説明

ポペット形減圧弁

【課題】ポペット弁の圧力バランスをとることで、二次圧の大気圧近くまで低下した場合や、規定以上に一次圧が上昇した場合にも一次圧により閉弁する力が強くなることの無いようにした減圧弁を提供する。
【解決手段】弁本体11、弁本体11に穿設された一次ポート12、二次圧を吐出する二次ポート13、一次ポート12から二次ポート13に流れる作動油の流れを規制するポペット弁14、シート部材15、ポペット弁14を開閉する操作ロッド16、二次ポート13の二次圧を受圧して操作ロッド16を閉弁方向へ付勢する受圧部材17、ポペット弁14の開弁方向の弾性付勢力を与えるばね部材19と、受圧部材17の内部に圧力室25を構成するためのピストン26、ばね部材27を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーク量の低減や二次側から一次側への自由流れが可能なポペット形(シート形)減圧弁に関し、さらに詳細には一次圧が変動しても二次圧が変動しないようにしたことを特徴とするポペット形減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポペット形減圧弁においては、二次圧が制御され二次圧が発生している状態で、二次圧が急に大気圧近くまで低下した場合や、規定以上に一次圧が上昇した場合には、一次圧により閉弁する力が強くなる。このため、ポペットシート面の断面積を小さくして、付勢機構のスプリング力を強くし、受圧部材の外径も比較的大きくする必要があった。このため、減圧弁の大きさに比較して圧力損失が大きいという問題があった。また、可動弁体(ポペット)のシート部面積の一次ポート側には一次圧が加わり、二次ポート側には二次圧が加わることで圧力バランスがとれていなく、二次圧が一次圧の変動の影響を受ける問題もあった。
【0003】
この解決方法として、可動弁体(ポペット)の中に小径弁を設けることで二次圧が極端に低下した場合にも、比較的小型の付勢機構で小径弁を先に開き二次圧がある程度上昇した時点で可動弁体を開くようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−51727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では細かったロッドがますます細くなり、挫屈や折損の心配がある。また、二次圧が一次圧の変動の影響を受けることに対する本質的な問題の解決には至っていない。
【0005】
本発明は、係る課題を解決するためになされたもので、可動弁体(ポペット)の圧力バランスを図り、二次圧により受圧部材に発生する閉弁方向の力と開弁方向の力を付加する付勢機構の弾性力の強弱だけの関係により可動弁体(ポペット)の開閉を行うことで、一次圧の影響を無くし、かつ二次圧が急に大気圧近くまで低下した場合や、規定以上に一次圧が上昇した場合にも一次圧により閉弁する力が強くなることの無いポペット形減圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、弁本体と、
前記弁本体に設けられ一次ポートから二次ポートへの流体の流れを制限するポペット弁と、
前記ポペット弁に隣接して設けられたシート部材と、
前記ポペット弁に当接し該ポペット弁を押し開くことのできる操作ロッドと、
二次圧を受圧して前記操作ロッドを閉弁側へ付勢する受圧部材と、
前記操作ロッドに予め設定した弾性力を開弁方向に付加する付勢機構と、
を備え、一次ポートに導入された一次圧を減圧し二次圧として二次ポートに出力するポペット形減圧弁において、
前記受圧部材内に圧力室を設け、該圧力室と一次ポートとを連通することにより、一次圧が変動しても二次圧が変動しないようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、弁本体と、前記弁本体に設けられ一次ポートから二次ポートへの流体の流れを制限するポペット弁と、前記ポペット弁に隣接して設けられたシート部材と、前記ポペット弁に当接し、該ポペット弁を押し開くことのできる操作ロッドと、二次圧を受圧して前記操作ロッドを閉弁側へ付勢する受圧部材と、操作ロッドに予め設定した弾性力を開弁方向に付加する付勢機構を備え、一次ポートに導入された一次圧を減圧し二次圧として二次ポートに出力するポペット形減圧弁において、受圧部材内に圧力室を設け、該圧力室と一次ポートを連通することで一次圧の影響を低減し二次圧が制御され二次圧が発生している状態で二次圧が急に大気圧近くまで低下した場合や、規定以上に一次圧が上昇した場合にも閉弁する力が強くなり開弁できなくなる心配がなく、ポペット弁のシート面の断面積を無理に小さくしたり、付勢機構の弾性力を強くする必要もなく、受圧部材の外径も比較的大きくする必要もなく、圧力損失も小さい減圧弁にすることができる。