説明

ポットグリッパー

【課題】バネ鋼板両四角錐枠型の保持具を用いながら、離型剤の影響を極力回避し、育苗ポットの確実な保持力を長期間維持し続けることができるポットグリッパーを提供する。
【解決手段】個々の育苗ポットPを保持する保持具5が、帯状のバネ鋼板を「く」字状に屈曲させた4本の保持片1を、その突側が外側となって四角枠状を形成するように下端部分を底板2に固定し、上端部分を非固定とし、各保持片1の弾性付勢力により育苗ポットPの内壁面PWを保持するものとされ、保持片1の内壁面PWに接触する部分に、内壁面PWに付着している離型剤を堆積させる堆積部4を備え前記離型剤を堆積部4へ掻き出す掻き出し突部3を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の育苗ポットを縦横に配列した状態で手動により、保持し又は保持解除可能なポットグリッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の育苗ポットを縦横に配列した状態で手動により、保持し又は保持解除可能なポットグリッパーは、例えば、縦4列、横6列に配列された合計24個の育苗ポットの移し替えを一度にでき、一個一個移し替えるのに比べれば、格段にその移し替えを迅速に行うことができる。
【0003】
図5は、このような本発明の背景技術であるポットグリッパーの一例を示す外観斜視図である。このポットグリッパーは、特許文献1に記載されたものを本出願人が更に改良した実施形態を示すものである。
【0004】
このポットグリッパー40(特許文献1では、「園芸用ポット移し替え装置」と称されている。)は、育苗ポットの内壁面に入り込んで保持する複数の保持具25と、配列状態の保持具25を上方から支持する保持枠26と、この保持枠26を上下移動操作するための左右一対の保持ハンドル27とを備えている。
【0005】
ポットグリッパー40は、加えて、各保持具25毎に設けられ、保持具25の中心を貫通し、保持具25に対して相対的に上下移動して、保持具25で保持された育苗ポットを離脱させる押し出し部材28と、この配列状態の押し出し部材28を保持枠26より上方で支持する支持枠29と、この支持枠29を把持するための左右一対の把持ハンドル30とを備えている。
【0006】
保持枠26の保持ハンドル27の縦軸は支持枠29を貫通して、その上方に伸び出した状態で、水平部分で連結されている。保持ハンドル27の縦軸部分の外側には、保持枠26と支持枠29とを離間させるように付勢するスプリング31が嵌め入れられ、図示の保持具25と押し出し部材28の上下近接状態を保持している。
【0007】
保持具25は、帯状のバネ鋼板を「く」字状に屈曲させた4本の保持片21を、その突側が外側となって四角枠状を形成するように下端部分を底板22に固定し、上端部分を非固定とし、前記各保持片21の弾性付勢力により育苗ポットの内壁面を保持するものである。 このタイプの保持具25を、その形状が、概略、二つの四角錐の底部を連結させた形状となる所から、バネ鋼板両四角錐枠型の保持具25と名付ける。
【0008】
この保持具25の底板22がパイプ状の連結筒25aにより保持枠26に固定支持されている。また、押し出し部材28は、前記連結筒25aの中空部分を貫通する連結棒28aにより支持枠29に固定支持されている。一対の把持ハンドル30はそれぞれの中央部分で把持連結軸32により連結されている。
【0009】
このような構成のポットグリッパー40によれば、この状態のグリッパー40の把持ハンドル30を両手で持ち、配列積層されている育苗ポットの収容部にそれぞれの保持具25が入るようにして自重程度に育苗ポットに押し付けた後、把持ハンドル30を持ち上げれば、最上層の各1個の育苗ポットが一度に24個保持され、持ち上げられる。
【0010】
その後、所定の移し替え場所にある育苗トレー等の上方に移動させて、把持ハンドル30に対して保持ハンドル27を近づけるように操作すれば、保持枠26と支持枠29とが近づき、結果として相対的に保持具25に対して押し出し部材28が突出して、各保持された育苗ポットを離脱させて育苗トレーのそれぞれの収容部に収容させることができ、育苗ポットの移し替え作業の大幅な労力軽減を図ることができる。
【0011】
