説明

ポリアセタール樹脂組成物

【課題】 優れた摩擦・摩耗特性を有し、且つ、機械的強度が改良されたポリアセタール樹脂組成物を胎教する。
【解決手段】 実質的に直鎖の分子構造を有するポリアセタール樹脂(A1)100重量部に、分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2)0.1〜20重量部および200℃で液体の形態をもつ潤滑油(B)0.05〜20重量部を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた摩擦・摩耗特性を有し、且つ、機械的強度が改良されたポリアセタール樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、バランスのとれた機械的性質を有し、耐摩擦・摩耗特性、耐薬品性、耐熱性、電気特性等に優れるため、自動車、電気・電子製品等の分野で広く利用されている。しかし、かかる分野における要求特性は次第に高度化しつつあり、その一例として、摺動 特性の一層の向上と共に、優れた機械特性等を保持した樹脂材料が望まれている。一般に、摺動 特性を改善する目的で、ポリアセタール樹脂にフッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂を添加することが知られており(特許文献1、2)、また、脂肪酸エステル(特許文献3)、シリコーン(特許文献4、5)、各種鉱油などの潤滑油を添加することが知られている。
【特許文献1】特開平7−133403号公報
【特許文献2】特開平8−124326号公報
【特許文献3】特開平9−286897号公報
【特許文献4】特開平5−295230号公報
【特許文献5】特開平10−298402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、フッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂の添加は、ポリアセタール樹脂の摺動 特性をある程度改善するが、かかる異樹脂はポリアセタール樹脂との相溶性に乏しく、引張強度等の機械的特性の低下の原因となる。また、脂肪酸エステル、シリコーン、各種鉱油などの潤滑油の添加も一般にはポリアセタール樹脂の機械特性を低下させるものであり、さらに、成形加工時の染み出しにより成形性等を損なう場合もある。このように、従来より公知の方法では、ポリアセタール樹脂の摺動特性の改善は達成されるものの、その他の機械的特性の見地においては未だ十分でなく、かかる問題に対しては、これらの諸性質を改良した材料が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、かかる要求に応え得るポリアセタール樹脂組成物を得るため鋭意検討を重ねた結果、ポリアセタール樹脂に、特定の潤滑剤と分岐又は架橋構造を有する変性ポリアセタール樹脂を配合することにより、優れた摩擦・摩耗特性を有し、且つ、機械的特性が改良されたポリアセタール樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に至った。
【0005】
即ち本発明は、実質的に直鎖の分子構造を有するポリアセタール樹脂(A1)100重量部に、分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2)0.1〜20重量部および200℃で液体の形態をもつ潤滑油(B)0.05〜20重量部を配合してなるポリアセタール樹脂組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、優れた摩擦・摩耗特性を有し、且つ、機械的特性が改良されたポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の構成について説明する。まず、本発明で用いられる実質的に直鎖の分子構造を有するポリアセタール樹脂(A1)とは、オキシメチレン基(-CHO-)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、ポリアセタールホモポリマー、オキシメチレン基以外に他の構成単位を少量有するポリアセタールコポリマー(ブロックコポリマーを含む)の何れにても良く、また、必要に応じ二種以上の特性の異なるポリアセタール樹脂をブレンドして使用することも出来るが、成形性、熱安定性等の観点からポリアセタールコポリマーを用いるのが好ましい。
【0008】
かかるポリアセタールコポリマーとしては、トリオキサン(a)99.95〜80.0重量%と置換基を持たない環状エーテル化合物及び環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(b)0.05〜20.0重量%とを共重合して得られるものが好ましく、更に好ましくはトリオキサン(a)99.9〜90.0重量%と化合物(b)0.1〜10.0とを共重合して得られるものである。
【0009】
また、そのメルトインデックス(190℃、荷重2.16kgで測定)は1〜50g/minであるものが好ましい。
【0010】
ポリアセタールコポリマーの製造に用いるコモノマー成分(上記化合物(b))としては、例えばエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,3−ジオキサン、プロピレンオキシド等が挙げられ、特にエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール及びジエチレングリコールホルマールからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。ポリアセタール樹脂(A1)の調製法は特に限定されるものではなく、公知の方法で調製することができる。
