ポジションセンサ
【課題】検出精度の悪化を抑制しながらも可動部の移動阻害を抑制できるポジションセンサを提供することにある。
【解決手段】ポジションセンサは、固定部1と、当該固定部1に所定の移動方向に移動自在に取り付けられた可動部2と、固定部1に設けられ可動部2と固定部1の緩衝用の流体9が内部に充填される流体収容部14とを備えるシリンダ装置の流体収容部14内に配置されており、固定部1に固定され上記移動方向に中心軸を沿わせた形の検出コイル50を有する検出部5と、可動部2に固定され可動部2の移動により検出部5に対して上記移動方向に相対変位する被検出部7とを備え、検出部5は、被検出部7の内側を上記移動方向に移動自在に挿通する形に配置され、検出部5には、流体収容部14内に充填される流体9用の流路部8が形成されてなる。
【解決手段】ポジションセンサは、固定部1と、当該固定部1に所定の移動方向に移動自在に取り付けられた可動部2と、固定部1に設けられ可動部2と固定部1の緩衝用の流体9が内部に充填される流体収容部14とを備えるシリンダ装置の流体収容部14内に配置されており、固定部1に固定され上記移動方向に中心軸を沿わせた形の検出コイル50を有する検出部5と、可動部2に固定され可動部2の移動により検出部5に対して上記移動方向に相対変位する被検出部7とを備え、検出部5は、被検出部7の内側を上記移動方向に移動自在に挿通する形に配置され、検出部5には、流体収容部14内に充填される流体9用の流路部8が形成されてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出コイルのインピーダンス変化を利用した非接触型のポジションセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、中空の検出コイルを有する検出部と、検出コイル内における被検出部(例えば、金属材料や磁性材料からなるコア)の物理的変位によって生じる検出コイルのインピーダンス変化に基づいて、検出部と被検出部との位置を検出する、所謂非接触型のポジションセンサが提案されている。
【0003】
非接触型のポジションセンサは、例えば、被検出部と検出部との間に機械的な連結を要する接触型のものに比べれば、耐久性に優れ、振動に強く、オイル(フルード)などの液体に対するシール構造が容易に実現できるという利点があるため、内燃機関や発電設備をはじめとする多くの分野で計測制御に利用されており、また、近年の車両の高機能化に伴って、車輪とボディ(車体)とを連結するサスペンション(懸架装置)に利用されるショックアブソーバ(衝撃吸収装置)などのシリンダ装置にも利用されるようになってきている。
【0004】
上記のようなシリンダ装置は、例えば、車両のボディに固定される固定部と、車輪に固定されるとともに当該固定部に所定の移動方向に移動自在に取り付けられた可動部と、固定部に設けられ可動部と固定部の緩衝用の流体が内部に充填される流体収容部と、ポジションセンサにより検出した固定部に対する可動部の変位に基づいて流体収容部内の流体の圧力を制御する圧力制御装置とを備えている。
【0005】
ここで、ポジションセンサをシリンダ装置の外部に配置した場合には、シリンダ装置を取り付けるために比較的広いスペースが必要になることから、ポジションセンサをシリンダ装置の内部、特に流体収容部内に配置することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−139572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ポジションセンサは、例えば、検出部を検出コイルの中心軸を可動部の移動方向に沿わせた形で固定部に固定するとともに、被検出部を可動部の移動により検出コイル内で移動方向に変位するように可動部に固定した状態で、流体収容部内に配置される。
【0007】
しかしながら、上記のようにポジションセンサの検出部および被検出部を流体収容部内に配置した場合には、検出部および被検出部によって流体の流れ(移動)が制限されるので、検出部および被検出部が流体収容部内に存在しない場合に比べれば、流体収容部内を流体が移動し難くなり、流体収容部内において流体の圧力が偏ってしまい、可動部の移動が阻害されてしまうという問題があり、特に検出部と被検出部との隙間(クリアランス)が小さい場合に顕著であった。
【0008】
このような問題は、検出部と被検出部との隙間を広くして流体を流れ易くすれば、ある程度解決できていたが、検出部と被検出部との隙間を広くすればするほど、可動部の移動時に、被検出部が検出部に対して可動部の移動方向に交差する方向に相対変位(偏芯)し易くなってしまう。このような偏芯による検出コイルのインピーダンス変化は、検出精度の悪化の原因となる。つまり、流体収容部内にポジションセンサを配置したことに起因する可動部の移動阻害を抑制するにあたって、検出部と被検出部との隙間を広くするという手段を採用した場合には、検出精度が悪化するという別の問題が生じていた。
【0009】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたもので、検出精度の悪化を抑制しながらも可動部の移動阻害を抑制できるポジションセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明では、固定部と、当該固定部に所定の移動方向に移動自在に取り付けられた可動部と、固定部および可動部のいずれかに設けられ可動部と固定部の緩衝用の流体が内部に充填される流体収容部とを備える装置の流体収容部内に配置され、固定部に対する可動部の変位を検出するポジションセンサであって、固定部および可動部のいずれか一方に固定され上記移動方向に中心軸を沿わせた形の検出コイルを少なくとも有する検出部と、固定部および可動部のいずれか他方に固定され可動部の移動により検出部に対して上記移動方向に相対変位する被検出部とを備え、検出部と被検出部のいずれか一方は、少なくとも上記移動方向における一端が流体収容室内に連通する形に開口された筒状に形成され、検出部と被検出部のいずれか他方は、検出部と被検出部のいずれか一方に対して上記移動方向における一端から当該一方の内側に入り込む形に配置され、検出部および被検出部の少なくとも一方には、流体収容部内に充填される流体用の流路部が形成されてなることを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明によれば、検出部と被検出部の少なくとも一方に流体が通る流路部を設けているので、流体収容部内の流体が移動し易くなるから、ポジションセンサを流体収容部内に配置したことに起因する可動部の移動阻害を抑制できる。また、流体を移動し易くするために、検出部と被検出部との間の隙間(クリアランス)を大きくしなくて済むので、被検出部が検出部に対して可動部の移動方向に交差する方向に変位(すなわち偏芯)することを抑制できるから、偏芯に起因する検出コイルのインピーダンス変化により検出精度が悪化することを抑制できる。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、被検出部は、上記移動方向における一端が開口した筒状に形成され、検出部は、上記移動方向における一端から被検出部の内側に入り込む形に配置され、検出コイルの内側には磁性材料からなるコアが配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明によれば、検出コイルの巻数が同じであれば、空芯の検出コイルよりも磁束を大きくできるので、検出コイルのインピーダンスの変化量を大きくでき、検出精度の向上が図れる。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1または2の発明において、流路部は、被検出部および検出部の少なくとも一方の、上記移動方向に交差する方向における他方との対向面に、上記移動方向に沿う形に形成された溝部からなることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明によれば、流体が流路部内を流れ易くなるから、可動部の移動阻害をさらに抑制できる。
【0016】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、溝部は、上記移動方向において上記対向面の全面に亘る形に形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明によれば、流路部が対向面の一部に設けられている場合に比べれば、流路部の容積が増えて流体に対する抵抗(コンダクタンス)を小さくできるから、流体がさらに流れ易くなり、可動部の移動阻害をさらに抑制できる。
【0018】
請求項5の発明では、請求項1〜4のうちいずれか1項の発明において、流路部は、検出部に対する被検出部の位置によらずに、検出部の上記移動方向における両端側の空間部を連通する形に形成されてなることを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明によれば、検出部と被検出部との間に隙間を設けなくても、流体が流路部に流入または流出できるので、検出部と被検出部とを可動部の移動方向に直交する方向においてより近接して配置できるようになるから、検出部に対する被検出部の相対変位による検出コイルのインピーダンス変化を大きくできて、検出精度の向上が図れる。
【0020】
請求項6の発明では、請求項5の発明において、流路部は、コアに設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項6の発明によれば、例えば、コアが挿通される挿通孔を有し検出コイルが巻回される円筒状のコイルボビンや、検出コイルを覆うように形成される絶縁部などに流路部を設ける場合に比べれば、比較的断面積が大きい流路部を、検出部を大型化することなく設けることができるから、流体を流れ易くして可動部の移動阻害をさらに抑制できる上に、検出部の小型化が図れる。
【0022】
請求項7の発明では、請求項5または6の発明において、検出部と被検出部とは、上記移動方向に直交する方向において当接する形に形成されてなることを特徴とする。
【0023】
請求項7の発明によれば、可動部の移動によって被検出部が検出部に対して相対変位する際に、被検出部が検出部に対して可動部の移動方向に交差する方向に相対変位(すなわち偏芯)してしまうことを防止できるから、偏芯に起因する検出コイルのインピーダンス変化により検出精度が悪化することを防止できる。
【0024】
請求項8の発明では、請求項1〜7のうちいずれか1項の発明において、検出コイルに所定の周波数及び振幅の電流を出力する駆動回路部と、駆動回路部が出力した電流および検出コイルのインピーダンスにより決まる電圧信号を検出部と被検出部との位置情報を示す出力信号に変換する信号処理回路とを有する回路ブロックと、回路ブロックが上記流体に浸漬されないように収納するケースとを備えていることを特徴とする。
【0025】
請求項8の発明によれば、検出部と被検出部との位置情報を示す出力信号を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、流体収容部内の流体が移動し易くなるから、ポジションセンサを流体収容部内に配置したことに起因する可動部の移動阻害を抑制できるという効果を奏し、その上、検出部と被検出部との間の隙間(クリアランス)を大きくしなくて済むから、偏芯に起因する検出コイルのインピーダンス変化により検出精度が悪化することを抑制できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施形態1)
本実施形態のポジションセンサは、例えば、図1(a)に示すような、車両(自動車や自動二輪車など)のサスペンションに利用されるショックアブソーバ(図示例では複筒式のショックアブソーバ)などのシリンダ装置に設けられている。なお、以下の説明では説明の簡略化のために、図1(a)における左方向をシリンダ装置の前方向、図1(a)における右方向をシリンダ装置の後方向と規定するが、使用形態を上記の方向に限定する趣旨ではない。
【0028】
上記シリンダ装置は、図1(a)に示すように、例えば、固定部1と、当該固定部1に所定の移動方向(本実施形態では前後方向であり、図1(a)においては左右方向)に移動自在に取り付けられた可動部2とを備えている。固定部1には、可動部2と固定部1の緩衝用の流体9が内部に充填される流体収容部14が設けられている。
