説明

ボール投入玩具

【課題】 幼児がボールの投入口に手を深く突っ込んで抜けなくなっても、その場で、簡単かつ確実に、その手を抜き出すことができるボール投入玩具を得ること。
【解決手段】 ボールの投入口14と出口41を玩具本体10に備えたボール投入玩具において、幼児の手が挿入可能な内径をもつボール投入口14と出口41の少なくとも一方を、玩具本体10に着脱できるように形成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール状の球体(以下、単にボールという)を幼児が投入して遊ぶボール投入玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の幼児用玩具としては、例えば、ボールを投入口から入れると玩具本体が動き回り、ボールが玩具本体から排出されると動きが止まる動物形態をもつもの、上部から投入されたボールがチャイムの形態をなす玩具本体内部を垂直旋回して下部から排出されるもの、横から投入されたボールが玩具本体の透明部分の内部を水平旋回して排出されるもの、ブロックのように様々なパーツを使ってコースを組み立て、上部から落とされたボールをコースに沿って転がすものなどが提案されている。
【0003】
例えば、動物の形態をもつボール投入玩具では、漫画化したアヒル状の外観をもつ玩具本体の頭部に設けた投入口にボールを入れると、そのボールが玩具本体内のボール通路を通って、胴体内部にある皿に落ち、皿の上を数回回転した後、尾部に設けた出口から排出されるようになっている。この玩具では、投入したボールがボール通路に設けたスイッチを押すことにより、電動機を作動させて動物形態の玩具本体を走行させ、ボールが尾部の出口から排出されるとき、そのボールが通路部材の出口にあるスイッチを押して、電動機を止めるようになっている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
これらの玩具の大半は、5歳以下の幼児を対象としている。5才以下の幼児は体が柔らかく、大人が想定しない事故を起こすことがある。例えば、動物形態のもつボール投入玩具の場合、幼児がボール投入孔や皿を旋回するボールに興味を引き、手をボール投入口に深く入れてしまい、手が抜けなくなる恐れがある。このような事態が生じると、恐れと痛さで泣きわめく幼児を病院に連れて行き、ボール投入玩具を壊してもらい、手を抜き出さなければならない。このような事態は玩具の設計時には殆んど想定することができない。
【特許文献1】特開2003−53052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このようなボール投入玩具の現状に鑑み、幼児がボールの投入口に手を深く突っ込んで抜けなくなっても、その場で、簡単かつ確実に、その手を抜き出すことができるボール投入玩具を得ることを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決することを目的としてなされた本発明ボール投入玩具の構成は、ボールの投入口と出口を玩具本体に備えたボール投入玩具において、幼児の手が挿入可能な内径をもつボール投入口と出口の少なくとも一方を、玩具本体に着脱できるように形成したことを特徴とするものであ。
【0007】
本発明では、上記構成において、ボール投入口か出口の少なくとも一方が、互いに連結された複数の通路部材によって構成されている。また、通路部材の各々が、ボール通路を形成したときに、互いに嵌り合う凸出部と凹み部とによって連結されている。ここで、通路部材は、ボール通路を形成してスリーブに嵌め込まれ、スリーブを介して玩具本体に取り付けられている。また、スリーブに結合するためのラッチを備えており、さらに、スリーブはバヨネット継ぎ手によって玩具本体に位置決めされるようになっている。
【0008】
本発明では、上記構成において、ボール投球口又は出口の一方が、複数の通路部材によって構成され、一部の通路部材が玩具本体と一体に形成され、残余が玩具本体に着脱可能に構成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明ボール投入玩具は、幼児の手が挿入可能な内径をもつボール投入口を玩具本体に備えるボール投入玩具において、ボールの投入口が出口の一方を、玩具本体から着脱可能に形成しているため、幼児が手を深く突っ込んでも、その場で、簡単かつ確実に、手を抜き出すことができる。
【0010】
すなわち、幼児がボール投球口や玩具本体内のボールの動きなどに興味を強く引かれ、ボール投入口から手を深く差し込み、手がそこから抜けでなくなっても、その投入口を玩具本体から分離して分解することができるので、玩具から手が抜けなくなるという幼児が抱く恐怖感を小さくすることができ、大人にとっても大きな安心感を得ることができる。手の離脱は、ボールの投入口を形成している部材が小さいので、親などの保護者が簡単に手を引き出すことができる。