また、このポットグリッパー40の保持具25がバネ鋼板両四角錐枠型であって、保持片21の底板22側は固定されているが上端部分は固定されていないので、保持片21は、いわば底板22から張り出した片持ち梁状態となっており、この保持片21の突側が育苗ポットの内壁面に当接して、素材のバネ鋼板の適度な弾性力によって前記内壁面を適度に変形させながら接触することで、確実なポット保持力を確保している。
【0012】
しかしながら、このポットグリッパー40によれば、多数回繰り返して育苗ポットの移し替えを行う内に、育苗ポットの内壁面に塗布された離型剤(型離れを良くするもので、滑りを良くする働きがある。)が保持片21の表面に付着堆積し、確実な保持力をわずかに弱めることがあって、場合によっては、定期的な離型剤の拭き取りが必要となって、改良が求められていた。
【0013】
図6は、本発明の背景技術であるポットグリッパーの他例を示すもので、(a)はその側面図、(b)はその保持具の拡大平面図、(c)は(b)の側面図である。このポットグリッパー60は、特許文献2に記載されたものである。
【0014】
このポットグリッパー60は、図5のポットグリッパー40のそれぞれ保持具25、保持枠26、保持ハンドル27、押し出し部材28、支持枠29、把持ハンドル30及びスプリング31に対応する保持具45、保持枠46、保持ハンドル47、押し出し部材48、支持枠49、把持ハンドル50及びスプリング51を備えている。
【0015】
このポットグリッパー60においては、保持枠46が支持枠49より上にあり、保持具45と保持枠46とを連結する連結棒45aが支持枠49と保持枠46とを貫通して突出している。スプリング51は、この連結棒45aの上端と保持枠46との間に嵌め込まれ、両者間に付勢力を与えて、保持具45と押し出し部材48との図示の近接状態を保持している。
【0016】
このような構成で、このポットグリッパー60によれば、把持ハンドル50に保持ハンドル47を近づけるように操作すれば、相対的に保持具45に対して押し出し部材48が突出し、保持されていた育苗ポットを離脱させることができる。
【0017】
また、このポットグリッパー60においては、押し出し部材48を支持枠49に支持固定する連結軸48aが、保持具45の保持片41の間を通過する二本のものとなっている。
【0018】
加えて、このポットグリッパー60においては、図6(b)、(c)に示すように、保持具45がウレタン等の発泡性樹脂性の4つの保持片41を中心部分の支柱42に組み付けた構成で、保持片41の育苗ポットの内壁面に接触する面には、微細な凸凹が不規則に密集して形成された鑢状の表面をもつシート体43が貼着されている(特許文献2の段落[0064])。
【0019】
このような構成で、このポットグリッパー60によれば、「この鑢状に形成された面が育苗ポットの内面と接触することになり、鑢状に形成された面が滑り止めとなって、その接触部分が育苗ポットの内面にしっかりと引っ掛かり、・・・確実に育苗ポットを把持することができる。」と特許文献2に記載されている(段落[0065])。
【0020】
しかしながら、このような微細な凸凹が密集して形成された鑢状の表面では、育苗ポットの内面に塗布された離型剤が堆積すると目詰まりを生じ、把持効果を低減させるのではないか、と思われた。
【特許文献1】特許第3387067号公報(図13、図14)
【特許文献2】特開2006−94765号公報(図1、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記問題を解決しようとするもので、バネ鋼板両四角錐枠型の保持具を用いながら、離型剤の影響を極力回避し、育苗ポットの確実な保持力を長期間維持し続けることができるポットグリッパーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1記載のポットグリッパーは、複数の育苗ポットを縦横に配列した状態で手動により、保持し又は保持解除可能なポットグリッパーであって、
個々の育苗ポットを保持する保持具が、帯状の弾性材板を「く」字状に屈曲させた4本の保持片を、その突側が外側となって四角枠状を形成するように下端部分を底板に固定し、上端部分を非固定とし、前記各保持片の弾性付勢力により前記育苗ポットの内壁面を保持するものとされ、