【0029】
本実施形態のポジションセンサは、上記移動方向に中心軸を沿わせた形の検出コイル50を有する検出部5と、可動部2の移動により検出部5に対して上記移動方向に相対変位する被検出部7と、回路ブロック3とを備え、検出部5および回路ブロック3が固定部1に、被検出部7が可動部2にそれぞれ固定された形で流体収容部14内に配置されている。
【0030】
固定部1は、車両のボディ(図示せず)などに取り付けられる固定部本体10を備えている。固定部本体10の前端側には、前面側が開口した円形状の空間部からなる第1収容凹部10aが形成され、固定部本体10の後端側には、固定部本体10を上記ボディに取り付けるために利用される円形状の取付孔10bが形成されている。
【0031】
この固定部本体10には、流体収容部14を構成するための外筒部11および内筒部12が取り付けられている。外筒部11は、中心軸方向における両端側が開口した円筒状に形成され、後端側を第1収容凹部10a内に位置させるとともに、中心軸を前後方向に沿わせた形で固定部本体10に固定されている。また、内筒部12は、外筒部11の内径より小さい外径を有するとともに中心軸方向における両端側が開口した円筒状に形成され、外筒部11の内側に位置するとともに、外筒部11と中心軸を一致させた形で固定部本体10に固定されている。
【0032】
ここで、内筒部12は、その後端面を第1収容凹部10aの底面に当接させた形で固定部本体10に固定されているが、外筒部11はその後端面を第1収容凹部10aの内周面に突設された当接片10cに当接させた形で固定部本体10に固定されている。また、外筒部11および内筒部12は、外筒部11および内筒部12それぞれと固定部本体10との間に隙間が生じないように固定されている。さらに、外筒部11および内筒部12それぞれは、それぞれを固定部本体10に固定した状態において、外筒部11の後端面が内筒部12の後端面よりも前方に位置するとともに、外筒部11の前端面が内筒部12の前端面よりも前方に位置するように、それぞれの前後方向(すなわち中心軸に沿った方向)の長さ寸法が設定されている。
【0033】
固定部本体10に固定された外筒部11の前端側には、円盤状のエンドキャップ13が、前端側の開口を閉塞するとともに外筒部11との間に隙間が生じないようにして取り付けられている。このエンドキャップ13の中心には、被検出部7が貫装される円形状の挿通孔13aが前後方向に貫設されている。この挿通孔13aは、被検出部7を挿通孔13aに貫装した状態では、被検出部7とエンドキャップ13との間に隙間が生じないような大きさに形成されている。
【0034】
したがって、上記シリンダ装置では、固定部本体10と外筒部11とエンドキャップ13とによって、流体収容部14が構成されており、この流体収容部14には、可動部2と固定部1の緩衝用の流体9が充填される。このような流体9としては、所望の粘性抵抗を有する液体の他、気体などが利用される。
【0035】
第1収容凹部10aの底面において内筒部12で囲まれる部位には、図2に示すように、ポジションセンサの回路ブロック3が収納される第2収容凹部10dが形成されている。第2収容凹部10dは、内筒部12の内径より小さい内径を有する円形状の第1空間部10eと、第1空間部10eの内径より小さい内径を有する円形状の第2空間部10fとで構成され、第1空間部10eと第2空間部10fとはそれぞれの中心軸が一致するとともに第1空間部10eが第2空間部10fの前方に位置する形に形成されている。
【0036】
ここで、固定部本体10において第1空間部10eに対応する壁部には、流体9の圧力を調整するための圧力制御装置(図示せず)の流体収容室(図示せず)と流体収容部14とを繋ぐための流体出入口(図示せず)が形成されている。また、第2空間部10fの底面には、前後方向に中心軸を沿わせる形で、第2空間部10fの内径より小さい内径を有する円形状の通路部10gが形成されている。さらに、固定部本体10には、回路ブロック3を上記圧力制御装置に接続する接続線(ハーネス)4用の接続孔10hが、通路部10gの内面と固定部本体10の外面とを、前後方向に直交する方向において連通する形に形成されている。したがって、固定部本体10は、接続孔10hおよび通路部10gを通じて接続線4を第2収容凹部10d内に挿入できるようになっている。
【0037】
固定部本体10に取り付けられた内筒部12の内側には、ポジションセンサの検出部5が配置されている。検出部5は、検出コイル50と、検出コイル50が巻回されるコイルボビン51と、検出コイル50を保護する絶縁保護部52とで構成されている。
【0038】
コイルボビン51は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料からなる樹脂成形品であって、検出コイル50が外周面に巻回される円筒状の巻胴部51aと、巻胴部51aの前端部に設けられた鍔部51bとを一体に備えている。鍔部51bは、巻胴部51aより外径が大きい円筒状に形成され、その中心軸は、巻胴部51aの中心軸と一致している。
【0039】
このようなコイルボビン51は、基台6により、コイルボビン51の中心軸を内筒部12の中心軸に一致させた形(すなわち、検出コイル50の中心軸を可動部2の移動方向に沿わせた形)で、固定部本体10に固定されている。
【0040】
基台6は、内筒部12の内径と同一またはやや小さい外径を有する円盤部6aと、第2収容凹部10dの第2空間部10fの内径と同一またはやや小さい外径を有し円盤部6aの後面側に突設された円筒部6bとを一体に備えている。
【0041】
円盤部6aの前面中央部には、検出部5を固定するための円形状の固定孔6cが凹設されている。本実施形態では、固定孔6cは、コイルボビン51の後端部が嵌入される形に形成されている。また、円盤部6aには、コイルボビン51に巻回された検出コイル50の両端を、回路ブロック3に電気的に接続するための2つのコイル端子60が貫装される貫装孔6dが前後方向に貫設されている。ここで、コイル端子60と貫装孔6dとの隙間は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料からなる封止部61により封止されている。
【0042】
円筒部6bの外周面の後端側には、Oリングなどからなる円環状のシール部62用の溝部6eが外周面を一周する形に形成されている。また、基台6の円盤部6aにおける円筒部6bより外側の部位には、後述する第1収容室14aと固定部本体10の流体出入口(図示せず)との間の流路の一部を構成する連通孔(図示せず)が、円盤部6aを前後方向に貫通する形に形成されている。
【0043】
検出コイル50は、コイルボビン51の巻胴部51aに、コイルボビン51の中心軸に沿った方向、すなわち前後方向を巻き軸方向として巻回されており、その両端部それぞれは、基台6に貫装されたコイル端子60の前端部に絡げられる。
【0044】
回路ブロック3は、コイル端子60それぞれの後端部に半田付け等により接続された状態で、基台6の円筒部6b内に配置される。したがって、検出コイル50と回路基板3とはコイル端子60を通じて電気的に接続されている。
【0045】
このような回路ブロック3は、プリント基板に電子部品を実装して構成されたものであって、検出コイル50に所定の周波数及び振幅の電流を出力する駆動回路部(図示せず)と、上記駆動回路部が出力した電流および検出コイル50のインピーダンスにより決まる電圧信号を検出部5と被検出部7との位置情報を示す出力信号に変換する信号処理回路(図示せず)とを有している。したがって、本実施形態のポジションセンサによれば、検出部5と被検出部7との位置情報を示す出力信号を得ることができるようになっている。
【0046】
絶縁保護部52は、絶縁性を有し耐圧性が比較的高い材料(例えば、ガラス材など)や絶縁性樹脂などからなり、コイルボビン51の巻胴部51aに巻回された検出コイル50の外周面を覆う円筒状の検出コイル被覆部52aと、検出コイル被覆部52aの後端部に設けられ検出コイル50の端子それぞれが絡げられたコイル端子60および封止部61とともに基台6の円盤部6aの前面中央部を覆う円盤状の基台被覆部52bとを一体に備えている。ここで、検出コイル被覆部52aの外径は、コイルボビン51の鍔部51bの外径と等しい値に設定されており、検出コイル被覆部52aは、前後方向に直交する面内においてコイルボビン51の鍔部51bが占める領域の内側に位置した形で検出コイル50を覆うように構成されている。
【0047】
上述したような検出部5が固定される基台6は、円筒部6bが第2収容凹部10dの第2空間部10f内に配置されるとともに、円盤部6aが内筒部12の内側に配置された形で、固定部本体10に固定される。このとき、ロウ付けなどによって、円盤部6aと内筒部12の内周面との間は、隙間が生じないように封止されている。また、円筒部6bと第2空間部10fの内周面との間には、シール部62が存在することによって封止されている。一方、回路ブロック3には、接続孔10gより第2収容凹部10d内に挿入された接続線4が半田付け等により電気的かつ機械的に接続される。これに対応して、基台6の後端側には、接続線4用のブッシュ63が設けられている。ブッシュ63は、通路部10gの内径と同一または小さい外径を有するとともに接続線4の外径より大きい内径を有する円筒状の筒部63aと、筒部63aの前端側に設けられた円環状の抜け止め部63bとを一体に備えており、筒部63aを通路部10g内に位置させるとともに、抜け止め部63bを第2空間部10fの底面における通路部10gの開口縁部に当接させた形で、固定部本体10に取り付けられる。筒部63aの内周面には、面方向が前方を向いた段部63cが形成されており、接続線4に嵌着された円環状のストッパ部64が段部63cの前面側に当接することによって、接続線4の張力止めが図られている。
【0048】
このように回路ブロック3は、基台6の円筒部6b内に配置されることで、流体収容部14内の流体9に浸漬されないように保護されている。つまり、本実施形態では、基台6が、回路ブロック3が流体9に浸漬されないように収納するポジションセンサのケースを構成している。
【0049】
そして、上記圧力制御装置は、回路ブロック3により得られる上記出力信号を元にして、流体9の圧力を制御することによって、所望の衝撃吸収性能が得られるように構成されたものであり、このような圧力制御装置は従来周知のものであるから詳細な説明を省略する。
【0050】
可動部2は、図1(a)に示すように、例えば、車両の車輪(図示せず)などに取り付けられる可動部本体20を備えている。可動部本体20の前端側には、上記車輪に取り付けるために利用される取付孔20aが形成され、後端側には、被検出部7の前端部が挿入される円形状の固定孔20bが、その中心軸を前後方向に沿わせる形に形成されている。
【0051】
また、可動部本体20の後端側には、可動部2が固定部1側(すなわち後方)に移動してエンドキャップ13に衝突した際の衝撃を和らげる緩衝部21が設けられている。緩衝部21は、弾性材料(ゴムなど)などにより円盤状に形成され、可動部本体20の固定孔20bと同じ内径を有して固定孔20bに連通する挿通孔21aが前後方向に貫設されている。
【0052】
被検出部7は、可動部2を固定部1に移動自在に取り付けるためのピストンロッドであって、導電性材料により円柱状に形成されている。ここで、導電性材料としては、導電性が低いものよりも導電性が高いもののほうが検出コイル50のインピーダンス変化を大きくできるため好ましく、本実施形態では、金属の中でも比較的導電性が高いアルミニウムにより被検出部7を形成している。
【0053】
このような被検出部7の後端部には、ピストン22が設けられている。ピストン22は、円盤状のものであって、その外径は、ピストン22の外周面が内筒部12の内周面に当接した状態で、前後方向に移動できるような大きさに設定されている。このピストン22の中央部には、被検出部7が貫装される貫通孔22aが前後方向に貫設されている。ピストン22の中心軸と貫通孔22aの中心軸とは一致するようにしてあり、また、被検出部7を貫通孔22aに貫装した状態では、被検出部7とピストン22との間に隙間が生じないようにしている。また、ピストン22には、前後方向に貫通し流体9の流路となる貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0054】
