施例1〜9、比較例1〜5で得たボールペン用油性インキ組成物を、市販のボールペン(ビクーニャボールペンBX157、ぺんてる(株)製、ペン先はステンレス製ボールホルダーにて直径0.7mmの超硬合金の筆記ボールとスプリングを抱持したボールペンチップを備えるノック出没式ボールペン)と同様の筆記具に0.20g充填し、遠心機にて遠心力を加えてインキ中の気泡を脱気して、試験用ボールペンを作製した。
【0034】
筆記試験:上記実施例1〜9および比較例1〜5のインキを充填した上記試験用ボールペン各5本を、螺旋筆記試験機(筆記角度70°、荷重150g、300g、筆記速度7cm/sec)にて500m筆記した。
【0035】
ボール沈み量の測定:筆記試験中、100m、500m筆記した段階で、ボールを押してボールをボール受け座に当てた状態でのボールホルダーの先端からボール先端までの断面に対する垂直方向の距離をボールの突出長さとして測定し、未筆記の時との差をボール沈み量とした。ボール受け座が摩耗すると、ボールをボール受け座に当てたときと当てていないときの移動距離が大きくなるので、ボール受け座の摩耗を知る上での指標として、ボール沈み量を測定する。数値はn=5の平均値を算出した。
【0036】
筆跡の評価:荷重150gで500m筆記した時の筆跡の状態を目視で確認した。尚、筆跡全体に渡って、紙面へ正常にインキが転写されている場合は無、されていない箇所がある場合は有とした。
【0037】
書き味の評価:一定速度でペンを動かしたときのペンを持つ手にかかる抵抗値、即ち筆記抵抗値が、筆記の際のペンの書き味の良し悪しの重要な要素である。筆記抵抗値の測定は、静・動摩擦測定機(Tribo−master Type TL201Sa、(株)トリニティーラボ製)を用いて行った。静・動摩擦測定機は、ペン先を紙面に当てた状態で、筆記用紙をセットした台が設定速度で動くことにより、直線筆記させた時のペンにかかる抵抗値を測定することができる。
上記実施例1〜9および比較例1〜5のインキを充填した未筆記の初期状態のサンプルと、500m筆記した上記試験用ボールペン各3本ずつについて、筆記角度70°、筆記速度7cm/sec、荷重150gで15cm直線筆記させて、1秒あたり200点の筆記抵抗値のデータを採取する。n=3本の筆記抵抗値の全データの平均値および最大値を数値とした。
各結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例1〜9のボールペン用インキ組成物は、上記(化1)で示される化合物を含有しているので、ボールとボール受け座表面に複層の厚い潤滑膜が形成され、ボールとボール受座の摩擦を低減することから、長距離の筆記および過荷重での長距離の筆記でのボール沈みを抑制する。また、ボールとボール受け座表面に形成された複層の厚い潤滑膜により、筆記時のボールの回転が良好になり、書き味が軽くなると共に、ボールの回転不良による点線筆跡を防ぐことができる。
【0040】
これに対して、比較例1〜5のボールペン用インキ組成物は、上記(化1)で示される化合物を含有していないため、ボールとボール受け座表面に十分な潤滑膜を形成することができず、長距離の筆記および過荷重での長距離の筆記でのボール沈みの抑制や良好な書き味、ボールの回転不良による点線筆跡を防ぐことができない。
【0041】
以上、詳細に説明したように、本発明のインキは、ボールの回転によるボール受け座の摩耗を抑制することにより、高い筆記性能を備えたボールペン用油性インキ組成物に関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と、着色剤と、下記一般式(化1)で示される化合物及び/又はその塩を少なくとも含有するボールペン用油性インキ組成物。
【請求項2】
下記一般式(化1)のR及び/又はRがエステル結合及び/又はアミド結合を有する炭化水素基であるボールペン用油性インキ組成物。
【化1】


【公開番号】特開2012−107171(P2012−107171A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19313(P2011−19313)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】