説明

ボール盤

【課題】 安価な構成要素を組み合わせてドリルと被加工材料との間に相対的な偏心運動を与えながら滑らかな加工面が得られる孔あけ加工を行うことができるボール盤を提供すること。
【解決手段】 駆動モータ9の回転力を主軸23に伝達し、この主軸23に取り付けられたドリル7を回転させることにより、加工対象となる被加工材料に孔あけ加工を行うためのボール盤において、被加工材料に対して相対的に加工位置に移動可能なベース部を有し、このベース部に対して回転可能に支持された回転支持体22が設けられ、この回転支持体22に対して主軸23が回転可能に支持され、駆動モータ9,10を駆動させることで、回転支持体22および主軸23が回転するようになっており、回転支持体22の軸心βと主軸23の軸心αとが、所定間隔平行に離間されて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルを用いて孔あけ加工を行うためのボール盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドリルによる板ガラス等の硬脆材料の孔あけ加工法において、ドリルを回転させながらドリルと加工対象となる板ガラスとの間に相対的な偏心運動を与えることで、ドリルの加工能率を向上させる孔あけ加工法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ドリルを用いて孔あけ加工を行うための工作機械としてボール盤があり、このボール盤には、ドリルの種類に応じて回転数を細かく調節するために、モータの回転軸をドリルが連結される主軸に伝達する伝達装置として2つのプーリを用いて、このプーリ同士にベルトを巻き掛け、各プーリのピッチ径を変化させることで、ドリルの回転数を変化させるボール盤などがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−108523号公報(第2頁、第2図)
【特許文献2】特開2000−94207号公報(第2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、ドリルを回転させながらドリルと加工対象となる板ガラス(被加工材料)との間に相対的な偏心運動を与えるために、NC制御が行える工作機械を用いて、板ガラスをXYステージ上に固定し、このXYステージをX軸とY軸の2軸NC制御を行いながらドリルのZ軸NC制御を行う3軸制御を行う必要がある。このような3軸NC制御が行える工作機械は高価なものであり、かつ加工位置がX軸とY軸の数値で設定されるため、ミクロ的観点から見た場合、加工面にミクロン単位の凹凸ができてしまい、滑らかな加工面を得ることが困難であった。
【0006】
また、ボール盤は安価な工作機械であるが、特許文献2にあるようなボール盤では、ドリルの回転数を変化させることはできるが、特許文献1に示すようなドリルと加工対象となる被加工材料との間に相対的な偏心運動を与えながら孔あけ加工を行うことができなかった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、安価な構成要素を組み合わせてドリルと被加工材料との間に相対的な偏心運動を与えながら滑らかな加工面が得られる孔あけ加工を行うことができるボール盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のボール盤は、
駆動モータの回転力を主軸に伝達し、該主軸に取り付けられたドリルを回転させることにより、加工対象となる被加工材料に孔あけ加工を行うためのボール盤において、
前記被加工材料に対して相対的に加工位置に移動可能なベース部を有し、該ベース部に対して回転可能に支持された回転支持体が設けられ、該回転支持体に対して前記主軸が回転可能に支持され、前記駆動モータを駆動させることで、前記回転支持体および前記主軸が回転するようになっており、前記回転支持体の軸心と前記主軸の軸心とが、所定間隔平行に離間されて配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ドリルが取り付けられた主軸が回転しつつ回転支持体が回転する際に、主軸の軸心と回転支持体の軸心とが所定間隔平行に離間されている分だけ、ドリルが回転支持体の軸心を中心として偏心運動するので、安価な構成要素でドリルと被加工材料との間に相対的な偏心運動を与えることができ、しかも孔あけされた加工面も滑らかに仕上げることができる。