ところで、被検出部7の後端側には、コイルボビン51の鍔部51bの外径より大きい内径を有する挿入孔7aが、その中心軸を被検出部7の中心軸に一致させる形に形成されている。また、挿入孔7aの底面には、後述するコア53の前端部が嵌入される嵌入孔7bが、コア53の中心軸が挿入孔7aの中心軸と一致する形に形成されている。さらに、被検出部7の外周面の後端縁部には、被検出部7からピストン22が外れてしまうことを防止する円環状のストッパ部23が被嵌されている。
【0055】
前述のコア53は、磁性材料(例えば、鉄やフェライトなど)により丸棒状に形成されており、前端部を被検出部7の嵌入孔7bに嵌入させた状態で、被検出部7に固定される。また、コア53の外径は、コイルボビン51の内径よりも小さく設定されている。さらに、コア53は、被検出部7に取り付けた状態では、コア53の後端面と被検出部7の後端面とが同一平面上に位置するように、コア53の長さが設定されている。
【0056】
可動部2を固定部1に取り付けるにあたっては、固定部1の外筒部11にエンドキャップ13を取り付ける前に、コア53、ピストン22、およびストッパ部23を取り付けた被検出部7を、外筒部11の前端側の開口より外筒部11内に挿入して、ピストン22を内筒部12内に、ピストン22の外周面が内筒部12の内周面に当接する形に配置し、その後に、エンドキャップ13を外筒部11に取り付けてから、被検出部7の前端部に、可動部本体20および緩衝部21を取り付ければよい。
【0057】
ここで、被検出部7は、図1(a)および図3に示すように、上記移動方向における一端(後端)が流体収容部14内に連通する形に開口されるとともに他端(前端)が閉塞された筒状に形成されているため、ピストン22を内筒部12内に配置した際には、検出部5は、被検出部7に対して上記移動方向における一端から被検出部7の内側(すなわち挿入孔7a)に入り込む形に配置されることになる。また、このようにして検出部5が被検出部7の内側に入り込む際には、同時に、コア53の後端部はコイルボビン51の内側に入り込むことになる。つまり、コイルボビン51の内側の空間部がコア53用の挿通孔51cを構成している。
【0058】
上記のように可動部2を固定部1に取り付けた後には、流体収容部14内に流体9が充填される。ここで流体収容部14は、内筒部12と固定部本体10とピストン22とで囲まれる空間部からなる第1収容室14aと、第1収容室14aを除く流体収容部14からなる第2収容室14bとからなり、可動部2が固定部1に対して静止している状態では、第1収容室14aと第2収容室14bとでは、流体9の圧力が等しくなる。
【0059】
次に、ピストン装置の動作について説明する。例えば、図1(a)に示すように、可動部2が固定部1から離間した状態において、可動部2に衝撃が加えられて、可動部2が後方、すなわち固定部1に近接する方向に移動すると、第1収容室14aの容積が減少して第1収容室14a内の流体9の圧力が高くなるから、可動部2を前方、すなわち固定部1から離間する方向に移動させる力が可動部2に作用して、可動部2の後方への移動量が減じられる。第1収容室14a内の流体9の圧力は、ピストン22に設けられた貫通孔より流体9が第1収容室14aから第2収容室14bに移動することで徐々に減少して、第2収容室14bの流体9の圧力と等しくなり、可動部2に加えられた衝撃が固定部1に伝達されることが防止される。
【0060】
上述したように可動部2が後方に移動した際には、可動部2とともに被検出部7が後方に移動するので、検出部5の被検出部7内への挿入量が増し、検出コイル50のインピーダンスが変化するから、ポジションセンサにより固定部1に対する可動部2の位置を検出することができる。
【0061】
ここで、被検出部7は、図1(a)に示すように、上記移動方向における一端(後端)が流体収容部14(第1収容室14a)内に連通しており、検出部5は、被検出部7に対して上記移動方向における一端から被検出部7の内側(すなわち挿入孔7a)に入り込む形に配置されている。
【0062】
そのため、被検出部7が後方に移動して、検出部5の被検出部7内への挿入量が増した際には、被検出部7の挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部の容積が減少するので、上記空間部を占めていた流体9は、上記移動方向に直交する方向における検出部5と被検出部7との隙間(絶縁保護部52の外周面と被検出部7の内周面との隙間)より流体収容部14の第1収容室14aへと流出する。しかしながら、上記隙間は、検出部5に対する被検出部7の偏芯を抑制するために小さく設定されているために、流体9が移動し難く、これによって、上記空間部内の流体9の圧力が高くなって、検出部5が前方に移動し難くなり、その結果、可動部2の移動が阻害され、流体9により本来得られるはずの衝撃吸収性能が得られなくなるおそれがある。
【0063】
また、可動部2に加えられた衝撃を吸収した後には、上記圧力制御部により第1収容室14a内の流体9の圧力が高く設定され、これによって、可動部2は、固定部1に対する所定位置に復帰するまで、前方、すなわち固定部1から離間する方向に移動させられる。この場合、可動部2とともに被検出部7が前方に移動するので、検出部5の被検出部7内への挿入量が減り、検出コイル50のインピーダンスが変化するから、ポジションセンサにより固定部1に対する可動部2の位置を検出することができるようになっている。
【0064】
このように被検出部7が前方に移動する際には、検出部5の被検出部7内への挿入量が減って、被検出部7の挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部の容積が増えるので、第1収容室14aから上記空間部に流体9が流入しようとする。このときにおいても、流体9が移動し難く、これによって、上記空間部内の流体9の圧力が低くなって、検出部5が後方に移動し難くなるから、可動部2の移動が阻害されるおそれがある。
【0065】
そこで、本実施形態における検出部5では、絶縁保護部52の外周面に、図1(b)に示すように、可動部2の移動方向に沿う形に形成された溝部からなる流路部8を、外周面を周方向に11等分する形で形成して、上記空間部と第1収容室14aとの間で流体9を移動し易くしており、これによって、可動部2の移動を阻害してしまうことを抑制している。これら流路部8を構成する溝部は、可動部2の移動方向において検出コイル被覆部52aの外周面の全面に亘る形に形成している。なお、図1(b)では、図面の簡略化のため、検出部5および被検出部7のみを図示している。この点は図4(b)、図6(b)、図8(b)、図10、図11、図12(b)、および図14においても同様である。
【0066】
以上述べた本実施形態のポジションセンサによれば、検出部5に流体が通る流路部8を設けて、流体9が移動し易くしているから、ポジションセンサを流体収容部14内に配置したことに起因する可動部2の移動阻害を抑制できる。また、流体9を移動し易くするために、検出部5と被検出部7との間の隙間(クリアランス)を大きくしなくて済むので、被検出部7が検出部5に対して可動部2の移動方向に交差する方向に変位(すなわち偏芯)することを抑制できるから、偏芯に起因する検出コイル50のインピーダンス変化により検出精度が悪化することを抑制できる。また、回路ブロック3を備えているから、検出部5と被検出部7との位置情報を示す出力信号を得ることができる。
【0067】
また、流路部8は、上記移動方向に沿う形に形成された溝部からなるので、流体9が、流路部8内を可動部2の上記移動方向に沿った方向に流れるから、流路部8内を流体9が流れ易くなり、可動部2の移動阻害をさらに抑制できる。
【0068】
本実施形態において流路部8となる溝部は、絶縁保護部52の検出コイル被覆部52aの外周面の全面(すなわち、検出部5において上記移動方向に交差する方向における他方との対向面の全面)に亘る形に形成されているが、絶縁保護部52の検出コイル被覆部52aの外周面の少なくとも一部に形成するようにしてもよい。当然ながら、検出コイル被覆部52aの外周面の全面に亘る形に形成したほうが、当該外周面の一部に設けられている場合に比べれば、流路部8の容積が増えて流体9に対する抵抗(コンダクタンス)を小さくできるから、流体9がさらに流れ易くなり、可動部2の移動阻害をさらに抑制できる。
【0069】
また、検出部5は、被検出部7の内側を上記移動方向に移動自在に挿通する形に配置され、検出部5の検出コイル50の内側にはコア53が配置されているので、検出コイル50の巻数が同じであれば、空芯の検出コイル50よりも磁束を大きくできるから、検出コイル50のインピーダンスの変化量を大きくでき、検出精度の向上が図れる。
【0070】
なお、検出部5は、必ずしも、被検出部7の内側を上記移動方向に移動自在に挿通する形に配置されている必要はなく、逆に被検出部7が、検出部5の内側を上記移動方向に移動自在に挿通する形に配置されていてもよいが、検出部5を被検出部7の内側を上記移動方向に移動自在に挿通する形に配置するほうがコア53を検出コイル50の内側に配置できる点で好ましい。
【0071】
ところで、コア53を設ければ上述したように検出精度の向上が図れるが、コア53は必ずしも必要ではなく、例えば、図4および図5に示すように、コア53を設けないようにしてもよい。図4および図5に示すコイルボビン51は、コア53用の挿通孔51cを備えていない点で、図1および図3に示すコイルボビン51と異なっており、図4および図5に示す被検出部7は、コア53を取り付けるための嵌入孔7bを備えていない点で、図1および図3に示す被検出部7と異なっている。
【0072】
また、流路部8は、絶縁保護部52だけではなく、図6および図7に示すように、コイルボビン51に設けるようにしてもよい。なお、以下の説明では、必要に応じて流路部8を区別するために、絶縁保護部52に設けられた流路部8を符号8A、コイルボビン51に設けられた流路部8を符号8Bで表す。
【0073】
図6および図7に示す流路部8Bは、コイルボビン51を、その中心軸に沿って貫通する形に形成されている。また、図6に示す基台6には、コイルボビン51の後端部が嵌入される固定孔6cと、固定部本体10の流体出入口とを連通させる連通孔(図示せず)が形成されており、これによって、コイルボビン51を基台6に固定した際に、コイルボビン51の流路部8Bが、固定部本体10の流体出入口に通じるようにされている。
【0074】
なお、固定部1を上側、可動部2を下側にして使用する場合、基台6に上記連通孔を設けずに、流路部8B内の一部に、流体9よりも圧力が変化し易い圧力吸収用流体(例えば、ガスなどの気体)を充填するようにしてもよく、この場合でも同様の効果が得られる。
【0075】
図6および図7に示すようなポジションセンサによれば、流路部8Aだけではなく、流路部8Bによって、流体9が、被検出部7の挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部と、第1収容室14aとの間を移動できるようになるから、さらに、流体9の移動を妨げ難くなって、可動部2の移動を阻害してしまうことを抑制できるようになる。
【0076】
また、図6および図7に示すようにコイルボビン51に流路部8を設けるにあたっては、検出コイル50を覆うように形成される保護部52などに流路部8を設ける場合に比べれば、比較的断面積が大きい流路部8を、検出部5を大型化することなく設けることができるから、流体9を流れ易くして可動部2の移動阻害をさらに抑制できる上に、検出部5の小型化が図れる。
【0077】
なお、本実施形態では、固定部1に検出部5を、可動部2に被検出部7をそれぞれ固定するようにしているが、固定部1に被検出部7を、可動部2に検出部5をそれぞれ固定するようにしてもよい。要は、固定部1および可動部2のいずれか一方に上記移動方向に中心軸を沿わせた形の検出コイル50を有する検出部5が、固定部1および可動部2のいずれか他方に可動部2の移動により検出部5に対して上記移動方向に相対変位する被検出部7が設けられていればよい。また、本実施形態では、検出部5に流路部8を設けているが、被検出部7に流路部8を設けるようにしてもよい。要は、検出部5および被検出部7の少なくとも一方に、流路部8が形成されていればよい。ここで、絶縁保護部52に流路部8を設けないのであれば、絶縁保護部52を省略してもよい。
