説明

ボールペン用油性インキ

【課題】ボテ現象が無く、且つ、ボールペンのチップ先端が外気に触れる状態で放置しても次の書き出し時にカスレが発生しにくいボールペン用油性インキ組成物を提供する。
【解決手段】油溶性樹脂と、油溶性染料と、沸点が160℃〜200℃の範囲のグリコールエーテル系溶剤と、エチレングリコールモノプロピルエーテルとから少なくともなるボールペン用油性インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキを紙面等の被筆記面に転写するボールを、ボールホルダーの先端開口部から一部臨出させて回転自在に抱持したボールペンチップをペン先としたボールペンに収容され、有機溶剤を主媒体としたボールペン用油性インキに関する。
具体的には、筆記の際にペン先部分から発生する余分なインキの紙面へのボタ落ちや、ボールペンチップ先端の外部分にインキ滴が溜まったりなどのボテ現象が無く、且つ、ボールペンのチップ先端が外気に触れる状態で放置したときに次の書き出し時にカスレが発生する現象、いわゆる初筆カスレが発生しにくいボールペン用油性インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールペン用油性インキ組成物は、染料や顔料などの着色材と、グリコール類や、グリコールエーテル類、高沸点のアルコール等の溶剤と、ケトン樹脂、キシレン樹脂、ロジン誘導樹脂などの紙面への定着を主な目的とした樹脂と、必要に応じてポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール等の粘度調整、流動特性調整、ボテを防止することを主な目的とした樹脂とからなっている。
このボールペンによる筆記は、ボールホルダーの内孔に流通したインキを、紙面などの被筆記物と接触して移動させられることによって回転するボールによって転写もしくは流出させ、主に転写により、筆跡・描線をつくりだすものである。その時、ボールの回転が外からボールホルダー内へインキを運ぼうとする力もあるために、ボールホルダーの先端開口部からは出たが、筆跡とならなかったインキも発生し、そのようなインキがボールホルダーの外周に付着し、書きはじめや時には、筆記途中でインキのかたまりが滴下されるいわゆるボテ現象が発生することがある。また、手書き筆記では筆記している状態と筆記しない状態が混在し、筆記を止めて、被筆記物から離脱しても、チップ小口が直ぐにボールで塞がれないのでインキはボールとチップの隙間から浸みだしてボールホルダーの開口部に溜まることがある。このような開口部に溜まったインキは、次に筆記する時にボールの回転による力で押し上げられ、小口を乗り越えてチップの外側にインキ玉となって集まる。このように、筆記を重ねることによって次々にボールホルダー外周に溜まるインキが追加されていき、重力に耐えられなくなったり、筆記の衝撃などによって紙面に触れて落ちていわゆるボテとなると考えられる。
ボテを防止する事は古くから様々研究がなされている。その具体的手段としては、特定のポリビニルピロリドンを使用したもの。(特許文献1、2参照)、粘度やせん断減粘性に関する数値を限定したもの。(特許文献3、4)などが開示されている。
【特許文献1】特開平8−239616号公報(段落番号0005〜0006)
【特許文献2】特開2001−139866号公報(段落番号0003〜0004)
【特許文献3】特開平6−313143号公報(段落番号0006〜0008)
【特許文献4】特開平10−297158号公報(段落番号0003〜0006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インキにポリビニルピロリドンを添加するとインキの凝集力が大きくなり、その糸曵き性により余剰のインキをボールペンチップ内に引き戻す力が大きくなり、いわゆるインキのリターン効果が高まってボテを軽減させることが出来るとされているが、効果が現れる程度に添加するとインキ粘度が高くなり、インキの吐出がスムースにいかず筆跡にカスレや線割れを発生するおそれがあるので、大量添加できなかった。
【0004】
また、剪断減粘性を付与して筆記時のインキ粘度を下げ、インキの紙への浸透性を強くし、チップ先端の余剰インキを紙へ浸透させ、ボテ現象を抑制するといった低粘度インキは、著しい筆跡滲みが発生したり、ボールと受け座が強く当たって受け座が摩耗してボールの回転が阻害されカスレを生じたりするおそれがあり、やはりボテを防止するに限界があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、油溶性樹脂と、油溶性染料と、沸点が160℃〜200℃の範囲のグリコールエーテル系溶剤と、エチレングリコールモノプロピルエーテルとから少なくともなるボールペン用油性インキを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0006】