また、ロッドも強度的に必要十分な太さを確保できるため挫屈や折損の心配もないものにすることが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、規定以上に一次圧が上昇した場合にも閉弁する力が強くなり開弁できなくなる心配がなく、ポペット弁のシート面の断面積を無理に小さくしたり、付勢機構の弾性力を強くする必要もなく、受圧部材の外径も比較的大きくする必要もなく、圧力損失も小さい減圧弁にすることができる。また、ロッド部材も強度的に必要十分な太さを確保できるため挫屈や折損の心配もないものにすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のポペット形減圧弁につき、好適な実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施に形態に係るポペット形減圧弁10の概略構造を示す略縦断面図である。
図1において、ポペット形減圧弁10は、基本的には弁本体11と、前記弁本体11に穿設されて一次圧を導入する一次ポート12と、二次圧を吐出する二次ポート13と、一次ポート12から二次ポート13に流れる作動油の流れを規制するポペット弁14と、前記ポペット弁14に隣接して設けられた円筒形状のシート部材15と、ポペット弁14を開閉する操作ロッドされた開弁方向の16と、二次ポート13の二次圧を受圧して前記操作ロッド16を閉弁方向へ付勢する受圧部材17と、予め設定弾性付勢力を与えるリテーナ部材18と、を備える。
【0010】
さらに、二次圧設定用のばね部材19と、調整ねじ20と外部漏れ防止用のOリング(図示しない)及び摺動性向上のためのスリーブ21と一次圧を操作ロッド16と一体化した受圧部材17の内部に導くための本体内一次圧導入孔22とスリーブ内一次圧導入孔23と受圧部材17内の受圧部材内一次圧導入孔24と受圧部材17の内部に圧力室25を構成するためのピストン26、ポペット用予圧ばね部材27などを備えている。
【0011】
一次ポート12に連通する開口穴29には前記ポペット弁14が摺動自在に嵌挿されており、図3に示すように該ポペット弁14は一端が有底の略矩形状であって、四隅が開口穴29に摺動自在に嵌挿され、かつ矩形状の四面は開口穴29に対して空間を有し、内部に前記ポペット用予圧ばね部材27が装着されている。前記開口穴29に連通する段付穴30(図1参照)には円筒形状である前記シート部材15が装着されている。ポペット弁14の一端には樹脂性のシール部材31が設けられている。
段付穴30に連通する大径孔32には円筒形状の前記スリーブ21が嵌挿されており、該スリーブ21の長手方向の略中央には一次ポート12に連通する前記スリーブ内一次圧導入孔23が半径方向に穿設され、先端(図1で左端)には二次ポート13に連通するスリーブ内二次圧吐出孔34が半径方向に穿設されている。
【0012】
図4に示すように、スリーブ21に摺動自在に嵌挿された前記受圧部材17は一側が円錐形状を有し、先端が小径の前記操作ロッド16が設けられており、該操作ロッド16の先端がポペット弁14に当接している。一方、受圧部材17は内孔36を設けた円筒形状の圧力室25になっており、該圧力室25に前記ピストン26が摺動自在に嵌挿されている。
また、前記スリーブ21の一端(図1で右端)は弁本体11に螺着する円筒形状のアダプタ37に当接して、該弁本体11に装着されている。
【0013】
アダプタ37に形成された開口室38には前記ばね部材19が装着されている。ばね部材19は開口室38(図1参照)に嵌挿された前記ピストン26にガイドされており、一端が前記リテーナ部材18に当接し、他側が開口室38に係合するピストン26の段付部39に当接している。なお、前記調整ねじ20はアダプタ37に軸心方向に移動可能に設けられ一端がピストン26の段付部39に当接するようになっていて、ナット40により調整ねじ20が位置決めされている。
【0014】
図1において、シール部材31は樹脂性材料を使用しているが、若干の漏れ量が許容される場合は、図2に示すようにポペット弁14とシート部材15との接合面のシール機構をポペット弁14のテーパ面にシート部材15のエッジにてシールする構造にしてもよい。また、スリーブ21は摺動性の向上と製作の都合上、組み付けしているものであるが、スリーブ21を廃止して受圧部材17と弁本体11とを直接摺動させても勿論よい。
【0015】