【0078】
例えば、流路部8となる溝部は、被検出部7および検出部5の少なくとも一方の、上記移動方向に交差する方向における他方との対向面に、上記移動方向に沿う形に形成されていればよい。また、図示例では、流路部8Aは、上記移動方向に直交する面内における断面形状が半円形状となっているが、これに限らず、矩形状や三角形状であってもよい。これらの点は、後述する実施形態2〜3においても同様である。
【0079】
(実施形態2)
本実施形態のポジションセンサは、主に検出部5の構成が実施形態1と異なっている。すなわち、本実施形態における検出部5は、図8および図9に示すように、コイルボビン51を備える代わりに、外周面の全面に絶縁性層53aが設けられたコア53を備え、このコア53の外周面(絶縁性層53aの外周面)に検出コイル50が巻回されている点で、実施形態1と異なっている。また、検出部5にコア53を設けたことにより、被検出部7には、コア53を固定するための嵌入孔7bが設けられておらず、基台6の固定孔6cはコイルボビン51ではなくコア53の固定のために利用されるように構成されている。なお、その他の構成は実施形態1と同様であるから説明を省略する。
【0080】
以上述べた本実施形態のポジションセンサによれば、上記実施形態1と同様の効果を奏する上に、検出部5においては、コイルボビン51を設けずにコア53に検出コイル50を巻回するようにしたので、図1に示すようにコア53が内側に配置可能な検出部5を用いる場合に比べれば、全体的に小型化が図れ、図4に示すようにコア53を備えていない検出部5を用いる場合に比べれば、検出コイル50のインピーダンス変化を大きくできて検出精度の向上が図れる。なお、コア53を形成する磁性材料としてフェライトなどの絶縁性を有する磁性材料を用いた場合には、絶縁性層53aを省略してもよい。
【0081】
ところで、本実施形態における流路部8は、図9に示すように、前端側が開放されており、後端側が被検出部7の可動範囲外まで延設された溝部からなる。つまり、本実施形態における流路部8は、検出部5に対する被検出部7の位置によらずに、検出部5の上記移動方向における両端側の空間部、すなわち、被検出部7の挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部と、第1収容室14aとを連通する形に形成されてなる。
【0082】
このような流路部8によれば、検出部5と被検出部7との間に隙間を設けなくて済むので、検出部5と被検出部7とを上記移動方向に直交する方向においてより近接して配置できるようになり、検出部5に対する被検出部7の相対変位による検出コイル50のインピーダンス変化が大きくなるから、検出精度を向上できる。また、可動部2の移動時に被検出部7が偏芯してしまうことを抑制し易くなるから、偏芯による検出コイル50のインピーダンス変化によって検出精度が悪化してしまうことを抑制できる。
【0083】
ところで、上述したように、挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部と、第1収容室14aとを連通する形に絶縁保護部52に形成された流路部8としては、図8(b)に示すような溝部からなるものに限らず、図10(a)に示すように、絶縁保護部52の検出コイル被覆部52aの外周面の一部を平坦化してなる空間部からなるものであってもよく、このような流路部8であっても同様の効果が得られる。また、流路部8は、図10(b)に示すように、絶縁保護部52を上記移動方向に貫通する形に設けられた貫通孔、すなわち上記移動方向における両端が開放された中空部からなるものであってもよい。図10(b)に示す流路部8は、上記移動方向に直交する面内において、正八角形の頂点に位置する形に絶縁保護部52に形成されている。
【0084】
図8(b)に示す流路部8は、絶縁保護部52の外周面を周方向に11等分する形に絶縁保護部52に形成されているが、流路部8は必ずしも等間隔で絶縁保護部52に設けられている必要ななく、例えば、図10(c)に示すように、流路部8を絶縁保護部52のランダムな位置に設けるようにしてもよい。この点は、図10(b)に示す流路部8についても同様であり、流路部8は、上記移動方向に直交する面内における正八角形の頂点位置ではなく、図10(d)に示すように、ランダムな位置に設けるようにしてもよい。
【0085】
また、流路部8が、図8(b)および図10(a)〜(d)に示すように、被検出部7の挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部と、第1収容室14aとを連通する形に絶縁保護部52に形成されていれば、図11に示すように、検出部5と被検出部7とを、上記移動方向に直交する方向において当接する形に形成することができ、この場合、検出部5と被検出部7とが上記移動方向に直交する方向において最も近接するので、検出部5に対する被検出部7の相対変位による検出コイル50のインピーダンス変化を最も大きくできるから、検出精度を向上できる。また、可動部2の移動時に被検出部7が偏芯してしまうことを防止できるから、偏芯による検出コイル50のインピーダンス変化によって検出精度が悪化してしまうことを防止できる。
【0086】
(実施形態3)
本実施形態のポジションセンサは、コア53および基台6の構成が実施形態2と異なっており、その他の構成は実施形態2と同様であるから説明を省略する。
【0087】
本実施形態におけるコア53には、図12および図13に示すように、円形状の流路部8が、流路部8の中心軸をコア53の中心軸に一致させた形で、前後方向に貫設されている。なお、以下の説明では、必要に応じて流路部8を区別するために、絶縁保護部52に設けられた流路部8を符号8A、コア53に設けられた流路部8を符号8Cで表す。
【0088】
また、本実施形態における基台6には、コア53の後端部が嵌入される固定孔6cと、固定部本体10の流体出入口とを連通させる連通孔6fが形成されており、これによって、コア53を基台6に固定した際に、コア53の流路部8Cが、固定部本体10の流体出入口に通じるようにされている。
【0089】
以上述べた本実施形態のポジションセンサによれば、流路部8Aだけではなく、流路部8Cによって、流体9が、被検出部7の挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部と、第1収容室14aとの間を移動できるようになるから、さらに、流体9の移動を妨げ難くなって、可動部2の移動を阻害してしまうことを抑制できるようになる。
【0090】
また、コア53に流路部8を設けるにあたっては、コア53が挿通される挿通孔51cを有し検出コイル50が巻回されるコイルボビン51や、検出コイル50を覆うように形成される絶縁保護部52などに流路部8を設ける場合に比べれば、比較的断面積が大きい流路部8を、検出部5を大型化することなく設けることができるから、流体9を流れ易くして可動部2の移動阻害をさらに抑制できる上に、検出部5の小型化が図れる。
【0091】
ところで、流路部8Aとしては、図12(b)に示すような溝部からなるものに限らず、図14(a)に示すように、絶縁保護部52の検出コイル被覆部52aの外周面の一部を平坦化してなる空間部からなるものであってもよく、このような流路部8Aであっても同様の効果が得られる。また、流路部8Aは、図14(b)に示すように、絶縁保護部52を上記移動方向に貫通する形に設けられた貫通孔、すなわち上記移動方向における両端が開放された中空部からなるものであってもよい。図14(b)に示す流路部8Aは、上記移動方向に直交する面内において、正八角形の頂点に位置する形で絶縁保護部52に形成されている。
【0092】
なお、図12(b)に示す流路部8Aは、絶縁保護部52の外周面を周方向に11等分する形で絶縁保護部52に形成されているが、流路部8Aは必ずしも等間隔で絶縁保護部52に設けられている必要ななく、例えば、図14(c)に示すように、流路部8Aを絶縁保護部52のランダムな位置に設けるようにしてもよい。この点は、図14(b)に示す流路部8Aについても同様であり、流路部8Aは、上記移動方向に直交する面内における正八角形の頂点位置ではなく、図14(d)に示すように、ランダムな位置に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施形態1のポジションセンサを備えたシリンダ装置を示し、(a)は断面図、(b)は同図(a)のA−A線矢視図である。
【図2】同上におけるポジションセンサを備えたシリンダ装置の部分断面図である。
【図3】同上におけるポジションセンサの一部を切り欠いた斜視図である。
【図4】同上の他例のポジションセンサを備えたシリンダ装置を示し、(a)は断面図、(b)は同図(a)のB−B線矢視図である。
【図5】同上におけるポジションセンサの一部を切り欠いた斜視図である。
【図6】同上のさらに他の例のポジションセンサを備えたシリンダ装置を示し、(a)は断面図、(b)は同図(a)のC−C線矢視図である。
【図7】同上におけるポジションセンサの一部を切り欠いた斜視図である。
【図8】実施形態2のポジションセンサを備えたシリンダ装置を示し、(a)は断面図、(b)は同図(a)のD−D線矢視図である。
【図9】同上におけるポジションセンサの一部を切り欠いた斜視図である。
【図10】同上におけるポジションセンサの他例を示す断面図である。
【図11】同上におけるポジションセンサの他例を示す断面図である。
【図12】実施形態3のポジションセンサを備えたシリンダ装置を示し、(a)は断面図、(b)は同図(a)のE−E線矢視図である。
【図13】同上におけるポジションセンサの一部を切り欠いた斜視図である。
【図14】同上におけるポジションセンサの他例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 固定部
2 可動部
3 回路ブロック
5 検出部
6 基台(ケース)
7 被検出部
8 流路部
9 流体
14 流体収容部
50 検出コイル
53 コア
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出コイルのインピーダンス変化を利用した非接触型のポジションセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、中空の検出コイルを有する検出部と、検出コイル内における被検出部(例えば、金属材料や磁性材料からなるコア)の物理的変位によって生じる検出コイルのインピーダンス変化に基づいて、検出部と被検出部との位置を検出する、所謂非接触型のポジションセンサが提案されている。
【0003】
非接触型のポジションセンサは、例えば、被検出部と検出部との間に機械的な連結を要する接触型のものに比べれば、耐久性に優れ、振動に強く、オイル(フルード)などの液体に対するシール構造が容易に実現できるという利点があるため、内燃機関や発電設備をはじめとする多くの分野で計測制御に利用されており、また、近年の車両の高機能化に伴って、車輪とボディ(車体)とを連結するサスペンション(懸架装置)に利用されるショックアブソーバ(衝撃吸収装置)などのシリンダ装置にも利用されるようになってきている。
【0004】
上記のようなシリンダ装置は、例えば、車両のボディに固定される固定部と、車輪に固定されるとともに当該固定部に所定の移動方向に移動自在に取り付けられた可動部と、固定部に設けられ可動部と固定部の緩衝用の流体が内部に充填される流体収容部と、ポジションセンサにより検出した固定部に対する可動部の変位に基づいて流体収容部内の流体の圧力を制御する圧力制御装置とを備えている。
【0005】
ここで、ポジションセンサをシリンダ装置の外部に配置した場合には、シリンダ装置を取り付けるために比較的広いスペースが必要になることから、ポジションセンサをシリンダ装置の内部、特に流体収容部内に配置することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−139572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ポジションセンサは、例えば、検出部を検出コイルの中心軸を可動部の移動方向に沿わせた形で固定部に固定するとともに、被検出部を可動部の移動により検出コイル内で移動方向に変位するように可動部に固定した状態で、流体収容部内に配置される。