【0011】
次に、本発明に用いる分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2)は、上記の如きポリアセタールホモポリマー或いはポリアセタールコポリマーの製造において、ホルムアルデヒド或いはトリオキサン等と共重合可能であり、かつ共重合によって分岐単位或いは架橋単位を形成し得る化合物を更に添加して共重合することによって得られるものである。例えば、トリオキサン(a)と置換基を持たない環状エーテル化合物及び環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(b)を共重合させるにあたり、置換基を有する単官能グリシジル化合物(例えば、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等)を更に加えて共重合することにより分岐構造を有するポリアセタール樹脂が得られ、また、多官能グリシジルエーテル化合物を加えて共重合することにより架橋構造を有するポリアセタール樹脂が得られる。本発明においては、ポリアセタール樹脂(A2)として架橋構造を有するものを使用するのが好ましく、中でも、トリオキサン(a)99.89〜88.0重量%、置換基を持たない単官能環状エーテル化合物及び単官能環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(b)0.1〜10.0重量%及び多官能グリシジルエーテル化合(c)0.01〜2.0重量%を共重合して得られるものが好ましく、特に好ましくはトリオキサン(a)99.28〜96.50重量%、化合物(b)0.7〜3.0重量%及び多官能グリシジルエーテル化合物(c)0.02〜0.5重量%を共重合して得られるものである。また、そのメルトインデックスが0.1〜10g/minの架橋ポリアセタール樹脂が好ましい。
【0012】
化合物(b)としては、前記と同じものが挙げられ、特にエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール及びジエチレングリコールホルマールからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0013】
また、多官能グリシジルエーテル化合物(c)としては1分子中に3乃至4個のグリシジルエーテル基を有するものが特に好ましく、具体的にはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル及びペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルが挙げられる。分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2)の調製法も特に限定されるものではなく、ポリアセタール樹脂(A1)の調製と同様に、公知の方法で調製することができる。
【0014】
本発明において、かかる分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A1)100重量部に対し0.1〜20重量部である。ポリアセタール樹脂(A2)の配合量が少ないと機械的特性の改善が不十分なものとなり、ポリアセタール樹脂(A2)の配合量が過大の場合も、成形加工性等が劣るものとなり、結果として機械的特性も不十分なものとなる。ポリアセタール樹脂(A2)の好ましい配合量は、ポリアセタール樹脂(A1)100重量部に対し0.2〜10重量部であり、特に好ましくは0.3〜5重量部である。
【0015】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、上記のポリアセタール樹脂(A1)及び(A2)に200℃で液体の形態を持つ潤滑油(B)を配合したものである。潤滑油(B)として、より具体的には、シリコーン系オイル、ポリアルキレングリコール、α−オレフィンオリゴマー、パラフィンオイル、アルキル置換ジフェニルエーテル、高級脂肪族アルコールのエステルが好ましい潤滑油として例示される。以下、各々の潤滑油について詳細に説明する。
【0016】
シリコーン系オイルとしては、下記(1)の構造で示されるポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が代表として好ましく用いられる。
【0017】
【化1】

【0018】
(ここで、Rはメチル基であるが、その一部が他のアルキル基、フェニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化フェニル基等であっても良い。nは任意の数を示す。)
本発明において用いられるシリコーンオイルの粘度については特に限定はないが、摺動性及びその持続性、樹脂中へのオイルの分散性、溶融混練や成形加工時の作業性等を総合的に考慮すると100〜10万cStの動粘度(25℃)のものが好ましい。又、本発明においては二種以上の構造或いは粘度の異なるシリコーンオイルを混合して用いることも可能であり、シリコーンオイルに増粘材、溶剤等を加えて粘度等を調整して用いることも可能である。
【0019】
