説明

ポリアセタール樹脂組成物及びそれからなる成形品

【課題】艶消し性に優れ、かつ耐候性に優れたポリアセタール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、脂肪族又は脂環式熱可塑性ポリウレタン(B)1〜120質量部、脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物(C)0.01〜10質量部及び分子内に3以上の水酸基を有する多価アルコール(D)0.01〜5質量部を溶融混練して樹脂組成物の成形物を得、次いで、24時間以内に、該成形物に熱処理を施して架橋反応を促進して得られることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアセタール樹脂組成物及びそれから成る成形品に関する。詳しくは、成形品の艶消し性に優れ、かつ耐候性に優れたポリアセタール樹脂組成物及びそれから成る成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的物性(耐摩擦性・磨耗性、耐クリープ性、寸法安定性等)のバランスに優れ、また極めて優れた耐疲労性を有している。また、この樹脂は耐薬品性にも優れており、かつ吸水性も少ない。従って、ポリアセタール樹脂は、これらの特性を生かして、エンジニアリングプラスチックとして、自動車内装部品、家屋の内装部品(熱水混合栓等)、衣料部品(ファスナー、ベルトバックル等)、建材用途(配管・ポンプ部品等)、機械部品(歯車等)等に幅広く利用され、需要も伸びている。
【0003】
しかしながら、ポリアセタール樹脂は、他の樹脂に比べ表面光沢が良好で光を反射するため、例えば、自動車用内装部品等の用途においては、他の材料との調和感や、また高級感を醸しだすために、光沢の少ない、艶消し性が要求される場合が多い。
成形品の艶消しには、表面にシボ加工を施した成形金型にて成形する方法があるが、これをポリアセタール樹脂に適用するだけでは充分な艶消し効果は得られない。
【0004】
ポリアセタール樹脂材料自体を艶消しにする方法も、従来より提案されており、ポリアセタール樹脂にアクリル架橋粒子等の有機フィラーを添加する方法があるが、光沢低減の効果は低いのみならず、有機フィラーとポリアセタール樹脂との溶融混練時および成形時にポリアセタール樹脂が分解し、機械的物性が低下しやすいという問題点を有している。
【0005】
また、ポリアセタール樹脂に炭酸カルシウム、タルク等の無機フィラーを添加する方法等が知られている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、望ましい艶消し効果を得るためには、無機フィラーを多量に配合する必要があって、これは成形品の伸度や靱性等の機械的物性の低下を引き起こす。また、かかる無機フィラーはポリアセタール樹脂の分解を促進するためホルムアルデヒドの発生が多くなるという欠点を有しており、成形金型の汚染や、成形作業時の労働(衛生)環境を悪化させる可能性があるという問題点を有している。
【0006】
また、ポリアセタール樹脂にゴム状ポリマーのコアと含酸素極性基を有するビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーのシェルを有するコアシェルポリマーを配合する方法(特許文献2参照)も提案されているが、熱安定性、艶消し性は未だ不十分である。
さらに、イソシアネート化合物を配合することにより、艶消し性を向上させる提案(特許文献3参照)がなされている。
しかし、この提案においてもその艶消し効果は十分ではなく、仮に艶消し効果が十分な場合でも耐候性が悪く、耐候性試験において早い段階でクラックが発生してしまうという欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−170641号公報
【特許文献2】特開平5−271361号公報
【特許文献3】特開平5−255570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、低光沢で成形品の艶消し性に優れ、耐候性に優れたポリアセタール樹脂組成物の開発が望まれていた。
本発明の目的は、艶消し性に優れ、かつ耐候性に優れたポリアセタール樹脂組成物及びこれからなる樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ポリアセタール樹脂(A)に、脂肪族又は脂環式熱可塑性ポリウレタン(B)、脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物(C)及び特定の多価アルコール(D)を配合し溶融混練して得られた組成物に、特定の熱処理を施して反応させたポリアセタール樹脂組成物が、艶消し性に優れ、耐候性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、脂肪族又は脂環式熱可塑性ポリウレタン(B)1〜120質量部、脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物(C)0.01〜10質量部及び分子内に3以上の水酸基を有する多価アルコール(D)0.01〜5質量部を溶融混練して樹脂組成物の成形物を得、次いで、24時間以内に、該成形物に熱処理を施して架橋反応を促進して得られることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、熱処理が、温度50〜130℃にて、1時間以上保持することにより行われることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、得られたポリアセタール樹脂組成物を、ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対し1〜120質量部含有させてなることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、さらに、紫外線吸収剤(F)を、ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対し、0.01〜5質量部含有することを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第5の発明によれば、第3又は4の発明において、さらに、ヒンダードアミン系光安定剤(G)を、ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対し0.01〜5質量部含有することを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0015】
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、成形品の艶消し性に優れ、成形品は高級感に優れ、かつ耐候性に優れる。さらに、紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤を配合させた場合は、耐候性をさらに、より効果的に向上させることができる。
従って、本発明のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品は、自動車内装部品、家屋等の内装部品等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.発明の概要]
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、脂肪族又は脂環式熱可塑性ポリウレタン(B)1〜120質量部、脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物(C)0.01〜10質量部及び分子内に3以上の水酸基を有する多価アルコール(D)0.01〜5質量部を溶融混練して樹脂組成物の成形物を得、次いで、24時間以内に、該成形物に熱処理を施して架橋反応を促進して得られることを特徴とする。