沸点が160℃〜200℃の範囲のグリコールエーテル系溶剤と、エチレングリコールモノプロピルエーテルとは、エチレングリコールモノプロピルエーテルはそのプロピル基がポリプロピレングリコールのイソプロピレン基部分と親和し、ポリプロピレングリコール分子を取り囲むようにして、細かい分子レベルで均一に溶解すると考えれられる。沸点の低いエチレングリコールモノプロピルエーテル(エチレングリコールモノイソプロピルエーテルは沸点が141.8℃、エチレングリコールモノノルマルプロピルエーテルは沸点が149.8℃)が筆記を止めた直後から蒸発するため急速に粘度上昇し流動しなくなる。更には極く表面においては溶剤以外の成分が残った皮膜を形成する。この皮膜はエチレングリコールモノプロピルエーテルよりも沸点の高いグリコールエーテル系溶剤を内部に保有した比較的軟らかい皮膜であり、筆記の際には簡単に崩壊する。また、グリコールエーテル系溶剤とエチレングリコールモノプロピルエーテルとの高い溶解性によって成分の凝集部分が少ない、細かく均一な成分の皮膜となっているものと推察され、皮膜より内側の揮発成分の通過が抑制されると共に、エチレングリコールモノプロピルエーテルが揮発して通過しようとすると皮膜内のグリコールエーテル系溶剤により一時的にでも補足されるようになり、弱く薄い皮膜でかつ背面に潤沢にインキを配置し得るので、ボテを抑制しつつ初筆カスレも抑制することができるものと推察される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に発明を詳細に説明する。
着色剤は通常一般的に使用されている染料、顔料が使用可能である。染料の一例を挙げると、SPILON BLACK GMH SPECIAL、SPILON RED C−GH、SPILON RED C−BH、SPILON BLUE C−RH、SPILON BLUE BPNH、SPILON YELLOW C−2GH、SPILON VIOLET C−RH、S.P.T. ORANGE6、S.P.T. BLUE111(保土ヶ谷化学工業(株)製)などのアイゼンスピロンカラー、アイゼンSOT染料、ORIENT SPRIT BLACK AB、VALIFAST BLACK 3804、VALIFAST RED 1320、VALIFAST RED 1360、VALIFAST ORANGE 2210、VALIFAST BLUE 1605、VALIFAST VIOLET 1701、VALIFAST BLUE 1601、VALIFAST BLUE 1603、VALIFAST BLUE 1621、VALIFAST BLUE 2601、VALIFAST YELLOW 1110、VALIFAST YELLOW 3104、VALIFAST YELLOW 3105、VALIFAST YELLOW 1109(オリエント化学工業(株)製)などのバリファストカラー、オリエントオイルカラー、ローダミンBベース、ソルダンレッド3R、メチルバイオレット2Bベース、ビクトリアブルーF4R等や、ネオスーパーブルーC−555(中央合成化学(株)製)が挙げられる。
顔料は通常一般的に使用されているものは使用することが可能である。一例を挙げると、
カーボンブラックや不溶性アゾ顔料、アゾレーキ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、ペリノン、ペリレン系顔料等有機顔料などの従来公知の一般的な顔料が使用可能である。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組合せ調色して用いてもよい。
【0008】
黒色顔料としてはカーボンブラックが使用できる。その一例を挙げると、プリンテックス3、同25、同30、同35、同40、同45、同55、同60、同75、同80、同85、同90、同95、同300、スペシャルブラック4、同5、同100、同250、同550(以上デグサヒュルスジャパン(株)製)。三菱カーボンブラック#2700、同#2650、同#2600、同#2400、同#2350、同#2300、同#2200、同#1000、同#990、同#980、同#970、同#960、同#950、同#900、同#850、同#750、同#650、同#52、同#50、同#47、同#45、同#45L、同#44、同#40、同#33、同#32、同#30、同#25、同#20、同#10、同#5、同#95、同#260、同CF9、同MCF88、同MA600、同MA77、同MA7、同MA11、同MA100、同MA100R、同MA100S、同MA220、同MA230(以上、三菱化学(株)製)、トーカブラック#8500/F、同#8300/F、同#7550SB/F、同#7400、同#7360SB/F、同#7350/F、同#7270SB、同#7100/F、同#7050(以上東海カーボン(株)製)等が挙げられる。
青色顔料としては例えばC.I.Pigment Blue 2、同9、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、同16、同17、同28、同29、同36、同60、同68、同76、同80等が使用できる。
赤色の顔料としてはC.I.Pigment Red 2、同3、同5、同8、同14、同17、同22、同23、同31、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同53:1、同53:2、同57:1、同112、同122、同144、同146、同149、同166、同170、同175、同176、同177、同179、同184、同185、同187、同188、同202、同207、同208、同209、同210、同211、同213、同214、同242、同253、同254、同255、同256、同257、同264、同266、同268、同270、同272等が使用できる。
