説明

ボール弁

【課題】特殊な工具を使用せずに、シートリングを容易且つ短時間で交換可能なボール弁を提供する。
【解決手段】ボディ1の本体11の上端部に上方開口部が形成され、本体11内にステム3付きの弁体2が回動可能に備えられると共に、本体11内の左右両側に弁体2のシート機構4とこれを内側方に付勢する皿バネ5が配設され、弁体2及びシート機構4は上方開口部から着脱可能とされている。シート機構4は、弁体2と当接するシートリング38と、シートリング38を保持するリングホルダー39と、リングホルダー39を回動可能に保持する内側・外側リング40,41を有する。リングホルダー39は、内側・外側リング40,41に対する回動により、弁体2の両シートリング38間への着脱を許容する傾斜状の弁体用着脱姿勢に姿勢変更可能とされ、この姿勢変更が、弁体2の両シートリング38間への着脱により行われ、皿バネ5は姿勢変更に対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボール弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ボール弁では、ボディ内部の左右方向中央部に、弁体が縦軸廻りに回動可能に備えられると共に、ボディ内部の左右両側には、弁体と相対的に摺動可能に全周にわたって当接するシートリングが配設されて、流体の漏洩が防止されている。
【0003】
ところで、ボール弁は、サイドエントリー型とトップエントリー型に大別される。サイドエントリー型では、ボディが、分解可能な左右分割体を有し、左右分割体を分解することにより、弁体をボディ内部に着脱可能としている(例えば、特許文献1参照)。又、トップエントリー型では、例えば、特殊な工具を利用して、弁体をボディ内部に着脱可能としている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−283913号公報
【特許文献2】特開2000−46210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなボール弁を配管に接続して、使用すると、ボール弁の長期間の使用により、シートリングが磨耗、劣化して、シートリングを交換する必要が生じる。
【0006】
この交換時には、サイドエントリー型では、ボール弁を配管から取り外した後、ボール弁のボディを左右分割体に分解して、弁体をボディから取り出し、その後、シートリングを交換して、上記とは逆の手順で、ボール弁を配管に取付ける必要があり、シートリングの交換に多大な手間と時間が掛かるとの問題があった。
【0007】
これに対し、トップエントリー型では、ボール弁を配管に対して着脱する必要がないが、従来のトップエントリー型では、弁体のボディ内部に対する着脱時に、上記のように特殊な工具が必要であると共に、この工具の操作も面倒であるとの問題があり、トップエントリー型でも、シートリングの交換を容易且つ短時間で行えないとの問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決できるボール弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のボール弁の特徴とするところは、A.中空状とされたボディと、B.ボディ内部の左右方向略中央部に縦軸廻りに回動可能に備えられた弁体と、C.弁体から上方に突設されたステムと、D.ボディ内部の左右両側に左右方向に移動可能に備えられた左右一対のシート機構と、E.左右一対の付勢機構を有し、ボディは、α.ボディを主構成し、上端部の左右方向中央部に、内部空間が上方に開口する上方開口部が形成された本体と、β.本体の上端部の左右方向中央部に着脱可能に取付けられて、上方開口部を閉鎖する蓋体を有し、シート機構が、イ.左右方向に開口するリング状とされ、弁体と相対的に摺動可能に全周にわたって当接するシートリングと、ロ.左右方向に開口するリング状とされて、シートリングが内周面に備えられると共に、外周面が、球面の一部とされたリングホルダーと、ハ.左右方向に開口するリング状とされ、本体内に左右方向に移動可能に嵌合されると共に、内周面が、球面の一部とされ、リングホルダーの内側端部に外嵌されて、リングホルダーが回動可能となるように、内周面がリングホルダーの外周面と球面接触する内側リングと、ニ.