ポリアセタール樹脂の艶消し性は、成形表面における凹凸による光乱反射効果を利用するものであるが、前述した従来の艶消し剤は成形表面に露出し過ぎる傾向にあって、十分な乱反射が得られにくい。本発明では、上記の構成を採用することにより、ポリウレタン架橋粒子をポリアセタール樹脂と十分に馴染んだ状態で成形表面に浮き出ることで、良好な凹凸表面が形成でき、優れた艶消し効果を達成することができる。さらに、このようにして得られた製品は、熱可塑性ポリウレタンとして芳香族熱可塑性ポリウレタンを使用する場合や、イソシアネート化合物として芳香族イソシアネート化合物を使用する場合に比べて、紫外線に対して極めて安定しており、優れた耐候性を有する。
【0018】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。
本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0019】
[2.ポリアセタール樹脂(A)]
本発明に用いるポリアセタール樹脂(A)は、−(−O−CRH−)−(但し、Rは水素原子、有機基を示す。)で示されるアセタール構造の繰り返しを有する高分子であり、通常は、Rが水素原子であるオキシメチレン基(−CHO−)を主たる構成単位とするものである。本発明に用いるポリアセタール樹脂(A)は、このオキシメチレン単位のみからなるホモポリマー以外に、オキシメチレン単位以外の構成単位を含むコポリマー(ブロックコポリマー)やターポリマー等であってもよく、更には線状構造のみならず分岐、架橋構造を有していてもよい。
【0020】
オキシメチレン単位以外の構成単位としては、オキシエチレン基(−CHCHO−)、オキシプロピレン基(−CHCHCHO−)、オキシブチレン基(−CHCHCHCHO−)等の炭素数2〜10の、分岐していてもよいオキシアルキレン基が挙げられる。これらのなかでも、炭素数2〜4の、分岐していてもよいオキシアルキレン基が好ましく、特にオキシエチレン基が好ましい。ポリアセタール樹脂に占めるオキシメチレン基以外のオキシアルキレン基の含有量は、通常は0.1〜20質量%である。
【0021】
ポリアセタール樹脂(A)の製造方法は公知であり、本発明ではそのいずれの方法で製造されたポリアセタール樹脂も用いることができる。
例えば、オキシメチレン基と、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を構成単位とするポリアセタール樹脂の製造方法としては、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のオキシメチレン基の環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキソカン、1,3−ジオキセパン等の炭素数2〜4のオキシアルキレン基を含む環状オリゴマーとを共重合することによって製造することができる。ポリアセタール樹脂としては、トリオキサンやテトラオキサン等の環状オリゴマーと、エチレンオキサイド又は1,3−ジオキソランとの共重合体を用いるのが好ましく、トリオキサンと1,3−ジオキソランとの共重合体を用いるのが特に好ましい。
【0022】
ポリアセタール樹脂(A)としては、全末端基の中に適度の水酸基末端を有するものが好ましく、末端基全体に対する水酸基末端の割合が50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%のものを用いるのが好ましい。また、末端基全体に占める末端水酸基の割合は、重合時の水や多価アルコールの使用量により調整することができる。
さらに、ポリアセタール樹脂(A)は、メルトインデックス(ASTM−D1238規格:190℃、2.16Kg)が通常1〜100g/10分であるが、0.5〜80g/10分が好ましい。
【0023】
[3.脂肪族又は脂環式熱可塑性ポリウレタン(B)]
脂肪族又は脂環式熱可塑性ポリウレタン(B)としては、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート化合物と、水酸基を2個以上有するポリオール、更に、所望により、連鎖延長剤を用いて製造された分子構造内にウレタン結合を有するポリウレタンエラストマーを意味する。熱可塑性ポリウレタンは、公知の方法に従って、換言すれば、公知のウレタン化反応技術に従って製造することができる。なお、一般に、水酸基に対するイソシアネート基の比率は、0.5〜2の範囲で選ばれるが、より好ましくは0.9〜1.5の範囲で選ばれる。
【0024】
熱可塑性ポリウレタン(B)を構成する脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が好ましく挙げられ、脂環式ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が好ましく挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
これらのなかでも、特に好ましいのは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)である。
【0025】
熱可塑性ポリウレタン(B)を構成する脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート化合物には、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族ポリイソシアネート化合物の少量、例えば5モル当量%を限度に、併用してもよい。
このような芳香族ポリイソシアネート化合物としては、m−又はp−フェニレンジイソシアネート、m−又はp−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等が例示できる。
【0026】
また、熱可塑性ポリウレタン(B)を構成するポリオールとしては、水酸基を2個以上有する化合物であれば特に制限はないが、好ましくはポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられ、より好ましくは、分子構造の末端に水酸基を有するポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等である。これらのポリオールは、2種以上を混合して用いてもよい。ポリオールの数平均分子量は、好ましくは500〜5,000、より好ましくは1,000〜3,000である。
【0027】
ここで、ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールなどの炭素数2〜12のアルカンジオールから誘導される重合体、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフランなどの炭素数2〜12の環状エーテルから誘導される重合体等が好ましく用いられる。
【0028】
ポリエーテルエステルジオールとは、ポリエーテルジオールとジカルボン酸無水物と環状エーテルとを重合して得たものを意味する。ポリエーテルジオールとしては、上記のポリエーテルジオールが、ジカルボン酸無水物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が、環状エーテルとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等が含まれる。
【0029】
ポリエステルジオールとは、二価アルコールとジカルボン酸から重合されるもの、或いは、ポリラクトンジオールを意味する。二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の炭素数2〜12のアルカンジオールが、ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の炭素数4〜12の脂肪族、もしくは、芳香族ジカルボン酸が好ましく用いられる。ポリラクトンジオールとしては、ポリカプロラクトングリコール、ポリプロピオラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどが好ましく用いられる。
【0030】