黄色の顔料としてはC.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同16、同17、同55、同73、同74、同79、同81、同83、同93、同94、同95、同97、同109、同110、同111、同120、同128、同133、同136、同138、同139、同147、同151、同154、同155、同167、同173、同174、同175、同176、同180、同185、同191、同194、同213等が使用できる。
橙色の顔料としてはC.I.Pigment Orange5、同13、同16、同34、同36、同38、同43、同62、同68、同72、同74等がある。
緑色の顔料としてはC.I.Pigment Green7、同36、同37等が使用できる。
紫色の顔料としてはC.I.Pigment Violet19、同23等が使用出来る。
これらの染料および顔料の使用量はボールペン用油性インキ全量に対し1重量%以上40重量%以下が好適に使用でき、1重量%以上30重量%以下がより好ましい。使用量が1重量%より少ないと筆跡が薄すぎて判読がし難くなる。また、40重量%より多いと経時的な沈降による目詰まりによる筆記不能やボールペン用油性インキ中の固形分の増加により書き味が重くなる不具合を生じやすくなる。
【0009】
沸点が160℃〜200℃の範囲のグリコールエーテル系溶剤はインキの主媒体であり以下に具体的な例を挙げる。なお、括弧内の数値は沸点を示す。
プロピレングリコール(187℃)、ヘキシレングリコール(198℃)、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル(171.2℃)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(160.5℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(194℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(162.5℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(188.9℃)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(176℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(170.2℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(187.2℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(171℃)等を挙げることが出来る。これらの溶剤は単独あるいは組み合わせて使用できる。
沸点が200℃を超えるとエチレングリコールモノプロピルエーテルが蒸発しても沸点が200℃を超える溶剤が蒸発しにくいので粘度上昇しにくいし、溶剤以外の成分からなる皮膜を形成しにくく小口からのインキの浸み出しは止められない。
沸点が160℃未満のグリコールエーテル系溶剤を使用した場合には溶剤の蒸発が速すぎて筆記中にカスレを生じたり長期保管中に減量して筆記不能になるおそれがある。
【0010】
エチレングリコールモノプロピルエーテルは沸点が160℃〜200℃の範囲のグリコールエーテル系溶剤と共にインキの主媒体として使用するものであり、エチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルがある。
沸点が160℃〜200℃の範囲のグリコールエーテル系溶剤およびエチレングリコールモノプロピルエーテルの総量はインキ全量に対し10重量%以上80重量%以下で使用することが好ましい。
沸点が160℃〜200℃の範囲のグリコールエーテル系溶剤と、エチレングリコールモノプロピルエーテルの比率は重量比で1:1〜20:1がチップ小口での溶剤蒸発による粘度上昇及び溶剤以外の成分からなる皮膜の形成の点から好ましい。エチレングリコールモノプロピルエーテルの量が1:1よりも多くなるとチップ小口からの蒸発が多くなりペン先が乾きやすくなり筆記する時にカスレを発生するおそれがある。
また、エチレングリコールモノプロピルエーテルの量が20:1よりも少ないとチップ小口における溶剤蒸発による粘度上昇及び溶剤以外の成分からなる皮膜形成がしにくくなりボテを防止できないことと、ポリプロピレングリコールを皮膜状のものの中に均一化出来ず初筆カスレ防止効果も低下する。
【0011】
ポリプロピレングリコールはボールペンのチップ先端が外気に触れる状態で放置したときに次の書き出し時にカスレが発生する現象、いわゆる初筆カスレを抑制するために添加するものである。
具体的には、ユニオールD400,同700,同1000,同1200,同2000,同4000(以上日本油脂(株)製)、エクセノール420,同720,同1020,同2020、同3020、同3021,同510(以上旭硝子(株)製)等が挙げられる。
これらの一種又は2種以上を組み合わせて使用することが可能であり、その使用量はインキ全量に対し、0.5重量%〜10重量%が好ましい。0.5重量%未満では初筆カスレ防止効果が小さくなり、10重量%を超えるとボテ防止に悪影響を及ぼす。
【0012】
