説明

ポインティング装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、CRTなどを使用した大型ディスプレイ装置の画面上に表示するカーソルを、遠隔で制御するポインティング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図8は、従来のポインティング装置の機能ブロック構成を示す図であり、1はディスプレイ装置、2はディスプレイ制御装置、9は遠隔操作装置である。遠隔操作装置9は、角速度検出機能3、ハイパスフィルタ機能4、制御機能5、コード変換機能6、温度検出機能7を有する。
【0003】次に動作について説明する。角速度検出機能3は角速度を検出する素子の働きにより、遠隔操作装置9の動きの角速度の大きさに応じた出力を発生する。この出力から、ハイパスフィルタ機能4によりDC成分を除去し、制御機能5に伝達する。制御機能5において、ハイパスフィルタ機能4の出力と温度検出機能7の出力とを合成し、コード変換機能6に伝達する。コード変換機能6は、パルスコードの形でディスプレイ制御装置2にディスプレイ装置1上のカーソル制御コードを出力し、ディスプレイ制御装置2ではこのパルスコードに応じてディスプレイ装置1上のカーソルを移動させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図8に示す従来のポインティング装置は、角速度検出機能3の素子の温度に対する依存性が大きく、ハイパスフィルタ機能4によってDC成分を除去していたため、低い周波数の成分の検出が困難であった。このため遠隔操作装置9を操作したとき、低速での操作では、角速度検出機能3の出力信号の周波数が低くなり検出できないため、ディスプレイ装置1上のカーソルが、遠隔操作装置9の操作と対応して移動しないという不便さがあった。さらに、遠隔操作装置9の操作として、ディスプレイ装置1上において一定方向のみの移動を繰り返し行った場合、カーソルを停止したときにハイパスフィルタ機能4による電荷蓄積によって基準電圧がずれ、カーソルが反対方向に移動するという欠点があった。また温度特性を向上させるために付加されている温度検出機能7についても、角速度検出機能3と同じ装置に設置しなければ効率が悪く、角速度検出機能3と温度依存性の傾斜熱的慣性を一致させることが困難であり、かつこれらの処置を行うについて部品点数の顕著な増加を来すという欠点があった。
【0005】この発明は上記の問題点を解消するためになされたもので、遠隔操作装置の低速操作時におけるカーソル移動をスムーズに行えるようにするとともに、角速度検出機能の温度ドリフトによるディスプレイ装置上のカーソルの不用意な移動を防止しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明に係るポインティング装置は、操作の動きの角速度を検出し、その大きさに応じた電気信号を位置信号として伝送する遠隔操作装置と、この伝送された位置信号によりカーソルを移動させて表示するディスプレイ装置とからなるポインティング装置において、上記遠隔操作装置は、角速度検出機能の出力電圧が定められたスレッショルド値を超える範囲ではスレッショルド値を超えた電圧を位置信号に変換してカーソルを移動させ、超えない範囲では、電圧の動態が一方向に一定期間継続する場合に、その方向への最小の移動を指示する一定出力の位置信号に変換してカーソルを移動させるようにしたものである。
【0007】また、上記構成において、遠隔制御装置は、角速度検出機能の出力電圧を一定期間ごとに監視し、その出力電圧値が定められたスレッショルド値範囲内にある場合は一定期間の電圧の平均値をもって基準電圧値の変更を行い、角速度検出機能の温度による動作点の移動を修正するようにしている。
【0008】また、上記構成において、遠隔制御装置は、角速度検出機能の出力電圧を一定期間ごとに監視し、その出力電圧値が定められたスレッショルド値範囲内にある場合は一定期間の電圧の平均値をもって基準電圧値の変更を行い、上記出力電圧値が一度でも上記スレッショルド値を超えた期間は、前回の監視期間における基準電圧値をそのまま保持するようにしている。
【0009】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.図1はこの発明の一実施の形態に係るポインティング装置の機能ブロック構成図である。図において、9は遠隔操作装置であり、これは角速度検出機能3、制御機能5、コード変換機能6を有している。さらに、制御機能5は、スレッショルド値判定機能8及び自動基準値更新機能10を有する。1はディスプレイ装置、2はディスプレイ制御装置である。
【0010】次に動作について説明する。図1に示す装置では、遠隔操作装置9に角速度を発生するような運動を与え、角速度検出機能3より得られた信号電圧を、スレッショルド値判定機能8、自動基準値更新機能10にて取り込み、基準電圧を決定し、スレッショルド範囲内と範囲外の信号を分別し、移動量としてコード変換機能6に伝達し、パルスコードに変換してディスプレイ制御装置2に伝達する。伝達されたパルスコードをディスプレイ制御装置2では、ディスプレイ装置1にコードに対応した移動量として与えカーソルを移動させる。ここで角速度検出機能3は、遠隔操作装置9からの信号電圧の一定期間における変化率も監視しており、スレッショルド値以下の電圧について、変化率がある値より大きいものは遠隔操作装置9の移動による信号電圧であり、ある値より小さいものは温度ドリフト電圧であると判断し、信号電圧か温度ドリフト電圧かを区別するようなされている。
【0011】スレッショルド値判定機能8は2つの動作を行う。図2及び図3はスレッショルド値判定機能8の第1の動作の詳細を説明するもので、遠隔操作装置9に角速度を発生するような運動を与えたときに得られる角速度検出機能3の出力信号をアナログ的に図示したものである。制御機能5では、プラス側/マイナス側のスレッショルド値の設定がなされており、このスレッショルド値以下の信号を無視するようになっている。図3では、このような処理を行った結果、区間A、C、Eでは出力は図2のスレッショルド値範囲内にあるため、出力は取り消される。また、区間B、Dは、スレッショルド値を超過しているため有効と判断され、出力が得られる。そこで、このように有効となった部分のみの出力でカーソルを移動させる。