ポリカーボネートジオールとしては、上記の二価アルコールと炭酸ジフェニルもしくはホスゲンを作用させて重合させて得たものを意味する。
【0031】
連鎖延長剤としては、脂肪族、脂環式、或いは、芳香族ジオール、もしくは、ジアミンが用いられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ハイドロキノンジエチロールエーテル、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼン、レゾルシンジエチロールエーテル、水素化されたビスフェノール−A、或いは、これらの誘導体が使用される。ジアミンとしては、ヒドラジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、1,4−ジアミノジフェニルメタン、或いは、これらの誘導体が用いられる。連鎖延長剤の分子量は500以下であることが好ましい。
【0032】
脂肪族又は脂環式熱可塑性ポリウレタン(B)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、1〜120質量部である。1質量部未満では、艶消し性の改善効果が不十分であり、120質量部を超えると、ポリアセタール樹脂組成物の機械的物性を損なってしまう。好ましくは3〜100質量部、より好ましくは5〜80質量部である。
【0033】
[3.脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物(C)]
本発明のポリアセタール樹脂組成物に用いる脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物(C)としては、脂肪族、脂環式のジイソシアネート化合物を使用する。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が好ましく挙げられ、脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が好ましく挙げられる。これらイソシアネート化合物の2量体、3量体、これらイソシアネート化合物のカルボジイミド変性体、これらイソシアネート化合物と多価アルコールとのプレポリマー及びこれらイソシアネート化合物をフェノール、第一級アルコール、カプロラクタム等のブロック剤で封鎖したプロックドイソシアネート化合物であってもよい。
【0034】
イソシアネート化合物のうち、特に好ましいのは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)である。
なお、イソシアネート化合物は、予めポリアセタール樹脂(A)もしくは、熱可塑性ポリウレタン(B)に溶融混合したものを使用してもよい。
【0035】
脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物(C)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜10質量部である。0.01質量部未満では十分な艶消し効果を得ることができず、10質量部を超えるとポリアセタール樹脂組成物の機械的物性を損なうばかりでなく、樹脂組成物中にイソシアネート化合物が過剰に残留し使用上困難となる。好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。
【0036】
[4.分子内に3以上の水酸基を有する多価アルコール(D)]
分子内に3以上の水酸基を有する多価アルコール(D)としては、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ジグリセリン、メチルグルコシド、芳香族ジアミン−テトラエタノール付加物、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、シクロデキストリン、ショ糖等が好ましく挙げられる。なお、多価アルコールとして、フェノキシ樹脂、或いは、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルアルコールのような分子内に3以上の水酸基を有する高分子化合物やオリゴマー化合物を選択することもできる。多価アルコール(D)としては、3又は4価の多価アルコールであることが好ましい。
これらの多価アルコールは、単独で使用してもよいが、2種以上を選んで適宜の割合の混合物として使用してもよい。なお、この多価アルコールは、予めポリアセタール樹脂(A)もしくは、熱可塑性ポリウレタン(B)に溶融混合したものを使用することが可能である。
【0037】
分子内に3以上の水酸基を有する多価アルコール(D)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部である。0.01質量部未満では十分な艶消し効果を得ることができず、5質量部を超えるとポリアセタール樹脂組成物の機械的物性を損なうばかりでなく、樹脂組成物中に多価アルコール物が過剰に残留し使用上困難となる。好ましくは0.05〜3質量部、より好ましくは0.1〜1.5質量部である。
【0038】
上記各成分の配合割合は、成分(A)〜(D)の合計を100質量%とした場合、好ましくは、成分(A)/成分(B)/成分(C)/成分(D)=40〜99/1〜60/0.01〜10/0.01〜5質量%であり、より好ましくは成分(A)/成分(B)/成分(C)/成分(D)=70〜90/5〜25/0.1〜2/0.1〜1質量%である。このような割合とすることにより、機械的物性が低下することなく、艶消し効果をより優れたものとすることができる。
また、熱可塑性ポリウレタン(B)およびイソシアネート化合物(C)は、そのイソシアネート当量が、成分(A)および成分(D)が有する活性水素に対して過剰量となるように配合することが好ましい。
【0039】
[5.その他の成分]
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、任意の樹脂添加剤を含有させることができる。
例えば、ポリアセタール樹脂組成物の耐候性を向上させる目的で、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、シアノアクリレート系化合物及びシュウ酸アニリド系等の紫外線吸収剤やヒンダードアミン系等の光安定剤の1種以上を含有させることができる。これらの成分の好ましい含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.01〜5質量部であり、より好ましくは0.01〜3質量部、さらに好ましくは0.03〜2質量部である。含有量が0.01質量部未満では十分な耐候性が得られにくく、5質量部を超えると得られる樹脂組成物の機械的物性が低下しやすい傾向にある。
【0040】
また、ホルムアルデヒドの発生を抑制する目的で、例えば、アミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの縮合物、尿素、尿素誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物、ヒドラジン誘導体等のホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤の1種以上を含有させることも可能である。これらの成分の含有量はポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.03〜0.3質量部、さらに好ましくは0.05〜0.15質量部である。含有量が0.01質量部未満では成形品からのホルムアルデヒドの発生を低減させる効果が不十分な場合があり、逆に1質量部を超えると射出成形時の金型付着物が増加し、成形を効率的に行えなくなりやすい。
【0041】