油溶性樹脂は、定着性向上、筆跡の裏写り防止の他、粘度調整、染料の溶解促進の為に添加するものであり、シクロヘキサノン、アセトフェノン、尿素などのケトンとホルムアルデヒドとの縮合樹脂、シクロヘキサノンの縮合樹脂及びそれらを水素添加した樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸又はそのエステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、重合脂肪酸とポリアミン類との縮合体であるポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルアルキルエーテル、クマロン−インデン樹脂、ポリテルペン、キシレン樹脂、ロジン系樹脂やその水素添加物、ロジン変性されたマレイン酸樹脂、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物、ポリオキシエチレンやフェノール樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂は単独あるいは混合して使用することができる。その使用量はボールペン用油性インキ組成物全量に対して0.05〜30重量%が好ましい。
【0013】
本発明のインキは不使用時のボールとチップの間隙からのインキ 漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止するために剪断減粘性を付与しても良い。剪断減粘性剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、ヒアルロン酸等の水溶性多糖類、アクリル酸又はメタクリル酸の重合体もしくはそれらのアルキルエステルとの共重合体、さらにはこれらの架橋体や、ベンジリデンソルビトール、シリカ、ベントナイト系無機化合物、有機ベントナイトなども使用可能である。
なお、剪断減粘性を付与する場合は、ペン先を下向きに放置したときのボールペン用インキの漏れ出しを防ぐことと筆記時の粘度低下を最適な値とすることで書き味をより軽くする目的で25℃での剪断減粘指数を0.3以上0.9以下にすることが好ましい。
【0014】
顔料を分散するために、分散剤を使用することは差し支えない。通常使用されているものは使用可能であるがポリビニルブチラールが好ましい。
上記成分の他に必要に応じて油性ボールペン用インキ原料として用いられる有機溶剤、潤滑剤や粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、消泡剤、カスレ防止剤、分散剤、糸曳き性付与剤、レベリング性付与剤等の添加剤を併用することも可能である。
有機溶剤は通常ボールペン用油性インキに使用される溶剤がチップ小口での皮膜形成を阻害しない範囲で使用可能である.
具体例を挙げると、フェニルセロソルブ、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、イソブチルジグリコール、フェニルジグリコール、フェニルトリグリコール、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、ベンジルトリグリコール等がある。
潤滑剤はなめらかな書き味を付与するために使用するが、切削油類、高級脂肪酸類、リン酸エステル類、アシルアミノ酸類、チアゾール類、ポリエチレングリコール又はそのアルキルエーテル類が一般的に使用される。
リン酸エステル類を使用するときにポリオキシエチレンアルキルアミンと併用すると潤滑性だけでなく、初筆カスレを抑制する効果もある。更に、ポリプロピレングリコールと併用すると初筆カスレ抑制の効果は高まる。
【0015】
本発明において顔料を分散するには通常一般的な方法で可能である。例えば、顔料と、沸点が160℃〜200℃の範囲のグリコールエーテル系溶剤及び/又はエチレングリコールモノプロピルエーテルと、分散剤とを混合し、プロペラ撹拌機等で均一に撹拌した後、分散機で顔料を分散する。ロールミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ホモジナイザー等の分散機はインキの溶剤量や、顔料濃度によって適宜選択する。
インキを製造するには、染料や上記で分散した顔料と、油溶性樹脂と、沸点が160℃〜200℃の範囲のグリコールエーテル系溶剤と、エチレングリコールモノプロピルエーテルをホモミキサー等の撹拌機にて充分に混合攪拌した後、他の成分、例えば粘度調整剤や溶剤、色調調整のための油性染料、潤滑剤等を混合し、更に均一になるまで溶解・混合することで得られるが、場合によって混合したインキをさらに分散機にて分散したり、得られたインキを濾過や遠心分離機に掛けて粗大粒子や不溶解成分を除いたりすることは何ら差し支えない。
また、本発明のインキの粘度はインキ吐出やペン先を下向きにして放置したときのペン先からのインキの漏れを考慮して剪断速度が1/sのとき500〜5000mPa・sが好ましく、剪断減粘性を付与した場合は1/sのとき1000〜100000mPa・s10/sの時300〜5000mPa・sになるようにするのが好ましい。
【実施例】
【0016】
以下、実施例及び比較例に基づき更に詳細に説明する。尚、各実施例中単に「部」とあるのは「重量部」を表す。
(実施例1)
プリンテックス35(カーボンブラック、デグサヒュルスジャパン(株)製) 5.0部
ネオスーパーブルーC−555(C.I.SOLVENT BLUE70、中央合成化学
(株)製 17.3部
SPILON RED C−GH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 4.6部