ポリアルキレングリコールとは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール単位が単独もしくは、ランダム、ブロック、グラフト共重合した構造を有するもので、エチレンオキシド、プロピレンオキシドを主体としたアルキレンオキシドの開環重合により得られる潤滑油である。かかるポリアルキレングリコールは、末端ヒドロキシ基をエーテルもしくはエステル化した誘導体も使用可能である。代表的なエステル、エーテル誘導体としては、ポリアルキレングリコールの末端ヒドロキシ基に、C8以上の脂肪族カルボン酸もしくは脂肪族アルコールが、それぞれエステル、エーテル結合した構造を有する化合物、及び、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビタン等の多価アルコールとポリアルキレングリコールとのエーテル等が挙げられる。本発明においては、平均分子量が400〜5000のポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体、及び、これらのアルキレングリコールとラウリン酸、ステアリン酸に代表されるC12以上の脂肪酸とのエステル、もしくはステアリルアルコール等に代表されるC12以上の脂肪族アルコールとのエーテルが、特に好ましく使用される。
【0020】
α−オレフィンオリゴマーは、主にC6〜C20のα−オレフィンを単独、もしくはエチレンとC3〜C20のα−オレフィンを共重合した構造を有する脂肪族炭化水素である。本発明においては、数平均分子量が、400〜4000のエチレン・α−オレフィンオリゴマーが好ましく使用される。
【0021】
パラフィンオイルは、石油留分を精製して得られる、いわゆるパラフィン系の鉱油を示す。本発明では、平均分子量300〜800の範囲のものが好ましく使用される。
【0022】
アルキル置換ジフェニルエーテルは、下記(2)で示される如く、ジフェニルエーテルのフェニルに、C12以上の飽和脂肪族鎖が、アルキル基、エステル基、エーテル基から選ばれる置換基の形で少なくとも1種以上導入されている化合物を示す。特に分子量の規定はなく、何れのアルキルジフェニルエーテルも好ましく使用される。かかる置換基は、フェニル基の何れの位置に導入されてもよいが、合成上好ましくは、2、4、6、2’、4’、6’位の内のいずれかの位置に置換基を有するアルキル置換ジフェニルエーテルであり、特に好ましくは4、4’位の2置換体である。
【0023】
【化2】

【0024】
(ここで、Rは2−6位及び2’−6’位の一部もしくは全部導入されたアルキル基、エーテル基又はエステル基を示す。)
かかる、アルキル置換ジフェニルエーテルの置換基としては、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の直鎖アルキル基、更には下記(3)で示される分岐アルキル基等が挙げられる。
【0025】
【化3】

【0026】
(ここで、n,mは0以上の整数で、n+m≧11)
又、エステル基としては、ドデシロキシカルボニル基、テトラデシロキシカルボニル基、ヘキサデシロキシカルボニル基、オクタデシロキシカルボニル基、ラウロイルオキシ基、ミリストイルオキシ基、パルミトイルオキシ基、ステアロイルオキシ基等が挙げられる。また、エーテル基としてはラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基等が挙げられる。更には、かかるエステル、エーテル基の脂肪族炭化水素鎖が分岐構造を有する、例えばイソステアリルアルコールやイソステアリン酸の誘導体であってもよい。
【0027】
高級脂肪族アルコールのエステルとは、高級脂肪族アルコールと1価の飽和脂肪酸もしくは二塩基酸とのエステルであり、実用上好ましくは、炭素数16以上の飽和脂肪酸アルコールと、炭素数16以上の飽和脂肪酸及び/もしくは多塩基酸とのエステルである。C16以上の飽和脂肪酸アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール等が挙げられる。C16以上の脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の直鎖及び、もしくは分岐不飽和脂肪酸等が挙げられる。かかる1価の脂肪酸と1価の脂肪族アルコールのエステルは、何れも好ましく使用できる。又、上記C16以上の脂肪族アルコールと結合してエステルを構成する2塩基酸としては、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸等が挙げられる。かかる二塩基酸と脂肪族アルコールより成るエステルは、ポリアセタールの熱安定性を維持する上で、フルエステルであることが好ましい。かかるカルボン酸とアルコールから成る脂肪族エステルの内、価格、入手(合成、精製)の容易性、摩擦摩耗特性の点から、特に好ましくは、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、ジステアリルアジペート、ジステアリルフタレート等である。本発明においては、これらの脂肪族エステルから選ばれた1種又は2種以上が好ましく用いられる。
【0028】
本発明において、かかる潤滑油(B)は、ポリアセタール樹脂(A1)100重量部に対して0.05〜20重量部が配合され、その摩擦摩耗特性改善に効果を示す。0.05重量部未満では、摩擦係数低減効果が十分発揮されず、又、20重量部を超えて配合されると、成形性や摩擦特性の極端な悪化を招き、好ましくない。特に好ましくは、0.5〜5重量部である。
