説明

ポリアミドマスターバッチの製造方法およびポリアミド樹脂組成物の製造方法

【課題】耐熱性が優れたポリアミド樹脂組成物の、耐熱剤添加方法に関し、安定して、耐熱剤が均一に分散したポリアミドマスターバッチを得ることを目的とする。また、本発明のポリアミドマスターバッチを使用することで、耐熱性に優れたポリアミド樹脂組成物を製造する際の、押出機腐食などの問題点を解消することを目的とする。
【解決手段】10〜100重量%が最大粒子径1000μm以下であるポリアミド樹脂(A)100重量部と、平均粒径が100〜1000μmであるハロゲン化カリウム1〜25重量部を溶融混練することを特徴とするポリアミドマスターバッチの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性に優れたポリアミド樹脂組成物の、耐熱剤添加方法に関し、さらに詳しくは、耐熱性に優れたポリアミド樹脂組成物を製造する際の、押出機腐食などの問題点を解消するポリアミドマスターバッチの製造方法、これを配合したポリアミド樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂組成物は、種々の用途に用いられているが、主に自動車用途に用いるには、その使用環境から長期耐熱性が要求され、この要求を満たす為の耐熱剤として、ハロゲン化銅などの銅化合物およびアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物が有効であることはすでに知られている。
【0003】
しかしながら、これら耐熱剤、特にハロゲン化カリウムは潮解性を有し、大気中に保管していると塊状になるため、ポリアミド中に均一に分散させることは非常に困難であり、均一に分散せず塊状に残存した耐熱剤がポリアミド樹脂組成物の物性低下の原因となる他、射出成型後の製品の表面に斑点として現れ、製品の価値を著しく低下させる問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するため、耐熱剤をポリアミド樹脂に配合する方法として、様々な方法が提案されており、例えば、特許文献1では重合工程でハロゲン化第一銅、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物を添加する方法、特許文献2ではアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の微粉末と滑材を予め混合してポリアミド樹脂に配合する方法、特許文献3では耐熱剤として銅化合物の水溶液と無機ハロゲン化合物の水溶液とポリアミド粉末とを混合した後乾燥する方法、特許文献4ではハロゲン化カリウムおよびハロゲン化銅を含有した水溶液をベント付き押出機に添加してポリアミド樹脂組成物に配合する方法、特許文献5では一定の水分を含有したポリアミド樹脂と、細かく粉砕したハロゲン化合物と銅化合物と少なくとも一つのアミド基を有する有機化合物とを混合し、溶融混練して得たポリアミドマスターバッチをポリアミド樹脂に配合する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−167322号公報
【特許文献2】特開昭50−148461号公報
【特許文献3】特開平6−256649号公報
【特許文献4】特開昭61−284407号公報
【特許文献5】特開2007−302880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法は耐熱剤を均一に分散させる上では望ましい方法であるが、重合法はコンパウンド法に比べて大量生産向きの工程であるため、銘柄切替時に過渡期品が多量に発生したり、あるいは重合装置の洗浄時間が大幅に長くなるなどの生産効率低下の原因となる問題がある。
【0007】
特許文献2の方法は耐熱剤としては本来必要としない滑材を添加する為、耐熱性を有したポリアミド樹脂組成物の物性低下やコストアップの原因となる問題がある。
【0008】
特許文献3の方法は耐熱剤の分散には相応の効果をあげているが、耐熱剤水溶液とポリアミド粉末の混合品の乾燥には多くの時間と作業工数がかかるという問題がある。
【0009】
特許文献4の方法は耐熱剤の分散には相応の効果をあげており作業性も良いが、水溶液中のハロゲン化物イオンが押出機のスクリュウやバレル等金属表面の腐食を促進するという問題があった。
【0010】