【0007】
しかしながら、上記のようにポジションセンサの検出部および被検出部を流体収容部内に配置した場合には、検出部および被検出部によって流体の流れ(移動)が制限されるので、検出部および被検出部が流体収容部内に存在しない場合に比べれば、流体収容部内を流体が移動し難くなり、流体収容部内において流体の圧力が偏ってしまい、可動部の移動が阻害されてしまうという問題があり、特に検出部と被検出部との隙間(クリアランス)が小さい場合に顕著であった。
【0008】
このような問題は、検出部と被検出部との隙間を広くして流体を流れ易くすれば、ある程度解決できていたが、検出部と被検出部との隙間を広くすればするほど、可動部の移動時に、被検出部が検出部に対して可動部の移動方向に交差する方向に相対変位(偏芯)し易くなってしまう。このような偏芯による検出コイルのインピーダンス変化は、検出精度の悪化の原因となる。つまり、流体収容部内にポジションセンサを配置したことに起因する可動部の移動阻害を抑制するにあたって、検出部と被検出部との隙間を広くするという手段を採用した場合には、検出精度が悪化するという別の問題が生じていた。
【0009】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたもので、検出精度の悪化を抑制しながらも可動部の移動阻害を抑制できるポジションセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明では、固定部と、当該固定部に所定の移動方向に移動自在に取り付けられた可動部と、固定部および可動部のいずれかに設けられ可動部と固定部の緩衝用の流体が内部に充填される流体収容部とを備える装置の流体収容部内に配置され、固定部に対する可動部の変位を検出するポジションセンサであって、固定部および可動部のいずれか一方に固定され上記移動方向に中心軸を沿わせた形の検出コイルを少なくとも有する検出部と、固定部および可動部のいずれか他方に固定され可動部の移動により検出部に対して上記移動方向に相対変位する被検出部とを備え、検出部と被検出部のいずれか一方は、少なくとも上記移動方向における一端が流体収容室内に連通する形に開口された筒状に形成され、検出部と被検出部のいずれか他方は、検出部と被検出部のいずれか一方に対して上記移動方向における一端から当該一方の内側に入り込む形に配置され、検出部および被検出部の少なくとも一方には、流体収容部内に充填される流体用の流路部が形成されてなることを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明によれば、検出部と被検出部の少なくとも一方に流体が通る流路部を設けているので、流体収容部内の流体が移動し易くなるから、ポジションセンサを流体収容部内に配置したことに起因する可動部の移動阻害を抑制できる。また、流体を移動し易くするために、検出部と被検出部との間の隙間(クリアランス)を大きくしなくて済むので、被検出部が検出部に対して可動部の移動方向に交差する方向に変位(すなわち偏芯)することを抑制できるから、偏芯に起因する検出コイルのインピーダンス変化により検出精度が悪化することを抑制できる。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、被検出部は、上記移動方向における一端が開口した筒状に形成され、検出部は、上記移動方向における一端から被検出部の内側に入り込む形に配置され、検出コイルの内側には磁性材料からなるコアが配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明によれば、検出コイルの巻数が同じであれば、空芯の検出コイルよりも磁束を大きくできるので、検出コイルのインピーダンスの変化量を大きくでき、検出精度の向上が図れる。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1または2の発明において、流路部は、被検出部および検出部の少なくとも一方の、上記移動方向に交差する方向における他方との対向面に、上記移動方向に沿う形に形成された溝部からなることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明によれば、流体が流路部内を流れ易くなるから、可動部の移動阻害をさらに抑制できる。
【0016】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、溝部は、上記移動方向において上記対向面の全面に亘る形に形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明によれば、流路部が対向面の一部に設けられている場合に比べれば、流路部の容積が増えて流体に対する抵抗(コンダクタンス)を小さくできるから、流体がさらに流れ易くなり、可動部の移動阻害をさらに抑制できる。
【0018】
請求項5の発明では、請求項1〜4のうちいずれか1項の発明において、流路部は、検出部に対する被検出部の位置によらずに、検出部の上記移動方向における両端側の空間部を連通する形に形成されてなることを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明によれば、検出部と被検出部との間に隙間を設けなくても、流体が流路部に流入または流出できるので、検出部と被検出部とを可動部の移動方向に直交する方向においてより近接して配置できるようになるから、検出部に対する被検出部の相対変位による検出コイルのインピーダンス変化を大きくできて、検出精度の向上が図れる。
【0020】
請求項6の発明では、請求項5の発明において、流路部は、コアに設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項6の発明によれば、例えば、コアが挿通される挿通孔を有し検出コイルが巻回される円筒状のコイルボビンや、検出コイルを覆うように形成される絶縁部などに流路部を設ける場合に比べれば、比較的断面積が大きい流路部を、検出部を大型化することなく設けることができるから、流体を流れ易くして可動部の移動阻害をさらに抑制できる上に、検出部の小型化が図れる。
【0022】
請求項7の発明では、請求項5または6の発明において、検出部と被検出部とは、上記移動方向に直交する方向において当接する形に形成されてなることを特徴とする。
【0023】
請求項7の発明によれば、可動部の移動によって被検出部が検出部に対して相対変位する際に、被検出部が検出部に対して可動部の移動方向に交差する方向に相対変位(すなわち偏芯)してしまうことを防止できるから、偏芯に起因する検出コイルのインピーダンス変化により検出精度が悪化することを防止できる。
【0024】
請求項8の発明では、請求項1〜7のうちいずれか1項の発明において、検出コイルに所定の周波数及び振幅の電流を出力する駆動回路部と、駆動回路部が出力した電流および検出コイルのインピーダンスにより決まる電圧信号を検出部と被検出部との位置情報を示す出力信号に変換する信号処理回路とを有する回路ブロックと、回路ブロックが上記流体に浸漬されないように収納するケースとを備えていることを特徴とする。
【0025】
請求項8の発明によれば、検出部と被検出部との位置情報を示す出力信号を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、流体収容部内の流体が移動し易くなるから、ポジションセンサを流体収容部内に配置したことに起因する可動部の移動阻害を抑制できるという効果を奏し、その上、検出部と被検出部との間の隙間(クリアランス)を大きくしなくて済むから、偏芯に起因する検出コイルのインピーダンス変化により検出精度が悪化することを抑制できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施形態1)
本実施形態のポジションセンサは、例えば、図1(a)に示すような、車両(自動車や自動二輪車など)のサスペンションに利用されるショックアブソーバ(図示例では複筒式のショックアブソーバ)などのシリンダ装置に設けられている。なお、以下の説明では説明の簡略化のために、図1(a)における左方向をシリンダ装置の前方向、図1(a)における右方向をシリンダ装置の後方向と規定するが、使用形態を上記の方向に限定する趣旨ではない。
【0028】
上記シリンダ装置は、図1(a)に示すように、例えば、固定部1と、当該固定部1に所定の移動方向(本実施形態では前後方向であり、図1(a)においては左右方向)に移動自在に取り付けられた可動部2とを備えている。固定部1には、可動部2と固定部1の緩衝用の流体9が内部に充填される流体収容部14が設けられている。
【0029】
本実施形態のポジションセンサは、上記移動方向に中心軸を沿わせた形の検出コイル50を有する検出部5と、可動部2の移動により検出部5に対して上記移動方向に相対変位する被検出部7と、回路ブロック3とを備え、検出部5および回路ブロック3が固定部1に、被検出部7が可動部2にそれぞれ固定された形で流体収容部14内に配置されている。
【0030】
固定部1は、車両のボディ(図示せず)などに取り付けられる固定部本体10を備えている。固定部本体10の前端側には、前面側が開口した円形状の空間部からなる第1収容凹部10aが形成され、固定部本体10の後端側には、固定部本体10を上記ボディに取り付けるために利用される円形状の取付孔10bが形成されている。
【0031】
この固定部本体10には、流体収容部14を構成するための外筒部11および内筒部12が取り付けられている。外筒部11は、中心軸方向における両端側が開口した円筒状に形成され、後端側を第1収容凹部10a内に位置させるとともに、中心軸を前後方向に沿わせた形で固定部本体10に固定されている。また、内筒部12は、外筒部11の内径より小さい外径を有するとともに中心軸方向における両端側が開口した円筒状に形成され、外筒部11の内側に位置するとともに、外筒部11と中心軸を一致させた形で固定部本体10に固定されている。
【0032】
ここで、内筒部12は、その後端面を第1収容凹部10aの底面に当接させた形で固定部本体10に固定されているが、外筒部11はその後端面を第1収容凹部10aの内周面に突設された当接片10cに当接させた形で固定部本体10に固定されている。また、外筒部11および内筒部12は、外筒部11および内筒部12それぞれと固定部本体10との間に隙間が生じないように固定されている。さらに、外筒部11および内筒部12それぞれは、それぞれを固定部本体10に固定した状態において、外筒部11の後端面が内筒部12の後端面よりも前方に位置するとともに、外筒部11の前端面が内筒部12の前端面よりも前方に位置するように、それぞれの前後方向(すなわち中心軸に沿った方向)の長さ寸法が設定されている。
【0033】
固定部本体10に固定された外筒部11の前端側には、円盤状のエンドキャップ13が、前端側の開口を閉塞するとともに外筒部11との間に隙間が生じないようにして取り付けられている。このエンドキャップ13の中心には、被検出部7が貫装される円形状の挿通孔13aが前後方向に貫設されている。この挿通孔13aは、被検出部7を挿通孔13aに貫装した状態では、被検出部7とエンドキャップ13との間に隙間が生じないような大きさに形成されている。
【0034】
したがって、上記シリンダ装置では、固定部本体10と外筒部11とエンドキャップ13とによって、流体収容部14が構成されており、この流体収容部14には、可動部2と固定部1の緩衝用の流体9が充填される。このような流体9としては、所望の粘性抵抗を有する液体の他、気体などが利用される。
【0035】
第1収容凹部10aの底面において内筒部12で囲まれる部位には、図2に示すように、ポジションセンサの回路ブロック3が収納される第2収容凹部10dが形成されている。第2収容凹部10dは、内筒部12の内径より小さい内径を有する円形状の第1空間部10eと、第1空間部10eの内径より小さい内径を有する円形状の第2空間部10fとで構成され、第1空間部10eと第2空間部10fとはそれぞれの中心軸が一致するとともに第1空間部10eが第2空間部10fの前方に位置する形に形成されている。
【0036】