【0009】
本発明の請求項2に記載のボール盤は、請求項1に記載のボール盤であって、
前記主軸の軸心および前記ドリルの軸心には、流体が供給される軸心貫通孔が形成され、前記主軸の軸心貫通孔に供給された流体が、前記ドリルの軸心貫通孔を通過してドリルの先端部から流出されることを特徴としている。
この特徴によれば、ドリルが被加工材料に対して孔あけ加工を行うときに、流体を主軸の軸心貫通孔に供給することで、流体がドリルの軸心貫通孔を通過してドリルの先端部からドリルと被加工材料との間に流れ出すようになり、孔あけ加工の際に発生する切粉を洗い流すことができるとともに、ドリルと被加工材料との間の摩擦抵抗や摩擦熱も低減されるためスムーズに孔あけ加工を行うことができる。
【0010】
本発明の請求項3に記載のボール盤は、請求項1または2に記載のボール盤であって、
前記駆動モータは、前記主軸を回転させる主軸駆動モータと、前記回転支持体を回転させる偏心駆動モータとの少なくとも2つの駆動モータから構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、主軸と回転支持体を各々の駆動モータで回転させることができるので、簡単な構成でドリルやドリルに偏心運動を与える回転支持体の回転数や回転方向を任意に設定できるようになる。
【0011】
本発明の請求項4に記載のボール盤は、請求項3に記載のボール盤であって、
前記主軸駆動モータの回転力が、ベルトを介して前記主軸に伝達されるようになっており、該ベルトが、前記ベース部に取り付けられた付勢手段によって、張力が与えられる方向に付勢されていることを特徴としている。
この特徴によれば、回転支持体の回転によって主軸の位置が変化しても、ベルトの張力を付勢手段によって常に一定に保つことができ、ドリルの回転数が安定するようになる。
【0012】
本発明の請求項5に記載のボール盤は、請求項1ないし4のいずれかに記載のボール盤であって、
前記回転支持体の軸心と前記主軸の軸心との所定間隔を変化させることができることを特徴としている。
この特徴によれば、回転支持体の軸心と主軸の軸心との所定間隔を調節することで、ドリルの偏心量を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るボール盤を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、実施例1におけるボール盤の全体像を示す側面図であり、図2は、実施例1におけるボール盤を示す正面図であり、図3は、実施例1におけるボール盤を示す縦断正面図であり、図4は、実施例1におけるボール盤を示す平面図であり、図5は、実施例1におけるボール盤の構造を模式的に示した模式平面図である。以下、図1の紙面左側、図2および図3の紙面手前側、図4の紙面下方側をボール盤の正面側(前方側)として説明する。
【0015】
図1の符号1は、ドリルを用いて加工対象となるガラス板等の被加工材料(硬脆材料)に孔あけ加工を行うためのボール盤である。このボール盤1は、床面に設置されたベッド2から立設させれるコラム3の上部にアーム4が取り付けられており、このアーム4の前方側に主軸頭5が配置されている。尚、コラム3には被加工材料を載置するためのテーブル6が上下昇降可能に取り付けられている。
【0016】
図1に示すように、主軸頭5の下部には、ドリル7が取り付けられるドリルチャック8が配置されており、主軸頭5の上部には、主軸駆動モータ9や偏心駆動モータ10、プーリ11〜14やベルト15,16等の駆動機構部17が配置されている(図2参照)。また、この駆動機構部17に配置されるプーリ11〜14やベルト15,16等は、ベルトカバー18によって覆われている。更に、主軸頭5の前方側には、孔あけ加工の際に使用者がドリル7を手動で上下動させるためのハンドル19が設けられている。
【0017】