左右方向に開口するリング状とされ、本体内における、内側リングよりも外側方側の部分に左右方向に移動可能に嵌合されると共に、少なくとも内側端部の内周面が、球面の一部、又は、外側方に向かってテーパー状とされ、内側端面の内径が他の部分の内径よりも大とされて、リングホルダーの外側端部に着脱可能に外嵌され、リングホルダーが回動可能となるように、少なくとも内側端部の内周面がリングホルダーの外周面と球面接触、又は、左右方向に関して当接する外側リングを有し、弁体、シートリング、リングホルダー及び内側リングが本体内部にその上方開口部を介して着脱可能とされ、リングホルダーは、内側リング及び外側リングに対する回動により、(1) リングホルダー、内側リング及び外側リングの軸心が一致し、シートリングが弁体と全周にわたって当接する使用姿勢と、(2) 上部が下部よりも外側方に位置した傾斜姿勢とされ、弁体の両シートリング間への着脱を許容する弁体用着脱姿勢に姿勢変更可能とされ、この姿勢変更が、弁体の両シートリング間への着脱(挿脱)により行われ、付勢機構は、外側リングを内側方に付勢することで、リングホルダーを介して、シートリングを弁体に押圧すると共に、付勢機構は、リングホルダーの使用姿勢から弁体用着脱姿勢への姿勢変更時に、シート機構の外側方への移動を許容し、上記とは逆の姿勢変更時に、シート機構を内側方へ移動させる点にある。
尚、内側リングの内側端部の内径が、内側リングの軸心方向中途部の内径よりも小とされ、内側リングの内周面の径方向対称箇所に、一対の切欠きが、内側リングの内側端面から外側端面に向かって、内側リングの少なくとも最大内径部分まで形成され、各切欠きの幅がリングホルダーの軸心方向長さよりも大とされ、リングホルダーは、内側リングに対する上記径方向廻りの相対的な回動により、リングホルダーと内側リングの両軸心が直交し、内側リングの周方向に関して、リングホルダーと両切欠きが対応する内側リング用着脱姿勢に姿勢変更可能とされ、リングホルダーは、内側リング用着脱姿勢で、内側リングの内側方に脱着可能とされることもある。
又、付勢手段が、皿バネ又はコイルバネとされることもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シートリングの交換の際に、サイドエントリー型のように、シートリングの交換に多大な手間と時間が掛かることはないと共に、従来のトップエントリー型のように、特殊な工具も必要とせず、シートリングの交換を容易且つ短時間で行える。
又、弁体のボディ内への取付時に、弁体と各シート機構の軸心が一致せずに、シートリングが弁体に全周にわたって均一に当接しない場合もある。この場合には、各付勢手段の付勢力により、各シートリングが弁体に押圧されていることから、ステムに対する手等の保持を解除することにより、自動的に、弁体と各シート機構の調心作用が行われる。これにより、弁体が正規装備位置に移動し、弁体と各シート機構の軸心が一致して、シートリングが弁体と全周にわたって均一に当接し、これによって、シートリングと弁体間から流体が漏洩することが防止される。
又、請求項2記載の発明によれば、リングホルダーと内側リングの組立・分解を容易且つ短時間で行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1の弁体の取外しを説明するための断面図である。
【図3】図1の弁体の取外しを説明するための断面図である。
【図4】図1の弁体の取外しを説明するための断面図である。
【図5】図1の弁体の取外しを説明するための断面図である。
【図6】図2の一部の拡大図である。
【図7】図6とは周方向に関して異なる位置でのリングホルダーと内側リングの断面図である。
【図8】図1の弁体等の簡略斜視図である。
【図9】図1のリングホルダーと内側リングの斜視図である。
【図10】図9の内側リングの正面図である。
【図11】図9のリングホルダーと内側リングの分解・組立を説明するための断面図である。
【図12】図9のリングホルダーと内側リングの分解・組立を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のボール弁実施の形態の一例を図面に基づき説明すると、ボール弁は、弁体をボディの上方から着脱するトップエントリー型とされており、図1〜図5に示すように、ボディ(ハウジング)1と、弁体2と、ステム(弁軸)3と、左右一対宛のシート機構(バルブ(弁)シート機構、(弁)シール機構)4及び皿バネ5等を有する。尚、本明細書及び特許請求の範囲では、便宜上、図1等において、紙面の上下、左右を、それぞれ、上下、左右として説明しているが、ボール弁は、上下逆にして使用されたり、或いは、ボール弁を左右任意の角度に回動させた状態で使用されることもある。
【0013】
ボディ1は金属製とされて、その左右両側部に配管が着脱自在に接続されるもので、その内部に、流体流通路10が左右方向に貫通形成されており、流体流通路10には、各種液体、気体が流通する。尚、上記及び下記の金属は、ステンレス材、鋼材、その他の金属材を意味している。ボディ1は、ボディ1を主構成する本体11と、蓋体12を有する。