ここで、固定部本体10において第1空間部10eに対応する壁部には、流体9の圧力を調整するための圧力制御装置(図示せず)の流体収容室(図示せず)と流体収容部14とを繋ぐための流体出入口(図示せず)が形成されている。また、第2空間部10fの底面には、前後方向に中心軸を沿わせる形で、第2空間部10fの内径より小さい内径を有する円形状の通路部10gが形成されている。さらに、固定部本体10には、回路ブロック3を上記圧力制御装置に接続する接続線(ハーネス)4用の接続孔10hが、通路部10gの内面と固定部本体10の外面とを、前後方向に直交する方向において連通する形に形成されている。したがって、固定部本体10は、接続孔10hおよび通路部10gを通じて接続線4を第2収容凹部10d内に挿入できるようになっている。
【0037】
固定部本体10に取り付けられた内筒部12の内側には、ポジションセンサの検出部5が配置されている。検出部5は、検出コイル50と、検出コイル50が巻回されるコイルボビン51と、検出コイル50を保護する絶縁保護部52とで構成されている。
【0038】
コイルボビン51は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料からなる樹脂成形品であって、検出コイル50が外周面に巻回される円筒状の巻胴部51aと、巻胴部51aの前端部に設けられた鍔部51bとを一体に備えている。鍔部51bは、巻胴部51aより外径が大きい円筒状に形成され、その中心軸は、巻胴部51aの中心軸と一致している。
【0039】
このようなコイルボビン51は、基台6により、コイルボビン51の中心軸を内筒部12の中心軸に一致させた形(すなわち、検出コイル50の中心軸を可動部2の移動方向に沿わせた形)で、固定部本体10に固定されている。
【0040】
基台6は、内筒部12の内径と同一またはやや小さい外径を有する円盤部6aと、第2収容凹部10dの第2空間部10fの内径と同一またはやや小さい外径を有し円盤部6aの後面側に突設された円筒部6bとを一体に備えている。
【0041】
円盤部6aの前面中央部には、検出部5を固定するための円形状の固定孔6cが凹設されている。本実施形態では、固定孔6cは、コイルボビン51の後端部が嵌入される形に形成されている。また、円盤部6aには、コイルボビン51に巻回された検出コイル50の両端を、回路ブロック3に電気的に接続するための2つのコイル端子60が貫装される貫装孔6dが前後方向に貫設されている。ここで、コイル端子60と貫装孔6dとの隙間は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料からなる封止部61により封止されている。
【0042】
円筒部6bの外周面の後端側には、Oリングなどからなる円環状のシール部62用の溝部6eが外周面を一周する形に形成されている。また、基台6の円盤部6aにおける円筒部6bより外側の部位には、後述する第1収容室14aと固定部本体10の流体出入口(図示せず)との間の流路の一部を構成する連通孔(図示せず)が、円盤部6aを前後方向に貫通する形に形成されている。
【0043】
検出コイル50は、コイルボビン51の巻胴部51aに、コイルボビン51の中心軸に沿った方向、すなわち前後方向を巻き軸方向として巻回されており、その両端部それぞれは、基台6に貫装されたコイル端子60の前端部に絡げられる。
【0044】
回路ブロック3は、コイル端子60それぞれの後端部に半田付け等により接続された状態で、基台6の円筒部6b内に配置される。したがって、検出コイル50と回路基板3とはコイル端子60を通じて電気的に接続されている。
【0045】
このような回路ブロック3は、プリント基板に電子部品を実装して構成されたものであって、検出コイル50に所定の周波数及び振幅の電流を出力する駆動回路部(図示せず)と、上記駆動回路部が出力した電流および検出コイル50のインピーダンスにより決まる電圧信号を検出部5と被検出部7との位置情報を示す出力信号に変換する信号処理回路(図示せず)とを有している。したがって、本実施形態のポジションセンサによれば、検出部5と被検出部7との位置情報を示す出力信号を得ることができるようになっている。
【0046】
絶縁保護部52は、絶縁性を有し耐圧性が比較的高い材料(例えば、ガラス材など)や絶縁性樹脂などからなり、コイルボビン51の巻胴部51aに巻回された検出コイル50の外周面を覆う円筒状の検出コイル被覆部52aと、検出コイル被覆部52aの後端部に設けられ検出コイル50の端子それぞれが絡げられたコイル端子60および封止部61とともに基台6の円盤部6aの前面中央部を覆う円盤状の基台被覆部52bとを一体に備えている。ここで、検出コイル被覆部52aの外径は、コイルボビン51の鍔部51bの外径と等しい値に設定されており、検出コイル被覆部52aは、前後方向に直交する面内においてコイルボビン51の鍔部51bが占める領域の内側に位置した形で検出コイル50を覆うように構成されている。
【0047】
上述したような検出部5が固定される基台6は、円筒部6bが第2収容凹部10dの第2空間部10f内に配置されるとともに、円盤部6aが内筒部12の内側に配置された形で、固定部本体10に固定される。このとき、ロウ付けなどによって、円盤部6aと内筒部12の内周面との間は、隙間が生じないように封止されている。また、円筒部6bと第2空間部10fの内周面との間には、シール部62が存在することによって封止されている。一方、回路ブロック3には、接続孔10gより第2収容凹部10d内に挿入された接続線4が半田付け等により電気的かつ機械的に接続される。これに対応して、基台6の後端側には、接続線4用のブッシュ63が設けられている。ブッシュ63は、通路部10gの内径と同一または小さい外径を有するとともに接続線4の外径より大きい内径を有する円筒状の筒部63aと、筒部63aの前端側に設けられた円環状の抜け止め部63bとを一体に備えており、筒部63aを通路部10g内に位置させるとともに、抜け止め部63bを第2空間部10fの底面における通路部10gの開口縁部に当接させた形で、固定部本体10に取り付けられる。筒部63aの内周面には、面方向が前方を向いた段部63cが形成されており、接続線4に嵌着された円環状のストッパ部64が段部63cの前面側に当接することによって、接続線4の張力止めが図られている。
【0048】
このように回路ブロック3は、基台6の円筒部6b内に配置されることで、流体収容部14内の流体9に浸漬されないように保護されている。つまり、本実施形態では、基台6が、回路ブロック3が流体9に浸漬されないように収納するポジションセンサのケースを構成している。
【0049】
そして、上記圧力制御装置は、回路ブロック3により得られる上記出力信号を元にして、流体9の圧力を制御することによって、所望の衝撃吸収性能が得られるように構成されたものであり、このような圧力制御装置は従来周知のものであるから詳細な説明を省略する。
【0050】
可動部2は、図1(a)に示すように、例えば、車両の車輪(図示せず)などに取り付けられる可動部本体20を備えている。可動部本体20の前端側には、上記車輪に取り付けるために利用される取付孔20aが形成され、後端側には、被検出部7の前端部が挿入される円形状の固定孔20bが、その中心軸を前後方向に沿わせる形に形成されている。
【0051】
また、可動部本体20の後端側には、可動部2が固定部1側(すなわち後方)に移動してエンドキャップ13に衝突した際の衝撃を和らげる緩衝部21が設けられている。緩衝部21は、弾性材料(ゴムなど)などにより円盤状に形成され、可動部本体20の固定孔20bと同じ内径を有して固定孔20bに連通する挿通孔21aが前後方向に貫設されている。
【0052】
被検出部7は、可動部2を固定部1に移動自在に取り付けるためのピストンロッドであって、導電性材料により円柱状に形成されている。ここで、導電性材料としては、導電性が低いものよりも導電性が高いもののほうが検出コイル50のインピーダンス変化を大きくできるため好ましく、本実施形態では、金属の中でも比較的導電性が高いアルミニウムにより被検出部7を形成している。
【0053】
このような被検出部7の後端部には、ピストン22が設けられている。ピストン22は、円盤状のものであって、その外径は、ピストン22の外周面が内筒部12の内周面に当接した状態で、前後方向に移動できるような大きさに設定されている。このピストン22の中央部には、被検出部7が貫装される貫通孔22aが前後方向に貫設されている。ピストン22の中心軸と貫通孔22aの中心軸とは一致するようにしてあり、また、被検出部7を貫通孔22aに貫装した状態では、被検出部7とピストン22との間に隙間が生じないようにしている。また、ピストン22には、前後方向に貫通し流体9の流路となる貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0054】
ところで、被検出部7の後端側には、コイルボビン51の鍔部51bの外径より大きい内径を有する挿入孔7aが、その中心軸を被検出部7の中心軸に一致させる形に形成されている。また、挿入孔7aの底面には、後述するコア53の前端部が嵌入される嵌入孔7bが、コア53の中心軸が挿入孔7aの中心軸と一致する形に形成されている。さらに、被検出部7の外周面の後端縁部には、被検出部7からピストン22が外れてしまうことを防止する円環状のストッパ部23が被嵌されている。
【0055】
前述のコア53は、磁性材料(例えば、鉄やフェライトなど)により丸棒状に形成されており、前端部を被検出部7の嵌入孔7bに嵌入させた状態で、被検出部7に固定される。また、コア53の外径は、コイルボビン51の内径よりも小さく設定されている。さらに、コア53は、被検出部7に取り付けた状態では、コア53の後端面と被検出部7の後端面とが同一平面上に位置するように、コア53の長さが設定されている。
【0056】
可動部2を固定部1に取り付けるにあたっては、固定部1の外筒部11にエンドキャップ13を取り付ける前に、コア53、ピストン22、およびストッパ部23を取り付けた被検出部7を、外筒部11の前端側の開口より外筒部11内に挿入して、ピストン22を内筒部12内に、ピストン22の外周面が内筒部12の内周面に当接する形に配置し、その後に、エンドキャップ13を外筒部11に取り付けてから、被検出部7の前端部に、可動部本体20および緩衝部21を取り付ければよい。
【0057】
ここで、被検出部7は、図1(a)および図3に示すように、上記移動方向における一端(後端)が流体収容部14内に連通する形に開口されるとともに他端(前端)が閉塞された筒状に形成されているため、ピストン22を内筒部12内に配置した際には、検出部5は、被検出部7に対して上記移動方向における一端から被検出部7の内側(すなわち挿入孔7a)に入り込む形に配置されることになる。また、このようにして検出部5が被検出部7の内側に入り込む際には、同時に、コア53の後端部はコイルボビン51の内側に入り込むことになる。つまり、コイルボビン51の内側の空間部がコア53用の挿通孔51cを構成している。
【0058】
上記のように可動部2を固定部1に取り付けた後には、流体収容部14内に流体9が充填される。ここで流体収容部14は、内筒部12と固定部本体10とピストン22とで囲まれる空間部からなる第1収容室14aと、第1収容室14aを除く流体収容部14からなる第2収容室14bとからなり、可動部2が固定部1に対して静止している状態では、第1収容室14aと第2収容室14bとでは、流体9の圧力が等しくなる。
【0059】
次に、ピストン装置の動作について説明する。例えば、図1(a)に示すように、可動部2が固定部1から離間した状態において、可動部2に衝撃が加えられて、可動部2が後方、すなわち固定部1に近接する方向に移動すると、第1収容室14aの容積が減少して第1収容室14a内の流体9の圧力が高くなるから、可動部2を前方、すなわち固定部1から離間する方向に移動させる力が可動部2に作用して、可動部2の後方への移動量が減じられる。第1収容室14a内の流体9の圧力は、ピストン22に設けられた貫通孔より流体9が第1収容室14aから第2収容室14bに移動することで徐々に減少して、第2収容室14bの流体9の圧力と等しくなり、可動部2に加えられた衝撃が固定部1に伝達されることが防止される。
【0060】
上述したように可動部2が後方に移動した際には、可動部2とともに被検出部7が後方に移動するので、検出部5の被検出部7内への挿入量が増し、検出コイル50のインピーダンスが変化するから、ポジションセンサにより固定部1に対する可動部2の位置を検出することができる。
【0061】