次に、主軸頭5および駆動機構部17について、図2、図3および図4を参照して説明する。主軸頭5は、アーム4に対して固定されたスリーブ20を有し、このスリーブ20内に、本実施例におけるベース部としてのスライダ21が上下昇降可能に配置されている。スライダ21の内部には、回転支持体22が配置されており、この回転支持体22はスライダ21(ベース板27)に対して水平方向に回転可能に支持されている。
【0018】
回転支持体22の内部には、前述したドリル7が取り付けられるドリルチャック8が設けられた主軸23が配置されており、この主軸23は回転支持体22に対して水平方向に回転可能に支持されている。尚、主軸23の回転の軸心と回転支持体22の回転の軸心は、互いに平行を成し、垂直方向に延びている。
【0019】
図3に示すように、スライダ21の側面には、ラックギア24が形成されており、スリーブ20内には、スライダ21のラックギア24に係合される位置にピニオンギア25が配置され、このピニオンギア25はハンドル19に固着されている。使用者が図2に示すハンドル19を回転させるとピニオンギア25が回転し、スライダ21がスリーブ20に案内されながら上下動するようになっている。
【0020】
図2に示すように、スリーブ20の上部には、上方に突出されたガイド棒26が固定されており、スライダ21の上端部には、本実施例におけるベース部としてのベース板27が固着されている。スリーブ20から突出されたガイド棒26は、ベース板27を貫通して上方に突出されている。尚、ガイド棒26の周囲にはコイルバネ28が配置されており、このコイルバネ28がスリーブ20とスライダ21の間に配置されるため、コイルバネ28がスライダ21の重量を支えられるようになっている。
【0021】
更に尚、使用者がハンドル19を回すとスライダ21の上下動とともに、ベース板27が上下昇降されるようになっており、ベース板27がガイド棒26によって上下方向に案内されるようになっている。また、スライダ21の上下動とともに、ベース板27が上下昇降されることで、主軸23の下端に取り付けられたドリル7が、被加工材料が載置されたテーブル6に対して近づいたり、離れたりすることができる。そのため使用者がハンドル19を手動操作するだけで、被加工材料に対して孔あけ加工を行うことができる加工位置と非加工位置とにドリル7を上下動させることができるようになっている。
【0022】
図2に示すように、ベース板27の左右には、主軸駆動モータ9と偏心駆動モータ10が取り付けられている。図4に示すように、ベース板27の左側には、垂直軸29が固定されており、この垂直軸29には、水平方向に揺動される揺動体30が軸支されている。主軸駆動モータ9は、揺動体30の下部に取り付けられており、この主軸駆動モータ9の上部には、主軸駆動プーリ13が取り付けられ、揺動体30よりも上方側に突設されている。
【0023】
図3に示すように、偏心駆動モータ10は、ベース板27の右側に固着されている。偏心駆動モータ10の上部に取り付けられた偏心駆動プーリ14は、ベース板27に形成された孔部31からベース板27の上方側に突設されている。
【0024】
また図3に示すように、ベース板27の中央部には、回転支持体22に固定され、回転支持体22とともに回転される偏心従動プーリ12と、主軸23に固定され、主軸23とともに回転される主軸従動プーリ11とが配置されている。偏心従動プーリ12と主軸従動プーリ11は、上下に積層されて配置されており、互いに独立して水平方向に回転できるようになっている。
【0025】
更に、主軸駆動プーリ13と主軸従動プーリ11との間にはベルト15が巻き回され、偏心駆動プーリ14と偏心従動プーリ12との間にもベルト16が巻き回されている。また、図4に示すように、ベース板27左側には、内部にコイルバネ32が配置された本実施例における付勢手段としての付勢装置33が取り付けられており、この付勢装置33が揺動体30を常に外方側に向かって押圧するようになっている。尚、垂直軸29に軸支された揺動体30は、付勢装置33の付勢力と、主軸駆動プーリ13に取り付けられたベルト15の張力によって所定位置に配置される。
【0026】
更に尚、主軸駆動モータ9を駆動させると、主軸駆動プーリ13が回転され、ベルト15を介して主軸従動プーリ11が回転し、主軸23およびドリル7が回転される。また、偏心駆動モータ10を駆動させると、偏心駆動プーリ14が回転され、ベルト16を介して偏心従動プーリ12が回転し、回転支持体22が回転される。