特許文献5の方法は、耐熱剤としては本来必要としない有機化合物を添加する為、耐熱性を有したポリアミド樹脂組成物の物性低下やコストアップの原因となる他、耐熱剤を粉砕して微粉を得るのは作業工数がかかり、微粉にすると粉の舞い上がりが発生して作業性が良くないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討し、安定して、耐熱剤であるハロゲン化カリウムおよび/またはハロゲン化銅が均一に分散したポリアミドマスターバッチを得ることができ、耐熱性が優れたポリアミド樹脂組成物を得る際に、本発明のポリアミドマスターバッチを使用することで押出機の金属腐食がなく耐熱剤を供給できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
本発明は、以下のとおりである。
1.10〜100重量%が最大粒子径1000μm以下のポリアミド樹脂粉末であるポリアミド樹脂(A)100重量部と、平均粒径が100〜1000μmであるハロゲン化カリウム(C)1〜25重量部を溶融混練するポリアミドマスターバッチの製造方法。
2.さらに、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、ハロゲン化銅(D)0.1〜10重量部を溶融混練する1に記載のポリアミドマスターバッチの製造方法。
3.ポリアミド樹脂(A)とハロゲン化カリウム(C)、またはポリアミド樹脂(A)とハロゲン化カリウム(C)およびハロゲン化銅(D)を、攪拌羽付きの混合機で混合した後、溶融混練する1または2に記載のポリアミドマスターバッチの製造方法。
4.攪拌羽付きの混合機で混合する際、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、水0.05〜0.5重量部を加えて混合する3に記載のポリアミドマスターバッチの製造方法。
5.ポリアミド樹脂(B)100重量部に対して、1〜4いずれかに記載の製造方法により得られるポリアミドマスターバッチ0.1〜10重量部を配合するポリアミド樹脂組成物の製造方法。
6.1〜4いずれかに記載の製造方法により製造されるポリアミドマスターバッチ。
7.ポリアミド樹脂(B)100重量部に対して、6に記載のポリアミドマスターバッチを0.1〜10重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法でポリアミドマスターバッチを製造することで、耐熱剤が均一に分散したポリアミドマスターバッチを得ることが出来、このようなバスターバッチを用いて樹脂組成物を製造することで、樹脂組成物を製造する際や、樹脂組成物の成形加工を行う際に押出機などの腐食を防止することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のポリアミドマスターバッチの製造方法およびポリアミドマスターバッチを配合したポリアミド樹脂組成物の実施形態などについて説明する。
【0015】
ポリアミドマスターバッチに使用するポリアミド樹脂(A)は特に限定しないがポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、およびこれらの混合物、ないし共重合体などが挙げられる。
【0016】
本発明では、ポリアミドマスターバッチを製造する際に、ポリアミド樹脂(A)として粉末状のものを用いることが重要である。ポリアミド樹脂(A)中のポリアミド樹脂粉末は10〜100重量%である必要があり、90〜0重量%の範囲で、ポリアミド樹脂ペレットなどの粉末でない状態のものを含んでいてもかまわない。ポリアミド樹脂(A)中のポリアミド樹脂粉末の量は、好ましくは25〜85重量%である。この範囲内にすることにより、ポリアミドマスターバッチ中の耐熱剤の分散、ポリアミドマスターバッチを配合したポリアミド樹脂組成物中の耐熱剤の分散および耐熱性が良好となる。
【0017】
範囲外であると、ポリアミドマスターバッチ中の耐熱剤が不均一となり、ポリアミドマスターバッチを配合したポリアミド樹脂組成物の物性低下の原因となる。
【0018】
ここでいうポリアミド樹脂粉末とは、最大粒子径が1000μm以下のものであり、好ましくは850μm以下である。範囲内にすることにより、ポリアミドマスターバッチ中の耐熱剤の分散、ポリアミドマスターバッチを配合したポリアミド樹脂組成物中の耐熱剤の分散および耐熱性が良好となる。範囲外であると、ポリアミドマスターバッチ中の耐熱剤が不均一となり、ポリアミドマスターバッチを配合したポリアミド樹脂組成物の物性低下の原因となる。
【0019】
本発明における最大粒子径1000μm以下のポリアミド樹脂粉末は目開き1mm以下である篩(JIS8801)を通過させることによって得られる。
【0020】
本発明のポリアミドマスターバッチに使用する、ハロゲン化カリウム(C)としてはヨウ化カリウムを使用することが望ましく、配合量はポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、1〜25重量部が好ましく、さらに好ましくは5〜15重量部である。
