説明

ポジトロン放出断層撮影と光学式組織撮像

手術室(OR)に配置できて、腫瘍が完全に切除されたかどうかと、適切な外科的縁があるかどうか決定するためにより速いフィードバックを提供する、該撮像システムと光学式撮像との両方を単一のシステムに合体した可動式のコンパクトな撮像システム。病理学ラボから最終確認が得られるが、このような装置は処置に必要な総時間を減らし、良好な外科的縁を残しつつ腫瘍を十分に切除に必要な繰り返し数を減少できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジトロン放出断層撮影(PET)に関し、特に癌組織を除去する外科手術処置中に適切な癌組織切除および外科的縁について迅速な決定を行うための、PETと光学的撮像・システムとの合体化に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の外科手術中、重要事項の1つは、癌組織の周りに十分な外科的縁があるかを決定することである。外科医は、理想的には、癌組織の周りに適切な縁を残しつつ、しかし健康な周辺組織を取りすぎること無く、外科医は腫瘍すべてを取り除くことを望む。通常、病巣を外科手術で取り除いた後に、該組織は癌腫の周りの縁が十分であるかどうか決定するために病理学ラボに送られる。このプロセスには、腫瘍が切除されたこと、そして適切な外科的縁があるということの確認を得るのに20〜30分以上かかることがある。その間、外科医は確認を待たなければならない。縁が適切でない場合には、外科手術の決定がなされるまで、このプロセスは数回繰り返されることがあり、かなりの遊び時間が外科手術に追加されることになる。患者にとり、このプロセス処理の間に失われた時間のために、外科手術の時間が長くなり麻酔に長時間さらされることになるが、そのために病的状態が高まる恐れがある。外科手術時間が増すと、その処置のために総コストの上昇を招く恐れがある。
【0003】
したがって、癌組織の除去のための外科手術処置中に、適切な癌組織切除がなされたかどうか、適切な外科的縁があるかどうか、を決定するための方法と装置を有することが強く望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、外科手術中に、切除の後に、癌組織の境界の迅速な決定と、切除後にその周りに適切な縁が存在するかを迅速に決定するための方法と装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、PETと光学的撮像の両方を単一のシステムに結合する可動式のコンパクトな撮像システムであって、手術室(OR)に配置できて、腫瘍が完全に切除されたか、そして適切な外科的縁があるかどうか、を決定するために、迅速なフィードバックを提供する、撮像システムが提供される。病理学ラボから終検(最終確認)が得られるが、このような装置は、処置に必要な総時間と、良好な縁を残しつつ腫瘍を十分に切除するのを達成するのに必要な繰り返し回数を減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は本発明の撮像システムを部分的に仮想して示す斜視図である。
【0007】
【図2】図2は本発明の撮像システムの、サンプルトレーガイドを有する、モジュール取付けとコレジストレーション(co-registration)の取り付け台を部分的に仮想して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
F−18フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いるポジトロン放出断層撮影は、様々な癌腫を画像化するための有益な手段になることが示されて来た。多くの癌腫は正常組織と比較してグルコース代謝が高いことが示されている。FDGが静脈内に注入されると腫瘍に集中し、腫瘍が画像化されるのを可能にする。本発明の撮像システムで使用される手順(protocol)では、手術の1時間前に、患者はFDGのようなポジトロン放出放射性薬品を少量注入される。外科医が癌の病巣を取り除くと、彼または彼女は切除された組織および手術台を染料でマークして縁の分析のための方針を策定する。
【0009】
本発明のポジトロン放出断層撮影(PET)組織サンプルイメージャは切除された組織サンプル中の放射性トレーサ取込みを画像化する1対の小さいPETカメラを使用する。癌組織は、通常、サンプル中の放射性トレーサ蓄積が増加した1又は複数の焦点領域として識別される。また、本発明のPET組織サンプルイメージャは、組織サンプルのコレジストレーション(co-registration)された光学画像を得ることも可能としている。代謝性のPET画像実証放射性トレーサの蓄積は表示(display)のための光学画像上に融合される。90°の二つの異なった向きで融合した画像を評価することにより、外科医は、腫瘍の周りに正常組織の適切な縁があるか、または更に介入する必要があるか、を決定することが可能になる。この手法で、外科医は、光学画像の観察により患者内の組織の物理的位置を観測することも可能になる。このプロセスは手術室においてわずか数分で完了できるので、病理学検査を繰り返す必要性をなくす。