【0027】
図3に示すように、主軸23と回転支持体22とを各々の駆動モータ9,10で回転させる構成になっているので、別途、変速機等を用いる必要がなく、簡単な構成で主軸23と回転支持体22の回転数や回転方向を任意に設定できるようになる。尚、本実施例では、主軸23の回転方向と回転支持体22の回転方向とが互いに逆向きになっている。
【0028】
更に図3に示すように、回転支持体22はベアリング34を介してスライダ21に回転可能に支持されるとともに、主軸23もベアリング35を介して回転支持体22に回転可能に支持されている。これらの複数のベアリング34,35は、主軸23および回転支持体22の上部と下部に、所定距離離間されて配置されているため、使用者が孔あけ加工を行う際に、ドリル7の回転の軸心が揺動するような動き(ぐらつき)を防げるようになっている。
【0029】
図3に示す主軸23の内部には、主軸23の軸心を貫通する軸心貫通孔36が形成されている。また、主軸23の上端部には、主軸23の軸心貫通孔36に水を供給するためのホース38が取り付けられている。更に、主軸23の下端部に取り付けられたドリル7は、ドリル7の軸心を貫通する軸心貫通孔37が形成されたコアドリルとなっている。ボール盤1の使用時には、水をホース38から主軸23の軸心貫通孔36に供給し、この主軸23の軸心貫通孔36に供給された水がドリル7の軸心貫通孔37を通過してドリル7の先端部から流出されるようになっている。
【0030】
このように、ドリル7の先端部から流出された水は、ドリル7と被加工材料との間に流出されるようになり、孔あけ加工の際に発生する切粉を洗い流すことができる。更に、ドリル7と被加工材料との間の摩擦抵抗や摩擦熱も低減されるため、スムーズに孔あけ加工を行うことができる。尚、本実施例のボール盤1は、2つの駆動モータ9,10を用いてベルト15,16を介して主軸23および回転支持体22を回転させているため、主軸23の軸心に軸心貫通孔36を形成することが容易になっている。
【0031】
次に、図5を参照してドリル7に与えられる偏心運動について詳述する。図5には、本実施例の駆動機構部17が模式的に表されている。この図5に示すように、主軸駆動モータ9に取り付けられた主軸駆動プーリ13の回転力は、ベルト15を介して主軸23(主軸従動プーリ11)に伝達されるようになっている。また、偏心駆動モータ10に取り付けられた偏心駆動プーリ14の回転力は、ベルト16を介して回転支持体22(偏心従動プーリ12)に伝達されるようになっている。尚、主軸駆動モータ9は、付勢装置33によって主軸23から離れる方向に付勢されている。
【0032】
また図5に示すように、互いに平行を成す主軸23の回転の軸心αと回転支持体22の回転の軸心βとは、所定間隔離間されて配置されている。このように主軸23の軸心αと回転支持体22の軸心βとが離間されて配置されることで、主軸23が回転するとともに、回転支持体22が回転したときに、主軸23に取り付けられたドリル7自体が回転しつつ、このドリル7が回転支持体22の軸心βを中心として偏心運動するようになっている。
【0033】
本実施例のボール盤1によれば、主軸23の軸心αと回転支持体22の軸心βとが所定間隔平行に離間されている分だけ、ドリル7と被加工材料との間に、相対的な所定偏心量の偏心運動を与えながら孔あけ加工を行うことができ、被加工材料に所定直径の孔Sが形成される。
【0034】
このように、ドリル7に偏心運動を与えながら孔あけ加工を行うことで、孔Sの内周面が滑らかに研削できるようになる。更に、NC制御(数値制御)によるドリル7の偏心運動である場合には、数値の誤差分だけ、孔Sの内周面に微細な凹凸が形成される場合がある。しかしながら本発明のボール盤1によれば、回転支持体22の支持による物理的な円運動で偏心運動を与えるため、孔Sの内周面を滑らかに仕上げることができる。
【0035】
更に図5に示すように、回転支持体22が回転されると、主軸23の位置が水平方向に変化するので、主軸23と主軸駆動プーリ13との間の距離が変化する。しかし、主軸駆動プーリ13が取り付けられた主軸駆動モータ9が付勢装置33によって、主軸23から離れる方向(ベルト15に張力が与えられる方向)に付勢されていることにより、回転支持体22の回転によって主軸23の位置が変化しても、ベルト15の張力を常に一定に保つことができる。尚、ベルト15の張力が弛むとドリル7の回転数が落ちるが、ベルト15の張力を常に一定に保つことでドリル7の回転数が安定するようになっている。