【0021】
範囲内にすることにより、ポリアミドマスターバッチ中の耐熱剤の分散、ポリアミドマスターバッチを配合したポリアミド樹脂組成物中の耐熱剤の分散および耐熱性が良好となる。
【0022】
範囲外、特に25重量部より多い場合、ポリアミドマスターバッチ中の耐熱剤が不均一となり、さらに潮解しやすくなる。1重量部より少ない場合、ポリアミド樹脂組成物を製造するために必要なポリアミドマスターバッチを、多く製造する必要があり作業工数がかかるため好ましくない。
【0023】
配合するハロゲン化カリウムの平均粒径は100〜1000μmである必要があり、さらに好ましくは100〜500μmである。範囲内にすることにより、ポリアミドマスターバッチの生産性が良好となり、ポリアミドマスターバッチ中の耐熱剤の分散、ポリアミドマスターバッチを配合したポリアミド樹脂組成物中の耐熱剤の分散および耐熱性が良好となる。平均粒径が100μmより小さいハロゲン化カリウムは、ポリアミドマスターバッチ中の分散には望ましいが、粉砕等、細かくする工程が必要となるため、作業量が増える。1000μm以上であるとポリアミドマスターバッチ中の耐熱剤が不均一となり、ポリアミドマスターバッチを配合したポリアミド樹脂組成物の物性低下の原因となる他、射出成型後の製品の表面に斑点として表われ、製品の価値を著しく低下させる。
【0024】
本発明のハロゲン化カリウム、ハロゲン化銅の平均粒径とは、二軸平均径、すなわち、短径と長径の平均値の数平均粒径である。ここで、短径、長径とは、それぞれ、粒子に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺である。ハロゲン化銅、ハロゲン化カリウムの平均粒径の測定は、少なくとも50個の粒子に関して走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより求めることができる。
【0025】
ハロゲン化銅(D)としてはヨウ化第一銅を使用することが好ましく、配合量はポリアミド樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、さらに好ましくは1〜5重量部である。範囲内にすることにより、ポリアミドマスターバッチ中の耐熱剤の分散、ポリアミドマスターバッチを配合したポリアミド樹脂組成物中の耐熱剤の分散および耐熱性が良好となる。また、ハロゲン化銅の平均粒径は1〜20μmが好ましく、平均粒径は、ハロゲン化カリウムと同じ方法で求めることができる。
【0026】
本発明において、ポリアミドマスターバッチを製造する際は、ポリアミド樹脂と、ハロゲン化カリウム、必要に応じハロゲン化銅とを混合してから溶融混練することが好ましい。混合は、それぞれ単独でポリアミド樹脂と混合しても良いし、2種類同時にポリアミド樹脂と混合しても良いし、2種類を予め混合したのちポリアミド樹脂と混合しても良い。
【0027】
混合を行う装置は、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサーに代表される、攪拌羽を備えた機械攪拌型の混合機が好ましい。攪拌羽の回転速度は、耐熱剤であるハロゲン化カリウム、ハロゲン化銅の内、特に潮解性を持つため塊状になったハロゲン化カリウムの塊を崩壊させることができる範囲で、任意に設定することができる。攪拌羽を供えていない場合、耐熱剤であるハロゲン化カリウム、ハロゲン化銅の内、特に潮解性を持つため塊状になったハロゲン化カリウムが崩壊せず、均一に分散させることが困難である。
【0028】
混合を行う際、水をポリアミド樹脂100重量部に対して、0.05〜0.5重量部混合することが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.2重量部混合すると良い。範囲内とすることで、粉末の吹き上がりを防止することができる。範囲外であると、特に0.5重量部より多くなると、ハロゲン化カリウムの一部が水溶液となり、混合装置内部を腐食させることにつながる。
【0029】
ポリアミドマスターバッチを得る際の溶融混練を行う装置としては、特に制限されるものではなく、公知の装置を用いることができる。例えば、単軸あるいは2軸押出機、バンバリーミキサーおよびミキシングロールなどの溶融混練機が好ましく用いられる。中でも2軸押出機が好ましく用いられる。また溶融混練機には、脱気機構(ベント)装置ならびにサイドフィーダー設備を装備してもよい。
【0030】