さらに、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩又はアルコキシド等を含有させてもよい。例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の水酸化物、炭酸塩、燐酸塩、ケイ酸塩、ほう酸塩等の無機酸塩、メトキシド、エトキシド等のアルコキシドを配合することができる。特に、アルカリ土類金属化合物を配合するのが好ましく、なかでも水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、又は炭酸マグネシウムを配合するのが好ましい。アルカリ土類金属化合物を配合する場合は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下の割合で含有させる。
【0042】
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物には、上記の成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲内で公知の種々の添加剤や充填材を配合してもよい。
添加剤としては、例えば酸化防止剤、滑剤、核剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等が挙げられ、また充填材としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー等が挙げられる。
【0043】
[6.樹脂組成物の成形物の製造方法]
上記成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)から樹脂組成物の成形物を製造するには、これら成分の所定量を、同時に又は任意の順序で配合し、所望により更に他の添加剤等を配合した後、溶融混練して反応させることによって行うことができる。溶融混練は、好ましくは180〜260℃、より好ましくは190〜220℃程度の温度で行うことができる。
溶融混練は、連続式、バッチ式等の何れの方法でも可能で、公知の装置、例えばニーダー、一軸又は二軸押出機などの溶融混練機を用いて行うことができる。
【0044】
溶融混練の装置の具体例としては、一軸押出機、かみ合い型同方向回転二軸押出機、かみ合い型異方向回転二軸押出機、非〜不完全かみ合い型異方向回転二軸押出機などを好ましく例示することができる。溶融剪断混合の時間は、装置内の樹脂温度や装置の剪断混合力に依存するため、一概に規定できないが、通常、1秒〜30分の範囲である。
【0045】
溶融混練して反応と微細分散が進行した樹脂組成物は、押出機などの溶融混練機で押出され、樹脂組成物の予備的な成形物とされる。通常は、ストランド状に押出され、これをペレタイザー等でペレットとされる。
次いで、この成形物には、熱処理を施して架橋反応を促進させる。熱処理は、ペレット等の予備的成形物の成形後から24時間以内に行うことが必要である。このような熱処理を施すことにより、樹脂組成物の艶消し性と耐候性の両者を満足するものを得ることができる。熱処理を、成形後24時間を超えてから行った場合は、低光沢とはならず良好な艶消し性を得ることが出来ない。
【0046】
熱処理の温度範囲は、好ましくは50〜130℃の温度範囲である。より好ましくは60〜120℃、さらに好ましくは70〜110℃、特には80〜100℃である。熱処理の時間については、1時間以上、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上、特に好ましくは4時間以上であり、上限は、24時間程度である。
【0047】
熱処理の際の雰囲気は、空気、窒素、不活性ガス等、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリウレタン等に対して不活性なガスを用いることが好ましいが、湿度が低い乾燥状態のにあるのが好ましく、特には乾燥空気が好ましい。また熱処理中に水分が混入するのを抑制するため加圧下で行うことも好ましい。
【0048】
熱処理に用いられる熱処理装置としては、例えば、静置型乾燥機、回転型乾燥機、流動床型乾燥機、攪拌翼を有する乾燥機などが挙げられる。熱処理する方法は、一定温度で熱処理する方法、連続的に、もしくは、少なくとも2段階以上の温度で段階的に昇温して熱処理する方法なども採用できる。
【0049】
また、本発明においては、上記のような方法で溶融混練及び熱処理されたポリアセタール樹脂組成物の成形物を、艶消し剤のマスターバッチとして使用し、ポリアセタール樹脂(E)で希釈した樹脂組成物とし、成形加工に供してもよい。また、熱処理を施された本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物を、ポリアセタール樹脂(E)で希釈して用いる場合は、下記の態様で希釈するのが好ましい。
【0050】
[7.ポリアセタール樹脂(E)]
希釈に用いるポリアセタール樹脂(E)は、−(−O−CRH−)−(但し、Rは水素原子、有機基を示す。)で示されるアセタール構造の繰り返しを有する高分子であり、通常は、Rが水素原子であるオキシメチレン基(−CHO−)を主たる構成単位とするものである。本発明に用いるポリアセタール樹脂(E)は、このオキシメチレン単位のみからなるホモポリマー以外に、オキシメチレン単位以外の構成単位を含むコポリマー(ブロックコポリマー)やターポリマー等であってもよく、更には線状構造のみならず分岐、架橋構造を有していてもよい。
オキシメチレン単位以外の構成単位としては、オキシエチレン基(−CHCHO−)、オキシプロピレン基(−CHCHCHO−)、オキシブチレン基(−CHCHCHCHO−)等の炭素数2〜10の、分岐していてもよいオキシアルキレン基が挙げられる。これらのなかでも、炭素数2〜4の分岐していてもよいオキシアルキレン基が好ましく、特にオキシエチレン基が好ましい。ポリアセタール樹脂に占めるオキシメチレン基以外のオキシアルキレン基の含有量は、通常は0.1〜20質量%である。
【0051】
ポリアセタール樹脂(E)の製造方法は公知であり、本発明ではそのいずれの方法で製造されたポリアセタール樹脂も用いることができる。
例えば、オキシメチレン基と、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を構成単位とするポリアセタール樹脂の製造方法としては、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のオキシメチレン基の環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキソカン、1,3−ジオキセパン等の炭素数2〜4のオキシアルキレン基を含む環状オリゴマーとを共重合することによって製造することができる。ポリアセタール樹脂としては、トリオキサンやテトラオキサン等の環状オリゴマーと、エチレンオキサイド又は1,3−ジオキソランとの共重合体を用いるのが好ましく、トリオキサンと1,3−ジオキソランとの共重合体を用いるのが特に好ましい。
ポリアセタール樹脂(E)のメルトインデックス(ASTM−D1238規格:190℃、2.16Kg)は通常1〜100g/10分であるが、0.5〜80g/10分が好ましい。
【0052】
本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物をポリアセタール樹脂(E)で希釈して用いる場合、その希釈割合は、熱処理を施して得られたポリアセタール樹脂組成物を、ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対して1〜120質量部の割合で用いることが好ましい。希釈割合が1質量部未満では十分な艶消し性が得られにくく、120質量部を超えると、得られるポリアセタール樹脂組成物の機械的物性を損なってしまう場合がある。より好ましい希釈割合は、ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対し5〜110質量部であり、さらに好ましくは10〜105質量部である。
【0053】
[8.紫外線吸収剤(F)]
本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物をポリアセタール樹脂(E)で希釈して用いる場合、得られる樹脂組成物の耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤(F)を配合することが好ましい。