【実施例2】
【0036】
次に、実施例2に係るボール盤につき、図6を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。図6は、実施例2におけるボール盤の構造を模式的に示した模式平面図である。
【0037】
図6に示すように、実施例2における主軸39は、回転支持体40に対して水平方向に回転可能に支持されており、回転支持体40は、本実施例におけるベース部としてのベース板(図示略)に対して水平方向に回転可能に支持されている。
【0038】
図6に示すように、主軸駆動モータ41に取り付けられた主軸駆動プーリ42の回転力は、ベルト43を介して主軸39(主軸従動プーリ)に伝達されるようになっている。また、偏心駆動モータ44に取り付けられた偏心駆動プーリ45の回転力は、ベルト46を介して回転支持体40(偏心従動プーリ)に伝達されるようになっている。
【0039】
また、主軸駆動プーリ42と主軸39に巻き回されたベルト43の近傍には、ベース板(図示略)に取り付けられた本実施例における付勢手段としての付勢装置47に設けられた付勢プーリ48が配置されている。付勢プーリ48はベルト43の一部に当接されており、このベルト43が付勢プーリ48の付勢力によって張力を与えられる方向に付勢されている。
【0040】
図6に示す主軸39と回転支持体40の間には、偏心量調節体49が配置されている。回転支持体40はベース板(図示略)に対して水平方向に回転可能に支持されるとともに、主軸39は偏心量調節体49に対して水平方向に回転可能に支持されている。偏心量調節体49は回転支持体40に対して偏心量調節体49の軸心γを中心として回動調節できるようになっており、この偏心量調節体49の軸心γは、回転支持体40の軸心βおよび主軸の軸心αから所定間隔離間されている。使用者はボール盤の使用前において、偏心量調節体49を軸心γを中心として回動調節することで、回転支持体40の軸心βと主軸の軸心αとの間の所定間隔を変化させることができる。
【0041】
図6に示すように、ドリル50によって形成される孔Sの直径は、ドリル50の偏心量、いわゆる主軸39の軸心αと回転支持体40の軸心βとの間の距離を調節することで設定できる。例えば、主軸39の軸心αと回転支持体40の軸心βとの間の距離を大きくすると、被加工材料に形成される孔Sの直径は大きく形成され、主軸39の軸心αと回転支持体40の軸心βとの間の距離を小さくすると、被加工材料に形成される孔Sの直径は小さく形成される。尚、主軸39の軸心αの位置と回転支持体40の軸心βの位置とを同一にすると、ドリル50は偏心運動をしなくなり、従来のボール盤のドリルと同様に、ドリル50自体の回転のみで孔あけ加工が行えるようになっている。
【0042】
更に図6に示すように、主軸39の軸心αの位置と回転支持体40の軸心βの位置とが所定間隔離間するように偏心量調節体49が調節されている場合には、回転支持体40が回転されると、主軸39の位置が水平方向に変化するので、主軸39と主軸駆動プーリ42との間の距離が変化する。しかし、付勢装置47に取り付けられた付勢プーリ48が、主軸39と主軸駆動プーリ42に巻き回されたベルト43の一部に当接されているので、この付勢プーリ48によって、ベルト43が張力を与えられる方向に付勢されており、回転支持体40の回転によって主軸39の位置が変化しても、ベルト43の張力を常に一定に保つことができる。
【実施例3】
【0043】
次に、実施例3に係るボール盤につき、図7を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。図7は、実施例3におけるボール盤の構造を模式的に示した模式平面図である。
【0044】
図7に示すように、実施例3における主軸51は、第1回転支持体52に対して水平方向に回転可能に支持され、第1回転支持体52は、第2回転支持体53に対して水平方向に回転可能に支持されており、更に、第2回転支持体53は、本実施例におけるベース部としてのベース板(図示略)に対して水平方向に回転可能に支持されている。