本発明で得られるポリアミドマスターバッチには、本発明の目的を損なわない程度で、ポリアミドに慣用的に用いられる添加剤、例えば顔料および染料、難燃剤、潤滑剤、可塑化剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、核剤を含有することができる。
【0031】
本発明で得られた耐熱材が均一に分散したポリアミドマスターバッチをポリアミド樹脂(B)と混合することで、耐熱性の優れたポリアミド樹脂組成物を得ることができる。ポリアミドマスターバッチと、ポリアミド樹脂(B)と混合する際、混合方法はブレンドでも良いし、溶融混練でも良い。混合する比率は、ポリアミド樹脂(B)100重量部に対してポリアミドマスターバッチ0.1〜10重量部混合することが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。マスターバッチに配合された耐熱剤の量が、樹脂組成物に配合されるべき耐熱剤の量となるよう調整する。この範囲にすることによって、耐熱性の優れたポリアミド樹脂組成物を得ることができ、成形機や押出機の腐食を抑制することができる。ポリアミド樹脂(B)は、ポリアミド樹脂(A)と同じものを使用できるが、マスターバッチに用いたポリアミド樹脂(A)とは異なるポリアミド樹脂(B)を用いることも出来る。また、本発明の目的を損なわない程度で、ポリアミドに慣用的に用いられる添加剤、例えば顔料および染料、難燃剤、潤滑剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、有機酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、核剤、ゴム、並びに強化剤を含有することもできる。
【実施例】
【0032】
本発明を実施例に基づいて説明する。本実施例では、実施例1および2、比較例1〜5の方法によりポリアミドマスターバッチを得た後、以下の分散性、潮解性の評価を実施した。
【0033】
(イ)分散性
ポリアミド樹脂(ナイロン66 東レ(株)アミランCM3001)100重量部に対して、実施例1および2、比較例1〜5で得られたポリアミドマスターバッチを、ヨウ化カリウムが0.29重量部となるように混合し、ISO1874−2に従い試験片を50本成形した。試験片をISO527−1,−2に従い引張試験を行い、脆性破断した本数を数えた。
【0034】
(ロ)潮解性
実施例1および2、比較例1〜5で得られたポリアミドマスターバッチを2週間大気中に放置し、放置前と放置後の水分率差を測定した。水分率はISO15512(A法)に従い、無水メタノールによって抽出した水分を微量水分計(三菱化成 CA−100)を用いて、カールフィッシャー法により測定した。
【0035】
<実施例1>
以下の原材料、原材料の配合比率、混合装置・溶融混練装置にてポリアミドマスターバッチを得た。評価結果を表1に示す。
【0036】
(1−1)原材料
ポリアミド樹脂:ナイロン6(東レ(株)アミランCM1001)
ポリアミド樹脂粉末は上記のポリアミド樹脂を冷凍粉砕して、目開き840μmの篩(JIS8801)を通すことによって得た、最大粒径840μmの粉末を使用した。
ハロゲン化カリウム:ヨウ化カリウム(伊勢化学工業(株)平均粒径500μm)
ハロゲン化銅 :ヨウ化第一銅(日本化学産業(株)平均粒径2.5μm)。
【0037】
(1−2)配合比率
ポリアミド樹脂ペレット:38.15部
ポリアミド樹脂粉末 :50.00部
ハロゲン化カリウム :10.30部
ハロゲン化銅 :1.55部
水 :0.15部。
【0038】
(1−3)混合および溶融混練
ポリアミド樹脂ペレット、ポリアミド粉末、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化銅、水を攪拌羽付き混合機(三井鉱山(株)FM150J)を使用して混合した後、2軸押出機(池貝機械(株)PCM45)を使用して溶融混練した。
【0039】
<実施例2>
以下の原材料、原材料の配合比率、混合装置・溶融混練装置にてポリアミドマスターバッチを得た。評価結果を表1に示す。
【0040】
(2−1)原材料
ポリアミド樹脂:ナイロン66(東レ(株)アミランE3001)
ポリアミド樹脂粉末は上記のポリアミド樹脂を冷凍粉砕して、目開き840μmの篩(JIS8801)を通すことによって得た、最大粒径840μmの粉末を使用した。
ハロゲン化カリウム:ヨウ化カリウム(伊勢化学工業(株)平均粒径500μm)
ハロゲン化銅 :ヨウ化第一銅(日本化学産業(株)平均粒径2.5μm)。
【0041】
(2−2)配合比率
ポリアミド樹脂ペレット:38.15部
ポリアミド樹脂粉末 :50.00部
ハロゲン化カリウム :10.30部
ハロゲン化銅 :1.55部