【0014】
図6にも示すように、本体11は、例えば、鋳物製とされ、中空状とされて、内部に流体流通路10が形成され、上端部の左右方向(略)中央部には、流体流通路10が上方に開口する上方開口部16が形成されて、この上方開口部16から、弁体2、ステム3、シート機構5及び皿バネ5が本体11内部に対して着脱可能とされている。又、本体11の下端部内面の左右方向(略)中央部には、上方に突出し且つ上方に開口する円筒状の支持部17が一体形成されている。本体11の左右両側端部には、流体流通路10が外側方に開口する側方開口部18が形成されて、配管内部と連通する。本体11の左右両側部の内面には、この内面の大部分を占める大径部19と、大径部19よりも小径とされた中間径部20と、中間径部20よりも小径とされた小径部21が、軸心方向に連設されている。大径部19、中間径部20及び小径部21は、それぞれ、軸心方向に関して、一定径とされている。大径部19と中間径部20の境界部、中間径部20と小径部21の境界部には、それぞれ、内側方に面状を呈する外周側段付面22、内周側段付面23が形成されている。
【0015】
蓋体12は、本体11の上方開口部16を閉鎖するもので、本体11の上面にボルト25により着脱自在に取付けられている。蓋体12の中央部には、挿入孔26が上下方向に貫通形成されている。
【0016】
図8にも示すように、弁体2は金属製の球状とされ、本体11の上方開口部16から本体11の内部に着脱自在に挿入されて、ボディ1の流体流通路10の左右方向(略)中央部に、縦軸廻りに回動可能に備えられるもので、外周面が流体流通路10の軸心27上の点(弁体用中心点、弁体2の中心)Aを中心とする球面の一部とされている。弁体2には貫通孔28が水平方向に貫通形成され、弁体2の回動により、貫通孔28が流体流通路10の左右両側と連通・遮断可能とされている。弁体2の上端部の中央部は、上方に突出する突出部29とされ、この突出部29には、貫通孔28と連通する取付孔30が上下方向に貫通形成されている。弁体2の下面の中央部からは軸部31が下方に一体に突設され、この軸部31が本体11の支持部17にブッシュ32を介して回動可能に挿入されると共に、弁体2の下面が支持部17に回動可能に当接している。
【0017】
ステム3は弁体2を回動操作するもので、上下方向に配設されて、その下部が蓋体12の挿入孔26に挿脱自在に挿通されると共に、弁体2の取付孔30に挿脱自在に挿入されて、ネジ、ピン等の固定具34により、着脱可能に固定されている。ステム3の軸心方向中途部には、Oリング等のリング35が外嵌固定され、このリング35を介して、蓋体12が弁体2の突出部29と当接している。ステム3の上部には、弁体2を回動操作するための操作レバー又は駆動機構(図示省略)が備えられる。36はシール材である。
【0018】
左右のシート機構4は、ボディ1の流体流通路10の左右両側、即ち、弁体2の左右両側に配設されて、本体11の大径部19に左右方向に移動可能に備えられ、弁体2をフローティング状態又は非フローティング状態で、回動可能に保持している。図6、図7、図9〜図12にも示すように、各シート機構4は、シートリング(シールリング、バルブシート)38、リングホルダー39、内側リング40及び外側リング41等を有し、これらリング38〜41は、左右方向に開口するリング状とされている。
【0019】
シートリング38の内周面は、上記弁体用中心点Aを中心とする球面の一部、又は、外側方に向かってテーパー状とされ、弁体2の外周面と相対的に摺動可能に全周にわたって球面接触、又は、当接して、シートリング38と弁体2間からの流体の漏洩を防止している。シートリング38は、耐摩擦性、耐薬品性或いは耐温度性等に優れるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又は、これに耐クリープ性に優れたテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を混合した混合物、或いは、この混合物にカーボン繊維を特定量配合して耐摩耗性を向上させたもの等により形成されている。
【0020】
リングホルダー39はシートリング38を保持するもので、その内側端部の内周面に、径方向内方及び内側方に開口する装着溝43が全周にわたって形成され、この装着溝43にシートリング38が着脱自在に装着されている。リングホルダー39は、内側・外側リング40,41を介して、本体11の小径部21内に、左右方向に移動可能(摺動可能)で且つ回動可能に嵌合されるが、このようにするために、リングホルダー39の外周面は、流体流通路10の軸心27上の点(リングホルダー用中心点)Bを中心とする球面の一部とされている。