【0045】
図7に示すように、主軸駆動モータ54に取り付けられた主軸駆動プーリ55の回転力は、ベルト56を介して主軸51(主軸従動プーリ)に伝達されるようになっている。また、第1偏心駆動モータ57に取り付けられた偏心駆動プーリ58の回転力は、ベルト59を介して第1回転支持体52(偏心従動プーリ)に伝達されるようになっている。
【0046】
更に、第2回転支持体53の周囲にはギアが形成されており、この第2回転支持体53には、第2偏心駆動モータ60に取り付けられた偏心駆動ギア61が係合されている。第2偏心駆動モータ60を駆動させると、偏心駆動ギア61が回転され、この回転力が第2回転支持体53に伝達され、第2回転支持体53が回転するようになっている。
【0047】
尚、主軸駆動モータ54は、本実施例における付勢手段としての付勢装置62によって、主軸51から離れる方向に付勢されているとともに、第1偏心駆動モータ57は、本実施例における付勢手段としての付勢装置63によって、第1回転支持体52から離れる方向に付勢されている。
【0048】
また図7に示すように、主軸51の回転の軸心αと第1回転支持体52の回転の軸心βとは、所定間隔離間されて配置されるとともに、第1回転支持体52の回転の軸心βと第2回転支持体53の回転の軸心δとは、所定間隔離間されて配置されている。
【0049】
このように主軸51の軸心αと第1回転支持体52の軸心βとが離間されて配置されることで、主軸51が回転するとともに第1回転支持体52が回転したときに、主軸51に取り付けられたドリル64自体が回転しつつ、このドリル64が第1回転支持体52の軸心βを中心として偏心運動するようになっている。
【0050】
更に、第1回転支持体52の回転の軸心βと第2回転支持体53の回転の軸心δとが離間されて配置されることで、第1回転支持体52自体が回転しつつ、この第1回転支持体52が第2回転支持体53の軸心δを中心として偏心運動するようになっている。
【0051】
本実施例によれば、ドリル64が第1回転支持体52の回転により偏心運動を与えられ、かつ第2回転支持体53により偏心運動を与えられるので、被加工材料に所定直径の孔Sが形成される。
【0052】
尚、第2回転支持体53は、第2偏心駆動モータ60によって回転されるので、第2偏心駆動モータ60を停止させて孔あけ加工を行った場合には、第1回転支持体52のみで偏心運動がドリル64に与えられるため、ドリル64の偏心量は小さくなり、被加工材料に直径の小さな孔S’が形成される。
【0053】
また、使用者が孔あけ加工の途中でドリル64の偏心量を変更させることができる。例えば、使用者が孔あけ加工の開始時には、第2偏心駆動モータ60を停止させておき、被加工材料に直径の小さな孔S’を形成した後、第2偏心駆動モータ60を駆動させることで、直径の小さな孔S’の内周面を研削しながら所定直径の孔Sを形成させることもできる。このようにすれば、孔Sの内周面を滑らかに仕上げることができる。
【0054】
更に、第1偏心駆動モータ57を停止させ、第1回転支持体52が第2回転支持体53に対して回動しないように固定しておき、第2偏心駆動モータ60を駆動させるようにしておけば、第2回転支持体53による回転のみでドリル64に偏心運動を与えることもできる。
【0055】
尚、第1偏心駆動モータ57と第2偏心駆動モータ60を停止させておけば、ドリル64は偏心運動をしなくなり、従来のボール盤のドリルと同様に、ドリル64自体の回転のみで孔あけ加工が行えるようになる。
【0056】
尚、第1回転支持体52を所定角度で停止させた場合には、主軸51の軸心αの位置と第2回転支持体53の軸心δの位置とが同一位置になる。このように主軸51の軸心αの位置と第2回転支持体53の軸心δの位置とを同一にして、使用者が孔あけ加工の開始時には、第1偏心駆動モータ57を停止させておき、第2偏心駆動モータ60を駆動させておくと、ドリル64は偏心運動をしない状態で回転され、被加工材料に直径の小さな孔S’’が形成される。小さな孔S’’を形成した後、第1偏心駆動モータ57を駆動させることで、直径の小さな孔S’’の内周面を研削しながら所定直径の孔Sを形成させることができる。このようにしても、孔Sの内周面を滑らかに仕上げることができる。