【0012】図4及び図5はスレショルド値判定機能8の第2の動作の詳細を説明するものである。図4の動作曲線は、角速度検出機能3の出力を図示したもので、区間F、Gの信号のように、一定期間T1内で出力が増加した後減少が発生している場合は、区間J,区間Kに示すように出力が現れないようにしている。一方、信号の増加の変位が区間Hのように増加の方向のみで、このような信号が一定監視期間のT1以上続いた場合は、区間Hに対応する区間Kより図5の監視期間T1遅れた区間Lに、最小の移動を指示する一定の出力が得られ、スレッショルド値範囲内でもカーソルを制御できるように動作する。なお、この機能は極性を逆にした場合についても同様である。
【0013】スレッショルド値判定機能8は以上の2機能を備えることにより、角速度検出機能3からの信号がスレッショルド値を超えるときは、遠隔操作装置9の動きに応じたカーソルの大幅な動きを迅速に行い、角速度検出機能3からの信号がスレッショルド以下で変位が増加の方向のみであるときにはカーソルに一定の微妙な動きをさせることができる。即ち、この発明においては、従来のハイパスフィル夕機能の除去によって角速度検出機能が出力する微小な信号を含むすべての信号を制御機能が取り込むことができ、角速度検出機能の出力を柔軟に加工できる。
【0014】次に、図1の制御機能5における自動基準値更新機能10について説明する。図6は自動基準値更新処理の概念を示す図である。図6の動作曲線は角速度検出機能3の温度ドリフトと温度ドリフト以外の通常の出力を示す。図6の区間0、Pについては角速度検出機能3からの通常の出力であり、この通常の出力がある図7R>7の区間U、Vでは基準電圧を更新しない。一方、図6のM、N、Q、Rについては温度ドリフトによる出力であり、時間の経過にともなって出力が増加傾向にあるため、温度ドリフトによる角速度検出機能3の出力として、プラス/マイナス側のスレッショルド値範囲内で、かつ変化率が一定値以下の角速度検出機能3の出力を一定期間サンプルし、その期間内の信号の電圧積分値をサンプル数で平均化し、図6に対応する図7の区間S、T、W、Xに示すように、新しい基準値として更新する。制御機能5は、従来の温度検出機能を除去する代わりに、角速度検出機能の出力を解析し基準電圧を算出し、これを新しい基準電圧として更新するから、温度ドリフトを抑え、微弱な出力の検出を可能とし、制御機能5からコード変換機能6に渡される出力が温度変化に対して安定する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施の形態に係るポインテ ング装置を示すブロック構成図である。
【図2】 この発明の一実施の形態に係るポインティング装置の角速度検出機能の出力波形の概念図である。
【図3】 この発明の一実施の形態に係るポインティング装置の角速度検出機能出力のスレッショルド値判定結果を示す概念図である。
【図4】 この発明の一実施の形態に係るポインティング装置の角速度検出機能のスレッショルド値以下の出力波形を示す概念図である。
【図5】 この発明の一実施の形態に係るポインティング装置の角速度検出機能のスレッショルド値以下の出力波形に対する出力を示す概念図である。
【図6】 この発明の一実施の形態に係るポインティング装置の角速度検出機能のドリフト電圧を示す概念図である。
【図7】 この発明の一実施の形態に係るポインティング装置の角速度検出機能のドリフト電圧に対する基準電圧出力を示す概念図である。
【図8】 従来のポインティング装置を示すブロック構成図である。
【符号の説明】
1 ディスプレイ装置、2 ディスプレイ制御装置、3 角速度検出機能、5 制御機能、6 コード変換機能、8 スレッショルド値判定機能、9 遠隔操作装置、10 自動基準値更新機能。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 操作の動きの角速度を検出し、その大きさに応じた電気信号を位置信号として伝送する遠隔操作装置と、この伝送された位置信号によりカーソルを移動させて表示するディスプレイ装置とからなるポインティング装置において、上記遠隔操作装置は、角速度検出機能の出力電圧が、定められたスレッショルド値を超える範囲ではスレッショルド値を超えた電圧を位置信号に変換してカーソルを移動させ、超えない範囲では、電圧の動態が一方向に一定期間継続する場合に、その方向へ最小の移動を指示する一定出力の位置信号に変換してカーソルを移動させるようにしたことを特徴とするポインティング装置。
【請求項2】 遠隔制御装置は、角速度検出機能の出力電圧を一定期間ごとに監視し、その出力電圧値が定められたスレッショルド値範囲内にある場合は一定期間の電圧の平均値をもって基準電圧値の変更を行い、角速度検出機能の温度による動作点の移動を修正するようにしたことを特徴とする請求項1記載のポインティング装置。
【請求項3】 遠隔制御装置は、出力電圧値が一度でも上記スレッショルド値を超えた期間は、前回の監視期間における基準電圧値をそのまま保持するようにしたことを特徴とする請求項2記載のポインティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【特許番号】特許第3129948号(P3129948)
【登録日】平成12年11月17日(2000.11.17)
【発行日】平成13年1月31日(2001.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−264159
【出願日】平成7年10月12日(1995.10.12)
【公開番号】特開平9−106326
【公開日】平成9年4月22日(1997.4.22)
【審査請求日】平成8年10月28日(1996.10.28)
【出願人】(395013603)三菱電機マイコン機器ソフトウエア株式会社 (8)
【参考文献】
【文献】特開 平6−294652(JP,A)
【文献】特開 平7−64711(JP,A)