前記保持片の前記内壁面に接触する部分に、前記内壁面に付着している離型剤を堆積させる堆積部を備え前記離型剤を前記堆積部へ掻き出す掻き出し突部を設けたことを特徴とする。
【0023】
請求項2記載のポットグリッパーは、請求項1に従属し、掻き出し突部が、保持片に外挿されたチューブの外周に切り溝を設けたものであることを特徴とする。
【0024】
請求項3記載のポットグリッパーは、請求項1に従属し、掻き出し突部が、バネ鋼板製の保持片の内側から外側へドリル穴加工した際に生じる穴加工バリであることを特徴とする。
【0025】
請求項4記載のポットグリッパーは、請求項1に従属し、掻き出し突部が、保持片の外周に、あるいは、前記保持片に外挿されたチューブの外周に、間隔を置いて巻き付けられた糸状体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載のポットグリッパーによれば、複数の育苗ポットを縦横に配列した状態で手動により、保持し又は保持解除可能なポットグリッパーであって、
個々の育苗ポットを保持する保持具が、帯状の弾性材板を「く」字状に屈曲させた4本の保持片を、その突側が外側となって四角枠状を形成するように下端部分を底板に固定し、上端部分を非固定とし、前記各保持片の弾性付勢力により前記育苗ポットの内壁面を保持するものとされ、前記保持片の前記内壁面に接触する部分に、前記内壁面に付着している離型剤を堆積させる堆積部を備え前記離型剤を前記堆積部へ掻き出す掻き出し突部を設けたので、
バネ鋼板両四角錐枠型の保持具を用いながら、離型剤の影響を極力回避し、育苗ポットの確実な保持力を長期間維持し続けることができる。
【0027】
請求項2記載のポットグリッパーによれば、請求項1の効果に加え、掻き出し突部が、保持片に外挿されたチューブの外周に切り溝を設けたものであるので、請求項1の効果を実現するポットグリッパーを簡易に実現することができる。
【0028】
請求項3記載のポットグリッパーによれば、請求項1の効果に加え、掻き出し突部が、バネ鋼板製の保持片の内側から外側へドリル穴加工した際に生じる穴加工バリであるので、穴加工バリの尖り先による引っ掛かり効果も育苗ポットの保持に寄与する。
【0029】
請求項4記載のポットグリッパーによれば、請求項1の効果に加え、掻き出し突部が、保持片の外周に、あるいは、前記保持片に外挿されたチューブの外周に、間隔を置いて巻き付けられた糸状体であるので、請求項1の効果を実現するポットグリッパーを簡易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明の実施の形態(実施例)について、図面を用いて説明する。
<実施形態1>
図1(a)は、本発明のポットグリッパーの一例を示す外観斜視図、(b)は(a)の保持具部分の拡大正面図、図2(a)は、図1の保持具の保持片の要部拡大縦断面図である。
【0031】
このポットグリッパー15は、複数の育苗ポットPを縦横に配列した状態で手動により、保持し又は保持解除可能なポットグリッパー15であって、その基本的な構成は、後述するように図5のポットグリッパー40と同様であり、保持具5の4つの保持片1に堆積部4を備えた掻き出し突部3を設けたことを特徴とする。以下、詳しく説明する。
【0032】
ポットグリッパー15の個々の育苗ポットPを保持する保持具5は、帯状のバネ鋼板を「く」字状に屈曲させた4本の保持片1を、その突側が外側となって四角枠状を形成するように下端部分を底板2に固定し、上端部分を非固定とし、各保持片1の弾性付勢力により育苗ポットPの内壁面PWを保持するもので、バネ鋼板両四角錐枠型である。
【0033】
その特徴とする掻き出し突部3は、保持片1の内壁面PWに接触する部分に、内壁面PWに付着している離型剤を堆積させる堆積部4を備え、前記離型剤を堆積部4へ掻き出すを働きをするものである。
【0034】
ここで、この実施態様1の場合、図1(b)に、更に詳しくは図2(a)に示すように、掻き出し突部3は、保持片1に外挿されたチューブ3aの外周に切り溝4aを設けて構成されたものである。
【0035】
つまり、外側突の「く」字状の保持片1に外周に切り溝4aを設けたチューブ3aを外挿すると、この切り溝4aは外側突部分で自然と開口し、こうして、開口した凹部分が離型剤を堆積させる堆積部4となり、この堆積部4に挟まれた凸部分が育苗ポットPの内壁面PWに塗布された離型剤を堆積部4へ掻き出す掻き出し突部3となるのである。