本発明において使用される紫外線吸収剤(F)は、紫外線を吸収する作用を有する化合物である。好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、シアノアクリレート系化合物、及び、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤の中から選ばれる。これらの化合物は、2種以上を併用してもよい。
【0054】
紫外線吸収剤(F)の具体例としては、
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、
2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、
2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、
2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、
2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、
2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−オキシベンジルベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、
p−t−ブチルフェニルサリシレート、
p−オクチルフェニルサリシレート、
2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、
エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、
N−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、
N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシフェニル)シュウ酸ジアミドなどが挙げられる。
【0055】
これらの紫外線吸収剤(F)は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
好ましい紫外線吸収剤(F)は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であり、特に好ましくは、20℃における蒸気圧が1×10−8Pa以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
具体的には、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、
2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]が挙げられる。
【0056】
紫外線吸収剤(F)の好ましい含有量は、ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対して、0.01〜5質量部である。含有量が0.01質量部未満では十分な耐候性が得られにくく、5質量部を超えると機械物性の低下が顕著となりやすい。紫外線吸収剤の好ましい含有量は、0.01〜3質量部であり、さらに好ましくは0.03〜2質量部である。
本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物をポリアセタール樹脂(E)で希釈して用いる場合、紫外線吸収剤(F)と後述のヒンダードアミン系光安定剤(G)を含有させることによって、優れた熱安定性と成形性やホルムアルデヒド発生抑制効果に加えて、ペレットや成形品の耐候性を向上させることができる。
【0057】
[9.ヒンダードアミン系光安定剤(G)]
本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物をポリアセタール樹脂(E)で希釈して用いる場合、得られる樹脂組成物の耐候性を向上させるために、ヒンダードアミン系光安定剤(G)の1種以上を配合することが好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤は、下記一般式(1)で示されるピペリジン構造を有するアミンである。
【0058】
【化1】

【0059】
一般式(1)において、Xは、窒素原子との結合部が炭素原子である有機基を示し、Yは、酸素原子または窒素原子を介してピペリジル基と結合する有機基または水素原子を示す。
好ましいXとしては、炭素数1〜10のアルキル基等が挙げられる。Xがアルキル基の場合は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。また、ヒンダードアミン系光安定剤は、分子中に複数のピペリジン構造を有することができるが、全てのピペリジン構造が、N−炭素原子−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル構造であることが好ましい。
【0060】
好ましいヒンダードアミン系光安定剤(G)の具体例として、以下の化合物を挙げることができる。
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート
1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル及びトリデシル−1,2,3,4ブタンテトラカルボキシレート(ブタンテトラカルボキシレートの4つのエステル部の一部が1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基で他がトリデシル基である化合物の混合物)
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウデンカン)−ジエタノールとの縮合物
コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの縮合物
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート
N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート
【0061】
ヒンダードアミン系光安定剤(G)の好ましい含有量は、ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対して、0.01〜5質量部である。含有量が0.01質量部未満では十分な耐候性(クラック発生時間の遅延効果)が得られにくく、5質量部を超えると機械物性の低下が著しく、金型汚染も多くなりやすい。ヒンダードアミン系光安定剤(G)のより好ましい含有量は0.01〜3質量部であり、さらに好ましくは0.03〜2質量部である。
【0062】
[10.ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(H)]
本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物をポリアセタール樹脂(E)で希釈して用いる場合、得られる樹脂組成物からのホルムアルデヒドの発生を抑制する目的で、ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(H)を配合することも好ましい。
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む安定剤の例としては、アミド化合物、ポリアミド樹脂、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの縮合物、尿素、尿素誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物、ヒドラジン誘導体を挙げることができる。これらの化合物は、2種以上を併用してもよい。
【0063】
アミド化合物の具体例としては、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。
【0064】
ポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミド樹脂、脂環式ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂のいずれも使用することができる。
また、ポリアミド樹脂は一種類の構成単位から成るものでも、複数種の構成単位から成るものであってもよい。
ポリアミド樹脂の原料としてはω−アミノ酸、好ましくは炭素原子数6〜12の直鎖ω−アミノ酸及びそのラクタム;アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸やそのジメチルエステル;ヘキサメチレンジアミン等のジアミン類が挙げられる。複数種の構成単位から成る共重合ポリアミドの場合には、共重合比率、共重合形態(ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、架橋ポリマー)等は任意に選択することができる。
本発明においては、ポリアミド樹脂として、ポリアミド12、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/610共重合体、ポリアミド6/66/610/12共重合体等を用いるのが好ましい。
【0065】
アミノ置換トリアジン化合物とは、下記一般式(2)で示される構造を有するアミノ置換トリアジン類、又はこれとホルムアルデヒドとの初期重縮合物である。
【0066】
【化2】

【0067】
一般式(2)において、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、炭素数1〜10のアルキル基、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は置換されていてもよいアミノ基を示すが、R〜Rのうち少なくとも一つは置換されていてもよいアミノ基を示す。
【0068】
アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、例えばグアナミン、メラミン、N−ブチルメラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−sym−トリアジン、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、アメリン(N,N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン)が挙げられる。
【0069】
アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミンを挙げることができる。
アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物を挙げることができる。
【0070】
尿素誘導体の例としては、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物を挙げることができる。N−置換尿素の具体例としては、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素を挙げることができる。尿素縮合体の具体例としては、尿素とホルムアルデヒドの縮合体等が挙げられる。
【0071】
ヒダントイン化合物の具体例としては、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。
ウレイド化合物の具体例としては、アラントイン等が挙げられる。
イミド化合物の具体例としてはスクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドを挙げることができる。
【0072】
ヒドラジン誘導体としてはヒドラジド化合物を挙げることができ、本発明においては、ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(H)として、ジヒドラジド化合物を使用するのが好ましい。
特に、ジヒドラジド化合物として、芳香族ジヒドラジド化合物及び20℃における水100gに対する溶解度が1g未満の脂肪族ジヒドラジド化合物より成る群から選ばれたジヒドラジド化合物を用いるのが好ましい。
芳香族ジヒドラジド化合物とは、2個のカルボン酸基やスルホン酸基を有する芳香族化合物のそれぞれの酸基にヒドラジンが反応した化合物で、例えば、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、1,5−ナフタレンジカルボヒドラジド、1,8−ナフタレンジカルボヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボヒドラジド、1,5−ジフェニルカルボノヒドラジド、2,4−トルエンジスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
【0073】
また、20℃における水100gに対する溶解度(以下、水溶解度という場合がある。)が1g未満の脂肪族ジヒドラジド化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド(水溶解度0.2g以下)、セバシン酸ジヒドラジド(同0.01g以下)、1,12−ドデカンジカルボヒドラジド(同0.01g以下)、1,18−オクタデカンジカルボヒドラジド(同0.1g以下)等が挙げられる。水溶解度が1g以上の脂肪族ジヒドラジド化合物は、ポリアセタール樹脂組成物からのホルムアルデヒド発生抑制効果が十分でない傾向がある。
【0074】
ジヒドラジド化合物のなかでも好ましいものとしては、2,6−ナフタレンジカルボヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,12−ドデカンジカルボヒドラジド等が挙げられる。特にセバシン酸ジヒドラジド、1,12−ドデカンジカルボヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド等を用いるのが好ましい。
【0075】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(H)としては、前記したようにアミド化合物が使用できるが、また他に、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体も挙げることができ、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。
【0076】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(H)の含有量は、ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対して、0.01〜1質量部であるのが好ましい。含有量が0.01質量部未満では成形品からのホルムアルデヒドの発生を低減させる効果が不十分で、逆に1質量部を超えると射出成形時の金型付着物が増加し、成形を効率的に行えなくなりやすい。ジヒドラジド化合物のより好ましい含有量は0.03〜0.3質量部であり、さらに好ましくは、0.05〜0.15質量部である。
【0077】
[11.着色剤(I)]
本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物をポリアセタール樹脂(E)で希釈して用いる場合、無機及び有機顔料から選ばれる着色剤(I)を配合してもよい。
着色剤(I)を構成する無機及び有機顔料としては、「顔料便覧(日本顔料技術協会編)」に記載されている一般的な無機顔料や有機顔料を用いることができる。そのいくつかを例示すると、無機顔料としては酸化チタン、チタンイエロー等のチタンを含む(複合)金属酸化物、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック、群青、硫化亜鉛、三酸化アンチモン等が挙げられる。有機顔料はフタロシアニン系、アンスラキノン系、キナクリドン系、アゾ系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ペリノン系、ペリレン系等の顔料が挙げられる。