【0021】
内側リング40は、本体11の小径部21の内側端部内に軸心方向に移動可能(摺動可能)で且つ着脱可能に嵌合されている。内側リング40の内周面は、上記リングホルダー用中心点Bを中心とする球面の一部とされているが、内側リング40の内側端面の内径は、その軸心方向中途部の内径よりも小とされている。内側リング40はリングホルダー39の内側端部に外嵌され、リングホルダー39が回動可能となるように、リングホルダー39の外周面と内側リング40の内周面が球面接触している。又、内側リング40の内周面の径方向44の対称箇所には、リングホルダー39を内側リング40に対して着脱可能とするための一対の切欠き45が、内側リング40の内側端面から外側端面に向かって、内側リング40の最大内径部分まで形成されている。そして、リングホルダー39が、内側リング40に対して上記径方向44廻りに相対的に回動することにより、図10及び図11に示すように、リングホルダー39と内側リング40の両軸心が直交し、内側リング40の周方向に関して、リングホルダー39と両切欠き45が対応する内側リング用着脱姿勢(位置)に姿勢(位置)変更可能とされている。そして、リングホルダー39は、内側リング用着脱姿勢で、内側リング40の内側方に脱着(挿脱)可能とされている。尚、切欠き45を内側リング40の軸心方向全長にわたって形成してもよい。
【0022】
外側リング41は、本体11の小径部21の外側端部内に軸心方向に摺動可能(移動可能)で且つ着脱可能に嵌合されている。外側リング41の内周面における、少なくとも内側端部、即ち、少なくとも外側端部を除く部分は、上記リングホルダー用中心点Bを中心とする球面の一部、又は、外側に向かってテーパー状とされているが、外側リング41の内側端面の内径は、他の部分の内径よりも大とされている。外側リング41は、内側リング40の外側端部に対し、その外側方から、着脱可能に相対的に外嵌され、リングホルダー39が回動可能となるように、リングホルダー39の外周面と外側リング41の内周面が球面接触、又は、左右方向及び径方向に関して当接している。これにより、リングホルダー39は、内側・外側リング40,41に対する回動により、図1等に示すように、(1)(略)直立姿勢とされて、リングホルダー39、内側・外側リング40,41の軸心が一致し、シートリング38が弁体2と全周にわたって当接する使用姿勢(位置)と、図3〜図5等に示すように、(2)上部が下部よりも外側方に位置した傾斜姿勢とされ、弁体2の両シートリング38間への着脱を許容する弁体用着脱姿勢(位置)に姿勢(位置)変更可能とされている。外側リング41の外周面には、本体11の内周面に全周にわたって当接するOリング等のリング状シール材47が装着用周溝48を介して着脱可能に装着され、外側リング41の内周面には、シートリング38の外周面に全周にわたって当接する上記同様のリング状シール材49が装着用周溝50を介して着脱可能に装着されている。
【0023】
皿バネ5は、シート機構4の付勢手段として例示されるもので、シート機構4を内側方に付勢して、シートリング38を弁体2に押圧するもので、本体11の内周側段付面23と外側リング41間に弾発状に介装されている。尚、皿バネ5は、本体11の外周側段付面22の内周角部に当接させる場合と、当接させない場合がある。
【0024】
上記構成例によれば、シートリング38を交換する際には、まず、弁体2をボディ1から取出すが、この際には、図2に示すように、本体11から蓋体12を取外した後、ステム3を手又は把持機構(図示省略)で保持し、図3〜図5に示すように、弁体2を両シートリング38と摺動させながら、ステム3及び弁体2を本体11の上方開口部16から引上げる。この際、各シート機構4が各皿バネ5を圧縮して、外側方に移動すると共に、各リングホルダー39が回動して、直立姿勢である使用姿勢から、上部が外側方に移行した傾斜姿勢である弁体用着脱姿勢となる。これにより、弁体2は両シートリング38間からその上方に取出される。
【0025】
尚、各リングホルダー39は、図4に示す状態(弁体2の取出途中の状態)から図5に示す状態(弁体2の取出後の状態)に移行する際に、各シート機構4の構成部材の各種条件により、弁体用着脱姿勢よりも傾斜角度の小さい傾斜姿勢や、弁体用着脱姿勢よりも傾斜角度の大きい傾斜姿勢に回動する場合と、弁体用着脱姿勢に維持される場合がある。又、各シート機構4も図4に示す状態から図5に示す状態に移行する際に、各皿バネ5による付勢により、内側方に移動する場合と、移動しない場合がある。