【0036】
ポットグリッパー15の基本的構成は、保持具5の上記の特徴以外は、図5のポットグリッパー40と共通し、同グリッパー40の保持枠26、保持ハンドル27、押し出し部材28、支持枠29、把持ハンドル30及びスプリング31に相当する保持枠6、保持ハンドル7、押し出し部材8、支持枠9、把持ハンドル10及びスプリング11を備えている。
【0037】
また、ポットグリッパー15は、同グリッパー40の連結筒25a、連結棒28a及び把持連結軸32に相当する連結筒5a、連結棒8a及び把持連結軸12を備えている。
【0038】
このような構成で、このポットグリッパー15は、図5のポットグリッパー40と同様に、配列積層されている育苗ポットの最上層の各1個の育苗ポットを一度に24個、手動により、保持し、その後に保持解除して移し替えることができ、この移し替え作業を格段に迅速に行うことができるものである。
【0039】
加えて、このポットグリッパー15は、その保持具5の基本形態が、図5の保持具25と同様のバネ鋼板両四角錐枠型であり、保持具5が、図1(b)に示すように、育苗ポットPの収容部分に挿入された際には、片持ち梁状態の保持片1の弾性付勢力により、通常四角形の開口を持つ育苗ポットPの各コーナー部分の内壁面PWを部分的に突状に変形させることにより、確実にかつ安定して、育苗ポットPを保持することができる。
【0040】
更に、このポットグリッパー15は、その保持具5の各保持片1に堆積部4を備えた掻き出し突部3(この態様では、保持片1に外挿されたチューブ3aの外周に切り溝4aを設けたもの)が備えられているので、多数回育苗ポットPの移し替えを行っても、内壁面PWに塗布された離型剤は、掻き出し突部3で堆積部4に掻き出され、掻き出し突部3の表面(内壁面PWに接触する部分)には堆積せず、離型剤の影響を受けることが少なくなる。
【0041】
また、こうして設けられた堆積部4は、背景技術であるポットグリッパー60の微細な凸凹が密集して形成された鑢状の表面で得られる微細な凹所に比べると、格段に大きな凹所となるので、長期間の多数回の育苗ポットPの移し替えを行っても、離型剤が堆積部4を充填し尽くして突部3側にあふれるということがなく、掻き出し突部3の保持力が低下することがない。
【0042】
また、この切り溝4aで形成される堆積部4は、内壁面PWに向かい合う方向と直交方向には開口しているので、堆積部4に堆積した離型剤は、掻き出し突部3に影響を与えない側方から順次、落下するものと思われ、この点も、離型剤の影響を少なくすることができる理由のひとつと考えられる。
【0043】
背景技術のポットグリッパー60では、微細な凸凹が密集して形成された鑢状の表面であるので、内部側の微細な凹所からの離型剤の側方、つまり、凸側に影響を与えない側への落下は考えにくい。
【0044】
また、本発明のポットグリッパー15では、保持具5は片持ち梁状態の保持片1の「く」字状突側という、より弾性力の変動が少なく、また、変動に素早く対応できる部分に、堆積部4を備えた掻き出し突部3を設けているので、掻き出し突部3がより良く育苗ポットPの内壁面PWに追従接触して、この内壁面PW表面に付着した離型剤を確実に掻き出すことができるものと考えられる。
【0045】
つまり、本発明のポットグリッパー15は、上記堆積部4を備えた掻き出し突部3の基本的効果に加え、バネ鋼板両四角錐枠型の保持具を用いながら、その片持ち梁状の保持片1の突部分(内壁面PWへの接触部)がより弾性変形対応性がよいということを見出し、その保持片1の内壁面PWへの接触部分に、堆積部4を備えた掻き出し突部3を設けることで、双方の特性の単なる組み合わせ以上の効果が発揮されることを更に見い出したものである。
【0046】
本出願人の試験の結果、本発明のポットグリッパー15を用いたテスト使用によれば、従来の堆積部4も、掻き出し突部3も備えていない保持具25を用いたポットグリッパー40に比べ、より長期間安定して育苗ポットの確実な保持を維持することができた。
【0047】
つまり、本発明のポットグリッパー15は、バネ鋼板両四角錐枠型の保持具5を用いながら、離型剤の影響を極力回避し、育苗ポットの確実な保持力を長期間維持し続けることができる。
【0048】