【0029】
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、更に公知の各種安定剤・添加剤を配合し得る。安定剤としては、ヒンダートフェノール系化合物、メラミン、グアナミン、ヒドラジド、尿素等の窒素含有化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等のいずれか1種または2種以上を挙げることができる。又、本発明で用いられる添加剤としては、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤のいずれか1種または2種以上を挙げることができる。
【0030】
又、本発明の目的とする成形品の性能を大幅に低下させないような範囲であるならば、ガラス系充填材以外の公知の無機、有機、及び金属等の繊維状、板状、粉粒状等の充填剤を1種又は2種以上複合させて配合することも可能である。このような充填剤の例としては、タルク、マイカ、ウオラストナイト、炭素繊維等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0031】
次に本発明の組成物は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる公知の方法により容易に調製される。例えば、各成分を混合した後、1軸又は2軸の押し出し機により練り込み押し出しして、ペレットを調製し、しかる後、成形する方法、一旦組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、成形後に目的組成の成形品を得る方法等何れも使用できる。
【0032】
又、かかる組成物の調製について、基体であるポリアセタール樹脂の一部又は全部を粉砕し、これとその他の成分を混合した後、押し出し等を行うことは添加物の分散性を良くする上で好ましい方法である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、評価は以下の方法で行った。
〔メルトインデックス〕
ASTM D−1238に準じて、190℃、荷重2160gの条件下で測定した。
〔共重合組成〕
ヘキサフルオロイソプロパノールd2を溶媒とする1H−NMR測定により、その共重合組成を確認した。
<引張強度及び引張破壊歪み>
ISO3167に準じた引張り試験片を温度23℃、湿度50%の条件下に48時間放置した後、ISO527に準じて測定した。
<摩擦係数>
鈴木式摩擦摩耗試験機を用い加圧0.75kg/cm2、線速度180mm/sec、接触面積2.0cm2、相手材としてポリアセタール樹脂材料[ポリプラスチックス(株)製、商品名ジュラコン(登録商標)M90−44]を用い、24時間摺動させた後の動摩擦係数を測定した
<ポリアセタール樹脂(A1)の調製>
外側に熱(冷)媒を通すジャケットが付き、断面が2つの円が一部重なる形状を有するバレルと、パドル付き回転軸で構成される連続式混合反応機を用い、パドルを付した2本の回転軸をそれぞれ150rpmで回転させながら、トリオキサン(a)と1,3−ジオキソラン(b)を、(a)/(b)=98.3重量%/1.7重量%の割合で加え、更に分子量調整剤としてメチラールを連続的に供給し、触媒の三フッ化ホウ素をトリオキサンに対して0.005 重量%、連続的に添加供給し塊状重合を行った。重合機から排出された反応生成物は速やかに破砕機に通しながら、トリエチルアミンを0.05重量%含有する60℃の水溶液に加え触媒を失活した。さらに、分離、洗浄、乾燥後、粗ポリアセタール樹脂を得た。
【0034】
次いで、この粗ポリアセタール樹脂 100重量部に対して、トリエチルアミン5重量%水溶液を3重量%、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を 0.3重量%添加し、2軸押出機にて 210℃で溶融混練し不安定部分を除去し、メルトインデックス(MI)が26.8g/10minのペレット状のポリアセタール樹脂を得て、ポリアセタール樹脂組成物の調製に用いた。
<ポリアセタール樹脂(A2)の調製>
(A2)成分である、分岐又は架橋ポリアセタール樹脂の製造法及び組成を以下に示す。
【0035】
外側に熱(冷)媒を通すジャケットが付き、断面が2つの円が一部重なる形状を有するバレルと、パドル付き回転軸で構成される連続式混合反応機を用い、パドルを付した2本の回転軸をそれぞれ150rpmで回転させながら、トリオキサン(a)、単官能環状エーテル化合物及び単官能環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(b)、及び多官能グリシジルエーテル化合物(c)を表1に示す割合で加え、更に分子量調整剤としてメチラールを連続的に供給し、触媒の三フッ化ホウ素をトリオキサンに対して0.005 重量%、連続的に添加供給し塊状重合を行った。重合機から排出された反応生成物は速やかに破砕機に通しながら、トリエチルアミンを0.05重量%含有する60℃の水溶液に加え触媒を失活した。さらに、分離、洗浄、乾燥後、粗ポリアセタール樹脂を得た。
【0036】
次いで、この粗ポリアセタール樹脂 100重量部に対して、トリエチルアミン5重量%水溶液を3重量%、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を 0.3重量%添加し、2軸押出機にて 210℃で溶融混練し不安定部分を除去し、ペレット状のポリアセタール樹脂を得て、ポリアセタール樹脂組成物の調製に用いた。