水 :0.15部。
【0042】
(2−3)混合および溶融混練
(1−3)と同じ装置で原材料の混合、溶融混練を行い、ポリアミドマスターバッチを得た。
【0043】
<比較例1>
以下の原材料、原材料の配合比率、混合装置・溶融混練装置にてポリアミドマスターバッチを得た。評価結果を表1に示す。
【0044】
(3−1)原材料
(1−1)記載の原材料を使用した。
【0045】
(3−2)配合比率
ポリアミド樹脂ペレット:88.15部
ポリアミド樹脂粉末 :0部
ハロゲン化カリウム :10.30部
ハロゲン化銅 :1.55部
水 :0.15部。
【0046】
(3−3)混合および溶融混練
(1−3)と同じ装置で原材料の混合、溶融混練を行い、ポリアミドマスターバッチを得た。
【0047】
<比較例2>
以下の原材料、原材料の配合比率、混合装置・溶融混練装置にてポリアミドマスターバッチを得た。評価結果を表1に示す。
【0048】
(4−1)原材料
(1−1)記載の原材料を使用した。
【0049】
(4−2)配合比率
ポリアミド樹脂ペレット:29.84部
ポリアミド樹脂粉末 :39.00部
ハロゲン化カリウム :27.10部
ハロゲン化銅 :4.06部
水 :0.15部。
【0050】
(4−3)混合および溶融混練
(1−3)と同じ装置で原材料の混合、溶融混練を行い、ポリアミドマスターバッチを得た。
【0051】
<比較例3>
以下の原材料、原材料の配合比率、混合装置・溶融混練装置にてポリアミドマスターバッチを得た。評価結果を表1に示す。
【0052】
(5−1)原材料
(1−1)記載の原材料を使用した。
【0053】
(5−2)配合比率
ポリアミド樹脂ペレット:38.15部
ポリアミド樹脂粉末 :50.00部
ハロゲン化カリウム :10.30部
ハロゲン化銅 :1.55部
水 :0.15部。
【0054】
(5−3)混合および溶融混練
原材料をタンブラー(中村科学機会(株)PTM150)で混合した後、実施例1と同じ方法で溶融混練してポリアミドマスターバッチを得た。押出機での溶融混練は安定せず、吐出が乱れた。
【0055】
<比較例4>
以下の原材料、原材料の配合比率、混合装置・溶融混練装置にてポリアミドマスターバッチを得た。評価結果を表1に示す。
【0056】
(6−1)原材料
ポリアミド樹脂:ナイロン6(東レ(株) アミランCM1001)
ポリアミド樹脂粉末は上記のポリアミド樹脂を冷凍粉砕して、目開き2000μmの篩(JIS8801)を通すことによって得た、最大粒径2000μmの粉末を使用した。
ハロゲン化カリウム:ヨウ化カリウム(伊勢化学工業(株)平均粒径500μm)
ハロゲン化銅 :ヨウ化第一銅(日本化学産業(株)平均粒径2.5μm)。
【0057】
(6−2)配合比率
ポリアミド樹脂ペレット:38.15部
ポリアミド樹脂粉末 :50.00部
ハロゲン化カリウム :10.30部
ハロゲン化銅 :1.55部
水 :0.15部。
【0058】
(6−3)混合および溶融混練
(1−3)と同じ装置で原材料の混合、溶融混練を行い、ポリアミドマスターバッチを得た。
【0059】
<比較例5>
以下の原材料、原材料の配合比率、混合装置・溶融混練装置にてポリアミドマスターバッチを得た。評価結果を表1に示す。
【0060】
(7−1)原材料
ポリアミド樹脂:ナイロン6(東レ(株)アミランCM1001)
ポリアミド樹脂粉末は上記のポリアミド樹脂を冷凍粉砕して、目開き840μmの篩(JIS8801)を通すことによって得た、最大粒径840μmの粉末を使用した。
ハロゲン化カリウム:ヨウ化カリウム(伊勢化学工業(株) 平均粒径2000μm)
ハロゲン化銅 :ヨウ化第一銅(日本化学産業(株) 平均粒径2.5μm)。
【0061】
(7−2)配合比率
ポリアミド樹脂ペレット:38.15部
ポリアミド樹脂粉末 :50.00部
ハロゲン化カリウム :10.30部
ハロゲン化銅 :1.55部
水 :0.15部。
【0062】
(7−3)混合および溶融混練
(1−3)と同じ装置で原材料の混合、溶融混練を行い、ポリアミドマスターバッチを得た。
【0063】
実施例1および2は脆性破断が確認されなかったが、比較例1〜5は脆性破断が確認された。脆性破断した試験片の破断面を走査電型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率3000倍で拡大した領域を電子線マイクロアナライザ(XMA)の元素マッピング機能を用いて観察したところ、ヨウ化カリウムの凝集物が確認された。実施例1および2は、比較例1〜5と比較して分散性に優れていることがわかる。また、実施例1に比べ、比較例2は大気に放置した際の吸水率が多く、ポリアミドマスターバッチが潮解しやすいことがわかる。