なお、図1(b)の保持片1の上端部分は短寸の折り返し形状となっており、この折り返しの上端部分に見えるリング5bは、4本の保持片1の前記上端部分を纏める役割を持つもので、連結筒5aに対して、この上端部分の上下移動を拘束するものではなく、もちろん、その上端部分を固定するものでもない。
【0049】
また、保持片1の上端部分の上の連結筒5aの外周には、二点鎖線の想像線で示したように、コイルスプリング5cを嵌めるようにしてもよい。このコイルスプリング5cは、保持片1の上端部分と保持枠6の裏面側との間に介在して、保持片1が「く」字状の角度が大きくなるように変形するのを一定阻止して、保持片1の弾性付勢力を補助するものである。
【0050】
更に、底板2と保持片1の上端部分の下方との間の連結筒5aの外周に、二点鎖線の想像線で示したように、樹脂製のチューブ5dを外挿するようにしてもよい。このチューブ5dは、逆に、必要に応じて保持片1が「く」字状の角度が狭くなり、突側が突出過ぎるのを制御する役割を果たすものである。
【0051】
なお、保持片の下端と底板の固定は、この形態では、バネ鋼板として一体的に構成したものであるが、保持片と底板とを別個に製作して、後に保持片を底板に鋲止め、ネジ止め、溶接、嵌め込み等の方法で固定しても良い。
【0052】
また、バネ鋼板と同等の弾性及び剛性を備えるものであれば、保持片及び底板を高強度合成樹脂で製造してもよく、また、樹脂成形する際に、芯金としてバネ鋼板を使用して保持片と底板とを一体樹脂成形するようにしても良い。
【0053】
つまり、本発明の保持片の素材としては、バネ鋼板だけに限定されず、弾性を有するもので構造的に強く、疲労強度の高い、一般に弾性材と称されるものであれば良く、この弾性材には、バネ鋼板と樹脂を一体化したものなどの複合材も含まれる。
【0054】
また、チューブ3aの素材としては、よごれが付きにくい表面特性を備えたシリコンゴムが離型剤の付着をより良く回避できるので好適であるが、これに限らず、同様な特性をもつものであれば、その素材として採用することができる。
【0055】
また、この形態では、図1(a)、図2(a)でも解るように、チューブ3aには、育苗ポットPの内壁面PWに接触する部分以外にも余分に切り溝4aが設けられている。このようにすると、たとえ幾分かチューブ3aが保持片1に対して上下移動しても、いずれかの切り溝4aが育苗ポットPの内壁面PWに接触する部分となり、掻き出し突部3、堆積部4を確保することができる。
<実施形態2>
図2(b)及び図3(a)、(b)は、本発明のポットグリッパーの他例の保持片の要部拡大縦断面図である。これより、既に説明した部分と同じ部分には同じ符号を付して、重複説明を省略する。
【0056】
図2(b)の保持具5Aは、そのバネ鋼板を素材とする保持片1Aの内側から外側へドリル穴加工した際に生じる穴加工バリ3Aを掻き出し突部3Aとしたものである。
【0057】
この場合は、この掻き出し突部3Aの周縁近傍の保持片1Aの平坦部分が掻き出し突部3Aで掻き出された離型剤を堆積させる堆積部4Aとなる。
【0058】
この保持具5Aの場合も、図2(a)の保持具5と同様に、掻き出し突部3A、堆積部4Aは、離型剤の影響を回避するという機能を発揮する。
【0059】
よって、この保持具5Aを備えたポットグリッパーによれば、図1のポットグリッパー20と同じ効果を発揮することができる。
【0060】
加えて、この保持具5Aを備えたポットグリッパーによれば、穴加工バリ3Aの先端が尖っているので、その尖り先による引っ掛かり効果も育苗ポットの保持に寄与するものと思われる。
【0061】
また、この形態における堆積部4Aは、側方に離型剤が移動するのを阻止するものがないので、堆積した離型剤がより早く落下散逸するものと思われる。
【0062】
図3(a)の保持具5Bと、図3(b)の保持具5Cとは、いずれも糸状体3B、3Cを間隔を置いて保持片1の外周に巻きつけて、この糸状体3B、3Cによる凸部分が掻き出し突部3B、3Cとなり、糸状体3B、3Cを巻きつけていない部分が相対的に凹部となって堆積部4B、4Cを構成している点で共通している。
【0063】
従って、この保持具5B、5Cも、図2(a)の保持具5と同様に、掻き出し突部3B、3C、堆積部4B、4Cは、離型剤の影響を回避するという機能を発揮する。
【0064】