【0057】
本実施例では、孔あけ加工を行う際に、主軸51および第1回転支持体52の位置が水平方向に変化するようになっているが、主軸駆動プーリ55が取り付けられた主軸駆動モータ54が付勢装置62によって、主軸51から離れる方向(ベルト56に張力が与えられる方向)に付勢されるとともに、偏心駆動プーリ58が取り付けられた第1偏心駆動モータ57が付勢装置63によって、第1回転支持体52から離れる方向(ベルト59に張力が与えられる方向)に付勢されていることにより、ベルト56,59の張力を常に一定に保つことができる。
【実施例4】
【0058】
次に、実施例4に係るボール盤につき、図8を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。図8は、実施例4におけるボール盤の構造を模式的に示した模式平面図である。
【0059】
図8に示すように、実施例4における主軸65は、回転支持体66に対して水平方向に回転可能に支持されており、回転支持体66は、本実施例におけるベース部としてのベース板(図示略)に対して水平方向に回転可能に支持されている。
【0060】
図8に示すように、主軸駆動プーリ67および偏心駆動プーリ68は、1つの駆動モータ69によって回転されるようになっている。また、主軸駆動プーリ67の回転力は、ベルト70を介して主軸65(主軸従動プーリ)に伝達され、偏心駆動プーリ68の回転力は、ベルト71を介して回転支持体66(偏心従動プーリ)に伝達されるようになっている。尚、本実施例では、主軸65の回転方向と回転支持体66の回転方向とが互いに同じ向きになっている。
【0061】
また、主軸駆動プーリ67と主軸65に巻き回されたベルト70の近傍には、ベース板(図示略)に取り付けられた本実施例における付勢手段としての付勢装置72に設けられた付勢プーリ73が配置されている。付勢プーリ73はベルト70の一部に当接されており、このベルト70が付勢プーリ73の付勢力によって張力を与えられる方向に付勢されている。
【0062】
また図8に示すように、主軸65の回転の軸心αと回転支持体66の回転の軸心βとは、所定間隔離間されて配置されている。このように主軸65の軸心αと回転支持体66の軸心βとが離間されて配置されることで、主軸65が回転するとともに、回転支持体66が回転したときに、主軸65に取り付けられたドリル74自体が回転しつつ、このドリル74が回転支持体66の軸心βを中心として偏心運動するようになっており、被加工材料に所定直径の孔Sが形成される。
【0063】
更に図8に示すように、回転支持体66が回転されると、主軸65の位置が水平方向に変化するので、主軸65と主軸駆動プーリ67との間の距離が変化する。しかし、付勢装置72に取り付けられた付勢プーリ73が、主軸65と主軸駆動プーリ67に巻き回されたベルト70の一部に当接されているので、この付勢プーリ73によって、ベルト70が張力を与えられる方向に付勢されており、回転支持体66の回転によって主軸65の位置が変化しても、ベルト70の張力を常に一定に保つことができる。
【0064】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0065】
例えば、前記実施例では、手動で孔あけ加工を行うためのボール盤において、回転支持体の軸心と主軸の軸心とを、所定間隔平行に離間させて配置させることで、ドリルに偏心運動を与えられる構造となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、自動制御のボール盤であっても、本実施例のような構造でドリルに偏心運動を与えることもでき、これら自動制御のボール盤も本発明に含まれる。
【0066】
また、前記実施例では、使用者がハンドル19を回すことで、主軸23の下端に取り付けられたドリル7が上下動し、このドリル7が被加工材料に対して相対的に加工位置に移動される構成となっていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、使用者がハンドルを回すことで、被加工材料が載置されたテーブル6が上下動される構成とすることで、ドリル7が被加工材料に対して相対的に加工位置に移動されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1におけるボール盤の全体像を示す側面図である。