ここで、被検出部7は、図1(a)に示すように、上記移動方向における一端(後端)が流体収容部14(第1収容室14a)内に連通しており、検出部5は、被検出部7に対して上記移動方向における一端から被検出部7の内側(すなわち挿入孔7a)に入り込む形に配置されている。
【0062】
そのため、被検出部7が後方に移動して、検出部5の被検出部7内への挿入量が増した際には、被検出部7の挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部の容積が減少するので、上記空間部を占めていた流体9は、上記移動方向に直交する方向における検出部5と被検出部7との隙間(絶縁保護部52の外周面と被検出部7の内周面との隙間)より流体収容部14の第1収容室14aへと流出する。しかしながら、上記隙間は、検出部5に対する被検出部7の偏芯を抑制するために小さく設定されているために、流体9が移動し難く、これによって、上記空間部内の流体9の圧力が高くなって、検出部5が前方に移動し難くなり、その結果、可動部2の移動が阻害され、流体9により本来得られるはずの衝撃吸収性能が得られなくなるおそれがある。
【0063】
また、可動部2に加えられた衝撃を吸収した後には、上記圧力制御部により第1収容室14a内の流体9の圧力が高く設定され、これによって、可動部2は、固定部1に対する所定位置に復帰するまで、前方、すなわち固定部1から離間する方向に移動させられる。この場合、可動部2とともに被検出部7が前方に移動するので、検出部5の被検出部7内への挿入量が減り、検出コイル50のインピーダンスが変化するから、ポジションセンサにより固定部1に対する可動部2の位置を検出することができるようになっている。
【0064】
このように被検出部7が前方に移動する際には、検出部5の被検出部7内への挿入量が減って、被検出部7の挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部の容積が増えるので、第1収容室14aから上記空間部に流体9が流入しようとする。このときにおいても、流体9が移動し難く、これによって、上記空間部内の流体9の圧力が低くなって、検出部5が後方に移動し難くなるから、可動部2の移動が阻害されるおそれがある。
【0065】
そこで、本実施形態における検出部5では、絶縁保護部52の外周面に、図1(b)に示すように、可動部2の移動方向に沿う形に形成された溝部からなる流路部8を、外周面を周方向に11等分する形で形成して、上記空間部と第1収容室14aとの間で流体9を移動し易くしており、これによって、可動部2の移動を阻害してしまうことを抑制している。これら流路部8を構成する溝部は、可動部2の移動方向において検出コイル被覆部52aの外周面の全面に亘る形に形成している。なお、図1(b)では、図面の簡略化のため、検出部5および被検出部7のみを図示している。この点は図4(b)、図6(b)、図8(b)、図10、図11、図12(b)、および図14においても同様である。
【0066】
以上述べた本実施形態のポジションセンサによれば、検出部5に流体が通る流路部8を設けて、流体9が移動し易くしているから、ポジションセンサを流体収容部14内に配置したことに起因する可動部2の移動阻害を抑制できる。また、流体9を移動し易くするために、検出部5と被検出部7との間の隙間(クリアランス)を大きくしなくて済むので、被検出部7が検出部5に対して可動部2の移動方向に交差する方向に変位(すなわち偏芯)することを抑制できるから、偏芯に起因する検出コイル50のインピーダンス変化により検出精度が悪化することを抑制できる。また、回路ブロック3を備えているから、検出部5と被検出部7との位置情報を示す出力信号を得ることができる。
【0067】
また、流路部8は、上記移動方向に沿う形に形成された溝部からなるので、流体9が、流路部8内を可動部2の上記移動方向に沿った方向に流れるから、流路部8内を流体9が流れ易くなり、可動部2の移動阻害をさらに抑制できる。
【0068】
本実施形態において流路部8となる溝部は、絶縁保護部52の検出コイル被覆部52aの外周面の全面(すなわち、検出部5において上記移動方向に交差する方向における他方との対向面の全面)に亘る形に形成されているが、絶縁保護部52の検出コイル被覆部52aの外周面の少なくとも一部に形成するようにしてもよい。当然ながら、検出コイル被覆部52aの外周面の全面に亘る形に形成したほうが、当該外周面の一部に設けられている場合に比べれば、流路部8の容積が増えて流体9に対する抵抗(コンダクタンス)を小さくできるから、流体9がさらに流れ易くなり、可動部2の移動阻害をさらに抑制できる。
【0069】
また、検出部5は、被検出部7の内側を上記移動方向に移動自在に挿通する形に配置され、検出部5の検出コイル50の内側にはコア53が配置されているので、検出コイル50の巻数が同じであれば、空芯の検出コイル50よりも磁束を大きくできるから、検出コイル50のインピーダンスの変化量を大きくでき、検出精度の向上が図れる。
【0070】
なお、検出部5は、必ずしも、被検出部7の内側を上記移動方向に移動自在に挿通する形に配置されている必要はなく、逆に被検出部7が、検出部5の内側を上記移動方向に移動自在に挿通する形に配置されていてもよいが、検出部5を被検出部7の内側を上記移動方向に移動自在に挿通する形に配置するほうがコア53を検出コイル50の内側に配置できる点で好ましい。
【0071】
ところで、コア53を設ければ上述したように検出精度の向上が図れるが、コア53は必ずしも必要ではなく、例えば、図4および図5に示すように、コア53を設けないようにしてもよい。図4および図5に示すコイルボビン51は、コア53用の挿通孔51cを備えていない点で、図1および図3に示すコイルボビン51と異なっており、図4および図5に示す被検出部7は、コア53を取り付けるための嵌入孔7bを備えていない点で、図1および図3に示す被検出部7と異なっている。
【0072】
また、流路部8は、絶縁保護部52だけではなく、図6および図7に示すように、コイルボビン51に設けるようにしてもよい。なお、以下の説明では、必要に応じて流路部8を区別するために、絶縁保護部52に設けられた流路部8を符号8A、コイルボビン51に設けられた流路部8を符号8Bで表す。
【0073】
図6および図7に示す流路部8Bは、コイルボビン51を、その中心軸に沿って貫通する形に形成されている。また、図6に示す基台6には、コイルボビン51の後端部が嵌入される固定孔6cと、固定部本体10の流体出入口とを連通させる連通孔(図示せず)が形成されており、これによって、コイルボビン51を基台6に固定した際に、コイルボビン51の流路部8Bが、固定部本体10の流体出入口に通じるようにされている。
【0074】
なお、固定部1を上側、可動部2を下側にして使用する場合、基台6に上記連通孔を設けずに、流路部8B内の一部に、流体9よりも圧力が変化し易い圧力吸収用流体(例えば、ガスなどの気体)を充填するようにしてもよく、この場合でも同様の効果が得られる。
【0075】
図6および図7に示すようなポジションセンサによれば、流路部8Aだけではなく、流路部8Bによって、流体9が、被検出部7の挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部と、第1収容室14aとの間を移動できるようになるから、さらに、流体9の移動を妨げ難くなって、可動部2の移動を阻害してしまうことを抑制できるようになる。
【0076】
また、図6および図7に示すようにコイルボビン51に流路部8を設けるにあたっては、検出コイル50を覆うように形成される保護部52などに流路部8を設ける場合に比べれば、比較的断面積が大きい流路部8を、検出部5を大型化することなく設けることができるから、流体9を流れ易くして可動部2の移動阻害をさらに抑制できる上に、検出部5の小型化が図れる。
【0077】
なお、本実施形態では、固定部1に検出部5を、可動部2に被検出部7をそれぞれ固定するようにしているが、固定部1に被検出部7を、可動部2に検出部5をそれぞれ固定するようにしてもよい。要は、固定部1および可動部2のいずれか一方に上記移動方向に中心軸を沿わせた形の検出コイル50を有する検出部5が、固定部1および可動部2のいずれか他方に可動部2の移動により検出部5に対して上記移動方向に相対変位する被検出部7が設けられていればよい。また、本実施形態では、検出部5に流路部8を設けているが、被検出部7に流路部8を設けるようにしてもよい。要は、検出部5および被検出部7の少なくとも一方に、流路部8が形成されていればよい。ここで、絶縁保護部52に流路部8を設けないのであれば、絶縁保護部52を省略してもよい。
【0078】
例えば、流路部8となる溝部は、被検出部7および検出部5の少なくとも一方の、上記移動方向に交差する方向における他方との対向面に、上記移動方向に沿う形に形成されていればよい。また、図示例では、流路部8Aは、上記移動方向に直交する面内における断面形状が半円形状となっているが、これに限らず、矩形状や三角形状であってもよい。これらの点は、後述する実施形態2〜3においても同様である。
【0079】
(実施形態2)
本実施形態のポジションセンサは、主に検出部5の構成が実施形態1と異なっている。すなわち、本実施形態における検出部5は、図8および図9に示すように、コイルボビン51を備える代わりに、外周面の全面に絶縁性層53aが設けられたコア53を備え、このコア53の外周面(絶縁性層53aの外周面)に検出コイル50が巻回されている点で、実施形態1と異なっている。また、検出部5にコア53を設けたことにより、被検出部7には、コア53を固定するための嵌入孔7bが設けられておらず、基台6の固定孔6cはコイルボビン51ではなくコア53の固定のために利用されるように構成されている。なお、その他の構成は実施形態1と同様であるから説明を省略する。
【0080】
以上述べた本実施形態のポジションセンサによれば、上記実施形態1と同様の効果を奏する上に、検出部5においては、コイルボビン51を設けずにコア53に検出コイル50を巻回するようにしたので、図1に示すようにコア53が内側に配置可能な検出部5を用いる場合に比べれば、全体的に小型化が図れ、図4に示すようにコア53を備えていない検出部5を用いる場合に比べれば、検出コイル50のインピーダンス変化を大きくできて検出精度の向上が図れる。なお、コア53を形成する磁性材料としてフェライトなどの絶縁性を有する磁性材料を用いた場合には、絶縁性層53aを省略してもよい。
【0081】
ところで、本実施形態における流路部8は、図9に示すように、前端側が開放されており、後端側が被検出部7の可動範囲外まで延設された溝部からなる。つまり、本実施形態における流路部8は、検出部5に対する被検出部7の位置によらずに、検出部5の上記移動方向における両端側の空間部、すなわち、被検出部7の挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部と、第1収容室14aとを連通する形に形成されてなる。
【0082】
このような流路部8によれば、検出部5と被検出部7との間に隙間を設けなくて済むので、検出部5と被検出部7とを上記移動方向に直交する方向においてより近接して配置できるようになり、検出部5に対する被検出部7の相対変位による検出コイル50のインピーダンス変化が大きくなるから、検出精度を向上できる。また、可動部2の移動時に被検出部7が偏芯してしまうことを抑制し易くなるから、偏芯による検出コイル50のインピーダンス変化によって検出精度が悪化してしまうことを抑制できる。
【0083】
ところで、上述したように、挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部と、第1収容室14aとを連通する形に絶縁保護部52に形成された流路部8としては、図8(b)に示すような溝部からなるものに限らず、図10(a)に示すように、絶縁保護部52の検出コイル被覆部52aの外周面の一部を平坦化してなる空間部からなるものであってもよく、このような流路部8であっても同様の効果が得られる。また、流路部8は、図10(b)に示すように、絶縁保護部52を上記移動方向に貫通する形に設けられた貫通孔、すなわち上記移動方向における両端が開放された中空部からなるものであってもよい。図10(b)に示す流路部8は、上記移動方向に直交する面内において、正八角形の頂点に位置する形に絶縁保護部52に形成されている。
【0084】