【0026】
その後、シートリング38を備えた左右のリングホルダー39及び内側リング40を内側方に移動させた後、これらを本体11の上方開口部16から取出す。しかる後、各リングホルダー39からシートリング38を取外し、各リングホルダー39に新しいシートリング38を取付ける。
【0027】
この際、リングホルダー39に対するシートリング38の着脱を容易に行うために、リングホルダー39と内側リング40を分解する際には、リングホルダー39を内側リング40内で回動させ、図10及び図11に示すように、リングホルダー39と内側リング40の両軸心が直交し且つ内側リング40の周方向に関してリングホルダー39と両切欠き45が対応する内側リング用着脱姿勢姿勢に姿勢変更させる。その後、図9及び図12に示すように、リングホルダー39を内側リング40の内側方に取出せば、リングホルダー39と内側リング40を分解できる。
【0028】
又、リングホルダー39にシートリング38を取付けた後、リングホルダー39と内側リング40を組立てる際には、上記とは逆の手順で作業を行う。即ち、図9及び図12に示すように、リングホルダー39を内側リング40の内側方に配置して、内側方から見て、両者の軸心が直交するように配置する。その後、図10及び図11に示すように、リングホルダー39を内側リング40内に挿入して、内側リング用着脱姿勢にした後、リングホルダー39を、例えば、リングホルダー39と内側リング40の両軸心が一致する姿勢、即ち、使用姿勢等に回動させれば、リングホルダー39と内側リング40を組立てることができる。
【0029】
上記のようにして、シートリング38の交換をおこなった後、左右の内側リング40とリングホルダー39、及びステム3付き弁体2をボディ1内に取付ける際には、上記とは逆の手順で作業を行う。即ち、左右のリングホルダー39及び内側リング40を本体11の上方開口部16から内部に挿入して、これらを本体11の各大径部19内に嵌合する。
【0030】
その後、各リングホルダー39を各内側リング40に対して回動させて、図5に示すように、上部が外側方に移動した傾斜姿勢とする。この際、この傾斜姿勢が弁体用着脱姿勢である場合と、この着脱姿勢よりも傾斜角度の小さい傾斜姿勢である場合と、着脱姿勢よりも傾斜角度の大きい傾斜姿勢である場合がある。上記の弁体用着脱姿勢である場合には、ステム3を把持し、図4に示すように、弁体2を両シートリング38と摺動させながらこれらの間に挿入していく。又、弁体用着脱姿勢よりも傾斜角度の小さい傾斜姿勢である場合には、弁体2により、各シートリング38を介して各リングホルダー39の上部を押圧し、各リングホルダー39を弁体用着脱姿勢として、上記同様に、弁体2を両シートリング38と摺動させながらこれらの間に挿入していく。更に、弁体用着脱姿勢よりも傾斜角度の大きい傾斜姿勢である場合には、弁体2を両シートリング38間に挿入していく過程で、弁体2と各シートリング38の当接により、各リングホルダー39は弁体用着脱姿勢に回動する。
【0031】
上記のようにして、弁体2を本体11の正規装備位置(正規取付位置)まで挿入して、弁体2の軸部31を本体11の支持部17にブッシュ32を介して挿入すると共に、弁体2の下面を支持部17に当接させる。これにより、リングホルダー39が使用姿勢に回動して、リングホルダー39と内側リング40の両軸心が一致する。この際、各皿バネ5は、各シート機構4を内側方に移動させ、これにより、シートリング38が弁体2に押圧されて、弁体2と全周にわたって当接する。
【0032】
ところで、弁体2が正規装備位置に挿入されず、弁体2と各シート機構4の軸心が一致せずに、各シートリング38が弁体2と全周にわたって均一に当接しない場合もある。この場合には、各皿バネ5の付勢力により、各シートリング38が弁体2に押圧されていることから、ステム3に対する手等の保持を解除すると、自動的に、弁体2と各シート機構4の調心作用が行われる。これにより、弁体2が正規装備位置に移動し、弁体2と各シート機構4の軸心が一致して、シートリング38が弁体2と全周にわたって均一に当接し、これによって、シートリング38と弁体2間から流体が漏洩することが防止される。
【0033】
上記のようにして、弁体2を両シートリング38間に挿入した後、本体11に蓋体12を取付けるが、この際、蓋体12がリング35を介して弁体2の突出部29と当接するので、例え、弁体2が正規装備位置から上方にずれていても、蓋体12の上記取付により、弁体2は正規装備位置に押下げられる。
【0034】