VALIFAST YELLOW 1151油性染料、オリエント化学工業(株)製)
3.1部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 44.4部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 17.0部
エスレックBL−1(ポリビニルブチラール、分散剤、積水化学工業(株)製)1.6部
エスレックBH−3(ポリビニルブチラール、粘度調整剤、積水化学工業(株)製)
1.0部
フォスファノールLB400(リン酸エステル系界面活性剤、潤滑剤、東邦化学工業
(株)製) 1.5部
アミート105(POEココナットアミン、界面活性剤、(株)花王製) 1.0部
ユニオールD2000(ポリプロピレングリコール、初筆カスレ防止剤、日本油脂(株)
製) 3.5部
上記成分のうち、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからプリンテックス35の全量を加えダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い黒色のペーストを得た。
次いで、このペーストにネオスーパーブルーC−555の全量と、SPILON RED C−GHの全量と、VALIFAST YELLOW 1151の全量と、フォスファノールLB400の全量と、アミート105の全量と、ユニオールD2000の全量と、エスレックBH−3の全量を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後室温まで放冷し黒色のボールペン用油性インキを得た。
このものの粘度は剪断速度1/sで980mPa・sであった。
【0017】
(実施例2)
SPILON VIOLET C−RH(油性染料、保土谷化学工業(株)製)
15.0部
SPILON YELLOW C−GNH(油性染料、保土谷化学工業(株)製)
10.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 28.5部
エチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル 27.7部
ハイラック110H(ケトン樹脂、粘度調整剤、日立化成(株)製) 6.0部
PVP−k90(ポリビニルピロリドン、粘度調整剤、ISP社製) 6.0部
ナイミーンO−205(ポリオキシエチレンオレイルアミン、界面活性剤、日本油脂
(株)製) 1.0部
フォスファノールRP710(POEアルキルエーテルリン酸、潤滑剤、東邦化学工業
(株)製) 0.8部
ユニオールD1200(ポリプロピレングリコール、初筆カスレ防止剤、日本油脂(株)
製) 5.0部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解して黒色のボールペン用油性インキを得た。このものの剪断速度1/sの粘度は1280mPa・sであった。
【0018】
(実施例3)
NOVOPERM RED F3RK70(C.I.Pigment Red 170、
クラリアントジャパン製) 5.0部
SPILON RED C−GH 15.6部
SPILON RED C−BH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 0.8部
SPILON YELLOW C−GNH 3.8部
エスレックBL−1 1.6部
エスレックBH−3 0.5部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 53.2部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 13.5部
フォスファノールRP710 1.5部
ナイミーンO−205 1.0部
ユニオールD2000 3.5部
上記成分のうち、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからNOVOPERM RED F3RK70の全量を加えダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い赤色のペーストを得た。
次いで、このペーストにSPILON RED C−GHの全量と、SPILON RED C−BHの全量と、SPILON YELLOW C−GNHの全量と、フォスファノールRP710の全量と、ナイミーンO−205の全量と、エスレックBH−3の全量を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後室温まで放冷し赤色のボールペン用油性インキを得た。このものの粘度は剪断速度1/sで1360mPa・sであった。
【0019】
(実施例4)
SPILON VIOLET C−RH 15.0部
SPILON YELLOW C−GNH 10.0部
エチレングリコールモノイソブチルエーテル 54.0部
エチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル 8.6部
ハイラック110H 6.0部
PVP−k90 4.0部
ナイミーンO−205(ポリオキシエチレンオレイルアミン、日本油脂(株)製)
1.0部
フォスファノールRP710(POEアルキルエーテルリン酸、東邦化学工業(株)製)
1.0部
ユニオールD700(ポリプロピレングリコール、初筆カスレ防止剤、日本油脂(株)