【0037】
これらポリアセタール樹脂の組成とメルトインデックスを表1に示す。尚、表中の略号は以下の通りである。
(b)成分
DO:1,3−ジオキソラン
BF:1,4−ブタンジオールホルマール
(c)成分
TMPTGE:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル
【0038】
【表1】

【0039】
実施例1〜34、比較例1〜17
ポリアセタール樹脂(A1)に、以下に示す各種の潤滑油(B1〜B8)及び架橋ポリアセタール樹脂(A2-1〜A2-3)を、表2〜3に示す割合で配合し、シリンダー温度200℃の押出機で溶融混練してペレット状の組成物を調製した。次いで、このペレット状の組成物から射出成形機を用いて試験片を成形し、物性評価を行った。結果を表2〜3に示す。
【0040】
一方、比較のため、架橋ポリアセタールを添加しない場合及び潤滑油を添加しない場合等についても同様にしてペレット状の組成物を調製し、物性評価を行った。結果を表4に併せて示す。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
B-1:ポリジメチルシロキサン(5000cSt,東レダウコーニングシリコーン(株)製、SH-200)
B-2:α−オレフィンオリゴマー(900cSt,三井石油化学工業(株)製、ルーカントHC40)
B-3:ステアリルステアレート
B-4:ジステアリルアジペート
B-5:ポリプロピレングリコール(580cSt,三洋化成工業(株)製、PP3000)
B-6:ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体)(1700cSt,三洋化成工業(株)製、50HB-5100)
B-7:パラフィンオイル(1000cSt,出光(株)製、プロセスオイル)
B-8:アルキル置換ジフェニルエーテル(200cSt,(株)松村石油化学研究所製、モレスコハイループ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に直鎖の分子構造を有するポリアセタール樹脂(A1)100重量部に、分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2)0.1〜20重量部および200℃で液体の形態をもつ潤滑油(B)0.05〜20重量部を配合してなるポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
潤滑油(B)が、100〜10万cStの動粘度(25℃)を有するシリコーン系オイル、ポリアルキレングリコール、α−オレフィンオリゴマー、パラフィンオイル、アルキル置換ジフェニルエーテル及び高級脂肪族アルコールのエステルかららる群より選ばれたものである請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアセタール樹脂(A1)が、トリオキサン(a)99.9〜90.0重量%と置換基を持たない環状エーテル化合物及び環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(b)0.1〜10.0重量%とを共重合して得られ、メルトインデックスが1〜50g/minの共重合体である請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアセタール樹脂(A2)が、トリオキサン(a)99.89〜88.0重量%、置換基を持たない環状エーテル化合物及び環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(b)0.1〜10.0重量%及び多官能グリシジルエーテル化合物(c)0.01〜2.0重量%を共重合して得られ、メルトインデックスが0.1〜10g/minの架橋ポリアセタール共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
多官能グリシジルエーテル化合物(c)が、3個または4個のグリシジル基を有するものである請求項4記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
多官能グリシジルエーテル化合物(c)が、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル及びペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルから選ばれるものである請求項4記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
化合物(b)が、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール及びジエチレングリコールホルマールからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項3〜6の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−152100(P2006−152100A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343783(P2004−343783)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】