よって、この保持具5B、5Cを備えたポットグリッパーによれば、図1のポットグリッパー20と同じ効果を発揮することができる。
【0065】
一方、保持具5Bと保持具5Cとを比べると、保持具5Bは、糸状体3Bを予めチューブ3bに巻きつけて固着し、そのチューブ3bを保持片1に外挿したものであるが、保持具5Cは、直接、糸状体3Cを保持片1に巻き付け固着させている点で異なっている。
【0066】
保持具5Bの場合は、先にチューブ3bに糸状体3Bを巻き付け固着して用意しておいて、組立時に保持片1に外挿するだけでよいので、組立が簡単になるという効果が発揮される。
【0067】
保持具5Cの場合は、糸状体3Cを直接保持片1に巻き付け固着するので、チューブ3bを節約できるという効果が有る。
【0068】
なお、保持具5Bで用いるチューブ3bは、直接、育苗ポットPの内壁面PWに接触するものではないので、図2(a)のチューブ3aのようなよごれが付きにくい表面特性は不要で、そのような制限のない素材も使うことができ、より広い範囲でより安価な素材のチューブとすることができる。
【0069】
また、保持具5B、5Cでは、糸状体3B、3Cをらせん状にかつ交差するように巻き付けているが、交差させずに単なるらせん状に巻き付けてもよい。
【0070】
更に、糸状体3B、3Cを保持片1(あるいはチューブ3b)に巻き付ける方法としては、育苗ポットPの内壁面PWに接触する側では、糸状体3B、3Cを、らせん状ではなく、保持片1の長手方向に直交する方向に間隔を置いて平行に巻き付け、非接触側ではらせん状に巻き付けるようにすることも可能である。
【0071】
このような接触側で水平方向に平行となるように巻き付けるようにすると、糸状体3B、3Cが水平状態で育苗ポットPの内壁面PWに接触するので、水平方向に均等に離型剤を掻き取ることができることが推測される。
<実施形態3>
図4は、本発明のポットグリッパーを備えた自動ポットグリッパー装置の一例を示すもので、(a)は、その側面図、(b)は、その要部拡大斜視図である。
【0072】
この自動ポットグリッパー装置20は、図1のポットグリッパー15から保持ハンドル7と把持ハンドル10とを除去したポットグリッパー15Aを備え、そのポットグリッパー15A全体の昇降と、保持枠6に対する支持枠9の昇降(近接離間)を自動化したものである。
【0073】
ポットグリッパー15Aの保持枠6は、枠体19の昇降可能な上下昇降枠19a上に載せられて固定され、支持枠9には、補助上下移動手段(例えば、空気圧シリンダ)17が備えられて、この支持枠9が保持枠6に対して、手動の時と同様に近接離間移動(昇降)可能となっている。
【0074】
上下昇降枠19aは、主上下移動手段(例えば、空気圧シリンダ)16によって、枠体19に対して昇降可能となっている。また、枠体19には不図示のトレー出し入れ手段が設けられている。
【0075】
枠体19には、また、配列積層された育苗ポットP(育苗トレーに収容されている。)を載せるポット台19bが設けられている。このポット台19bには、ここに載せるべき配列積層された育苗ポットPの位置決めをする位置決めガイド19cが設けられている。
【0076】
このような構成で、この自動ポットグリッパー装置20は、ポットグリッパー15Aを下降させて、各保持具5を配列積層された育苗ポットPの各収容部分に入れ込み、最上層の各1個の育苗ポットを一度に24個保持した後、ポットグリッパー15Aを上昇させる。
【0077】
次に、装置20は、トレー出し入れ手段で、保持した状態の各育苗ポットPの真下となる位置に育苗トレーを位置させ、ポットグリッパー15Aを下降させて、適当な位置で、支持枠9を保持枠6に近接させて、各保持された育苗ポットPを各保持具5から離脱させて育苗トレーに自動的(機械的に)移し替えることができる。
【0078】
ここで、この自動ポットグリッパー装置20は、育苗トレーに収容され、配列積層された育苗ポットPを簡易に外部からポット台19bへ滑り込ませることを可能とするシューター18を備えていることを特徴とする。
【0079】
このシューター18は、ポット台19bの位置決めガイド19cで決められた位置に向けて傾斜するように設置されたシューター板18aと、このシューター板18a上に設けられ、配列積層された育苗ポットPの滑り方向に対する左右位置をガイドする左右ガイド18bとを備えている。