製) 0.4部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解して黒色のボールペン用油性インキを得た。このものの剪断速度1/sの粘度は1180mPa・sであった。
【0020】
(実施例5)
SPILON VIOLET C−RH 15.0部
SPILON YELLOW C−GNH 10.0部
エチレングリコールモノイソブチルエーテル 48.0部
エチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル 6.7部
フェニルグリコール 5.0部
ハイラック110H 6.0部
PVP−k90 4.0部
ナイミーンO−205(ポリオキシエチレンオレイルアミン、日本油脂(株)製)
1.0部
フォスファノールRP710(POEアルキルエーテルリン酸、東邦化学工業(株)製)
1.5部
ユニオールD4000(ポリプロピレングリコール、初筆カスレ防止剤、日本油脂(株)
製) 2.8部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解して黒色のボールペン用油性インキを得た。このものの剪断速度1/sの粘度は1030mPa・sであった。
【0021】
(実施例6)
HOSTAPERM P−BFS(C.I.Pigment Blue15:4、
クラリアントジャパン製) 7.0部
SPILON RED C−BH 4.0部
ネオスーパーブルーC−555 16.0部
エスレックBL−1 1.6部
エスレックBH−3 0.5部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 25.0部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 39.9部
フォスファノールRP710 1.5部
ナイミーンO−205 1.0部
ユニオールD2000 3.5部
上記成分のうち、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからHOSTAPERM P−BFSの全量を加えダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い赤色のペーストを得た。
次いで、このペーストにSPILON RED C−BHの全量と、ネオスーパーブルーC−555の全量と、フォスファノールRP710の全量と、ナイミーンO−205の全量と、エスレックBH−3の全量を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後室温まで放冷し赤色のボールペン用油性インキを得た。このものの粘度は剪断速度1/sで910mPa・sであった。
【0022】
(実施例7)
HOSTAPERM P−BFS(C.I.Pigment Blue15:4、クラリ
アントジャパン(株)製) 7.0部
SPILON RED C−BH 4.0部
ネオスーパーブルーC−555 16.0部
エスレックBL−1 1.6部
エスレックBH−3 0.5部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 61.9部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 3.0部
フォスファノールRP710 1.5部
ナイミーンO−205 1.0部
ユニオールD2000 3.5部
上記成分のうち、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからHOSTAPERM P−BFSの全量を加えダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い赤色のペーストを得た。
次いで、このペーストにSPILON RED C−BHの全量と、ネオスーパーブルーC−555の全量と、フォスファノールRP710の全量と、ナイミーンO−205の全量と、エスレックBH−3の全量を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後室温まで放冷し赤色のボールペン用油性インキを得た。このものの粘度は剪断速度1/sで920mPa・sであった。
【0023】
(比較例1)
実施例1において、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルの代わりにイソブチルジグリコールを加えた以外は同様に為して黒色のボールペン用油性インキを得た。このインキの粘度は剪断速度1/sで1130mPa・sであった。
【0024】
(比較例2)
実施例2において、ジエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりにプロピレングリコールモノメチルエーテルを用いた以外は同様に為して黒色のボールペン用油性インキを得た。このインキの粘度は剪断速度1/sで1190mPa・sであった。
【0025】
(比較例3)
実施例2においてエチレングリコールモノノルマルプロピルエーテルを抜いてその分ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加した以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。このインキの粘度は剪断速度1/sで1330mPa・sであった。