【図2】実施例1におけるボール盤を示す正面図である。
【図3】実施例1におけるボール盤を示す縦断正面図である。
【図4】実施例1におけるボール盤を示す平面図である。
【図5】実施例1におけるボール盤の構造を模式的に示した模式平面図である。
【図6】実施例2におけるボール盤の構造を模式的に示した模式平面図である。
【図7】実施例3におけるボール盤の構造を模式的に示した模式平面図である。
【図8】実施例4におけるボール盤の構造を模式的に示した模式平面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 ボール盤
7 ドリル
7a 軸心貫通孔
9 主軸駆動モータ
10 偏心駆動モータ
11 主軸従動プーリ
12 偏心従動プーリ
13 主軸駆動プーリ
14 偏心駆動プーリ
15,16 ベルト
17 駆動機構部
20 スリーブ
21 スライダ(ベース部)
22 回転支持体
23 主軸
23a 軸心貫通孔
27 ベース板(ベース部)
32 コイルバネ(付勢手段)
33 付勢装置(付勢手段)
36,37 軸心貫通孔
39 主軸
40 回転支持体
41 主軸駆動モータ
42 主軸駆動プーリ
43 ベルト
44 偏心駆動モータ
45 偏心駆動プーリ
46 ベルト
47 付勢装置(付勢手段)
48 付勢プーリ(付勢手段)
49 偏心量調節体
50 ドリル
51 主軸
52 第1回転支持体
53 第2回転支持体
54 主軸駆動モータ
55 主軸駆動プーリ
56 ベルト
57 第1偏心駆動モータ
58 偏心駆動プーリ
59 ベルト
60 第2偏心駆動モータ
61 偏心駆動ギア
62,63 付勢装置(付勢手段)
64 ドリル
65 主軸
66 回転支持体
67 主軸駆動プーリ
68 偏心駆動プーリ
69 駆動モータ
70,71 ベルト
72 付勢装置(付勢手段)
73 付勢プーリ(付勢手段)
74 ドリル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータの回転力を主軸に伝達し、該主軸に取り付けられたドリルを回転させることにより、加工対象となる被加工材料に孔あけ加工を行うためのボール盤において、
前記被加工材料に対して相対的に加工位置に移動可能なベース部を有し、該ベース部に対して回転可能に支持された回転支持体が設けられ、該回転支持体に対して前記主軸が回転可能に支持され、前記駆動モータを駆動させることで、前記回転支持体および前記主軸が回転するようになっており、前記回転支持体の軸心と前記主軸の軸心とが、所定間隔平行に離間されて配置されていることを特徴とするボール盤。
【請求項2】
前記主軸の軸心および前記ドリルの軸心には、流体が供給される軸心貫通孔が形成され、前記主軸の軸心貫通孔に供給された流体が、前記ドリルの軸心貫通孔を通過してドリルの先端部から流出される請求項1に記載のボール盤。
【請求項3】
前記駆動モータは、前記主軸を回転させる主軸駆動モータと、前記回転支持体を回転させる偏心駆動モータとの少なくとも2つの駆動モータから構成されている請求項1または2に記載のボール盤。
【請求項4】
前記主軸駆動モータの回転力が、ベルトを介して前記主軸に伝達されるようになっており、該ベルトが、前記ベース部に取り付けられた付勢手段によって、張力が与えられる方向に付勢されている請求項3に記載のボール盤。
【請求項5】
前記回転支持体の軸心と前記主軸の軸心との所定間隔を変化させることができる請求項1ないし4のいずれかに記載のボール盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−75939(P2007−75939A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265888(P2005−265888)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(390001535)旭栄研磨加工株式会社 (9)
【出願人】(502068964)有限会社アオノ技研 (2)
【出願人】(505346285)
【Fターム(参考)】