【0011】
本発明において、ボール通路の投入口が、互いに連結された複数の通路部材によって構成されていると、幼児が投入口から手を抜くとき、投入口を形成している部材を分解することにより、簡単に手を投入口から離脱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図を参照して、本発明ボール投入玩具の実施の形態例を説明する。実施の態様例として説明する図1のボール投入玩具は、カメの形態にデザインされた玩具本体とボールからなり、頭部に設けた投入口(入口)からボールを投入することによって、玩具本体が動き回り(走行し)、そのボールが尾部に設けた出口から排出されると、玩具本体が停止するようになっている。
【0013】
添付図において、図1は本発明ボール投入玩具の実施形態の一例を示す斜視図、図2は図1の2−2線に沿うボール投入口部分の縦断面図、図3は図2の3−3線に沿う平断面図、図4は図3の4−4線に沿う拡大正面図、図5は図2の5−5線に沿う断面図、図6は手を玩具本体から抜き出した状態を示す説明図、図7は図1の矢印6方向から見たボールの出口部分の斜視図、図8は図7の8−8線に沿う断面図である。
【0014】
図1は、本発明を適用するボール投入玩具の全体構成を示している。玩具本体は、参照符号10で示されており、この例では全体がカメの形に形成された合成樹脂成型品である。玩具本体自体は、頭部11及び胴部12、脚に代わる四個の車輪13、それに、頭部11の下方(首部と胴部の境界部の下方)に一個の駆動輪(図示せず)を備えている。
【0015】
ボール50は、合成樹脂を成形加工した、中空球状のものからなっており、一個又は色彩の異なる複数個からなる。
【0016】
このボール投入玩具では、ボール50を玩具本体10の頂部にあるボール投入口である入り口14に投入すると、これに続くボール通路15を通って胴部12の中に導かれ、偏向板16によって透明な甲羅の内部にある皿17を周縁から中心に向かって複数回旋回し、皿17の中央にある皿孔18からボール通路19を通って後方(尾部)に設けたボール出口から外部に排出される。
【0017】
玩具本体10の内部には、頭部11の下方にある駆動輪を動かし、かつ制御する駆動ユニット及び駆動ユニットに電力を供給する電池ユニットが組み込まれている。駆動ユニットは、ボール50が甲羅に向かうときに、ボール通路15にあるスイッチを押すことによって電池ユニットに接続され、駆動ユニット内の電動機が駆動輪を回転させ、玩具本体10を動かし、ボール50がボール通路19を通るときに、ここに配置されたスイッチを押して、駆動ユニットと電池ユニットの接続を切り離し、玩具本体10を停止させるようになっている。
【0018】
ボール50を投入する入り口14は、図2,図3に示すように、筒体を二分した態様の二つの通路部材21,21’とこれらの通路部材21,21’を筒状に保って保持するスリーブ31とからなる。
【0019】
通路部材21,21’は、組み合わせることによって一つの円筒を形成する半円筒状の部材である。
【0020】
ここで、通路部材21は、図2に示すように、内外壁22,23を上壁24で接続し、下端を開放した二重円筒状のものからなる。図3に示すように、内壁22の一方の端縁には平面L字状にすることによって形成された凹み部22aを、外壁23の反対側端縁には平面L字状にすることによって形成された凹み部23aを一体成形で具備している。通路部材21’も上部部材21と同じ構成を具備している。
【0021】
これらの通路部材21,21’は、組み合わせると、内壁22の端縁にある凹み部22aが内壁22’の端縁である凸出部に嵌り、内壁22の他方の端縁が凸出部となって内壁22’の端縁にある凹み部22a’に嵌ると共に、外壁23の端縁である凸出部が外壁23’の端縁にある凹み部23a’に嵌り、外壁23の反対側端縁にある凹み部23aが外壁23’の端縁である凸出部に嵌り込み、同時に、凹み部22aを形成する円筒壁と凹み部23a’を形成する円筒壁、それに凹み部23aと凹み部22a’とが接触して、一つの強固な円筒を形成する。このとき、内壁22,22’は、所定の内径のボール通路15を形成するが、外壁23と外壁23’との間には隙間26を形成する。
【0022】
スリーブ31は、一分材からなり、内外壁32,33を上壁34で接続し、下端を開放し二重円筒状のものからなる。内壁32の内径は、通路部材21,21’が形成する外壁23,23’の直径よりも僅かに大きい。通路部材21,21’は、このスリーブ31に嵌め込まれ、直径方向の動きが規制される。このとき、内壁32と一体成型された突出36が通路部材21,21’の外壁23,23’の端縁間に形成された隙間26に嵌り込み、径方向の位置決めをする。