【0026】
(比較例4)
実施例2においてジエチレングリコールモノメチルエーテルを抜いてその分エチレングリコールモノイソプロピルエーテルを添加した以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。このインキの粘度は剪断速度1/sで1240mPa・sであった。
【0027】
(比較例5)
NOVOPERM RED F3RK70(C.I.Pigment Red 170、クラリアントジャパン製(株)) 5.0部
SPILON RED C−GH 15.6部
SPILON RED C−BH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 0.8部
SPILON YELLOW C−GNH 3.8部
エスレックBL−1 1.6部
PVP k−120(ポリビニルピロリドン、重量平均分子量280万、粘度調整剤、ISP社製、アメリカ国) 0.3部
ハイラック110H 4.0部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 50.2部
ベンジルアルコール 12.7部
フォスファノールRP710 1.5部
ナイミーンO−205 1.0部
ユニオールD2000 3.5部
上記成分のうち、エチレングリコールモノフェニルエーテルの全量と、ベンジルアルコールの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからNOVOPERM RED F3RK70の全量を加えダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い赤色のペーストを得た。
次いで、このペーストにSPILON RED C−GHの全量と、SPILON RED C−BHの全量と、SPILON YELLOW C−GNHの全量と、フォスファノールRP710の全量と、ナイミーンO−205の全量と、PVP k−120の全量と、ハイラック110Hの全量を加え、70℃で3時間攪拌、混合した後室温まで放冷し赤色のボールペン用油性インキを得た。このものの粘度は剪断速度1/sで1420mPa・sであった。
【0028】
(比較例6)
SPILON VIOLET C−RH(油性染料、保土谷化学工業(株)製)
15.0部
SPILON YELLOW C−GNH(油性染料、保土谷化学工業(株)製)
10.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 34.5部
エチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル 26.6部
ハイラック110H(ケトン樹脂、粘度調整剤、日立化成(株)製) 6.0部
PVP−k90(ポリビニルピロリドン、粘度調整剤、ISP社製) 6.0部
ナイミーンO−205(ポリオキシエチレンオレイルアミン、界面活性剤、日本油脂
(株)製) 1.0部
フォスファノールRP710(POEアルキルエーテルリン酸、潤滑剤、東邦化学工業
(株)製) 0.7部
ユニオールD1200(ポリプロピレングリコール、初筆カスレ防止剤、日本油脂(株)製) 0.2部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解して黒色のボールペン用油性インキを得た。このものの剪断速度1/sの粘度は1210mPa・sであった。
【0029】
以上、実施例、比較例で得たインキ組成物について、下記の試験を行った。結果を表1に示す。
尚、粘度の測定は、ジャスコインタナショナル(株)製のレオメーターVAR−100に、φ20のパラレルローターを取り付け試料台との間隙を0.2mmに調整後、一定速度の項目で剪断速度を1/sに設定して25℃にて行った。
【0030】
(試験用ボールペンの作製)
上記実施例及び比較例で得た油性ボールペン用インキを市販のジェットストリーム(油性ボールペン、三菱鉛筆(株)製(ボール径φ0.7))からインキを抜いて洗浄した部品に0.3g充填し、遠心機にて遠心力を加えてインキ中の気泡を脱気して、試験用ボールペンを作製した。
【0031】
ボテ試験:400字詰め原稿用紙((株)コクヨ製、品番:ケ−10)1枚にひらがな50音を繰り返し筆記したときに紙面に発生したボテの数を数えた。
初筆カスレ試験:筆記後キャップを外したまま無風の温度20℃、湿度40%の室内に60分放置した後上質紙に直線を手書きで筆記したときにその書き始めから正常筆記できた筆跡の位置までの長さを定規で測定した。
【0032】
【表1】

【0033】
以上、詳細に説明したように本発明のインキは、着色剤に顔料を用いても経時的な顔料の沈降による目詰まりが無いボールペン用油性インキに関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油溶性樹脂と、油溶性染料と、沸点が160℃〜200℃の範囲のグリコールエーテル系溶剤と、エチレングリコールモノプロピルエーテルとから少なくともなるボールペン用油性インキ。
【請求項2】
沸点が160℃〜200℃の範囲のグリコールエーテル系溶剤と、エチレングリコールモノプロピルエーテルの比率が重量比で1:1〜20:1である請求項1記載のボールペン用油性インキ。
【請求項3】
前記インキがポリプロピレングリコールを含有する請求項1乃至2記載のボールペン用油性インキ。