【0078】
着色剤(I)の含有量は、ポリアセタール(E)樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部である。含有量が0.01質量部未満では有意に着色することはできない。着色剤の含有量は、より好ましくは、0.05質量部以上であり、さらに好ましくは0.1質量部以上である。含有量の上限は、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。着色剤を5質量部以下とすることにより、ホルムアルデヒドの発生を抑制しやすい傾向にある。
なお着色剤(I)の配合に際しては、分散助剤や展着剤を配合してもよい。分散助剤としては、アミドワックス、エステルワックス、オレフィンワックス等が、また展着剤としては、流動パラフィン等が挙げられる。また顔料に染料を併用して所望の色目に仕上げてもよい。
【0079】
[12.その他の成分]
本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物をポリアセタール樹脂(E)で希釈して用いる場合、更にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩又はアルコキシド等を配合してもよい。例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の水酸化物、炭酸塩、燐酸塩、ケイ酸塩、ほう酸塩等の無機酸塩、メトキシド、エトキシド等のアルコキシドを配合する。特に、アルカリ土類金属化合物を配合するのが好ましく、なかでも水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、又は炭酸マグネシウムを配合するのが好ましい。アルカリ土類金属化合物を配合する場合は、ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対し、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下の割合で含有させる。
【0080】
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物をポリアセタール樹脂(E)で希釈して用いる場合には、上記の成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲内で公知の種々の添加剤や充填材を配合してもよい。
添加剤としては、例えば酸化防止剤、滑剤、核剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等が挙げられ、また充填材としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー等が挙げられる。
【0081】
本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物をポリアセタール樹脂(E)で希釈して成形加工に供する場合は、上記したポリアセタール樹脂(E)、艶消し剤として用いる本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物及び必要に応じて配合される紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の各成分の所定量を秤量し、タンブラーミキサー等の混合機でドライブレンドした後、そのまま成形加工に供してもよいし、前記ドライブレンド物を溶融混練して樹脂組成物ペレットとした後、成形加工に供してもよい。溶融混練は、上記した本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物の溶融混練方法と同様の手法を用いることができる。
【0082】
[13.成形品の製造]
上述した本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物及び本発明のポリアセタール樹脂組成物を希釈して得られるポリアセタール樹脂組成物は、公知のポリアセタール樹脂の成形加工法に従って、成形加工することができる。成形品を成形するには、流動性、加工性の観点から、射出成形が特に好ましい。
本発明のポリアセタール樹脂組成物からなる成形品としては、ペレット、丸棒、厚板等の素材、シート、チューブ、各種容器、機械、電気、自動車、建材その他の各種部品等の製品が挙げられる。特には、シートベルトガイド等の自動車用内装部品や、スィッチ、シフトレバー関係部品、ギヤチェンジフック等の自動車用部品に特に好適である。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0084】
実施例及び比較例で使用した原料を以下に示す。
(A)ポリアセタール樹脂:
コモノマーとして1,3−ジオキソランを樹脂に対して4.2質量%となるように用いて製造したアセタールコポリマー、メルトインデックス(ASTM−D1238規格:190℃、2.16Kg)16g/10分
【0085】
(B)熱可塑性ポリウレタン:
(B−1)脂肪族ポリウレタン
アジピン酸、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン
(B−2)脂環式ポリウレタン
アジピン酸、1,4−ブタンジオールおよび4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)を反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン
(B−3)芳香族ポリウレタン
アジピン酸、1,4−ブタンジオールおよび4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを反応させて得られた熱可塑性ポリウレタン
【0086】
(C)イソシアネート化合物:
(C−1)4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)
(C−2)1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
(C−3)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
【0087】
(D)分子内に3以上の水酸基を有する多価アルコール:
ペンタエリスリトール
【0088】
(F)紫外線吸収剤:
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール (20℃における蒸気圧2.0×10−10Pa)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「チヌビン234」
【0089】
(G)ヒンダードアミン系光安定剤:
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、 三共ライフテック社製、商品名「サノールLS−765」
【0090】
(実施例1)
上記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、上記脂肪族熱可塑性ポリウレタン(B−1)20質量部、4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)(C−1)1.0質量部、ペンタエリスリトール(D)0.4質量部を秤取り、川田製作所社製スーパーミキサーを用いて均一に混合したのち、常法に従って2軸押出機(池貝鉄工社製「PCM−30」、スクリュー径30mm)を用いて、スクリュー回転数120rpm、シリンダー設定温度190℃の条件下にて、溶融混練したのち、ストランド状に押出し、ペレタイザーにてペレット化した。
引き続き、得られたペレットを成形直後に、温度90℃の静置型棚段式乾燥機にて16時間熱処理し、ポリアセタール樹脂組成物ペレットを得た。常温常圧で24時間放置後、温度80℃の静置型棚段式乾燥機にて4時間の射出成形前予備乾燥を行い、下記の方法で試験片の成形を行い、後述の評価方法を行うことにより、表1に示す結果を得た。