【0064】
次に、ポリアミド樹脂組成物の耐熱性について説明する。実施例3、比較例6の方法にてポリアミド樹脂組成物を製造し、以下の方法で耐熱性を評価した。
【0065】
(ハ)耐熱性
実施例3、比較例6で得られたポリアミド樹脂組成物を、ISO1874−2に従い試験片を成形した。試験片をギヤオーブン(タバイエスペック(株)PHH−200)に入れ、150℃雰囲下にて500h、1000h、2000h乾熱処理をした。それぞれの時間で乾熱処理した試験片と、未処理の試験片をISO527−1,−2に従い、引張強度、引張伸びを測定し、以下の計算式によって、保持率を算出した。
引張強保持率 (%)=乾熱処理した試験片の強度/未処理成形品の強度×100
引張伸び保持率(%)=乾熱処理した試験片の伸び/未処理成形品の伸び×100。
【0066】
<実施例3>
ポリアミド樹脂(ナイロン66 東レ(株)アミランE3000)と、ポリアミド樹脂100重量部に対して、実施例1で得たポリアミドマスターバッチと2.59重量部とガラス繊維(日本電気硝子(株)TP57)45.56重量部を2軸押出機(日本製鋼社(株)TEX54)で溶融混練し、ポリアミド樹脂組成物を得た。評価結果を表2に示す。なお、1000tのポリアミド樹脂組成物を溶融混練した後、押出機内部を確認したが、腐食は確認されなかった。
【0067】
<比較例6>
ポリアミド樹脂(ナイロン66 東レ(株)アミランE3000)と、ポリアミド樹脂100重量部に対してヨウ化第一銅マスターバッチ(東レ(株)ナイロン6 アミランCM1001/日本化学産業(株)ヨウ化第一銅=95/5)0.87重量部、ガラス繊維(日本電気硝子(株)TP57)44.93重量部、ヨウ化カリウム水溶液(水/ヨウ化カリウム=3/2)0.72重量部を2軸押出機(日本製鋼社(株)TEX54)で溶融混練し、ポリアミド樹脂組成物を得た。評価結果を表2に示す。なお、1000tのポリアミド樹脂組成物を溶融混練した後、押出機内部を確認したところ、押出機スクリュウ表面の腐食が確認された。
【0068】
本発明で得られるポリアミドマスターバッチを使用したポリアミド樹脂組成物と、ヨウ化カリウムを水溶液で配合したポリアミド樹脂組成物はともに優れた耐熱性を有していることが分かる。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明により製造されたマスターバッチは、耐熱用途で使用されるポリアミド樹脂の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜100重量%が最大粒子径1000μm以下のポリアミド樹脂粉末であるポリアミド樹脂(A)100重量部と、平均粒径が100〜1000μmであるハロゲン化カリウム(C)1〜25重量部を溶融混練するポリアミドマスターバッチの製造方法。
【請求項2】
さらに、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、ハロゲン化銅(D)0.1〜10重量部を溶融混練する請求項1に記載のポリアミドマスターバッチの製造方法。
【請求項3】
ポリアミド樹脂(A)とハロゲン化カリウム(C)、またはポリアミド樹脂(A)とハロゲン化カリウム(C)およびハロゲン化銅(D)を、攪拌羽付きの混合機で混合した後、溶融混練する請求項1または2に記載のポリアミドマスターバッチの製造方法。
【請求項4】
攪拌羽付きの混合機で混合する際、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、水0.05〜0.5重量部を加えて混合する請求項3に記載のポリアミドマスターバッチの製造方法。
【請求項5】
ポリアミド樹脂(B)100重量部に対して、請求項1から4いずれかに記載の製造方法により得られるポリアミドマスターバッチ0.1〜10重量部を配合するポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から4いずれかに記載の製造方法により製造されるポリアミドマスターバッチ。
【請求項7】
ポリアミド樹脂(B)100重量部に対して、請求項6に記載のポリアミドマスターバッチを0.1〜10重量部配合してなるポリアミド樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−222562(P2010−222562A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290315(P2009−290315)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】