上記構成例によれば、シートリング38の交換の際に、サイドエントリー型のように、シートリング38の交換に多大な手間と時間が掛かることはないと共に、従来のトップエントリー型のように、特殊な工具も必要とせず、シートリング38の交換を容易且つ短時間で行える。
【0035】
尚、上記実施の形態では、付勢手段として、皿バネを使用したが、コイルバネやその他のバネ、或いは、その他の付勢手段を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明はボール弁に適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 ボディ
2 弁体
3 ステム
4 シート機構
5 皿バネ
10 流体流通路
11 本体
12 蓋体
15 上方開口部
27 流体流通路の軸心
28 貫通孔
38 シートリング
39 リングホルダー
40,41 内側・外側リング
44 内側リングの径方向
45 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.中空状とされたボディと、
B.ボディ内部の左右方向略中央部に縦軸廻りに回動可能に備えられた弁体と、
C.弁体から上方に突設されたステムと、
D.ボディ内部の左右両側に左右方向に移動可能に備えられた左右一対のシート機構
と、
E.左右一対の付勢機構
を有し、
ボディは、
α.ボディを主構成し、上端部の左右方向中央部に、内部空間が上方に開口する上方 開口部が形成された本体と、
β.本体の上端部の左右方向中央部に着脱可能に取付けられて、上方開口部を閉鎖す る蓋体
を有し、
シート機構が、
イ.左右方向に開口するリング状とされ、弁体と相対的に摺動可能に全周にわたって 当接するシートリングと、
ロ.左右方向に開口するリング状とされて、シートリングが内周面に備えられると共 に、外周面が、球面の一部とされたリングホルダーと、
ハ.左右方向に開口するリング状とされ、本体内に左右方向に移動可能に嵌合される と共に、内周面が、球面の一部とされ、リングホルダーの内側端部に外嵌されて、 リングホルダーが回動可能となるように、内周面がリングホルダーの外周面と球面 接触する内側リングと、
ニ.左右方向に開口するリング状とされ、本体内における、内側リングよりも外側方 側の部分に左右方向に移動可能に嵌合されると共に、少なくとも内側端部の内周面 が、球面の一部、又は、外側方に向かってテーパー状とされ、内側端面の内径が他 の部分の内径よりも大とされて、リングホルダーの外側端部に着脱可能に外嵌され 、リングホルダーが回動可能となるように、少なくとも内側端部の内周面がリング ホルダーの外周面と球面接触、又は、左右方向に関して当接する外側リング
を有し、
弁体、シートリング、リングホルダー及び内側リングが本体内部にその上方開口部を介して着脱可能とされ、
リングホルダーは、内側リング及び外側リングに対する回動により、
(1) リングホルダー、内側リング及び外側リングの軸心が一致し、シートリング が弁体と全周にわたって当接する使用姿勢と、
(2) 上部が下部よりも外側方に位置した傾斜姿勢とされ、弁体の両シートリング 間への着脱を許容する弁体用着脱姿勢
に姿勢変更可能とされ、
この姿勢変更が、弁体の両シートリング間への着脱により行われ、
付勢機構は、外側リングを内側方に付勢することで、リングホルダーを介して、シートリングを弁体に押圧すると共に、
付勢機構は、リングホルダーの使用姿勢から弁体用着脱姿勢への姿勢変更時に、シート機構の外側方への移動を許容し、上記とは逆の姿勢変更時に、シート機構を内側方へ移動させるボール弁。
【請求項2】
内側リングの内側端部の内径が、内側リングの軸心方向中途部の内径よりも小とされ、
内側リングの内周面の径方向対称箇所に、一対の切欠きが、内側リングの内側端面から外側端面に向かって、内側リングの少なくとも最大内径部分まで形成され、
各切欠きの幅がリングホルダーの軸心方向長さよりも大とされ、
リングホルダーは、内側リングに対する上記径方向廻りの相対的な回動により、
リングホルダーと内側リングの両軸心が直交し、内側リングの周方向に関して、リ ングホルダーと両切欠きが対応する内側リング用着脱姿勢
に姿勢変更可能とされ、
リングホルダーは、内側リング用着脱姿勢で、内側リングの内側方に脱着可能とされた請求項1記載のボール弁。
【請求項3】
付勢手段が、皿バネ又はコイルバネとされた請求項1又は2記載のボール弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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