【0010】
ここで、添付図面を参照すると、本発明の二重様式(dual-modality)で可動式のイメージャ10は以下を含む:
1)通常(しかし、必須ではない)、10cm×20cmの視野(field of view)と、およそ1.5−3.0mmの平面の再構成解像度(planar reconstruction resolution)を示すプラナーPETイメージャ12;
2)サンプルトレーガイド14を有する、PETモジュール取付けとコレジストレーションの取付台;
3)光学カメラ16;
4)組織サンプルトレー18;
5)手術室環境と調和可能な可動式ガントリー20;
6)PETイメージャ取付台を有する、任意的なアーム22;
7)モニタ24、キーボード26、およびマウス28を伴うコンピュータ34;
8)低電圧・高電圧電源30を伴うイメージャ電子装置(electronics);
9)PETモジュール・データ収集システム32;
10)コンピュータ34にロードされたデータ収集・処理ソフトウェア;
11)コンピュータ34にロードされた画像融合ソフトウェア;および
12)UPS/絶縁変圧器(isolation transformer)36。
【0011】
本発明のプラナーPETイメージャ12ではいくつかのPET画像技術を実施できる。シンチレータ・ガンマ・センサーで吸収された511keVのガンマ線により発生したシンチレーション光の検出器として種々の光電検出器が役立つが、好ましい一般型の装置は511keVの消滅ガンマ線のセンサー/エネルギ変換器としてシンチレータを有する。シンチレータセンサは、LSO,LYSO,GSO,BGO,LaBr3,NaI(TI),CsI(TI),CsI(Na),その他のような、ピクセル化された(pixellated)または板状の結晶シンチレータ材料で作ることができる。光検出器は、標準またはマルチエレメント光電子増倍管、位置感受性で平らなパネルもしくはマイクロチャンネル・プレートに基づいている光電子増倍管、抵抗性など読み出し装置を有するアバランシェ・フォトダイオードアレイもしくは大型アバランシェフォトダイオード、または新しいいわゆるシリコン光電子増倍管の種々の変形を備えていてもよい。
【0012】
好ましいPETイメージャ技術の例としては、これらに限定されないが、次のものが挙げられる:
1)対向している検出器ヘッド12Aと12Bに基づいたイメージャであって、前記ヘッドのおのおのは、2mm×2mm×l5mm LYSOシンチレータに結合されたアレイ状の2”Hamamatsu Flat Panel Position Sensitive Photomultipliers(PSPMT)で作られていて、およそ10cm×10cmの有効視野(active field of view)を持つプラナーPETイメージャを形成する、前記イメージャと;
2)よりコンパクトでより軽い実装のためには、前記のPSPMTを、マウンテンビュー(カリフォルニア)のSensLから入手可能なもののようなSilicon PMTで置き換えることができる。
3)位置感受性APDのような他のPET同位元素適合性(isotope compatible)検出器技術、および、テルル化カドミウム亜鉛のような固体検出器材料;
4)同様の高速オンボード読み出し装置、および、マルチチャンネル・データ収集システムも使用できる。
【0013】
本発明の組織サンプル撮像システムの代表例は、実験室環境で構築されテストされた。該イメージャは甲状腺摂取探査子(thyroid uptake probe)のために当初設計されたフリー・バランス・アームを備えた、改造可動式ガントリー上で実施された。該システムは、以下の要素を含むように改造された:電子装置キャビネット・ハウジング電子装置(electronics cabinet housing electronics)、電源、およびケーブル接続;シェルフ・ハウジング・コンピュータとデータ収集ボックス;外科手術の間、とぎれない電力を保証し、電気安全緩衝を提供する医療的品質のUSB/絶縁変圧器;コンパクトなコンピュータ;並びに、操作の容易さとより清浄な環境(原則としてキーボード使用は全く必要でない)のための医療的品質のタッチスクリーン・モニタ。
【0014】