【0023】
通路部材21,21’の外壁23,23’の下方にはラッチ27,27’が形成されている。図4は、ラッチ27を正面から見た詳細を示しており、外壁23,23’にスリット28を形成し、スリット28に挟まれた部分に突起27aを一体成形されている。通路部材21’のラッチ27’も同様に構成されている。
【0024】
通路部材21,21’をスリーブ31に嵌め込むと、ラッチ27の突起27aがスリーブ31の内壁32の下端に嵌り込み、上壁24のフランジがスリーブ31の上壁34に圧着して通路部材21,21’の上下方向の位置決めを行うことができる。
【0025】
この通路部材21,21’とスリーブ31との合体物は、玩具本体10の頭部11の頂部にあり、ボール通路15に接続する開口周囲にある座板20の環状突起20aに嵌め込まれていると共に、バヨネット継ぎ手によって、玩具本体10の頭部11に装着される。このために、スリーブ31の外壁33の下端には、L字状の突起35が一体成形され、玩具本体10の座板20には、図5に示すように、突起35の嵌る開口37が設けられている。スリーブ31は、突起35を開口37に嵌め、スリーブ31を水平回転することによって、座板20における開口37の縁が突起35の溝35aに嵌り込み、位置を固定される。
【0026】
スリーブ31と座板20との接続部分はリング状の化粧環38によって隠されている。この化粧環38は、リング状のもので、下端を玩具本体10の頭部11に接触させて座板20に嵌め込まれていると共に、内表面にある突起を座板20の周面にある浅溝に嵌め込むことによって位置決めされている。
【0027】
本発明によるボール投入玩具は、前述のように、ボール50を玩具本体10の入り口14に投入することによって、ボール通路15にある駆動ユニットのスイッチ39が入り、玩具本体10が動き回り、ボール50が排出されると、ボール通路19にあるスイッチが切れて、玩具本体10が停止する。
【0028】
幼児は、このようなボールの動きだけでなく、玩具本体10の胴部12にある透明な甲羅内部の皿17の上でぐるぐる水平旋回するボール50やボール50の入り口14及び出口などにも興味を持ち、その他の興味などから、自分の手を入り口14又はボールの出口に深く差し込むことがある。ことに5才未満の幼児の体は柔らかいため、大人が想定し得ない状況での事故を発生することがあり、その一つとして自分の手が玩具本体10から抜け出せなくなる恐れがある。
【0029】
このような事態が生じたとき、本発明を適用したボール投入玩具では、スリーブ31を逆転することで、スリーブ31が通路部材21,21’と一緒に玩具本体10から外れ、手を玩具本体10から抜くことができる。さらに、ラッチ27を外すことで、図6に示すように、スリーブ31を通路部材21,21’から外すことができ、スリーブ31の内径が通路部材21,21’の外形よりも大きいため、スリーブ31を手Hから簡単に抜くことができる。そして、手Hに残った通路部材21,21’は左右に割ることによって、手Hから外すことができる。
【0030】
従来のボール投入玩具では、上記のような事故が発生すると、恐怖と痛さで泣きわめく幼児を病院に連れて行き、玩具本体を破壊して手を抜き出しているが、本発明によれば、医者などの助けなしに、迅速にかつ簡単に手を玩具本体から抜き出すことができて、きわめて安全である。
【0031】
さらに、このボール投入玩具では、玩具本体10の後方にあるボール50の出口に手を突っ込んで抜けなくなっても、簡単に手を抜くことができるようにしているので、以下、この点について述べる。
【0032】
図7に示すように、ボール通路19におけるボールの出口41は、複数の通路部材42,42’によって構成されている。一方の通路部材42’は玩具本体10に一体となるように固定されているが、他方の通路部材42が玩具本体10に着脱可能になっている。
すなわち、ボール50の出口41の一部は、玩具本体10から離脱可能な通路部材42によって構成されている。一方の通路部材42は、半円筒状の合成樹脂成型物からなり、玩具本体10の一部を形成する外装部材43がねじ止めされている。
他方の通路部材42’は、玩具本体10の一部を構成するボール通路19の下方を、通路部材42に合わせて切欠された半円筒状のものからなっている。図8に示すように、この切欠における縁部44’には、通路部材42の側縁が嵌る段部45’と、通路部材42の後端縁が嵌る段部45a’とを形成されている。
【0033】