【0091】
[平板試験片の作成]
日精樹脂工業社製射出成形機「PS−40」を用い、シリンダー温度195℃、金型温度80℃にて100mm×40mm×2mmのプレートを成形した。
【0092】
[測定及び評価方法]
測定及び評価は、以下の方法で行った。
(a)光沢度:
上記平板試験片を使用して、日本電色工業社製光沢計(Gloss Meter VG2000)にて、反射角60度で測定した。
【0093】
(b)艶消し評価:
上記平板試験片に、蛍光灯の光を反射させ、その際の光源のぼやけ具合を、目視で確認し、以下の4段階で判定を行った。
・光源が原形を留めない程ぼやけて反射する→◎
・光源がぼやけて反射する →○
・光源の輪郭がうっすらとぼやけて反射する→△
・光源がくっきりと反射する →×
【0094】
(c)耐候性試験
前記平板試験片を使用して、スガ試験機社製サンシャインウェザーメーターS80にて、83℃(ブラックパネル温度)、雨なし、光フィルター:#255の試験環境で、60時間ごとに、試験片の表面を40倍のマイクロスコープで観察し、クラックの有無を確認した。成形品表面にクラックが観察され始めるまでの時間をクラック発生時間とし、耐候性の指標とした。クラック発生時間が長いほど耐候性に優れていることを示す。
また、その試験片について、試験前と、60時間後の試験片の色差(ΔE)を下記の方法にて測定した。
分光測色色差計(日本電色工業社製、SE2000)を使用し、耐候性試験前と、60時間耐光性試験後の色差(ΔE)を次式で評価した。
ΔE=((ΔL+(Δa+(Δb1/2
ΔEが小さいほど変色性が小さく、耐候性に優れているといえる。
【0095】
(実施例2〜8)
実施例1において、使用成分およびその配合量を表1に示すとおりにし、また熱処理条件を表1に示したとおりとした以外は、全て実施例1と同様に処理して、ポリアセタール樹脂組成物ペレットを得た。 なお、射出成形前の予備乾燥(温度80℃の静置型棚段式乾燥機にて4時間乾燥)も、同様に行った。また、表中の熱処理1〜3の条件は以下のとおりである。
熱処理1:ペレット成形直後に、90℃の静置型棚段式乾燥機で16時間熱処理
熱処理2:ペレット成形後、常温常圧で25時間静置した後、90℃の静置型棚段式乾燥機で16時間熱処理
熱処理3:ペレット成形後、常温常圧で25時間静置しただけで、熱処理はなし
結果を表1に示す。
【0096】
(比較例1〜8)
実施例1において、使用成分およびその配合量を表2に示すとおりにし、また熱処理条件を表2に示したとおりとした以外は、全て実施例1と同様に処理して、ポリアセタール樹脂組成物ペレットを得た。 なお、射出成形前の予備乾燥も、同様に行った。結果を表2に示す。
【0097】
(実施例9)
ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対し、実施例1で得られたポリアセタール樹脂組成物12.5質量部、紫外線吸収剤(F)0.35質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(G)0.35質量部を秤取り、川田製作所社製スーパーミキサーを用いて均一に混合したのち、常法に従って2軸押出機(池貝鉄工社製「PCM−30」、スクリュー径30mm)を用いて、スクリュー回転数120rpm、シリンダー設定温度190℃の条件下にて、溶融したのち、ストランド状に押出し、ペレタイザーにてペレット化しポリアセタール樹脂組成物ペレット得た。得られたペレットを、常温常圧で24時間放置後、温度80℃の静置型棚段式乾燥機にて4時間乾燥後、実施例1と同様な方法で試験片の成形を行い、実施例1と同様な評価方法を行うことにより、表3に示す結果を得た。
【0098】
(実施例10〜12)
実施例9において、使用成分およびその配合量を表3に示すとおりにした以外は、全て実施例9と同様に処理して、表3に示す結果を得た。 なお、射出成形前の予備乾燥も、同様に行った。
【0099】
(比較例9)
ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対し、比較例2で得られたポリアセタール樹脂組成物25質量部、紫外線吸収剤(F)0.35質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(G)0.35質量部を秤取り、後の処理は、全て実施例9と同様に行い、表3に示す結果を得た。 なお、射出成形前の予備乾燥も、同様に行った。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
表1、表2より明らかなとおり、本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物は、優れた艶消し性及び耐候性を有している(実施例1〜8)。
一方、熱可塑性ポリウレタン(B)として芳香族熱可塑性ポリウレタンを使用した場合や、イソシアネート化合物(C)として芳香族イソシアネート化合物を使用した場合は、耐候性が劣る(比較例2〜6)。
また、樹脂組成物ペレット得た後、24時間以内に熱処理を施さなかった場合は、艶消し性が劣る(比較例7、8)。
【0104】
表3から明らかなとおり、本発明のポリアセタール樹脂組成物の成形物(実施例1のペレット)を、艶消し剤としてポリアセタール樹脂に配合した場合も、優れた艶消し性及び耐候性を有している(実施例9〜12)。一方、芳香族熱可塑性ポリウレタン及び芳香族イソシアネート化合物を使用したポリアセタール樹脂組成物の成形物(比較例2のペレット)を艶消し剤としてポリアセタール樹脂に配合した場合は、耐候性が大きく劣り、艶消し性も若干劣る(比較例9)。
【産業上の利用可能性】
【0105】
このようにして得られた本発明のポリアセタール樹脂組成物は、高い艶消し性を有しており、耐候性に優れるので、ポリアセタール樹脂材料として、各種の成形部品、特には自動車内装部品、家屋等の内装部品等に好適に使用することができ、産業上の利用性は非常に高いものがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、脂肪族又は脂環式熱可塑性ポリウレタン(B)1〜120質量部、脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物(C)0.01〜10質量部及び分子内に3以上の水酸基を有する多価アルコール(D)0.01〜5質量部を溶融混練して樹脂組成物の成形物を得、次いで、24時間以内に、該成形物に熱処理を施して架橋反応を促進して得られることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
熱処理が、温度50〜130℃にて、1時間以上保持することにより行われることを特徴とする請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物を、ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対し1〜120質量部含有させてなることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、紫外線吸収剤を(F)を、ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対し0.01〜5質量部含有することを特徴とする請求項3に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、ヒンダードアミン系光安定剤(G)を、ポリアセタール樹脂(E)100質量部に対し0.01〜5質量部含有することを特徴とする請求項3又は4に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品。

【公開番号】特開2012−77258(P2012−77258A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226228(P2010−226228)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】