ここで、図3で、ポペット弁14の圧力バランスについて説明すると、網状のハッチング部分41,42は、シート面の大きさ表している。完全にシートする直前(流量はほとんど“0”)で考えると、網状のハッチングの無い部分は、図3の右側、左側ともに一次圧であり、この部分では、バランスがとれている。一方、網状のハッチングの部分41,42において、左側41には一次圧が加圧されており、右側42には二次圧が加圧さている。このため、一次圧と二次圧に差がある場合は、網状のハッチングの面積と圧力差の積の力で、ポペット弁14をシート部材15側に押し付けることになる。この押し付ける力が一次圧と二次圧の圧力差に関係するため、二次圧設定用のばね部材19の弾発力が一定でも一次圧の変化で二次圧が変化することになる。
【0016】
本発明の実施の形態に係るポペット形減圧弁10による構成では、受圧部材17内にシート部断面積と同じ断面積を持つ圧力室25を設け、この圧力室25と一次ポート12を連通しているので、この圧力室25に発生する開弁方向の力と図3の網状のハッチングの部分41に一次圧が加圧されて発生する閉弁方向の力は同じになり、一次圧はポペット弁14を閉弁方向にも開弁方向にもしないことになる。実際には、ポペット弁14と操作ロッド16は、別部材であるため複雑であるが、ここでは、ポペット弁14が開くか閉じるかの境界部分での力のバランスから一次圧の影響を受けない構造であることを説明する。
【0017】
一次圧をP1,ポペット弁14の断面積をA1(図3参照)、ポペット弁14のシール部材31の断面積A2(図3参照)、受圧部材17の断面積をA3(図1参照)、圧力室25の断面積をA4(図1参照)、二次圧設定用のばね部材19の弾発力をFsとすると,
二次圧P2は次のようになる。
ポペット弁14を開こうとする力Foは
Fo=Fs+A2×P2+(A1−A2)×P1+A4×P1
ポペット14弁を閉じようする力Fcは、
Fc=A1×P1+A3×P2
以上により、ポペット弁14がバランスする条件は、
Fs+A2×P2+(A1−A2+A4)×P1=A1×P1+A3×P2・・・(1)
ここで、A2とA4を同じ面積として、(1)式のA4にA2を代入してまとめると、
Fs=A3×P2−A2×P2 より Fs=(A3−A2)×P2
よって、二次圧は、P2=Fs/(A3−A2)となり、二次圧P2は、一次圧P1の影響を受けなくなる。
なお、ここでは、ポペット用予圧ばね部材27の荷重は20N〜50Nと弱いので無視した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係るポペット形減圧弁の略縦断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係るポペット形減圧弁の略縦断面図である。
【図3】ポペット弁に作用する両端の圧力バランスの動作説明図である。
【図4】弁本体を除くポペット形減圧弁の斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
10 ポペット形減圧弁 12 一次ポート
13 二次ポート 14 ポペット弁
15 シート部材 16 操作ロッド
17 受圧部材 18 リテーナ部材
19、27 ばね部材 20 調整ねじ
21 スリーブ 22 本体内一次圧導入孔
23 スリーブ内一次圧導入孔 24 受圧部材内一次圧導入孔
25 圧力室 26 ピストン
29 開口穴 30 段付穴
31 シール部材 32 大径孔
34 スリーブ内二次圧吐出孔 38 開口室
36 内孔 37 アダプタ
39 段付部 40 ナット








【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体と、
前記弁本体に設けられ一次ポートから二次ポートへの流体の流れを制限するポペット弁と、
前記ポペット弁に隣接して設けられたシート部材と、
前記ポペット弁に当接し該ポペット弁を押し開くことのできる操作ロッドと、
二次圧を受圧して前記操作ロッドを閉弁側へ付勢する受圧部材と、
前記操作ロッドに予め設定した弾性力を開弁方向に付加する付勢機構と、
を備え、一次ポートに導入された一次圧を減圧し二次圧として二次ポートに出力するポペット形減圧弁において、
前記受圧部材内に圧力室を設け、該圧力室と一次ポートとを連通することにより、一次圧が変動しても二次圧が変動しないようにしたことを特徴とするポペット形減圧弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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