一方の通路部材42は、側縁を切欠の段部45’に合わせて押し込み、後端縁が段部45a’に嵌り込むことで、出口41を形成している。固定は、外装部材43の後端から延びる断面L字状のラッチ46が、一方の通路部材42が他方の通路部材42’に嵌り込んだときに、玩具本体10にある溝47に嵌ることによってなされている。
【0034】
幼児が、ボール50に出口41に深く手を突っ込み、抜けなくなっても、自分で又は大人の助力によって、手を手前に引くと、ラッチ46が溝47から外れ、手と一緒に通路部材42と外装部材43とを玩具本体10から抜き出することができるので、通路部材42と外装部材43とを手から離脱させることができ、従ってきわめて安全に手を出口41から抜くことができる。
【0035】
以上説明した実施の形態において、通路部材21,21’は、サイズに応じて、より多くの数からなっていててもよく、連結も通路部材21,21’の端縁である突出及び凹み22a,22a’,23a,23a’以外の手段を採用することができる。
【0036】
また、通路部材21,21’はスリーブ31を介在して玩具本体10に装着されているが、玩具本体10のサイズや形状などに応じて、直接玩具本体に装着するようにして、ス
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は以上の通りであって、ボールを投入して遊ぶボール投入玩具のボール投入口又は出口を、玩具本体に対して分離できる複数の部材によって形成すると共に、当該部材を分離可能に結合してボール投入口又は出口としたので、幼児が投入口又は出口に手を差込んで抜けなくなっても、その投入口又は出口を玩具本体から取り外してから当該投入口又は出口を分離して手を開放するようにしたので、きわめて安全かつ容易に手を引出すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明ボール投入玩具の実施形態の一例を示す斜視図。
【図2】図1の2−2線に沿うボール投入口部分の縦断面図。
【図3】図2の3−3線に沿う平断面図。
【図4】図3の4−4線に沿う拡大正面図。
【図5】図2の5−5線に沿う断面図。
【図6】手を玩具本体から抜き出した状態を示す説明図。
【図7】図1の矢印6方向から見たボールの出口部分の斜視図。
【図8】図7の8−8線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0039】
10 玩具本体
11 頭部
12 胴部
13 車輪
14 入り口
15 ボール通路
16 偏向板
17 皿
18 皿孔
19 ボール通路
20 座板
21,21’ 通路部材
22,22’ 内壁
22a,22a’ 凹み部
23,23’ 外壁
23a,23a’ 凹み部
24,24’ 上壁
26 隙間
27,27’ ラッチ
27a 突起
28 スリット
31 スリーブ
32 内壁
33 外壁
34 上壁
35 突起
35a 溝
36 凸出部
37 開口
38 化粧環
39 スイッチ
41 出口
42,42’ 通路部材
43 外装部材
44’ 縁部
45’ 段
45a’ 段
46 ラッチ
47 溝
50 ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールの投入口と出口を玩具本体に備えたボール投入玩具において、幼児の手が挿入可能な内径をもつボール投入口と出口の少なくとも一方を、玩具本体に着脱できるように形成したことを特徴とするボール投入玩具。
【請求項2】
前記投入口と出口の少なくとも一方が、互いに連結された複数の通路部材によって構成されている請求項1に記載のボール投入玩具。
【請求項3】
前記通路部材の各々が、ボール通路を形成するとき、互いに嵌り合う凸出部と凹み部とによって連結されている請求項2に記載のボール投入玩具。
【請求項4】
前記通路部材が、ボール通路を形成してスリーブに嵌め込まれ、スリーブを介して玩具本体に取り付けられている請求項2又は3に記載のボール投入玩具。
【請求項5】
前記通路部材の各々が、スリーブに結合するためのラッチを備えている請求項4に記載のボール投入玩具。
【請求項6】
スリーブがバヨネット継ぎ手によって玩具本体に位置決めされている請求項4又は5に記載のボール投入玩具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−73465(P2008−73465A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259453(P2006−259453)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(501048295)株式会社くもん出版 (2)
【出願人】(506324286)株式会社フォーチュン (2)
【Fターム(参考)】