【0080】
このような構成のシューター18によれば、シューター18の上に、左右ガイド18bの間に入るように、育苗トレーに収容され配列積層された育苗ポットPを載せるだけで、あるいは、載せた後に軽く押すだけで、配列積層された育苗ポットPをポット台19bの位置決めガイド19c内に容易に滑り込ませ、位置させることができる。
【0081】
このシューター18は、トレー出し入れ手段の邪魔にならないようにすれば、枠体19の前後左右のどの位置に設けてもよいものである。
【0082】
なお、本発明のポットグリッパーは、上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能である。
【0083】
また、ポットグリッパーとは、縦横に配列された育苗ポットを手動あるいは半手動(半自動)で一時的にその配列状態のままで保持し、または、保持解除することができる装置を意味するもので、いわゆるポット移し替え装置や、ポット詰替装置等と称されるものを含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のポットグリッパーは、バネ鋼板両四角錐枠型の保持具を用いながら、離型剤の影響を極力回避し、育苗ポットの確実な保持力を長期間維持し続けることが要請される産業分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】(a)は、本発明のポットグリッパーの一例を示す外観斜視図、(b)は(a)の保持具部分の拡大正面図
【図2】(a)は、図1の保持具の保持片の要部拡大縦断面図、(b)は、本発明のポットグリッパーの他例の保持片の要部拡大縦断面図
【図3】(a)、(b)は、本発明のポットグリッパーの他例の保持片の要部拡大縦断面図
【図4】本発明のポットグリッパーを備えた自動ポットグリッパー装置の一例を示すもので、(a)は、その側面図、(b)は、その要部拡大斜視図
【図5】本発明の背景技術であるポットグリッパーの一例を示す外観斜視図
【図6】本発明の背景技術であるポットグリッパーの他例を示すもので、(a)はその側面図、(b)はその保持具の拡大平面図、(c)は(b)の側面図
【符号の説明】
【0086】
1、1A 保持片
2 底板
3 掻き出し突部
3A 穴加工バリ(掻き出し突部)
3B 糸状体(掻き出し突部)
3a チューブ
3b チューブ
4〜4C 堆積部
4a 切り溝
5〜5C 保持具
15 ポットグリッパー
20 自動ポットグリッパー装置
P 育苗ポット
PW 内壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の育苗ポットを縦横に配列した状態で手動により、保持し又は保持解除可能なポットグリッパーであって、
個々の育苗ポットを保持する保持具が、帯状の弾性材板を「く」字状に屈曲させた4本の保持片を、その突側が外側となって四角枠状を形成するように下端部分を底板に固定し、上端部分を非固定とし、前記各保持片の弾性付勢力により前記育苗ポットの内壁面を保持するものとされ、
前記保持片の前記内壁面に接触する部分に、前記内壁面に付着している離型剤を堆積させる堆積部を備え前記離型剤を前記堆積部へ掻き出す掻き出し突部を設けたことを特徴とするポットグリッパー。
【請求項2】
掻き出し突部が、保持片に外挿されたチューブの外周に切り溝を設けたものであることを特徴とする請求項1記載のポットグリッパー。
【請求項3】
掻き出し突部が、バネ鋼板製の保持片の内側から外側へドリル穴加工した際に生じる穴加工バリであることを特徴とする請求項1記載のポットグリッパー。
【請求項4】
掻き出し突部が、保持片の外周に、あるいは、前記保持片に外挿されたチューブの外周に、間隔を置いて巻き付けられた糸状体であることを特徴とする請求項1記載のポットグリッパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−89654(P2009−89654A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263644(P2007−263644)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(593049914)株式会社東海化成 (20)
【Fターム(参考)】