図2に示すように、本発明のこの撮像装置10の重要な特徴は、サンプルホルダ42を有するサンプルトレー18であり、これはPETイメージャ12の位置に基づいて、サンプルホルダ42の位置を案内する一対のレール40によって、2個のイメージャ/カメラ12および16と一直線に並ぶ。この装置により、PETイメージャの12Aと12Bが平行で適切な距離に分離されることが保証される。サンプルトレー14は、組織サンプルを保持するサンプルホルダ42を含んでいて、これは好ましくはラジオルーセント・ペトリ皿である。このトレーはサンプルホルダ14の内側にあるレール40で移動する。ストップ・ピン44が、組織サンプルホルダ42を、デジタル写真を撮る光学カメラ16の下に位置決めする。光学画像が取得された後に、ストップ・ピン44は引き下げられ、サンプルトレー14が、PET画像が取得されるPETイメージャ12内の中央の位置まで矢46で示された方向に平行移動させられる。PET画像は次に光学画像に合併させられタッチスクリーン・モニタ24に表示される。
【0015】
キャスターまたはホイール50を備えるカート48上に又はその中に撮像システム10を取り付けると、撮像システム10の手術室の中へ、外へ、そしてその内部での移動が可能になる。
【0016】
上記のように、手術室(OR)に配置される、可動式のコンパクトな撮像システムであって、腫瘍が完全に切除されたかどうか、そして、適切な外科的縁があるかどうか、を決定するためにより速いフィードバックを提供する撮像システムについて説明した。
【0017】
本発明を説明したように、本発明の意図している趣旨と範囲から逸脱せずに本発明を改変することができ、そのような改変のいずれもそしてすべてが添付の特許請求の範囲に含まれるべく意図されていることは、当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0018】
10 撮像システム
12 プラナーPETイメージャ
14 サンプル−トレーガイド
16 光学カメラ
18 組織サンプルトレー
20 可動式ガントリー
22 アーム
24 モニタ
26 キーボード
28 マウス
30 低電圧・高電圧電源を有するイメージャ電子装置;
32 PETモジュール・データ収集システム
34 コンピュータ
36 UPS/絶縁変圧器(isolation transformer)
40 レール
42 サンプルホルダ
44 ストップ・ピン
48 カート
50 キャスター又はホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ポジトロン放出断層撮影イメージャ、および
B)光学式イメージャ;
を備えてなり、両者は、可動カート上に搭載され、二つのモードのオーバーラップ撮像のための組織のサンプルを保持するサンプルホルダを有する、コンパクトな可動式の撮像システム。
【請求項2】
ポジトロン放出断層撮影イメージャがプラナーポジトロン放出断層撮影イメージャを含む、請求項1に係るコンパクトな可動式の撮像システム。
【請求項3】
さらに、コンピュータ;高電圧・低電圧電源を有するイメージャ電子装置;コンピュータ上のポジトロン放出断層撮影データ収集ソフト;コンピュータ上のデジタル光学的イメージング・ソフトウェア;コンピュータ上の、ポジトロン放出断層撮影画像とデジタル光学画像の融合ソフトウェア;および、可動カートにすべて組み込まれた、画像表示のソフトウェアおよびハードウェア、を含む請求項1に係るコンパクトな可動式の撮像システム。
【請求項4】
前記サンプルホルダが、
a)画像化するためのサンプルを保持するラジオルーセント・ペトリ皿;
b)サンプルホルダの内側にあるレール;および
c)レール上のラジオルーセント・ペトリ皿を、光学デジタル撮像のための光学式イメージャの下での撮像、あるいは、画像化の撮像システムのためのイメージャの撮像システムでの撮像のいずれか一方のために、位置決めする、前記サンプルホルダにある脱着可能なストップ・ピン、
を有してなり、
前記可動式ストップ・ピンは光学的撮像の後に取り除くことができ、該サンプルホルダは該撮像システムの撮像のオーバーラップの位置に平行移動させることができる、請求項3に係るコンパクトな可動式の撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−514750(P2012−514750A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545329(P2011−545329)
【出願日】平成21年9月5日(2009.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/005009
【国際公開番号】WO2010/080088
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(506200603)ジェファソン サイエンス アソシエーツ リミテッド ライアビリティ カンパニー (6)
【氏名又は名称原語表記】JEFFERSON SCIENCE ASSOCIATES,LLC
【Fターム(参考)】