図8(b)に示す流路部8は、絶縁保護部52の外周面を周方向に11等分する形に絶縁保護部52に形成されているが、流路部8は必ずしも等間隔で絶縁保護部52に設けられている必要ななく、例えば、図10(c)に示すように、流路部8を絶縁保護部52のランダムな位置に設けるようにしてもよい。この点は、図10(b)に示す流路部8についても同様であり、流路部8は、上記移動方向に直交する面内における正八角形の頂点位置ではなく、図10(d)に示すように、ランダムな位置に設けるようにしてもよい。
【0085】
また、流路部8が、図8(b)および図10(a)〜(d)に示すように、被検出部7の挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部と、第1収容室14aとを連通する形に絶縁保護部52に形成されていれば、図11に示すように、検出部5と被検出部7とを、上記移動方向に直交する方向において当接する形に形成することができ、この場合、検出部5と被検出部7とが上記移動方向に直交する方向において最も近接するので、検出部5に対する被検出部7の相対変位による検出コイル50のインピーダンス変化を最も大きくできるから、検出精度を向上できる。また、可動部2の移動時に被検出部7が偏芯してしまうことを防止できるから、偏芯による検出コイル50のインピーダンス変化によって検出精度が悪化してしまうことを防止できる。
【0086】
(実施形態3)
本実施形態のポジションセンサは、コア53および基台6の構成が実施形態2と異なっており、その他の構成は実施形態2と同様であるから説明を省略する。
【0087】
本実施形態におけるコア53には、図12および図13に示すように、円形状の流路部8が、流路部8の中心軸をコア53の中心軸に一致させた形で、前後方向に貫設されている。なお、以下の説明では、必要に応じて流路部8を区別するために、絶縁保護部52に設けられた流路部8を符号8A、コア53に設けられた流路部8を符号8Cで表す。
【0088】
また、本実施形態における基台6には、コア53の後端部が嵌入される固定孔6cと、固定部本体10の流体出入口とを連通させる連通孔6fが形成されており、これによって、コア53を基台6に固定した際に、コア53の流路部8Cが、固定部本体10の流体出入口に通じるようにされている。
【0089】
以上述べた本実施形態のポジションセンサによれば、流路部8Aだけではなく、流路部8Cによって、流体9が、被検出部7の挿入孔7aの底面と検出部5の前端面との間の空間部と、第1収容室14aとの間を移動できるようになるから、さらに、流体9の移動を妨げ難くなって、可動部2の移動を阻害してしまうことを抑制できるようになる。
【0090】
また、コア53に流路部8を設けるにあたっては、コア53が挿通される挿通孔51cを有し検出コイル50が巻回されるコイルボビン51や、検出コイル50を覆うように形成される絶縁保護部52などに流路部8を設ける場合に比べれば、比較的断面積が大きい流路部8を、検出部5を大型化することなく設けることができるから、流体9を流れ易くして可動部2の移動阻害をさらに抑制できる上に、検出部5の小型化が図れる。
【0091】
ところで、流路部8Aとしては、図12(b)に示すような溝部からなるものに限らず、図14(a)に示すように、絶縁保護部52の検出コイル被覆部52aの外周面の一部を平坦化してなる空間部からなるものであってもよく、このような流路部8Aであっても同様の効果が得られる。また、流路部8Aは、図14(b)に示すように、絶縁保護部52を上記移動方向に貫通する形に設けられた貫通孔、すなわち上記移動方向における両端が開放された中空部からなるものであってもよい。図14(b)に示す流路部8Aは、上記移動方向に直交する面内において、正八角形の頂点に位置する形で絶縁保護部52に形成されている。
【0092】
なお、図12(b)に示す流路部8Aは、絶縁保護部52の外周面を周方向に11等分する形で絶縁保護部52に形成されているが、流路部8Aは必ずしも等間隔で絶縁保護部52に設けられている必要ななく、例えば、図14(c)に示すように、流路部8Aを絶縁保護部52のランダムな位置に設けるようにしてもよい。この点は、図14(b)に示す流路部8Aについても同様であり、流路部8Aは、上記移動方向に直交する面内における正八角形の頂点位置ではなく、図14(d)に示すように、ランダムな位置に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施形態1のポジションセンサを備えたシリンダ装置を示し、(a)は断面図、(b)は同図(a)のA−A線矢視図である。
【図2】同上におけるポジションセンサを備えたシリンダ装置の部分断面図である。
【図3】同上におけるポジションセンサの一部を切り欠いた斜視図である。
【図4】同上の他例のポジションセンサを備えたシリンダ装置を示し、(a)は断面図、(b)は同図(a)のB−B線矢視図である。
【図5】同上におけるポジションセンサの一部を切り欠いた斜視図である。
【図6】同上のさらに他の例のポジションセンサを備えたシリンダ装置を示し、(a)は断面図、(b)は同図(a)のC−C線矢視図である。
【図7】同上におけるポジションセンサの一部を切り欠いた斜視図である。
【図8】実施形態2のポジションセンサを備えたシリンダ装置を示し、(a)は断面図、(b)は同図(a)のD−D線矢視図である。
【図9】同上におけるポジションセンサの一部を切り欠いた斜視図である。
【図10】同上におけるポジションセンサの他例を示す断面図である。
【図11】同上におけるポジションセンサの他例を示す断面図である。
【図12】実施形態3のポジションセンサを備えたシリンダ装置を示し、(a)は断面図、(b)は同図(a)のE−E線矢視図である。
【図13】同上におけるポジションセンサの一部を切り欠いた斜視図である。
【図14】同上におけるポジションセンサの他例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 固定部
2 可動部
3 回路ブロック
5 検出部
6 基台(ケース)
7 被検出部
8 流路部
9 流体
14 流体収容部
50 検出コイル
53 コア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、当該固定部に所定の移動方向に移動自在に取り付けられた可動部と、固定部および可動部のいずれかに設けられ可動部と固定部の緩衝用の流体が内部に充填される流体収容部とを備える装置の流体収容部内に配置され、固定部に対する可動部の変位を検出するポジションセンサであって、
固定部および可動部のいずれか一方に固定され上記移動方向に中心軸を沿わせた形の検出コイルを少なくとも有する検出部と、固定部および可動部のいずれか他方に固定され可動部の移動により検出部に対して上記移動方向に相対変位する被検出部とを備え、
検出部と被検出部のいずれか一方は、少なくとも上記移動方向における一端が流体収容室内に連通する形に開口された筒状に形成され、検出部と被検出部のいずれか他方は、検出部と被検出部のいずれか一方に対して上記移動方向における一端から当該一方の内側に入り込む形に配置され、
検出部および被検出部の少なくとも一方には、流体収容部内に充填される流体用の流路部が形成されてなることを特徴とするポジションセンサ。
【請求項2】
被検出部は、上記移動方向における一端が開口した筒状に形成され、
検出部は、上記移動方向における一端から被検出部の内側に入り込む形に配置され、
検出コイルの内側には磁性材料からなるコアが配置されていることを特徴とする請求項1記載のポジションセンサ。
【請求項3】
流路部は、被検出部および検出部の少なくとも一方の、上記移動方向に交差する方向における他方との対向面に、上記移動方向に沿う形に形成された溝部からなることを特徴とする請求項1または2記載のポジションセンサ。
【請求項4】
溝部は、上記移動方向において上記対向面の全面に亘る形に形成されていることを特徴とする請求項3記載のポジションセンサ。
【請求項5】
流路部は、検出部に対する被検出部の位置によらずに、検出部の上記移動方向における両端側の空間部を連通する形に形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載のポジションセンサ。
【請求項6】
流路部は、コアに設けられていることを特徴とする請求項5記載のポジションセンサ。
【請求項7】
検出部と被検出部とは、上記移動方向に直交する方向において当接する形に形成されてなることを特徴とする請求項5または6記載のポジションセンサ。
【請求項8】
検出コイルに所定の周波数及び振幅の電流を出力する駆動回路部と、駆動回路部が出力した電流および検出コイルのインピーダンスにより決まる電圧信号を検出部と被検出部との位置情報を示す出力信号に変換する信号処理回路とを有する回路ブロックと、回路ブロックが上記流体に浸漬されないように収納するケースとを備えていることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項記載のポジションセンサ。
【請求項1】
固定部と、当該固定部に所定の移動方向に移動自在に取り付けられた可動部と、固定部および可動部のいずれかに設けられ可動部と固定部の緩衝用の流体が内部に充填される流体収容部とを備える装置の流体収容部内に配置され、固定部に対する可動部の変位を検出するポジションセンサであって、
固定部および可動部のいずれか一方に固定され上記移動方向に中心軸を沿わせた形の検出コイルを少なくとも有する検出部と、固定部および可動部のいずれか他方に固定され可動部の移動により検出部に対して上記移動方向に相対変位する被検出部とを備え、
検出部と被検出部のいずれか一方は、少なくとも上記移動方向における一端が流体収容室内に連通する形に開口された筒状に形成され、検出部と被検出部のいずれか他方は、検出部と被検出部のいずれか一方に対して上記移動方向における一端から当該一方の内側に入り込む形に配置され、
検出部および被検出部の少なくとも一方には、流体収容部内に充填される流体用の流路部が形成されてなることを特徴とするポジションセンサ。
【請求項2】
被検出部は、上記移動方向における一端が開口した筒状に形成され、
検出部は、上記移動方向における一端から被検出部の内側に入り込む形に配置され、
検出コイルの内側には磁性材料からなるコアが配置されていることを特徴とする請求項1記載のポジションセンサ。
【請求項3】
流路部は、被検出部および検出部の少なくとも一方の、上記移動方向に交差する方向における他方との対向面に、上記移動方向に沿う形に形成された溝部からなることを特徴とする請求項1または2記載のポジションセンサ。
【請求項4】
溝部は、上記移動方向において上記対向面の全面に亘る形に形成されていることを特徴とする請求項3記載のポジションセンサ。
【請求項5】
流路部は、検出部に対する被検出部の位置によらずに、検出部の上記移動方向における両端側の空間部を連通する形に形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載のポジションセンサ。
【請求項6】
流路部は、コアに設けられていることを特徴とする請求項5記載のポジションセンサ。
【請求項7】
検出部と被検出部とは、上記移動方向に直交する方向において当接する形に形成されてなることを特徴とする請求項5または6記載のポジションセンサ。
【請求項8】
検出コイルに所定の周波数及び振幅の電流を出力する駆動回路部と、駆動回路部が出力した電流および検出コイルのインピーダンスにより決まる電圧信号を検出部と被検出部との位置情報を示す出力信号に変換する信号処理回路とを有する回路ブロックと、回路ブロックが上記流体に浸漬されないように収納するケースとを備えていることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項記載のポジションセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−275393(P2008−275393A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117602(P2007−117602)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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